2024年03月

2024年03月30日

続 lesser thickness gearboxes

 懸案の薄型ギヤボックスが出来上がり、貫名氏から供給が開始された。今までの形よりもかなり薄くできるので、台枠内側にイコライザがあっても取り付けられる。I田氏が早速換装されているのでぜひご覧戴きたい。改装マニュアルも補筆されているはずなので、よりHOの人たちにとっても分かりやすいようになっている。リーマを通すことも強調してある。ヤスリでゴリゴリということは禁物である。 
 歯車を1 mm薄くしている。また中心部の形状を少し変えて、より全体を薄くできる工夫をした。
 動きを動画で見ると、今までのものと全く同等である。

「普通のギヤと何が違うのか」と、いつも同じことを聞かれるが、すべてが異なるのである。よくあるウォームギヤ・セットとは歯形が異なり、仕上げ精度も2桁近く違う。材質も違う。高性能を得ようとすれば、それなりの工夫が必要である。このギヤの歯面を見て、ある専門家は、「これは凄いね、高そうだな。」と言ったが、全くその通りなのである。
 
 歯車屋で歯数を指定して注文しただけのギヤとは違って当然なのだ。当初はコースティング・ギヤなどと呼ばれていたようだが、高効率ギヤという名前が定着したようで嬉しい。これはどなたが言い始めたのかは定かではないが、非常に良い名前であると思う。

 実は、筆者は ”coasting” という言葉は好きではない。これは定年退職者が年金で無気力に暮らしていることを表す時にも使う言葉だ。Bill Wolfer が眉をひそめてそれを言ったのを覚えている。「俺は違うぞ。」と言いたかったのだろう。  

2024年03月28日

surface tension

 先日の記事で、Tavata氏がコメントを投稿された。それには「微小パーツがコテに吸い付けられて動いてしまう」とあった。これはまさしく表面張力の影響である。
 この趣味をやっていて初めて、正しい表面張力に関する意見を戴いたことになる。 今までは例によって、ハンダが融けて沁み込む時に「表面張力が小さくなっている」などの間違った表現を書いているのが普通であったのだ。

 それに対する筆者のコメントをお読み戴けただろうか。コメントにしては珍しく、「いいね」のような印がたくさんついている。
 この動画はいつも見ているイチケン氏のエレクトロニクス講座で、筆者の好きな動画だ。練りハンダを置いて、そこに微小部品を並べる。下からヒータでハンダの融点付近までゆっくり加熱すると、ハンダが融けて上に載っている部品は吸い付けられる。多少ずれていても、所定の方向に整列してハンダ付けが完了する。これが表面張力の威力である。融けた金属の表面張力はきわめて大きいということを実感できる。

 中学校までの理科で大まかな知識は得られる。観察は大事だ。持っている知識と照らし合わせて、どの理論が適用されるとこの現象が説明できるかということを考えねばならない。
 最初から考えるのを放棄して、人の言うことを鵜呑みにする人があまりにも多い。また、「理屈はそれが好きな人が考えれば良いことで自分は関係ない」と公言する人も居る。しかし間違った理論を広めて良いはずはない。

2024年03月26日

installing triple-thread worm gears

 貫名氏らの改造の経験者に話を伺うと、市場にはおかしな模型がかなりあるとのことだ。

 まず韓国製の機関車は鬼門だそうだ。車軸断面が真円でないことがあるという。精密に仕上げてあるボールベアリングが入らないということがあるらしい。丸くない車軸の存在というのは考えにくいことである。動輪ごと取り替えてしまうのが良いそうだ。 
 
 日本製の機関車について言えば、天賞堂のは良いという。カツミも問題はない。
 S店のはきわどいらしい。軸が太いのがあるそうだ。一般論で言えば、軸はマイナス方向の公差で作られているはずだ。太くては軸受けに通らない。また、動輪との篏合部にテーパが付いているものがあり、嵌めるときに苦労する。機械工学の基本から外れているようだ。

 1970年代の輸出用の機関車を作っていたメーカのものは、なかなか大したものだったらしい。部品の精度が良いそうだ。
 
 改装した機関車はどれもよく走る。何が違うのかと聞かれるが、答は単純だ。
「すべてが違うのです。」 

2024年03月24日

push-to-roll drive for steam engines

 来訪者に機関車のメカニズムを見せたのち、駆動装置本体を手渡して、車軸を廻してもらう。駆動軸が高速回転するが、あまりの滑らかさに愕然とする。全く抵抗を感じないのだそうだ。
 これほど軽く廻るなら、テンダに付けて巨大なフライホィールを廻すのも問題がないことに気が付く。

