2017年05月

2017年05月30日

Old Black Joe

OBJ しばらくチラ見せしていたのは、これである。軸配置がまさか2軸とは思わなかった方が多いだろう。今月のTMSに載っているそうだ。筆者はまだ見ていないが、写真が一枚掲載されているとのこと。

 オリジナルは伊藤剛氏の1946年製の機関車である。元は35mmゲージだったらしい。それを32mmゲージにしたので、少々バランスが良くない、当時はそんなことを言う人はいなかった。
 戦争中、外地でイギリスの凸型機関車の写真からスケッチを起こし、それを日本に持ち帰ったらしい。その機関車はこんな形をしていたようだ。

 今年は名古屋模型鉄道クラブ結成70周年で、本来は伊藤剛氏の存命中にということで、75周年を5年早めて大規模な集会をするつもりだった。伊藤剛氏が、不慮の事故で他界され、少々淋しい年次総会ではあった。

OBJ on track 今年の競作は伊藤剛氏の記念作 ”Old Black Joe" を各ゲージで作るというもので、Oゲージ部会では、ステンレス板をレーザで切り抜いて頒布し、動力は筆者が提供した「3条ウォーム」 + 「コアレスモータ」で、すべて押して動くようにした。ステンレス車輪でタイヤ絶縁だ。1台で数輌の機関車を牽引することができる。

 レーザで切り抜いた板を頒布できたのが少々遅くなり、実質2箇月で製作せねばならなかった。原作の雰囲気を残しつつ、スケール感を出している。

2017年05月28日

イギリスの機関車のブレーキ

 鉄道発祥の国のブレーキを調べている。

 古い機関車はほとんどニュートラルである。近代機は前進に対して明らかにリーディングである。

leading brake この機関車は3気筒の機関車で両抱きであるが、位置を工夫して、リーディングにしている。一つ目(右側)が接触した時の位置を支点として、二つ目(左)のシュウが接触する時の角度を見ると分かる。二つ目の角度が大きすぎて、喰い込まないかと心配するほどである。このリンク機構は興味深い。

leading brake 2 この機関車は4軸機である。これも明らかに前進に対してリーディングである。イギリスの機関車は、前抱きが多いのは日本と同じ理由なのかが知りたい。

 

neutral この機関車は戦後イギリスで建造された中国向けの機関車である。細かく見ると、アメリカの特許をたくさん使っている。補器類もすべてアメリカ製である。
 ブレーキはやはり後ろ抱きで、鋳鋼製のブレーキ・アームを用いている。支点の位置はニュートラルである。動輪が減ると少しずつリーディング方向に向かう。この理由が知りたい。    写真は筆者撮影

 
 
 

2017年05月26日

日本の蒸気機関車のブレーキ

 T氏から、さらにいろいろな機関車の調査結果を教えて戴いた。機種によっては、リーディングとトレーリングを混在させているらしい。 

 再検証した範囲では、以下の様だ。

・9600は前進で明らかにトレーリングである。
製造当時は最重量級の列車を牽いていたのだから、これは不思議である。
・8620とC56の第3動輪、C58の第2動輪は前進で明らかにトレーリングだ。いずれも軽量の中小型機なのでブレーキが強すぎると動輪が滑走しやすい可能性があるだろう。
・大型テンダ機のC51、C55、C57、C59〜C62、D51、D52は前抱きで前進リーディング(ただし、かなりニュートラルに近い)
C53は3シリンダの関係で軸距が独特なので、第1動輪だけ後ろ抱き、第3動輪は長いリンクで吊っているため、第3動輪だけ極端にリーディングだ。恣意的か、それとも単なるスペースの問題か?
・D50はかなりきわどいが、第4動輪だけはトレーリングに見える。

