2015年11月

2015年11月29日

直捲電動機

 模型のモータは全てマグネット・モータになってしまったと言ってよい時代になった。筆者がボールベアリング、三条ウォームにのめり込み始めた頃、伊藤 剛氏とモータについて論議したことがあった。文中、dは筆者のことである。

剛 最近は直捲電動機の模型はなくなりましたね。
d  実は今一つ作っているのですよ。
剛 ほう、それは珍しい。どんなモータを手に入れたのだい。
d  Braunの髭剃りを分解して出てきた交流用のモータです。直流なら20Vくらいで回ります。それをさらに改良して12Vで動かないか、調べようと思っています。
剛 それは面白いね。直捲電動機はその中にオートマティック・トランスミッションが内蔵されているようなものだから、出来の悪い模型に搭載しても、よく走るんだね。直流モータの時代になったら、途端に走りが悪くなっちゃったんですよ。
d 今開発中の摩擦の少ない機関車に直捲モータを搭載すれば、グワーンと走ってぴゅーっと滑って行かないかと思っています。
剛 そりゃ面白い。重い列車を牽かせると実感的だろうね。

 その後、筆者の直捲モータの改良は頓挫し、コアレスモータを採用することになった。

d コアレスモータにしましたら、調子が良いのですよ。電源を電圧制御にしたのですが、それが良かったみたいです。以前は電流制御でしたから、このような低電流では速度調節がむずかしかったのですよ。
剛 おお、それは素晴らしい。マグネットモータは分捲特性だから、本来は模型には向かないものだと思っていたけどね。
d いや、本物と同じ動作をさせることが可能ですよ。『下手な工夫より電圧制御』かな。
剛 あなたは電気も強いから、あなたがそう言うならその言葉には重みがあるね。

 その後クラブの会報にはこの話が引用された記事が載った。剛氏の瀬戸電の記事が出たのは、その直前である。あれが日本の模型雑誌に直捲モータの記事が載った最後の号である。瀬戸電には自作の巨大な直捲電動機が装着され、ピヴォット軸受で慣性モーメントが損なわれないようになっていた。12 Vを印加して電流を止めても、「山口さんちのツトムくん」を歌い終わるまで廻っていた。剛氏は、「駆動系というものは慣性モーメントを最小にするように設計されるものです。これはとんでもない天の邪鬼(あまのじゃく)だね。」と言っていた。 

 ちなみに筆者はそれほど電気に強いわけではない。父親から聞いた話を覚えているだけである。

2015年11月27日

自動逆転器

 最近の若い方は、自動逆転器という言葉を知らない方が多いと思う。界磁が電磁石だったころは、この自動逆転器は高嶺の花だった。モータよりも値段が高かった。ライオネルやメルクリンには標準装備だったが、日本製のものにはほとんどついていなかった。一時期、自動逆転器付きのモータも出ていたが、高価であった。

automatic reverser 界磁コイルに中点タップを付け、両端を切り替える方式だと、逆転器の構成は簡単になる。外国製の模型はそれが多かった。逆転器は電磁石とラチェットでできているものが多く、高電圧を掛けたりすると、車体が動く前に逆転リレィが作動し、小さな接点を付けたローラが回転する。

 この種の界磁はいわゆる複捲ではないのだが、これを複捲と言う人がいる。単なる勘違いである。複捲は直捲と分捲を合わせたもので、それを切り替えたり、同時に使用して抑速ブレーキを掛けたりすることもできる。模型には縁がない、使いにくいものである。

 最近伊藤剛氏や吉岡精一氏が遺された多量のモータを動かし、直捲モータの動きを見て楽しんでいる。それにしても昔のモータは騒々しいのが多い。
 子供のおもちゃとしてのOゲージの動力としては静かである必要はなかった。やかましいモータは、「元気がある」という時代だったのだ。


 

2015年11月25日

続々 スーパー20

114_4069 また、スーパー20かと思われた方も多いと思うが、これはLobaughのモータである。コア厚25.4 mm(1インチ)の強力型である。
 ブラシのホルダを三角の部材で留めているところなど、カツミが真似たことがすぐわかる。界磁は薄い珪素鋼板を積層して、リヴェットでかしめ、それに軸受をネジ留めしている。電機子との隙間は極めて小さく、磁路の障碍も少ない。

