2018年01月

2018年01月30日

御殿場線ものがたり

御殿場線ものがたり たまたま寄った古本屋で見つけた。福音館の子供向けの「たくさんのふしぎ」シリーズの一つだ。30年ほど前の号である。このシリーズは我が家の子供たちも読んでいたが、これだけは買っていない。アメリカに居た頃なのだろう。その後の調べでは、再版されて単行本になっているようだ。


御殿場線ものがたり2 著者は宮脇俊三氏、絵は黒岩保美氏である。間違いは無さそうだと手に取って、中のページをめくって驚いた。どの絵も素晴らしい。特に筆者はこの見開きの絵を見て、衝撃を受けた。このようなスイッチバックを作りたいと思っていたことがあるからだ。すぐに買って、帰りの電車でじっくり読み直した。

 御殿場線は田舎を走っているのに、隣に線路があったような跡があるのはなぜ?駅の構内が広いのはなぜ?という疑問から始まる謎解きがある。

3御殿場線ものがたり 東京駅から電気機関車でなくC51の牽く特急が国府津に到着すると、30秒で後補機のC53が連結され、峠まで押していく。そこで走行中解放する様子が躍動感溢れる絵で表されている。東京から電気機関車だと、付け替えの時間が掛かるからだ。


 当時はC53が出たばかりなのだが、特急「燕」の本務機はC51なのだ。信頼性があったのだろう。一方、普通列車は小さな機関車で牽いている。

 筆者も関西本線でC51が本務機の、重連鳥羽行き快速に乗ったことがある。C55と組んで、ぶっ飛ばした。当時名古屋ー桑名間(23.8 km)は18分であった。平均速度は 79.3 km/h である。当時近鉄は木曽三川を渡る鉄橋が古く、そこでの最高速が40 km/h に制限されていて、とても国鉄の快速には敵わなかった。
 その後この記録は40年間破られることなく、ディーゼル快速「みえ」で再度18分になった。今は最速17分半だと思う。

 C51はブラスの帯を沢山巻いた、お召し列車に使われるような機関車で、古いけど魅力的であった。その列車と相前後して発車する湊町行き快速も良かった。それはたいていC55とC57の重連であった。昭和33年頃の話だ。毎日駅まで行って観察していた。素晴らしい時代であった。写真があれば・・・、としみじみ思う。


2018年01月28日

続 砥粒

 早速メイルを戴いたので紹介したい。

 砥粒の話、そのように教えられたり聞いてはいても、気にしないモデラーが多いでしょうね。実際に擦り減って支障を起こすほど使わない(使用時間が長くない)からでしょう。問題が発生しない、もしくは擦り減るという経験をしていないので、理解できないのだと思いますね。 

 模型車輌の軸受の構造も、よくこれで持つよなあと思うものが大半です。海外メーカーの米国型HO蒸機がギクシャクして肩を振るようになったので分解してみたら、単に長方形に切り欠いただけの軸受に真鍮の車軸が嵌まっていて、擦り減っていたということを経験しています。ちゃんと注油し、綿埃などは取り除いていたにもかかわらずです。油が砂埃?を巻き込んだのが却っていけなかったのかもしれません。
 こういう場合はグリーセムのような固体潤滑の方が良いかもしれませんね。ギヤの露出も問題です。埃だらけの居間の壁際に敷いた線路で、ずっと走らせていればそういうことにもなるのだろうと思います。長時間連続して走らせることなどは、想定外なのでしょうね。博物館や商店の展示レイアウトの車輌の消耗やメンテナンスはどうなっているんでしょうね。

 
おっしゃる通りで、アマチュアの旋盤で、磨り減るほど使ったものにはお目にかからないから、良いのかもしれないが、正しいことを知っているべきである。固体潤滑はこの用途には適さないだろう。
 筆者も現役のころは旋盤、フライス盤に向かうのは週に1時間ほどであった。最近は毎日2時間くらいであろうか。これくらい使えば減るかもしれない。ベルトは擦り切れて2回取り替えた。刃物の消耗はかなりあるが、最近はダイヤモンド砥石があるので、研ぎ直しは簡単だ。
 
