2020年01月

2020年01月30日

ボールベアリング

 重いフライホィールを確実に支え、摩擦を少なくするにはボールベアリングを取り付けねばならない。この大きさからすると 5 mm軸はやや細いが、なるべく小径にしたい。静止しているものではなく、走る車輛だから事故を起こす時もあるだろう。その時に壊れてはならない。丈夫な軸受にスラストベアリングと共に取り付け、ラジアル方向だけの力だけを受け持つようにした。

stopper 基礎になる1.5 mm厚の板に、厚さ6 mmのブラスの板をハンダ付けしたものを、前の軸受にした。本体の床板と合わせて、底面の厚みは2.5 mmとなるから、十分な剛性である。支えも付けて、耐衝撃性を持たせた。この支えの材料は廃金属商で買ったブラスの円盤で、直径は75 mmあった。あいていた穴には、 6 mmの棒を通してハンダ付けして埋めた。
 メタル・ソウで円盤を平行に切って生じるかけらを、支えにしたのだ。ハンダ付けは銀ハンダで確実に付けている。こういう仕事はガスバーナーで念入りに行う。ハンダは完全に浸み込み、合金層は薄いからとても強い。ロウ付けと同等の強度だろう。母材が焼きなまされないから、結果としてはこちらの方が強いであろう。後ろの支えは、支えを付けたものをネジ留めした。スラストベアリングを挿んで取り付ける。

installing ball bearing ボールベアリングは、専用工具で埋め込み、予圧を掛けてスペーサを固定する。これは日本製のベアリングであって、極めて静粛である。某国製のベアリングは、シャーと音がするものが大半である。こういう高回転で重負荷の物には、とても使えない。

2020年01月28日

5軸台車にギヤボックスを付ける

centipede tender こんなに狭いところに5軸あるので、ギヤボックスを無理なく収めるのには少々苦労する。例えば3軸台車なら、2軸を一つにまとめてドライヴ・シャフトで結び、もう1軸はルースなジョイントでつなぐことを考えるだろう。そのギヤボックスに反動受けのリンクを付ければ、完成だ。
 しかし5軸あると、そのような方法が採れない。2軸ずつにして中間の1軸は捨てて、そこに伸縮するユニヴァーサル・ジョイントを置くしかない。しかし、そのスペイスすらないのだ。こうなると、六角軸のジョイントでつなぐしか方法が無い。

 この六角軸ジョイントは、六角レンチの頭が丸くなっているタイプを思い起こして戴くと、理解できるだろう。少しくらいの角度なら、問題なく廻る。厳密に考えると等速とは言えないのだろうが、角度が浅ければ全く問題ない。線路の上に載っているのだから、それほどの段差はなく問題は起こらない。よくできた部品だと思う。これは、カツミ模型店にいた高橋 淑氏のアイデアだ。写真では、ずれが大きいところを見せている。軸受を外して作動状況を見せているのだ。走行時には殆ど直線状である。

 チェイン・ドライヴは前後2つに分けた。1つにすると負荷が大きすぎると判断した。これは前述した許される最大加速度の計算時に、チェインの張力が算出されたからだ。また、先台車の偏倚によって、ドライヴ・シャフトが曲がって大きくずれ、効率が低下するのを避けたかったからである。
 車輪が滑るほどの加速度を与えると、チェインの音が大きくなる。プラスティックのチェインであるから、張力で多少伸びるからだ。もっと張力を掛けると切れる。
 
 このフライホィールの慣性モーメントはかなり大きく、加速するには大きなトルクが必要である。スペイスが許せばチェインを二重にしたかった。2つのスプロケットの位相を1歯の半分ずらすと、音が静かになる。次に改造する時には考慮したい。

2020年01月26日

工程表

 限られた時間で完成させようとすると、どうしても工程表が要る。工程表が無いと、くだらないところに時間を掛け過ぎてしまう傾向がある。

 各単元の工程の時間は、経験上分かっているので、細かく分けて書く。ここまでは何月何日に出来ていなければならない、という目安は大切である。
 単元ごとに検査し、あとでの再調整を不要にしておくことが時間節約になる。これは建築工事と同じだ。組んだものをバラして再調整するのは、膨大な手間が掛かる。今回は既製品の改造なので、既存の構造を利用できるところは残す。他を切り取るので、補強が要る。補強を後廻しにすると寸法誤差が出るので、補強工事を最優先にし、その後余分を切り取るようにした。
 テンダの中は太い骨が入っている。もともとはがらんどうであったが、重くなるので持った時に潰れないような構造でなければならない。
 
