2020年11月

2020年11月29日

続 "しょうなんでんしゃ"の記事

 実物車輌がレイルの上に載っている時、車輪、レイルともにわずかに凹む。その量は目には見えない程度だが、確実に凹む。これは弾性変形である。
 D型蒸機機関車の動輪半径は小さく、C型蒸気機関車では大きい。同じ粘着重量でもD型の方が粘着力がある。それは動輪が小さいことによる。半径が小さいもので押すとよく凹むのである。それによって摩擦力は増大する。米国の入替え機には、動輪が極端に小さなものがあったが、それはこの摩擦力が大きいことを狙ったものだったのかもしれない。

 こういう話が模型でも通用するだろうか。ここまで書けばお分かりのように、模型では、軸重による線路の弾性変形などは完全に無視しうる範囲にある。しかし、こういう話をとくとくと語る模型人が居る。それは実物の話なのだが、模型でも起きていると言うのだ。それを信ずる人も、信じがたい話だが、多少は居る。この種のファンタジィから出られない人なのだ。   

「実物をそのまま縮小した模型」というのもよく聞くフレイズだ。本人は正しいと思っているが、車輪の厚みを考えていないから、台車の内側に当たる。昔、吉岡精一氏は、「実物を縮小したら模型になると思っている人は、ソリッドモデルでも作っていなさい。」と言った。その通りなのだが、この現代においてもその呪縛から逃れられない人はかなり居る。
 吉岡氏はさらに続けた。「実物の図面を持って来て、それを元に作るというのは、実は難しいことではないんだよ。頭を使う必要がないからね。走る模型を作るには頭が要る、ということが分からない人は多いんだよ。」

 Low-Dの設計にはかなりの時間を掛けている。初めは2次元の図面だけで判断していたが、後に3Dの画面で覗けるようになった。設計は完全に正しく、最初のロット1万軸は、国内外でたちまち捌けた 。曲線での抵抗は格段に減り、神戸の運転会で好評を得て、国内ではデファクト・スタンダードになった。その後増産され、3万5000軸強が出て行った。アメリカの富豪は一人で4000軸も買った。利益を考えていないから、価格は十分に安いが、受注は製造所の景気に左右されるところが問題だ。

 模型の線路は十分に堅く、凹まない。車輪も凹まないから、うまく設計すれば1点接触に出来る。RP25ではそれができない。  

2020年11月27日

"しょうなんでんしゃ"の記事

 むすこたかなし氏の連載記事が興味深い。HOの様々な車輪を調べてよく転がるものを選び、さらに曲線上の挙動を観察している。そして、フランジが曲線上で当たる実例を詳細に調べている。

 筆者が2014年に15年以上の検証実績を発表したが、それに関する追試の報告は全くなかった。今回が最初の追試であると思われる。Oゲージはさておき、HOでの挙動は実例がなく、興味深い。
 
 勾配を下っている途中の曲線上で止まってしまう実例を、紹介している。中にはそういうのもあるだろう。フランジが団子のような格好の、RP25準拠風のものだ。フランジが当りやすい形をしている。フランジを内側に押すと、しばらく転がって、また止まるというのが、実に面白い。これは、フランジが問題点であることを示している。

 この種の追試は大歓迎だ。追試もしないで批判をする人がかなりあったが、そういう人は、学校で理科の時間に何をしていたのだろう。「観察する」ということが、最も大切なことである。観察した上での考察は価値があるが、先入観のみで語る人が多くいるのには驚いた。しかもそれは自称専門家の方が多い。
 今回はかなり細かく観察している。むすこたかなし氏は全く専門家でないので、より客観性が高まっている。

 軸受を改良してもフランジの改良をしなければ、ほとんど利益がない。また、タイヤは摩擦係数の小さな金属でないと脱線しやすくなる。摩擦係数が小さければ、フランジ近辺の摩擦損失も小さくなる。そういう意味でステンレス素材は望ましいのだが、これについては今まで誰も反応しなかった。

 何度も書くが、めっき製品は外見を良くしているだけで、走行音は小さくない。チャンスがあれば、めっき面を電子顕微鏡で見てみるとよい。どの程度の粗粒面かが分かる。どなたか電子顕微鏡にコネクションのある方は、写真を発表されたい。

