2013年04月

2013年04月30日

続 "Model railroading is not a hobby"

 ハーマンにどうしてあの標語が掲げてあるのか、聞いてみた。答は「いや面白い言葉だろう。友達にもらったから、あそこに掲げたんだ。」としか言わなかった。

Harmon's 8Harmon's 3 しかし、彼の工作を見ると、この標語そのものであるという感じがする。
 ほとんど完成品を持っていない。60年も鉄道模型をやっているのにコレクションはせいぜい20輌だ。しかも動力車は3輌だ。棚の上にはMax Grayの時代の機関車が箱入りで置いてある。「参考に買ったけど、そのうち売ってしまうさ。」と言う。

113_8083 毎日図面とにらめっこし、寸法の計算をして、ロッドの納まりを確認する。一つの部品を何日もかけて製作し、それをひとつずつ写真と見比べながら取り付ける。
 彼を見ていると、あたかも求道者のように思える。こんな図を描いて検討している。筆者のように、ラフ・スケッチだけで、えいやっとは作らない。

forming 2つしか作らないものでもこのような型を作って押し出して作る。ここしばらくは白内障で仕事が停滞していたようだが、最近手術を受けたので 糸鋸の8/0の刃も見えるようになったから仕事がはかどると言っていた。

 毎年筆者が作ったものを持って行くと、その中に発見されるいくつかの工夫を見て、的確な論評を加えてくれるありがたい友達だ。

 3日間であったが、楽しい訪問であった。

「そうだ、ここから1時間位のところに鉄道博物館があるんだ。行ってみないか。」と言う。
 
 それはMonticelloという町にあり、昔のWabash鉄道の駅や車輌を集めている。規模としてはイリノイ鉄道博物館の1/10位であるが100輌は持っている。  

2013年04月28日

"Model railroading is not a hobby."

113_8074 ハーマンの工作室にはこのような文が掲示してある。
"Model railroading is not a hobby, it's way of life." 「鉄道模型は趣味ではない。それは人生のありかた(行動の指針)である。」


 この文はおそらく、Ullmanの詩の一部 
”Youth is not a time of life, it is a state of mind.” をもじったものである。このアルマンの詩は日本では有名であるが、アメリカではそれほど知られていなかった。戦後の日本を統治したダグラス・マッカーサの執務室の壁に張ってあったのだそうだ。彼の座右の銘であって、彼の演説の中に何回も引用されている。
「青春とは人生の中のある一期間のことではなく、ある種の心理状態である。」
この詩の全文は検索すれば、いくらでも出てくる。のちにアメリカの政治家がよく引用するようになって、現在ではアメリカでも有名な詩となった。

 この一節は、形を変えて引用される。
"Christianity is not a religion, it's a way of life." 「キリスト教的な精神とは宗教ではなく、人生における指針である。」 この文はアメリカの有名な宗教家の言葉である。これを覚えていたので、色々な場面で役に立つことがあった。

 アメリカはキリスト教の国であると言ってよいので、我々のような異教徒は暮らしにくい。さまざまなパーティの場でも、やはり宗教にもとづく観念の差というものを感じる。
 二年前にテキサスに行ったときにも、教会に連れて行かれて紹介された。筆者はこのようなチャンスには、必ず参加することにしている。色々な出会いがあってプラスになることが多いからである。しかし、そこで聞かれたことは唖然とすることであった。
「日本にはキリスト教がそんなにも浸透しているのか?この間のニュースで、津波で流された金庫が何千個も見つかって、中味の現金が入ったまま持ち主に返されたと報道されただろう。キリスト教徒でなければそういうことはするはずはないからな。」と言うのである。
 なんという傲慢さ!
 
 彼らは、「キリスト教徒は正直で、それ以外の連中はウソつきである。」と決めつけているのだ。指名されてスピーチをすることになった。日本人とはどういう人たちなのかを説明したのだが、彼らの頭からは前記の思い込みが取れない。
 そこで最後に、"Christianity is not a religion, it's a way of life. To be a Japanese, it's the same way of life as yours." と言ってやった。「キリスト教的な精神とは宗教ではなく、人生における指針である。同様に、日本人であるということは、あなたたちと同じ人生の指針を持っているということである。」
 すると、彼らの表情が大きく変化し、全員が立ち上がって拍手した。  