 旋盤工作は意外に時間が掛かる。刃物やドリルを取り替える手間が多いからだ。その必要が無いものは早い。小さい方の旋盤にはDROが付いていないので、目盛を読んで作るのは意外と大変である。1回転で何mmということから計算するので、計算用紙、電卓が必要である。早見表を作り見やすい位置に貼ってある。すべての材料、工具は並べておく。材料探しというのは、するべきではない。

 最初に見積もったスケジュールより早く進んでも油断せずに、先の方の予定でも時間が掛かりそうなものを先に作っておく。
 ロストワックス部品は念入りに仕上げてバリを取り、足の長さを調整して完全に密着するようにしておく。そうしないとハンダが完全に廻らない。
 細かな組立ては、机の上を整理して行う。前掛けをして、落とした部品がひっかかるようにする。落とした部品探しというのは、時間の無駄そのものである。
 塗装は4日掛かるとみた。初日は塗装剥がしである。塗ったらオヴンに入れて加熱する。100℃で2時間だ。マスキングは丁寧にする。失敗すると時間が無駄だ。塗り終わると同時に剥がして再加熱する。

 結局のところ、〆切の2日前に落成した。テンダがとても重く、宅配便で送るわけには行かない。持って行く途上で、T氏には助けて戴いた。ナンバーボードのスクリーンを忘れたのだ。コンピュータで作って戴いたものを付けた。


2020年01月24日

リンク機構の工夫

making link (1)making link (2) テンダの先台車はリンクで結ばれている。左右に振れると、先台車は微妙に回転し、曲線上に載る。前後のガタは全くない。ピンはネジだが、パイプを切って嵌めてあった。要するに段付きネジのようになっているのだ。友人のO氏に見せたら、ピンに僅かのガタがあると指摘されたので、旋盤で精密なピンを挽いて、作り直した。ガタがあれば、台形リンクの意味がない。
 ガタをなくし、微量のグリスを塗った。当然、穴にはリーマを通してある。磨り減ることはないだろう。

 フライスのDROで設計寸法に孔をあけてから、外形を切り抜くが、今回はギヤボックスがあるので一筋縄ではいかない。少し逃げている。そうすると固定台車の第一軸の車輪が干渉する。絶縁側は念の為、さらに1 mmの逃げを付けるのが、当社の方針である。するとリンクは直線にはならない。

tailoring a link こういう時は、距離を保ちつつ途中の経路を変更するので、屈曲させるわけだ。十分な剛性が必要で、なおかつ設計寸法が変化するのを避けたい。そういう時はこの方法が確実である。図は誇張してある。
 .團鷙Δ鬚△院太い副木(そえぎ)を当ててピンを通し、ハンダ付けする。
 副木に食い込むくらい切り込んで、障碍物を回避する。
 A澗里鮴扱舛垢襦

 これを3次元でやるので、できあがりのリンクはあらぬ形をしているが、ちゃんと機能する。

stopper 先台車のリンク支持には大きな利点がある。直線の線路上では、自然に台車が真っ直ぐ向く。即ち線路に載せ易い。問題は、センタピンが無いので、車体を持ち上げると台車が落ちてくることである。今回はそれを解決するために、ひっかかりの爪を作って落ち留め(写真)としている。左右に滑らかに動くことが条件だ。二硫化モリブデンを塗ってあるので、滑らかに作動する。
 復元装置は付けなかった。今のところ、なくても脱線したことは無い。機関車に引張られているというところが大きいのだろう。推進時にも問題はなかった。ただ、設計最小半径未満では脱線する。ガタが無いので当然である。

