2016年01月

2016年01月30日

RP25との対比実験

RP25とLow-D もうすべて廃棄したはずのRP25が見つかった。使用済みのは、すべてアメリカの友人が欲しがったので渡してしまい、日本には存在しないと思っていた。
 タンク車を50輌博物館に移籍した。その中に、1輌だけ取替え忘れたものが見つかったのだ。交換するだけでは面白くないから、再度比較実験をしてみた。

 車軸寸法は現行のLow-Dと同じである。外して溶剤でグリスを拭き取り、踏面、フランジをよく清掃した。フランジに汚れが付いていないことを確認する。軸穴も洗って拭き取り、新しいモリブデン・グリスを少量塗って、再組立てする。

 RP25車をエンドレス上の最高地点から自由に滑走させて、到達地点を調べた。手で押すと誤差が生じるから、自分で自然に動き出す位置を選んで印をつけた。実験は12回行い、最大値と最小値を捨て、平均値を求めた。到達地点は15 cmくらいの範囲に収まる。
 次にLow-D車である。先ほどの車輛と全く同じように整備し、自由滑走させた。直線部分の加速は同等であるが、曲線を回る速度が明らかに大きい。到達地点は5.4 m先であった。これもばらつきは15 cm以内である。
 タンク車を走らせる向きは、当然同じにしている。車輪以外、すべて同一の条件である。

 RP25車輪を拡大鏡で覗くと、明らかにフランジが擦っている跡が見える。レイル側面の汚れが付着して、接触面ではそれがこすれている。ここまで来ればもう反論はできまい。
 この実験は公開で行ってもよい。何度でもできる。

・Low-Dはフランジで曲がってはいない。
・フランジが擦ると抵抗が大きい。
・模型と本物は異なる原理で曲がっていることがあっても不思議ではない。


 これでLow-Dに対する誹謗中傷は収まると信じたい。

2016年01月28日

続 フランジ

 実物の鉄道関係者にはフィレットなんて関係ないと言う人が多い。どうして図を見ないのだろう。実物のフィレットのRは小さい。レイルヘッドの丸みの1割増し程度である。テハチャピ・ループで見ると、車輪の形がレイルに転写されて、完全に一致している。レイルヘッドが多少狭くなっているのだ。塗油器でべとべとで、鉄粉を塗り固めたようになっている。
 それを見れば誰でもフランジで曲がると思う。

 一方、Low-Dでは丸みの比率が2倍はあるだろう。場合によっては数倍にもなるかもしれない。模型の線路は平型のゴム砥石でこする場合が多く、レイルの角は丸くなりにくい。その場合、比率は大きくなる。新品のレイルをスライスして顕微鏡で見たが、0.25から0.3 mmRほどである。
 半径比が大きいと上記リンクのP点まで行っても、当然一点接触である。現実にはそこまでは行かない。これは先回の写真でも明らかである。

 Low-Dの材質はSUS303である。摩擦係数が3/4ほどである。良く滑るから、まずP点まではいかない。試作の段階で0.4 mmで切り落としたものを作り、それでエンドレスを一周させた。全く問題なく走った。その車輪は吉岡氏のところに送ったのだが、戻ってきていない。それを見れば、「カーヴはフランジで曲がる」という実物屋さんも、納得戴けるのだろうが。
 実験がすべてだ。模型と実物は違うのである。

 フランジは推進運転の時の座屈防止には役立っている。あの高さがないと、とても持ちこたえることができない。先日、100輌の推進運転の実験をした。平面では何の問題も無いが、登り勾配の曲線を押し上げるのはむずかしい。微速後進で数メートル進んだのだが、2輌が同時に脱線した。

 来週は2輌の機関車で前牽き後押しをやってみる。DCCならではのゲームだ。半分くらいを押し上げるのなら、行けると思う。
 

2016年01月26日

フランジ

 修正したフログの部分のバックゲージ(back to back) が当たる部分を正確に28.45mmにした。これは意図的な操作である。Low-Dは29.0mm、機関車はすべて28.5mmに統一してあるので問題ない。とは言っても中にはハズレもあるだろうから、それをあぶり出すための方策である。