 HOの機関車の見本も1輌置いてある。短い線路だが、機関車を押すと発電してヘッドライトが点く。これは優れたディスプレイである。いかに高効率か、がよく分かるからだ。
 これを見ると誰しも欲しがる。貫名氏が在庫を持っているはずだと言うと、すぐに注文すると言う。
 このギヤを採用すれば、今までの駆動装置はいったい何なのかということになるだろう。その魔力にはまってしまった人は何人もいる。

 高効率ギヤを採用した人が運転会に持って行くと、注目を浴びるそうだ。欲しがる人は多いが、動輪を抜いて元に戻さねばならないと知ると尻込みしてしまう人が多いという。
 90度ジグを作るのは難しいことではないし、それを作れば他の人の機関車の改造を引受けてアルバイトもできるはずだ。

 以前も書いたが、この国の模型界で一番不足しているのが、この種の仕事を引き受けるカスタムビルダの存在である。だれでもができるわけはないので、できる人が適価で引き受ければ良いのだ。その種の特技を持つ人は少なくない。小遣いを稼ぎながら、模型界の進歩に貢献できる楽しい仕事のはずだ。

 今月からとれいん誌に貫名氏がHOの高効率ギヤに関する連載を始めた。 

2024年03月22日

続 visitors to the museum

 見学者は路盤が完全な平面であることに驚く。
 多くの事例では路盤が波を打っている。それは筆者自身があちこちで実例を見ている。支柱のスパン(径間)が短くても、それをつなぐ梁自体が撓むのだ。アメリカではLガーダという名前のアングル状の木製部材を作って支えている。それの一辺は3インチ半(89 mm)で、高さがある。それを使って荷重を支えるのだが、剛性はそれでも十分ではない。年月の経過とともにこの梁のクリープが起こり、路盤は波打つ。もちろんスパンを小さくするとクリープは小さくなるが、クリープがなくなるわけではない。日本では角材を使っている場合が多いようだ。梁の高さが不足している場合が多いという。

 当鉄道では薄鋼板製の角パイプを梁に使っている。価格は木材の数分の一であり、クリ−プは無視できるほど小さい。これを使うことを発表して十年近く経つが、採用したという話は聞かないのが不思議だ。

 甲板の下を覗き込んで写真を撮る人は多い。支柱と熔接することもできるし、ネジ留めも難しくない。作るのは簡単で、安価で、性能が良いのだから使ってほしい。甲板を張るのもタッピング・ネジを使う必要はなく、普通のコース・スレッドが簡単にねじ込める。 

 来訪者は線路に目を近付け、平面度を確かめる。「完璧ですね。すごいですね。」とは言ってくれるが、採用する人が居ないのは寂しい。また曲線で1.56‰の勾配が均一であることも「素晴らしい」とは言ってくれるが、やり方のノウハウについての話題は出たことが無い。 
 道床のエラストマは、指で押して「意外と硬い。」という意見が多い。エラストマはその質量が効いていることに気付いて欲しい。走行音が静かなのは車輪の精度が特別に高いということもあるが、この道床の上にフレクシブル線路をルースに置いてあることの寄与が大きい。1.5 mほど、ゴムの細片を撒いて接着剤で固めた部分があるが、その部分の音は大きいのだ。

2024年03月20日

visitors to the museum

 最近は来訪者が多い。一般公開はしていないが、古い友人や、紹介者を介して来る人が増えてきた。

 来訪希望者には写真を含めすべての個人情報を提出戴き、入場料を銀行振込してもらう。こうすれば身元は確定だ。一回に2人までという原則でお見せしている。写真撮影は自由だが、GPSは切るのが約束だ。写真から場所が特定されて、予測せぬ突然の来訪者の出現がありうるからである。無審査での車輌の持ち込みは遠慮願っている。線路が傷む可能性があるからだ。車検の条件に合格したものでなければ走らせられない。また、車輪踏面は清拭してあることが条件だ。
 
 来られた方は路盤の高さに驚くが、列車が走るのを見ると「この高さで良いのだ。」と納得する。 走行音がしないのには驚く。ほとんど無音で走る。耳を近づけると継目の音が聞こえる。
 連接式の機関車が120輌を牽いて坂を登る時、前後のエンジンが独立しているので、微妙なスリップが起こり、排気音がずれるのが感動的だそうだ。当たり前なのだけれども、こういうのを見たことがないと言う。