2020年01月22日

鳥羽給炭所

 もう60年以上昔の話だ。親戚が居たので、志摩半島に年に一回は行った。
 名古屋から亀山までの湊町行き快速列車は、たいていはC51と C57の重連だった。快速は、亀山までの60 kmがちょうど1時間で、表定速度は60 km/hである。単線での蒸気列車としてはかなり速い。快速用の機関車は磨かれて、輝いていた。
 亀山からはC51の単機が牽いた。それも快速列車だった。姫路から来る快速もあった。伊勢を過ぎて鳥羽までは、平坦線であって軽やかに走った。当時は伊勢まで行くのでも、国鉄の方が近鉄の中川乗り換えより、ずっと早かった。


 筆者の世代は、蒸気機関車が全速力で走るのを見た最後の世代であろう。蒸機はノロいと思っている人が多いだろうが、決してそんなことは無かった。速い乗り物の代表だった。筆者の父親の世代はもっと速かったのだ。蒲郡駅で上り下りの特急がすれ違うのを見るのが楽しみだったそうだ。どちらもC53で100 km/hをはるかに上回る速度であったと聞いた。蒲郡駅はどちらからも下りで谷のようになっている。 
 

 参宮線の六軒駅で大事故があり、機関車が証拠物件なのか、長く放置してあった。ブレーキの構造が重連仕様でなかったのが原因らしい。アメリカの機関車は重連用のブレーキ管を持っている。 

 当時の国鉄鳥羽駅はそこそこに大きな駅で、貨物も扱っていた。三重交通志摩線では貨物も扱っていたし、鳥羽港で陸揚げした砂利置き場もあった。プラットフォームは1本しかなく、到着列車は海側に着くことが多かった。その窓からは転車台が見え、給水タンクも目の前であった。接続電車まで時間があると、客車の窓から機関車の動きを見ることができる。
 切り放された機関車は軽やかに走って転車台に向かい、転向する。水をたくさん呑んで、前後に走り、ポイントを渡って先頭に着く。

 ちょうど目の前に機関車が来た時、機関士が大きな声で叫んだ。
「おーい坊主!見てろよ。」
 機関士はスロットルを少し強めに引き、動輪をしゅるしゅると一回転させて発進した。それは禁止されているはずであったが、見せてくれたのだ。単機でも動輪がスリップするのは初めて見た。単なる格好つけであるが、少年の眼には焼き付いた。その後、機関車は列車の先頭に行って停止するが、その時もブレーキを使わずに、動輪を逆回転させて停めた。実に見事なスロットルさばきで、機関車が止まる瞬間に動輪も止まった。機関士は満面の笑顔で、どんなもんだい、という顔をした。こちらは飛び上がって喜んだのは言うまでもない。

 その時の情景は鮮明に思い出される。いつかあんな動きをする模型を作ってみよう、と思ってから50年以上経つ。今それが完成したのだ。
 列車を牽いている時にスリップさせることは容易だが、単機では不可能だったのだ。

 
 
 T氏から、このウェブサイトを紹介戴いた。元機関士の方が公開している。写真は自由に使ってよい、とあるのがすごい。また、別の角度からの写真を紹介するウェブサイトもある。懐かしい風景だ。近鉄が鳥羽に乗り入れて、志摩線も買収された。標準軌が賢島まで続いたので、貨物は廃止された。以前は電車が貨車を牽いていたのを見たことがある。

19670224tobaekimeikanban 国鉄の旧鳥羽駅には真珠と海女の看板があったのはよく覚えている。日和山(ひよりやま)のエレベータにも乗った。天気が良ければ富士山が見えるとあった。しかしそれは、鳥羽駅が火事になって延焼してしまった。
 写真は上記の藤田憲一氏のサイトからお借りしている。

2020年01月20日

慣性モーメント

Flywheel (2) このテンダは全軸コイルバネ懸架である。錘を載せていくと、3 kgでバネが完全に沈み込む。即ち、2.4 kgほどに仕上げないとバネの意味がない。そのあたりではバネがよく利いている感じがする。摩擦係数から、取り出せる最大トルクが分かり、フライホィールの慣性モーメントから、テンダ車輪がスリップしない最大の加速度が計算できる。物理が得意な人なら、自力で計算できるだろう。ギヤ比は3: 23 で、チェインでの増速は 15:20 であるから、増速率は 10.2 倍である。チェインの場合は歯数に公約数があっても、ほとんどの場合問題にならない。

