2020年09月

2020年09月30日

GTEL

 GTELとはGas Turbine Electric Locomotiveである。ヂーテルと発音する。アメリカ中探しても、UP以外の大量採用例はない。 

 どうしてGTELが登場したのかという理由は、燃料の安さということに行きつく。ガスタービンというものは連続燃焼であり、燃えるものなら何でもエネルギィに変えることができる。天然ガスだろうが、石炭ガスだろうが、重油だろうが構わない。ただし効率はそれほど高くないから、燃料が安いということが条件となる。
 戦後のアメリカでは低品質の重油がとても安かった。Bunker Cというグレードのものが極端に安かったらしい。これは石油を蒸留して順にガソリン、灯油、軽油、軽重油を取った残りで、常温では流動しにくいが、温度を上げれば流動するというものであった。1950年頃は原油の15%ほどがこの残渣油であり、船で燃やす以外の用途があまり無かった。その中でも最低級のものは極めて安価だったらしい。
 これを使えれば、大きな経費節減となる。一方、当時のディーゼル・エンジンはそれほど高性能ではなく、また故障も多かった。そういう時代に、次世代のエンジンとしてガスタービンは華々しく登場したのだ。
 もう一つのファクタとして、UP本線の沿線には海がないことである。潮風に含まれているナトリウムイオンは、重油の中のバナジウムと結合し、タービンブレード上にガラス状のバナジン酸ナトリウムとなって析出する。UPでは、その種の心配がなかったからだ。ガスタービン動力の船はその問題をクリアするのに、苦労している。

 その後、石油化学が進歩すると同時に、プラスティックが大量消費される時代が来た。プラスティックの原料はエチレンである。エチレンは、その重油を高温で触媒に接触させて分解する(steam cracking)と、容易に得られるようになった。するとタダ同然だった重油が価値を持ち始め、燃料費を節約することができなくなってしまった。
 また、安い重油を燃やすと燃え残りもあり、それがタービンの羽根に付着することもあって、意外と保守費も掛かるものであった。

 燃料費の高騰につれディーゼルエンジンの価値が増し、高性能エンジンの開発と高効率で保守不要のオルタネータ、シリコン整流器の採用により、1960年代末にはGTELの時代は終わった。


 筆者はその機関士であったTom Harvey に、運転状況等を詳しくインタヴュウしているので、紹介していこう。ガスタービン機関車の運転に関する記事は世界中見ても稀なことであるから、徐々に進めていきたい。

8500HP GTEL まず、運転マニュアルを見てみよう。これは意外にページ数が少ない。言い換えると、運転に際してはあまり難しいことがなかったようだ。


2020年09月28日

車輪を抜く

custommade 動輪などを抜く台は、錆びやすいので油を塗ってポリ袋に入れてある。それを見て、欲しいという人が居たので、鉄工所に注文して作ってもらった。右は既存のもので、チャンネル材を平板に伏せた形である。左が今回作ったものである。上の板を薄くしている。さすがはプロの熔接で完璧である。

custommade2 寸法は似ているが、「軸箱フランジを大きくし、表の板を薄くしてほしい」と言うので、t4.5の板の裏側を一部えぐり取った。この写真では、左だけを裏返している。
 面板が比較的薄い板であるので硬い材料にしたかったが、工場で手持ちがなかったそうで、SS(普通鋼)にした。撓むといけないので、僅かではあるが支えを入れた。この支えは効く。単に側面だけを熔接したのでは凹んでしまうのだ。

 この種の補助具を用意せずに車輪を外したりする人が多いが、フレの元である。例の”コンコン改軌”などは決して褒められたものではない。HO用でもある程度まとまれば作れる。希望があれば、皆さんで相談して寸法を統一されると良い。クラブなどで数をまとめて戴くと有難い。

 プレスをお持ちの方は少ない。完成品を買う金があったらプレスを買うべきである。一度使えば、他の方法など考えられなくなる。便利なものである。


2020年09月26日

Marnold Throttle

 しばらく前に話題になったMarnoldの広告を見てみよう。

Marnopower 1954年1月号のModel Railroaderの広告である。この時期には頻繁に広告を出していて、いろいろなタイプがある。同時期の他社のパワーパックは貧弱で見劣りがする。もちろん外観の話である。このレヴァ方式のレオスタットは、かなり訴求力があったようだ。
 握って動かすと、ざらざらした感触であまり高級感はないが、他社のツマミを廻す方式に比べるとなかなか良い。