 また、停車中の貨物列車の最後尾のカブースを手で動かすと、120輌先の機関車が連結器の遊間が詰まった瞬間に動く。それを見て歓声が上がる。ありえないのだそうだ。
 信号機が順次色が変わって行くのも楽しいと言う。一般によく見るのはタイマー式信号で、それでは列車が止まっていても色が変わってしまうらしい。

 ダブルスリップを渡る音が静かなのは不思議だそうだ。その手前に勾配が変化している部分があるが、実感的だと言う。実物は縦曲線に円曲線を用いているらしいが、ここでは3次曲線を用いている。そうすると、より滑らかに感じるのだろう。 

2024年03月18日

TV camera

 クラブの長老H氏からTVカメラを付けて欲しいと依頼があった。レイアウトの車庫の奥には目が届かないが、安心して最奥まで列車を収めたいのだ。H氏は片手が不自由なので、高いところにカメラを付けたり細い穴にケーブルを通したりするのは難しい。工具一式を積んで喜んで出かけた。30分のドライヴである。

 どんなカメラなのかと聞くと、しばらく前に購入した防犯カメラで中国製であった。マニュアルはあるが、マニュアル通りには作動させられない。あると書いてあるボタンがなかったり、無茶苦茶である。
 8心のLANケーブルが要る。これはバッタ屋でお値打ちに調達したものだが、ちょうど良い長さであった。

TV camera 接続して調子を見るが、ちっとも言うことを聞かない。壊れているのか、機種が違うのか、ヴァージョンが違うのか分からない。30分くらい格闘して偶然にもよく写った瞬間に写真を撮った。設定の再現性を確認して操作手順書を作った。こういう仕事は楽しくない。中国製のものは買うべきではないことを再確認した。

 ともかく、カメラはヤードの全体を俯瞰している。H氏はとても喜び、早速運転を開始した。走らせて楽しむ模型人である。自宅にレイアウトを持っていない人は、つまらぬ(失礼!)ディテール付けの競争に向かうのだろう。我々はよく走る模型の製作に勤しんでいる。

2024年03月16日

soldering technic

 最近はあちこちでハンダ付けの作品を見せてもらうチャンスが多くなった。どういうわけか、筆者に意見を求める人が増えてきたのだ。筆者は、長年ハンダ付けについて「世の中の常識」とは異なることを言って来たのだが、ようやくその「常識」がおかしいことに気づき始めた人が居るということなのかもしれない。

 先日見た作品(HOではない)は悲惨であった。外見はそこそこに良いのだが、すべてのハンダ付けが点付けである。強く握るとその部分は良いのだが他の部分は浮いているから変形する。元に戻ればよいがそうは行かないだろう。

 先日博物館に来訪したHOの方達は、機関車が重いのには驚いた。持ち上げるのは特定の場所を掴まないと壊れるということを実感した。脱線するだけでも壊れることがあると言うと、そうかも知れないという顔をした。連結時に壊れることもあると言うと、貨車や客車の車体の中心を貫く骨の太さを確認して驚いた。

 ハンダ付けでハンダが外に出ていないのを称賛したのは山崎氏である。昭和40年代の作品だったと思う。あの頃から模型界が変な方向に向かって行った。筆者は幸いにも達人の指導を受けたので、丈夫で長持ちする模型を作ることが出来た。今回のペースト事件で、またおかしな方向に行かねばよいがと思う。 

 要するに、自分でものを作れない(作らない)人が、そのテクニックについて書くべきではないのだ。口先だけでものを作れると思っている人は多いと感じている。 旋盤も「持っているから自分はできる」と思っている人は多い。やってみれば「そんな筈ではなかった」ということが多いのだそうだ。筆者のところに指南を受けに来る人が増えてきた。やって見せると「なるほど」と思うことがあるようだ。
  筆者は中学生の頃にプロの指導を受けた。今となっては得難い経験であった。教科書を読むだけでは決して得られぬノウハウがたくさんあった。

2024年03月14日

amalgamation

 再度アマルガメイションについて説明せねばならない。元々は金属学用語なのだが、現在では社会科学的な話題や金融機関でよく用いられるようになった。もちろん英語圏での話である。
 日本語では混汞法(こんこうほう)と言っていたが、もはや誰もそんな言葉を知らない時代になった。水銀は常温でほとんどの金属との合金を作る。例えば銅線に水銀を付けると水銀は流動しにくくなる。生じる合金中の銅が多いからである。それにもう一滴水銀を足すと流動するようになる。