 ウォームによる増速は無音である。当初はチェインが枠に当たる音がしていたが、それは完全に修整できた。ごくわずかのチェインの音がするが、気になるほどでもない。大きな円筒が高速で廻るのはなかなか壮観である。それは発電タービン音のヒューンという音に似ているが、テンダの車体を被せると殆ど聞こえない。聞こえるのは車輪の転動音である。

first generationsecond generation 当初は左の写真のような大きなフライホィールを廻していたが、やや重過ぎることが分かり、小さくしたと同時に、回転数を上げた。回転数を上げれば、その2乗で効くので、最終段の 4/3倍は 1.78倍の効果を生み出した。即ち、フライホィールの長さを56%にしても、慣性モーメントは元の値と同じである。重いフライホィールは衝撃に対して弱いから、少しでも軽くするべきである。留めネジ(ホロゥ・セットスクリュウ)の短いのが見つからず、とりあえず撮った写真である。現在は短いものを用いている。

 事前にある程度の計算は必要であるが、結論は摩擦係数の比より明白である。動輪は鉄タイヤで、テンダはステンレスタイヤであるから、摩擦係数は異なる。機関車動輪上重量が2.0 kg以下であると、動輪がテンダ車輪より先にスリップする。機関車の質量は、その数字を満たす範囲にある。


 機関車の質量は3.0 kg程度が良いことが分かった。大まかに機関車の質量を積算すると、おおよそ2.8 kg見当なので、200 gほどの補重で足りる。35年前作った時は、牽引力の限界を計算して1.2 kgほど足したが、今回はかなり軽くなる。重心位置の補正錘程度でよいことが分かった。先従輪には十分な軸重を与えて、復元を利かせている。
 前回は機関車の動輪のスリップ限界をモータの焼けない電流値から算出したが、今回はテンダのスリップ限界がすべてを決める。動輪は余力を持ってスリップしてもらうことになっている。重客車列車を牽かせるが、十分な引張力があることは確かめられている。但し、運転は習熟した者しかできないはずだ。駅で所定の位置に止めるのは、難しい。

 筆者が何をしたいかは、読者諸賢には既にお分かりだろう。

2020年01月18日

続々 ”Super 800” 

 テンダ台車からの動力採取は、6軸とした。1軸は構造上、捨てる方が都合が良い。7軸中の6軸であるから、十分だ。ディーゼル電気機関車用に開発したギヤボックスが一番小さいので、それを入れたが、ぎりぎりである。当初はギヤボックスで回転軸を平行に持ち上げる予定であったが、とても入らない。また、横から見えるのは避けたい。既存のテンダの上廻り構造変更も避けるべきなので、チェイン・ドライヴとした。

swing motion link もう一つ、このテンダには特筆すべき工夫がある。先台車の心皿がドライヴ・シャフトに干渉する。即ち、心皿のキングピンを長孔の中で左右動させることは、不可能である。この写真の左の写っていない部分にもう一軸ある。それは先台車の前軸である。キングピンは存在しない。

 設計時にそこに気付いたので、リンク機構による左右の偏倚を採用した。当然、偏倚時に所定の角度の回転をさせる。心皿の代わりに、種類の異なる平板を置いて摩擦を減らし、モリブデングリスを少量塗った。滑らかに偏倚する。

swing motion linkage1 ある程度の回転があれば良く、フランジが確実に触っている必要はないので、そこは割り切った計算にした。むしろ、5軸台車の方が苦しい。本物も後進では脱線し易いが、当然だろう。これは、Low-D採用のおかげで脱線しない。軸の左右動を少し許した。

swing motion linkage2 リンクの長さはS氏に検証してもらった。最近はコンピュータの画面上でシミュレイションが可能だ。この図は、northerns484氏に描き直してもらったものである。リンクは、寸法的にはこの通りだが、実際には台枠に当たる可能性があるのと、絶縁車輪のタイヤに触れるのを確実に避けるために逃げている。下の図は 2800R 上の挙動である。

 この図でわかるように、5軸台車は軸方向の動きを許す構造でないと脱線する。

2020年01月16日

続 ”Super 800”

