2014年02月

2014年02月26日

Low Water Alarm

Nathan Low Water Alarm 2 アメリカの機関車には、Low Water Alarmが付いているものが多い。うっかりしていて水面が下がったことにより、Crown Sheet(火室天板)が過熱して爆発するのを未然に防ぐ装置だ。人的要因による事故を防ぐ装置である。日本にはなかったようだ。

 色々な方式があるが、筆者としてはこの方式の賢さには敬服している。2本の棒があるが、太い方は先端を閉じたパイプである。それはボイラー内に挿さっていて、その下端の高さは、許されていない低水面である。すなわち、下端がその水面から露出した瞬間、警報が鳴るのだ。
 さてどういう仕組みになっているのだろう。

 ボイラはジャケットを被っている。熱が逃げにくいように布団を被っているが、このパイプは露出している。つまり、ボイラと同じ温度になろうとしても、熱が逃げて、多少は冷えてしまう。それでも触れば火傷を負う温度である。熱が逃げるのはもったいないと言っても、安全弁だって露出しているのだから同じだ。
 露出したパイプの先端が150℃であるとする。ボイラの中は210℃ほどもあるので、空のパイプに水蒸気が上がって来ると、ここで冷えて液化する。すなわち、パイプ内には常に水(と言っても熱水)が詰まっている。その温度でのパイプの長さは大体一定である。要するに、パイプの中には温度勾配があって、定常状態を保っているということである。

Nahan Low Water Alarm 何かの間違いで水面が下がり、中の水が落ちるとどうなるだろう。熱い蒸気が直ちに入り込み、パイプは熱膨張する。冷えるから水滴が生じるが、水滴は直ちに流れ落ち、内部が水で満たされることがない。水蒸気が凝縮するとき熱を放出するから、パイプは均一に加熱されて210℃になるのだ。
 熱膨張を検知する装置がある。細い方の棒は大気に触れているから、あまり熱くない。しかもパイプの下にあるから熱があまり伝わって来ない。また、パイプの中味が熱水から水蒸気に変わっても、この棒の長さはほとんど変わらないだろう。

 棒よりパイプが長くなると、それをリンクFで増幅し、キャブ内の気笛を吹鳴させるわけだ。この汽笛が鳴ったら地獄への入り口にさしかかったことになる。
 汽笛を聞いてあわてて給水すると水面が上がり、パイプ内部の水蒸気は冷えて水になるので水面は間もなく上昇し、パイプ内は再び水で満たされる。しかし気笛は、しばらくは鳴り続けるだろう。


2014年02月24日

鉄道模型の発煙装置

smoke generator ライオネル、メルクリン、MTHあたりで使われているのは流動パラフィンとかプロピレングリコールである。いずれも常温での蒸気圧はかなり小さく(蒸発しにくい)、100℃以下で十分大きな蒸気圧を持つ(プラスティックが融けない程度の温度でよく蒸発する)物質である。後者はヒータの設計をよく考えて、部分的に150℃くらいまで加熱される部分があると、よりうまく行くはずだ。
 これらの液体を加熱すると発生する蒸気は当然無色透明で見えないが、空気中で急速に冷えて白い湯気に見える。前者は放置してもいずれ蒸発して無くなるが、後者は蒸発しにくい。

 流動パラフィンは吸い込んでも全く害はない。皮膚につけても大丈夫だ。それでもご心配の方このページを読まれると良い。日本語版は説明が少ない。
 プロピレングリコールは食品添加物であるし、害はない。ただ蒸発しにくいのでべとつくが、水に極めてよく溶けるので、水拭きするか、流水でさっと洗えば良い。
 筆者は霧を吹いて、綿棒で拭き取る。べとつきがあると、カビるのではないかと心配される方もあろうが、カビは生えない。この種の化合物は防カビ剤として機能する。濃いと浸透圧が大きくなり、生物が繁殖できないのである。