 融けたハンダが清浄な銅板またはブラス板に接触すると、驚くべき速さで合金化が進む。酸素の無い環境(真空が良いのだが、装置を作るのがが面倒なので、アルゴンを満たしたテントの中)で物理的に磨いて、ハンダ付けをするとよく付く。まさに石鹸水をこぼしたような感じで隙間に沁み込む。
 その昔、伊藤剛氏が名古屋のクラブの会報のマンガで紹介していた。宇宙服を着て、月面でハンダ付けしている誰かさんに、後ろから「こんな所まで来てやることはないのに。」と言う場面だ。

 フラックスは塩化亜鉛に限らず、ある程度の高温で蒸発せず、金属酸化物を溶かすものが効果を持つ。そういう点では松ヤニの効果を見つけた人は偉いと思う。日本では梅酢を用いていた。果実から得られた酸は蒸発せず、ある程度の酸性を示すので効果があったのだ。筆者は文献に書いてあるすべての物質で、効果があることを確かめている。

 日本では工業的には昔から塩酸を用いてきた。塩化亜鉛はそれほど昔から使われているわけではない。おそらく昭和の時代からであろう。昭和40年代までの自動車工場ではボディのリア・クォータの継ぎ目を塞ぐのに塩酸をフラックスとして鉛ハンダを流していた。その後は当然ヤスリで削り取るのである。

 酸で金属面を洗うと新しい金属面が露出し、ハンダのスズがそれと合金を作る。この速さは驚くほど早い。それを見て、表面張力が小さくなったと勘違いするわけだ。繰り返すが、表面張力は関係ない。単に、母材がハンダと馴染みが良く、急速に合金化するからである。これはまさに磨いた銅板に水銀を一滴落としたときと同じである。

 ハンダ付けの後でハンダが見えないようにするために、キサゲで削って銀色部分をなくすのは賢明とは言い難い。母材との合金が出来ているわけだから、ブラス色が見えるようになるとすでに母材はかなり削られている。すなわち平面性は失われる。 このことはかなり前からここで述べているが、理解している人は少ないと感じる。
 日本でも、そろそろハンダが滲んだ模型を美しいと感じる時代になるべきだ。 

2024年03月12日

soldering paste

 昨夏に久保田富広氏による講演があった。著名な模型人であり、その講演を聞くためだけにJAMに行ったという人もいる。
 その後、何人かの人から質問を受けた。久保田氏は塩化亜鉛を使わずにペーストを使ったそうで、それが残留していても錆を生じないというのは本当か、というものであった。

 まずこの話は、ペーストとは何かというところから始めねばならない。ペーストはワセリン(半固形の炭化水素の混合物)あるいは獣脂に松脂などを練り込んだものだ。茶褐色である。現在市販されているペーストと称するものの組成とは、かなり異なる。松脂は熱分解して各種の有機酸を生じ、それが金属表面の酸化被膜を溶かしてスズによるぬれを助ける。これだけで終わるのなら、ペーストが残っていてもまず錆びたりしない。しかし模型は空気中にあるから、酸素の影響を受けていることを忘れてはいけない。ここで問題になっているペーストであっても反応速度は遅いが錆を生じる。
 ペーストを使ってハンダ付けするときは、接合面をよく磨いて酸化被膜を取り除いておくことが不可欠である。塩化亜鉛なら、多少の被膜は溶けてしまうから、とても楽である。

 現在市販されている塩化亜鉛入りペーストは全く別問題であって、同列に論じることは出来ない。これを洗わずに放置すると、一週間で酷い錆を生じる。拭けば取れると思っている人が居るようだが、それほど簡単な話ではない。
 
 筆者のところにはBill Melisの作品がある。彼はペーストをよく使った。場合によって、作品の車体裏にはべっとりとペーストが付いていることがある。錆びないだろうと思って放置したものの、40年も経つと裏側に緑色の錆がびっしり付いている。酸素が働くのである。酸素から逃れることは出来ないから、反応しそこないの有機酸はブラスを侵す。
 このプロセスを厳密に説明すると、
1. 酸素が金属を酸化し酸化物を作る。
2. その錆が有機酸と結合して色の付いた塩を生じる。
3. 有機酸は酸化物を消費することになるので平衡がずれる。
4. その結果、酸化は起こり易くなり、結果として錆を生じる。
 ただし、この錆の発生は塩化亜鉛を用いた時と比べると極めて遅く、10年以上掛かって目に見えるようになるだろう。面白いことに薄くついている部分は錆びやすく、こってりついているとその部分の中心部は錆びにくい。これは酸素透過の起こりやすさと関係があることを示している。

