2015年03月
2015年03月31日
曲率ゲージ
土屋氏の工場には、当時まだ珍しかったCNCのフライス盤があった。それに入力してプラスティックの板を切った。各種の曲率ゲージを作り、配布して下さった。
60 mmのゲージをポリ塩化ビニル PVCの弾性体で挟んで置き、押しつけると出来上がりだ。長さは後で切る。そして、フレクシブル・トラックにゲージを嵌め、所定の位置に置き、抜きながら釘で留める。実に素晴らしい方法だ。もちろん端に近いところは、事前にレイルを曲げて置く必要がある。この60 mmはPECOの枕木用で、Atlas用は58 mmだ。
このような方法で、たちどころに大量の線路が敷けた。筆者の個人用に使っていた時代の線路は、末端をジグで所定の位置に行くようにして、フィッシュ・プレート(継目板)をなくした。こうすることによって、敷設に要する時間が大いに節約できる。線路には個性がないので、どの線路をつないでもぴたりと合った。
今回のレイアウト建設では、再組立てすることがないので、フィッシュ・プレートを使うことにした。接続時に片方に寄せておき、接続したら接続部中心にずらすのだ。
吉岡方式では、円曲線でカントを逓減しており、曲率を逓減させる緩和曲線は用いていない。ただし、直線と接続される曲線は、中心角7.5度だけ曲線半径を基準円の1.5倍とした。これにより遠くから見ると3次曲線による緩和曲線のように見える。本線の曲線は、15度の扇形の円周である。カントの逓減は、3次元の工作であって、とても面倒だ。最終的にはパテのお世話になる。手で削って、指先で撫でて調べる。
人間の指の感触は大したもので、カントの逓減、逓増を確実に感知することができる。
2015年03月29日
道床が集まる
ハーモニカが木で出来ていたことを知っている人は少ないだろう。筆者が小学生の時に使ったものは、黄楊(つげ)の木のような硬い木で、それに細かく溝を付け、リードを付けたブラスの板を締めてあった。ネジを外すと中が見えた。
要するに、かなり細かい細工を得意としたわけだ。
カントを付けるのが難しいので、筆者の発案で、朴の木を斜めに削いで傾斜板を作り、ハーモニカを作る要領で細かく切れ目を入れて貰った。吉岡氏はこれでうまく行くか心配そうだったが、非常にうまく一定の傾斜になった。
下塗りとして床用水性ニスを塗ると、合板の細かい穴(ポア)が埋まり、それを紙やすりで研いで本塗りに備えた。カント板の隙間はパテを込んで、凹まないようにした。
今回の作業で必要な線路の量に緩和曲線が少し不足し、必要量を作らねばならないと準備をしていたところに、鎮目泰昌氏が博物館に来訪された。彼は吉岡氏の路盤の入った箱を見て、
「うちにもある!」と叫んだ。
「そんな馬鹿な、これは残りが魚田氏のところにあったのだけど、震災で壊滅したんだ。」
「いや、その地震の後で、模型仲間が潰れた家から回収したんだよ。機関車などは引取り手があったけど、これは何か良く分からずじまいだったんだ。行先がなくて、うちの倉庫に仕舞ってあった。」
その日は、様々なことが思い出されて、眠れなかった。
それを今週、鎮目氏がわざわざ御自身で配達してくれた。
何という奇偶であろうか。26年前に作った線路300本以上が、全て集結したのだ。吉岡氏、土屋氏、魚田氏それと筆者の所にあった線路が完全無欠で揃ったのだ。作るときに、
「この線路が全て集まることは二度とないけど、集まればすごいレイアウトが出来るな。」
と吉岡氏が仰った通りになった。
2015年03月27日
続 音について
手で支えると音がほとんどしないのは、気が付く。それでは豆腐、こんにゃくはどうだろうと実験してみたことがある。なかなか良いが、実用性はない。スポンジゴムがダメだったのは、質量がないからである。
支持体は重いほど良い傾向がある。そこで、ポリ塩化ビニルはどうかと提案した。塩ビはゴムよりずっと重い。1.5倍弱である。配合によって、ゴムのような弾性体(エラストマ)になる。
土屋氏に手配して戴き、すぐにいくつかのサンプルが届いた。左から、中程度の固さ、それに砂目塗装したもの、柔らかめ、硬めであった。紫外線照射テストのデータ付きであった。直射日光で20年保証とのことである。