 HOは車輪径が小さく、Oに比べるとテコ比で損をしているはずである。テコの原理によって、車輪径と軸の半径比が大きいほど軽く廻せるのだピヴォット軸受がなぜ軽く廻るかというのは、まさにこのテコ比を利用している

 要するに、軸受部を相応に細くできないから、緩い勾配では動き出しにくい。O scaleでは、そのタンジェントが0.0023の勾配で動き始めるものもある。またここでの実験では、まだステンレス車輪を使っていないので、その分の損失もあるだろう。

 実物業界の方で、模型も実物と同じ理屈だとおっしゃる人が居るが、曲率、材質、質量が異なるものでも同じと言い張るのだろうか。それなら証拠を出すべきであろう。模型は実物とは異なるのだ。
 模型は実物を小さくしたものである、というのはファンタジィである。 

 今後の展開を期待する。 

2020年11月25日

続々 Sofue Joint 

 先日紹介した現物以外にかなりの数の実例がある。いずれ写真をお見せしよう。

 また似て非なるものとして、中心ピン付きのものもある。これはトルクを伝えている。
Sofue Joint 2 これが実用化されている例があるのだろうか。かなり探したが見つかっていない。これはDDA40Xなどの4軸台車を全軸駆動する時に使う。以前はこのジョイントを六角のルース・ジョイントでつなぎ、反トルクをバネ材で承けていた。バネ可動時に無理をしないようになっているのだ。
 現在なら、可撓継手(フレクシブル・ジョイント)を使うが、当時は無かった。

Sofue Joint 2 (2)Sofue Joint 2 (1) 中心ピンで反トルクを承け、外周ピンでトルクを伝える。これは先回のと比べると使い方が簡単である。周りの剛性も必要がないが、駆動軸が振り廻されないような支持法が必要である。ここでは、中心の2軸が、台車内で左右に動かないことが必要である。動軸が左右にガタがあってブレる模型を見ることがあるが、そのような車輌には応用できないということである。コンパクトにまとまり、安上がりである。音は聞こえない。
Sofue Joint 2 (3) これは軸が可動であっても無理なく力が伝わる。厳密には等速ではないが、曲がる角度が非常に小さいので等速と見做せ、問題ない。各軸にはボールベアリングが装荷され、3条ウォームで極めて軽く作動することが、うまく行く秘訣である。

 この継手が成功したので、祖父江氏は嬉しそうだった。全く問題なく作動したので、いくつかの輸出モデルにも付けたはずだ。この種の継手は、模型全体が総合的に正しい設計でないと正しく作動しない。採用を考えていらっしゃる方は、その点をご理解戴きたい。

2020年11月23日

続 Sofue Joint 

Sofue Joint 祖父江氏開発の一本ピンのジョイントが話題になっているようだ。このページへ訪問者が異常に多い。検索サイトからいらっしゃる方が、普段の数倍もある。
 brass_solder様からの情報で、TMS516号1989年7月号に載っていることを確認し、写真を拝借している。

 理屈を勘違いしている人もかなりあるようだ。コメントでいろいろなことを書いて来られるが、根本的に間違っているものは掲載していない。撓み継手のピンを減らしただけだというのは、最も多い誤解釈である。

 この継手はトルクを伝えているのではない。この継手を囲む構造体が大切で、それが前後上下左右に動かないように押さえつけている。この点はTavata氏のご指摘の通りであるが、そのコメント掲載後にも誤った解釈がいくつか来ている。

 TMSの新製品紹介にあったC57は、筆者の機関車を完成させた直後に、祖父江氏のアイデアを実現したものである。これ以外にカツミがHOに使用した例があるのだろうか。
 TMSの解釈は、コアレスモータは軸方向の力に耐えられないからだとある。それもあるかもしれないがそれだけではない。僅かな軸ずれを許容できるメリットが大きいのだ。

 そのC57のギヤボックスの中の写真がある。なんと4条ウォームで16歯のヘリカルギヤと組んでいる。そのあとはまたスパーギヤ2段で1:4にし、全体で1:16にしてある。これではだめだ。「互いに素」になっていない。動きが渋いそうだ。これがもし、互いに素で、モリブデン・グリースが使ってあったら、全く違う動きを見せ、評価は大きく変化しているはずだ。ウォームの進み角は非常に大きく、歯型が心配だ。これは角速度が一定にならない可能性がある。