 筆者は他の作者のペーストを用いてハンダ付けしたブラス製品をいくつか持っていたがどれもかなり錆びて緑色になっていた。
 錆びないわけはないのだ。錆びる速度がかなり小さいというだけである。熱湯を掛け、洗剤を付けて歯ブラシでこするべきだ。場合によっては熱湯で煮ると良い。
 我々は塩化亜鉛を使うことに慣れている。水洗いで済むというのはとてもありがたいことなのだ。この講演を聞いて、ペーストは素晴らしいものだと勘違いする人が増えねばよいがと思う。 

2024年03月10日

surface tension??

 その種の違いがわからない人の文章に、必ずと言って良いほど登場するのが、この表面張力という言葉であるという。最近はその種の文章を読むことに拒否反応が出るようになってしまったので、伝聞の情報ではあるが、複数の人が同じことを言っているので確実なのだろう。それをまとめて言うと、表面張力という言葉が出てくるハンダ付けの記事は怪しいものが多いということだ。

「塩化亜鉛を使うと融けたハンダの表面張力が小さくなるので沁み込む」とあるらしい。これはとんでもない間違いである。
 融けた金属の表面張力はとても大きい。水銀の玉を見れば分かる。液体の銅(約1100 ℃)で水の20倍というデータがある。常温の水銀で18倍だそうだ。ハンダもその程度であろう。
 表面張力を測る物理実験を学生の時にしたことがあるが、純水の値を求めてから界面活性剤を一滴落とすとその値は二桁ほど小さくなった。これは界面活性剤が水に溶けるからである。

 塩化亜鉛は融けたハンダの液体に溶ける、とでも言い張るつもりなのだろうか。塩化亜鉛はハンダには溶けない。塩化亜鉛は金属表面の酸化物を溶かして新しい金属面を出しているだけである。そこにハンダの有効成分であるスズが接触するとアマルガメイションが起きて「ぬれ」を生じるのである。ここでは表面張力は全く小さくなっていない。塩化亜鉛水溶液に界面活性剤を足してあるものもあるが、それは多少の油気がある金属面であっても、塩化亜鉛水溶液がその表面をよくぬらすようにする工夫である。これは筆者も時々やる。サンポールなどを一滴足せば良いだけである。これでハンダ融液の表面張力が小さくなるわけではない。ここで起こっていることは、塩化亜鉛水溶液がワークをぬらし易くなり、その結果、露出された金属面をハンダがぬらすのである。

 この種の間違った情報を面白半分に流されると、この趣味の発展には害があるような気がする。見つけたら削除を求めたほうが良いかもしれない。しかしそういう人はそれが間違いだとは認識しない可能性が高いと見ている。

2024年03月08日

続 Sn 63% - Pb37% solder

 今でも 63% ハンダは60%ハンダと使い心地が違うのですか、という質問が多い。ウェブ上では、「違いがない」とわざわざ書いている人まで居るそうだから、救いがない。

 これは実際に使ってみればすぐ分かることである。使った上でも分からない人は、付けるものが小さくてコテからの熱が全体に行き渡る様な条件だろう。要するに「違いが分からない条件」を作っているのだ。ある程度の大きさのものを小型のガストーチあるいは炭素棒などで加熱してハンダを廻さねばならないときは、その違いを顕著に感じることができる。
 
 63%ハンダはどこに行けば買えるのですか、という質問も多い。専門店に行かなくても、近くのホームセンタで買えるはずである。
 ステンレス用と書いてあるものはどういうわけか63%である。その理由はよく分からない。昔、板金屋のおじいさんはごく普通の50%ハンダで上手に付けていた。もちろんコテは焼ゴテである。ステンレスは熱伝導が良くないので、付き易い。

2024年03月06日

Sn 63% - Pb37% solder

 63%ハンダの使用量が多く、余分な60%ハンダから作っておくことにした。母体となる60%ハンダには、どういうわけか70という番号が打ってある。
 
 これが 210 gある。それにスズを何 g 足すと63%ハンダになるか…という中学1年生の数学である。
 スズはかなり前に手に入れたものだ。たまたま東急ハンズで見かけて買ったような気がする。昔はこんなものまで売っていたのだ。