114_4071 電機子は旋削され、ダイナミック・バランスがとってある。隙間に見えるブラス片は錘代わりである。この旋削というのがミソで、こうすることによって磁路のギャップを狭くすることができる。もちろん界磁内側も研磨してある。そのためにはリヴェット留めが必要なのである。
 軸は3/16インチで4.76 mmである。カツミ製は 6 mmである。ずっと細い。


114_4072 このモータはpolarizedである。”ポラライズする”とは、整流器を用いて界磁に一定方向の電流を流して、永久磁石代わりにする方法である。こうすればマグネット・モータと同様、手元のスイッチで逆転できる。これがないと、車載の逆転器で方向を変えねばならず、面倒である。1950年代は大きなセレン整流器をテンダに入れていた。これはシリコン・ブリッジ整流素子を使っているから小さい。

polarized motor この図を見れば、どんな回路かはすぐお分かりいただけるであろう。線路の電圧が反転しても、界磁電流は一定方向に流れる。電機子に逆向きの電流が流れると、逆転できる。簡単にして、確実な方法である。これを使えば、直捲電動機の特性が生きるので、かなり手を抜いた電流制御の電源でも気持ちよく走るはずだ。
 現代のようにマグネット・モータが容易に手に入らなかった時代は、この方法を採っていた。マグネット・モータは分捲特性なので、電圧制御でなくてはならず、やや運転しにくい。現在、市販の電源は大半が電圧制御になっているから、どなたもその違いに気が付かない。 


2015年11月23日

続 スーパー20

 このモータは海軍の技術将校だった人が設計したらしい。当時カツミに入り浸っていたY氏が紹介したという。その設計思想はある程度納得のいくものであるが、現在のモータの専門家の意見はなかなか手厳しい。
 友人のT氏からの手紙の一部を紹介する。

 

 界磁鉄心厚さが厚いだけでは、強力にはならない。巻き数と電流値の積AxT大きくないといけないのだ。とりえは他の形式の電動機より巻線太さが太いので、巻線の抵抗が小さく、ブラシにかかる電圧が高くなっていることぐらいか。多少巻数も多いと思う。

 電圧をかけていくと、じゃらじゃらと猫が騒ぐような音を出して回転が上昇する。KB3(安価なモータ)のほうがMax回転数は高いと思う。

 

 そのあと界磁を永久磁石に替えたものを、輸出用に使った。ヤフーではボールベアリング入りと説明があったが、知らない人は幸せですな。とんでもなく太い電機子軸なので摩擦損失は大きい。

 オイルレス・メタル付きなのだが、こんな太い軸にする必要は全くない。怪しいボールベアリングの時と同じ太さにしたのだろう。
 当時、模型店で1000円以上していたかと思う。KB3が180円位の時だ。手で廻してみると、固くて抵抗が大きいのにびっくりした。それが強力の証とはとても思えなかった。


 筆者もT氏も、ネオジム磁石を買って、界磁をパーマグ(permanent magnet)にした。
 低速でのトルクが大きく、減速比が小さくできる。すなわち旧型モータなのに、押して動くモデルができることになる。コアレスモータでなくても、押して動くようにできるのだ。もちろん、鉄心があるのでコアレスほど軽くは廻らないが、押せば動く。
 ヤフー・オークションに出ているモータの界磁磁石は三菱製のものだそうだが、弱い。工場で組み上げてから着磁したそうである。要するに電機子を外すと磁路が切れて弱くなりがちなのだ。



2015年11月21日

スーパー20

 先日の記事スーパ−20のことを書いたら、「そのスーパー20とは何ですか?」という質問を戴いた。

114_4052114_4053 スーパ−20は1950年代にカツミから発売された直捲電動機で、9溝、ボールベアリング入りの高級モータであった。筆者が三線式Oゲージに夢中になっていたころの高嶺の花であった。電機子はskewed(捩じってあって、電機子の位相によるトルク変動を緩和するようになっている。)で、意欲的な製品ではあった。20は、コアの厚みで20mmを指す。”スーパー15”というものもあった。


 後でわかった話だが、外観の設計は祖父江氏で、Lobaughのモータをコピィしたものであった。ロボゥのモータと並べると、ブラシのあたりの処理が酷似している。今だったら、模倣で訴えられるような製品だ。

114_4056114_4055 ボールベアリングが付いているというのが売りであったが、廻すと何かおかしかった。どれを試してもおかしいと思ったので、買わなかった。というと聞こえが良いが、乏しい小遣いではなかなか難しい価格であったし、それほどのお金を出すなら、もっと素晴らしいものでなければならなかった。

