2015年04月

2015年04月30日

続 Harmon の入賞

 何人かの方からもお知らせを戴いた。
 Harmonの作品の大きな写真が The O Scale Resource という雑誌に載っている。

 この雑誌はWeb上でのみ読めるもので、無料である。広告料だけで運営されている。筆者の考える最終的な雑誌の形である。写真もきれいで、60ページ以上もある。中身も濃い。Resourceという言葉はふつう、資源と訳されるが、そう意味ではない。必要な時に役に立つ助力 a source of aid or support that may be drawn upon when needed という意味だ。

 筆者の3条ウォームギヤとかLow-D車輪の原稿を頼まれているのだが、博物館が忙しくてなかなか書けない。
 Harmon は最近のシカゴのショウで入賞し、なおかつBest in Showという最高賞まで与えられた。どうして一等にならなかったかが不思議だが、おそらく塗装がきれいだったのだろう。投票結果は接戦だったようだ。筆者も行って投票すれば良かったと思う。
 45ページの解説に、ハーマンは成功している農家で、夏の間は忙しい。製作は冬の期間に限られる。製作期間は15年以上とある。今度会ったら何と言ってあげようかと思っている。

 この雑誌の先号に電池動力のラジコン機関車の話がある。23ページである。少々ややこしいが、面白い方法である。筆者がやるならもう少し簡単にしたい。

2015年04月28日

多くのコメントに感謝

 最近読者数がかなり増えて、多数のコメントを戴くようになった。大半は知人からで、私信であるから公表できない。初めての方はお若い方が多いらしく、昔のことを御存じないようで、少々的外れのこともある。今回は予定を変更して、コメントの内容を紹介したい。

「キットを組めるのはスクラッチ・ビルドを出来る人」と書いたところ、何人かの人からは「その通り」という御意見を頂戴しているが、そんなのおかしい、というコメントも戴いている。
 最近のキットは優秀らしい。昔のキットはひどいものが多かった。本物の形を知らないと、まずできない。曲げや絞りがいい加減で、縦裂きにして縮めないと合わない。窓の間隔がすこしずれているので、1枚物を貼り重ねて側板にすることが出来ない。仕方がないから、窓枠の板は細かく切って順番に貼りつける。
 キットのままでは、荷重がかかると台車枠が開いてしまい、車軸が外れる。など枚挙にいとまがない。それをキットと呼んでいた時期があるのだ。

 筆者も初めは一所懸命に修正を施して組んだが、ある時、合わないものは捨てたら良いということに気が付いた。ゴミ箱を横に用意して、どんどん捨てながら組む。捨てた部品はその場で作る。横にブラス板、ブロック、丸棒を置いておくと都合がよい。糸鋸をバリバリ折りながら猛烈な速度で作る。スクラッチビルドとさほど変わらないが、一から作るよりははるかに早い。
 最近のキットがどの程度の出来なのかは知らない。多少は良くなったのだろう。

 匿名の方から、非常に面白いコメントを戴いたので、紹介させて戴く。

>……という頼みはよくある。そんなものすぐできるからやってあげるよ。すごく喜んでいる。……
というお話は、助けを求められないというよりは、求め方を知らない、または求めてみたけれど助けてくれない場合も結構ある、ということが影響しているのでは、と考えられるのではないでしょうか。

例えばKKC会員の方達なら喜んで助けてくださるでしょうが、鉄道模型工作を趣味とする方々は、特に職人的な雰囲気があってなかなか近付き難いものです。昔の経験ですが、技術的な事で丁寧に教えを乞うたら何故かはぐらかされてしまったり(ポイントマシンを操作する回路に関して。)、持っておられる機械での加工をお願いした時には言を左右して断られたり(卓上サーキュラー・ソーでの枕木用角材の正確なカット。機械を使えば数分で済む作業でしたが、これは結局マイターボックスを使ってレザーソーで気長にこなしました。苦笑。)しました。また、引き受けてもらえはしたもののあまりいい顔をされずしぶしぶながら協力していただいた(マイクロドライプリンターでのデカール印刷。気遣いとお礼が大変でした。)などという例もあり、秘伝の技術や知識(それほど大層なものでもないと思われるのですが)を教えたくない、自分の機械を使わせたくない、という方々もかなり居られるのではないかと想像します。