63% solder 棒状のスズを大きなハサミで切って、所定の質量を量り取る。それをるつぼの中で融かしたハンダに足せば良い。針金で掻き回して均一にする。温度が高くないので、ダンボール箱を傾けた溝に流して三角の断面にすれば良い。あっという間に固まって出来上がりだ。これが鉛であると、300 ℃以上でダンボールは燃え上がってしまうことがある。燃えなくても焦げてしまうだろう。屋外のデッキの上でやっているが、こぼれたとしても火事になる心配はない。

 加熱すると瞬時に必要な範囲が完全に融け、加熱をやめて息を吹きかけると、瞬時に固まる。
 50% や 60% のハンダとは全く異なる世界である。63%ハンダは白い。固まるときにはこしあん状態にはならないので、失敗することもない。このこしあんの状態で少しでも動かすとハンダにヒビが入って失敗である。

2024年03月04日

dead rail

 これら20の話題の中で、筆者が一番注目しているのは dead rail である。線路に通電しなくても走る動力車制御方式だ。当然電池駆動になる。
 博物館の隠しヤードには240輌ほど入る。分岐は10台あるが、おそらく、ありとあらゆる故障が生じると予想する。その度に車輌をすべてどかして点検し、故障を直すというのは考えただけでも気が滅入る。半分以上が手の届きにくい隙間にあり、そこになにかの導電性のかけらでも落ちようものなら、完全にアウトとなる。
 実物の鉄道の貨車ヤードに架線は張ってない。張るべきではないのだ。全く同様に、隠しヤードには通電したくない。脱線はまずないから、機関車が電池動力で無線操縦で動けば、すべて解決だ。分岐はすべて露出させてあるから、メンテナンスは簡単だ。ポイントの切替は、ギヤード・モータの常時通電式である。その駆動はDCCで行う。そうするとルート・コントロールが自然にできる。連結器開放ランプは設置しない。遠隔操作でカプラの開放ができるからだ。

 A氏が新たに開発された無線方式は極めて合理的で、信頼性が高く、なおかつ広範な応用が効く方式だ。これは無線方式のDCCであって、多数の機関車を個別に呼び出せる。サウンド装置発煙装置も連動する。神戸の会場でも披露して戴いた。連結器の開放も訳なく出来、入換機としては願ったり叶ったりだ。もし商品化されれば、よく売れるだろうと思うが、モータと動力伝達機構の効率が悪いと、すぐ電池がなくなって立ち往生するはずだ。すなわち、dead rail には高効率の動力装置が不可欠なのである。

2024年03月02日

続々々々々 20 innovations that changed the hobby

17. 木製のキットは、割り箸キットと呼ばれた時代がある。細かく指定寸法に切り、穴あけもせねばならなかった。1989年に薄い木の板をレーザ光で切り抜いたキットが現れ、現在ではそれが主流になってしまった。硬い紙を切ったものでもエポキシ樹脂を含浸させれば十分な強度を持たせることができる。
 金属板を切り抜くのはエッチングによるのが普通であったが、現在ではかなりの厚板もレーザで切り抜ける。単価も下がり、使い捨てのジグにも使える時代になった。

18. DCCはNMRAの規格に入れられ、世界中どこでも同じ動作をさせることができる(メルクリンとアーノルトは独自規格を持っている)。DC運転に比べ、はるかに高機能であり、多くの列車を同時に運転できる。日本では走らせている人が少なく、DCCの普及率が極めて低いのは残念だ。難しいと考えている人が多いようだが、誰でもできる。特にプラスティック車輌はショートの可能性がまずないので、極めて簡単である。 

19. 3Dプリントは小ロットの部品のみならず車輌全体を作ることが出来、それを販売する人もいる。誰もがこの業界人になれる日が来たのだ。しかし、材質に関する知識が不足すると、時間が経つとぐにゃりと曲がってしまったり、溶けたりする可能性があるが、まだそこまで時間が経過していないので、気がついた人は少ない。

20. 通電していない線路(dead rail) の上を無線操縦で走らせることができる方式である。当初は屋外の汚れた線路で走らせるための方便であったが、屋内でも用いられることが多くなった。DC本線とDCC本線をまたいで貨物列車の入替をしようと思うと、この方式を採用すると便利だ。当鉄道ではすでにWifi伝達方式の試作品を採用して、貨車ヤードの入替に使っているが、今回A氏が開発したDCC信号を無線伝送する方式は、双方向ではないがDCCのフルスペックを活用できる。この方法ならば、音声も各種のギミックも、多チャネルで送れる。本線を走るのでなければ電池容量は十分で、ヤードの隅の停泊所に充電装置を置けば良いだけである。   

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