 問題はテンダである。キャブが伸びた分だけ、台枠を伸ばさないと連結できない。今まで ストーカ・エンジンが入っていた部分は、水と重油で置き換えられる。容量は 23,500 gals から、25,000 gals(94.5㎥)になる予定だったとある。体積を計算すると、既存のもので賄える大きさであったので、手を入れたのは、前部デッキだけである。機関車とテンダの長さは 12 mm(580mmほど)長くなる。薄い板では壊れるので、4 mmの板から削り出して、銀ハンダで付けた。そのすぐ後ろの床に大きな開口部があるので、太い材料で枠を作り、耐衝撃性を持たせた。オリジナルより丈夫になったはずだ。

 友人は、例の慣性増大装置を入れよ、と言った。その点はなるほどと思った。他に例がない。コンテストでそれを評価させることができれば、大きな前進だ。5軸イコライザは作ってあるが、作動の自由度が大きすぎて、素人が持つと外れてしまうことが考えられる。個別スプリング式で行くことにする。コンテストの審査会で壊れてしまっては、元も子もないからだ。冒険は避けたい。

Flywheel (1) フライホィールの材料は入手してあった。廃金属回収商で買った外径 47 mm、内径 20 mmの砲金の中空材である。水道部品製作用の連続鋳造品で、均質である。長さが300 mmほどあるので、旋盤のチャックに銜えて心を出し、内外を削った。同心であるから、フレはない。中削りは神経を使うが、正確にできた。質量は980 g  である。支持は5 mm軸で、ラジアルとスラストのボールベアリングを付けている。本当はもう少し太くしたいが、例の撹拌抵抗のことを考慮して、なるべく細くした。
 テンダ中にはボールベアリングが、46個使われている。


2020年01月14日

”Super 800”

 Union Pacific鉄道は、大型の4-8-4(four-eight-four FEFという)を採用し、類稀なる信頼性の高さを誇っていた。これは、高出力、長大な航続力、低メンテナンスの点で、世界最高の性能を持っていたことは間違いない。その他の鉄道会社は、UPほど高頻度の長距離高速運転をしていなかったので、比較しようが無いのだ。Tom Harvey は、 その実力を称して、"flying machine"と言った。

 その圧力は300 lb/insq(約21気圧)であった。新型は350 lb/insq(約24気圧)を予定していた。想定される連続最大出力は6500馬力以上であったそうだ。これの単機で、当時の特急に使われたディーゼル電気機関車の3重連の出力を凌ぐのである。 

 機種名はFEF4、”Super 800”である。20輌を発注するつもりだったらしい。このあたりの情報はDon Strack氏から聞いたことを基にしている。当然Tom Harvey からの情報とも重なる。設計者は1946年にイギリスに行き、帰りの飛行機が落ちたため死亡した。同時にこの計画は廃案になってしまった。

 外観の変化は、Franklin式ポペット弁、4本煙突、allweather cab(密閉式キャブ)Worthington式給水加熱器、小さな除煙板、重油テンダ、シールドビームである。ある程度の図面を描くと、テンダの下廻りにはかなりの変更点が生じることが分かる。キャブが伸びた分だけ、テンダの下廻りを延長しないとつながらないのだ。

 一番面倒だったのは、キャブの形である。このような大型機の場合、キャブの後ろを絞らなければならない。オウヴァハングが長いと曲線(たいていは分岐)で隣の車輛に当たってしまう。何機種かの図面を確認し、実際に作図して当たり具合を調べた。

Modified UP 9000 cab UPの9000という4-12-2のキャブは、驚くべき絞り方をしている。機炭間のバッファを更新した時に12インチ(約300 mm)の延長が必要になり、その分キャブをうしろにずらすことが可能になった。それまではキャブ内が狭くて困っていたので、これ幸いとキャブを後ろに下げた。ボイラの後端が、相対的に前にずらされたのだ。
 そうすると、ただでさえ、ボイラが太くて前が見えなかったのが、余計苦になった。思い切ってキャブ前端を最大限に膨らまして視界を確保すると同時に、後端を伸ばしたことにより当たる分を、狭くしたのがこれである。12輌ほどがこの形に変更されている。

 過去のTMSには、日本型の 4-8-4 などの空想大型機の作例がいくつか載っていたが、どれも建築限界に当たりそうである。レイアウトで実際に走らせていないと、こういうことには気付かない。さすがに祖父江氏の機関車は、正しく絞られている。