逆に、見ず知らずの方からいきなり「私は今レイアウトを作っているが、ネットであなたが作った樹木を見て大変気に入った。模型店で売っている樹木は高くて買えないから、50本ほど作ってプレゼントしてくれ」とメールが来て、「作るのには相当の手間と時間、それに材料費がかかるし、まったく面識のない方からいきなりプレゼントしてくれと言われても困る。作り方は下記urlのHPに掲載されているからそれを参考に自分で作ってください」と返信したら、一言「ケチ!」という返信が来たという経験もあります。この場合は、頼み方を知らない以前に常識がないという部類でしょう。まあ、この世界、変な人が多いのも確かですので、そんなものかなという感覚でした。

最近はネット環境が発達し、検索すれば相当特殊なことでもない限り、それなりに知識技術も見つける事が出来ますし、ホームセンターなどが設置している工作室では、ある程度の工作機械も利用可能です。デカールやインレタもネットでオーダー出来ますし、良い時代になったものだと思います。相変わらず一部妙な方々が跋扈してはいますが、時代が進み、世代が入れ替わるに従ってかなり良くなってきているのではないかと感じます。

このあたりの事情に関しては、プラモデル趣味の方々は、最初からそういう世界に住んでいるであろうし、ネットでも書籍でも非常に豊富に詳細にテクニックが公開されていたり、模型クラブ活動も盛んであったりするのが、鉄道模型界隈とは異なるところではないかと邪推(苦笑)しておりますが、いや、最近は鉄道模型でも、若い方々が多いNゲージの世界ではプラモデル趣味の世界に近いのではないか、とRM Modelsなどの雑誌をみて感じております。いかがなものでしょう。

TMSなど伝統ある純粋鉄道模型雑誌にも、製作者による作品紹介や製品紹介記事ばかりではなく、プラモデル関係の雑誌に見られるように、もっとプロorセミプロ作家や編集部による製作テクニックの解説記事などが掲載されたり、工具の入手、使用のような記事が増えると状況は随分と変わってくるように思います。期待したいものです。



2015年04月26日

続々々 3-way switch

 先日、久しぶりにある友人に会った。彼は腕の立つ模型人である。
 
「ブログを読んでいるよ。最近はポイントを作る話だね。フライスを使えば訳なくできる。でもヤスリじゃあ難しいね。」
「そうなんだよ。僕も昔はヤスリで作っていたけど、結局のところ、尖端レイルの密着が悪くて苦労したよ。でもフライスがあれば楽だし、確実にできる。」

というわけで、しばらくは工作機械導入のメリットについて盛り上った。オークションを見ていると、小型フライスは安く出ている。しかも使用感があまり無いものもある。

「安いフライスだって、要は使い方次第だ。ガタがあっても送りの当たったところでダイヤルを廻してゼロにすれば、ちゃんと出来る。ディジタルスケールなんかなくても、何とかなるよ。ヤスリで削ったものとは大違いだ。ちゃんと平面が出るからね。」
「いや、最近はDROは安いからね。付けると労力が半減するよ。」
と、話は尽きなかった。

 お金を掛けなくても良いものは出来る。そのためには、素人は良い道具を使うべきだ。それが工作機械である。模型の価格以下で、旋盤とフライス盤が手に入る。材料はクズ屋で買う。そうすればいくらでも工作が楽しめる。

 彼は面白いことを言った。
鉄道模型をやる人はプライドが妙に高いのだ。助けを求められない人が多い。プラ模型の友達はそういう人は少ない。『これをハンダ付けしてくれないか。』という頼みはよくある。そんなものすぐできるからやってあげるよ。すごく喜んでいる。
 鉄道模型の人は誰も頼まないみたいだ。機械を持っている人に頼めばすぐできるのに、一人でやってうまくできないと、放置する。オークションでキットの組みかけが安く出ているだろ。出来ると思って買うんだろうね。でもできないんだろう。助けを求めればよいのに。」
「そうなんだ。そのためにクラブがある。伊藤剛氏は昔からそう言っていたよ。助けを求めれば、出来る人はいるはずだ。」