 108輌の長い貨物をゆっくり走らせて、そのフログの部分で観察する。どの車輛も静かに通過する。すべて合格だと思った瞬間、SPのカブースの台車がゴンと持ちあがった。そのカブースは韓国製で、車輪を替えてなかった。25年前から走っていたが、台車をばらすのが面倒で、そのまま使っていたのだ。
 車輪を見ると、踏面のめっきは半分剥がれて浮き上がり、フランジがかなり擦れている。彼らがRP25であると言っている怪しいフランジだ。バックゲージは28.32から28.42程度のばらつきだった。ホンの僅かだが、狭いので乗り上がる。
 早速外して、Low-Dのジャーナルにモリブデン・グリスを塗って嵌め替えた。もちろんこれで、なんの問題もなく走るようになった。(家に帰って、他のカブースも点検したところ、狭いのがもう1輌見つかった。カブースに対する注意力がなかったことが明らかになって、反省した。)

RP25 worn out 外した車輪を見て驚いた。フランジ全周が擦れている。二点接触の証拠もある。 なんという間抜けな設計だ。フランジでカーヴを曲がるという説もあるようだが、これはひどい。めっきが残っているということは、摩耗してこうなったというわけでもなさそうだ。 コンタ(形)が間違っている。今まで何も考えずに自宅のレイアウトを何千周もさせてきたのだ。たまたまフログのバックゲージがかろうじて通るほどの広さだったのだろう。フランジの背面には、ガイドレイルに当たることがあったので擦過痕が見える。

Low-D 15 years old 別の車輛を整備するために、Low-Dの汚れを拭いた。仙台に送って、カメラを搭載する専用車を作って戴くのだ。この車輪は裏を削って軽量化してあるから、5年前に作ったものだ。手で廻して塗装してある。毎日1時間ほど走っていたが、ほとんど磨り減っていない。フランジには何の跡もないと言ってよい。フィレット部の立ち上がりまでには多少の摩擦痕が認められる。裏にも接触痕は見当たらない。
 この車輪は一点接触しかしていないことは証明された。

 フランジが擦るような車輪は損失が大きいから避けるべきだ
。筆者は、これを言い続けている。しかし驚いたことに、「二点接触は問題ではない。」という反論があるそうだ。ライオネルだってそうなっているが誰も問題にしない、ということらしいが、論点が違う。条件が全く異なるものを比較出来ない。
 百歩譲って、ライオネルが効率を考えているのなら、それもありかもしれない。しかしライオネルは単なるおもちゃで、効率という概念はこれっぽっちもない。ガラガラ、ギャーギャーという音を立てて走る。音がするということはそれだけでアウトだ。ライオネルの付随車の車輪は左右が別回転するものもあるが、そちらの方は考察されていないようだ。

 博物館にお手伝いに来られた方は、どなたも走行の静かさに感動される。長い貨物列車が音もなく走るのだ。転動面の滑らかさが大きく貢献している。このカブースを最後に、めっきした車輪は一つもなくなった。めっきされたものは明らかに平滑性が劣るから、転動音がするのだ。 

2016年01月24日

フログの改良

 本線上に #10の分岐がある。#8でも良いのだが、たまたまある既製品を有効活用したかったのと、スペイスが十分な場所だったからだ。
 その分岐のフログは悲惨な形だ。鋭角の nose rail が短く、丸く仕上げてある。欠損部が長いので、車輪はガタンとはまり込む。音もするし、車体が傾く。機関車のように軸重が大きいものが通ると、かなりの衝撃を感じる。これでは駄目だ。
frog improvement その部分を切り捨てて作り替えるつもりだったが、ある方法を思いついてやってみた。丸い鼻先をある程度切り込んで、硬い材料でノーズを作り、ハンダ付けする。フランジウェイが広いのは、ウィングレイルを太くして解決するというものだ。後者は以前発表したが、前者は初めてだ。

frog improved このような力の掛かる部分を普通の洋白で作ると、すぐつぶれてしまう。厚い板を切り出して金づちで叩き、三角になるよう潰す。こうすると加工硬化する。さらにヤスリで成形し、切り込みにかろうじて嵌まるようにする。ハンダ付けしてから、ヤスリで少しずつ削って、ノーズレイルを形成する。
 ウィングレイルは、細い洋白板を逆ピンセットで挟んでハンダ付けする。簡単に出来る。バックゲージ、チェックゲージを入念に測定し、基準を満たすことを確認する。

frogs original and improved 元の状態と比較してみよう。黄色いほうが元の状態だ。どれくらい鼻を長くしたかが分かる。それにしてもこの洋白は黄色く、気分が良くない。ウィングレイルが 0.3 mm 太くなっても誰も気が付かない。試運転の結果は大変良く、通過音はほとんどない。前回、この不備を指摘してくれた所属クラブのH氏が、「素晴らしい! 完璧な修理だ。」と褒めてくれた。
 