 ベースになった模型は、以前テキサスから持ち帰ったFEF3で、事故車であった。かなり修復してはあったが、ひどい壊れ方をした部分があり、ボイラは一部新製するつもりであった。煙突、煙室、キャブ、ヴァルヴ・ギヤは捨てて作り直した。
 これらはハンダを剥がして、板を延ばし、新しい板に寸法を写し取って新製した。当然設計変更をしている。パイロットは更新した。
 機関車内に、ボールベアリングは34個使っている。滑るように走る。

 クイズの正解者はLittle Yoshi氏とRailtruck氏のお二人であった。Little Yoshi 氏はかなり早い段階から正解を出された。”UP” ”4本煙突” ”Poppet” で検索すると見つかったそうである。 

2020年01月12日

続 500時間

 最初の10日間は、資料を再度読み直す調査期間とした。イギリス、フランスの文献を探した。ドイツには参考になるものは見つからなかった。
 その機関車には、高速時の高出力が求められていた。それには poppet valve の採用しか、解決策が無い。ワルシャートやベイカー弁装置では、成しえないものである。これらは弁が徐々に開き、徐々に閉じる。力が要る瞬間に、蒸気が少しずつしか入らないようでは、出力が出ない。大きな開口面積で、大量の高圧蒸気が瞬時に流れ込んで、ピストンを押せば、出力は増大する。高回転の旅客用の大型蒸機に求められる性能である。貨物用機関車には縁が無い話だ。

 その後は設計に没頭した。数十枚の図面を描いた。すべて方眼紙に手描きで描いた。今回はフルスクラッチ・ビルディングではないから、寸法の採取には大変手間取った。リンクの長さを決定するのには苦労した。寸法を決めておけば、材料の選択、加工の時間を節約できる。使う材料は選び出して机の上に順に並べ、取り出しやすくした。机が広いのは有難い。博物館には広い机が沢山ある。
 工具類、特にリーマ、タップ類を点検した。ボールベアリングは十分にあったから、注文せずに済んだ。この種の準備に時間を割くことは、後の作業時間を大幅に節減できる。工作の途中で材料や工具を探すと時間がもったいない。 

 ポペット弁は、アメリカではNYC、Pennsylvania、C&O、AT&SFなどに採用例があるが、その数は多くない。この機関車が必要とされたのは、対日戦争勝利後の旅客需要の増大に対処するためである。当時の大陸横断は鉄道によるものが大半で、ディーゼル電気機関車の出力不足、信頼性の低さには参っていたのだ。やはり、信頼性の非常に高い蒸気機関車を高出力化することが、当時としては最良の案だったのだ。

 ポペット弁に関する情報は日本では極めて少なくて困ったが、工学エキスパートのT氏からお借りしたイギリスの本に、参考になる記事が見つかった。Franklin式を採用することにし、valve chestを切断した。

removing valve chest 作り始めて気が付いたが、改造をするべきではなかった。シリンダブロック全体を新製すべきであったのだ。今回は時間がなく、そのまま突っ走ったが、いずれ3Dプリンタにより、文句なしのものを作って嵌め込むつもりだ。 この写真では既に先台車は新製され、Low-Dを装備している。
 また、ワルシャート式リンク機構は外され、スライドバァの保持枠も余分なところを切り捨ててある。この後、クロスヘッドは作り替えられる。

2020年01月10日

500時間

 昨年末、ある機関車を作った。正味2箇月しか時間が無かったのだ。500時間で作らねばならなかった。各単元分野の仕事は、大体の時間が計算できるので、工程表を作れば、製作可能かどうかが分かる。

 9月末に、親しい友人からその話が持ち込まれた。コンテストに出せ、というのである。筆者のコンテスト嫌いは知られていて、過去一度も出したことが無いし、今後も出すつもりがなかった。友人は、
「このまま逃げ切るつもりか。お前は作品を出すべきだ。世界の模型界に影響を与えた過去の作品群も、コンテストの入賞作であったら、日本国内でのインパクトがさらに大きかったはずだ。コンテストに出てないから、山崎氏が意図的に無視したので広まらなかった。」と言った。
「でもさ、それを審査する人達の資質の問題があるんだよ。外観ばかりじゃないか。自宅にレイアウトを持っていないような人が審査するんじゃ、意味は無いよ。こちらは最高の走りを実現することが目的だ。外観なんてそこそこに出来ていれば十分だと思っているのだからね。
 過去の実際の入賞作には、構造が根本的に間違っている作品が多々あったことは前にも話しただろう。審査する側に能力が欠けていることは明白だ。そんな人たちが審査するコンテストなんて、意味がない。」 
と蹴飛ばしていた。
「それじゃ、内容を審査するように、説明をちゃんと付ければよい。実際に走って見せて、驚かせればいいんだろう?」と畳みかけられた。

