2013年03月

2013年03月16日

続 さらに等角逆捻り機構

 Chicagoに来ている。今回は、レンタカーを借りなかった。空港から鉄道だけを使ってホテル近辺まで行けると書いてあったのでそれを試したのだ。近くの駅まではホテルの車に迎えに来てもらった。ホテルはいつものWestinでなかなかよいホテルである。

 さて明日の講演を控えて、拙ブログの記事を見るとたくさんのコメントが入っていて、その反響の大きさに驚いた。
 発表用のPowerpointを調整していたところなので、コメントからいくつかのアイデアを戴いた。

 歯車を使う工夫をお知らせ戴いた方が多いが、それは試作済みで、すでに不合格の烙印を押されている。細かい歯車を使っても、バックラッシをゼロにはできない。軽く動くようにするには隙間が必要で、そうするとガタが生じ、そのガタは必要な変位量を上回ることがある。それほど捻りの変位量は少ないのである。
 リンクの結節点は少なく、ガタの総量を極力極力少なくすることができる。このガタが小さいということが全てで、他のいかなる方法もリンクには敵わない。伊藤剛氏のフカひれ型が優れているのは、結節点が少ないことである。だからガタがほとんどない。ガタがあれば正しく作動しないのである。
 
 それともう一つ、変位量の大きさが完全に2台車間で等しいことが必要である。これもパンタグラフ方式には敵わない。単純なリンク方式では、動きが大きくなると、回転角がまったく等しいとは言えなくなる。これはロンビックも同様である。形が大げさなので難しそうに見えるが、作るのはとても簡単である。滑り込みのパイプさえあればすぐできる。しかも調整がほとんど要らない。リンクの結節点を厚く作って倒れないようにすれば、摩擦はいつも小さく保てる。またバランスが取れているので、作動に力が要らない。 

 機構学に詳しい方は、きっとこの方式の利点に気が付かれるだろう。先回の改良フカひれ方式では、完全な等角ではないのだ。
 
 ゆうえん氏の記事にあるように、等角逆捻りが目的であって、ロンビックイコライザはその一つの方式に過ぎない。それではどの方法がベストかと言うといまのところ、目的的には、このパンタグラフ方式が最上の方式のようだ。模型であって、ある程度の誤差を含めてもよいなら、フカヒレでもよいし、ロンビックでもよい。
 作る模型のサイズの問題もあるし、どのような線路を走らせたいのかにも依るので、解は一つではない。

ちなみに、実物の電車等のパンタグラフには、イコライザと称するリンクが付いている。それが1本の場合とたすき掛け2本の場合がある。前者は動きが滑らかであるが、2本のアームの動きが完全に対称ではない。後者は動きが正確であるはずなのであるが、動きが渋い。作図してみると、どちらもおかしなことに気がつく。リンク機構は大きな稼動範囲をもたせると、具合が悪くなるという実例である。この話は栗生弘太郎氏から伺った話を元にしている。


 しばらく休載の予定であったが、所感をまとめてお知らせした。

2013年03月14日

さらに等角逆捻り機構  

pantograpgh typepantograph type4 先日来、頭の中には出来ていたのだが、形にしていなかったものがある。昨日時間を見つけて、一気に作った。今回は一応原寸図を用意したので、それを写して4時間で作った。上廻りの加工もあったので、都合7時間で完成した。なんとなく、ディズニィの「魔法使いの弟子」に出てくる「箒の水汲み」のような形だ。

pantograph type2pantograph type3 リンク機構による等角逆捻りである。最もコンパクトにするには遊星歯車が良いのだが、それは売っていないし、バックラッシが無視できない。
 そうなるとフカひれ型なのだが、重さを打ち消すのにトーション・バーなどの工夫が要るし、バネは調節が面倒である。カウンタ・バランスだと計算だけで大体OKである。バランスが良いので非常に軽く動く。二つの写真は手前の台車を捻った時の、クロスヘッド位置変化を示す。


