2012年02月

2012年02月29日

続 PortlandのLRT 

OSW_3415 Portlandには、人口比でアメリカ最多のストリップ劇場があるそうだ。この町は表現の自由を最大限に保障することで有名な街だからだ。Larryはそんなことは当たり前だと言う。「よそが間違っている。」
 今回は忙しくて見学するチャンスが無かったが、興味深い話であった。新聞の中にもこの種の広告が多い。
 春先には裸で自転車に乗る催しがあるそうだ。この街では、下らないことに公権力が介入すべきではないという考え方が強いのだ。

OSW_3468OSW_3464 ポートランドは大陸横断鉄道の起点の一つである。ここからUPに乗ればオマハを経由してシカゴ、ニューヨークに行けた。
 中央駅にはAmtrakが停まっていた。この駅は大きい。また、とてもきれいである。電車はこの駅の前にも来ている。この駅とSteel Bridgeとの距離は600 mほどである。

OSW_3477OSW_3476 電車はアメリカ製であった。低床車と高床車が組み合わさっている。低床でなければ乗れない人は比率としては少ないので、全部を低床にする必要はない。健常者は段を上って座ればよいという考え方だ。
 我々が興味があったのは自転車の処理だ。自転車を持ち込んだ後どうするかだが、非常に単純明快な解決法であった。吊り下げればよいのである。後ろのタイヤはこの黒い溝に入れる。

OSW_3479 車椅子の人が介助犬を連れて乗ってきた。みな慣れたものである。車椅子で乗るときにはステップがせり出し、緩やかなスロープになる。



OSW_3462 歩道と車道の境目には盲人用の凸凹のタイルがある。その色は黄色ではない。日本の黄色はおかしいと同行の友人はかねてからそれを主張している。見えない人が黄色を認識できるわけはないのだから、黄色にして都市景観を損なうのはばかげているというのだ。

追記 黄色は弱視者のためのものであるということを複数の方から指摘されています。その件について検討後、当該個所を削除するか訂正します。
 反射率の高い白か、逆に反射率の低い物が良いのか、黄色以外の色に適するものが無いのか、客観的な資料を探しています。アメリカには黄色はほとんどなく、韓国、台湾には黄色が多いというのも不思議な話です。


2012年02月27日

Portland のLRT

OSW_3428 オレゴン州ポートランドは車が無くても生活できる街として知られる。そういう街はアメリカ中探しても数少ない。ボストン、ニューヨークそれとシアトルくらいしかない。しかしそのような大都市は地価が異常に高い。
 ポートランドはそれほどでもなく、市電が市街地を網の目のように走っていて、なおかつ町なかから空港まで、電車で行ける数少ない町である。この区間は片道2ドル40セントである。

 この街を見たいという政治家の友人の求めに応じて行ってみた。空港を出ると高速道路の中を走り、市街地まで20分である。大きな川を渡る橋は築101年のSteel Bridgeである。
 この川はWillamette川である。ウィラメットと言えばシェイのパテント切れを狙って参入してきたギヤード・ロコ製造会社の名前でもある。この街の川岸にあったはずである。
 今はあまり見ないが、昔はこのあたりには無数の製材会社があったのだ。

OSW_3440OSW_3448OSW_3450 この可動橋は上下二段で下はUPの本線、上はLRT
(Light Rail Transit)と自動車用である。下を船が通る時は20mほど持ち上がる。

 その部分で架線は当然切れている。多少剛性のある構造で重なるように飛び出しているのだ。
 橋の北には2万トンクラスの貨物船が穀物の積み込みをしている。たくさんこぼすので、水鳥たちがやってきてそれをついばむ。毎日食べきれないほどの餌を食っているのだから、みな丸々と太って飛べそうにない。

OSW_3456 この橋のたもとから、市内方面は電車の無料区間である。市中心部の駐車場を取り壊して電車をタダにするという思い切った施策で、自動車に依らない生活を実現した。中心部には駐車場を持たない高密度な集合住宅もある。