2013年04月26日

Harmon の工作

Harmon's 10 ハーマンの家に遊びに行ってしばらく居候させてもらった。今年も天気が悪く、とても飛行機が飛べる状態ではなかった。「夏に来れば飛べるよ。」とのことである。


Harmon'sHarmon's 2Harmon's 7 機関車の進行状況はこんな具合である。先台車廻りはかなり進んでいる。また、キャブ内も実によく出来ている。来年までにテンダも完成させるということだ。
 ハーマンは本物の図面のコピーをたくさん集めている。一つづつの部品を図面を見て作り出すのだ。下廻りは動輪が厚く、軌間が 2 mm 広いので納めるには苦労している。ロッド類は全てギリギリの設計だ。

Harmon's 5Harmon's 6 従台車の作りも実に美しい。洋白板を使って薄さを見せている。板バネが不揃いなのが気になっている。作り直すようだ。


Harmon's 9 写真をよく見て、現物の部品の深さに気を配っている。真横の写真では勘違いをするから、このような角度の写真をよく点検する。
 1950年代に彼の友人が、古い8×10のカメラで模型に適する角度から数百枚の写真を撮ったそうだ。機関区で電柱に上って撮った写真を見せて貰ったが、貴重なアングルのものばかりだ。歩み板の真下から見上げた写真も模型作りには最適な角度だ。その本人は亡くなってしまったそうだが、写真は全てある。そのカメラの大きさを考えただけで、大変な重労働であったことが分かる。

2013年04月24日

MEGOW のクレーン車

 Megow Crane 4 1941年の10月号のModel Railroaderの広告である。このころの50ドルがいったいどれほどの価値があったのかはよくわからぬが、かなり高価なキットだったらしい。友人の Richard がこれを売りに出していた。以前は誰にも売らないと言っていたのに少し気が変わったらしい。彼は筆者に売りたかったらしい。勧めてくれるのだが、1000ドルは高い。その半分なら即時買っていただろう。Megowの読み方であるが、ミーガゥというらしい。

 この広告はMRに1回しか載らなかったという。発売台数はおそらく6台という話だ。リチャードはこの世界では有名なカスタムビルダでもある。しかし彼もこの1台きりであとは見たことがないそうだ。彼はこのクレーン車を1970年頃200ドルで買った、ということを15年前に言っていた。1000ドルはそういう意味では妥当な金額だろうが。

Megow CraneMegow Crane 2Megow Crane 3 実によく出来ている。モータ1台で3つの巻き上げ軸を作動させる。クラッチとブレーキが同時に作動して目的の軸以外は動かない。クラッチと言っても、傘歯車を噛ませるか外すかを選ぶだけだが、モータの正逆回転と同時に行えば、かなり細かい運転ができるはずだ。本物の構造と根本的には同じだ。
 リチャード曰く、完動品だそうだ。触らせてもらった限りではクラッチがカチッと作動して気持ち良い。逆転機はロータリー式だ。

Megow Crane 6Megaw Crane 5 組立図は正確に描かれている。工学の専門家が存在していることは間違いない。
 散会の時に、彼は名残惜しそうに、「次回には買ってくれよ。」と念を押しに来た。

2013年04月22日

続 Contest

contest この手の作品が多いと頭が痛くなる。凄まじい労力とお金を掛けた作品である。ロストワックス鋳物の部品をいったい何百個付けたのだろう。
 今まではこのタイプのエントリーが多かったが、数年前から退潮の兆しがあり、今年は1輌だけだった。入場者が投票して入賞が決まるのであるから、この種の作品の人気が落ちたということである。筆者はほっとしている。

 配管を細かく付けるのは良いのだが、この状態では振動で配管が動き、疲労してひびが入るであろう。実物の蒸気機関車をよく見ると、こんな状態の配管はほとんど無い。必ず中間を何らかの方法で押えてある。キャブの妻とか側板に補強が無いので実感に欠ける。配管の手間をそういう方向にも振り向けるべきだ。
 これを見て、「機関士はどうやって座るんだろう。入ったら出て来られないよ。」と言っている人が居た。それを聞いて同感であった。