 建設中の博物館の車輌は、すべて密閉式ギヤボックスを持ち、軸受はボールベアリングである。それらは十分持つだろうと思う。問題はロッドである。ひと月に一度溶剤スプレィで洗い落とし、再注油する。洗うと黒いものがたくさん落ちる。これはロッドの金属粉なのだろう。
 数年に一回、ロッドの孔のスリーブを入れ替える必要があるかもしれない。これは比較的簡単な作業である。

 模型においては消耗ということを考えることは少ないが、博物館が開業するとそれは深刻な問題になりうる。そういう点ではLow-D車輪は減りにくいから良い。

 JRなどが開いている博物館のHOレイアウトでの車輌の消耗は相当なものである。どんどん下廻りを取り替えているらしい。
 しばらく前、3条ウォーム、コアレスモータ、Low-D車輪の組み合わせをHOでやりたいという人が現れ、図面を提供した。博物館のメンテナンス・コストを小さくするという触れ込みで、応札したらしいが、見事に負けたらしい。勝ったのは既存の模型店で、イニシアル・コストが低いからであったそうな。当然メンテナンスには多大な金がかかり、模型店は左うちわだそうだ。資源の浪費は著しい。困ったものだ。



2018年01月26日

砥粒

 フライス盤の改良記事中、「砥粒が落ちる・・・」と書いたところ、質問を戴いている。そんなに気にするようなことだろうか、ということである。

 筆者は大変気にする。摺動面がある機械では、摺動面に砂ぼこりが噛むと、たちまち磨り減る。送りネジはもっと気を遣う。

 旋盤工の仕事を見るのは面白かった。子供のころ、近くの工場でよく見ていた。最後にサンドペーパを当てる時に、油を塗った新聞紙をベッドの上に広げて、ホンの少しではあるが飛び散る可能性のある埃を受けていた。新聞紙の裏表は当然区別する。

 その仕事が終わると、丹念に埃を払い、新聞紙を丁寧に4つに畳む。筆者が質問すると、大事な旋盤を少しでも長持ちさせるためには当然のことだと言った。
 自分で旋盤やフライス盤を持つようになってからは、埃が掛からぬように気を付けるし、サンドペーパは極力使わぬようにしている。使うときは習った通り、油と新聞紙で防護し、電気掃除機を持ってきて、発生する時点で吸い取っている。

 職人の仕事は研究すべきなのだが、もはや職人はほとんどいなくなってしまった。旋盤の上で、サンドペーパを無頓着に使う人は、よく見る。やめるべきだ。
 筆者の子供時代は、職人たちが働いているのをよく観察できる時代であった。今思えば、貴重な授業を受けたことになる。そういう意味では現代の若者は不幸だ。なんでも教科書に書いてある通りにすれば出来ると思っている。なかなかそうはいかない。正解は、年月をかけた経験からしか得られない。
 Knowledge is from books, wisdom is from age. (知識は書物から、知恵は経験から。 )

2018年01月24日

終活

 就活かと思っていたら、終活という言葉があるそうで、少々驚いた。人生の終わりに近づくと、様々なものを整理する人もいるらしい。

 最近何人かの模型人が、工事中の博物館にいらして、
「うちに置いておくと、僕が死んだら捨てられてしまうから、事前にこちらに持ってきてよいか。」
とお聞きになる。お預かりするのは良いが、展示できるかどうかはやや難しい。ショウケースが足らない。3階が空いているので、それを展示スペイスにすれば何とかなるが、まだ先の話だ。内装工事やエアコン設置が必要である。場合によってはエレベータも必要だ。資金が要る。