 ポートランドに行くことになったので、旧知の友人であるLarryに連絡を取った。彼は市内随一のLaw Firmを持ち、医療訴訟を専門としている。

2012年02月25日

続 不思議な工作記事 

台枠の切欠き フライスで台車枠を切り出す記事があった。エンドミルで四角に切り取っておしまいである。
 ほとんどの人には気が付きにくいことだが(もちろんこの著者も気が付いていない)、台車枠の切り込みは四角ではない。必ず丸くえぐってある部分がある。これは、応力の集中を避けてクラックを生じさせない工夫である。

応力の集中「応力の集中」とは、次のようなことである。 例えば紙テープを引っ張って切れる時の力を測定する。そのテープの二倍幅の物を用意し、半分までハサミで切れ目を入れる。先ほどの力を掛けると簡単に切れる。おそらく二割程度の力で切れるであろう。角があるとまずいのである。粘着テープを切るカッタがギザギザなのは、これを利用しているのだ。
 切れ込み部分を半径の大きな円にすれば、最初の実験とあまり変わらぬ値になるであろう。

 手法はもちろんであるが、製作記事にはこのような解説があることが望ましい。軸箱守も爪状になって強度部材として存在していることも触れるべきであろう。
 
 単発記事ではなく連載で書く人は、それなりに勉強した人であってほしい。そうでないとこの趣味の世界をリードすることにはならない。今の連載では、中学生が外見だけ見て模型を作っているのと、さほど変わりが無いのである。タイトルは模鐡技師になっているが、技師とはとても思えない。

 その点では、昔伊藤剛氏が書かれていた記事には今でも感服することが多い。専門家が分かり易く説く姿勢というのが、この趣味の世界には最もふさわしい。素人の勘違い記事は初学者にとって迷惑そのものである。

 機械で工作する手法が書きたいなら、少し謙虚になって近くの町工場で見学してくるべきだ。素人の思い付きではだめなのである。
 鹿ケ谷氏の御指摘にもあったように、ワーキング・パス(working path)が長くなると必ず失敗する。刃物が飛び出している量を少なくすることが最も大切なことである。
 機械全体の中でどの部分の剛性が最も小さいかを考えれば、自ずと手法は決まるのだ。

 しばらく前にこの雑誌中、どなたかの記事で模型連結器の話が展開されていたようだが、それにMonarchの話が出て来なかった。連結器の歴史上、最も信頼性ある連結器として名を轟かしたのだが、それをご存知ないようだ。編集部ももう少し知識のある人を揃えないといけないし、前にも書いたように査読者に見てもらうべきなのである。

2012年02月23日

不思議な工作記事

 かねてより疑問を感じている連載記事がある。とれいん誌のED19を作るという記事だ。文調は、「素人に金属加工を教えてやる」という感じである。内容はかなり怪しいと思っていた矢先に、親しい模型工作の大家から、相談があった。

「Φ1.2のネジを切る時に、バイスにワークを銜えて、ダイスを手持ちで回すという行があり、とても違和感を感じました。小さな径のネジを切るのであれば、ワークをピンバイスに銜えて、手回しで(手に持った)ダイスにねじ込めば済む問題ですよね。ダイスを手で持って回すなんて、あまり一般的ではないような気がします。」
 
ガラ 確かにやり方は色々ある。早くて楽なのは、このご指摘の方法だ。直角を出そうと思うと、もう一工夫必要だ。プロはダイスを付けた板に、通称「ガラ」という手廻しの増速装置(クランク軸には大径の内歯歯車があり、小ピニオンに付けたチャックが4倍くらい早く回転する)で棒材をねじ込む。この工具はクランクの回転方向と刃物、ワーク等の回転方向が同じであるところが優れている。
 ダイスを大き目の板に付けるところがミソで、こうすると目で見て直角が出やすい。タップとは違うので自然に直角に入るが、こうすれば最初からすんなりと入る。
 筆者は速度は必要ないので、ボール盤の直角を利用して手回しでねじ込む。もちろん大きなものは旋盤を使う。