 その後、キットの組み立てについて話が進んだ。
「キットの組みかけ放置はもったいない。」
「そのことについてブログで書こうと思っている。キットを組める人は、結局のところ、スクラッチ・ビルディングが出来る人なんだ。」
「まあ、そういうことだね。」

 彼は安く買ったジャンク品を組み直して素晴らしいものに作り替える天才である。見せてくれたジャンクがどう変化するか、楽しみである。



2015年04月24日

続々 3-way switch

 筆者は特殊ポイントを作るのが好きだ。高校生のころからかなりたくさん作ったが、最近の方がずっと多い。
 クラブの人たちがやって来て、「すごいね、これ。こんなのよく作れるね。」とお褒め戴くが、たいしたことではない。一言で言えば、骨(コツ)はフライス作業が出来るかどうかである。

 尖端軌条をヤスリで作るのは大変である。完全に垂直に削り落す技能を、身に付けなければならない。かなりの修練が必要である。フログ角を計算通りに削るのも大変難しい。過去にいろいろなテクニックが公開されているが、どれもなかなか難しいと感じる。

 フライス盤さえあれば、あっという間である。問題は斜めに保持する工夫である。筆者は正直板という直角の支え金の代わりに、斜めに切ったブラスの板を用意する。レイルの側面(正確にはウェブという)に2,3か所ハンダで仮留めをする。そうすれば斜面はいつも完全に保持される。レイルヘッドと底面を万力で挟んで締める。後は削り落すだけである。

 レイルは、ブラスといえども難削材である。一般に引抜き材は粘い。難削材用の刃物を用意する。何回も往復するとずれることがあるので、なるべく一回で落としてしまう。回転は中程度、送り速度は小さくする。
 ストックレイルの尖端軌条が当たるところもフライスで落としてしまう。ここの落とし方がまずいと、密着しないから脱線の元になる。

 市販のポイントはあまり好きではない。フログの構成が甘いと感じる。機械美が感じられない。HOの既製品の三枝ポイントはオモチャっぽい。指の腹でなでると同一平面上にないように感じる。これでは脱線する。
 最近亡くなったある先輩は、「大きな油目のヤスリで上面を丹念に落としてしまうと完璧になりました。」とおっしゃった。その程度のクォリティならば、自作の方が良い。

 フログ位置を正確に求め、そこから始めると楽である。直線を先に敷き、あとは矛盾が生じないように工夫して付ける。決して難しくないから、挑戦されると良いと思う。

2015年04月22日

続 3-way switch

3-way switch wiring 三枝ポイントで面倒なのは電気配線である。市販品はフログの一部をプラスティックで代用しているから、絶縁部がある。すなわちポイント上で停止すると再起不能になる可能性がある。筆者はall-rail switchにこだわっているから、絶縁物を使うわけにはいかない。

 以前作ったのは図のような方法である。 モードは3種でである。フログを2群に分け、A群とB群と名付ける。ポイントマシンにマイクロスウィッチを付け、その動きによって作動させる。

 モードによってポイントマシンが作動すると、必要とされる極性の電気が供給される。

 のモードでは、右のBのフログの極性は不問である。そのポイントマシンは動いても動かなくても良い。
 のモードでは、AがSで、BがNでなければならない。
 のモードでは、A、BいずれもSでなければならない。

 DCCならば、フログジューサがあるから何も考える必要が無くなってしまったが、部分的にDCに切り替えることもありうるので、 このような方策をとった。

 全てのポイントはDCCでコントロールする。しかし通電するのはDCCだけではないということである。機関区に駐泊している機関車はDCのもある。それらが、本線へ進んで行く時の電流はDCであるからだ。

2015年04月20日

3-way switch

 日本語では三枝ポイントという。一箇所で3方向に分かれるのは作りにくいし保守が大変だ。この作例のように前後にずれていると簡単である。これを tandem 3-way switch という。