 伊藤 剛氏は15年ほど前、面白いことをおっしゃった。
「そのうちに、鉄道模型は持ち主が死んだらどういう風に保存するかを考えねばならない日が来ます。宗教法人にするという手もありますよ。お寺が良いですな。
哲藻院 應迎寺 というのはどうですか。読み方?テツモイン オウゲイジですよ。
そういう宗教法人にして、お布施を戴いて永代供養するというのはどうでしょうな。」

 もちろん剛氏一流の冗談ではあるが、時が経つと現実味を増す。
 この博物館の建設が始まるときに、土屋巖氏は、
「いろいろな人が模型を持ってきて預かってくれという日が来るが、タダで受け取ってはいけないぞ。相応の保管料を貰って運営するのだ。」
とおっしゃった。その日が近づいてきたような気がする。

2018年01月22日

Z軸DRO

 フライス盤の動力系の改良が終わり、残るはZ軸のDROの取り付けだ。

 非常に困ったことに、クイルが、スピンドル本体の中で0.5度ほど回転する。DROを付けたら、捻られてしまう。 回転を止めるにはどうすれば良いか、考えているが、妙案が浮かばない。
 回転を許容して摺動するようにすると、どうしても1/20mm程度の誤差を認めなければならない。根本的に構造を改良するにはかなりの工事が必要で、そこまでやるほどの価値もない。

 このフライス盤は、いろいろな点で詰めが甘い設計で、経験の足らない人がやっつけ仕事でやったことは間違いない。つまらないところの剛性が必要以上に大きい一方、ここぞというところがダメである。

 この機種の拡大改良版は 幾つかあるが、どれも共通した欠点がある。筆者の自宅にある機械はその部分を徹底改良した。原型をほとんど留めていない。どうして売る側がそれに気がつかないかが不思議だ。

2018年01月20日

回転計とトルク計

tachometer and torque indicator フライス盤の改良で、回転計を用いて回転数を測定した。これはレーザ光を発し、反射光を数えるタイプである。アマゾンで安価にて購入した。写真中央下のものである。この話を教えて下さったのは、時々登場する Dr.Y である。氏は様々なモータを測定して、一覧表にされたのだ。100機種弱を整理されたデータで、非常に興味深い。
 電圧電流が直読できる安定化電源と、トルク計を用いれば測定できるとは言え、大変な労力を投入したデータであり、貴重だ。

 写真中央上はトルク計である。三爪チャックでモータの出力軸を掴み、所定の電圧で廻してバネ秤で直読する形式になっている。表示単位は昔懐かしい ”gf cm” である。 

 Dr.YはHOを楽しんでいるので、モータのトルクはせいぜい 100 gf cm である。筆者に見せてくれた時、Oスケール用のものも測定してみよう、ということになった。しかし、たちまち振り切ってしまった。もっと大きなものが必要であった。

torque indicatorcalibration その後、ヤフオクで目を皿のようにして探し、ついに 600 gf cm のものを購入することに成功した。これらの写真をご覧になるとお分かりかと思うが、正逆回転に対応した目盛りになっている。
しかしこれでも振り切るものがいくつかあり、低電圧で測って高電圧のトルクを、外挿して求めることになった。筆者は商売柄 ”Nm” しか使わないので、980を掛けて何桁ずらすのだったか、再計算にやや手間取った。
 径が大きなものはモーメントが大きいので、概して高トルクである。マイティ800に付けてあるのは出力11.5 Wで、大人を載せた客車を牽いても、かなりの加速を示すはずである。もちろん客車にはボールベアリングを付けていることが条件だ。
 
 模型機関車用のモータとして適するのは、強力な界磁を持つ低回転モータで、負荷の掛かった時の回転数が落ちる率が小さい物である。吉岡精一氏が書かれた「モータ調書」のデータとよく一致する。昔から定評のあるEscapの低回転モータは、その点、抜群の性能を持つ。もちろん、伝達系は高効率であることは最低条件で、ろくに廻らないギヤトレインでは、話にならない。

