2012年01月

2012年01月30日

続 Hudson

IMG_7395 この時代に軸箱は亜鉛ダイキャストであった。残念ながら、全てシーズンクラックを起こして割れていて、せっかく軸可動になっているのに車輪が回ることもできなかった。
 以前、それを救済するのにロストワックスでコピィしたものがあるのを思い出し、12個進呈した。その他、いくつか取り換えるべき部品もありそうだ。
 モータは付いてなかったのでサガミのモータに換装されたようだ。W氏の丁寧な補修でここまで来たが、入手した時の状態はかなり悲惨であった。あちこちのハンダが取れてばらばらになる寸前であった。板が薄いので、輸送中などに力が掛かると歪み、その時にハンダが外れるというわけだ。

 フレイムは1mm板をプレスで抜いたもので、あまり感心しない。この手のフレイムは順に抜いていく(これを追い抜きという)ので、少しずつ伸びてしまい軸距離が合わないことがある。
 祖父江氏が述懐した。「プレス抜きの主台枠なんか駄目だって言ってんのにさぁ、高いからってフライスを買ってくんないんだぁ。独立したときにゃあ、最初に買ったさ。」
 祖父江氏の工房には横フライスがあり、軸距離に合わせたスペイサを挟んで刃が4,5枚付けられていた。それで鋳物のフレームに、一度に全部の軸溝を切った。簡単そうであったが、一度に300本作るのは大変だ。筆者も手伝ったことがある。切り粉が一斗缶に何杯も溜まった。

 どういうわけか、スポーク動輪は両絶縁である。理由が思いつかない。W氏はテンダからのみ集電しているが、実に快調に走った。歯車は1条ウォームで24歯のウォーム・ホイールを用いている。材質は両方ともブラスである。動軸は1軸目は一点支持、2,3軸はイコライザで受けている。この方式では、不整線路上ではあまり安定しない。支点が近いので、ギッコンバッタン運動を起こしやすい。やはり、先台車を1点とすべきであろう。

 W氏は購入したまま完成させるのではなく、C62に戻されるのであろうと思っていた。意外にも、「このアメリカンな様子が気に入った。」と、そのまま完成された。キャブ下の梯子は装飾されたままである。

写真は土橋和雄氏撮影

2012年01月28日

Hudson

IMG_7385IMG_7387 このハドソンをご覧戴きたい。友人のW氏の求めに応じて、e-bay で落札した。日本には送ってくれない人だったので、テキサス経由で送って貰った。箱の中に押し込んであった新聞は1951年のものであった。ちょうど60年前に日本で製造され、アメリカに輸出されたものである。Importerは、International Model Productsである。
 

IMG_7394IMG_7383 この機関車はKTM製であり、設計は酒井義房氏、製造は安達製作所である。importerのLouis Barnerr氏が国内向けのC62を見て閃き、Santa FeのHudsonとして売り出した。 テンダーを新製し、カウキャッチャを取りつけたのだ。確かにSanta Feのハドソンにボイラのシルエットは似ている。砂箱が日本型である。
 このインポータは戦前から日本製玩具の輸入を手掛けていて、戦後すぐにブラスのOゲージの貨車等を安達製作所に発注している。
それらはどれも薄い板(0.25 mm厚)で作られていて、下手に持つと凹みそうである。この機関車の材料も薄く、0.4 mm 程度の板である。 当時はブラス板は貴重品で、安くするためには薄くするのが一番簡単な方法であった。人件費はそれと比べてはるかに安かった。

KTM C62KTM C62 2 売り手が添付してきた青図によると1949年にアマチュアの仲間で作りかけているようだ。もっとも酒井氏はあちこちの模型屋で仕事をしているので、カツミの求めで描いたのかもしれない。この機関車はカツミの大量生産の第1号(A-1)の製品である。ちなみに第2号(A-2)はこだま号である。当時はOゲージがAで、HOがBであった。