 
Scratch built from styrene この作品はプラスティックの板からのスクラッチ・ビルトである。よく出来ている。こんな作品を作ろうとは思わないが、感心して見ていた。実物をよく観察して作ったということがよく分かる作品であった。このような作品は型を取って、マスプロダクションをすると、たくさん売れるであろうと思った。実際、そういう商品もある。ウレタンの鋳物で信じられないほどよく出来ている。しかも安い。組み立ては意外に大変で、直角を出すために、筆者は木のブロックで骨組を作って側板を貼りつけた。

snow plow ラッセル式雪かき車を作って雪かきの途中を表しているのだろう。しかし、不自然だ。機関車が無いと奇妙だ。入賞したのだろうか。

2013年04月20日

Contest

 コンテストを見るのはあまり好きではない。これでもかというのを見せつけられるからだ。 入賞者の常連は、引退後、コンテスト入賞だけを目標に頑張っている人ばかりだからだ。ロストワックスの塊のような作品は、見ても、あまりすごいとは感じない。
 今回はいつもとやや異なる雰囲気であった。きらきらのブラスのスクラッチ・ビルディングは少なく、既製品をうまく組み合わせて、精密さを感じさせる作品が多かったからだ。

barge2barge 一番気に入ったのは、この「はしけ」である。どのあたりで使ったものかはよくわからぬが、冷蔵車を並べてある雰囲気が素晴らしい。冷蔵車はIntermoutainのプラスティック製であろうが、細密度がほどほどで、全体のまとまりが素晴らしい。

RS3RS3 1RS3 2 今回の白眉はこのディーゼル電気機関車である。安いプラスティック製のWeaver社の製品を元にキャブ、エンジンルームを作り変えた。跳ね上げ式の点検扉の裏のラッチの造り等、かなりの観察眼の持ち主である。ディーゼルエンジンの表現も素晴らしい。キャブの中もよく出来ている。
 台車などは鎖を付けたり、配管を施しただけで、さほどの工作はしていない。

Depressed Center Flatcar2Depressed Center Flatcar3 この大物車はスクラッチビルドである。よく出来ている。変圧器の造作が今一つだが、碍子の取り付け部の傾き具合など、すばらしい。筆者としては、この程度の細密度で統一された列車の編成を夢見ている。
 実物より、線路幅が2mm広かろうが、そういうことはどうでもよいのだ。
 

2013年04月18日

続 Model Railroader の記事

 アメリカの友人からは色々なコメントを送って貰った。
「ようやく載ったな。」から、「すごいね。今度来たら、その記事にサインしてくれ。」
とか、「来年のコンヴェンションのクリニックにゲスト講師として迎えたいから、二行で要約を送れ。」などというのがある。
 肺ガンと戦っている友人からは、「もう車を運転することができないからコンヴェンションには行けないが、記事を読んで興奮した。動画も見たよ。感動した。来年うちに来てくれよ。会いたいから。」というメイルを貰った。来年まで元気でいてほしい。

 動画を見て、早速ケチを付けてきたのもいる。
「模型鉄道のカーヴにおける摩擦は、車輪が車軸とくっついて回転できないからであり、フランジが摺れることによって起きる損失は小さい。最近号のModel Railroaderの記事はそういう意味で完全に間違っている。」
 確かに内外の車輪の行路差による問題もあるが、少しの計算で分かる通り、半径がある程度大きい(ライオネルのような小半径ではない)と、それは踏面のテーパとフィレットの乗り上げ分で完全にキャンセルされる。
 しかし、RP25ではフランジが当たり続ける。これは写真を見ればすぐ分かることなのだが、肝心の写真が掲載されなかった。彼とはしばらく論争が続きそうだが、それも面白い。

 多くの人はステンレス製車輪の意義について知識が無かったようだ。摩擦が小さいということはたくさん牽けるということである。アメリカでよく聞く話は、「ニッケルめっきは怪しからん。摩擦が小さいから牽けない。」というものである。しかし大半の人が鉄レイルを採用しているので、しばらく走ればそれが摩耗して鉄タイヤが出てくるから問題ない。これはKTM製のMG、USH、PSCブランドの機関車の話である。
 貨車、客車はニッケルめっきのものを使っているようだが、その表面の粗さには気が付かない。めっきはその表面の仕上げ粗さをさらに増大させる。精密削成されたものにはとてもかなわない。
 たくさん買ってくれた友人Samは、「静かなのには驚いた。」というコメントを寄せている。