 これも後でわかった話であるが、戦災で焼けたボールベアリングを大量に安く買って、それを嵌めたものであったそうだ。道理で、廻すと変な音がした。

 長老のH氏の談話である。戦後、米軍放出品の器械をばらすとボールベアリングが取り出せた。それをローラ・スケートにつけて楽しんだそうだ。実に滑らかであった。
 ところが模型屋でスーパー20を見せてもらうと、やはりどれも軸受から音がする。「この音は何ですか。と聞くと、『ボールベアリングの音だ。』と言うんだ。『ボ−ルベアリングは、みなこういう音がするんだ。』とごまかそうとするから、冗談じゃないと思ってそんなモータは買わなかったよ。」

 ずいぶんひどい話である。ボールは外から見えるタイプで、シールドがないから、埃は入り放題である。それのせいかとも思ったが、油紙で包んであった新品も同じだったそうだ。消費者の無知に付け込んだ極めて怪しい話である。

 モータの軸は太く、先端の歯車等を付ける部分だけ細いのはどうしてかと思っていたが、その焼け残りのサイズが、たまたまその程度の太さだったからだ。

 ヤフーオークションで出ているのは全くの勘違いで、パーマグモータである。あのモータの価値はすでに極端に低くなった。筆者は10台以上持っていたので、アメリカの模型ショウで売ってしまったが、相場は1台5〜10ドルである。

追記: 当時のカツミを知る関係者の証言によると、様々な人がボールベアリングの売込みに来たそうだ。焼けたのはもちろん、半端物のベアリングを持ち込むので、ロットによって軸の太さは違うそうだ。 

2015年11月19日

四拾八分之壱

 伊藤剛氏の遺品の整理をしている。あまりの量と質に、かなり参っている。おそらく、博物館開館後に毎日取り組まねばならないのだが、取り敢えず何があるかを調べている。

四拾八分之壱 たくさんの写真、図面が出てくる。日本車輛の様々な資料をお持ちだったのだが、この古い図面集には驚いた。7年8月23日という日付が読めるが、これは大正時代だ。驚いたのはこの図面がOスケールであったことだ。今まで見てきた日本の図面は全て 1/50 であったが、これは 1/48 であった。すなわち本物の1フット(304.8 mm)を1/4 インチ(6.35 mm)にしている。12 インチが1 フットだから、1/(12 × 4)= 1/48である。
 模型の縮尺の1/24 とか1/32、1/72などは全てこのように、実物の1フットを何インチにするかで決まっている。アメリカでは、住宅などの図面は1/48なので、それでOスケールがその縮尺を取るようになった。ヨーロッパでは線路幅がスケールになるように1/45.2 (公称1/45)であったり、1フットを 7 mmにして、1/43.54の模型を作ったりしている。

 この図面集を見つけたので、すぐにクラーケン氏に連絡して保存編集をお願いした。氏は様々な古文書を整理し、まとめられている。すぐに返事が来た。

五拾分之壱 1/48は大正10年のメートル法採用までで、それ以降は1/50が標準となっている、との事である。かなり珍しいもののようで、連絡した甲斐があった。
 確かに、同じファイルの中の別の図面は、五拾分之壱であった。 


 

2015年11月17日

またまた曲がった橋

 今月号のTMSをようやく読むことができた。ぎりぎりセーフである。田舎に住んでいると、本屋に行っても置いてないのだ。

 小さなレイアウトの記事なのだが、写真を見るとガーダ橋が曲がっている。これには困った。編集部は何をしているのだろう。「集まった記事を順番に載せているだけ」と揶揄した話があったが、反論できないだろう。

 どうして、力学的な考察をしないのだろう。はがきを切って糊付けして作った橋が真っ直ぐなら、多少の荷重を掛けても大丈夫だ。ところが、曲がっていればたちまち落橋だ。そういうことは小学校の時にやらないのだろうか。あるいは、中学校の技術家庭の時間でも扱わないのだろうか。
 どなたかが、「鉄道模型は文系工学です。」とおっしゃった。その時は、その言葉にやや偏見があるように感じたが、最近はそうかもしれない、と思うようになった。


 前にも書いたように雑誌には責任がある。明らかな誤りに対しては、編集部が是正せねばならない。間違った情報を流されると、読者は迷惑するのである。

 最近、古いメルクリンを見た。製造後50年ほど経っているのだろうが、良く走る。少量の油を注すと、ジコジコと音がするが、確実に走り、脱線しない。
 その昔、TMSの山崎氏は、「メルクリンはよくできたおもちゃ」と評したが、それは当たっている。しかし、精密にできた日本製を中心とする模型のほうはちっとも進歩せず、「見かけは良いけど、出来の悪いおもちゃ」が多かった。今回の橋の件は、見かけも間違っているのだ。