Marnold PowerMarnoldcabinetMarnostat こちらはWalthersのカタログである。様々なコンポ−ネントを組合せて、好きな形に出来る。配線は自分でやることになっているが、誰でもできたわけでもないだろう。おそらく、組立・配線も受注していたはずだ。あるいはその種の仕事を請け負う人もあちこちに居ただろう。このページのパネルの絵を切り抜いてどんなパネルにするか決めると書いてあるのだ。当時は既にゼロックスのコピィが普及していたので、本当に切り抜いた人は少ないと思う。

 1970年代にはいくつかのレイアウトでこれを見たが、そのうちに急速に淘汰されてしまった。既に90年代には、筆者は見たことがない。動力のモータが低電流になると、レオスタットでは制御不能になってしまったからだろう。その後DCC が台頭して来ると、誰もがその存在を忘れてしまった。今ではその形以外、存在価値はなくなった。
 しかし、このレヴァ式のスロットルはDCCの時代になってもやりたい人がいる。ディーゼル機関車のスロットルの形に似せてあるからだ。  

transistor throttle トランジスタ・スロットルも発売していたようだが、価格は書いていない。見たところ、非常に簡単な回路のようだ。ブレーキの段数は少なく、無段階ではない。

2020年09月24日

修理・修復・復元・改修

 最近戴いたコメントについて考えた。

 伊藤 剛氏の長浦軌道は新しいメカニズム・電気方式で改修されるだろうという予測を書いたところ、そういうのは修復ではないのではないか、というご意見であった。

 これについては以前、亡くなられた吉岡利隆氏とは、ある程度の合意ができていた。氏は4人が働く線路工夫のカラクリを大変高く評価して、是非とも修復を任せてほしいと名乗りを上げられた。伊藤 剛氏が存命中のことで、その内容については、剛氏自身がそれしかないと認めたものであった。

 剛氏の作られたメカニズムとリレー、フォト・トランジスタ、タイマを組合せたものは、再現性が悪く、剛氏自身の調整後でも、3時間ほどしかまともには動かなかった。あちこち調整しながら見せてくれたが、やはり不具合が多かった。
 吉岡氏がお得意の、”シーケンスで動かし、メカ部分は半分程度は作り直す”ということで、”確実に20年間は間違いなく作動するものを作ろう”ということになった。その打ち合わせの最中に、吉岡氏が急死された。剛氏は電話を掛けてきて、「吉岡さん死んでしまいましたねぇ。もうこれで動かす方法が無くなってしまいましたよ。」とつぶやいた。

 剛氏のメカニズムの真髄であるイコライザを使用したツルハシ持ち上げ機構とその振り下ろしタイミング装置はオリジナルを使用し、全体を制御するのは、マイコン化することになっていた。形状記憶合金で出来たレイルを通電で元に戻すというアイデアも、研究課題に入れることにしていた。


 それから7年、剛氏の長浦軌道が見つかり、復元作業が始まった。
 当事者のNG氏からは、「あくまでも剛氏のオリジナルを後世に伝えるべきであると考えます。剛氏の作品を勝手に改造するのは”冒涜”と考えています。」と連絡があった。この点においては、コメントを戴いた方の懸念は払拭されたことになるが、調子よく動かそうと思うと、困難な点がいくつか出て来ると思う。


 話は変わって、筆者のコレクションは自作を除き、様々な人の作品である。大半はカツミ製(祖父江製)であったり、アメリカ人の作ったものである。そのすべての下廻りは新製に近い程度まで作り替えられている。祖父江氏自身が改造したものもあるが、筆者自身が作ったものもある。筆者は機能を第一に考えるからである。まともに走りもしないものを鉄道模型と言うことはできない。実物と同程度の走りを見せるように作り替えることに対しては、コレクション蒐集の何倍かの金を掛けている。これはスクラッチ・ビルディングの材料として完成品を利用しただけであるという解釈もできる。自前のメカニズムを搭載するための機材を購入していると考えるのである。そうなると見かけは似ているが、中身は完全な別物である。
 こういう楽しみ方をする人は少ない。コレクタの人たちは、買ったままで、箱の中の詰め物まで元のままに保存するそうだ。筆者のようなやり方は「とんでもない話だ」と攻撃を受けているくらいである。