2013年04月16日

Model Railroaderの記事

 以前は何月号に載りますということをある程度教えてくれていたが、今回は全くの唐突であった。しかも、時間が経ち過ぎて、半分忘れてしまっていた。

 今月号のMRは”Tech Trend”というタイトルの特集をしている。挑戦的な技術を紹介しているのだ。拙記事のタイトルも”Rethinking the RP25 Wheel Standard" となっていて、規格(本当は規格ではないのだが)の見直しを迫るような感じを与える。
 筆者の原稿では、タイトルは"Is RP25 still correct?"(RP25 は今でも正しいのか)であった。どちらが強く迫っているかは判らないが、 編集者の判断で変えられている。
 本文も50%ぐらいしか元の文は見つけ出せない。図とか数表を文章に置き換えているところが今一つ理解しがたい。特許でもないのだから、図を見せられないわけでもない。フランジ形状が図で紹介されていないのは残念だ。

 Milwaukeeに行った時、現物を持って行って見せたところ、その差に驚き、大いに感動したAndyはもう退いてしまった。若い編集者に仕事が任されてしまっているのも、その原因の一つだろう。

 Youtubeの動画のリンクが紹介されているので、それを見て連絡してきた人が何人か居る。ある人は早々と、500軸買いたいと言って来た。彼も長い列車を牽かせるのが趣味のようだ。在庫が無いので再生産をすることになる。
「長年の夢をかなえてくれて感謝している。」と、すでに所有しているかのごときメイルを寄こした人もいる。

 あと二本の投稿を約束させられているが、それが載るまで何年かかるのだろう。

2013年04月14日

Proto48

 本物を縮小するとどうなるかについていくつか書いていたのだが、鹿ケ谷氏からのコメントでほとんど言い尽くされてしまった。それに書かれていないことだけを書こう。
 本物を小さくすると何が異なるかと言うよりも何が変化しないかを考えなければならない。それはヤング率である。物質の弾性変形に関する性質であって、これは物質に固有のものである。すなわち小さくするとモーメントが小さくなるが、ヤング率は変化しないので、模型は堅くなる。要するにバネは極端に堅くなるということである。車体が堅いので、捻られない。何らかの工夫をしないと、曲線の入り口の緩和曲線あたりで脱線する。
 
 レイルも枕木も砂利も堅くなる。するとカチンカチンのコンクリートの要塞の上に敷いたレイル上を走るのと同じである。その上を走る車輌の板バネは必要以上に堅く、よほどヤング率の小さい材料を選ぶか、薄くしなければならないであろう。このあたりでスケールから外れてくることが分かる。摩擦も速度によって変化するだろうし、以前に述べた慣性の現れ方も当然異なる。小半径である模型線路上を走らせようと思えば、フランジ塗油器が必要な条件であろう。

 そういうことを全て無視してひたすらスケール化するのは無意味だ。車輪を得意そうにみせてくれるのだが、挽き目が見えている。大切なフランジやフィレットに挽き目が見えるということは、スケールでも何でもない。その部分は研磨してなければならない。台車を触らせてもらうと、車軸が台車の軸箱中で左右に2mm弱動く。これでは駄目だ。台車の中で車輪が平行四辺形になって走り、フランジが当たりやすくなる。そのような最も大切な部分を疎かにしている人たちが、どうしてよく走るスケールモデルを作れよう。この集団の指導者層が素人であることが露呈している。

 停まっている情景模型であればそれでよいが、走らせるということは意外に難しいことなのだ。プロトとかスケールという言葉に酔っているのだろう 。車輪は相変わらずある男が作っている。2万軸売れたと威張っているが、たったの2万軸である。筆者のLow-D車輪の方がはるかに多い。2万も作ればCNC旋盤で作るべきものだろうが、総型バイトで作っているものだから、ざらざらの挽き目が出てしまうのである。

 この集団には機関車を設計して板から作れる人が居ないのである。誰かが作ったキットを組み、誰かの供給する車輪を付けてスケールモデルだと信じているだけなのである。
 やはりRain Maker が必要なのだ。巨万の富を持つ天才的な誰かが、正しい設計のものを継続的に供給できなければ、今の状態からは抜けられまい。大型機関車を作った人は居るか、と聞くと、チャレンジャを作った人が居るという。走るのを見たか、と聞いても誰も返事がなかった。

 筆者がRain Makerという言葉を出したら、Harmonは、「うまい表現だね。」と言った。この言葉は20年近く前にマット・デイモンの出世作となった映画の題名でもある。