 吉岡氏がデータを採られたのは25年前で、当時無かったモータもあるので、再度調べてみる。近々導入予定のパシフィックの強力機に搭載するモータを決める必要があるのだ。重量客車数輌を牽いて、15.6‰を駆け上がらねばならない。


2018年01月18日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑸

 ようやく体調が戻ってきたので、フライス盤の現物をばらして調整をした。結論としては、小プーリィを0.8 mm上げれば、すべて解決である。もちろん大プーリィは最大限下げておく。ガードとスピンドル・ロックを兼ねた角材に大プーリィの縁が当たるので、そこには 0.3 mm程度の隙間を空けておく。 

 製造元に聞いてみると、小プーリィの取付けもキィでできるのだが、キィを削ってするすると入るようにするという知識を持っている人が少なく、叩き込んで失敗する例を避けたいのだそうだ。大した力が掛かるわけでもないので、このような簡易キィでも十分だろう。組立て方は皆さんにお任せする。

small pulley 小プーリィの細く飛び出した軸穴部分は、ごく適当に削っても、バランスその他で問題が起きることは無い。筆者は旋盤で削るのが面倒だったので、手で回転させながら卓上型ベルトサンダで落とした。紙やすりの上で手で磨っても、すぐ完了である。

mortor ballbearing 面取りを施し、削り屑をブラシを通して掃除した。溶剤スプレィで洗って、ミシン油を塗って嵌め込んだ。キィは使わずに、ブラスのピンとネジで留めた。驚いたことに、差し込むとボール・ベアリングのインナレースの黒い油が均一に付いた。十分に平行に削れたということになる。削る部分の断面積が小さいので、アッという間に削れる。
 このベルトサンダは便利な道具で、ちょっとした調整はこれに限る。削れる速度が大きいので、保持するのも楽である。木材、スティール、ブラス、アルミ合金など、なんでも来い、である。

pulleys in correct height 試運転中の写真である。多少手間取ったが、ベルトは水平になり、最高速で廻してもモータ音しかしない。意外と、このモータはうるさい。ブラシがあるからだ。小さな三相モータを付けて、インヴァータで制御すると静かになりそうだ。あるいはブラシレス・モ−タだ。そうすると変速装置は不要となるかもしれない。そうなれば回転数は0〜5000 rpmまで無段変速である。出力も増大する。
 暇になったらやってみよう。しかし改良が無限に行われると、最終的には3軸マシニング・センタになってしまう。しかし、4軸ないと面白くないのだ。そうなると外注するほうが出来が良くなる。あまり考えない方が良さそうだ。

2018年01月16日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑷

belt drive⑺ ベルトを嵌めてみる。横から見て、完全に水平であれば、良しである。張力は1.5 Nほどだ。150 gf 程である。強くすると損失が大きく、弱くすると滑り易い。刃物が噛んだ時に滑る程度にすれば良いので、そのあたりはご自分で調節願いたい。
 この写真を見ると、小プーリィが微妙に低い。モータ軸に対してより深く挿さねばならないから、少し削る必要がある。

 回転数は3段階で、無負荷最大値で、3010, 1840, 1020 rpmである。この数値は実測値である。元の状態よりはるかに速くなったから、細い刃物を使い易くなった。

⑻ ガードの内側のスピンドル・ロックを掛ける部分がプーリィに当たる可能性があるので、黒い中空ネジを外し、アルミ部分を0.5 mm程度削り、ロックをやや浅めに留める。これはスピンドルを駆動ユニット床板に対して中心に置いたから起こることである。もし基盤をやや手前に付けたなら、このような問題は起きないであろう。(下から挿すネジが、手前に引張った時、スピンドルのフランジの、両方の孔の手前の縁で当たっている状態なら良いという意味である)