2015年11月15日

椙山氏の図書

 先日、残りの本を取りに行った。助っ人を買って出てくれた友人がいて、とても助かった。一人ではとても積めない。軽トラックを貸してくれる友達がいて、お世話になった。本のように重い物は、荷台が三方開きになっていると助かる。しかも、軽は荷台高さが低いので有難い。量販店で段ボールの空き箱を20個ほどもらい、それを組んで詰め込んだ。ぎっしりと荷台一杯であった。シートを掛け、紐で縛った。博物館まで高速道路を使って急いで行った。

Sugiyama's books せっかく今までの努力で、雑誌等を整理してすっきりしていた場所に、段ボール箱を並べた。箱が一部壊れ、はみ出してしまったものもある。早速整理しなければならない。

 意外なことに、雑誌類がない。どなたかが持って行かれたのだろう。その点は助かる。伊藤剛氏、土屋氏のコレクションには、ほとんどすべての雑誌がそろっているからだ。
 懐かしい書籍が並んでいる。その中にメモが挟まっていることがある。はらりと落ちた紙を見て驚いた。見覚えのある字である。

 よく見ると筆者の字で、椙山氏に頼まれて、ある器械の説明書を和訳したものだった。数ページにわたる説明書で、器具名の発音まで書いてあった。アクセントの位置まで指定してあるのには驚いた。多分椙山氏の指示で、「正しい発音を知らせよ」と言われたのだろう。 
 ワープロの無い時代だから、何度も清書したのであろう。誤字があまりなかった。今とは大違いだ。 

 午前中に出発し、1時に積込みを開始して5時に帰着したが、疲労困憊でそのまま寝てしまった。
 

2015年11月13日

EF58の牽く列車

EF58 leads the trainEF58 これはEF58が牽く東海道本線の急行列車である。非常に神経の行き届いた構成である。当時、写真を撮ってその通りに作られたもので、まさに「そのもの」である。

 パンタグラフの枠の側面は感電防止で赤く塗られていたことがわかる。客車のレタリングは非常に細かく書かれている。これこそまさに写実であり、時代考証の一次資料として役立つ。


 I氏はたくさんの客車をスクラッチビルドされている。東京への往復で利用した機関車、客車をつぶさに観察し、スケッチと写真でそれをまとめられたのだ。 

an express train circa 1950 急行列車の荷物車、郵便車の細かい造作も、最大限再現されている。最近、いろいろな作品を見ても、あまり感動しなかった。しかし、この列車を見て、戦慄を覚えた。
  

2015年11月11日

C62の牽く列車

 K氏のお宅で、I氏の列車を見た。I氏はお祖父さんが教科書に載るくらい有名な家に生まれた方で、椙山氏とは中学以来の友人であった。カツミの近くの学校に行っていたので、頼まれてたくさんのカツミ製品を、帰省のたびに持って帰ったそうである。数年前に亡くなった。

Mr.I's train この写真はI氏の作品である。昭和26年ころの東海道本線を走っていた、C62の牽く客車群である。素晴らしい仕上がりであるが、すでに接着剤が劣化して、下手に触るとばらばらになりそうである。
 K氏の説明によると、客車の転がりが良くなく、ほとんど惰性がなかったそうである。それを牽くために機関車はあらん限りの補重をして、摩擦力を稼いでいる。ところがその重さで機関車の軸受が磨滅して、がたがたになったということである。ブラスの軸とブラスの軸受では持たない。せめて軸を鋼製にしておけば、磨り減ることもなかっただろう。

 良い車輪、良い軸受がなかった時代で、致し方ないが、残念である。機関車は細かく細工が施してあり、実感的である。

 K氏は、「いずれ、これらも全てお宅の博物館に行くように手筈を整える」とおっしゃった。大変なことになった。まずこれらを収納するガラス棚を増やさねばならない。また、走るように改装もせねばならないだろう。機関車のフレームは、厚板をフライス盤で加工して加工せねばならない。軸をボールベアリングで受ければ、とても軽くなるだろう。モータは「スーパー20」と称する直捲モータである。コアレスモータに取り換えねばならない。
 最近オークションでそれを標榜するマグネット・モータが高価で出品されているが、完全な誤りである。客車もいったん分解して、接着剤の浮いているところは外し、優秀な接着剤で留め直す必要があるだろう。

