2022年01月

2022年01月29日

続々 actuating gimmicks

 この機関車の中に組み込まれた工夫は、昔からあるものだ。古いTMSのページを繰れば、かなり見つかる。MRにもよく載っていた。それを狭い場所にうまく配置し、電気装置でコントロールしているのは大したものであるが、すでにそういう時代ではなくなっていた。
 これも本人が言っていたことだが、
「時代はDCCだ。これは前世紀の遺物だ。」
 その年は2001年で、21世紀の最初の年であった。 

 発煙装置もケロシン(灯油)を加熱するものであった。装置はテンダに移植され、煙はパイプを介して送られている。吹き出す様子はブロワが効くとなかなか良いが、素晴らしいとは言い難いものであった。超音波振動子による霧化の話をすると、
「素晴らしい。でももう、私はできないよ。」と残念そうであった。

Mr.Wangrow 奇しくも隣のブースでは、Wangrow氏がDCCの実演をしていた。このDCCは、現在ではNCEになっている。  
 Wangrow氏が開発したものだが、NCEがOEM(相手先の銘柄で製造)していた。両者の契約切れと同時に、NCEが自社で販売を始めたので、Wangrow氏は商売をやっていけなくなった。Wangrow氏はNCEに対して訴訟を起こしたが、勝てるはずもなく、彼は2003年ごろ失意のうちに亡くなった。

 多数のポイントを同時に切り替える工夫とか、その他の同時制御の工夫はWangrow氏のアイデアによるものが多い。筆者は1996年にこの人と出会って、DCCに足を踏み入れた。当時珍しかった大電流 (4 Amps、のちに 8 Ampsも出来た) の流せる子機はGゲージ、Oゲージの人たちにとっては貴重なものだったので、筆者の友人はWangrow, NCEを採用している人が多かった。
 彼は、筆者が買うデコーダが小さな1.3 Amps のものばかりなので、不思議がっていた。高効率の機関車の存在は、彼の理解の範囲には無かったのだ。 

2022年01月27日

続 actuating gimmicks

CB&Q tenderMRJuly85 テンダの中には平ギヤ駆動による大きなフライホィールが入っていた。MRへの発表当時は、一定電圧を掛けて、それを内部で電圧を制御していた。その後、制御方式は、かなり変化している。
 また、筆者の3条ウォームが85年の11月号に載った件を、彼はよく覚えていた。それを組み込むと面白そうだとも言った。
 フライホィールで惰行するのだ、と自慢されたので、例の伊藤 剛氏の話をした。怒り始めるかもしれないと身構えていたが、意外にも、
「そうだ。あなたの言う通りだ。これでは機関車はスリップしない。真に慣性のある走りをさせようと思えば、別の車輌、例えばテンダーからの動力ピックアップも必要だろうね。」
と返されたので、非常に驚いた。
「実はそれをやろうとしているのです。3条ウォームは無音で逆駆動できるのですよ。」と筆者が言うと、
「そうだ。ウォームギヤは音がしないのが最大の特長だ。早く作って見せてくれ。」
と言った。
 この作者は極めて客観的な思考をする方だと感心した。サイエンティストであった。ただ、すでにかなりのお歳で、もう気力がないと言っていた。

CB&Q boiler 機関車の出力は小さい。フライホイールの後ろの黒い小さなモータがそれである。出力は 3 W程度だろう。発煙ヒータは 20 Wくらいで、その送風モータ、ベルを動かすモータ、焚口戸を動かすモータ、機関士の腕を動かすモータ、逆転機を動かすモータがある。焚口戸が開くとまばゆいオレンジの光がキャブ内に満たされた。機関士がスロットルを引くと、前方までリンクが動く。


2022年01月25日

actuating gimmicks

CB&Q smoking 少々古い写真が出てきたので、複写してお見せする。21年前の3月19日撮影とある。撮影場所はシカゴである。O scale conventionがあって、東部の友人に誘われた。オヘア空港の近くの殺風景なホテルであった。名前だけは知っているいろいろな人と会ったので、楽しかった。その後お付合いが続いている人も多い。入り口でこのデモンストレィションがあった。その十数年前のModel Railroaderに載った機関車である。

 このCB&Q 鉄道のO5bの模型は、あまり良い設計ではない。誰が設計したのかは、見当がつくが詳しくは書かないでおこう。形がおかしいのである。それをかなり丁寧に直してあった。