pantographtype 7 さてこの写真で構造はお分かりだと思う。貨車の背骨の中に通っているシャフトはただ回転するだけである。それに付けたアームは上のパンタグラフを動かす。フカひれ型の様に作動軸が斜めになることもなく、理想的な等角逆捻りである。
 リンクでクロスヘッドが上下するから、その動きを反対側のリンクが拾い、逆捻りに"翻訳"する。クロスヘッドは角パイプで、するすると滑る。潤滑剤無しでも動くようにしたかった。油を付けると、いずれ埃を呼んで動かなくなる。グラファイト粒子をまぶす程度にするつもりだ。"翻訳"というのは伊藤剛氏の使われた言葉である。
 
pantograph type5pantographtype6 クロスヘッドと上部リンクは軽く作るが、多少の質量があるので、右捻りと左捻りでは差が出てしまう。その重さを打ち消すもの(G-キャンセラと命名)はカウンタバランスとした。ある程度は計算しておいて、角棒をネジで少し動かし、最良の点で少量のハンダで留めた。

 例によって、回転中心は段ネジとし、それが留めるリンクは厚く作った。動きは滑らかだ。



 ウィキペディアのロンビックイコライザの記述は悲惨である。ウィキペディアが如何に信頼できないか、の見本のようなものである。どなたか、書き直して戴けると嬉しい。この記事の図やGIFをお使い戴いて、結構である。    


 しばらくシカゴ方面に来ている。Chicago O Scale Meet で講演をするように誘われたのだ。この貨車を持って来た。
 貯まっているマイルの消化旅行である。ファーストクラスでの往復も可能であったが、例の787事件の影響で座席が押さえられなかったのが残念だ。
 しばらく休載させて戴く。

2013年03月12日

続 O Scale West 2013

20th Century Ltd20th Century Ltd2 このディスプレイが眼を引いた。人間との対比で大体の大きさが分かるだろう。そこそこによく出来たセクションである。ニューヨーク(シカゴ)がどうしてカリフォルニアにあるのかよくわからぬが、初めて見た展示である。

Jerry Porter この人はジェリィ・ポータ氏である。以前、伯楽のことを書いた。にこにこしてやってきて、「どうだい、新しいレイアウトを作る気は無いかね。僕がデザインしてあげるよ。」と言う。
「残念ながら、最初のレイアウトがまだまだ完成しないから、とても無理ですね。」と言うと、残念そうだった。
例の等角逆捻りの貨車とか台車を見せると、「ボーイングの技師を連れて来るから見せてやれ。」と言う。
しばらくすると来たので、「お前のせいで、僕の乗る飛行機が飛ばなかった。」と言ってやった。
「いや俺のセクションではない。でも残念だったね。」とかわされた。

UP FEF2 この売りに出ているUP FEF2が気になった。テンダはケムトロンの輸入したカツミ製である。軸箱の形で分かる。EF58用のダイキャストが付いている。テンダの断面はBig Boy、Challenger用である。800用はもっと肩の半径が大きい。
 機関車はスクラッチ・ビルトだと言う。メイン・ロッドが曲がっている。タイヤの厚みにより、シリンダ中心がロッドの中心にならないからだ。欲しくなったが、何かアンバランスなところがあって、買わなかった。

UP FEF2 2 テンダのATS装置などの雰囲気が良い。

2013年03月10日

O Scale West 2013

 Florida から西海岸までは遠い。飛行機で5時間弱かかる。安い切符を買ったので、狭い座席に詰め込まれた。どういうわけか満席で、余裕はない。隣が空いていればよいのだけど、ぎっしり座っているので、トイレにも行きづらい。本を読み、コンピュータのゲームをして時間をつぶす。途中、Denverで乗り換えた。ラウンジでビールを飲んで、一休みする。そうしたら、次の飛行機が遅れると言う。さんざん待たされたが、無事離陸した。
 San Jose空港に着いて、バスに乗り、近くの電停まで行く。あとは電車でホテルまで行けばよい。しかし、それほど容易ではなかった。電車が脱線したらしい。仕方がないので別方向に行き、そこで乗り換えの電車を待った。幸いにも10分ほどで次の電車が来て、ホテルの前の電停まで行けた。