JORC(Oゲージの国内最大組織)の運転会では、合板で作った路盤を会議用机の上に置くとき、2 mmほどのポリ塩化ビニルの軟質シートを敷いてから置く。これが絶大な効果を生んでいる。シートは重いので、運ぶのに不満を漏らす人がいるが、ないとどうなるかを御存じないからだ。
吉岡氏は直ちに各種の素材でサンプルの線路を作られ、たくさんつなげてテストコースを作った。それに機関車、貨車を走らせて音を調べたのだ。その実験を見にお宅まで行って泊めて戴き、最終確認した。中程度のものがベストであった。砂目塗装はやめ、灰白色の地を出すことにした。これは土屋氏の美的感覚である。
こういう実験はやろうと思えば簡単にできるのだが、やる人はまずいない。
「『こうだ。』と言う人はいるけど、やったのかと聞いて、『やった。』という人はいない。それじゃあ、やってみようじゃないかと思った。」と吉岡氏はよくおっしゃった。実験は大切である。人の言うことを信じる人は、進歩できない。
路盤は5.5 mm合板を張り合わせて作られ、線密度は木部だけで620 g/750 mm であった。それに弾性体、レイル、枕木、饋電線、接続金具等が付くと1本は1100 gを超えた。
この重さが、良い音を作り出している。軽くは出来ない。軽い材料でできた中空の机に置くと、振動が多少下に伝わり、あまり芳しくなかった。路盤の下にはフェルトを細く切って張った。
こうして出来た線路を敷き、列車を走らせてみた。フレキ線路のレイル面は、意外と粗雑で、ゴロゴロと音がする物がある。細かいサンドペイパで磨くと改善された。製作見本を複数つないで、機関車(押して動く3条ウォーム搭載)を手で往復させて、継ぎ目の音を聞いていた。そこに奥様がお茶を持っていらして、「あらいい音ね。」とおっしゃるではないか。
「今までのはおもちゃの音だったけど、これは本物の音みたい。」
吉岡氏と筆者は顔を見合わせてニヤリとした。興味のない方にも、その違いが分かって戴けたのだ。
車輪もLow-Dとそうでない物には、歴然とした差がある。たくさんの貨車の中で、Low-Dに取り替えてない物は、目をつぶっていても、走っているときにそれを指させる。優秀な旋盤で挽いた時の精度と、怪しい旋盤で挽いて、めっきを掛けたものの差である。めっきは表面の粗さを増幅する。
2015年03月25日
音について
「15 mmもあれば十分だと思いますが。」
「25 mmないと反響してうるさいです。」
「御経験がおありなのですか。」
「作ったことはないけど、本にはそう書いてあるし、インターネットでもそう書いてあるのを見た。」とおっしゃる。自分で確かめたことがないのに、批判をしたがる人は多い。
一般論であるが、「教科書に書いてある。」などと言う人は、道を切り開けない。
このレイアウトは、その音の問題を克服している。合板が 25 mmであろうが50 mmであろうが、ダメなものはダメなのである。ところで、25 mm合板はわが国で大量に市販されている厚さなのだろうか。特注品以外で見たことはない。24 mmの次は、28 mmである。
吉岡精一氏と知り合った頃、すなわち30年ほど前だが、お宅を訪問すると、レイルを敷いた路盤がいくつも置いてあった。どれも長さは750 mmである。750 mmと云うのは、押し入れに無理なく入る深さなのである。収納の事を考えて決めたそうだ。
厚い30 mm合板にコルクを張ったもの、薄い12 mm合板に厚さ 5 mm、3 mm、2 mmのゴム板を張ったもの、合成ゴムスポンジを張ったものがあった。それらに、フレキ線路を取り付けてある。道床の半分では釘を固く打ち付け、残り半分では枕木に大きめの孔をあけて緩く留めてある。
それらを順につなげて、車輌を転がして音を聴く。結論を言うと、コルクは全く効果なしである。多少厚く敷いてもダメであった。スポンジは妙な高周波音がする。ゴムはどれも良い音がする。厚さの差はあまり感じない。
吉岡氏のところから戴いて来た、当時の試験道床の一部である。Aはコルク、Bは5 mmゴム板、 C、Dは土屋氏が用意して下さったポリ塩化ビニルの押し出し製品である。Cは柔らかめで薄く、Dは固くて厚い。
何度もテストをした。結果はB,Cがベストであった。しかし、Bは厚すぎる。
厚いと重いし、重ねることが出来ない。この路盤は重ねて保管できるようになっているのだ。