 この模型は、考えられるすべてのギミックを満載した機関車で、パルス電圧を掛けてリレィを切り替え、様々な部品を動かした。この機関車の中には7個のモータが入っている。

CB&Q O5 高校生の頃考えたことがすべて実現されていたので、興味深く見た。残念ながら、動きは今ひとつであった。余りにも入り組んでいて、故障も多い。テンダの中には電気装置が満載で、そこに発煙装置もあるので、熱の影響もあるかもしれない。 

 テンダ内のモータで機関車を駆動している。機関車の中には、様々な仕掛けがたくさんあって、駆動モータを入れる場所がなかったのだ。

MR July85 railtruck氏から、MR誌の掲載号を教えて戴いたので、早速UPした。 

2022年01月23日

続 先輪はなぜ小さいのか 

against derailment この図を示せば、何も説明は要らないだろう。α<βであるから、小さな先輪のフランジ先端がレイル面に当たる位置は、大きな動輪のフランジが当たる位置より、ずっと手前にある。すなわち脱線しにくい。

 もちろん、フランジ形状、摩擦係数などのファクタはあるが、脱線しにくいのは小径車輪であることは間違いない。気になる方は、レイル面でフランジを切った断面図を描かれると良いだろう。それが曲線上でどうなるかである。

 それでもわからない方は、ふすまのはまっている敷居の溝の中を考えると良いだろう。ビー玉を転がすのと、大きなボウリングのボールを転がすのとでは、どちらが外れにくいかである。当然ビー玉の方が外れにくい。

 このようなわけで、小さな軸重が掛かっているだけで、復元力を大きくしても外れない。だから誘導輪としての効果を発揮する。模型の場合も同様の筈だが、HO以下では、復元力はほとんど無きが如しである。復元力が無いと、かえって脱線しやすいようにも思うが、それについて研究された方は居るのだろうか。

 先回お見せしたUP835は先従輪の復元力が極めて大きいので、動輪のフランジはほとんど触らないはずだ。ある人はフランジレス動輪でも走るのではないかと言ったほどだ。
 ボールベアリングの外輪をローラとして、V字斜面の中心に転がり落ちるようになっている。先輪は摩擦の少ないステンレス製 Low-D であるから、脱線の可能性は極めて小さい。  

2022年01月21日

大型のシァが到来

 全く予想もしていなかったのだが、よくコメントを戴く某氏から連絡が入った。
「24インチ(620 mm)のシァを買ってしまったのだが、家に持ち込むのを家族に拒否されている。博物館に置かせてもらえないか。」
 とのことだった。場所はあるが、重そうだ。130 kg位ある。切れ味は極めて良く、ティシュがスパリと切れることは確認した。

unnamed 軽トラックに積んできたのを降ろす工夫に頭を絞った。軽トラの荷台高さは600 mmだ。フォークリフトは無い。
 450 mmの頑丈な台を作って、荷台から半分ずらした。次は300 mm、150 mmという具合に片方ずつ下ろした。3人がかりで30分の作業だ。

 刃渡り620 mmは、Oスケールには便利な大きさである。86 ftの客車の側板も一発で切れる。今まではこのシァを持っている工場まで行って、切ってもらっていた。

 希望者は、長物を切ることができる。その時、某氏には寸志をお渡ししたいので、募金箱を置く。ご協力をお願いする。

2022年01月19日

先輪はなぜ小さいのか

 先輪の軸重が少なくても脱線しない理由を、問われた。それを疑問に持つ人が少ないのは不思議だったので、良い機会であるから説明したい。
 これも、まず作図をすることから始めるべきだ。ここに図を出してしまうと「ふーん、そうか」で終わってしまう。読者が手描きで良いから作図をしてみるべきなのだ。
 フランジがレイルヘッド側面に当たる図を描けば、同じフランジ高さであっても、小半径の先輪が如何に脱線しにくいかわかるはずだ。

 蒸気機関は実用最大回転数が限られているから、高速を出すには大動輪を持たせるしか方法がない。最大、直径 2 m程度である。このような動輪では脱線しやすいので、先輪は不可欠なのである。

 最近「蒸気機関車の◯◯」という3冊の本を読む機会があったが、説明に怪しいところがかなりある。工学に疎い人のような気がする。しかし、大上段に構えて書いているので、初学者が読むと信じてしまう人もいるだろう。間違いを指摘して差し上げたいが、これをやると「『悪口を言われた。』と取られる可能性が高いから気をつけろ。」と友人に釘を差された。