 写真は01175氏ご提供のサンプルを試運転中のもの。
 

 <追記>
 01175氏から詳しい情報を戴いた。プロピレングリコールはBachman が使っているそうである。
 メルクリンが使っているゾイテ社の発煙液はよりさらさらしているリグロインのように見えるとのこと。
 流動パラフィンよりもうちょっと分子量を小さいものがリグロインである。尤も、沸点で分けているので分子量はややばらつきがあるだろう。同じ分子量でも分子の形によって分子間力が異なり、沸点が違うからだ。
 
 ここに動画があるのでご覧戴きたい。上の写真はかなり発煙して、残り少なくなった時のもので、本当はもっと発煙量が多い。 



2014年02月22日

舞台のスモーク

 舞台やスタジオで用いられるドライアイスによる霧の発生のメカニズムを考えてみよう。

 コツはぬるま湯を用いることである。ドライアイスは水よりずっと重いので、下に沈む。ぬるま湯から熱を吸収し、盛んに二酸化炭素の気体を発生する。ぬるま湯からは、その温度での飽和水蒸気圧が発生し、それがドライアイスによって急速に冷やされる。これが冷水だと、蒸気圧が小さく、水滴となるべき水蒸気の供給量が少ないから、うまくいかない。

 この方法はプロセスは全く異なるが、断熱膨張と同じ結果をもたらす。すなわち、微細な水滴が気体中に浮いている状態を作るのである。要するに、温かい水から発生した大量の水蒸気が冷やされて、水滴になったのである。

 この方法でも湯気は出来るが、如何せん、二酸化炭素は空気より重いので、蒸気機関車の白い煙を再現することはとてもできない。

 残るは超音波霧化器である。これは技術が確立されているし、特許もすでに切れているので、いくらでも応用できる。発煙材が水なので、全く問題ない。
 しかし、鉄道模型分野ではあまり見ない。オモチャの分野では時々見る。おそらく、鉄道模型での主戦場となるHO、Nでは体積が確保できないのであろう。

 霧化器の心臓部を見ると、水面に下から超音波を当て、水面を振動させる。すると水が揺すぶられて、水滴を発生する。この部分に指を突っ込むと熱く感じる。実際には熱くないのだが、神経を刺激して熱く感じさせるのだろう。健康には良いとは言えないので、そういうことはしないほうが良い。
 この部分が高さ3cmは必要で、HO以下には入りそうもないのだ。


2014年02月20日

続 水蒸気と湯気

 蒸気機関車のボイラー内の圧力は高い。温度は200 ℃を上回る。さらに加熱されるが、それはこの問題とはあまり関係がない。シリンダ内で仕事をしたのち、やや圧力、温度が下がった水蒸気は煙室内のノズルから煙突へと噴き出す。この時、煙室内の空気が蒸気の噴出によって吸い出され、火室の通風が良くなって燃焼を助ける。

 日本型蒸気機関車には排気膨張箱という不思議な箱があって、排気の脈動を抑えるという言い伝えがあったそうだが、実際には役に立たなかった。諸外国の機関車でそのようなものを付けている例はまず見ない。排気音が、小気味よく弾けるように聞こえるのはそれが無いからである。
「背圧が少ない方が、仕事量が大きくなって効率は上がる」
というのが物理学的な思考である。一部の古い国鉄の機関車はこの膨張箱を付けていなかったので、明らかに排気音が異なった。走りだすとき、パッ、パッ、パッという音がした。

凝結開始 さて、蒸気機関車の排気はどうして白く見えるのであろうか。
 排気はおそらく大気圧の1.5倍ほどの圧力をもっているはずだ。温度は120℃ほどだろう。それが大気の中に放出される。すると、水蒸気は急速に膨張し、大気を押し退ける。その時仕事をしてしまうので、温度が下がる。
 すると、その下がった温度で許される飽和水蒸気圧は小さく、たくさん存在する(濃度の高い)水蒸気の大半は、凝縮して水滴にならざるを得ない。すなわち断熱膨張が起きた結果、水蒸気の濃度が高いまま、温度が下がったのである。