2016年01月22日

洋白と白銅

 洋白(洋銀)は銅、亜鉛、ニッケルの合金だ。すなわち、白銅に亜鉛を足している。この亜鉛の量の多少が様々な性質の変化をもたらす。亜鉛が少なければ、白くなる。洋白は腰が強い合金でバネにも使える。ナイフ、フォークの材料にも適する。もちろん銀めっきして用いる。俗語で"hotel silver"という言い方がある。ホテルで銀器代わりに使われているのだ。本物を使うと、盗まれて困るからだ。  
 亡父の使ったコンパスやデバイダは洋銀製で、表面が多少酸化されて緑がかって見える。ギターのフレットはどうしてこの合金を使っているのかはわからない。適当な硬さで、弦を傷めないのだろう。色は気にする必要はない。

 白銅貨の100円玉、50円玉はその昔の銀貨、ニッケル貨から現行のものに切り替えられた。純ニッケルを硬貨に使ったのはドイツの真似だと祖父が言っていた。ニッケルは兵器を作るのに不可欠な金属元素なので、備蓄しておかねばならないが、その倉庫を建てるにも金が掛かる。しかし貨幣として流通させれば、国民は大切に保管する。必要な時は何か理由をつけて、無効にすると宣言すれば、慌てて持ってくるだろうということであった。
 現実に、日本でもニッケル貨は戦争時の資材として役に立ったそうだ。朝鮮戦争の時にも値上がりしたので、銅で薄めたものに取り換えたという話がある。
 白銅貨の採用はアメリカの25セント、50セント硬貨の例を見て決めたらしい。インフレで価値が下がり、銀を使えなくなったのだ。

 さて、白銅(cupronickel 銅の入ったニッケルという意味)は展延性に富むので、コインにしやすいし、薄く伸ばして薬きょうにする。黄銅より薄くできるので、火薬量を増やせて効率が良い。レイルにしてもそれほど難点があるようにも見えない。
 たまたまであろうが、洋銀の行き先の無い材料があったことが、その後の鉄道模型の運命を決めたような気がする。 

2016年01月20日

洋白の色

 洋白(洋銀)レイルの色が気になる。磨いてみても鉄の色とはほど遠い。白銅の百円硬貨の成分はニッケルと銅だ。前者が25%らしい。百円玉の色は比較的白く、どちらかと言えば、レイルの洋白より鉄の色に近いような気がする。もう50年近くになるが、TMSで久保田富弘氏だったかの記事中、洋白を材料にすると良いという話があった。その記事はかなりインパクトがあったらしく、その後、急に洋白を使う話が増えた。ミキストにも載っていたように思う。筆者は洋白を使わない。高いし、色が良くないからだ。めっきのほうが好きだ。

 カツミに居た高橋氏の話である。1960年ごろ、たまたま伸銅屋の店先に注文流れのギターのフレットの材料が一山あった。使い道がないかという打診があったので、それを使ってレイルを作ると良さそうだということになった。それが日本の洋銀レイルの始まりであった。篠原模型店がそれを使って洋銀の製品を作り始めたようだ。

 当時、日本の模型材料は、梅澤伸銅という非金属材料店からの製品を使っていた。この店はもうないが、模型業界のような消費量が少ない相手に、少量(100 kg単位)で売ってくれる珍しい店だったからだ。その他の店は当然トン単位でしか売らない。
 したがって、洋白もその店の仕様で作られたものを使っていることになる。当時は全国同じ材料であったはずだ。

 仮定の話であるが、もし、その店がもう少し白い材料を扱っていたら、模型のレイルはもう少し白かったかもしれない。

 30年ほど前、アメリカで買った洋白レイルは素晴らしく白かった。やや軟らかく曲がりやすかったが、色だけは良かった。最近の洋白レイル(英語ではnickel rail)は、日本のレイルのように黄色い。磨いても黄色っぽいのは腹が立つ。どうして白い材料をつかわないのだろう。
 多分中国製なのだろうが、発注元が指定すれば済むことなのだ。