 ところで、このギヤボックスにはトルクアームが付いている。これは明らかに祖父江氏の指導である。不思議なのはこの手法が使ってある模型が極めて少ないことだ。どうしてトルクアームを付けないのだろう。

 4条ウォームの模型が日本にもあったというのは驚きだ。韓国製で4:40というおかしなものがあったらしいことは聞いている。


「歯車 互いに素」を検索すると、拙ブログの記事が最初の方に出て来るそうだ。毎日の読者数のある一定の割合で、この記事を検索する人がいるわけだ。模型の記事なのできっと驚いているだろう。 

2020年11月21日

3-unit GTEL の駆動方式

 第三世代のGTELの駆動はやや難しい。C-Cだから簡単そうであるが、それはA-unitの話である。B-unitは面倒な点がある。

 B-unit の床下には何もない。B-unitは鉄橋のような台枠の上にガスタービンを載せ、床下機器は一切ない。 すなわち、透けて向こうが見える。だから、普通の駆動方式では下にぶら下がってしまって、おかしなことになる。Ajinの初期製品では、床下にギヤタワァの下半分が見えないように、円筒を半分に切った形のもので隠している。オムツを当てているように見えるのだ。 これは極めてまずい。

 それで、その次のロットではB-unitの動力化を諦めてA-unitだけで走るようにしてしまった。これは、牽引力が無くて評判が悪かった。のちに室内で駆動する方式に改めたが、排気ダクトが邪魔であるから、切り詰めて極めて底の浅い排気ダクトになった。ガスタービンは、排気ダクトから中が見えるところが面白いのに、それが塞がれていると気分が悪い。

How to drive 3-unit GTEL この図は筆者の方式である。排気ダクトを温存するために、駆動装置を前後非対称にした。 6軸が連動するから、牽引力は大きい。3軸台車は、バネを利かせて可動軸にすると、3軸目の駆動は工夫が要る。ジョイントが必要である。

 かなり面倒な方式である。何回か作り直している。

2020年11月19日

貨車を仕上げる

 組掛けの貨車を一掃したい。5年前から自宅の整理をして、次から次へと見つかるキット等を組立て、破損したブラス貨車等を修理して来た。それが徐々に終盤に向かいつつある。もうこれ以上は出てこないことを願っている。
 スクラッチ・ビルトの貨車も、ケガキだけで終わっているのがまだ10輌ほどあるが、ケガキを捨てて、レーザで裏から抜けばそれも終わる。とにかく、「作りかけのものは無くしてしまえ」という目標を掲げてやって来た。車輪が不足していたのも、作れなかった一つの言い訳にはなるが、それも解決した。台車も3Dプリントして、高性能のものが沢山できた。 


 並べておいて、共通項目のあるものを同時に仕上げている。レイアウト関係の仕事が、Covid19の影響でやや遅れているので、ヤードの線路上に滞留している未塗装のものを順次塗っている。かなり進んで、未塗装はあと20輌弱だ。未組があと25輌ほどで、それが終われば完了する。この5年で120輌仕上げたことになる。

 貨車は350輌強が線路上にある。もう満杯で、置けない。自宅に持ち帰る必要もあるだろう。よくもこれだけ塗ったものである。車輪の数だけでも1400軸以上だ。Low-Dの再生産が進み、順調に出荷されつつある。今回は旋盤がさらに更新されたようで、これ以上は望むべくもないほど素晴らしい仕上がりである。走行音は極端に静かである。既製品のめっき車輪とは訳が違う。

flatcars この4輌の Flatcar は最近完成したものだ。手前の1輌は古いMGの事故品を再生したものである。隣接車輌へ渡る橋の部品が欠けていたのを作ったが、その部分だけ形が良くなってしまい、反対側も作り直した。Pennsylvania RR の貨車だが、UP塗りとした。

 その向こうのバルクヘッド付きの 3輌は、Quality Craftの木製キットを組んだものである。形になってから、15年ほど置いてあった。側面の仕上げが面倒で放置していたが、一念発起して完成させた。光硬化の接着剤を使ったのが決め手であった。
 黄色のTrailer Trainはマスキングして床板はオイルステイン色だが、手前の2輌は、マスキング無しで塗った。本物は再塗装する時に、そうしているからである。どうせ積荷に当たって傷むところを、マスキングする価値はないからであろう。
 例によってディカールはパリパリで、補強しないと貼れなかった。