 グラフの右の部分から、左へと行くわけだ。実際には排気は空気と混じって薄められるので、やや下の方に行く。また、このような過渡現象は直線上ではなく、複雑な曲線上にあるはずだが、そのことはここでは無視する。

 「断熱膨張」がキィワードである。この言葉が無いと、説明が出来ない。
 
 結論を言うと、ボイラを持たない模型からは湯気は発生させられない。先回に書いたボイラもどきの蒸気発生器は、大気圧下でやっている限り、湯気は見えない。2,3気圧のボイラがあれば、盛大に湯気を上げて走る模型になるだろうが、怖くてそんなことはできない。

 昨年、伊藤剛氏にお会いした時、氏も同じ質問を受けたことがあると仰っていた。その時、断熱膨張という言葉が出たので、さすがだと思った。

2014年02月18日

水蒸気と湯気 

 最近の大雪でこの種のニュースは見かけないが、毎年寒さが厳しくなると、新聞に必ず載る写真とその不可解な説明がある。
 たいていは子供たちが口から白い湯気を出して、「蒸気機関車みたいだ!」と喜んでいる場面だ。その解説には必ず、「白い水蒸気を口から出して…」とある。新聞記者は理科の勉強が足らないのが露呈している。

蒸気圧曲線

 水蒸気は見えない見えるのは湯気(水滴)である。我々は常に口や鼻から水蒸気を出しているが、室内でそれらが見えることはない。室温で許される最大の蒸気の圧力(濃度)はかなり大きく、口から出る水蒸気はすぐに空気と混じりあって薄められ、体温から室温まで下がっても凝縮するには至らない。

 寒い風呂場で湯船の蓋を開けた瞬間には、湯気(水滴)が見られる。湯船の上の空間の温度は高く、そこで許される水蒸気の濃度は大きいので、冷たい空気に触れると、その気温で許される水蒸気の濃度以上の水蒸気は凝縮しざるをえないからだ。
 そのうちに風呂場の気温が上がって来ると、湯気は生じなくなる。その気温ではたくさんの蒸気の存在が許されるからだ。

 20年ほど前、友人から相談があった。
「蒸気機関車の煙室内に、小さな電気湯沸かし器のようなものを作って入れてみたのだけども、ちっとも白い湯気が出ない。」と言うのだ。
 この種の間違いは複数回見た。
「真冬の凍える室内なら見えるだろうが、20〜25 ℃の空調の効いた部屋では、望み薄だね。」
と言うと、随分がっかりされたようだ。

 蒸気機関車の排気はどうして白く見えるのであろうか。真夏でも煙突から多少は白く見える煙を出すし、ドレインを吐き出している時は、かなりの距離まで湯気が噴出する。

 グラフは水蒸気圧曲線である。このウェブサイトからお借りした。

2014年02月16日

衝突

 もう30年以上前のことである。確か戦艦だったと思うが、模型を公園の池で走らせていた。Uターンさせて戻ってきたのだが、うっかり間違えてコンクリートの壁に正面衝突させてしまった。ゴンという鈍い音がしたが、船ははね返ってさしたる損傷はなかった。
 それを見ていた老人二人が、声を立てて笑った。
「やっぱりオモチャだな、はね返りおった。」 
それを聞いて、筆者は何が面白いのか分からなかった。

「はね返ってはいけないのですか。」
「そりゃだめだ。お前は船がぶつかるところを見たことがあるか。」
「いえ、ありませんが。」
「俺たちは海軍に居た。何回も船がぶつかるところを見たぞ。」
「えっ、それはすごいですね。どうなるんですか?」
「駆逐艦が岸壁にぶつかった。」
「岸壁が壊れましたか?」
「バカなことを言っちゃいかん。」
「船が壊れる。こうやってな、船がぶつかると……」
と身振り手振りで説明してくれた。

岸壁に当たったところがめり込むのだ。甲板はかなり原型をとどめたまま、ずぶずぶとめり込んでいくのだそうだ。なかなか止まらないものなのだと言う。
「船は柔らかいぞ。お前もなー、そういう柔らかい船を作って走らせてみよ。それでもって、岸壁にぶつかってぐちゃぐちゃに潰れたら、本物と同じだ!」
老人二人は、また大きな声で笑った。