OSW 2013 2OSW 2013 今年は会場のホテルを予約しなかった。いつも何も考えずにそこに泊まっていたが、向かいのHiltonの方が安いことを発見したのである。普段は定価240ドルの部屋を3日間に限り一泊110ドルであるから、かなり割安感があった。ところが向かいのホテルはどういうわけか89ドルなのである。これはインターネットのおかげである。同地区の最安値を割り出したのだ。ホテルの格は同等なので、これはありがたかった。
 この種のコンヴェンションでは、高級ホテルを安く借り切るので、ほとんどの人がそこに泊まる。普段は泊まれないようなやや高級ホテルであるから、皆喜んでいるのだが、まさか道路を渡るだけでこれほどの差があるとは誰も思わないだろう。そのホテルはがらがらであった。

Camera CarCamera Car2 今年のトピックスはこのカメラ・カーである。レーザで切ったシナ合板を組み合わせて作ったもので、機関士の視点からというのが売りである。ふつうは、つい前方を写してしまうが、斜め右側を写すというのはなかなか良いアイデアである。
 このカメラ・カーを貸してくれるらしい。レイアウトを走らせてそのまま返せば、レイアウト・ツアをしたのと同じ効果である。映像は編集して返してくれるそうである。

2013年03月08日

続々々 Key West へ

us1 これがUS1(国道一号線)の起点である。US1はKey Westを起点として、北へと伸びる3800 km以上の国道である。ワシントンDC、ニューヨーク、ボストンを経て、メイン州の北端まで行っている。
 わざわざ、「起点」という看板を出しているところを見ると、これを見に来る人が多いということだろう。ヘミングウェイの家は、この国道に沿って、すぐ近くにある。
 
Raw OysterSeafood Restrant 帰り道は腹が減ったので、通りがかった屋台風のシーフード・レストランに入った。冬だというのに日差しは強く、気温は28℃くらいだろう。そよ風 (light breeze)に吹かれながら、生ガキと Pulled Beef を食べた。生ビールがうまい。
この州ではアルコールは多少なら飲んでも良いらしい。
”You can drive drinking, but you can't drive drunk." 「飲んで運転しても良いが、酔っ払って運転してはいけない。」ということである。当方は自信があったのでそのまま運転した。道はあくまでも真っ直ぐだ。
 カキは殻が厚い。厚さ7 mm位はある。とても重い。世界中のカキは気仙沼の種を使っているらしいが、育つ環境によってこんなにも違いが出るものだろうか。レモンを絞って、タバスコを掛けて食う。ケチャップにはホースラディッシュ(ワサビに似たもの)を混ぜてある。これを付けてもうまい。
 バーベキュービーフを骨から外したものをPulled(引っ張って外した)という。筆者の好物である。この屋台の柱や梁には、たくさんの1ドル紙幣が張ってある。さまざまな人がサインしている。有名人のもあるのだろう。

Beach 岸辺では冬だというのに水遊びしている人たちもいる。スノーケルを付けて潜っている。 

2013年03月06日

続々 Key West へ 

 Empirebuilder 氏のご指摘で思い違いが訂正されたので、予定を変更して鉄道の話を書くことにする。

Concrete Arch BridgesConcrete Arch Bridges2Concrete Arch Bridges3 この動画をご覧戴くと、全貌が分かる。椙山氏のところで見せて戴いた本の写真が多数使われている。コンクリート製アーチ橋は、マイアミで木製の型を作り台船で運んで来て設置している。土台は杭を数本打ち込んだだけだ。
 ガーダ・ブリッジは道路橋に造り替えるときに幅を広くする改造を施されている。トラス橋は先回のように上に載せる以外、拡げる方法は無い。