2020年09月22日

続々 信号機設置工事

occupancy detection Occupancy detection 車輛検知には赤外光を用いる。 sender と receiver が要る。伊藤剛方式で、連結器高さで斜めに光を送り、車輛で遮られるのを検知する。
 設計者は、蛍光灯のちらつきなどには一切影響を受けないようにして下さったそうなので、簡単なひさし状のものを飾りに付けただけである。写真は、どんな雰囲気か知るために、置いてみたところである。

 ブラス部品をハンダ付けし、電子部品を付ける。絶縁には十分気を付ける。脱線事故があると、曲がったり折れたりするだろう。今のところ、建設予定地では一度も脱線していないから、事故でセンサをなぎ倒すことは無いと信じている。しかし建築限界の外とは言え、気になるところだ。 
 あまり丈夫に作ると、万一ぶつかった時に二次被害が起きるといけないから、支柱はなるべく薄い材料で作り、曲がり易くした。センダには2本、レシーヴァには4本の線がある。それを信号機制御モヂュールにつなぐ。

 モヂュールは普段は見えないようにしてあるが、点検時には引き出せるように蝶番で留める。
 信号機の3つのLEDは̟、+コモンで4本がつながる。この線は目立つのでなるべく細い線を使って、信号橋の鉄骨に沿わせる。黄色LEDは、amber を採用した。これは昔から気になっていることで、電球の時代から決して黄色ではなかった。いくつかの天然色写真を見ても感じることである。鉄道模型では黄色が多く、違和感を感じる。 

 すべての段取りができた状態で、設計者に監督をお願いして配線工事をするつもりだ。この種の作業は一人ではできない。

2020年09月20日

続 信号機設置工事

 LEDは各種を比較して、色の良いものを採用した。

Green LED 最近は道路の信号機用の青緑色のLEDが主流で、純緑で良いものがなかなか買えなかった。どのような色かを表すために写真を撮ろうとしたが、発光体の撮影は難しい。色バランスの問題があり、絞りだけでは調整ができない。手前に電球色を並べると比較的差のある写真が撮れたが、良い写真ではない。右側が純緑、左側が青緑色の道路信号機用である。その間に光っているかどうかも分からない小さなLEDがある。これは、25年前の緑色LEDである。現在のものとは輝度が3桁も違う。

 日本の道路用の信号機の緑はかなり青い。赤緑色盲の人でも感じやすいという利点があるという。戦後すぐに導入された信号機はアメリカの仕様だったそうで、緑色だった。ところが日本の法律では青信号と書いてあったので問題になり、少し青味を持たせたらしい。
 アメリカの鉄道信号は純緑である。その色を再現するLEDが欲しかったので、波長 520 nmを入手した。
 最近はアメリカでもLED信号機の普及により、道路用信号機が青緑色になってしまった。この色はturquoise(トルコ石)と呼ばれる。


 信号機の橙色は、英語では amber(琥珀色) というらしい。信号機の本にそう書いてある。米語では黄色と言っていた。日本の道路信号機は黄色だったが、最近はやや琥珀色のものが多い。自動車のターンシグナルの色も最近やや赤みが増してきて、琥珀色に近づいたように感じる。輸入車の色と国産車の色に違いがあることに気が付かれる方も多いと思う。ヨーロッパでは確実に琥珀色である。ヨーロッパでは条約を結んでいるので共通だが、アメリカと日本はその条約を批准していないと識者が教えてくれた。

 昔はレンズの色で決まっていたが、LEDの時代になると、世界中が共通の発光ディヴァイスを使うようになってきたのかもしれない。それは条約よりも効き目のあることである。  

追記 東急電鉄の緑色信号機は純緑(520 nm)であった。会社によって違うのである。11/5/20 

2020年09月18日

信号機設置工事

 工程表によれば3月に完成しているはずであったが、Covid19で助っ人が誰も来てくれなくなり、信号機の工事は延期されていた。
 信号機の回路そのものは3年も前に完成していたが、信号橋その他のハードウェアの準備が遅れた。