 筆者が高校生の時、I氏にはよくお目に掛かり、親しく声を掛けて戴いた。尊敬すべき大先輩であった。

2015年11月09日

設計変更

114_3959114_3960 先回登場したK氏が、博物館まで見に来られた。その時、ボールベアリングを2つ、お土産に戴いた。先日会った時に説明したのだが、「これを使うと良い」と現物を持ってこられたのだ。早速それをもとに絵を描いてみた。
 中学校以来、製図をしたことがないので、間違いはご容赦願いたい。単なる概念図と承知されたい。

turntable mechanism このボールベアリングはNTN製で、直径63.5 mm(2-1/2インチ)のフランジが付いていて、17 mmの軸が通っている。これを二つ、厚い合板の上下に置いてネジを締めると、自然にその板に対して垂直な軸が立つ。これはまだ細いので、太い軸を旋盤で挽いてかぶせる。
 その太い軸にはフランジが付いていて、合板の円盤を挟んで留める。円盤は6個の戸車で受ける。フランジはハンダで留めてから、旋盤で挽いて直角を出す。これには大した力は掛からないので砲金製でも問題ない。
 実は太い軸を鋼材で作るには、旋盤の能力がやや足らないと思われたが、砲金製なら訳なくできる。この太さのちょうどよい長さの砲金の棒は、廃品回収の店で手に入れてある。可動橋を動かす程度のトルクであるので、鋼製でなくても十分耐えられる。細い鋼製軸と大径の砲金棒の組合せは、工作を簡便化する。

 この方式は、地下部分の深さがやや大きくなるが、工作も楽である。可動橋は簡単に捻られるようにすると、4点支持が可能になる。側面の板はできる限り薄く作り、垂直方向と回転に対する剛性は大きいが、ひねりに対しての剛性を減らすようにする。

 機関車が進入すると、わずかに撓んで、中心を含めて5点支持(3点支持 × 2)になると理想的だ。


2015年11月07日

さらに図書が到着

 突然、それは始まった。
 親しい友人が、故椙山満氏の蔵書を預かっている人に博物館の話をした。そうしたら、「ぜひ椙山氏の本を保管してほしい。」と言っていたという。

 椙山氏の蔵書がどうなったのかは、知らなかった。筆者もよく知っているK氏が預かっていたのだが、「この先のことを考えると然るべきところに移動させたい。」ということであった。
 早速伺うと約400 kgほどある。懐かしい本がいっぱいだ。高校生の時、土曜日にお邪魔してたくさんの本を見せて戴いた。中には特別にお借りして、書き写したりしたものもある。当時はコピィの機械は特別な場所にしかなかったので、写真に撮ってコントラストを強く、焼き付けてもらったりした。

 本棚を整理して、新たなスペイスを確保しなければならない。本を並べるだけでも2日はかかるとみている。

 とりあえず100kgほど、乗用車に積み込んで帰った。来週、軽トラックを借りて残りを運び出すつもりだ。書籍以外に、さまざまなカタログもあり、当時のことがよくわかる。 

 驚いたことに、16 mm映画フィルムもたくさんあった。映写機も4台あり、とりあえず2台持ち帰った。試運転してみる。これで、博物館で映画会を開ける。
 日時を決めて、アメリカの鉄道映画をお見せすることができる。

 現在ではDVDで公開されているものもあるが、未公開のものもあると思う。昔は映画はとても高価であった。ましてやアメリカからフィルムを買うとなると、おいそれとは行かなかった。もちろん、16 mm映写機は極めて高価であった。大切に保管したい。

2015年11月05日

alignment

 アラインメントとは直線の上に載ることをいう。 昔から、直線は麻糸を引張って作った。だから、英語の "line" と 麻を表す "linen" とは同じ綴りだ。エジプトの時代から麻糸で直線を作っていたから、ほとんどの言語で、直線と麻は同じ語源である。

 さて、新レイアウトの直線は10 m ほどしかないが、それが完璧に直線になってないと、視点を下げて見たときに、面白くない。昔ながらに糸を張って作ってもよいが、レーザがあるのでそれを使って直線を作った。あらかじめ作ってある道床を並べる予定であったが、アラインメントがいまひとつ良くなかった。完全に新しい線路をジグを使って敷いた。完璧なものができた。

alignment by laser ヤード部分の ladder の部分だが、これも直線が出ていないと面白くない。ラダァとは、分岐して平行の枝線に入る斜めの幹に相当する線路あるいはその周辺を表す言葉である。ポイントは同じ型紙の上で作っているので角度は等しい。三分岐も同じ角度で作られている。
 仮置きではあるが、一直線上に並べてみると、なかなか壮観である。これも文明の利器のおかげである。糸を張っていたら、こうは行かない。