Aは、カーッと云う高周波音が頭の芯に突き刺さる。B以下は全てその高周波が吸収される。釘は枕木の孔を大きくして、緩くした方がはるかに良い。このCを、並べた机に載せて、車輛を走らせるととても良い音がする。レイルの継ぎ目はドドンと云う音である。路盤の下にフェルトを切って貼った。さらに高周波が遮断され理想的な音であった。
ゴムは内部損失が大きい(音を熱に変える)ので、高周波が漏れてこないのだ。どういうわけか、我が国ではコルクを使う人が多い。ほとんど効果はないのだが、このような比較実験をしていないから、誰も気が付いていない。
2015年03月23日
図書の整理
まず最初に雑誌の種類を分け、さらに年度別に並べる。さらにそれらを月の順に並べて棚に入れる。書くと簡単であるが、実際の作業はとても大変だ。山になっている雑誌をばらすだけでも、どうかなりそうなほどの作業量だ。
今回は6人来て戴いて、朝10時から、3時までの作業であった。ようやく、TMS、ピクトリアル、鉄道ファン、とれいん、が並べられた。ほとんど全部揃っている。完全に整理が終われば、全て揃うとみている。というのは、雑誌類は土屋巌氏、伊藤 剛氏、吉岡精一氏 のところから集まったので、重複分もかなりあり、不足は無いはずである。特に、伊藤氏や吉岡氏からは昭和10年代からの雑誌がたくさん来ている。これらは触ると壊れてしまうほど劣化しているので、開架はせず、ウェブ 上での公開となる予定だ。
雑誌書架が明らかに不足している。最近の雑誌は重いので、下手に棚に載せると棚自体が壊れてしまう恐れがある。スティール製の頑丈なものを用意するつもりである。
レイアウトの詳細な設計をして戴いたnortherns484氏も、遠いところから駆け付けて測量をしてくれた。大体、設計図通りに出来ていたので安堵した。 レイアウトのように大きな物は物差しやノギスを当てて寸法を測るわけにはいかない。原点を決めて、そこからの測量をする。レーザ測距計は大活躍だ。これがなければ、とてもあの時間内には終わらなかった。
2015年03月19日
博物館レイアウト建設工事の現況
三脚はコンパスの中心を確保している。錘となる針金をぶら下げて、床のマーキングに合わせている。コンパスの腕は床に置いてある。撓まないように剛性を持たせた構造である。勾配であるから、中心位置の標高は順次高くして、円周を描く。
ヤードの喉の部分から見た様子である。全ての線路は仮に置いただけであるから不連続である。分岐のセクションはほとんど出来ている。と言うより、作ってあったセクションを最大限利用できるようにレイアウトを設計した。
右の曲線は仮に置いてあるだけで、接続は雑である。立体交差部の落差を確認するためのものである。
土屋氏のところから戴いて来てあった雑誌を、倉庫から出して、置いてみた。これだけで約1トン強である。これを整理する必要がある。おそらく3人がかりで1日かかるであろう。
重複した号は倉庫に逆戻りである。書棚が足らないので追加購入する必要が出てきた。鉄道模型三誌、実物誌三誌 がほとんどすべて揃った。これらの雑誌を読みにいらっしゃる方も多いのであろうと思う。
2015年03月17日
続 Barstow へ
しばらく前、Kingmanという町に行った。グランドキャニヨン方面に行く宿場である。そこにはHarvey Houseがあるという話を聞いたので行ってみたのだが、敷地の址があるだけで 、全くの外れであった。その駅はMission Styleのなかなかきれいな建物であった。
バーストウのハーヴィ・ハウスの話に戻る。ここではプラットフォームの址も良く見え、昔は大きな駅であったことが分かる。最盛期には30分ごとに旅客列車が来たそうである。
二階にはホテルの部屋があり、豪華なスイートもある。
厨房のあった部分も保存されていて、かなりの規模であったことが分かる。大きなホールは二つあり、結婚式などに使われている。
入口のホールの受付の上に飾ってある写真には、不可思議なものが写っている。どうしてこの写真が飾ってあるのだと聞いたら、
「良くわからない。これについて質問する人は日本人であることがすぐ分かる。」
という変な答であった。
2015年03月15日
Barstow へ