Model Railroader May 2013Check 話は飛ぶが、ようやく筆者の低抵抗車輪の記事がModel Railroader 5月号に載った。原稿料の小切手を貰ってから随分待たされた。友人たちは10カ月待ちが普通だと言っていたが、それをはるかに上回った。先に原稿料を受け取ったので、他の雑誌からの誘いも断らざるを得なかった。

2013年04月12日

続 Clinic in Chicago

 やはり同じ質問が出た。パンタグラフの位置が真ん中にあるが、それをどこかに移動させることは可能かというものである。車端にパンタグラフを置き、捻られる軸を中空軸と中心の棒にすれば、どこにでも置ける。
連結器に当たらなければ、車長の中のどこにでもおけるので、荷物室や車掌室に押し込むこともできる。またこの作例のような大きさも必要ない。この半分くらいの大きさに作ることも可能である。小さく作ると誤差(リンクのガタ)が相対的に大きくなるので不利であるが、HOサイズでも十分に作れると思う。

 現在もう一つの作例を製作中であるので、近日中にお見せできる。これは車内の大きな体積を占有するので、有蓋車やカヴァードホッパくらいしか使えないだろう。

3点支持と4点支持 リンク機構は軽く作れるし、カウンタ・バランスがあれば作動に力が要らないので、具合が良い。このサスペンションが2点支持であるということは、なかなか思いつけないことのようだ。この絵は評判が良い。Controlled(制御された)2点支持という言葉が、彼らの胸に突き刺さったようだ。

 

 他のクリニックではProto48の講演もあった。要するに宣伝である。こんな線路と輪軸のセットを売っているから、こちらのサイドに来ないかと手招きをしているという感じのクリニックである。
 友人Harmonと見に行った。話を聞き終わった時、主催者が「何か質問、感想があればどうぞ。」と言った。すると誰かが、"Future of model railroading!”と叫んだ。何人かがそれに呼応して拍手した。
 会場を出て、Harmon が、「君はどう思う?」と質問してきた。「難しいと思う。レイアウトの半径が最低3mないとね。」と言うと彼は深くうなづいた。
 「彼らは貨車を一所懸命に細かく作っている。それでおしまいの人が多い。」彼の意見は否定的であった。

 そこで、筆者はこう言った。
「人間は3種に分けられる。雨が降らないかなあと空を見ている人。雨の降りそうなところに引っ越す人。そして雨を降らせることが出来る人(Rain Maker)。」
 彼らは空を見ている人である。

2013年04月10日

Clinic in Chicago

 今年のクリニックの参加者はやはり20人くらいであった。 しかし皆が、新しいメカニズムに対して興味津々であった。何が始まるのか、見届けようという人たちばかりである。
 開始に先立って、Mike Hill氏が、筆者の紹介をしてくれ、簡単にバックグラウンドを説明してくれたのには助かった。このようなことは異例だそうだ。

 例によって、三輪自動車の安定性に始まり、貨車を三点支持にするとどうなるかというケーススタディをした。
 次に二点支持にするとどうなるかを考えさせた。もちろん、二点支持ではひっくり返ってしまう。そこで車体を安定化する工夫として、ロンビック・イコライザを持ち出し、一本外しても良いという事例を台車枠を用いて示した。

 フカひれイコライザの改良型を見せると、「なるほど。」という感じだ。しかし触ってもらうと、今一つ動きが渋い。それは作動させる軸が質量を持ち、どちらに捩っても同じとは言い難かったからだ。
 そこでパンタグラフ型を持ち出すと、その動きの面白さに目が行ってしまう。しかし、作動させるとその軽さに仰天する。カウンタ・バランスのおかげで、全く重さを感じさせない。台車の捻りで、他台車がカシャカシャと実に軽く捻られるのを見ると、びっくりする。

 今回持ち込んだレイルは、接続部に細工をして、レイルの太さ程度の段差をあちこちに設けてある。普通の貨車は必ず脱線してしまう。ところが等角逆捻りの貨車は、なんということもなく通過する。その時、パンタグラフのクロスへッドは1cm位上下して、段差を乗り越えるとき、車体も半分捻られることを示す。