 あと電気配線が完成すれば、試運転ができるところまで来た。複線の本線が開通すると、二列車を走らせて遊んでしまいそうである。脱線はしないはずなので、走らせておいて、作業を続行することになる。見入ってしまいそうではある。

 


2015年11月03日

air damper の設計

 ダンパは、往きはよいよい、還りはこわい、でなければならない。直径20mm程度のエア・ダンパを試しに作ってみよう。押した時には、すっと押し込まれて、引張ってもなかなか還ってこないようにする。

air damper ピストンに弁を付けるのは面倒なので、シリンダ・ヘッドにリード・ヴァルヴを付ける。リードはリン青銅の薄板だ。長くすると撓みやすく、押せば空気は簡単に漏れていく。穴をたくさん開けるか、あるいは大きな穴にすると、空気が抜けやすい。
 戻るときはぴたりと吸い付けられて、シリンダとピストンの漏れくらいしか空気は入って行かない。少量の油を塗ると、漏れは極めて少なくなり、戻るのにかなりの時間が掛かるだろう。最も押し込まれたときに残る空気が少ないと、還りに最初からダンピングが効く。空気がたくさん残っていると最初は、その空気が薄められるまである程度のストロークでは効き目が少ない。そのあたりはバネの強さとの兼ね合いがあり、調整が難しそうだ。

 以前たくさん作ったのは、ハイドラ・クッションの貨車の緩衝器を実際に作動させるためだ。その時は辷り込みの角パイプを使った。ピストンの代わりに細い角パイプを差込んだのだ。30年以上無事故である。現在は塗装更新中で、お見せするには無残な状態だ。
 押したときはリード・ヴァルヴで空気が抜けるのも、その時確かめた。今回考えているのは断面積が6倍くらいだから、効果が大きいはずだ。
 角パイプを使ったのは、ピストンを使うと漏れが多そうだったからだ。角パイプは重なる部分の長さが大きく、空気が漏れにくいのだ。大きな径のピストンを使うと容積が大きいから、漏れを補って余りある。言い換えると小さい物には角パイプが適するということだ。

2015年11月01日

turntable indexing

 index とは角度を割り出して固定することを言う。

 所属クラブ員が10人も来てくれたので、ターンテイブルのメカニズムの素案について説明した。全員が慣性モーメントの大きなターンテイブルに興味を持ってくれた。直径の大きなインデックス・プレートによる割出しは誤差が少ないから、HO以下でもこれを採用すべきだという意見もあった。また、慣性モーメントを利用した自動復元割り出しには、「面白い!」との声も戴いた。

centering device 様々な意見が出て、簡単で故障なく長持ちするメカニズムについて相談した。スライド方式は抽斗(ひきだし)などのスライドするレイルを使うと丈夫で永持ちする。センタリングは、斜面を利用したボール・ベアリングによる復元力発生装置を使う。引張るのは、ほとんど質量を持たない長い板バネを用いる。バネによる復元では変位量が小さいと、復元力が少ない。長いバネと斜面を使えば、多少の変位でも力が変化しにくい。

turntable drive with momentum また、 楔を起動する瞬間に駆動用モータのタイヤが持ち上がるようにし、慣性モーメントが損なわれないようにするべきだという意見を戴いた。また、そうすれば、斜面を下り降りて来る力で逆回転するが、それが妨げられないようになる。これは実現は容易で、効果が大きい。

 オイル・ダンパは損失が多いので、軽く接触させた摩擦式ダンパを用いてはどうかという意見も戴いた。斜面を下るときだけ作動する工夫が必要だ。機構学に詳しい会員もいるので、話題は尽きなかった。
 大型のエアダンパを自作するつもりでいるが、まだ検討の余地はある。過去に何度か作っているので、自信はある。テフロンのピストン材料となるべき円盤を持っているので、それを使うという手もある。弁はリード・ヴァルヴである。エア・ダンパは摩擦損失が少ない。
 筆者の死後も無事故で作動し続けなければならないから、確実なものを作りたい。地下部分は大きなスペイスが確保されているので、無理なく動作させられる。

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