3-way switch ヤードの途中で機関庫の方に行く分岐を必要としたので設計した。右方に行く曲線は半径2800mmである。先端軌条は円曲線とした。珍しいパターンである。Hはヒール、Pはポイント、Fはフログである。ヒールとは尖端軌条の付け根、ポイントは尖端の意味である。
 左方へは先端軌条が直線の8番分岐である。そのとりあいカーヴが2720mmであるので、それ以上の半径の円曲線なら、問題なく右に分岐できる。

 原寸大の作図をして、その上でハンダ付けする。やり方の基本はフログ位置を決め、ガラスエポキシの枕木にハンダ付けする。直線を先に付けて、後はゲージの矛盾がないようにハンダ付けすれば良い。

 この工作は3時間程度で終わった。ニッケルめっきは硬く、糸鋸が滑る。あらかじめヤスリで傷を付けておかないと時間がかかって仕方がない。また、糸鋸がすぐ切れなくなる。
 フログおよび尖端軌条はフライスで削いで、めっきを掛けてある。問題はストックレイルである。尖端レイルがきちんとはまり込んで隙間が出ないように、仕上げた。 

3-way switch 2 尖端軌条を結ぶリンクが付けてないので、保護のためテープで仮に押さえてある。枕木はガラスエポキシの基板である。安い店で大量に買った。所定の幅に切るには、超硬の丸鋸で切った。一部のガードレイルが付けてない状態で写真を撮った。
 枕木長さがやや飛び出しているものもあるので、卦書いて丸鋸で切り取る。



2015年04月18日

CNCルータ加工

CNC-milled plywood 半径2800 / 2900 mmの複線は必要数以上にあるが、複々線の3000 /3100 mmの道床付き路盤がない。吉岡方式で作るのはやや面倒であったので、12 mmのType 2 ラワン合板で正確なものを切り出して作ることにした。その他、高架線の緩いS字カーヴ(cosmetic curveという)を直接切り出した。いくつかの会社に見積もりを出してもらい、安いところに注文した。高いところと比べて40%以下の価格であった。 

 DXFというプログラムで書いた図面を送ると、直ちに見積もりが出てくる。工場としても、何も考えることもなく、合板を持ってきてセットするだけであるから、割の良い仕事であるはずだ。本業の仕事の隙間に入れて貰えば、訳なくできてくる。

 S字カーヴは見せ場である。緩いカーヴをうねりながら列車が走る。真正面から見ると素晴らしい景色だ。この種のカーヴでは、カント(superelevation)が重要である。この区間ではコの字断面の路盤の片方の足を多少伸ばしてカントを付ける。長さが何 mもある側板の高さが、左右に曲がると微妙に伸び縮みしてカントを作る。それを卦書いて、正確に切り出すというのは、凡人には出来ない。削り易い材料で作って鉋(かんな)を掛けようとも思ったが、潔く諦めて、CNCのお世話になった。プログラムはnortherns484氏にお願いした。曲率が微妙に変化するのだが、実に美しいS字カーヴになった。

 この写真の左上の6枚は緩和部も含めて切っている。一枚ずつ形が違うことがお分かりいただけよう。
 出来上がりをノギスで測ると、実に正確で驚いた。これを組めば、自然に、うねる線路が出来るわけだ。

 このようにCNCは、人間の工作の限界をはるかに超えた正確な寸法を出してくれる。カントの無い線路を作って、楔(くさび)を挟んで調節するなどということは、しなくて良いのだ。

2015年04月16日

ジグソウ

 中心の位置を割り出して、ネジを立て、コンパスの中心を留めた。フェルトペンで半径3050 mmの円周を描いた。これがレイアウトの縁の半径だ。それより100 mm入ったところに、半径2900 mmの線路道床の外周がある。
 ターンテイブルの位置が微妙にずれる可能性があるので、まだ孔を開けられない。