写真は土橋和雄氏撮影

2012年01月26日

続 またまたGP30

GP30B 2GP30B GP30のおでこには何も入っていないと確信したのは、これらのBユニットを見た瞬間である。明らかに意匠のみに拘った形跡がある。
 キャブが無いブースタと呼ばれる機関車は、わざわざキャブ付きユニットと同じデザインにする必要もないのであろうが、設計者は拘ったのだ。

 あまり良いデザインとは思えない。キャブ付きの方は20年後に見ても違和感を覚えないデザインであったが、Bユニットはすぐに陳腐化したと感じた。意匠に拘り過ぎるとこうなるという、良い実例だと思った。

 その後南部の友人を訪ねた時、N&WやSouthern RR鉄道のGP30を見た。筆者は軽いめまいを感じた。まさかという感じであった。

N&W GP30N&W GP30B 2SOU GP30B キャブ付きユニットのショートフッドを高くしてある。この中に何が入っているかはよくわからない。SG(蒸気発生器)があったりするが、この機種にあったかどうかは分からぬ。Norfork and Western鉄道はエンジンの載っているロングフッドを、前方と決めている。これは乗務員側の要求だ。衝突時の生き残り確率を考えるとこうすべしということになったのだ。
 走行時にはキャブが後ろになるので、デザインは二の次になったのだろう。いくらなんでも乱暴ではないかという形になっている。無造作にショートフッドを付けたというかたちだ。N&Wはそれで良いとしても、Southern鉄道の方はこちらが前方である。不思議な形で、理解しがたい。

2012年01月24日

またまたGP30

001151_0151_1 栗生弘太郎氏にGP30の図面を掲出して戴いた。これはMainline Modeller誌の1989年5月号からである。この記事は見覚えがあったのだが、ちょうどアメリカからの引っ越しの前後で、雑事にまぎれて熟読していなかった。
 
 この平面図をみるとキャブの中の配置がよくわかる。件の配電盤はやはり飛び出していて、斜めにはなっていない。
 これはUP仕様で、左右が非対称である。 助手席側に二席設けてある。これはRoad Foremanを乗せる席である。今はどうなっているか分からないが、蒸気機関車の時代から、その線区に詳しい人間を乗せている。側線の長さとか、信号の位置を熟知している人である。場合によってはBrakemanでもある。ディーゼル電気機関車であるから、機関助士は要らないのだが、組合の要求で乗せていた。

 Brakemanというのは日本人には分かりにくい概念で、列車の切り離しなどを行った人達である。駅や信号場には最低限の人しかいないので機関車を切り離したり、列車が側線に入った時ポイントを切り替えて本線を開通させるのが仕事である。 戦後はCTCが装備されたので意味を失った。Big Boyの時代には、キャブに4人乗っていたことが多い。この1980年代はUPにとって大きな変動があった。カブースを廃して、機関車に多人数を乗せるようになったのだ。

 このキャブの平面図を見ると、二席あってもまだ余裕がある。椅子は多少動かせるようになっているのだろうが、少々空きスペイスが大き過ぎるように感じる。しかもこの側の後ろのキャット・ウォークに出ることは、扉が無いからできない。何か予備の椅子でも置いたのだろうか。

 キャット・ウォーク下のモータ冷却用のダクトであるが、Fireman's Sideは上から押し込むダクトが見えるので問題ない。はたして機関助士側から機関士側へと通じるダクトがあったのだろうか。機関士からの見通しの問題で、送風機の張り出し(bulge)は助士側に付けたはずだ。
 筆者は、Engineer's Sideのダクトはダミィと見ている。単に意匠上の問題で、左右を対称にしたのではないかと思っている。GP35以降はダクトは片側だけである。対称性を良くしようと思うのなら、キャット・ウォークの非対称も避けるべきことの一つではないかとも思えるのである。
 キャブの非対称は、左右を同時に見ることができないので、許せる範囲にあるのだろう。