Barstowに行きたかった。バーストウは昔からの宿場町である。ルート66の拠点でもあるし、Santa Fe鉄道の大きな駅がある。
そこには、Harvey Houseが保存されていると友達が教えてくれた。大きいと言っていたのだが、どれくらい大きいか見当が付かなかった。
街の中にはあちこちに「ハーヴィ・ハウスはこちら」と云う看板が立っている。行ってみると線路に当たる。それを乗り越えて向こうに行くと、壮麗な建物がある。まさかこんなに立派なものだとは思わなかった。
入場料は取らず、今のところヴォランティアの人たちが運営しているようだ。金は市が出したらしい。建物にはスペイン語で Casa del Desierto とある。「砂漠の家」と云う意味だ。
このヴィデオにはほとんど余すことなくその魅力が現れている。エアコンがなかった時代だから、夏の昼間の暑さは凄まじかっただろうと思う。
1911年に完成し70年頃に使用をやめた。その後廃墟となっていたのだが、市の商工会議所が動いたようだ。現在はパーティ会場として結婚式の披露宴などに使われている。
ハーヴィ・ハウスは他にもいくつか残っているようだが、ここが一番立派だと言う。
2015年03月13日
Clinic
今年のクリニックは2コマ用意するからと言われていたのだが、講演希望者が多かったらしく、「1コマでやってくれ。」ということになった。二つの内容を1時間でやるのだから、中途半端ではある。
どういうわけか、前評判が高く、何人かがテーブルに来て、「今日の話は一昨年と同じか、進歩があるか。」と聞く。
「もちろん進歩はあるよ。」と言うと、来てくれた。
人数は10人ほどであったが、皆熱心だ。
Low-D車輪は、会場ではサンプルとして何個か売れただけであったが、そのあとで電話があって、100個単位で売れて行った。後で連絡を貰うと、「友達に自慢している。」とか、「Oゲージの未来を切り開いてくれた。」という賛辞が寄せられた。
例の80輌以上牽く動画と、押してやると一巡り半する動画を皆喜んで見ている。潜在的には、皆長い列車を牽きたい気持ちがあるのだ。それと、たまたま今は円安で、買いやすいことも大きい。
そのあとで、等角逆捻り機構 のサンプルは、パンタグラフ式だけ持って行った。これは理論的に、全く突っ込まれる心配がないからだ。ロンビックは2軸車だと面白いのだが、アメリカには二軸車はほとんどない。
今回はぐにゃぐにゃの線路を作って持っていた。これが大人気で、テーブルの上に置いておくと、友達を連れてきてゴロゴロと転がす。シカゴでは見せたが、カリフォルニアには初めて持っていったのだ。
皆、引込み線のぐにゃぐにゃ線路を見た記憶があるので、レイアウトの片隅でやりたいのだ。
これを作ってくれという申し出もあったが、同じ貨車を用意するのが面倒で、断った。この貨車は、Athearnのブラス製外皮だけを使って作った。製品では、木製箱組みにブラスを貼るのだが、これは骨をブラスで作って、それに貼りつけた。正直なところ、スクラッチビルトに近い。ブラス製既製品は床を外しても妙な所に骨があって、ヤジロべエが入りにくい。骨を切ると、それを補強せねばならず、めんどうだ。
2015年03月11日
またまたイコライザかバネか
友人からいくつかメイルを貰っているが、どれもみな辟易していると伝えてきている。ゆうえん氏のところに筆者の思うところを書いておいた。要するに、すでに言葉遊びの領域に入ってしまっていると、筆者は感じている。全てを理解している人には、これがイコライザを含んでいることはわかる。しかしそれを表題に入れてはいけないというのが筆者の投稿の趣旨である。
筆者は職業柄、定義というものにはこだわる。定義は、ある概念の中の特定の集合(英語ではset(s) と云う)を指すように作られるものである。
この図を見て戴きたい。「エタノール」という答を正解とするときに、「アルコール」では集合が大きすぎる。「有機化合物」では、何をか言わんや、である。ところが今回の論争は、「有機化合物で良い」と言うのと同等である。
筆者がテレビを見なくなって10年以上経つが、昔よく見た番組に「世界不思議発見」というのがあった。今もやっているのかどうかは知らない。それに板東英二とかいう元野球選手が出ていた。彼の答は非常に大きな集合で答えている場合が多く、いつもスーパーヒトシ君は没収されていた。彼は「当たってますやんか。」と、憤懣やるかた無しであったが、判定は覆らなかった。対する黒柳徹子の答は常に小さい集合で、完璧な答であった。