 突然助っ人が現れたので、頼んで外周を切った。このように大きな板の外周を切ろうと思うと、切り離した方の板を支える人が要るからだ。ジグソウはあまり好きではない。卦書き線の上を切りたいのだが、それはなかなか難しい。以前コンパスのアームにジグソウを取り付けたので、何も考えなくても真円が切れると思ったが、刃が少し傾いたりして、非常に難しい。今回も微小な凹凸があり、削り落す必要が出てきた。

 室内でやると埃が出るので、外でやりたい。1枚ずつ、外せば位置関係はすぐに復元できるから、外に持ち出してやすりがけをした。ベルトサンダでやれば、すぐ削れる。削った板は所定の位置に、うまく嵌まる。

仮配置 北の方を見た写真である。雑然といろいろなものが置いてある。ポイントがつながっている様子が分かる。貨車の類は車輛が置かれるとどんな風に見えるかを見るために置いた。

 この渡線を境に、DCとDCCが分かれる。それを跨いで運転するには、いろいろな点で面倒な操作が必要だ。発表されている方法は面倒だし、高くつく。

 ここに先回の電池式機関車を置くと、便利だ。全ての電源を切って、異なる電力区間を跨ぐ部分を、自前の電池を持つラジコンでカヴァすると、面倒なことは考える必要が無くなる。ラジコン機関車は線路がなくても走るので、事故を起こしてしまうことがあるそうだ。注意せねばならない。 

2015年04月14日

骨組に合板を載せる

 トラックを借りて4X8合板を買いに行った。このサイズはアメリカでの標準サイズで、これ一枚を使って作るレイアウトの実例がModel Railroaderによく載っている。単なる長方形ではなく、斜めに切って飛び出させるなどの意欲的な配置が発表されている。

 さて、このサイズは日本ではあまり売っていないし、運ぶにはトラックが要る。昔アメリカで乗っていたフルサイズのステイション・ワゴンは、後ろの座席を倒すとこれが載った。ずいぶんたくさん運んだ覚えがある。
 日本製のいかなるステイション・ワゴンもこれを運ぶことが出来ない。

 4X8は3X6の2倍弱の面積だ。継ぎ目が減るので、工作が楽である。大きな専門店に行かないと手に入らないのは残念だ。買ったのはラワン・ランバーコアという板である。芯材は、多分ファルカタという桐のような軟材で、上下に堅い合板が貼ってある。普通の合板に比べ、曲げに対する剛性がはるかに大きいし、クリープも少ない。要するに垂れて来ないのである。オウヴァハングがあるところには適する。また、棚板には適する材料である。

 レイアウト南側の周回部の骨組みに板を載せた。助っ人を頼んだ。この作業は一人では難しい。所定の位置に、厳密に位置を合わせる必要がある。二人で寸法を測りながら、ゴムハンマで叩き、少しずつ位置を移動させる。最後にレーザで「通り」を見て、固定する。「通り」とは直線部が完全に同一直線上にあることである。
 位置が決まったら、ネジで固定する。その時、合板の上を歩くのだが、かなりの剛性があり、気分が良かった。

合板を敷く 最後に、周回部の外縁をコンパスで卦書いた。切り落とすまでは行かなかったが、これで9割ほどの基盤が完成した。
 


2015年04月12日

電子工学の専門家

 せっかく専門家に来てもらったので、手元にあるいろいろな車輛を見せ、工夫したところを説明した。

 速度計内蔵の車輛にはとても驚いていた。速度は一定区間を通過する時間で測定するものだ、という固定観念が、その方たちには あったようだ。それよりも車内の大きなディスプレィに現在の速度が表示される方が面白い。
 車輪にスリットを入れ通過する光の時間当たりのパルスを数えて、演算する。すなわち表示は3秒に一回更新される。この速度計のついた貨車は、30年も前に作ったものだ。今なら PIC を使って簡単に作れるが、当時は大袈裟な回路で、不調も多かった。 

「それよりも、パルスの間隔の時間を測って、リアルタイムの表示の方が面白い。」と言うのだが、スリットは自作なので、それほどの精度がない。すなわち一定速度で走っていても、速度が一定にならない可能性が高い。