 いくつかある工作法を唯一であるかのように書くのは、視野が狭いということである。要するに経験が少ない。この種の記事を書く人は、十分な経験を積んだ大人であるべきだ。
 しばらく前の記事ではフライス盤の話があったが、ほとんど怪しげな工作法の紹介に終始していた。
 編集部は、この種の記事を書ける人かどうかが分からないということだ。プロを装った素人では、周りが迷惑する。雑誌の評価も下がるだろう。

 万力の底板部分にワークを載せて締めている。これではだめだ。必ず敷板(正直板)を立てて万力の顎の先で銜えるようにせねばならない。その万力も、できれば締めた時、顎の上部が開かない構造の物が良い。

 スコヤの話もあったが、あのタイプのスコヤの信頼性はほとんどない。組み立て式のスコヤは狂いやすい。必ず削り出しの焼きの入った物を使うべきである。それほど高いものではない。
 組み立て式のスコヤをお持ちの方は、一度直角を調べてみるべきだ。愕然とする方が多いと思う。

2012年02月21日

続々々々々々 UP F9A

Collector wiper この機関車の車輪の極性は揃えてある。すなわち前後の台車は同極性で、ショートしにくい。
 
 ボールベアリングを付けているので、軸を通しての集電はできない。軸から直接に取る。車輪を摺る方法もあるが、それはタイヤ絶縁の時だけで、なるべく半径の小さい部分で集電しないと摩擦によって失われるエネルギがバカにならない。慣性を発揮するのが身上なので、ブレーキを掛けないようにしたいだけである。

 リン銅板を細く切り出しただけの物を良く見るが、接触面が銅合金では感心しない。やはりニッケルにしたい。実はそのためにニッケル貨を探して備蓄している。
 昔の50円玉でも良いのだが、日本には通貨を滅失すると罪に問われる法律があるので使えるとは書けない。しかし、世界中を探せばいくらでもニッケル貨はある。磁石で付くものがニッケルであるから簡単に見つかる。

 それを1.5mm角に切り出してリン銅板にハンダ付けし、形を修正する。軽く触ればOKだ。車輪の前後進の回転で、どちら方向にもビビリ音が出ないことを確かめれば完成だ。
 このビビリ音の出ないブラシの設計は意外と難しく、あまり長いといけない。適度な長さで軽く接触する、というところがミソである。先端のシュウの形状も大切である。どちらにも丸くなければならない。

OSW_3721OSW_3723 集電ブラシと言えば、筆者の車のオルタネータが1月に異音を発し始めた。オリジナルを使用しているが、10万キロでばらして、ベアリングとブラシ、レギュレータおよびレクティファイア(三相交流を整流するもの)を取り換えてある。この簡易整備キットは40ドルと安い。但し、ばらすのに1時間かかって、整備して組み立て直すのに3時間くらいかかった。
 その後7万キロ近く走って、回転部分が遠心力で一部欠けたような音がするのだ。当然充電不良のランプが点く。ばらすとスリップ・リングが限界まで摺り減って空中分解し、コイルにも当たり、めちゃくちゃな状態であった。ボール・ベアリングもガラガラ音がしていた。壊れた部分を外して空廻りの状態でしばらく走った。バッテリをフル充電すれば数キロは走るので、近くのスーパ・マーケットまでは行ける。但し、ライトを点ける夜は駄目である。帰りはエンジンが掛かるか、いつもひやひやであった。

 先日のアメリカ行きで、e-bayで安く買ったオルタネータを持って帰った。何と90ドルであった。7000円である。日本で同等品を買うと、数万円もする。重かったが、持って帰る価値がある。帰宅して即、取替に掛かり、15分で直す事が出来た。これでまた10万キロ走れるはずだ。