 蒸気機関車の動輪はすべて連結されているので、動輪群全体でブレーキ力確保という考え方かもしれない

 ともかく、前抱きはトレーリングというのが非常に浅い思考であったことは、反省している。


2017年05月24日

EMD SD45

SD45 pingpong table SD45は1970年頃導入された、当時としては最大級の単エンジン機関車だ。V型20気筒ディーゼルエンジンを搭載し、ラジエータ面積を稼ぐために斜めに配置したデザインは刺激的であった。長大なフレーム一杯に、長いフッドが載っている。
 音は独特で、遠くからでも認識できた。非常に低い音というよりも空気振動があり、腹の皮が共振した。KTMはインポータの US Hobbies からの発注でこの機関車を製作・輸出した。祖父江製作所製ではない。構成は明らかにGP7、SD7とは異なる。エッチング板を使用した非常に簡素な作りである。板がすべて焼き鈍されているので、剛性が足らない。台枠を補強して軽衝突に耐えるようにした。
 
 これは1980年代にアメリカで購入した。当然のように中身は外して売却し、3条ウォームを搭載、慣性モーメントを稼ぐために巨大なフライホイールを搭載した。モータ軸よりも1.3倍ほど増速している。これ以上の増速はコマの効果が出て危険である。これは実験上求めた値だ。
 我が家の地下レイアウトでは、最高速でpower off すると、慣性でエンドレス(約30 m)を一周してきた。 軸重は500 gwである。運転は楽しい。

 実物はしばらく見ないと思ったら、キャブ上に卓球台みたいなものを載せて復帰した。しかも機番が1から始まっている。実物の機番はその時々の空き番号を付けるので、タービンが引退した後の番号を付けたのだ。実物の写真があるので、それを見て改造した。この機関車は”1”になる予定だ。
 屋根の上の”pingpong table”は無線による列車の総括制御のアンテナであった。

2017年05月22日

Alco RS3's

ALCO RS3's このRS3は、ケムトロンのキットから組んでいる。この板は30ミル (t0.75)で、比較的薄い。床フレームは、角棒を貼り足すので、大変重い。組むときはガスバーナが要る。
 キャブ妻板、フッドの妻、パイロットはロストワックス鋳物で、重厚である。このキットは、GP7の時代とは異なり、かなり洗練されている。手際よくまとめてあり、大量に売るつもりであったのだろう。しかし、これを完全に組める人の数は少なく、大抵の人は半分まで行ってギヴアップする。それを安く買ったのが、この2輌である。

RS3 cab cutout 台車はケムトロン・オリジナルのロストワックス一体のものと、韓国製のsprungと比較している。このキットで最も気になるところは、フッドを前後で一体にしていることである。アラインメントを考えるとそれは良いが、キャブの中にフッドがあるのは許せない。
 カッティング・ディスクで、無理矢理に拡げる。こうすれば床板が張れるし、運転台も置ける。

 フッドがあまりにも流麗で、その表面には何もない。本物にはヒンジ等があるから、ロストの部品を付けてみよう。つるりとした機関車ほど、多少の凹凸があると、実感味が増すものだ。


2017年05月20日

EMD SD7

SD7 このSD7は非常に珍しいものだ。これも祖父江氏のゴミ箱から再生したものである。祖父江氏いわく、「これは安達さんが作ったパイロット・モデルだよ。ロング・フッドの細かい造作はすべて手作りだ。このダイナミック・ブレーキ・グリルは、信じられねえ仕事がしてある。ほらご覧よ、全部薄板で組んであるから透けてるよ。あの人はこういう仕事は本当にうまいよねぇ。」 (この写真はしばらく前に撮ったものである。)

SD7 pilot model キャブやショート・フッドは無かったから、自作である。グリルは白眉で、向こうが透けて見える。本物のようだ。量産品はドロップで押しただけだから、透けていない。細かな造作もすべて手仕上げである。 細かな部品もすべて一つづつハンダで貼り付けてある。

SD7 floor 床板は安達庄之助氏が作ったもので、板に角材を貼ってある。台車はこれもアメリカ市場で購入したものだ。駆動部品は3条ウォームで、逆駆動できるようにしてある。ロストワックス部品はまだ高価であった時に購入したものを付けている。
 量産品も持っていたが、エッチング製であまり面白くなかったので、別の機関車とトレードした。