 とりあえず電線だけ全体に張り巡らしたが、この種の工事は一人でやると大変である。一区間が22 mあり、レイアウトの骨組みの中を通さねばならない。8心の電線がいるので、大量に余っていたLAN cableを使った。100 mほど消費した。

sender + receiver 信号機の設置部分には接続用の端子台が必要なので、バッタ屋で見つけた端子を長ネジを作って組み、台になる合板にアルミのアングルで取り付けた。ネジはM4で、SS(普通鋼)の棒材で作り、さび止めを施した。ユルミ止めはロックタイトである。久しぶりにSSにネジを切ったが、大変である。こんなにも粘る材料だったかと驚いた。さりとて快削鋼を使うと、ネジを締めた途端に切れた経験があるから避けた。

 この種の下準備に数日掛かった。電線通しだけは助っ人のあるときにやるべきであった。

2020年09月16日

閑林氏のこと

10004 閑林憲一氏はクラブで親しくお話をする機会が多かった方だ。話題が走行性能のことになると、いつもかなりヒートアップした。議論はなかなか終わらず、次の日閑林氏の会社を訪ね、現物を見せながらその続きをしたことがある。

 閑林氏は名古屋の中心部にビルを構えて会社を経営されていた方だ。様々なアイデアを出して特許をいくつか得ていたが、その特許があまり売れなかったと聞かせてくれた。筆者が面白いと思ったのは、男性用小便器に尿を検出する装置を付け、水を自動で流す装置(オーケークリーン 1965年特許取得)である。今では光を使ったセンサを用いるのが常識であるが、55年前は水の電気抵抗変化で検知したのだそうだ。

 会社の倉庫に水道の鉛管クズが沢山あり、よく分けて戴いた。社長室でお茶を戴きながら模型談義をしているのは少し気が退けたが、よく寄らせてもらった。

 HOながらイコライザ付きサスペンションには工夫が凝らされ、バネが確実に利いていた。電気機関車やディーゼル機関車の仮想心皿方式の台車を、リンクで動かすメカニズムを実物通りに作られ、ポイントをくねくねと渡って行くのを見せてご満悦であった。いくつかの作品はTMSにも載った。

100031000210001 何度か御自宅に招かれ、レイアウトを見せて戴いた。いつも嬉しそうに走らせていらした。奥様も御一緒に運転を手伝われることも多かった。

 この写真は社長を退かれ、引退生活に入られた頃である。ダブルスリップとシザーズ・クロッシングで脱線しないように調節するのが非常に難しかったそうで、そこを全ての車輛が動揺せずに通過するのがご自慢であった。
 2000年頃の撮影であると思う。プリントからの再撮影で、低画質であるのはお詫びしたい。

 筆者の3条ウォームには驚き、HOでもやりたいものだとおっしゃっていた。自宅に走らせるためのインフラを持っている人は、走行性能向上には熱心になるのは当然である。筆者の自宅レイアウトに来訪される予定であったが、体調を崩されてそれが叶わなかったのは残念である。

2020年09月14日

続 伊藤 剛氏の長浦軌道

nagaura kido3 機関車は4輪ともゴムタイヤである。そうしないと勾配を押し上げることができない。集電はレイルを直接擦るシュウによる。ロータリィ・ダンパの丸い枠は、鉄の色で実感的である。その材料は空き缶の縁である可能性が高い。真円度と色の両方を取ったのであろう。
 既に52年前の作品であり、駆動、電気方式等はかなり旧式である。NG氏は意欲満々であるから、最新式の制御方式、駆動方式になると思う。ひょっとすると、DCCになるかもしれない。

 貨車はピヴォット軸受で、摩擦がかなり少ない。斜面を転がり落ちて行く時の速度はかなり大きく、先端のところで飛び出すのではないかと思ったのは、納得できる。

 これは1/45の16.5 mmゲージである。このサイズでは斜面での慣性は大したことがなく、加速度も大きいので、動きはおもちゃ的である。小さい模型では何らかの方策で慣性増大を図る必要があるが、これについては難しそうだ。積み荷を降ろすわけだから、トロッコの中は空になっていないとまずいのだ。車軸を太くしてみても角速度が小さいので効果は薄い。

 これを2倍の大きさで作って、Oゲージの線路にすると、かなり実感的な動きになるだろうと思う。45 mmゲージの線路で762 mmの線路なら1/17のサイズとなる。610 mmなら1/13.6、508 mmなら1/11.3だ。大きくなれば、動きはかなりリアルになる。
 線路と車輪はいくらでもあるので、暇になったらやってみたいものだ。