 振り返ると、筆者は人生の中でサイエンティストとしか話をしなかった。間違いを指摘して感謝されたことは数多くあるが、逆恨みされたことはまず無い。しかしこの趣味界では、サイエンティストでない人のほうが多い。どうするべきか思案している。 

2022年01月17日

続 面圧を下げる

 表題の記事を書いてから会った何人かの方が、もっと詳しく書くべきだと言う。動軸にはボールベアリングを入れるべきだと信じている人が多いが、そんなものはHOの大きさでは意味がないと言う。それより、正しい軸箱を装備して、適切な潤滑をするほうが、ずっと価値があると力説する。

 畏友U氏はボールエンドミルを使い、僅かな隙間を得るために、少しずらして刃物を通したのだそうだ。いずれにせよ、そのあとで1200番以上のサンドペーパで磨く必要がある。
 筆者はLobaughの軸受を再度洗って、潤滑油を入れ直した。素晴らしい滑りで、ボールベアリングと同等である。

2120 2Kawai HO 21202120 いつも有用な情報を下さる01175氏から、またもや貴重な写真を送って戴いた。
 カワイモデルの特製品の2120だそうだ。軸受には円筒を使っている。バネが掛かる部分にはバネ座も用意されているから、用意周到だ。注油すると非常によく走るとのことである。この種の知見がTMSに紹介してあったとは思えない。

 話は変わって、電車用のいわゆるインサイドギヤの車軸部分は板そのものが軸受である。当然油膜切れである。油はすぐに黒い汁になる。がたがたになるのは早かった。筆者はそこに厚板を貼り付け、孔を開け直した。黒い汁はあまり出なくなったから、その部分は解決したのだが、ジャーナル部の抵抗が大きく、効果は見えなかった。


2022年01月15日

改良済 切断機

shear improved2 この遠藤機械の切断機は、ある方から委託されたものである。錆びて使いにくいものであった。古い製品を、完全に分解し、錆取り、再構築した。

 オリジナルの折れるかもしれないハンドルは捨て、レーザ切り抜きの新ハンドル、新たに硬いS45Cを削ったシャフト鋼板製テイブル、刃物用ステンレスから作った定規19 mm鋼板からレーザで抜いた足を組合わせた。現在考えられる最高の組合せである。

shear improved 4 mmの鋼板製テイブルであるから、材料をクランプで留めやすい。すなわち、定規で直角を合わせた状態で、間違いなく切断できる。1 mmのブラス板を切っても、確実に直角に切れる。切れ味は最高である。また、テイブルの角は、押し込んだ際、手を怪我しないように切り取ってある

 大切に使って下さる方にお譲りした。 

2022年01月13日

続 Youtubeへの投稿 

 博物館には1年に300日ほど出かけて作業している。この半年、毎日このUP835を起動する。Pullmanの急行列車を牽いて、DCCの出力70%で走らせる。そのまま数時間放置する。電流は、登りで0.55 Amps、平坦線で0.25 Amps、下りでは客車の照明だけだから、0.12 Ampsくらいだ。

 毎日、8 km位走るだろう。半年で1000 km以上走ったことになる。今までの分を合わせると2000 kmほど走ったわけだ。ロッドに注油するだけで、特に何もメンテナンスはしていない。撮影直前にヘッドライトが切れた。白熱灯であったが、点灯しなくなった。そろそろ全検でLEDに更新の時期なのだ。このレイアウトはカーヴが左右にほぼ均等にあるので、フランジの片減りは心配しなくて良い。

 硬い鋼製の動輪タイヤ、ステンレス製Low-D車輪、日本製ボールベアリング、正しい設計の3条ウォームギヤのおかげで、全くへたる気配がない。おそらく筆者の死後も、何の変わりもなく走り続けるはずだ。主連棒の掛かるロッドにもボールベアリングが付けられている。先台車の復元もボールベアリングによるから、復元力は顕著である。
 客車はLow-Dと3D print台車である。よく持っている。

 登り坂になると、途端に遅くなり、均衡速度20マイル/時(約35 km/h)でゆっくり登るが、白い勾配標を過ぎると平坦線であるから、俄然速くなる。下りは、とんでもない速度になる。フルスロットルで下ると130 マイル/時(約210 km/h)出るから、いささか怖い。