2020年11月17日

GTEL用サウンド・デコーダ

 30年以上もこの機関車が完成できなかったのは、ガスタービン用のDCC decorderが発売されていなかったからである。うかつにも調査を怠っていて、非常に高性能のものが数年前から売り出されていることを知らなかった。
 一つのデコーダの中にいくつかの音源があり、第一世代から第三世代まですべてに対応し、なおかつスピーカは2つ(A,Bユニット)というのもある。価格もそれほど高くない。
 まだ買っていないから何とも言えないが、補助ディーゼル・エンジンの音も出すために、スピーカが2つに分かれていれば効果はあるだろう。タービン排気管にスピーカ・ボックスを付けると面白そうだ。

 効能書きを見ると、fire-ballが出る時の音も再現するとある。怪しい話だが愉快だ。

 昔は、1輌の機関車に2台のデコーダを積むのが当鉄道の方針であった。モータ制御電流の許容値が小さかったことと、BEMFが掛かるのでモータから嫌な音がするので避けたのだ。BEMFを最小限にしてもゼロにはならず、それは許しがたかった。Nagasue さんのところから完全直流型を出してもらったので、モータ電流はそれを使い、音の方は独立のデコーダを使っていた。時代が進んだので、今回はサウンドDCCのモータ出力で動かしてみよう。モータ・ドライヴァが焼けたら、音だけ使って、主電流はNagasue さんのを使ってみるつもりだ。大きなコアレスモータを使うと、完全直流型でないとかなり大きな音が出ることがある。

 最近は、デコーダの許容モータ電流は1.5 A 程度になった。機関車はフルスリップでもせいぜい 0.5 A強だから、焼けることはないだろう。


 考えてみればこの10年ほど新しいデコーダを買っていなかった。買い溜めしたものを少しずつ使っていたので、新しいものを調査するのを怠っていたのだ。先日、アメリカで放出品があったので買い占めた。

2020年11月15日

Sofue Joint

Sofue Joint 1 このジョイントには参った。常識では考えられない構造だ。二つの向き合った円板が、たった一本のピンで引っ掛かって廻っている。相手は長溝で、ピンの太さより微妙に幅が広い。Φ1.6のピンに対し、2.0 mmのスリットである。ピンは硬く、スリットは軟らかい。このジョイントで、軸の心ずれ、軸長手方向の伸縮、微妙な傾きを全て吸収する。オレンジ色の矢印はピンである。バランスは取れていないが、軽く半径も小さいから、影響は少ない。
 幾何学的には問題がある。しかし、比較的低トルクで、回転数も知れている。磨り減ったらスリット側を取り替えれば良いのだが、ほとんど減る気配はない。モリブデングリスを少しだけ塗ってある。沢山塗ると飛び散るだろう。

 初めはこんな子供だましの方法ではだめだと思ったが、走らせているうちに、これは無視できない方法であると評価した。筆者の8軸ディーゼル電気機関車の半分ほどに装荷されている。どの機関車も、複数のモータ搭載であっても全部の軸が連動し、同時に回転する。こうしないと牽引力は稼げないが、この理屈に興味を示さない人は多い。


Sofue Joint 2「インチキのように見えるけど、これでもいいんだぁ。軸重が大きいから問題ねえよ。レイルがあるから上下動はねぇってわけだし、台車は左右にゃ動かねえんだから、トルクは伝達されるさ。昔からアイデアはあったんだけどねぇ、付けたのは初めてだよ。」と言った。
 そんな馬鹿な、と言いたくなる設計であるが、問題なく作動する。オルダム継手は摩擦損失が大きいがこれは少ない。面白い設計だ。これは3条ウォーム、ボールベアリング装荷だからこそ通用する工夫で、ドライヴそのものの損失が大きいと振り廻されて、振動の元になってしまうはずだ。駆動軸でトルクが小さいから問題が目立たなくなるということもあろう。
 また、Oスケールの大きさだからこそ、うまく行くのだと思う。HOの大きさでは、径が小さい割に変位が大きく、難しいだろう。