2012年01月22日

鉄道用語

 伊藤剛氏にはありとあらゆる鉄道用語を教えて戴いた。どうしてそんなことまで知っておられるのか、といつも感嘆する。

 "cornfield meet" という言葉がある。トウモロコシ畑での出会いではない。これは列車の正面衝突を指す言葉だ。
YouTubeでこのキィワードで探すとかなりの数の動画が見つかる。このリンクの動画はどちらかというとcornfield meet ではなく、下記の headlight meet というべきものだろう。
 トウモロコシは背が高いので、トウモロコシ畑の中を歩き回っていると突然誰かとぶつかってびっくりする。列車の正面衝突は、衝突の直前までぶつかることを予期できない。また、その種の事故は駅構内ではなく、トウモロコシ畑の中のような田舎で起こるのが大半だということもある。
 上記のリンクの衝突は駅の構内で起こっていて、ヘッドライトで互いを認識しているのでこの名がある。

 "podunk sleeper"という言葉も剛氏から教えて戴いた言葉だ。ポダンクというのは田舎町という意味だ。
 夕方、ターミナル駅を出発した優等列車は展望車の後ろに何台かのプルマン寝台車をつないでいる。夜中に到着する駅では、後ろから順番に切り離していく。寝台車の中にはその町止まりの客が寝ているのだけれども、明け方までそのまま寝ていても構わない。夜中にホテルを探さなくても良いようにする工夫である。展望車からの展望はないが、夜中であるから構わない。明け方には過ぎ去る景色が見えるようになる。
 放置された寝台車は昼間に旅客列車に付けて回収していく。これは1930年代の話である。筆者はこのタイプの編成を走らせて、悦に入る。

 "stud"という言葉も教えて戴いた。機関区に居る機関車群のことである。もともとは stud bolt の用例のように植え込まれたという意味である。本拠地が決まっているので必ず帰ってくるという意味で、どこそこの機関区のstud engine であると言う。  

2012年01月20日

続々 cat walk, gang way & running board

 ”cess”が、Googleで検索出来たのには驚いた。筆者は長年、"track + cess" とか "cess + railroad" で調べていた。図書館で大きな辞書を調べたりもしていた。railtruck氏には感謝する。
 The area along either side of a railroad track which is kept at a lower level than the sleeper bottom, in order to provide drainage. 線路わきの枕木下端より低くした部分で、水はけをよくするとあり、この説明は実によくできている。日本語では(人間が)歩くという意味合いを持たせているが、英語にはない。

 ”rolling stock” の意味であるが、これは諸説あってどれが正しいかは決めかねる。
 文字通りの解釈であれば、「動産」である。線路上を転がって利益を生むものである。livestockは家畜であり、利益を生み出すものである。dead stockは、もともとは農器具であり、生きてはいないのだけれども利益を生み出すものであった。それがいつの間にか意味が変わって、病気や災害で死んだ家畜の意味になり、転じて不良在庫という使われ方をするようになった。

 筆者は、椙山満氏に習った通り、Locomotives and Rolling Stock という表現から、機関車以外の車輌という意味合いであろうと思う。しかしイギリスではrolling stock の中に機関車を含めていた。アメリカでは機関車を含めず、客車、貨車を指す場合の方が多いと感じる。

 Highballは最近TVコマーシャルで出て来るのだろう。知名度が上がった言葉である。これも椙山氏に聞いた通りで、ボール信号のことであろう。このリンク先の文章には安全側故障の話が出て来る。
 伊藤剛氏には、この安全側故障の話をよく解説戴いた。
「人間は失敗から学ぶものです。最初は停止信号を上げたのですよ。ところが紐が切れてしまって、停止でないと思ってぶつかってしまった。進行信号を不安定な状態にしておけば、紐が切れても停止だということになって事故は防げるのですよ。」
 若かった筆者はその一言一言を良く噛み締めた。 

2012年01月18日

続 cat walk, gang way & running board

 日本の鉄道では線路わきに犬走りという場所がある。幅はせいぜい60cmだ。この言葉は建築用語らしい。家を建てるときに、建築士が「犬走りはどうするか」と聞くので、思わず聞き直したことがある。

 城の石垣とか堤防には、必ずある程度の幅(2、3メートル)の「犬走り」がある。大きな仏閣にも軒下にある。明治の初頭に鉄道が敷かれた時、その部分を犬走りと名付けたのは、自然な成り行きであったろう。