2016年01月18日

クランクピンの潤滑

 模型蒸気機関車の中で、一番潤滑に気を使うのはクランクピンである。力が掛かるし、保油装置が無いから、すぐ油切れを起こす。
 ロッドはブラスのドロップ打ち抜きで、厚さはせいぜい2.5 mmである。ピンの太さは Φ4 が多い。車輪より半径が小さいから、テコ比で力が倍増している。普通の潤滑油では効かない。

 筆者はロッドにボールベアリングを入れるようになる前は、スリーブを入れた。接触面積を大きくし、面圧を下げる。少しでも油がたまりやすくした。潤滑油はモリブデングリスだ。このような、圧力が大きな部分では、極圧剤が入っていないと意味がない。モリブデンは有効である。

 最近、K氏から「ベルハンマー」という潤滑油を戴いた。巷では人気なのだそうだ。極圧剤が入っているようで、ロッドに注すと、起動電流が10%以上低下する。しかし、連続3時間以上運転すると、電流が急上昇する。 そのままではモータが焼けるし、電源もシャットダウンされてしまう。ロッドに指を触れると、少し温かさを感じる。
 機関車を重ねたタオルの上に倒し、ロッド廻りを溶剤スプレィで洗う。溶剤は黒い粉とともに下に落ちる。白い紙を敷いて置くと、どれぐらい出たかよくわかる。ガーゼで溶剤を拭き取り、ヘアドライヤで乾かす。自然乾燥すると、気化熱で水滴が付くからである。
 ベルハンマーを細い棒に付け、クランクピンの隙間に吸収させる。3条ウォームのおかげで手で動輪を廻せるから、こういう時は楽だ。すべてのピンに注油し、スライドするピストンロッドや弁棒にも潤滑油を注す。 

 これで完了である。走らせると、電流値は激減する。8Vで平坦線を巡航させると、軽負荷であるから0.3A程度になる。以前は0.5Aほども喰ったのにである。効果はあるが意外に寿命が短い。

2016年01月16日

続 installing ball bearings

 コメントやメイルを数多く戴いたので、予定を変更して、この話を続けたい。ほとんどのことはコメントで言い尽くされているが、少しばかり追加をさせて戴く。

 軸箱の内側にフランジ付きボールベアリングを入れると、荷重中心と、ベアリングの球の中心がずれているので、インナレースにねじ曲げる力が働く。
 たとえば、壁にボールベアリングが嵌まる穴が開いて居て、そのべアリングに軸を通し、その軸にぶら下がることを考える。ぶら下がりながら軸を廻すとどうなるだろう。壁の穴が精密にできていれば良いが、少し大きめであると、アウタレースが変形する。そのうち球が飛び出しておしまいである。また、廻すとゴロゴロする。球はいくつかしか入っていないので、その球が廻ってきたときは少し持ち上がるのを感じるだろう。

 今野氏はフランジ付きを入れられたことがあるのだろうと推測する。HOのロコで軸が非可動なら、なんの問題もない。軸が台枠に対して垂直を保っているからだ。可動軸箱ではまずい。二つずつ入れるべきだ。フランジ付きがいけないとは言っていない。ボールベアリングの位置がおかしいのに、「それでよい」と開き直ることは感心しないと言っているのだ。

 筆者の機関車や祖父江氏による改造を受けた機関車は、動軸が左右つながった軸箱を持つ。軸箱には二つ入れるのが原則だ。しかし、輪重が1N程度のテンダ台車は、一つずつしか入れていない。しかし、それらは、荷重中心に置いてある。これこそが、「模型的には」正しい方法だ。軸重の大きい従台車や、ディーゼル機関車には二つずつ入れてある。

 実は先回の文中、「模型的には」の部分を、正確に書いておいた。その言葉を聞いた瞬間にこれは面白いと感じたからだ。コメントを読むと、読解力の良い方がいらしてそれを感じ取られたことが分かった。
 筆者は重負荷で長時間の運転をすることを念頭に置いている。趣味であっても、である。たまにある運転会で、エンドレスを一巡りしておしまい、の人にはご理解戴けない部分なのであろう。
 せっかく精魂込めて作るのであるから、大した手間でもないので、少し工夫をされてはどうかと思うのである。以前見たものは、軸がベアリングの中をするすると左右に動き、軸端が軸箱に擦るようだった。これはまずい。
 軸は段付きにして、左右に動かないようにしたい。特に先輪は復元が効くように、ガタを最小限にしたい。