 このデモはとても人気があり、参加者は順に押してみて楽しんだ。何に使うためかということを説明した。引き込み線の保線がしてない線路を車体をゆすりながら通過できるという話をすると、みな大いに興奮した。誰しもあの光景を見たことがあって、いつの日にかやってみたいと思っていたからだろう。

 工学の専門家も来ていて、学問上の見地からのお褒めも戴いた。ロンビックの話をしたが、アメリカには四輪車輌がほとんど居ないので、あまりのめり込んで来なかった。やはり、台車を加工した片持ちロンビックの方が人気がある。
 ほとんどの人は、この事実に気が付いていなかったので、「早速やって見る」ということであった。 

 パンタグラフがとても軽く動くことについては、全員が賞賛してくれた。見かけ倒しで動かないと思った人も居たようだが、動くのを目にしてとても驚いた。
 「ほとんど摩擦がない!」
とほとんどの人が叫んだが、まだ特に潤滑はしていない状態であった。

2013年04月08日

続々々 Chicago O scale Meet 2013

113_7761  Mike Hill 氏のコレクションはその質の高さでは、おそらく全米一であろう。もちろん、数の多さで言えばもっと多い人を何人も知っている。それを見に行ったこともある。しかし、鉄道模型の歴史的な背景を加味した、時代考証の確かさについては、このコレクションに優るものはないと言えるだろう。同じ機関車を異なるスケール(17/64" scale と 1/4" scale) で持ち、なおかつ、異なる時代の塗装で持っている人はいない。
Hill 氏は、最も成功した模型店主の1人である。彼のコレクションは昨年のCOM2012でその一部が紹介され、話題を呼んだ。今年の公開はそれを受けてのものである。

Mike Hill's 2 公開の当日に集まった人達は、あるレヴェル以上の模型人たちである。そこでの出会いは興味深い。かなり前に会ってから、久しく御無沙汰していた人達に会うことができた。家族を同伴している場合には、奥方や娘さんにも会うことができた。特に娘さんには子供が世話になっていたこともあり、懐かしい話に花が咲いた。

 Hill氏の模型人としての顔の広さと、目利きの確かさが現れている集まりであった。筆者のLow-D車輪もコレクションに採用されており、その抵抗の少なさと静かさを紹介して戴けた。

2013年04月06日

続々 Chicago O Scale Meet 2013

Chicago O scal Meet 2013 今年の催しの規模は昨年より大きかった。昨年は少々さびしい感じがしたが、今年はテーブルの数も増え、取り引きされる商品の数も格段に多かった。
 入場者も比較的若い人が増えたような気がする。アメリカのO scale はしばらくは安泰だろう。 レイアウト・ツアも昨年より増えた。たくさん行ってみたかったが、評判を聞くとそれほどでもないそうで、行く気が失せてしまった。
やはり、公表されているレイアウトは面白くないということなのだ。仲間内でのみ招待されるレイアウトは素晴らしいものが多いのである。
 特に今年の案内を見て思ったのは、レイアウト・ツアを引き受けてくれると、入場料を免除するとか、何かの特典がある。それを目的で応募してくる人があるからだ。あるいはクラブレイアウトで、仲間を増やしたい場合に公開する。もちろんそれは未完成だから、人を募集するわけだ。そういうわけで、今年は公表されているところには行かなかった。

 友人のHarmonが、「今年は特別に Mike Hill の所に行けることになった。めったにはないことだから、そこに行こう。」と言うので、そういうことになった。 
 実は筆者は2年連続で行っていたが、レイアウトの整備が進んだそうなので、期待した。

Mike HillMike Hill's 彼ほどのコレクションを持っている人も珍しいので、かなりの人が詰め掛けた。もちろん、耳打ちされた人だけである。延べ40人くらいであろうか。外国人しか招待しないというのは、ウソである。
 ガラスケースは中が見易いようにガラス戸が外してあった。写真撮影には好条件であった。

2013年04月04日

続 Chicago O scale Meet 2013

Ed もう一人、どうしても見せておかねばならない人がいた。 この男Ed は、身長2mの大男である。電力会社の技師長で、このような技術面ではかなりうるさい人である。二年前の原発事故を一緒にテレビを見ていた。彼は次はこうなる、その次は…と予測して全てそれが当たったので驚いた。水素爆発を正確に予言した。理屈を言うので、それを筆者が補足して他の友人に伝えたところ、完璧に予測が当たった。
 彼自身は原子力にはタッチしていないのだが、詳しく知っているのには驚いた。アメリカの技術力の確かさを感じた。日本ではいわゆる専門家が居るが、彼らはその周辺領域には疎い場合が多い。アメリカの技術集団のトップに立つ人はジェネラリストである。その実例を見て、大したものだと改めて感心した。

