2015年03月03日

2015年03月03日

天秤棒の件

 米国にいる間に、メイルをいくつか戴いた。中身は全て同じで、最近号のTMSの記事で、小林義和氏が執筆された記事について、意見を求めるものであった。
 どれも記事の完全なコピィを送ってくれたわけではなく、不鮮明な画像しか送ってくれなかったが、単なるバネ装置の範囲から出ないことはすぐわかった。
 帰国後、時差ボケがひどく、昼間は頭痛がしていたが、書店に行った。最近、TMSは近くの書店にはなく、街の本屋まで出かけて確認した。

Athearn truck mouting 思った通り、単なるバネ装置でイコライズはしていない。これは形は異なるが、1940年ごろからアメリカで売っているAthearnのOゲージ貨車の台車マウントと同じである。
 二つの台車が、床板の上に貼りつけられた板金製の台枠にはめ込まれた雌ネジに取り付けられる時、径のやや大きなコイルばねを介してネジで留められる。雌ネジの台車に当たるところは狭く、台車はかなり自由に傾く。

 バネは台車の傾きに抵抗する。レイル上の突起に乗り上げると、片方の台車枠は持ち上げられ、車体に対して捻りを伝える。しかし、もうひとつの台車は平面レイルの上にあるから、それは車体を元の位置に保とうとする。その二つの力のつり合いによって、平均値である捻り角の半分ほどのところで車体が落ち着くはずだ。ただし、車体はバネで支えられているので、ふらつく。

 Oゲージの場合、このふらつきがなかなか良く、ポイントを渡るときは実感的である。もちろんバネの固さ、ネジの締め付け具合は経験上、一番良いところを選んでいる。ただキットを組んだだけでは、そのような動きはしない。バネ座部分の多少の摩擦がダンピングに効果を発揮している。3点支持ではないので、どちらの方向に走っても具合が悪いことはないと云うところが良い。これはバネで制御された2点支持である。

 車輪が突起に乗り上げると、その反対側の車輪の輪重は低下する。ちょうど自動車の一輪が突起を踏んだ時と同じである。対角線上の一輪に対する荷重が増え、その他の荷重は低下する。自動車の場合はスタビライザ・バァが付けられているので、反対側に多少は荷重を増やすように働く。しかし等荷重にはならない。自動車にはショック・アブソーバと云うダンパが付いているので、揺れも収まり、乗り心地の改善に貢献する。この天秤棒は、スタビライザ・バァそのものである。

 鉄道模型にダンパが付いているのを見たことがない。積層した板バネはダンパだが、それを正しく働かせている例を見ない。たいていは上の1,2枚だけを利用している。筆者はハイドラクッションの模型を作った時に自作のエアダンパを付けた。実にうまく作動して効果的であった。オイルダンパは20年経つと油が漏れてきてダメになった。

 この小林氏の作例もダンパが付いていると、かなり走りが改善されるであろう。ダンパは空圧、油圧のみならず、摩擦方式もあるので、簡単な方法で大きな効果が得られるであろうと思う。

 今野氏のブログで議論が白熱し、非常に良い結果が出た。このようなインターネットを手段とした議論は、おそらく日本の模型史上最初のことではないかとも思う。小林氏は潔く非を認められ、訂正をTMSに対して申し出られたのである。これは大人の対応であって、とても素晴らしいことである。
 

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