このエピソードで、集合という概念はお分かり戴けたであろう。
昔、カツミが売っていたOゲージ用のTR47台車があり、「文鎮」というあだ名があった。それは彫りの浅いブラス鋳物をブリキ板でつないだものだ。このブリキ板で作られた枕梁は捻り易く、線路の不整に追随する能力があり、脱線しにくかった。現物が手元にないので写真を撮れないと思っていた矢先に、ヤフー・オークションでちょうど売りに出ていたので、写真を拝借した。これはイコライズされているとは言い難いが、軽く捻られるから、軸重変化はかなり少ない。さらにこの台車を二つ付けて、バネを介して締めたボギィ車全体は、イコライズされているとは言わないのが賢明だ。
最近は天秤棒をイコライザだと断定する記事もある。弾性を持ったイコライザを使うと良いとか書いてあって、何もかも混在させている。論議のルールを決めてから意見を出すべきだ。
2015年03月09日
Richmond の博物館
そこにある鉄道博物館を今まで見るチャンスがなかったが、今回のレイアウト・ツアで行ってみた。会場からゆうに1時間かかる。
O, HO,N のレイアウトが一つの建物の中にある。大きさはサイズに正比例しているわけではないので、HO,Nのレイアウトは相対的に大きい。
これはOスケールで、左がHOである。
Oスケールは線をひき廻し過ぎで、列車が山の中に入るとぐるっと回って出てくるのだが、どのトンネルから出るのか、見当もつかない。
シーナリィはよくできていて、サンフランシスコ郊外の植生をよく観察している。もう完成して20年以上になるそうだ。
脱線転覆した様子を表している。側面から見ることもできる。
壁が切り取られ、谷底の様子が見える。ぐちゃぐちゃに壊れた貨車が落ちている。そこに救援に来た重機が居る。
2015年03月07日
O Scale West 2015
友人たちが「歓迎するから来い。」と執拗に誘ってくれたので、泊めて貰ったりして節約できた。開催地のホテルは毎年値上がりして、今年は116ドルもした。しかし立派な部屋で、面積は30畳以上ある。
毎年、参加者の平均年齢が上昇する。このままではどうなるのだろうと、クリニックでは「OSWの未来」と題する講演まで行われた。来年は5月ごろに開くと云うので、筆者の参加は難しいだろう。
テーブルの数は昨年とほぼ同数だが、売っているものが古い貨車等が大半であった。初日は高いが、最終日の昼過ぎになると値札を貼り替えて最終的には半額になるのだろう。頼まれていたものがあったので、手際良く買った。
レイアウト・ツアは毎年同じ顔触れで、工事の進捗があれば良いが、もう完成していると、行っても面白くない。しかし、Garyには会いたかったので行ってみた。
博物館のことは知らせてあったので、最近の写真を見せ、いきさつを話した。
「君のLife-time project だね。」と言うので、「その通りだ。」
「100輌を牽いて1.6%を登るんだ。」と言ったら、彼は眼を丸くした。
「君のメカニズムとLow-Dなら可能だろう。」と言った。
「そのうち行くからな。」ということで、早く完成しなければならない。
2015年03月05日
イコライザとバネ
ここで言う仕事とは、物理学で言う仕事である。要するに線路上の凸部を乗り越えたとき、その変位によって、エネルギィが蓄えられてしまうとイコライザではない。
仕事の例として、ゼンマイ時計を巻くと云う操作を考えて戴きたい。巻かれたゼンマイは、いずれほどけて時計の針を廻す仕事をする。エネルギィが蓄えられている。
今回の天秤棒バネは、線路上の突起によって一輪が持ち上げられると、重心が1/4持ち上げられ、位置エネルギィが増大する以外に、バネがねじられてエネルギィが蓄えられる。いずれそのエネルギィは放出されることになる。
次に鳩時計の錘を引っ張り上げる操作を考える。重りに位置エネルギーが蓄えられ、針を廻す仕事をする。今野氏の作例では、バネはないが、イコライザ自身が厚板製なので、重くて垂れ下ろうとする方向に行きやすい。その逆方向に捻るのは、重力場の中ではやや重さを感じる。ボルスタ付近の支点もややずれているようで、捻る方向によって、車体が微妙に上下する。作図をすると、支点位置はどこに来るべきか、すぐ分かる。