 さて、彼の関心は一般の人とは別のところにあった。
「これは素晴らしい発想だ。このような試みをどうして思いついたのか。どのような必要性があったのか。」

「それには二つある。一つは昔住んでいたソルトレーク市の倉庫街を縫うように走る industrial line の保線の悪い線路を、ぐわんぐわんと車体を揺らしながら走る様を再現したいこと、それを実現するには集電を良くすることだ。コンプライアンス(線路の不整に追随すること)を良くすると、集電が飛躍的に良くなるのだ。」
「それは興味深い動機だ。集電を良くして走行性能の向上を狙って開発したのだね。面白い。君の車輪の形状の話も、走行性能の向上を考えている。三条ウォーム歯車も性能向上を考えて開発し、それが押して動くという副産物を与えたのだよね。実に面白い。君は常に走行性能の向上を考えている。そういう模型人は少ない。」

 その通りなのだが、彼のような技術者がそういう分析をするのがとても面白く感じた。彼は路面電車模型に関しては、とても詳しい人である。台車の構造については極めてうるさい。
 路面電車の線路は、一般の専用線に比べて、かなりの不整がある。それを乗り越えて脱線せずに走るための工夫は色々あるようだ。台車自身の剛性を減らして撓むようにすることと、荷重を掛ける位置を工夫して追随性を向上させる工夫を、とうとうと聞かせる。
「でも模型は堅いからね。本物のようには行かないよ。君の工夫は評価に値する。面白いものを見せてくれてありがとう。」と言った。

2013年04月02日

Chicago O Scale Meet 2013

 シカゴに毎年行くようになって4年目である。地理もようやく頭に入り、どこへでも行けるようになった。また、多くの知己を得て、色々な方から遊びに来ないかというお誘いも受けるようになった。シカゴのある中西部はかなり保守的な地域であり、よそ者に心を開くには多少の時間が必要ということでもある。
 最初の年はLow-D車輪の紹介をしたのだが、やや警戒心を持たれたようだ。二年目にはその車輪を欲しいという申し出が相次ぎ、大した量ではないがある程度の数が出て行った。その後、評判が広がって少しずつ頒布している。
 今回は何か面白いネタはないのかという話があり、「ロンビック・イコライザ」から始まる「等角逆捻り機構」の応用例を話すことになった。カリフォルニアから話が伝わっていて、前評判は上々で、「面白い話が聞ける」という噂が立ったようだ。

 当日、クラインシュミット氏に会って、「今日来て戴けますか?」と聞くと、「あいにく今日は都合が付かない。どんな話だ?」と聞くので、「それではそこの机を借りてお見せしましょう。」ということになった。

 クラインシュミット氏は手厳しい評論家であって、技術発達史に関しては生き字引のような存在である。過去に色々な物を見せて、感想を聞くと、「それは19XX年に、誰それが特許を取っている。」とか、「〇〇社が売り出した商品にそれが採用されている。」という調子で、あまり認めてもらえなかった。
彼の口癖は、”There is nothing new in the world." である。要するにすでに誰かが考えたものばかりで、完全に新しく考えだされたものなんか無い、というものである。面白かったのは、「最近のトヨタのプリウスのステアリングホィールが電熱で温かくなるものが宣伝されているが、あんな物は昔からある。1920年型の何とかという車に採用されている。いかにも世界最初と言っているが、嘘っ八だ。」という話であった。

113_7672 そこで、筆者が持って行った今野氏製作のロンビック・イコライザの見本を見せ、次にその応用として筆者の改良フカひれイコライザ、パンタグラフ式イコライザを見せた。彼はととても驚き、眼を見開いて見た。持参の凸凹線路を全く脱線せずに通過するのを見て、仰天した。
 何度も押してはその動きを吟味して、「素晴らしい。」「こんなのは見たことがない。」 ”It 's very new!"
という評価を得た。

 ここで彼の評価を得ると、その後の動きはとても早い。あっという間に、その評価が伝わり、たくさんの人が見に来てくれた。

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