2012年02月19日

続々々々々 UP F9A

Fly Wheel これがフライホィールである。実に単純な形である。

 慣性モーメントは半径の二乗に比例するので、中心から遠いところのみに物質があるのが望ましい。本当は自転車のスポークのようにほとんど質量がないものでリング状の物が支持されているのがベストである。材料も密度が大きいものが良い。とは言え、鉛やハンダでフライホィールを作る気はしない。ブラスは適度に重く、また削り易いので、具合が良い材料である。

FEB_3743 このモータはエスキャップのタコ・ジェネレータ付きの物をジャンクで買い、それのタコ部分をむしったものである。2 mmという細い軸なので、ここに重い物を付けるとショックで曲がる可能性がある。それで少しでも軽くしたかったのである。

 ちょっとしたことなのだが、効き目は大きく、軽く押せば 1 m近く走っていく。この程度で十分である。問題はユニヴァーサル・ジョイントである。韓国製なのだが、精度が良くなく、ジャラジャラ音が出る。
 久し振りにラジコン屋さんを覗いてみるとOゲージに使えそうなサイズの物がたくさんある。ところがほとんどが位相が間違っていて使えない。等速ではないから、あんな高速で、しかもサスペンションの可動範囲が大きいところに使えばとんでもない音がしそうだ。四輪駆動の場合、ステアリングの切れ角が大きいと、これまたすごいことになりそうだ。
 どうやら誰も気が付かないようだ。鉄道模型と違って目の前 30 cmを走らせる人が居ないからだろう。それにしても理屈を理解しないで物を作る人は多い。

 
Universal Joint たまたま一つだけプラスティック製の物を見つけたのでそれを買った。これだけが正しい位相であった。スパイダはステンレスのように見える。少し嵌め合いがきついようなのでリーマを通して軽く廻るようにする。軸穴は2Φなのだが、D型の断面である。シャフトはそのように削ったものを使うのだろう。
 太さに余裕があるので穴を開け直して使うことにする。コレットで掴めば割れることもない。

2012年02月17日

続々々々 UP F9A

UP516 from AtlasUP516 一応の完成であるが、まだ多少手を入れる必要がある。色注しと言って、あちこちに特有の色を付けねばならない。それはウェザリングの後である。手で触って整備するので、その部分のほこりなどは落ちているからだ。

 塗装が生乾きの時に梱包して送ったので、現場ではどんなことになったのかは良く分からない。もう少し時間がある時期にやっておけば良かったと少々後悔した。

 ガラス類はアクリル板を削ってきっちりはまるようにした。段差がないので気分が良い。

 駆動装置にはフライホィールを付け、手で押すとそのままするすると走っていく。たかだか 39 mm径、7 mm厚程度のものである。モータと同速であるが十分である。径が大きいので押しネジを付けるのは止めて、接着剤で留めた。フライホィールを旋盤で作るのは楽しい。太い材料を適当に銜えて外周削り、端面削りをして形を整える。慣性モーメントに寄与しない中心に近い部分を限界まで薄くし、ボス部分にセンタドリルで凹みを付ける。ドリルで穿孔して、リーマを通す。そして切断する。裏も削って出来上がりである。
 ほんの3分程度の工作だが、旋盤工作の基本がここにある。

 
 昨日帰国した。O Scale Westの会場で友人にこの写真を見せると、
「オッ、F9の500番台だ。UPの最終型だね。ボンネットに上るグラブアイアン(掴み棒)や屋根のパイプの形も正しい。スノウプラウも付いてる。うまく作ったな。これはコンテストに出せよ。」と言う。
 あまりにも詳しいので驚いてしまった。聞くとこれを作ろうと思って資料集めをしたが、雪掻きが思うようにできなくて放棄したそうだ。

2012年02月11日

続々々 UP F9A

 鋳物であるから多少は「鬆」があり表面が荒れたところもある。ある程度ヤスって、さらなる凹みはパテを込み、均す。600番くらいのサンドぺーパで水研ぎをしてさらにパテを込める。実物もかなり凸凹しているので、ある程度のところで見切りを付けた。