Key West 11 1910年ごろ完成だから、明治時代の末である。アメリカにはこのようなレジャー目的の鉄道を建設する余裕があったのだ。マリリン・モンロゥ主演の”Some Like It Hot” (お熱いのがお好き)という映画があった。舞台は1929年である。楽団がフロリダに汽車で出掛ける場面がある。プルマン寝台車を借り切っての移動である。フロリダ(多分マイアミ)に着くと、リゾートホテルがたくさんあって、富豪が遊んでいる。当時から、冬のフロリダはそのような場所であった。成功した人たちはフロリダに別荘を持ち、豪華な列車で移動していた。椙山氏のところで読ませて戴いた本にはフロリダ行きの話がたくさんあった。氏のレイアウトにもフロリダの景色がある。まさに海の上を走る場面もあった。

 しかし、夏は暑くてとても住めたものではない。
 今回車で気が付いたのは、湿地帯を突き抜ける道はかならず細かい金網で囲われていて、外に出ることができない。この網はワニ除けである。周りには体長 5m以上のがごろごろいるそうで、危ないことこの上ない。

2013年03月04日

続 Key West へ

To Key West4 今回借りた車はこれで、カローラの新車である。時速70マイルで15 km/L走る。まずまずの性能である。



Key West 6To Key West7 走りながら写した写真であるから、多少のことは我慢して戴く。この橋はもともとあった橋の上に桁を載せたものと思われる。下を船が通るようにしたかったのだろう。廃止された鉄道橋が狭いので、上に道路橋を載せたものである。かなり荒っぽい工事であるが、一応完成して長らく使われたものと思われる。
 今走っている橋が完成したので、旧橋は取り壊しになるはずであった。全部壊すのが面倒なので一部だけ壊したようだ。 

To Key West8 この赤いブイ状のものがアメリカ本土最南端を表す表記である。キューバまで90マイルとある。泳ぐわけにはいかないが、密航者が多いのも当然だ。Key Westは昔からの避寒地で、ヘミングウェイの家があったことでも有名である。

To Key West9 この家はアメリカ最南端の家であると書いてある。二度もSouthernmostと書いてあるのが笑わせる。
 地図を見るともう少し南にも何かあるが、民家としてはこれが最南端なのであろう。

Key West 10 帰りに客車が居るので写真を撮った。プルマンのSolarium Carである。この車の発音は難しい。ソウレイリアムに近い音である。何かの売店になり下がっている。

2013年03月02日

Key West へ

 Key Westはフロリダ半島の先端にある。地図で見ると、キューバに近い。
大きな地図で見る
 マイアミの南にあるHomesteadという町が、事実上のフロリダの最南の町である。そこから、島伝いに国道が延々と続き、最南端のKey Westまで約160 kmである。この区間は最高速度がせいぜい55マイル/時であるから、片道3時間以上かかる。思い切って行ってみようと思った。というのは昔、友人が飛行機の Stand-by Ticket を買って、アメリカ中を旅した。のどかな時代である。空港に行って、空いている飛行機を見つけて乗ってしまう。機内持ち込みだけでだと簡単に乗れる。2週間乗り放題だ。確か、450ドルだった。
 それで彼はKey Westに行ったのだ。3時間滞在して帰って来たのだそうだが、「街並みが面白かった」と言ったのがとても気になった。いつかは行ってみたかったが、鉄道があるわけでもないし、チャンスは来ないと思っていた。
 
To Key West ところがNew OrleansからHomesteadまでは1400kmで1日で行けない距離ではない。行ってしまえば、次の日1日を使ってKey Westを見られそうだ。というわけで、朝の6時に出発して16時間で到着した。途中2回昼寝をして、サンドイッチを齧りながらの強行軍である。持って行った音楽CDを、順次大音量で掛けながらのドライヴである。6枚を4回ずつ聞いた気がする。
 過去の最高記録は1100kmであるから、もうこれを破ることはできないであろう。 

To Key West2To Key West3To Key West5 次の日は疲れて起きられなかった。10時ころ出発し、海沿いを走ったり、長い橋を渡ったりしてひたすら走る。

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