SD7 extended exhaust pipes 筆者としては看過できない間違いがあった。ダイナミック・ブレーキのブリスタ(膨らみ)の、内側の造形である。本物は凹んでいるのに、資料不足で、斜面を作ってしまったのだ。この種の修整はかなり手間が掛かる。切り抜いてL字型の板を張り、左右に隙間がないように三角の板を嵌める。この写真は修整後のものである。排気管の立っている場所が斜面だったのである。
 排気管は延長型に作り替えた。この種の仕事は伊藤 剛氏に手ほどきを受けた。
小さい物を付けようと思ってはいけませんよ。大きなものを付けておいて、それを小さくするのです。」
 パイプを焼き鈍して、芯金を入れてつぶす。切れ目を入れて二枚の板を差し込み、ハンダ付けする。それを削って修整すればすぐできてしまう。 2本が15分で完成だ。伊藤 剛氏のご指導の賜物である。


2017年05月18日

EMD GP7’s

GP7's  Kemtronのキットを組んだものがかなりある。GP7だけで5輌ある。うち1輌は祖父江製作所製の製品のジャンクから組んだものだ。ごみ箱に捨ててあったものを拾ってきて、作った。ロングフッドが曲げてなかったので、切り離して角に骨を入れてハンダ付けしたのち、やすって丸みを付けた。こういう工作は得意だ。
 ケムトロンのキットはエッチングだけなので、板金打抜きのパーツを足して、より凹凸を大きくしている。細かい部品はロストワックスだ。この頃はロストワックス部品が大暴落だ。買う人が居ないのである。バケツ一杯50ドルで買った。一昔前なら、2000ドルでは買えないものだった。
 おかげで、ホーン、ベル、ライトなど好きなものをテンコ盛りにできる。贅沢な限りだ。
(この写真はしばらく前に撮ったもので、車体の上下を締めてないので隙間が見える。)

 台車はカツミが輸出した祖父江製作所製を、アメリカの市場で手に入れたものだ。軸箱がブラス製のものは加工してそのまま使えるが、1970年頃輸出したものは、軸箱がダイキャストである。部品が微妙に膨らんで、中の篏合させてある焼結軸受合金が外れて来る。やはりダイキャストはダメである。それ以前のように割れることはないが、微妙に膨張するようだ。

 仕方がないから、軸箱をすべて捨て、フライス盤でムクのブラスから作った軸箱体に、ロストワックスで作った軸箱蓋をハンダ付けしたものと取替える。こうすれば1000年でも持つ。軸受にはボール・ベアリングを入れる。機関車は重いので、ボール・ベアリングの効果は大きい。
 ケムトロンの機関車は板が厚いので、素組みでも質量が1300gもある。ぶつかっても壊れない。走行音は重厚である。こうでなければならない。

2017年05月16日

H氏のWiFi制御

 このブログの開設当初からの読者のH氏が、特製のWiFi制御機関車を持って来られた。先日お渡しした機関車を加工して下さったものだ。プラスティック・ボディだが、金属ボディをかぶせても作動することが分かった。

iPadGP7-1demo 機関車の制御部分がWiFiの発信機である。機関車のSWをonにすると、電波が発信され、手元の iPad に届く。iPad の設定を開いて、WiFi設定をすると”GP7-1”が出ている。それをタッチするとつながる。

functions 画面のスロットルを触ると10段階で加減速する。減速を続けると符号が変わって逆行し、そのまま加速する。
 物理の法則の ma を実現しているような感触である。
 ファンクションは4chあるので、前照燈、尾灯、室内灯、ホーンの on, off ができることになる。

 電池は006P型ニッケル水素電池だ。少々出力が不足する可能性があるので、大きな電池を探している。先日の来訪時には、ブラス製の客車(ボールベアリング装備)9輌(約13 kg)を引張って1.9%の坂を登らせた。機関車に補重がしてないので、スリップしている。500gほど補重すると良いだろう。2往復すると電池が無くなった。仕事量としてはかなり大きく、小さな電池ではおのずから限界がある。
 隠しヤードから、多数の貨車を引張り上げて列車を仕立てるのだ。牽引力を稼ぐには重連が不可欠だ。もう一つの機関車はブラス製で、電池を積むようにする。単二型を8本積めるはずだ。重くなる。