 東横線元住吉で、電車の衝突事故があった。前頭部はぐちゃぐちゃだ。また、その他の車輌も床は盛り上がり、天井は落ち、長さが縮んでいる。
 やはり本物は柔らかい。その写真を見て、老人たちの会話を、ふと思い出した。


2014年02月14日

続々 Dynamometer Car

 速度を計測するのは車軸の回転数からである。ところが車輪は少しづつ摩耗するので、その径をいつも測定しなければならない。

 この写真はイギリスのDynamometer Carである。測定用の車輪を軽く押し付けているのが分かる。その車輪は接触圧がとても小さいので自転車の車輪ほど華奢である。普段の走行時には持ち上げていて、試験のときだけ、接触させている。

SH821 この記事はPopular Scienceの特集記事などをまとめたこのサイトからお借りしている。 NYCの車輌を図解している。これは油圧式で、連結器の伸びは非常に少ないが、模型化は無理である。
 キュポラに座っている人は、マイルポストを監視している。車輪の回転のみならず、実際の距離も読んでいるのだ。あとで突き合わせて補正をするのだろう。
  

 キッチンがついていて食事が出来るし、ベッドもあって休むこともできる。ディレクタの席もあるし、なかなかの豪華版である。日本の国鉄のヤとか、いわゆる”ドクター・イエロー”などの中はどうなっているのであろうか。日本では比較的短時間であろうから、このような設備は必要ないのだろう。

 今回作るのは機能第一主義であって、その外見は「変でない程度」にしか作らない。もちろん実物のスケールモデルではなく、こんなのがあったらいいなという程度である。

 台車は4輪台車でも良いのだが、より重厚な6輪台車にする。イコライズしていない台車に改造を加え、3軸がいかなる線路にも追随する工夫をした。牽引力計も、カーヴ上での作動を確保する構造にした。
 
 ある程度形が出来たら、報告する予定だ。
 



2014年02月12日

続 Dynamometer Car

 牽引力は、バネを押し縮めたり、あるいは伸ばしたりしてその変位を測定することによって算出される。連結器は引っ張られると伸びるわけだ。その量をある程度の範囲にしておかないと、連結器がうんと伸びて、外見的にもおかしいし、曲線上ではその引っ張る向きが車輌の軸から大きく外れてしまって脱線のもとになる。

1997-7059_HOR_F_1012 本物の構造はどうなっていたか、テコ式のは資料が集まらないので分からない。模型はサーボモータなどで変位の分だけ、バネ秤を軸方向に移動して、見かけ上、連結器が伸びないようにするのが望ましいと思われた。すなわち、車体を押さえて連結器を引っ張ると、連結器が伸びないで牽引力が測られるのがベストである。
 この機構は以前作ってみたのだが、追随性を上げると、その時に加速度が測定されてしまい、見かけの牽引力増加が測定されて、とても具合が悪い。追随性を下げると何の意味もないし、正直なところ良い結果は出なかった。追随するときの変位補償の加速度をコントロールすることが必要なのだが、とても難しい制御である。
 バネを強くすると変位量が小さくなるが、その分測定誤差が増える。

 実物は曲線半径がはるかに大きいので、連結器の伸びは問題がなさそうだ。

chicst38 ダイナモメータの牽引力曲線を見たことがあるが、蒸気機関車の場合はトルク変動が大きく、波打っている。3気筒機関車の場合はトルク変動が小さいので、波打ちが小さい。
 電気機関車の場合はほとんど平坦である。その出力用紙には時間軸も印刷されるので、特定の時刻の速度の出力用紙からの読みと照らし合わせて、仕事率を計算するようだ。かなり面倒な作業だ。

bo-2002-48images 当時の写真を見ると、機関車のキャブとの通話用の電話線が見られる。またテンダ上を経由して、キャブまで行くことができるように、キャットウォークも付けられている。詳しい様子は分からないが、キュポラの前妻が開いて、屋根上に出られるものもあった。蒸気機関車の時代の出力測定は多人数でやる大掛かりなもののようだ。