F9 cab interior 室内もごく適当に作った。詳しい方は椅子がEMDタイプではなく、Alcoタイプではないかと仰るかもしれないが、それは勘弁して戴きたい。室内が空洞であると、室内燈を点けた時面白くない。最近はDCCであるので、必然的に室内燈も点けるようになった。するとある程度が外から見えるので、それらしくあればよいのである。むしろ前面窓の日避けの方が大事かもしれない。これはいつもはっきり見える。写真を見てそれらしく作った。

on painting 汚い写真で申し訳ない。いつも塗装後に置く場所で、暖炉の前である。ここは多少の余熱があり乾燥には具合が良い。
 黄色と灰色のどちらを先に塗るかは諸説あるが、黄色を先にした。天井のパイプを避けてマスキングするのは面倒な仕事である。境目にディカールを貼ることにしたのでその点は気楽である。これを塗り分けで作ると、マスキングに細心の注意を払わねばならず、気苦労が多くなる。斜めの塗り分け線は個体によりかなりの差がある。面白いのは四角のファンを斜めに横切る部分である。この部分だけは取り外したりするので、意匠よりも機能を優先して塗り分け線を無視している。

 これでディカールを貼って、電気配線をすれば完成で、所属クラブの新年例会(2月11日)には間に合う。友人に頼んで展示してもらうことにした。

 実はしばらく前からアメリカに来ている。今回はオレゴン州ポートランドと、カリフォルニア州サンホゼが目的地である。親しい地元の政治家がLRTの本場を見たいというのでその案内をすることになったのだ。筆者もそれほど詳しい訳ではないので、にわか勉強をしている。そんなわけで、しばらく休載する。 

2012年02月09日

続々 UP F9A

EMD F9 grabirons EMDのブルドッグ・ノーズの側面上方にはくねくねと曲がったグラブアイアン(握り棒)がある。これは登るときに単に手を掛けるだけのものではない。地上から梯子を掛けるとき、梯子が横に滑って倒れるのを防ぐ形になっている。即ち、その形は車体側面に対して平行に近くなっていて、ノーズの丸みに沿っているわけではない。とは言え、完全に平行のものは少なく、この模型のようにやや前が狭くなっているものが多いように思う。平行だと飛び出し過ぎるということもあるだろう。

 この形は既製品を見ても正しい形になっているものは少ない。設計者の注意不足である。どんなものも目的があるのだから、その目的に沿った形に作らねばならないはずだ。

GOW_3388grabiron さて、この梯子掛けを針金を曲げて作らねばならない。意外と難しいものだ。端から曲げると真ん中の直線部分の長さがうまく決まらない。これは真ん中から曲げるべきである。曲げると加工硬化するので次に曲げる部分が決まり易い。ジグも要らないほど簡単にできる。直線部の長さはいわゆるラジオ・ペンチのテーパ部に印を付け、位置決めをする。たった二つしか要らないのに、作り方を考えているうちにたくさん作ってしまった。

2012年02月07日

続 UP F9A

 スノウ・プラウの丸みを付けるにはこの方法が最も適するが、加工硬化するので一発で仕留める必要がある。

 位置関係を十分に確認して、テープで仮留めする。ゴムハンマで満身の力を込めて一発で変形させる。とても硬くなり、二度と変形しそうもない。もちろん、リン青銅板の「目」を確認して曲がり易い方向を探すことも大切である。
 左右二つの曲げを完了してから、折り目を付ける。この時は、裏に軽く筋掘りして応力を集中させる工夫をする。

 万力に挟んで、押し板で一気に曲げる。これも繰り返すと硬くなるので、戻るのを見越して曲げ、戻った瞬間に所定の角度になっていることを確認する。

GOW_3391GOW_3393 下回りのフレイムは 1 mm厚のアングルを用いて作ってある。その前端にスノウプラウのベースが密着するようにした。これはいわゆるメタルタッチで、衝突時に力が直接フレイムに伝達されるようにした。機関車と正面衝突するとどうなるかは分からないが、貨車、客車なら余裕を持って耐えられるはずである。