2016年01月14日

installing ball bearings

ball bearings on crankpins ロッドにボ−ルベアリングを取り付けるには、大きさが限られているので、クランクピンを細くせねばならない。それともう一つ気を付けねばならないところがある。
 近代機(UP4-8-4 や ナイアガラ等)はロッドに関節がなく、クランクピンのところで、二本が重なっている。ここにボールベアリングを入れるには複列にせねばならない。すなわち、ベアリングを中空軸でつないで、その中空軸の外で折れるようにするのである。

 この中空軸は、当初ブラスのパイプで作るつもりであった。祖父江氏にそれを伝えると、
「パイプは快削じゃねえから、リーマが通らないぜ。」と言われてしまった。
 確かにその通りで、仕方なく、快削鋼を削って作った。内側にshoulder(堰)をつけて、ベアリングが離れているようにした。後から考えてみれば、パイプの輪切りを入れれば済んだかもしれない。
 その中空軸は片方のロッドにはハンダ付けされ、他方はかぶせてあるだけである。動軸の動きで生じる多少の捻れを吸収できるようにしている。 末端は一つだけだが、力の掛かる中心を外さないようにしている。

 効果は抜群で、素晴らしい走りを示した。効率が重負荷でも下がらないのが良い。もっとも、そんな重負荷を楽しんでいる人など、世界中で一人なのかもしれないが。

 中空軸の外側の端には、フランジ付きを使うともっと簡単だったろう。フランジ付きはあまり買ったことがない。軸上に荷重が掛かる時にベアリング上に掛からねばならないので、奥のほうに入れる必要があるからだ。

ball bearing with flange 最近、某XXゲージの人たちから、「フランジ付きのベアリングを分けてくれないか。」という問い合わせがあった。持っていないので要請に応えることはできなかったが、何に使うのか聞いてみると、軸箱に使うのだそうだ。
「そんな使い方は間違っていますよ。」
と言うと、
「模型的にはこれでよい。」と言う。

 指導的な立場にある人がそんなことを言うので、とても驚いた。短時間なら壊れるまでは行かないが、長時間負荷をかけて走らせると確実に壊れる。走らせた距離が短くて、壊したことがないのだろう。
 本物の構造はどうだ、こうだと言っている人たちなのに、こういうことには無頓着なのだ。

2016年01月12日

効率

 レイアウトで走行中の列車を見て、その電流の少なさに驚いた友人がいる。「常識では考えられない値だ。」と言う。筆者はそれが当たり前の状態を30年も続けてきたので当然だと思っていたが、彼はとても驚いていた。
「いったいどれくらいの効率なのだろう。」
「普通の市販の機関車は5%から10%くらいのものらしいよ。」
「それじゃこれは?」
「3、40%くらいじゃないだろうか。」
「すごいね。測ってみたいな。」

 模型蒸気機関車の効率はどれくらいなのだろう。dynamometer carをまだ作っていないので、複数の次元を測定せねばならない。線路が目の高さだから、ついて歩いて調べる。

114_4407 バネ秤で引張力を測定しつつ、速度を計測するという面倒なことをせねばならない。しかし、走行が非常に安定しているので、引張力と速度は別々に測定しても変わりがない。
 AC9単機での平坦線での最大引張力は8.5 Nであった。1.56%上り勾配上ではやや減って、7.8 Nほどであった。
 その坂で103輌引張る時の引張力は5.5 Nほどである。写真は止まっている時のもので、走っているときはもう少し大きい。速度を掛ければ、テンダ後端での出力が計算できる。実物は、drawbar pullという言葉のように、テンダなしでの値を調べる。テンダは死重だ。 

 供給電力を求めて、それで出力を割ると効率が出る。AC9は18%、Q2は25%ほどであった。もちろん、このデータには機関車そのものを持ち上げるのに必要な電力が入っているので、平坦線で測り直さねばならない。おそらく、AC9で24%ほど、Q2では32%ほどになるのだろう。意外と低い。

 重負荷下での測定であるから、摩擦が多い可能性がある。特にロッド廻りの摩擦が無視できない。潤滑が大切である。これらの機関車にはクランクピンにボールベアリングが入っていない。最近はやりのベルハンマという潤滑剤を、K氏から紹介されて使っているが、かなり優秀である。普通のエンジンオイルによる潤滑時より、電流値は1割下がる。しかし、摩擦はまだまだある。軽負荷時の測定であれば、この部分の摩擦が小さいので、良い値が出やすい。
 筆者のUP4-8-4にはロッドにもボールベアリングが入っているので、重負荷でも効率が常に50%を切らない。モータも優秀である。出力11.5 Wのモータの3割以下の出力で走るので、モータ自身の効率も良いということもある。