 角速度変化はないとは言えないが、全く検知できない。重負荷でも音は聞こえないのだ。その後、かなりの文献を調査したが、これに関するものはまだ見付けられない。祖父江氏のオリジナルなのだろうか。1987年に取り付けられている。
 先例を見付けられた方は、お知らせ願いたい。

 この頃は祖父江氏がチェイン・ドライヴで様々な試行をしていた頃だ。ありとあらゆるところに使ってその音と耐久性を調べていた。

2020年11月13日

GTELの駆動方式

GTEL drive mechanism この種スパン・ボルスタの付いた機関車の駆動方式には悩む。
 実はこの内の1輌は土屋氏のものであって、祖父江氏に依頼してドライヴを取り替えた。その時は、韓国製のやり方の一部を踏襲した。中央に近い一軸の動力化を捨てて、長いドライヴ・シャフトを使う方法である。この方法はドライヴ・シャフトの曲がりが少なく音がしない。もちろん、赤いアームはギヤボックスの反トルク承けである。

 これでも良いのだが、
「ほんとは全軸駆動にしたかったんだよねぇ。」
と祖父江氏は言った。上の図が、その6/8駆動のものである。反トルク承けは大切な構成部品なのだが、これを付けていない模型は多い。これが無ければ走らないはずなのだが、無理やり走らせているのが大半だ。既製品にも付いていないものが多い。

 筆者のも「やってみたい 。」と言うので送ったら、短いドライヴ・シャフトを付けて帰ってきたのは意外だった。当然、ギヤ・タワァ(チェイン・タワァと言うべきか)を第二、第三台車に付けての8軸駆動だと予想していた。なんと、短いユニヴァーサル・ジョイントを床下に2つ付けて帰ってきたのだ。(下の図)
「これでも行けるんだぁ。土屋さんのも、こうすりゃあ良かったかもしれねえな。」と言った。確かに半径2700 mmでは、偏倚量は少ないから問題はないし、牽引力は増大する。
 この時チェインを1本にして前後方向の長さを節約したので、ユニヴァーサル・ジョイントが使えるようになった。当初はチェインの強度が足らないと思ったのだが、1つで十分な強度があった。モータは細くて強力なものが高価だったので、2個付けた。

 二つの2軸台車を結ぶジョイントには、祖父江氏の発案品が搭載されている。

 先回の写真で手前のは筆者のLPG専焼実験機である。LA-SL線で実験が行われた。それは短期間で終わって通常型に戻されたので、実物を見た人は極めて少ない。これしかなかったので入手したが、この模型を走らせるのはやや違和感がある。


2020年11月11日

GTELを塗る

turbine decal set (1)turbine decal set (2) タービンの記事を書いているうちに、塗装がしたくなった。もう30年以上も放置していた韓国製で、これらは第一世代のGTELである。Ajinの製品であるが、上廻りの出来は素晴らしく良い。ハンダ付けの修整は、ホーンの向きが間違っていた以外、する必要はなかった。下廻り台枠、ドライヴなどは、新製してある。
 Ajinの1985年以前の製品のひどさは語り継がれている。板そのものが再生ブラスであった。ハンダ付けはデタラメで、ぽろぽろと壊れていく。これは筆者が助言を始めたころの製品で、かなりの改善がなされたものである。

 ディカールも古くなってしまい、水に入れると粉みじんになるものもある。再生させる塗料を塗って、ディカールを丈夫にしなければならない。

1st generation GTEL (1) この種の赤線の入ったものは、赤を最初に塗ってマスキングするという手順を採る人が多いが、筆者は赤をディカールで表現するので黄色を先に塗る。
 赤のストライプのディカールは黄色の塗膜上に貼らねばならない。下の色が明るいと赤が鮮やかになる。塗り分け線の位置決めは大切である。

 磨き砂で錆を落とすが、完全には取らない。ザラザラが無くなるようにするだけである。ミッチャクロンを塗って生乾きの時に、艶のある黄色を塗る。2日放置して完全に固める。2日目は直射日光に当てて、温度を上げると固くなる。