 駆動装置は3条ウォームギヤをロストワックス製のギヤボックスに収めたものである。これは25年ほど前に祖父江氏と共同製作したもので、鋳物は韓国に発注し歯車は日本製である。このギヤボックスはアメリカにもかなり売れ、シカゴの科学工業博物館のレイアウトでも使用されていたらしい。素晴らしい転がりと耐久性がある。
 ユニヴァーサル・ジョイントは韓国製のものにアメリカ製の金属製スパイダを入れている。当時、AJINの社長はこのギヤの性能に惚れ込み、アメリカに輸出する製品に付けたいと思ったらしいが、インポータの無能によってそれは評価されなかった。筆者はアイデアを無償提供すると言ったのであるが。結局、競合する他社によって、"coasting gear" などという勝手な名前を付けて売り出された。開発者である筆者は、"free rolling drive" と名付けているのも関わらず。
 この"coasting"という語感にはあまり良い印象が無い。財産があり経済的に余裕のある人の退職後などの生活をこの言葉を用いて表す。遊んでいるということを強調しているように感じるのだ。
 列車がその質量により惰行するのは、物理の法則により当然のことであり、「金持ちが遊んで暮らす」というのとは少々違うし、この方法は他の歯車を用いる方法より経済的であるという点が、大きなセールスポイントだったのだから。

 チェイン・ドライヴは、そこそこに効率がよく、また手軽である。しかも安い。最近はMicro-Markでも売っている
 当時はこの会社を探し出して手紙を書き、小切手を送って購入した。祖父江氏は、「これは使えるよ。面倒なギヤボックスなしで済むんだったら、こんな簡単なものはない。」と気に入り、ずいぶんたくさん買った。
 軸はインチサイズであったので、ミリサイズのスリーブを入れた。

2012年02月05日

UP F9A 

F9 Atlas 炭素棒ハンダ付け機を頒布して、色々な方から感謝のメールを戴いている。しかし、「厚板工作をする上で非常に具合が良い。」と書いていらした方は僅かに2,3名だ。薄板ではあまり有難みが無いのではないかと思った。

 そこで、何か具合の良いサンプルとなるべきものを探した。しばらく前に鋳造したAtlas社のプラスティック製品を金属で置き換えたものが良いことに気が付いた。ボディ・シェルの厚みが平均1.8mmほどあり、普通のハンダゴテではハンダ付けすることができない。

 車体を二つに切って鋳造したので、その二つをネジ留めしておいてガス火で予熱し、200Wのコテで仕上げた。しかし、ディテール・パーツを取りつけるのにその方法は使えない。他の部品が落ちてしまうからだ。ところが炭素棒ハンダ付けなら、簡単にできる。炭素棒が当たっている部分から半径 5 mmの範囲はハンダが融けるまで温度が上昇するが、その外の範囲はやや温かくなる程度である。これを使えばいくらでも細かい工作ができる。 

 前部のスカート部分の切り欠きが大きく、補修せねばならなかった。これはティンプレート用の連結器を付けていたためである。直せばよいのだが、違う形にしてみたくなった。資料集を当たってみると、Snow Plowを付けた個体があることに気が付いた。これを付ければ、スカートを直さなくても良いし、新しい形で気分も良い。

 レイアウト上で運転すれば何かの事故で引っ掛かることもあるだろうし、軽衝突を起こすこともあるだろう。丈夫さが必要である。そこでこの部分は念を入れてかなりの補強をした。
 衝突したとき力が直接にフレイムに伝わるようにしたので、多少の事故でも生き残るであろう。また、雪掻き部分(プラウ)はリン青銅の板を曲げて作った。バネ性が強いので曲がりにくいが、それは工作もしにくいということである。