すなわち、台車の捻りで、エネルギィが蓄えられたり、放出されたりする。こういうのは、本当はイコライザとは言い難い。バネ等で、引っ張り上げて、重力の影響をキャンセルすべきであろう。brass_solder氏はその重力による影響を打ち消すバネをG-キャンセラと名付けられた。この作例には全ての要素が盛り込まれている。
分かってやっていたことのなのだが、筆者の作例で「仕事をしてしまう」事を看破されてしまった。多分誰も気が付かないだろうと思っていたのだが、目敏い人がいらっしゃった。
この作例を作るときに、バネを極端に弱くしても”脱線”しないようにした。中央に来ると最も安定化するようにしたので、それから外れる方向に行くと、多少の仕事をすることになる。バネが弱いので、ほとんど無視しうる程度ではある。
今回TMSに載った記事と同等のアイデアが発表された記事は、すでにいくつかある。
筆者がいくつか見た中ではこの案が一番賢明である。作り易く、単純明快である。2月26日の記事にある。小池令之氏はアイデアが豊富で手が早い。工作は伊藤剛氏の作風を感じる。
2015年03月03日
天秤棒の件
どれも記事の完全なコピィを送ってくれたわけではなく、不鮮明な画像しか送ってくれなかったが、単なるバネ装置の範囲から出ないことはすぐわかった。
帰国後、時差ボケがひどく、昼間は頭痛がしていたが、書店に行った。最近、TMSは近くの書店にはなく、街の本屋まで出かけて確認した。
思った通り、単なるバネ装置でイコライズはしていない。これは形は異なるが、1940年ごろからアメリカで売っているAthearnのOゲージ貨車の台車マウントと同じである。
二つの台車が、床板の上に貼りつけられた板金製の台枠にはめ込まれた雌ネジに取り付けられる時、径のやや大きなコイルばねを介してネジで留められる。雌ネジの台車に当たるところは狭く、台車はかなり自由に傾く。
バネは台車の傾きに抵抗する。レイル上の突起に乗り上げると、片方の台車枠は持ち上げられ、車体に対して捻りを伝える。しかし、もうひとつの台車は平面レイルの上にあるから、それは車体を元の位置に保とうとする。その二つの力のつり合いによって、平均値である捻り角の半分ほどのところで車体が落ち着くはずだ。ただし、車体はバネで支えられているので、ふらつく。
Oゲージの場合、このふらつきがなかなか良く、ポイントを渡るときは実感的である。もちろんバネの固さ、ネジの締め付け具合は経験上、一番良いところを選んでいる。ただキットを組んだだけでは、そのような動きはしない。バネ座部分の多少の摩擦がダンピングに効果を発揮している。3点支持ではないので、どちらの方向に走っても具合が悪いことはないと云うところが良い。これはバネで制御された2点支持である。
車輪が突起に乗り上げると、その反対側の車輪の輪重は低下する。ちょうど自動車の一輪が突起を踏んだ時と同じである。対角線上の一輪に対する荷重が増え、その他の荷重は低下する。自動車の場合はスタビライザ・バァが付けられているので、反対側に多少は荷重を増やすように働く。しかし等荷重にはならない。自動車にはショック・アブソーバと云うダンパが付いているので、揺れも収まり、乗り心地の改善に貢献する。この天秤棒は、スタビライザ・バァそのものである。
鉄道模型にダンパが付いているのを見たことがない。積層した板バネはダンパだが、それを正しく働かせている例を見ない。たいていは上の1,2枚だけを利用している。筆者はハイドラクッションの模型を作った時に自作のエアダンパを付けた。実にうまく作動して効果的であった。オイルダンパは20年経つと油が漏れてきてダメになった。
この小林氏の作例もダンパが付いていると、かなり走りが改善されるであろう。ダンパは空圧、油圧のみならず、摩擦方式もあるので、簡単な方法で大きな効果が得られるであろうと思う。
今野氏のブログで議論が白熱し、非常に良い結果が出た。このようなインターネットを手段とした議論は、おそらく日本の模型史上最初のことではないかとも思う。小林氏は潔く非を認められ、訂正をTMSに対して申し出られたのである。これは大人の対応であって、とても素晴らしいことである。