 現在作っているダイナモメータ・カァの構想を話した。どのような構造にすべきか、いろいろなアイデアが出た。
 構造計算の専門家も同席していたので、力が掛かった時の車体の歪みの解析をすると面白いということだった。もちろん模型の歪みは少ないから測定は難しいのだが、等角逆捻り機構の付いた車輛を使えば、線路の不整を調べることが出来るというアイデアには恐れ入った。前後の台車の捻りを測定すると、軌道試験車になるというものだ。これはやってみる価値がある。測定の精度を上げる工夫はしなければならない。
 彼らは等角逆捻りの車輛をひねくり回し、例の不整線路を走らせて、「実に面白い」と評価してくれた。

 この二人の客人は様々なアイデアを出してくれ、それを筆者が聞いて、実現の可能性を探った。すぐにも出来そうなアイデアもあったし、とても無理なものも多かった。
 しかし、どの話もテレメータにするという前提があったのは、時代を反映している。

 Oスケール程度の大きさになると、たいていのものは詰め込むことが出来る。Gセンサを3つ付けて、一周すると、レイアウト全体の図を描くことが出来るというのは、既に夢ではない時代になったそうだ。ジャンボ・ジェットが出来たころ、慣性航法装置と云って最先端の技術だったが、今はカーナビにも付いているのだそうだ。

2015年04月10日

自動信号

automatic signal 電子工学の専門家のNS氏に作成をお願いしていたが、昨日納品された。作動状況をいずれyoutubeにupするつもりである。言葉では説明しにくいところがある。配線は単純明快で、電源線2本と、センサの投光部、受光部それぞれに行く2本、4本と、次とその次のユニットに行く渡り線2本だけである。これを8心のLANケーブルでつなぐのだ。

 以前にも書いたが、ほとんどの市販品の信号機はオモチャである。タイマで色が変わるから楽しそうに見えるが、全く意味が無い物である。今回の方式は、本物と同じように列車を検出する。
 No.1の位置に居れば、その信号は赤である。列車がNo.2に進むとその信号が赤になり、No.1は橙になる。No.3に行けば、No.1は緑になる。これはいくらでもつなげられる。

 列車が通過すると、次のセンサを通過するまで、そこに居ることを記憶する。そうすれば、列車の長さは関係なくなる。 
automatic signal units 取り敢えず、複線4区間で予備を含めて10個のモヂュールが来た。
 手前に写っている信号機が何者であるか、知りたい。市販されていた3線式Oゲージの時代の信号機よりかなり小さい。大体半分だ。背が低い。構成部品は大量生産されているのは明白だ。ひさし部分はプレスで抜いて曲げてある。これらは伊藤剛氏の遺品の中から見つかった。

 筆者の推測は、剛氏が本物の鉄道会社から頼まれて「信号機を並べた教習システムを作った時の残った部品ではないか」、というものである。かなりの数が見つかった。

<このモヂュールはさらに進化した。混信の可能性がなくなり、より複雑な使用法にも対処できるようになった。2020年10月1日追記>

2015年04月08日

続 sound deadening について

Richmond 6  この写真はRichmondの模型鉄道博物館の楽屋裏である。特別に入れてもらった。
 通路の左右に隠しヤードがある。  

 線路の下には3/4インチ(19 mm)厚の Homasote が貼ってある。ほとんど効果がない。面白いのは天井にも張ってあることだ。これは多少効くかもしれない。

 最近アクセス数が非常に多い。おそらく他の分野の方が、遮音とか吸音という言葉で検索するとここにたどり着くのであろう。コルクが役立たずであることは、考えてみれば自明のことなのだけども、雑誌などに書いてあると信じてしまうのだ。

 吉岡氏のところから戴いて来たゴム板が大量にある。隠しヤードを作るときに敷いてみよう。隠しヤードは見えないところにあるので、そこから音がするのは奇妙なものだからだ。