2020年09月12日

伊藤 剛氏の長浦軌道

nagaura kido1 この模型のことがクラブで話題になってから久しい。会員のNG氏が高校生だった1968年、クラブの例会で剛氏が持って来て披露したそうだ。その後、いろいろな場で語り合われたのだが、現物がなかなか出てこなかった。しばらく前筆者が剛氏宅を訪ねて見せてもらったのが、ほとんど唯一のチャンスであった。

 トロッコが解放され、重力に従って坂を下り降りる時、nagaura kido2あまりにも速く、飛び出すのではないかと、手を出して受けようとした、という話を聞いた。この写真は、切り離されたトロッコが滑って行き、逆戻りしてスプリングポイントで 下に降りていく部分である。


 この公開運転はおそらく一度限りで、それを見たことがある人は大半が他界してしまった。NG氏は、その存命する唯一の目撃者かも知れない。 この長浦軌道が走るところを見たいという希望を受け、お預かりしている箱を順次開けて確認してきたが、3年ほど探しても見つからなかった。NG氏はその修復を任せてくれと申し出ていたので、見つからない旨伝えると、落胆していた。
 先月、それを思わぬところで発見した。ガラス棚の陳列品の下に、台として置いてあった箱を開けると出て来たのだ。もっと大きな箱だと思い込んでいたが、意外に小さな箱で見落としていた。

 レイルはブラス製であった。木橋は合成樹脂のニスを厚く塗ってあり、ガタはない。ポイントは電動とスプリング式の二つである。


2020年09月10日

Solvaset の有効成分

Solvaset 最近、栗生氏の掲示板でディカールの柔軟剤ソルヴァセットの成分について、アメリカの掲示板の投稿を再録していた。



 ソルヴァセットの成分が何なのかは、永らく謎であった。筆者のハナマトグラフィでは、グリコールエーテルではなかろうか程度の認識であった。水に溶ける有機物はそれほど多くはないので、そのあたりだろうと思った。さりとてそれを分析するほどのこともなく、買った方が安いのでそれで十分満足していた。ソルヴァセットの溶解力はかなり強く、多く付けるとディカールの膜が溶けるから注意せねばならない。家庭用強力洗剤にもアルコールエーテルが含まれている。

Solvaset しばらく前にアメリカで買って来た瓶のラベルに、
methoxy-2-propanol, methoxy-1-propanol
と表示があったので、当たらずとも遠からずであった。(正確には、前者は1-methoxy-2-propanolと書くべきであるが、間違うことも無いだろう。)

 昨年思い切って分析にかけてみたところ、methoxy-2-propanolが99%以上であった。この形の分子ができやすいし、また安定である。1の方は痕跡程度であった。成分表示に書く必要もないほどだ。
 2の方は光学異性体の混合物(*は不斉炭素原子) になっているはずだが、そんなことは、この際、どうでも良い。 500 gが5000円ほどで買えるが、あまりにも多すぎる。市販品の濃度なら100人で分けても余る。その手間を考えれば、市販の瓶入りを買うべきだ。


butyl cellosolve ブチルセロソルヴという話も出ている。これも水といかなる比率でも混じり合う。これにもディカール柔軟剤の機能はあるだろうが、乾燥がかなり遅い。このブチル基は直鎖だが、これが枝分かれしているとさらに溶解力が強くなるはずだ。これらはラッカ・シンナに少量含まれていることがある。
 これを多めに含ませたものが、リターダ・シンナである。ブチルセロソルヴを混ぜると蒸発速度が小さくなるので、気化熱で塗膜が白くなるのを防ぐことができる。湿気が多い季節には使うべきラッカ・シンナである。
 セロソルヴの意味はニトロセルロース系のラッカーを溶かすことができるものという意味である。ソルヴァセットを付け過ぎると塗装が溶けるのは当然である。心配な人は水で薄めると安心だ。


2020年09月08日

続々 模型を作ると…

 模型と実物の違いは何度も扱ってきたが、果たしてどの程度の読者がそれについて理解しているか、また興味を示すかは不明である。しかし、レイアウト上を列車を牽いて走らせている人は、すぐに理解し、改善策があればすぐ実行に移すだろう。
 故人となられたが、閑林憲一氏はその素晴らしい実例であった。すべての車輌を sprung で equalized とし、自宅レイアウトでポイントをくねくねと渡らせてご満悦であった。走行性能を上げることは、外観をいじくり回すことよりはるかに大切である、ということをクラブ員にいつも語っていらした方であった。