1st generation GTEL (2) 次はグレイを塗るためのマスキングが必要だ。大量のテープが必要である。一部は広告の紙を切った短冊を使う。塗分け線をどこにするかは資料をよく見て決定する。キャブの屋根あたりの塗り分けは、機種によって異なり、かなり込み入っている。マスキングだけで数時間を要した。

1st generation GTEL (3) 同時に、反射防止の艶消し緑も塗ってしまう。塗ったら、生乾きの時に、注意してマスキングを外す。こうしてまた2日放置すると、ディカールを貼るところまで行ける。

2020年11月09日

続々々々々々々 ガスタービン機関車の運転 

 タービンの止め方についての説明が長い。

 スロットルをアイドリングに戻し、セレクタをOffにする。タービン・スタート・ボタンを押すと、タービン・コントローラ作動燈が点く。これは、ガスタービンに行く燃料管の中の重油をディーゼル・オイルに置換えるのを示す。タービンは回転が遅くなり、運転台のCooldown(徐冷)燈が点く。その間、機関車をゆっくり動かして良い(補助のディーゼルエンジンで動かす)
 ディーゼル・オイル、スタータ・オイル、補助燃料などの言い方をしているが、すべて同じ油を意味している。  

 緊急停止の記事もある。
 Emergency Shutdown Switchは、機関士席に保護カヴァ付きで一つ、タービン操作盤の左に保護カヴァを被せて一つ、もう一つはタービンの速度調節機の下にある。これを操作すると、燃料パイプを空にせずに止めることになる。(起動時に重油が出る)
 緊急停止装置を作動させてすぐ再起動する時は、cooldownは起こらない。
 タービンを冷やしている最中に作動させたときは、タービンはそのまま廻り続けて、止まる。この時は通常時のようなcooldown crankingではない。 

 緊急停止スウィッチは、タービンを起動する前にすべて元に戻さねばならない。


 通常時の止め方は単純である。
 タービン停止ボタンを押すと、ディーゼルエンジンは廻っているが、タービンは徐冷モードに入る。ブレーキを確認し、所定の手順に従って機関車から降りる。

 テンダの重油はタービンが作動している時に加熱される。
 -50°F(-45℃)以下の極端に寒い時は、凍結防止スウィッチを入れる。
 
これはディーゼルエンジンの発電機出力で加熱するものである。
    重油ヒータはタンク全体を加熱するものと、取出し口の辺りを加熱するものと二系統あるようだ。そうでなければすぐには出発できそうもない。テンダと機関車を結ぶパイプも、電熱線が通っているのだろう。 

2020年11月07日

続々々々々々 ガスタービン機関車の運転 

 ガスタービンの中で燃料が順調に燃えているかどうかを調べる装置(flame detector)がある。その原理は、炎の中はプラズマ状態で電気が通るので、通電を調べているものと思われる。

 この装置はガスタービンには二つ付いている。この片方が故障すると運転台パネルに警報ランプが点く。(起動時、あるいは停止時に 2,3秒点くのは問題ない。)
 故障として報告せよ。もし放置すると、停止してしまうこともありうるし、起動時に点火できなくなる。

 ガスタービンを機関車に積むということはかなり大変なことであることが分かる。ガスタービンは、かなりデリケートなエンジンである。だからこそGEは、下手に触られないように、シーケンスによる起動、停止を採り入れたのだろう。故障率は低くなかったようである。dead engine(動かなくなった機関車)を回送する手順が、マニュアルに細かく書いてある。
 重連弁を閉じて、ブレーキハンドルを2本とも外す。dead engine cockを開く。砂撒き管、信号管、ベル、汽笛、ワイパへの給気弁を閉じる。この弁は先頭部にある。制御盤の二つのシールを破り、弁を二つとも閉じる。主空気ダメの排水をし、圧を抜く。次いでB-ユニットも同じ操作をする。注意:B-ユニットを先に操作するとAから空気が送られてしまう。   

 
その他、B-ユニットだけを切り離して回送する時やテンダだけの場合も書いてあるが割愛する。



 水没した線路を走るときは、冠水4インチ(約10cm)までとある。ブロワが廻っていれば浸水する可能性はない。
 トンネルを抜けるときはガスタービンの回転を最高に上げよ、とも書いてある。酸欠になる前に抜けてしまえということなのだろうか。
 クロッシングを渡るときはスロットルを10ノッチ以下にしておく、とある。30マイル/時以下の時はこの限りにあらずともある。レイルの欠損部での摩擦不足でスリップすることへの懸念だろう。意外に細かく注意がなされている。