 レイアウトの方は直線から曲線に入るとき、緩和曲線ではなく、大半径の円曲線を用いている。その部分でカントが少しずつ増えるので、カント板を長さ方向に斜めに削り、さらにパテを盛って、削り出している。
 最近はポリエステルの速硬化パテがあるので、とても楽しく作業できる。100 gずつ紙コップに量り取って、硬化剤を混ぜて3分以内に作業が終わるようにする。反応によって熱が発生するので、紙コップが熱くなってきたら、もう駄目である。温度上昇でますます反応速度が大きくなる。硬化剤を少し減らすと作業可能時間(working time) が伸びるが、あまり減らすと固まりが悪すぎる。

 自動車板金用の4 kg入りの缶を買った。サンドペーパで削るとつるつるになる。いろいろなところで出番がありそうだ。


2015年04月06日

木材の目止め

 先日、木材の下塗りに水性ニスを使う方法を書いた。何人かの方から、質問を戴いているのでお答えしたい。

 日本では木材の目止めは砥の粉を使うのが主流だ。砥の粉を水で溶いて、ほんの少量の糊(布海苔(ふのり))を加えて、目に直角に塗る。生乾きのうちに、ぼろきれで擦り込み、乾かす。乾いたら、木材の目に沿って払い、ニスを塗るというのが、昔中学校の技術家庭で習った手順だった。砥の粉を二回塗ると効果は素晴らしく、つるつるに仕上がった。

 そういうものだと思っていたのだが、アメリカの家具の塗装では砥の粉など無いから、どうするのだろうと興味があった。家具屋で見ていてびっくりなのは、ひたすら塗り重ねることである。
 塗っては研ぎ、を繰り返す。木材の篩管の細かい穴にニスが滲み込んで固まる。2,3回塗ると孔は完全に埋まる。さらに2回ほど塗るとつるつるになる。テーブルトップなどは10回ぐらい塗る。その間、水を付けながら、耐水ペーパで磨く。水を付けないと、摩擦熱で悲惨なことになる。

 油性のニスは塗膜が薄いので、下塗りに適するのは水性ニスである。筆者は床用の水性ウレタンニスを使う。刷毛にたっぷり含ませ、木材に時間を掛けて接触させる。塗ると言うより、置くような感じで十分に滲み込ませる。小さいものなら、塗料缶に投げ込んでおく。十分に滲み込んでから乾かす。すると、表面から1mmくらいはプラスティックのように固まる。木口は10mmほど滲み込んで固まる。

 これをサンドペイパで削り、また水性ニスを塗り重ねる。塗装の前にラッカ・サーフェサを塗って、スティール・ウルで磨く。客車の屋根などは、この手順で素晴らしい仕上がりが得られる。以前この方法で仕上げた貨車をある会合で見せたところ、出席者全員が、ブラス製だと思った。それほどの平滑面になる。
 全てのコツは木材の篩管を塞ぐことである。砥の粉ではきれいに仕上がっても、塗料が奥まで入っていないので、場合によっては塗膜がはがれる。浸透法ではその点は大丈夫である。

 今回の線路路盤の合板は合板の粗面が出ているので、普通のペンキ一回塗りでは実に悲惨な仕上がりである。水性ウレタンニスを1回塗って研ぐと、かなり良くなる。2回塗装・研ぎを繰り返してからペンキを塗ると、合板製とは思えないほどきれいに出来る。小型のベルトサンダを十分に使用した。

 塗ったニスが乾くと、表面がチクチクする。それは木材の目が立ち、固まったからである。それを削り落すとびっくりするほど滑らかになるのだ。


2015年04月04日

”self-taught”