 その後主催者側に通じている人に聞くと、運転して審査するということだったので、それならやってみるか、ということになった。


 作ろうとしているモデルは、実際には製造されなかった機関車なので、どうあるべきかを考えねばならない。資料は集めてある。関係者からの情報を精査し、ありうる形にしなければならない。その機関車は、当時の最先端の技術を採り入れた史上最強力の機関車であった。誰も模型化していない。雑誌に紹介記事が載るのだが、例によってBenett氏の絵があって、いくつか間違いが含まれている。蒸気機関車の構造が全く分かっていない人が描いた絵などには価値はない。

 その話をすると、
「それじゃちょうど良い。むこうが『恐れ入りました。』というものを作ればいいんだよ。」
とけしかけられた。

 さて何を作ったのだろう。正解者は今のところお一人である。かなりヒント発表されているのだが。

2020年01月08日

エアブラシの保守

airbrushfixing airbrush hose Badgerのエアブラシを使っている。もう20年も使っているから、かなり擦り切れている。先日、使おうと思ったら、細いホースの根元が切れていて、空気が音を立てて漏れ出している。仕方がないから、根元で切り、金具を押し出して嵌め直した。3 cmほど短くなったが再生された。

 このエアブラシの欠点の一つは、ボタン(空気を出すボタン)の丸い部分が外れやすいことだ。そのボタンはどこかに行ってしまった。外れていると、指に痛い。

 思い付いて、コンパスの針の締めネジを付けて見たら、ぴったりである。このネジは0-80であろう。1.5 mm位だ。
 これより少し太い1-72というのは1.8 mm程度のネジで、通称1番と言う。1インチにネジ山が72個ある。それより細いのは0-80である。1-72、0-80は、昔からO、HOのパンタグラフのネジとして知られている。それがコンパスにも使われていたとは思わなかった。これより少し太いのは2-56である。2.1 mm程度である。
 このあたりのインチネジは昔はいたるところに使われていたが、我が国では、もう痕跡すらなくなった。しかし、コンピュータ部品には使われているそうだ。

 博物館は元文房具店の店舗を利用している。売れ残りのコンパスの部品などが見つかり、その用途を探していたところだ。ちょうど良かった。のちに別のネジを見付けたがそれはメートルネジで、M1.6 のようだ。要するに、合うものがあるかもしれないという程度の情報である。お役には立たないかもしれない。 

2020年01月06日

ワッシャを作る

 ワッシャを作る人はまずいないだろうが、時と場合によっては作らざるを得ない。外径9.5 mm、内径 7.0 mm、厚さ0.3 mm のワッシャは売っていないし、たとえ既製品があったとしても、プレス製で平面度が低い。
 メインロッドとコネクティング・ロッドの間に挟みたい。色はブラス色は避けたい。快削のステンレスは持っていないので、洋白の板から作った。色が良くないが、仕方ない。作り終わってから写真を撮ってないことに気が付いたので、別の部品を作るときに撮り直した。作り方を紹介する。

turning1turning2 まずΦ10のブラス丸棒に洋白の t1.2を二枚ハンダ付けし、水洗いする。こういう時には炭素棒で付けるに限る。但し洋白板は熱伝導が良くないので熱が廻らず融かしてしまう惧れがある。ブラスの方を加熱する。
 コレットに銜え、角を落として所定の寸法にする。快削ではないが簡単である。
 
turning3turning4turning5 センタ・ドリルでセンタを出し、Φ3のドリルで穴あけをする。炭素棒で挟んで加熱し、挽物を外す。ドリル穴付近で塑性変形して、二枚が喰い込んでいるので、外れにくい。熱いうちに木槌で叩いて外す。