 この方式は簡単に作れるそうだが、取り敢えず1チャンネルだけだ。重連を総括制御することは難しい。複数の機関車を同時に扱うには、手元にWiFiの受信ができる端末を複数並べることになる。1台の発信機で重連するにはジャンパ・ケーブルを渡して半永久連結として、電力、モータ出力、燈火出力を接続する必要がある。見栄えを考えると、連結部が賑やかになるのは避けたいが、仕方がない。


2017年05月14日

続 GP20's 

extending damaged areabrass fixing この手の補修は得意で、このような方法を採る。
 t1.5 のブラスの平角棒をフライスに取り付け、幅の半分を1 mm落とす。段を付けたブラスの棒をクランプで挟んで表面を面一(ツライチ)にし、フラックスを浸み込ませてハンダをコテで等間隔に盛る。あとはガスバーナで焙って浸み込ませると完全に付く。それをベルトサンダで注意して削っていく。

GP20's やり過ぎるとまた同じことになるので、+0.3 mm 程度で止めて、あとは大きなヤスリで少しずつ削る。最終的に、定盤の上に置いたサンドペーパで平面を出す。定盤は作業後、よく清掃しておかないと、傷がついて泣きを見る。出来上がると大したもので、失敗作とは思えない。この写真では中心部に隙間が見えているが、ネジを締めれば密着する。

 ブラス工作はこのようなことが簡単にできるというところが非常に優れている。部分的に切り外して、別の板を嵌め込み、ハンダで埋めてごまかすことも容易だ。これがダイキャストだったり、プラスティックではそうはいかない。
 アメリカの友人の失敗作をよく修理して上げたことがある。彼らは非常に驚き、”これをビジネスにすると良い。”と言ってくれたが、そういう仕事ばかりやるとかなり疲れるだろうと思った。しかし、久し振りにやるとなかなかの快感である。

 また、最近の韓国製のような薄い板の製品は勘弁してほしい。厚板でないと修理が完璧には行えない。これは40ミルであるが、以前は50ミル(1.27 mm)もあった。快削ブラスであって、フライスで調子よく削れる。

 筆者はこの種の機関車を2台ずつ持っている。70年代によく見た8重連、10重連を再現するためである。動力はそれぞれ片方に入れるだけで十分であろう。

         お願い
 この後ろ側の機関車が盗難に遭いました。国内では珍しい機関車ですから、お見かけのときはお知らせください。複数人で見学に来て、持ち去ったようです。


2017年05月12日

GP20’s

GP20 2 1960年頃のディーゼル 電気機関車である。 ターボチャージで2000馬力になったばかりの、当時の新鋭機であった。EMDの既製品にUPが独自にタービンを搭載して実験したので”Omaha”と呼ばれていた。
 1970年代には既に老朽化して入替用に使われているものもあった。二台一組での運用が多かったように記憶する。Kemtron が模型化していたので、それを入手するチャンスを探っていた。

 ebayで一つ入手したのとほぼ同時にアメリカのショウでもう一台入手した。前者は150ドル程度、後者は100ドル程度であった。安くて良いのだが、後者には安い理由があった。エンジン側のフッドがおかしい。後端で4mm程度低くなっている。これでは安いわけだ。

GP20 1 組んだ人はフッドの下端の不揃いをベルトサンダで落としたのだろう。ベルトサンダの削り速度は非常に速い。うっかりよそ見をしたか、人と話しながらやってしまったのだろう。あっという間に削りすぎて、後ろに傾いた。ショートフッドが浮いたのでハンダ付けをずらしてゴマ化した。それでもキャブが当たるので削ってしまった。というのが想像できる顛末である。
 このケムトロンのキットは1.01 mm(40ミル)のブラス板に深くエッチングしてあり、とても堅く重い。筆者の好きなキットである。ハンダ付けは細いガスバーナで行うと全面ハンダ付けができる。写真はキャブ下に2 mmの角線を貼り付けた状態である。これを削って修整する。