 最近、吉岡精一氏の遺された膨大な研究日誌を少しずつ解読している。段ボールに10箱以上もあり、全てを読むには3年ほど掛かりそうだ。
 
 吉岡氏は物理を、御子息の高校の教科書を元に勉強したと仰った。戦争中は勉強どころではなく、軍事教練と芋掘りばかりであったそうだ。全て、御自分一人で勉強されたのだ。

 昔、筆者はアメリカで表題の言葉に出会った。
「天才は全て self-taught である。」
 文字通り、自学自習のことである。

それを聞いて、その時はピンと来なかったが、吉岡氏に会って、「これだ!」と思った。

 学校に行って教えて貰うと秀才にはなれるだろうが、天才にはなれない。天才は本人の内部から溢れて来る力によって、事を成すのである。

貨車転がりテスト 質量測定動力車性能試験 ここに吉岡氏の実験ノートがある。広告の裏にびっしりとデータが書いてある。斜面を転がり落ちる傾斜角の測定結果である。次の紙にはモータの性能の測定結果がある。
 購入したもの全てをこのように測定し、機関車の効率を調べ、軸受の摩擦を知る。グラフを作って解析するのだ。お宅に伺うと、いつも斜面で機関車の性能を調べていらした。試験に必要な測定具は全て自作である。

 筆者が作ったものを見せると、1週間貸せと云うことになって、たちまち各種のデータを付けて返ってきた。それが3条ウォームであり、ステンレス製のピヴォット軸であった。
 工学は「こうするとうまくいく」と云う帰納の集大成であるが、吉岡氏は理学の立場から解析し、演繹していたのだ。
 イコライジングの考え方も、根本のところを知り、それを広げていくプロセスを拝見したが、それは吉岡氏ならではである。

 吉岡式線路は、ほぞ組の工夫もさることながら、最も素晴らしいのは分岐の分割位置である。これは周期関数の1周期の捉え方の問題で、数学的な発想が必要である。今回の博物館のレイアウトでその現物をたくさん並べたので、ご覧戴きたい。



2015年04月02日

sound deadening について

 先日、魚田真一郎氏の線路が全て運び込まれたことを書いたところ、当時の事情を知る人たちからいくつかのコメントを戴いた。皆さん、一様に感動されたようだ。「奇跡的だ。」と云う表現が多い。この博物館の件がなければ、それぞれの場所で吉岡式線路は朽ち果てて行ったのだろうと思うと、感慨深い。
 コルクが無意味な件についても、たくさんの方から連絡を受けている。公正取引員会に訴えるべきだという意見もあるほどだ。模型業界では、コルクは吸音性があると正々堂々と広告を出して売っているから、優良誤認ということになる。車の床にコルクを敷く人はいない。 

  さすがにおかしいと思った人もあったようで、いくつかの実験動画を紹介して戴いている。これらの二つは同一の方の投稿である。最初の方は線路を直置きとゴム板を介しての比較である。コルクを敷いた状態も試しているが、ほとんど効果なしである。「コルク+ゴム」はかなりすばらしい。おそらく、コルク板とゴムとの接触面でも摩擦で、振動が熱に変わるのであろう。
 二番目はポイントをたくさん並べて走行音を比較している。 ゴム板が1mmではあるが、かなりの効果である。これを2mmにするともっと良いだろう。

 バラストを撒いた動画もあるが、どんな種類のバラストなのかが分からない。しかも固着してあるのかどうかも分からない。
 筆者の実験ではゴム板の上に緩く取り付けたフレキ線路を置き、その上にゴムを砕いたバラストを撒いたものが最優秀であった。ただ撒いただけで、取り除くときは真空掃除機で吸う。新しいダストバッグに溜めて、取り出す。ゴミやネジも入っているから、選り分ける。拙宅の地下のレイアウトはその方式である。ポイントのフログの音はドスドスと響く。
  
 アメリカではHomasoteを使う人が多い。昔は3/4インチ程度が多かったが、ほとんど効果がなかった。最近は2インチ(51 mm程度)を使うようになったので、そこそこの効果がある。それは質量の効果である。 
 ホマソートは紙粘土を固めたようなものである。二階の床に敷き詰めると、多少足音が聞こえにくい。向こうは靴履きだから、そういう遮音(insulation of noise)には関心が高い。
 しかしゴムにはかなわない。今の家に引っ越す前、高層マンションに住んでいたことがある。子供が小さかったので、床をめくって厚さ12 mmの防振ゴムで床を支え、厚い合板を敷き詰めた。効果は抜群で、下の人が驚いていた。 

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