2014年02月09日

吉岡利隆氏の死去

 本ブログにもリンクされているシドニィ在住の吉岡利隆氏が、ご病気で本年1月9日にお亡くなりになった。本日ご子息からお知らせ戴いた。鹿ケ谷氏と言った方が通りが良いかもしれない。時々コメントを投稿されていたので、名前をご記憶の方もいらっしゃるだろう。

 吉岡氏の腕の確かさは折り紙つきで、筆者はライヴスティーム方面のことしか詳しく知らなかったが、飛行機の模型においても卓抜した力量を持ち、その世界でも有名人であった。

吉岡利隆氏
 
 日本に出張されるときはよくお会いし、また、拙宅にも逗留されたことがある。名古屋模型鉄道クラブの例会にも特別参加され、伊藤剛氏やお客様の今野喜郎氏と親しくなれたことをとても喜んでおられた。
 当家にいらしたときは特殊な刃物類を差し上げ、それが工作に使われている様子が発表されて喜んでいたのに、あまりにも早い逝去で、残念至極である。

 この夏にはオーストラリア訪問を実現させようと思っていたところであった。

 ご子息からの連絡によると、3月9日に都内某所で、国内の関係者のお別れ会が開かれるとのことである。

 

 

Dynamometer Car

 最近はダイナモメータという言葉が、日本語に入っているようだ。自動車の動力系を改造して試験をするのだそうだ。以前はこの種の測定器は自動車製造会社にしかなかったのだが、最近は街なかの自動車改造ショップにも置いてあるらしい。看板をよく見かける。アメリカの自動車屋にもある。dyno ディノゥ という言葉を使う。ダイノゥと読むはずなのだが、そういう発音は聞いたことがない。
 
 鉄道車輌にそれを積み込んだものがdynamometer car ダイナミタ・カァ である。太字にアクセントが来る。
要するに牽引力と速度を測定し、その積を求めるのだ。当時はこの二つをグラフとして出力させ、それを持ち帰って計算して出力を得ていたようだ。すなわち、当時はリアルタイムの出力は、直接には得られなかったのだ。

 当鉄道ではディジタル速度計は25年前から実用化されている。これは以前雑誌に発表したが、車輪の回転を光電式で読み取り、速度をマイル表示あるいはkm表示で示すようにしたものである。ディスプレイは貨車のドアを開けるとLEDで大きく表示される。約1秒ごとのサンプリングである。

 今回製作中のものは牽引力と速度を測定し、演算して積の形で表す。つまり仕事率が直読できるようにする。それを無線で手元に表示するようにしようというわけだ。最近はbluetoothなど、安くて簡単な方法がいくらでもある。
 あるいはリアルタイムでなく、一巡りして来て、蓄積したデータを取り込む形でも良い。それなら無線でなくても良い。

mousepower MR1950-02p26

 窓からリアルタイムの出力を見せることは必要だろう。問題はその出力がせいぜい4Wくらいなのだ。あまりにも小さく面白みに欠ける。  1950年2月のModel Railroader にとても興味深い記事が載った。馬力 horsepowerは大き過ぎるから、ネズミ力 mousepowerを導入するという話だ。よく読むと次元が間違っていて、力と仕事率とを混同しているからアウトなのだが、面白さはある。それをTMSが1957年9月号に解説しているのだが、中味は感心しない。
 しかし、その記事中、”mousepower”の日本語訳に「チューリキ」というのは愉快だ。これについては、伊藤剛氏が1950年頃クラブ会報に解説を書かれていたが、それは正しい内容であった。

 出力のワット数に適当な比例定数を掛けて、スケール馬力数を表示させるのが良さそうだと思う。

  [画像は栗生弘太郎氏よりコピィを戴いた。64年前だから、わが国では版権の問題はないものと思う。しかしインターネットは外国にもつながっているから……… 。] 