 シャイアンとグリーンリヴァの機関区には、GEから派遣された技術者が常駐して、メンテナンスに当たっていたそうだ。燃料費が安くても、メンテナンス・コストはかなり高かったと思われる。燃料が高くなれば、直ちに廃車になったのは当然である。 それと相前後して、新世代の高性能ディーゼル電気機関車群が登場したのも大きなファクタだ。


2020年11月05日

続々々々々 ガスタービン機関車の運転 

 潤滑についてはかなりの説明がある。

 タービンの軸の潤滑油ポンプは、タービンが止まるまで動かしていなければならない。先にディーゼルエンジンが止まると、焼き付いてしまう。
 また、タービンを起動するときディーゼルエンジンが何かの理由で止まると、タービンの潤滑油圧力もなくなるので、タービンの起動は出来なくなる。タービン軸潤滑油ポンプが異常を起こすと、運転台パネルに赤ランプが点くと同時にベルが鳴る。タービンをshutdownする手順が許す限り、速やかに停止させよ。これは、油圧が35 psi(約2.4気圧)以下であると、検知される。  

 タービン潤滑油の oil cooler からの戻り水が熱くなり過ぎると、ディーゼルエンジンの冷却水も熱くなる。タービンの異常を疑え。列車を止め、停止手順に従ってタービンを停止させる。

 また、燃料詰まりについても書いてある。
 燃圧計の読みが小さくなった時はフィルタが詰まっている可能性が高い。タービンを止め、Bユニットの後方にある燃料フィルタを切り替える。フィルタは2つあるので未使用の方を選択する。

 これについては、Tom Harveyから何回か聞かされた。それはタービン排気管の下にあって、かなり狭くて暑いのだそうだ。 


2020年11月03日

続々々々 ガスタービン機関車の運転 

 ディーゼル燃料(軽油)についての注意が書いてある。

A-B unit Aユニットの床下タンクには、燃料計が5つ付いている。4つは燃料タンクの四隅に、1つはFireman(機関助士)の前にあるメータである。補助エンジンの燃料残量を示す。2500ガロンから500ガロン(約9.5 kLから1.9 kL)の示度であれば、補助エンジンとタービン始動用の両方に使うことができる。500ガロン以下は二つに分かれている。360ガロン(約1.4 kL) はディーゼル・エンジン用に、140ガロン(約530 L) はタービンの始動用に確保されている。燃料タンクの後側に付いている燃料計は、タービンの始動用燃料の残量を示している。

Dip Gage 主燃料(重油)の燃料は、テンダの天井面にある点検棒を抜いて確かめる。棒には燃料残量が記されている。




 第三世代のタービン電気機関車は、1時間に800ガロン(約3 kL)の重油を燃やすそうである。最大出力は 12 mph(約19 km/時)の時に得られる。そうすると、概算で 1 Lあたり 6 m走ることになる。 

2020年11月01日

続々々 ガスタービン機関車の運転 

 燃料に関する注意もある。

tender connection 始動時にはディーゼル油(軽油)を使うが、後に重油に切り替わることになっている。しかしテンダの重油の温度が低すぎる場合は、軽油のままで燃焼を続ける。その時は出来る限り機関車を動かすべきではない。セレクタ・ハンドルをM2にして、主燃料(重油のこと)が十分に加熱されて自動的に切り替わるのを待つ。主燃料の燃圧計を注視せよ。そしてスロットルをアイドリングに戻せ。
 切り替わらない時は、テンダからの燃料パイプを調べ、ヴァルヴが開いているか確認せよ。


temperature gage 第二世代の重油の加熱は水蒸気を吹き込む方式だったが、第三世代のテンダの加熱は電熱である。テンダへの配管以外に電線が渡っているが、テンダの油温は現場に行って見なければならない。テンダの両方の妻面下方にある丸い装置である。当時はテレメータが困難な時代だったのだ。温度は110℉から200℉(43℃から93℃)であれば良い。「触われるが、長く触わっていられないような温度であれば良いのだ。」と、Tomは言っていた。 

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