turning6 リーマを通し、ハンダを油目ヤスリで取るとできあがりだ。この間8分。慣れれば早い。この丸棒は、コレット全長の長さが必要である。短いものを先端だけで掴むと、正確に銜えていないことがありうるからだ。あるいは、短いものを掴むときは、コレットの反対側に別の同径の短いものを銜えても良い。

turning7 何に使うのか。この部品である。手前の人形その他は無視されたい。向こうのロッドのビッグエンドの留め環である。人形はこの後、姿勢と色とを調整した。


2020年01月04日

マボーコー

磨棒 ボ−ルベアリングを装着する軸が必要であった。生憎、必要なサイズを切らしていた。
 表題の店に電話して、手に入るサイズを聞いた。漢字では「磨棒鋼」と書くのだ。昔、初めてこの発音を聞いた時、中華料理の名前かと思った。一般には「磨き棒鋼」と言っている。あるいは「シャフト屋」である。

 Φ2から、2.5、3、4、5のステンレスSUS304シャフトを注文した。長さは2m単位である。もう少し太いものだと 4 mだから乗用車には載らない。その場で半分に切ってもらって、持ち帰る。ワンカット150円くらいだと思う。細い物はボルトクリッパを持って行って自分で切る。
 写真は添え木に縛り付けたものを示している。裸で渡してくれるわけではない。ちゃんと曲がらないように配慮してくれる。

 この手のシャフトは、すべてマイナス公差である。まかり間違っても表示寸法より太いことは無い。ミニチュア・ボールベアリングは滑り嵌めが原則である。ミシン油を付けて、にゅるにゅると入るのが正しい寸法だ。するするでは駄目なのだ。
 彼らは専門家であるから、よく知っていて、何も言うことはない。

 一般人には縁遠い店だが、筆者はよく行くので、ついでがあれば購入してお分けする。上述の寸法であれば、手持ちの物を切って、即納できる。長さはレターパックに入る長さを基本とする。ボールベアリングを普通鋼のシャフトに嵌めるのは避けたい。普通の保管法では錆びて抜けなくなるからだ。

 蒸気機関車の車軸用の、SUS303材の末端を加工したシャフトを注文する必要がある。どのくらいの価格で応じてくれるか、楽しみである。
 動輪の嵌替えは、最適の材料、工具、テクニックが無いと難しい。今までは祖父江氏がやってくれていたが、筆者が引き受けざるを得ない状況になってきた。ノウハウはすべて受け継いだ。問題は動輪を掴むコレットの種類があまりないことだ。80インチ、63インチはできる。他のサイズ用は作らなければならないが、そのコレット材料がないので、ebayで探している。

2020年01月02日

伊藤 剛氏の折畳み貨車

剛氏の折畳み貨車  (1) 昨年折り畳み貨車を友人のF氏に見せた所、「僕にレストアさせてほしい。」と申し出て下さったので、早速お願いした。
 年末に届いたので、封を開けてびっくりした。素晴らしく綺麗だ。最近の画像複製技術の進歩で、本当に木で出来ているのかと思うような仕上がりである。
 ドアヒンジは各扉2箇所の時代があったのだ。小型ドアは2枚、大型ドアは3枚であった。

 2016年に、剛氏のところからお引き取りしたものを順次開被して、確認していた。そこで出て来た時には、修復は難しいと思っていた。塗装を全部剥がしてハンダ付けをやり直し、側面を新製すると、もうそれではレストアではなくなってしまう。

剛氏の折畳み貨車  (3)剛氏の折畳み貨車(2) F氏は塗装を温存しながら、綺麗に洗い、完璧なレストアをしてくれた。裏表で異なるサイドを持つ。ありがたいことである。この貨車はあと4輌ある。いずれ修復して戴けるもしれない。今後様々な点で、お世話になることが多くなるだろう。

 問題は台車である。オリジナルのダイキャスト台車枠は劣化が進み、使えないものがある。さりとて、それを現行品にして、しかもLow-Dにしてしまうのは気が引ける。台車を複製するという手もあるが、それは気が進まない。

Recent Comments
Archives
「最新トラックバック」は提供を終了しました。
Categories
  • ライブドアブログ