2014年02月07日

牽引力

 牽引力を測定するのは、バネ秤を用いる。Oスケールでは最大15 N (約1.5kg重)ほどの牽引力を発生するので、2 kg の秤を持っている。大きな鈎が付いているので、垂直使用時(普通の用途)ではそれで良いが、牽引力は水平使用なので鈎の重さが差し引かれるべきである。
 調節ネジを緩めて、零点を合わせる。所定の台に載せて釘で仮留めする。テンダの連結器に針金を引っ掛け、バネ秤と直結する。これで起動時の牽引力は測定できる。
 今までの実験では摩擦係数は0.22近辺である。ニッケルめっきされた鉄タイヤで、すでにめっきは擦り減って剥がれている。ちなみにLow-Dは0.15近辺である。これらの値は乾燥した鋼製レイル、洋銀レイル上で測定した。鋼製レイル上の方が僅かに大きいが、誤差範囲に入るので、事実上同じとする。

 走行時の牽引力は、測定用貨車を作り、それに秤を載せて歩きながら見る。かなり滑稽な状態だが、それをまじめにやった。床に線路を敷いていた25年前はそれが出来たが、現在は不可能だ。
 
 
 所属クラブの新年のお題として「特殊車輌」というのが与えられた。良いチャンスだから、それに参加することにした。Dynamometer Carを作ることにしたのだ。部品もある程度揃ったので、作り始めた。
 少し短い客車(70’ combine)の始末に困っていたので、それの屋根を削り取った。キュポラを付け、テンダへの乗り移りがし易いようにデッキを付ければ外見上は出来上がりだ。

 中味はどうするか迷ったが、その分野の測定装置を作っている研究者の方が近所に居るので、話を聞いた。
 結論は、いわゆるディジタル・フォースメータは信頼性が小さい。特に温度特性が良くないとのことであった。時を経てもバネ秤に敵うものはないらしい。ただし、バネは伸び縮みで先端が多少回転するので、スラスト・ボールベアリングを付けたほうが良いようだ。

 バネ定数を測定して、誤差のほとんどない部分で測定すれば、極めて正確なバネ秤が出来るということだ。読みをどうするかであるが、その方のお勧めはディジタル・ダイヤルゲージであった。要するに軽く動くDROである。

Dynamometer Car  [写真はHOの既製品のDynamometer Car 外見のみで機能しない]

2014年02月05日

sine と tangent

 先日のコメントでサインとタンジェントの話が出た。いつも、どちらで書こうか迷って、結局タンジェントにする。模型ではタンジェントの方が分かりやすいし実用的である。水平な路盤に印を付けて、持ち上がる量を決めるからだ。
sine and tangent
 実物はサインでないと定義しにくい。線路は山中の斜面に敷くので、走行距離当たりの持ち上がり量を考えねばならない。地中に仮想の線を引くわけにもいかないからだ。

 機関車の走行距離と負荷を持ち上げる高さで角度が定義され、走行速度が分かれば出力が算出される。これは機関車の効率を測る方法である。

 機関車は斜面を登るわけだから、サインなのだが、鉄道の勾配は非常に緩やかなので、実質的にはサインとタンジェントの値は等しいと近似しても、なんら問題はない。

 Incline (いわゆるケーブルカー)などではその差は如実に表れる。

 コメントにも書いたが、この実験のように路盤にShim(薄い板)を挟んで持ち上げるときは、タンジェントの方が楽である。床のタイルの大きさの整数倍のところに薄い板をはさんで測定し、そのシムの厚さをノギスで測定すれば済むからだ。これをサインでやれということになると、路盤長さを測定して印を入れ、そこにシムをきちんと挟まねばならない。かなり面倒だ。

 というわけで、「本当はサインを用いるが、鉄道模型ではタンジェントが楽。」が正解ということを強調しておく。

2014年02月03日

Low-D wheel contour 総括

 筆者は、色々な分野の専門家と共同して仕事をすることがよくあった。専門家の皆さんは非常に的確な推論を出して問題を解決する場合が多かったが、たまに完全に外れる場合があった。
 それを筆者なりに分析すると次のようになる。