⑼  ガードを下からネジ2本を締めて、固定する。ガードにはスピンドル・ロックが付いている。鋼製のロック機構を考えていたが、径の大きなところで押さえれば、小さい力で済むので、ブラス製部品にした。中にはスティールの棒が通っている。相手はアルミ合金だが、十分持つだろう。ミシン油を注しておくと良い。基本設計は筆者で、造形は任せた。なかなか良いと思う。

 これで機械的には終了で、筆者による組立て時間は、このマニュアルを書きながら、2時間半であった。すべての部品は小気味よく組上げられる。作業を始める時に、工具、材料をすべて用意しておくのが、時間節約の基本である。
 キィは使っても使わなくても良い。ただ、キィを使うときはバリを取って、するすると入るようにしておく必要がある。引っ掛かるようでは分解ができない。キィ使用の時は、一般的には軸方向の抜け留めが必要で、軸にスナップリング等で留めねばならない。それを使わないようにするためには、ネジでキィを押し付ける必要がある。ブラスの小片を使うときは、軸のキィ溝にそのブラスが喰い込むようにしている。


2018年01月14日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑶

installing motor mount⑹ モータを取り付けたモータ台を本体に組み付ける。ネジの組み立て手順は、この写真を参考にする。黒い大きなネジを締めて、ベルトを掛けた時、動かなければよいのだ。向かって左には、赤いファイバ製のワッシャを噛ませ、適度な締付トルクを与えながら、袋ナットを被せてロックナットにする。ブラスのシムには潤滑油を一滴落としておく。右の手で締めるネジには、大きな金属製ワッシャを挟む。

⑺ 紫の↑はガードがクイルに当たりそうで削ったものだ。実際は当たらないのだろうが、見掛け上、気になるので1 mmほど削った。

⑻ 赤の←の、コレット引きボルトを少し削って、細くした。寸法があまりにもぴったりで、締めると抜けて来ない。ということは締付トルクがかなり無駄になる。後で引抜く時も、喰い込んで面倒である。旋盤で0.05 mm削ったら解決した。
 dressing pullbolt headこの種のガタは、仕事を早く進ませるために必要なガタである。こういうところは、中国製らしい。経験がないのでわからないのである。薄くグリスを塗っておくと、締め易い。
 この引きボルトはM10である。筆者はインチサイズのMT2コレットをかなり持っているので、それ用の引きボルト(3/8”、約9.5 mm)を作る。普通の長尺の全ネジにナットを熔接して削り落とせばよいので簡単にできる。何本か作っておけば欲しがる人もいるだろう。


2018年01月12日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑵

brass shim 向かって左の円柱上端にはブラス・シムが入っていて、0.050 mm低い。問い合わせたら、「そのようにした」と言うのだ。こちらの図面には描いてなかったが、摩擦が大きすぎるので、たまたまあった0.050 mmのシムを切って挟んだと言う。なかなか気が利いている。注油しない人が多いので、減らない工夫だ。右の方は見るからに摺動面で、減りを気にする人は多いが、ピヴォット側は放置ということが多い。アルミ合金は磨り減りやすいので、このような配慮が必要なのだろう。勉強になった。

⑴ まず手前のガードと角材を外す。ネジは固く締まっている。これを取っておかないと、あとでベルトがはまらない。 

⑵ モータのギヤを外して捨てる。新しいプーリィの径の大きい方を上にして、飛び出しているところが、モータのボールベアリングのインナ・レースに当たるように嵌め込んで、様子を見る。この時、シャフトにはリング、ワッシャなど、何もついていないことを確認する。小プーリィの飛び出しているところを0.8 mm削り落とす。削るのは、旋盤が一番良いが、サンドペーパ上で回転させながら削っても何ら問題ない。この操作によって、小プーリィは0.8 mm高い位置につく。面取りを施し、孔の中をよく掃除する。 キィ溝にネジ穴を合わせて、完全に奥まで差し込み、穴からブラスのピン(短い方)を入れ、ネジを締める。元のキィは使わない。ミシン油程度の油を塗っておいて組むと楽である。
 要するに、ベルトは水平でなければならない。