 脱線したことはないから問題ないだろうが、Tom Harveyの言う通り、旅客列車は安全第一であるから、制限速度を守っている。
  彼が乗務している列車の動画を撮ったので、公開している。白い帽子、白いシャツと赤いバンダナが彼の趣味であった。すすを出さない運転をすれば、問題ないそうだ。

注 ここでのキロ数は模型でのキロ数で、実物であれば10万キロに相当する。

2022年01月11日

Youtubeへの投稿

 しばらく前に投稿した動画のできが良くなく、「あの程度のスリップでは面白くない」という意見を戴いていた。カメラが古く、雑音が入る。画面が時々1コマ飛ぶというのが、かなりあった。スリップが目立たないというのは、走らせた線路が普段何も走らないヤードの線路で、摩擦が大きかったためだと思う。
 よく磨かれている本線上なら、あまりにもスリップが大きくて驚くほどだ。

 しばらく前に地元のクラブで公開した時の動画の評判が良いので公開する。仮設線路ではあったが、よく研磨してあり、滑らかである。クラブ員に運転を依頼して撮影した。尋常でないスリップが見られる。一輌だけの運転であることも分かる。決して後ろに紐がついているわけではない。
 逆回転でのブレーキの撮影をしたつもりだが、写っていない。再度撮り直す必要がある。

 先のKKCの集会では逆回転での制動を披露することが出来たが、肝心の撮影を忘れたのは残念であった。 

2022年01月09日

続々々 またまたイコライジング

 最後に、重心を決めねばならない。重心はイコライザの支えの位置からは求められない。イコライザ系の中の、目に見えない動作点から求められる。これは別の図(等価図)を作図せねばならない。

Equivalence Diagram  軸距離と軸重が決まっているので、それらから、目に見えないシーソウ運動するテコを考え、どこが中心であるかを求める。前群の軸重の総和は 2f である。後群の総和は (5/3)x f であるから、一番上のテコのどこを押さえると、そのような荷重配分ができるかを考えれば良い。

 前群から5:6 の位置を押さえれば、すべての軸に所定の軸重が掛かる。動輪上に掛かる力は全て等しくなるのは言うまでもない。これは、モータを取り付けた後、上廻りを載せた状態での話である。完成した機関車の重心を求めていることを、忘れてはならない。

 簡単な話なのに、これを理解しようとせず、ウェイトを所定の位置に付けない人が居るのには驚く。それでは脱線する。イコライザ付きの機関車にとっては重心位置が命である。正しくウェイトを設置して、重心が定位置にあれば、機関車の質量を測定するだけで、牽引力が求められる。

 難しく考える人は多いが、中学校の理科である。正しい鉄道模型の実現のために、理解したい。  

2022年01月07日

続々 またまたイコライジング

 たまに手つかずの機関車が発掘されると、まずモータ、ギヤを捨てる。次にテンダ台車、先従台車の車輪を取り替えて、ボールベアリング化する。最後に台枠を寝かせて、寸法を写し取り、イコライジングの案を練る。主台枠の加工は、縦フライスがあると実に容易である。動輪軸のギヤ廻りの加工は一番最後である。 

Weight distribution PRR E6s 近代型のPennsylvania鉄道の従台車は、通常型とは異なり、台車枠自体がイコライザとして機能するので、一度やってみたいと思っていた。軸重配分は、当鉄道の基準である先台車軸を動輪軸の1/2、従台車軸を2/3としてイコライザの構成図を描いてみた。従台車軸には軸バネが付いてはいるが、テコで掛かる軸重は同じである。

 従台車の幅を少し詰めて、イコライザ支点を内側に各1 mmずらすことができれば、後はほとんど何もすることがない。バネ吊りは長くなるが、硬いリン青銅板を使えば問題ない。従台車の前端では曲げモーメントが発生するので、硬い材料で作り、銀ハンダで付ければ良いだろう。この従台車はブラスの砂鋳物でよく出来ているが、とても重い。バラしついでに、裏側をフライスで削って肉抜きをしてみたい。 
 イコライザ自身が重過ぎると、せっかく正しく設計しても、意味がなくなるからである。 

 この機関車は、何らかの理由でテンダが正規の製品とは異なるので、市場価値が低かった。しかし、たくさんの実物写真を見ていくと、そういう組合せもあったので、問題にはならない。
(次回の重心位置の決め方に続く)