推論





 未知の事象が過去の経路からそれほど大きく外れていないときには、専門家の皆さんの推論はたいてい当たっている。しかし、未知の事象は必ずしも微分可能な関数の上に載っているわけではない。急な曲がり方をしているかもしれないし、完全に折れているかもしれない。あるいは連続性がないのかもしれない。
 工学は演繹的な推論と帰納的な推論を組み合わせて出来ている。前者は連続的な関数の時には非常に大きな効果を与えるであろう。またその結果が今まで全て当たっていると、その演繹性がこれからも全て正しいはずという帰納的な推論をもたらす。ここに大きな落とし穴がある。

 条件設定が変わると、「今までどの変数がどの範囲で正しい結果をもたらしたのか?」という検証が必要になるのだが、専門家の皆さんは、過去の成功体験から逃れられない場合が多い。
 筆者は成功体験などないので、物理の基本原理だけから考えることしかできない。
 いわゆる公式というものも、元の関数だけから調べれば、近似の結果であることが大半だ。近似という操作をするときも、近似できる範囲は条件によって大きく変化する。

 自然科学は観察の学問である。何が起きているかは机の上では解決しない。実際に模型を作って、多数の例を観察して結果を出すべきである。都合のよい例だけを分析すると間違える。

 この連載記事が始まった途端、「個人攻撃を始めたのですか?」というご意見も戴いたが、そうではない。もっともっと客観的な話である。全てを本物の理論で解決することが出来ないことを伝えたいのである。Proto48や、本物縮小主義に対しての筆者の意見表明である。

 先日も「旧型EF電気機関車を本物通りに作った。」というのを見せてもらったが、車体の剛性が大き過ぎて、線路のひねりに追随できない。本物の車体は細い梯子フレイムにへなへなの箱車体が載っているだけであるから、簡単にひねられる。台車と台車は牽引力を伝えるように結び付けられていて、車体には牽引力は伝わらない。そのあたりがあやふやで、非常に残念であった。

2014年02月01日

Centipede Tender

 Big Boy、 Challenger、 Mighty 800についているテンダは、いわゆるセンティピード・テンダである。4-10-0の車軸配置で、後5軸の軸は固定であるが、バネは効いている。
 このテンダをつけた機関車を後退させるのは、難しい点がある。最後軸が極めて脱線し易いのである。ウェイトを余分に積んだり、左右動を効かせてみたり、出来る工夫は全てした。しかし後退時にポイントで脱線し易かった。だから、後退でなるべくポイントを通らずに機関区に行けるように、線路配置を工夫したこともある。

 Low-Dが開発されて、33 in.(17.5mm)、36 in.(19.0mm)の車輪が行き渡ったころに40 in.(21mm)の車輪を作った。大半はディーゼル電気機関車の非動軸用のものであった。当初は機関車を全て動力化する予定であったが、Low-Dの実用化で、機関車1台で100輌以上の貨車が牽き出せることが分かった。勾配があっても50輌は牽けるので、動力車の数が半減してしまい、かなりの機関車がダミィとなったからである。
 余分の21mm車輪をセンティピード・テンダに取り付けたところ、後退時の脱線が皆無になった。今までの苦労がウソの様に、脱線しなくなった。

 比較してみると、同じ軸重でも、フランジがポイントの尖端軌条に辷り上がらないのである。明らかに摩擦係数が小さいことが寄与している。軸が左右に振れるようにもしていないのだが、すんなりと転向する。1kg以上ある重いテンダーだが、ボールベアリングのおかげで非常に軽く動く。
   
 芦屋の御大もBig Boyのテンダが脱線することで悩んでいた。
「考えられることは全てやりましたよ。でも脱線するのです。バックさせないようにしてます。」
と仰ったことを覚えている。

 やはり摩擦係数が小さいことは、非常に大きなファクタであることは間違いない。模型と本物は違うのである

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