 さて、読者の方から長文のメイルを戴いた。少し短くして掲載する許可を得たので転載する。理論と現実のギャップについて書かれている。 

 16番以下のモデルを中心に遊んでいる人には、丁寧に説明されても大スケールや実物での素材強度や挙動を想像するのは難しいのではと思います。

 TMSは、ほぼ16番模型趣味工作専門誌としてやってきて、一般実用機械工学的な知識情報からのアプローチは、編集部としても読者の要求からもあまり顧みられなかったということがあるのかもしれません。

 私の場合もイコライザやバネには興味を持っていろいろと試してみたりもしましたが、絶対的に質量が小さなHOスケール(16.5mm、9mm gauge)Nスケールでは、実用上殆ど意味が無いということを感じて、私のスクラッチの動力は、欧州型模型製品のように縦軸方向に少しガタのある固定軸方式に決めています。もちろん集電のためにできる限りウェイトは積みますが、挙動に影響を与えるような質量では全くありません。影響が出るようなスピードで走らせることもありませんから。

 16番の世界で精巧なイコライザーを組み込んだ作品を作られている方々はたくさんおられますが、それは特殊な世界のように感じます。
 最近は、小さなスケールでもフライホイールを採用する製品が増えてきたことで、質量、慣性に関心を持つ人は増えてきているのではと思いますが、それでも車輌自体の走行性や挙動と結びつける人はまだまだ少ないでしょうし、実際のところそれを理解する必要性も実用性もないのだから、それでいいのではとも思っています。すこしさみしい気がしないでもないですが、ここで指摘してもあまり良いことがあるような気がしません。
  

 これには返事を差し上げたが、その要旨は、下記の通りである。
 誰も興味がなさそうに見えても、この種の主張は必要である。模型誌が書かない以上、誰かが理解し実際に作ってみてその効果を確かめることができるように、最大限の改善の実例は発表しておくべきである。軽便列車ではその違いはあまり感じられないだろうが、本線上を機関車に牽かれて走る長大列車では、その差は極めて大きいのである。



2020年09月06日

続 模型を作ると…

 学生の頃、生物の講義で筆者の質問に対して講師が展開した話が、実に面白かったことを覚えている。
 それは生物が巨大化できる限界の話である。豪州のジャングルだったか、しかとは覚えがないが、とても太いミミズが居るらしい。長さが3 mくらいで胴回りは10 cmくらいだそうだ。
 動きは遅く、危険なものではないとのことだったが、それより太いものは存在しないということだった。その根拠は、心臓を持たず酸素を体の隅々まで運ぶことができないから、体表面から吸収した酸素が内部まで届く限界が2 cm以下らしい。これが蛇なら心臓を持つので、動作は機敏である。
 ついでに恐竜はどこまで大きくなれるものかという質問に対しては、骨の材質が現在の爬虫類と同じなら、既に限界を超えていたという。恐竜の骨を見ると骨折しているものが多いそうだ。自重を支えきれないのだ。大きなものは壊れやすいという実例を見たことになる。そのことをアメリカにある恐竜の博物館で聞いてみた。ほとんどの個体で大腿骨にひびが入っているのが見つかるらしい。
 ゴジラほど大きなものはありえないのは自明だ。

 
 T氏が送ってくれたURLを開くと、2乗3乗則について興味深い話があった。是非お読み戴きたい。大きなものは壊れやすく、小さなものは頑丈だ。しかし、小さなものは慣性が小さく、慣性のある動きはどうしても作れない。電子的な疑似制御ではない機械的な方法で慣性を増やした動きを再現するには、高速回転のフライホィールしかないのだ。このあたりのことはこのブログで何度も紹介しているのだが、理解戴けない人が少なからずいる。

2020年09月04日

模型を作ると…

 模型と実物は違う。筆者は高校生の時に兄からその話を聞いた。兄は航空分野に居た。飛行機の設計時に用いる風洞実験の話を聞くと、Reynolds Numberというものを導入するのだ、と説明してくれた。模型にぶつかる空気の粒子も、実物にぶつかる空気の粒子と同じだからだ。気体分子は縮小できないことを忘れてはならない。また、ヤング率が一定だから縮小模型は相対的に堅くなるということも、その時知った。