 英語では何と言うか、と良く聞かれる。それは、”cess” のはずである。はずであるというのは、アメリカの鉄道関係者に聞いた言葉であって間違いないはずであるが、辞書に載っていないのである。ずいぶん調べたが見つからない。税金だとか色々な意味が書いてあるが、これも建築用語なのだろう。どなたか建築学に詳しい方がいらっしゃれば、その方面の辞書をお調べ願うことも可能であろう。

 舞台関係の言葉で "cat walk" というと、舞台の真上の天井に張り巡らせた回廊を指す。幕とか照明装置のメンテナンスやセッティングなどに使う通路だ。一応手摺があって、転落しにくい構造になっている。
 また、最近はファッション・ショウでモデルさんたちが歩く長い舞台もキャットウォークというのだそうだが、あまり認知されているとは言い難い。たぶん ”run way”(滑走路)という方が一般的だろう。

 話はやや遠ざかるが、最近、ホームセンタや高速道路のパーキング・エリアに「ドッグ・ラン」なるものがあるのを見る。公園の芝生に犬を連れていくと排除されることが多いが、ここでは遊ばせることができるらしい。当然排泄もあるだろうから、公園から締め出すのは正しいだろう。
 この「ドッグ・ラン」という言葉は、和製英語のような感じがする。アメリカで ”dog run” と言えば、それは個人住宅の敷地内にある、犬を放してあるエリアを指す。
 友人の家でその dog run を作るのを手伝った事がある。 3 m × 10 m ほどの大きさであった。敷地全体に放すと、芝生を掘り返すので、ごく狭い範囲に留めるためだ。アメリカ人は芝生をとても大切にする。

2012年01月16日

cat walk, gang way & running board

 キャットウォークとは何かという質問を戴いている。
 猫が歩くようなという意味ではなく、ある程度安全な通路を指す。安全というのは手摺が付いているという意味である。製油所の大きなタンクにはそれに巻き付けられた螺旋を描く階段がある。あれもキャット・ウォークと言う。
 今回のGP30の側面にはエンジンフッドに沿って回廊風の通路がある。走行中に歩くのはやや怖いが、危険と言うほどのものではない。

 手摺が無い、あるいはあってもそれにしがみ付いていなければ命が無いような通路をラニング・ボードと言う。蒸気機関車のボイラ側面の歩み板がこれである。どういうわけか走ることになっているが、日本語では歩み板と言う。日本では歩くことが基本なのだろうか。
 貨車の屋根についている板もラニング・ボードである。制動手が駆けて行ってブレーキを締めて廻る時代もあったのだから、それはそれで正しい命名だ。
 英語は動名詞の”running”を使っているから、「走るための」と言う意味合いがある。カタカナ英語ではランボードと言う。アメリカでこれを使ってみたが、誰も理解しなかった。

 
 ギャング・ウェイは日本語には入って来なかった言葉である。もともとは船舶用語である。尤も、ほとんどの鉄道用語、航空用語は船舶用語を借用しているものが多い。
 原義は客船などの乗組員用の乗降梯子(はしご)を指す。
 鉄道用語としては、専ら蒸気機関車とテンダとの間にある梯子を指す。しかし、EMDのFシリーズなどの流線型ディーゼル機関車では、キャブへの乗降梯子や、Bユニットとの連絡扉のあたりを指すこともある。
 また、乗客が来ることのない荷物車・郵便車などの間の幌の無い通路もそう呼ばれる。要するに、乗客ではない人、すなわち乗務員しか通らない、安全とは言えない通路を指す言葉だと理解できる。
 日本では、ギャングとは悪い人たちの集団を指すようだが、線路工夫も "track gang" という。

2012年01月14日

GP30 と GP35

 お世話になっているbrass_solder氏の作品をご覧戴こう。この二つの機種の差が明確に分かる角度の写真である。

 GP30のキャブの方は丸い。それはGP9の屋根の丸みとは異なる。先回のコメントにもあったように、このGP30の屋根の部分には何も入っていないようだ。意匠のみのために膨らませたのだ。
 当初、この形は好評であったようだが、のちには飽きられたということなのであろう。