2022年01月05日

続 またまたイコライジング

 筆者が今まで作ったイコライジングでは、従台車をイコライザ列から排除していた場合が多い。従台車は独立したバネで支えていて、機関車の姿勢には影響を与えないようにしてきた。と言うのは、従台車は動輪群から遠くにあって、それらを結ぶと、その道中があちこちに干渉してまずいことが起こるからであった。模型では従台車の左右に振れる量が大きいのが、その原因である。

 今回の従台車では、そのようなことは考えなくても良い。台車枠自身がイコライザであるから、何も問題が起こらない。従台車の回転中心の近くに、動輪のバネからの引き棒が付けば良く、回転中心は上下に自由に動く

PRR E6s 珍しく実物通りのサスペンションになる。Pennsylvania の博物館で、この機関車の本物を見たことがあり、興味があった。正しく重心を保ち、高速でポイントを通過させるとどのような音を立てるかが、興味深い。
 これは、1軸あたり1000馬力に初めて到達した機関車で、本線を10輛もの客車を牽いて高速走行していた。極めて重厚な機関車である。

2022年01月03日

またまたイコライジング

 この機関車は1964年頃のカツミ製で、祖父江氏の設計製作である。正しい設計がなされていることに、刮目すべきである。

jointneoprene disk モータ軸はある程度の自由度を持って、ギヤボックスの入力軸につながっている。その継手は 2 mm厚のネオプレンゴム板を介した構造で、多少の屈曲を許すようにはなっている。2本のピンの生えた継ぎ手を直角に組合せて、その中間に4つの孔の空いたゴム板を挟んでいる。水道関係のポンプのモータとの継手に同様のものが使われているが、当然、心ずれには対処できない。 

 現代のモータは十分小さいから、火室後部、運転室床板を新製・改造中である。サスペンションは捨てて、作動する板バネを用いたフル・イコライジングにする予定だ。ここにハンダで固めた板バネを用いるべきだと言う人が居るが、全くおかしな論理である。高速で走ると、壊れてしまうだろう。誰が始めたのかは知らないが、極めてまずい設計方針だ。こういうことに誰も異論を挟まないというのも、困ったものだ。欠線部を通る時の音が良いと言うが、その瞬間にハンダが疲労して、壊れていくことを知らないのだ。
 誰か有名人がやったのだろう。そうすると、それが良いことになってしまったのではないか。根本的に間違っている。何のためのイコライザだろう。イコライザは硬いバネを用いて、ひとつあたりの変位を減らしつつ、全体として衝角や窪みを滑らかに乗り越える構造であることを理解すべきである。歴史的な発展過程を考えれば、理解できるはずである。見掛けしか考えない人達は、進歩できないだろう。

 主台枠はブラスの砂鋳物であるから、フライス加工して、板台枠風に削り落とす予定だ。4 mmの板から作り直しても、ほとんど工作時間は変わらないだろうと思う。ただ、手持ちの4 mm板は快削材ではないので、手間が掛かると予想する。

 この従台車は中空の鋳鋼製で、イコライザを兼ねている。この種の設計は珍しい。模型の場合は、中身の詰まったブラスの砂鋳物で重い。すなわち、バネ下質量が大きくなる可能性がある。とは言っても、軸箱は独立していて、バネ可動であるからさほど問題はない。  

2022年01月01日

またまたトルクアーム

 トルクアームの話をしたい。ある友人が、この種の話を年に一回くらい、書くべきだと言う。何回も同じ話をしないと、読者は忘れてしまうのだそうだ。模型雑誌が扱わないので、代わりにやれということなのだ。 作用・反作用は、ニュートン力学の3つの柱の一つである。しかし、これを無視した模型機関車は極めて多い。輸出されたHOのブラス製機関車のうち、作用・反作用を考慮した構造のものは、1%に満たないだろう。

 いつも、古い機関車を改造して、性能をUPする作業をしている。
 この機関車では、キャブの中に無理やりモータを押し込むために、出力軸を通常の逆方向に出している。ギヤボックスはブラス板で作られていて、それにはトルクアームが付いている。

torque arm 写真をよくご覧戴きたい。トルクアームの向きが随分傾いているように見えるが、これは正しい設計である。法線に対して直角である。すなわち接線と平行なのだ。バネ支持ではなく、ネオプレンゴム(変化しにくく、永持ちする硬いゴム板)を挟んだ構造で、軸の位置はほとんど変化しない。ただ、静かに走るようになる。これはMax Grayのアイデアである。


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