 さて、買ったキットをホテルの部屋でばらし、動力機構をごっそり外して、次の日に売ったら80ドルで売れた。つまり、車体を20ドルほどで手に入れたことになる。先に買った方も同様に売却した。筆者はこのような形で、上廻りを廉価で入手している場合が大半である。車体は、現物が目の前にあった時代なので、それほど大きな間違いはない。


2017年05月10日

6-wheel trucks

6-wheel truck UPの流線形特急列車の荷物車、郵便車は重いので3軸台車が使われている。その製品を、アマチュアが作って売っていた。20年ほど前に見たのは、イコライズはするものの、構造をわかっていない人が作っていたので全く良くなく、一つ入手したがさらに欲しいとは思わなかった。

 これはテキサスのDennisが作ったもので、なかなか良い形をしている。構造を理解している人が簡略化しているからだ。既製品の2軸台車を切り継ぎ、新製した部品と組合せている。ハンダが多そうに見えるが、実はこれくらいがちょうど良く、鋳物のすその部分が表面張力でうまく表現できる。大きなコテで、多めのハンダを付けた。
 ここに部品の継ぎ目が見えると気分が悪い。そういう模型をよく見る。
 バネはぴったりのものがないので、間に合わせである。いずれ、旋盤で線を巻いて作る。適当な長さに切って、ベルトサンダで端面を落とせばできあがりだ。

 ブラスの線でも、巻けば加工硬化してちょうど良い硬さになり、へたらない。

 韓国製はわざわざ揺れ枕を作って、それがうまく作動しない。模型では揺れ枕はそれほど効果がない。人間が乗っていないので、効果があってもなくても一緒である。すなわち無くて構わない。

 当鉄道には3軸台車付きの車輌が3輌ある。どれもこれも重く、2kg近くあるから、ボールベアリングを付けている。レイルの継ぎ目の音が良い。


2017年05月08日

Hemmschuh

hemshoe 部品箱を探していると、思わぬものに遭遇する。もう20年近く忘れていたものだ。綴りは hem shoe と二つに分ける方法もあるようだ。英語ではないのだけど、英語風にしている。googleで検索すると、日本の会社が出している。これは商品名なのか、それとも一般名なのかが、わからない。日本語版WikipediaにはHemmschuhと言うドイツ語風の綴りが載っている。ドイツ語版Wikipediaには、最初にこの綴りがある。

 英語ではこれを何と言うのだろう。多分、skid(橇・そり)だ。

 日本の会社の商品は、上の写真とは微妙に異なる形である。このロストワックスの鋳物は、実際に作動する。レイル上に置いて、車輛を突っ込ませると、多少スリップして止まる。左右にガタがあるので、それを少し手直しするともっと確実に止まるだろう。
 片方のレイルだけではなく、両方であればより確実に、脱線もなく止まる。

 車止めが固定式なので、その前には置いておきたい。

  

2017年05月06日

続 ブレーキの設定 

 T氏から興味深い文章を送って戴いた。イギリスの蒸気機関車を設計する手法について述べた本のようだ。”How steam locomotives really work?”  という題の本であるそうだ
 

 servo brake という言葉が出ている。すなわち倍力装置のことである。要するにリーディングにするということだ。
 日本の文献には、今のところこの記述が見つかっていないという。日本型蒸気機関車が前抱きブレーキにしたのは、後ろ抱きにするとブレーキ・梃子(てこ)が圧縮荷重を受け、振動することを嫌ったためのようだ。アメリカ型の近代機では、ブレーキ・アームは極端に太く、圧縮に十分耐えるようになっている。

 ヨーロッパでは、前後進でブレーキ力が変化しないような設計を推奨しているようだ。タイヤが減ると、どうしてもどちらかに傾いていくだろう。よく見ると、磨り減っていくと、リーディングでもトレーリングでもないニュートラルのところに行くようだ。そこで取り換えるのだろう。