⑶ モータ台にモータを置き、線の取り出し方向を考慮し、位相を決めて固定する。プーリィを傷つけないように、箱に入れて保護しておく。ネジは元のモータ取付け用を用いる。

installing base⑷ 下から駆動ユニット床板を留める。付属のM6ネジを 用いるのだが、位置が決まりにくい。手前に引張りながら、側面がベッドと平行でなければならない。半締めして、プラスティック・ハンマで叩き、細かく移動させて本締めすると良い。外すことは無いと判断すれば、少量の接着剤を塗っておくと良い。将来ビビリが発生することが無くなる。
 このM6のネジ(5.88 mm)は、スピンドルのフランジの孔(6.44 mm)に比べて小さい。ガタの中で、基盤を最大限手前に引張った状態で締める。

fixing pulley⑸ 大プーリィをスピンドル(クイル)上方から挿す。下まで完全に落とし込む。この時、駆動ユニット底板からプーリィ下面まで、1.3 mmのクリアランスがあるのが望ましい。0.5 mm板と0.8 mm板を重ねて挟んでおいて、引き抜けばよいのだ。もっと低くしたいが、大プーリィがガードの角材に当たる。

 せっかくキィ溝があるので活用した。キィの幅はぴったりだが、高さ(法線方向)がやや高いので、ベルトサンダで削り落とした。プラスティック・パイプ(竹筒でも良い)を嵌め、プーリィをハンマで軽く叩いて沈める。所定の位置で、ネジを入れて締め上げる。キィを使ったので、ブラスのピンは使わなかった。プーリィを落とし込む時、ハンマで不均等に叩くと、クイルが曲がる可能性があるから、必ずパイプ状の物を介して叩くようにする。仕上がりは良く、簡単に入るようになっている。精度は十分だ。むしろ、クイル表面のざらつきのほうが気になった。細かいサンドペーパで擦って、メクレ等を取り除き、洗浄スプレィで洗ったのち、ミシン油などを塗って嵌めると良い。サンドペーパを使うと砥粒が落ちるので、孔をあけた新聞紙を被せて、全体を保護し作業終了とともに掃除機を掛ける。

2018年01月10日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑴

 この造形は、以前取り寄せたアメリカ製のものとはかなり異なる。ベルトの嵌め替えの面倒な曲面ガードを廃し、厚板でガードした。また、ネジ一本でベルトの張替えができるようにした。しかも指で廻せるようにしてある。3段変速だから、この設計は役に立つはずだ。
 筆者は最近右手拇指が故障しているので、これでも少々廻しにくい可能性がありうる。夜中に関節が外れることも、たまにあるのだ。
 そういう時は、例のセレーションの付いたレヴァに取り換えざるを得ない。歳を取ると、様々なところが劣化してきて、模型工作すらできなくなるような気がしてきた。
 要は使い過ぎたのだ。こういう作業を何もしない人は、殆ど変化がないように見える。安楽マニアは問題が起こらないのだろう。

 先日庭のデッキを修理する時に、帰省中の長男と3時間ほど働いたのだが、金槌をフル・ストロークで打ち下ろせないことに気が付いた。親指が弱く、握力がないからだ。以前は83mm(3.25インチ)の釘を1ポンド(455 g)のハンマで3回で打ち込めた(これがアメリカの大工の必須事項)のが自慢だったが、もうダメである。インパクト・レンチも両手で保持する。

 クイルから歯車を抜くのに困る人はお知り合いの自動車修理屋あるいは機械修理屋、水道屋などに頼んでギヤ・プーラを貸してもらうと良い。壊しても良いものなので、ドリルでいくつか孔をあけ、鋸で切れ目を入れて、割ってしまっても良いだろう。鋼製の中空軸は意外と固く嵌まっている。クイルには焼きが入っているわけではないので、曲げないようにしなければならない。どこにも借りる伝手がない場合はお貸しするが、たくさんの要望がある場合には、こちらからの指定順で、巡回させることになる。その場合の送料は、順次ご負担願う。