2012年02月03日

続々々 Hudson 

 ボイラ・バンドの位置が違うのである。ゆったりとした雰囲気があるのは、そこが違うからである。

O gauge この機関車は1/43である。当時は湯山一郎氏の提唱により、標準軌間も狭軌も同じ線路を走らせるという目的で、アメリカ型は1/48、欧州型は1/45、日本型は1/43というサイズを採用していた。筆者はアメリカ型しか持っていないのでよく分からないが、この大きさは手で握って持ち上げるときに、同じくらいに感じるのだそうだ。客貨車は1/45で作ることになっていた。

 レイアウトのない時代であり、組み立て式の線路上で何台牽くかということが話題であった頃であるから、それで良かった。それは「サイズの時代」であると筆者は名付けている。
 その後時代は進歩し、同じ鉄道のものを複数そろえて持つ人が増えてきた。レイアウトの上では、車輌群が同じスケールでないと奇妙なものである。すなわち「スケールの時代」の到来である。

 日本型蒸気機関車が1/43になったのは、シリンダ間隔を多少ごまかしても、1/45では設計できなかったことで決まったのである。湯山氏本人に生前お聞きしたことがあるが、その時の説明がふるっていた。「機関車が大きいということは、立派に見えます。」
 そういう時代があったのだ。ともかく、この機関車は1/43であったがゆえに、アメリカの機関車として通用するサイズになり、それなりの市場を築いた。
 当時作られた日本型の機関車はことごとく1/43であった。これは7 mmスケール(1フートを7 mmとする縮尺で1/43.54サイズ)を切り上げたものである。


 しばらくすると日本も多少は豊かになり、スケールの時代がやって来た。1/45で軌間を24mm近辺にした模型が現れたのだ。当時はOJではなくJOと言ったりしていた。1/45.3というサイズ(17/64インチスケール)を採用しなかったのは不思議だ。HOでは13mmゲージが発生し、細かくナロゥ・ゲージが
別れた。種類が多過ぎる。いずれいくつかは淘汰されるであろう。

 全くの仮説であるが、1/48で22mmゲージ(S gauge)にしていたら、国際規格としても胸を張ることができたはずだが、その提唱者達にはその視点はなかった。1/45というサイズが日本に定着していたからなのだろうが、まともなレイアウトがあったわけではないので、サイズの変更は問題が無かったはずだ。市販品を改造するという簡単な方法をとったのだろうが、その市販品がスケール的に正しい保証が全くなかった時代であった。
 国鉄の1067 mmゲージがナロゥ・ゲージであることを知らなかった、あるいはそれを認めたくなかった人たちが多かったのだ。

2012年02月01日

続々 Hudson

IMG_7394 このボイラはC62用のものであるが、外観が微妙に違う。初見で気付かれた方はいらっしゃるだろうか。もちろん前端の丸みが無いというのは問題外である。答は次回。


 砂箱は薄板をプレスしている。このあたりの仕事は安達製作所である。
「安達さんとこはもともとプレス屋さんなんだよ。ちゃんと修行してるから、薄い板から作る仕事は本当にうまいねぇ。あの人にはかなわねぇよ。」と祖父江氏は言っていた。

 日本型のテンダは短い。航続距離が短いということと、ターンテイブルが小さいことから制約を受けている。このテンダは容量の大きなUSRAのテンダを採用しているが、台車は日本型の鋳鋼製である。
 写真では分かりにくいが、テンダのデッキにはネジ留め式のターミナルがあり、機炭間の電気接続を行う。しかしそんなことをしていたら、テンダの着脱が困難である。機炭間の連結器は、ワンタッチでレヴァを押して外すことができる。このあたりの工夫は祖父江氏である。

 キャブを新製しなかったのは不思議である。当時の人件費から言っても、さほど大きな費用が掛かるとは思えない。
IMG_7392 エンジン部分は日本型そのものである。メイン・ロッド、クロスヘッド、スライド・バァ、モーションプレートは砂鋳物である。当時はこんなに細かい砂鋳物を作る職人が居たのだ。
 サイドロッドは1 mm板を打ち抜いたものである。

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