追記
 機関車が平坦線にあるときの測定をすれば簡単であった。
 恥ずかしいことに、ヘッドライト、客車の室内燈の消費電流を含めるのを忘れたことが判明した。
AC9では27%、Q2は42%と算出された。どちらもロッドにはボールベアリングが入っていない。

2016年01月10日

Henry Bultmann のこと

 Lou の訃報はここに載っていると友人が教えてくれた。 4ページである。それほど詳しくは書いてないが、ご興味のある方は読まれると良いだろう。
 その次のページには驚いた。ヘンリィ・ボルトマンの死去を伝える記事である。発音はバルトマンではなくボルトマンに近い。筆者自身も綴りがBoltmannだと思っていたくらいだ。

 彼は機械工学に強いことになっていた。誰もが同じことを言う。彼の設計したギヤボックスは最高だという。確かに悪くないが、良いとは言えない。筆者が一番気になったのは軸の太さである。高速回転する部分が太いと損失が大きい。グリスも硬い。もう少し粘性の少ない油を使うべきだ。
 いろいろと論議したが、彼は教条主義者で教科書に書いてあることを守ろうとする。実物はそれでよいが、模型ではまずいと思えることを、とうとうとまくし立てる。見かけ上、弁が立つから、信ずる人もいるのだろう。

 ワシントンDCで会った時に、こちらのSP5000を見せて、動輪上重量、牽引力、電流その他を友人のレイアウトを借りて測定した。彼の機関車は重いから牽引力はあるが、効率はこちらのほうが断然よかった。「押して動く」ということへの無関心は彼だけではないが、全く考慮しようとしない。そういう機関車は「効率が良い結果として逆駆動できるということを認識すべきだ。」と言ったら、「模型には効率なんて関係ない。」と言い張る。
「じゃ、電流が多いと君は幸せか?」と聞くと、「5 Ampくらいどうってことない。」と言うのだ。
「それではその状態で1時間走らせたらどうなる?」
「そんなに走らせる奴はいない。」
 何か矛盾していることは本人もわかっていたと思う。

 そこで、例の84輌牽く動画を見せると息を呑む。なんと言うかと思ったら、
「そんなにたくさん牽かせる人は居ない。貨車の車輪まで全部替えるというのは行き過ぎだ。」と言う。

 あれから何年経つのだろう。その後の様子が知りたいと思っている矢先にこの訃報だ。博物館のレイアウトを100輌以上の貨車を牽いて、静々と走る機関車を見せてやりたかった。

2016年01月08日

Lou Cross 氏の死去

 Right of Way のLou Cross氏が亡くなったと、友人から知らせがあった。93歳であった。 
 寝ているうちに亡くなったとのことである。二日前には友人と一緒に食事をして模型の話をしたばかりだったという。歳を感じさせない矍鑠とした人であった。100歳まで生きられると思った。残念である。

 もうかれこれ30年近く親交があった。大きなレイアウトが遺された。
 彼のことについては当ブログで何回か採り上げている。類まれな器用な人で、様々な模型を作った。どれも実によくできていた。
 下記の記事等を参照されたい。  

   Louの仕事

   続Louの仕事

   続々Lou の仕事    


       
Double Slip

        Daylight

        Hard Center

 
彼の作ったフログ等は当レイアウトにもいくつかあって、その精密感は大したものである。

長編成の運転

100-car train 4 今までに100輌以上の運転をしたことは何度もある。自宅でもよくやる。最高150輌くらいは、15年ほど前、静岡のトレインフェスタで披露した。しかし、それは平面上の運転であって、今回のような勾配の在るレイアウトでの長編成運転は初めてである。
 全車輌の連結器の遊間が詰まってから、完全に伸びるまでの距離は実に670 mmほどもある。そのあと連結器のナックル(肘)が伸びる量の総和が2 mmほどある。この緩みが生じた後、急激に引っ張られると、連結器が切れる。実は今回も間違ってプラスティック製のカプラを付けた貨車が2輌混じっていて、それらは見事にちぎれた。要するに40 kgの錘を荷役用の台車に載せて、プラスティックの連結器を介して紐で引張ることと同じである。ゆっくり引張れば大丈夫だが、コンと衝撃を掛けるように引張れば簡単に壊れる。