2018年01月08日

X-1 micromill conversion kit 到着

conversion kit 年末に発送したと連絡があったが、正月を挟んだので、少々時間が掛かった。DHLで 名古屋空港NGOの倉庫までは来ていることが分かったが、通関に手間取ったようだ。関税は十分に払うからと言ってあったのだが、安くしてくれたようだ。

 綺麗な仕上がりで良かった。スピンドルのロックも思うような構造にしてくれた。ネジはドイツ製だと言っているから、信用できるはずだ。
 ベルトは三ツ星の高級なベルトで、これは日本で調達した。不思議なのは外地の方が安いのだ。これを取り寄せてくれた親しい工具屋のK氏は、「大量だったら向こうから仕入れるべきだな」と言う。特別価格にしてくれても、1本1060円だった。向こうでは普通に一本買っても900円だという。在庫がなかったようなので日本で調達した。

 どういうわけか、英語での説明書を入れてくれたが、文法的ミスで理解不能な点が多い。このブログで取り付け方をお知らせするのが一番簡単だろう。
 
 これであの騒々しい運転音と、歯車駆動の不安が一挙に解決するのなら、有難いと思っている。実は2回喰い込ませている。モータが非力で助かっているが、怖い話だ。プラ歯車はゴミ箱に叩き込んだ。

 実は珍しくインフルエンザに罹り、寝込んでいる。発送は少し遅れるかもしれない。

2018年01月06日

インヴォリュート歯車

 その方にどうして100%ということがありうるのかと聞くと、99.99%以上だという。少し後退した。何か怪しい。その電車に乗ってみて音を聞いた。モータ音以外に歯車音もある。これでは99%近辺だ。歯車箱を触ってみればすぐわかる。かなり温かいはずだ。
 普通の平歯車は98%である。効率を上げるには径を大きくしたり、モヂュールを小さくする以外に、斜歯(はすば)にする方法がある。そうすると重なり噛合い率が上がる。

 噛合い率とはいくつの歯が噛んでいるかということである。斜歯なら、3枚程度を噛ませることができる
 転位させて歯先と歯元を薄くすることができれば、殆どがピッチ円付近の接触になり、転がり摩擦に近づく。この辺のことは50年前に亡父から聞いた。
 船のスクリュウのように連続負荷なら良いが、鉄道では衝撃負荷が多いので、斜歯は感心しないのだそうだ。斜歯は弱いのだ。それから、設計時は歯車の効率を95%と見積もって、発生する熱をどうやって捨てるかを考えておかないと実戦で役に立たないのだそうだ。今はもう少し良いだろう。潤滑油の進歩もある。第二次世界大戦の兵器はそんなものだったのだ。斜歯の場合は負荷によって性能に差が出る。力が掛かると歯が曲がるのだそうだ。要するに彼は、軽負荷での性能を拡大解釈しているのだろう。

 もう一つ父は付け加えた。斜歯にするときは歯先、歯元ともに薄くしてはならない。すべてが当たるようにすると、効率が上がるというのだ。その理由は聞きそびれたが、多分、噛合い率が上がり、歯が曲がりにくくなるのだろう。

 話題になった電車は、出力が小さいので斜歯であるが、機関車などで一台1MW(1300馬力)もあるモータでは使えない。即ち効率は98%程度だ。
 歯車の効率はコンピュータが進歩し始めたときに、数学の先生に計算してもらった。そう簡単には騙されない。一応は勉強しているのだ。


2018年01月04日

続々々 困った3条ウォームギヤ

 歯車は奥が深い。筆者は父から聞いた話と、数冊の本を読んだ程度の知識しか無い。ウォームギヤについて知っていることは、
バックラッシを無くすることができ、無音駆動が可能であること
・摩擦を低減することができれば効率は上がること
・進み角を大きくすると単純な滑りではなく、転がりに近くなって効率が格段に上がること、しかし、進み角が18度を超えると、歯形を変更しなければならない(ホブで切る場合)こと
である。
 先日来、この項目で、某模型店製の進み角の小さな3条ウォームを紹介しているが、ある方から次のようなお便りを戴いて、新年早々大笑いした。