 久し振りに、頭をよく使って結論を導き出せた。何か非常に爽やかな気持ちだ。チャンスを与えてくれたT氏には感謝する。


2017年05月04日

ブレーキの設定

 よく考えてみれば、鉄道車輛にとってブレーキは生命にかかわる部分だから、細心の注意を払って設計されているはずだ。
 前に付いているからトレーリングだと信じ込んでしまったことは、恥ずかしい。物理的な考察をせずに、見かけだけで判断してしまったのだ。

self actuating brake 図を描けば、ぶら下がったブレーキと同じであることに気が付く。Aはリーディングであることは明白だ。B2はAと同じでリーディングである。ブレーキの腕には押す力が掛かる。B1は腕が引っ張られているだけの違いでこれもリーディングに相当する。物理で、「押すと引くは同じだ。向こうから見るかこちらから見るかだ。」と習ったのに、忘れてしまっている。この図ではB1とB2はつながっているように見えるが、別のものを考えている。

 またまたモップの絵を描くと右の図である。上を押すのと、下を引くのは結局は同じことだ。

 昨日から、いろいろな人と意見の交換をしていた。出てくる意見はどれも面白い。動輪が減るとどうなるかということを気にする人が複数いた。確かに接線が中心に近づくと支点を通るようになりかねない。おそらくその手前でタイヤを取り替えると思う。ブレーキ・シュウを取り替えても関係ない。ブレーキ支点を移動できれば良いのだが、そうなっているようには見えない。

 self-actuating (自己倍力装置)である前提で設計しているので、必要とされるブレーキ力を下回ることは許されない。おそらく、機関士はそういうことには極めて敏感だから、効きが悪ければすぐに報告されるだろう。特に高速で走る旅客用機関車にとっては、旅客の生命が掛かっているから、その整備は大切だ。

 昔はそのような伝承があったのだろうが、現在の数少ない保存機の場合は、「これはブレーキが効かないのではないか」とは、気が付かないだろう。タイヤの摩耗限界が、そのような基準で決められていたことも知らない世代に入ってしまったのではないかと危惧する。事故が起こらなければ良いが。

2017年05月02日

日本の蒸気機関車のブレーキはリーディングである。

 先回の記事が出た直後に、表題に示す連絡を受けた。連絡してきたのは、工学のエキスパートのT氏である。(leadingと言うよりも、むしろself-actuatingと言うべきかもしれない。)
 T氏は、鉄道車輌よりももう少し大きなものの姿勢を制御する専門家である。
 

 そんな筈はないとも思ったが、彼の言うことが間違っていたことは、過去に一度もない。食事の時も上の空で、皿と箸でシミュレートした。彼の意見は正しいことが分かった。わざわざ、ブレーキを効かないようにするはずはない。

leading 結論は出たが、どうやって説明するかである。極端に簡略化した絵を描くとこうなる。それを平面上のモップにすると、下の絵になる。
 モップを塀の上に載せて、下から横に引っ張ると、モップは質量と重力加速度によって生じる摩擦力以上の摩擦力を生じる。喰い込む方向に力が掛かるのだ。エスカレータのベルトを拭くときにこういう装置を付けると、喰い込んで止まってしまうかもしれない。 

JNR C62 leading brake 実物の機関車の写真をじっくり見た。これはC62である 。確かに支点は接線より中心に近いところにあることが分かる。
 これで井上氏がよく効くとおっしゃった意味が、ようやく分かった。

 この件に関するコメントを沢山戴いているが、トレーリングであるという前提のご意見ばかりなので、掲載は控えている。ヨーロッパの機関車には、支点を接線上に持って行って前後進でブレーキ力の変動が起きないような設計にしたものがある。

 それにしても、T氏の眼力には恐れ入った。実はT氏からは、例の”天秤棒イコライザ”に関する解析も戴いているので、いずれそれも紹介したい。イコライザではないということである。

 追記: 添付のC62のブレーキの写真は、提供者のmon氏のご厚意で、圧縮前の、より鮮明な写真と差替えました。  

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