 UPの機関士 Tom Harvey は、Keep it stretched!"と言った。連結器がいつもピンと張っている状態で運転せよ、ということだ。そうしないと、衝撃で連結器が切れるのだ。下り坂では加速せねばならない。
 模型でも全く同じことが言える。ある程度以上の速度で坂を下り始めると中間部分が緩み始める。機関車が遅いと緩みが多く生じる。そしてそれが再度ピンと張った時に、連結器はちぎれる。友人が来て、彼の目の前でそれが起こった。
「なるほど、下り坂では加速しなければならないんだ。」と納得した。
 低速での下り坂運転では、逆に連結器を詰めるように運転するほうが良い。後ろからどんどん押してくるから、ショックを与えないように、ゆっくりと減速する。連結器は完全に詰まる。ここで電源を切っても、列車は何も無かったように、そのまま降りてゆく。列車長の2/3程度が降りて平面に差し掛かってから、緩やかに加速すると連結器が順に伸びていく音がする。この時は切れない。負荷が分散しているからだ。
 Low-Dのピヴォット軸は極端に摩擦が少ないので、本物と同様のことを心配せねばならない。

 発車時は連結器が順に伸びる。ガチャガチャガチャガチャガチャ・・・と100輌の発する音が、エンドレスを半周巡る。この音はたまらない。聞いた人は誰しもうっとりする。昔、中央西線の貨物列車の発車時に聞いた音だ。貨車の総質量は約40 kgである。実物換算で4500 トンの貨物列車だ。ほとんどがブラス製で、40 ft 車は12オンス(355 g)に揃えてある。50 ft 車は16オンス(455g)である。

 現在は運転者は筆者本人だけだから良いが、今後のことを考えるとショック・アブソーバ付き車輌をいくつか用意せねばならない。50年代の車輛に、矛盾がないようにそれらしく増設する予定だ。

 70年代の車輛には、すでに2輌用意してある。これらは、静岡でDDA40Xに牽かせた時、 全くの無事故を誇った。その時は筆者以外の人が運転したが、問題はなかった。 

2016年01月06日

100輌編成の列車

100-car train 開館後はこの100輌編成の運転が目玉になるので、その予行演習をした。時代を揃えて(今回は1950年頃)100輌を用意するのは、意外と大変である。自宅レイアウトから、車輛を半分程度移し替えた。勾配もあるので、連結器高さをゲージを用いて測定し、公差の外にあるものは排除した。連結器がプラスティック製のものは除外した。信頼性がないからである。

very long trains 2 機関車はSouthern PacificのAC9を用いた。素晴らしい引張力を持つ。勾配に掛かっているのは50輌強であって、平坦線に載っているのは残りの40数輌である。この残りの部分は摩擦だけであるので、計算上はあと100輌ほど牽けるはずである。
 

pullman cars 対向する列車はQ2に牽かれたプルマンである。同種の車輛を整備して、10輌編成とした。重い車輛であるが、Low-Dを付けているので、軽快である。
 郵便車もつないでいる。プルマンには車内灯も点き、なかなか気分が良い。車内が良く見えるので、乗客もかなり乗せてある。人件費がかなり掛かっている。

very long trains 貨車はショートする原因は何もないが、客車の場合は難しい。原因を突き止めるために、1輌ずつ増やして様子を見る。思わぬところに原因があるものだ。 


2016年01月04日

摩擦を減らす

 例の動画を見た友人からの連絡が多い。 単純に褒めてくれる人と、何かあると疑っている人が半々だ。何もない。英語で言うと、"Nothing up my sleeve(袖の中には何もないよ)."だ。これは手品師が言う常套句である。
 ステンレス車輪で、フィレット半径を大きくしてある。フランジの円錐面は決してどこにも触らない。 単純な話なのだが、フランジでカーヴを曲がると信じていて、お分かり戴けない人がいる。筆者はLow-D車輪のフランジ円錐面から先をすべて無くして走らせたことがある。何の問題もなく、半径2800 mmの線路を周回させることができる。実験がすべてだ。これについて異論がある方は、ご自分で実験されて報告されたい。「いや、こうなるはずだ」というご意見は、正直なところ迷惑である。模型には模型の理屈があるのだ。実物業界の方はその理屈が模型にも使えると信じている人が多いが、正しいとは言えない。特に遠心力が絡むものは、全く使えないのだが、それが分からない人が大半だ。