 3条ウォームの件は本当にお気の毒様です。私に言わせれば、小さな進み角の制限のもとで3条もの溝を成立させる方がよほど難しいです。故にこれは、貴殿の方式を貶めるため、相当頭の切れる策士が緻密に練った謀略に違いありません。

 これはジョークにしても、どうやって考えるとあんな結果になるのかは、本当に不思議だ。



 話は替わって、スパーギヤ(平歯車)の効率は100%ではない。この動画は歯車が摩擦しながら動いている様子をよく表している。この線の角度が圧力角である。中心から遠い部分と近い部分での周速度は異なる。その速度差分が損失を生じる。ピッチ円上だけが、完全な転がり摩擦だ。
 スパーギヤの効率を上げるには、ピッチ円付近でしか接触しないようにすることが必要である。径を大きくすると、ピッチ円付近しか接触しなくなる。即ち、相対的に大きくするにはモジュールを小さくすることが同じ働きをするだろう。その他、高度な工夫もあるが、結局は摩擦から逃れることはできない。即ち効率は100%にはなりえない。

 しばらく前、ある実物業界の方が、インボリュート歯車は完全な転がり摩擦だとおっしゃるので、質問してみた。どうやら歯車メーカの効能書きの受け売りをしているようで、実際に運転時に触ってみたことは無さそうだ。100%なら発熱は無く、潤滑も要らないだろう。
 人の言うことやカタログを信用する人は進歩できない。しかし、その方は筆者に「もっと勉強せよ。」としか言わなかった。ご自分がどんな勉強をしたのかを、聞いてみたかった。



2018年01月02日

続 転車台インデックス装置の完成

 いくつかお答を戴いている。ほとんどが正解である。ヒントを目ざとく見つけられて、完璧なお答の方もある。一方、いつもコメントを戴く方々からは、お答がなかった。 

 正解は高粘度シリコーン・グリースを用いた粘性結合継手である。信越化学がいくつかの粘度のものを出している。中粘度のものが良かった。これはトイレの蓋のヒンジなどに使われているアレである。ゆっくり閉まるのは粘性による。写真の中に信越化学の丸い瓶があるが、それがヒントである。ShinE…という文字しか見えないが、分かる人にはすぐ分かっただろう。
 この種の継手を鉄道模型に使ったのは、これが世界で最初の例ではないだろうか。MRに投稿してみようと思う。作るのは簡単で、消耗せず、半永久的に持つ。

 シリコンsiliconとシリコーンsiliconeは異なる概念を指す。前者はケイ素の単体あるいは元素を指す。例えば、シリコン整流器という言い方をする。後者はケイ素と酸素が交互に結合した骨格を含む合成高分子(シリコーン樹脂)を指す。間違える人は多い。

 さて、円柱とそれにかぶさる円筒の隙間を変えて、様々なテストをした。隙間が0.1 mmでは狭すぎる。0.2 mm弱が一番良いことが分かった。長さは必要とされるトルクに応じて調整した。廻していると温度が上がるかと思ったが、出力がせいぜい 0.3 W 程度なので、30分くらい廻っていても温かくなる兆候は見られなかった。ある程度の推力を生み出して停止していても、何の問題もない。バーサインの分だけ押し戻されても、推力が増えることはない。バネを介して押すよりはるかに確実であり、利点が多い。
 この装置には3つの粘性継手が使われている。作動が穏やかである。よく見るソレノイド等のガチャガチャとした作動ではないが、正確なインデックスが可能である。ずれても戻せるところが面白い。


Recent Comments
Archives
Categories
  • ライブドアブログ