「お前の作っている模型はオモチャだ。本物はもっと柔らかい。レイルも、枕木も、砂利も柔らかい。車体なんて、手で持ったら潰れるようでなければ、本物のような動きはしない。」とも言った。

 模型は実物の1次近似寸法を縮尺通りに作れば、動きも含めて、すべてを実物通りに縮小近似できる)だと主張するようなおめでたい人も居るから、模型界は進歩しない。模型は手で持つからある程度の堅さが必要であるが、下廻りは最大限の柔軟性を持たせねばならない。ところが、「イコライザさえあれば、バネは不要である」という、とんでもない迷信が、大手を振ってのさばっている。これについてはTMSなどで「そうではない」という記事を見たことがない。

 小さなHO以下の軽い模型は壊れにくいだろうが、少し重い模型は、バネ無しでは、すぐにヘタってくるのが分かる。またポイントのフログがてきめんに傷む。HOでさえも、バネが利いている車輛の走行音の軽さには、驚くはずだ。何らかの緩衝機能がないと、壊れていくのである。
 ゴムでも良いのだ。何かの緩衝材が入っていると音は極端に小さくなり、車輛は長持ちする。これは井上豊氏が研究していた。その続きをやれと言われていたが、重ね板バネの効果を確かめ、ゴム板による台車センタピン支持で消音効果があることを立証した程度である。

 模型のカーヴでの挙動について、「遠心力」という言葉を用いている記事はすべて誤りと言ってよい。高校1年の物理の教科書を開いて計算すれば、愕然とする人は多いはずだ。考慮する必要がないことは明白である。即ち、カントは気分の問題である。傾いていると気持ちが良い、という程度のことである。また、自然振り子電車は、実現できるわけがないことは自明だ。

 いつも的確な指摘を下さる工学エキスパートのT氏から、興味深い記事を送って戴いたので紹介したい。

2020年09月02日

模型クラブの会合

619_2219 久し振りに模型クラブの会合に行った。Covid19禍でしばらく中止されていたり、当方の都合で行けなかった。今回は会員に渡すものがあるのと、様々な用事があり、どうしても行かねばならなかった。ウェブ会議でやるというアイデアもあったが、それはあまりにもばかばかしいということになったようだ。

 会場に着くと大きな部屋であった。最近は、誰も使う人が居ないらしい。安価で広い場所が与えられた。参加者は10名ほどであったが、持ち寄られたものは面白いものが多かった。
 在宅勤務が増えたので、模型工作の時間が十分に与えられたことになる。アイデアを形にしたものを見せ合い、なかなか面白い会合であった。

 伊藤 剛氏は、クラブに入っていない人の作品には偏りがあります、と述べていた。それはそうだろう。互いに啓発し合うチャンスが無いと、間違いを是正するチャンスもなくなる。また、手伝いに来て下さる方もあって、助かる。もう何十年も付き合っていると、お互いの事情も良く分かっているからこそである。

 今回、筆者はパシフィック2輌を持って行った。このサイズの模型は壊れやすい。もうすこし大きなものは良いのだが、重い割には飛び出しているところが多いのだ。4-8-4クラスだと相対的に出っ張りが少なくなる。

carrying engines 手術台に載せて箱に入れ、隙間に緩衝材を丸めて突っ込んだ。この方法は機関車が安定して良い。テンダは別の箱に入れた。動軸が回転するので、転がらないようにするのはかなり手間がかかるが、あおむけにしておけば何も考えることがない。

 二輌を同じ線路に載せ、片方を押すとヘッドライトが点き、他方が走った。始めて見る人も居て、とても驚いたようだ。理屈は分かるが、実際には難しいことだと言う。
 角速度が一定になるように設計した3条ウォームギヤであることは知っているので、何度も押してその感触を楽しんだ。実はUPの機関車には大きめのフライホィールを付けてある。これを付けると角速度が一定でない歯車を付けた機関車はゴリゴリするはずだ。その話をすると非常に面白がってますます早く押して、調子を調べたがった。小さな抵抗を持って行ったので、それでレイル間をショートさせ、負荷を与えての高速手押しを何度もやって、角速度が一定であることの価値を確認していた。また、トルクチューブの意味について語り合った。もっとも合理的な方法であるということが納得できたようで、嬉しい。

 工学を正しく理解している人たちとの会話は楽しい。単なる思い付きではなく、裏打ちのある知識を持って実験することの意義を感じた日であった。 

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