 外国からの連絡は、ボールベアリングが使ってあるのだろう、というのが多い。ちゃんとピヴォット軸受だと書いてあるのに、である。 現物を持っていて、こちらの指示通りにモリブデン・グリスを付けている人は、「すごいね」の一言で終わりだ。「うちのは線路が良くないからこんないい音はしないよ。」というのもある。良い耳を持っている人だ。確かに、博物館の線路はナイロンタワシで磨いてある。走らせてもほとんど転動音がしない。それと大きなファクタは、エラストマの貼り付けである。接着剤をあまりたくさんつけないで、かろうじて留まっている程度にする。flex trackを留めるのは釘を用いるが、枕木を貫通する部分の穴は大き目にしておく。軽く留まっているようにするのが骨(コツ)である。こうするととても静かだ。コルク道床を信じている人はまだ多い。無いよりはマシという程度で、効果があるとはとても言えない。比較実験をされたい。

 機関車の回転部にはボールベアリングを入れる。高回転、重荷重のところには不可欠だ。スラストは専用のスラスト・ベアリングを入れるとギヤボックスの設計が楽になる。ラジアルベアリングでスラストを受けるときは、アウタ・レースが広がらないようにハウジングの剛性を高め、はめ合い誤差を小さくせねばならないから、素人には難しい。モータ軸にフライホイールを付けた機関車を押すと、はじめは押しにくいが、手を放すとそのまま、しばらく走るのが面白い。


2016年01月02日

謹賀新年


         あけましておめでとうございます

fan triptrial run 複線の本線が開通して、展望が開けた。あとはターンテイブル、側線の整備をすれば、開業できる。年末には友人が何人か来てくれて、開通を祝ってくれた。新年には親族にお披露目もした。
 感想を聞くと、皆異口同音に、「よくぞここまで。」と言ってくれた。
「伊達(だて)や酔狂ではないレベルで、人生を賭けたプロジェクトであるのがよく分かった。」ということであった。

 さて最近所属クラブの集まりで、今後の模型界の話題がよく出る。U氏の文章の一部を紹介する。

 最近よく話題となるのが没後の模型をどうするかという問題である。インターネット・オークションなどで昔の著名モデラーの作品が売りに出されていたりすると、すでに人ごとではないし、せっかくの名作が散逸してしまうのは何としても惜しい。最悪の場合、理解のない家族にゴミ扱いされるケースも考えられる。これはあまりにも残念だ。とにかく何とかしなければ、という危機感は皆さんお持ちだが、具体的な計画となるとなかなか良い案が無いのが実状である。
 しかし具体例はある。dda40xさんがライフワークとして建設を進めている模型博物館だ。これは一つの理想形だと思われるが、同時に恵まれた条件と、何にも増して不退転の意志が必要である。そして何よりも重要なのが後を託せる後継者の育成というこ とになる。 


 確かに筆者の場合はかなり恵まれている。定年の無い商売だが、道楽に打ち込もうと仕事量を制限した途端に、土屋氏から呼び出され、後を託された。経済的にも、ある程度の資金をお預かりして走り出し、不動産も親戚の空き店舗を、シャッター商店街ということで、格安で譲渡してもらえた。登記も終わり、必要な学芸員の資格も、取れる条件を満たしていることがわかった。これで、名実とも博物館と名乗れる準備は整った。
 上記の「不退転の意思」も持っている。もう退くことはできない。健康である限り、館長を務めることができそうだ。

 一番大きな課題は、後継者の育成である。最近の若い模型人は、ブラス製の模型というものを知らない人が多い。彼らは旋盤やフライス盤を使ったことがないから、走行性能を抜本的に良くするということができない。筆者が編み出して、祖父江氏が完成させた手法を再現する準備をしている。それさえあれば、かなりの模型を改良することができる。博物館のレイアウトを走る車輛は、そのレヴェルでないと通用しないはずだ。既製品そのままでは、上り坂でモータから煙を吹く可能性が高い。また、sprungでなく、equalizedでもない車輛はレイアウトを走るとやかましいし、線路も傷む。そういうことに無頓着な人もいるが、車検制度を用いて排除する予定である。

 若い人の中から、これらの能力を身につけた人を育て、後継を託したい。このようなことを書くと、ブラス工作に偏っている、というご批判も戴くが、それは承知の上である。ブラス工作のできる人を育てなければ、この博物館は維持できない。 


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