 これはデザインの世界にはよくあることのようだ。意匠を凝らした自動車が、何年か経つと非常に陳腐化して見えるという現象と同じである。逆に全く意匠とは遠いところにある、実用本位で機能しか考えない自動車のデザインははいつまでも陳腐化しない。ジープとか軽トラックがその例である。
 最も急速に陳腐化して見える自動車の例は、モータ・ショウで展示される”コンセプトカー”なるものである。あれなどは、次の年に見るとすでに陳腐化している。要するに1年しか持たないデザインである。

 自動車のデザインは2年持つ様に作られるという話を、懇意にしている工業デザイナから聞いた。4年ごとの新車発表、その間2年目にマイナチェンジをして売り上げを確保する。高級車のデザインは10年持つ様に作られるのだそうだ。鉄道車輌はもう少し寿命が長いので、20年は持つデザインを採用するのである。このGP30のデザインも、斬新ではあったが、長く持つ様に作られたはずだった。
 ところが、後発のGP35のシンプルなデザインがEMDの主流となった。それは20年以上も採用され続けた。

 EMDのデザインは常にALCOに負けていた。どの時代のディーゼル電気機関車もALCOの流麗さには負けていたということはアメリカでよく聞かされたことだ。GP30で一発逆転を狙ったということである。

2012年01月12日

続 GP30

GOW_3357 この機関車のキャブの床面は左右非対称である。左側(Fireman's sideと言う。)の方が前後に長い。
 キャブの中で機関士の背面にある壁は、配電盤などを収納している。その壁が、どの非対称のキャブのなかでどの位置を占めているかというのは、キャブを覗きこまないと分からない。 あるいはキャブに乗り込まねば分からないのだ。しかし、その壁はレイルに対して直角に付いているはずだ。

GP30 Locker Geometry この機関車の外見はよく実物を再現していると思うが、キャブ内は不可思議な様相を呈している。何と配電盤は斜めに付けてある。よく考えれば、その様な設計をしても不具合こそあれ、何のメリットもないことぐらい分かりそうなものだが、韓国の設計者は頭が回らなかったと見える。
 この写真中、青い線が正しい位置(天井面での座標)だ。

GOW_3360GOW_3358 この機関車のキャット・ウォーク(左右の回廊部分)は、両方とも一段高くなっている。それは電動機冷却用のダクトである。エンジンフッドのキャブに近い部分には遠心送風機があり、そこから、4台の電動機に冷却用空気を送っている。その風量は意外なほど大きい。 発車時には小石が飛ぶほどである。
 GP35からは、このダクトは左の片方だけになり、エンジンフッド側面にダクトが張り付けられているのがよくわかる。
 下回りは昔、祖父江氏の工房のごみ箱から拾ってきた部品から組み上げた。台車はアメリカで買ったものをたくさん保有しているし、車輪や歯車装置も量産して用意してある。

2012年01月10日

GP30

UnionPacific  GP30GP30 UP 1




 GP30は印象深い機関車である。それまでのGP20番代の機関車に比べ、意匠が大きく異なる。
 前面が空気を切り裂くように斜めになった(slanted)キャブ、それからエンジンフッドまでつながる意匠を凝らした造形に強く惹きつけられた。あたかもライオンのたてがみのような感じがした。
 このデザインはこの機種だけであり、EMDの標準キャブとなったGP35以降とは大きく異なる。このデザインは、明らかに自動車のデザイナが関与している。当時の自動車のデザインと相通ずるところがある。

 1973年に初めてこの機関車と対面した。その時はGP35が標準機としてかなり走っていたが、この独特の形がはっきり眼の奥に焼き付いた。市販品があったようだが、数が少なく手に入りにくかった。いずれ入手しようと思っていたが、難しかった。自分で作ることも考えたが、この形を再現しようと思うと、かなり正確な図面が必要で、その敷居の高さに二の足を踏んでいた。もう実物の保存機も少ないから、写真を取りに行くのも難しい。
 しばらく前、e-bayオークションで見つけたのは上回りだけであった。筆者としてはそれで十分であった。下回りはUS Hobbies時代のGP35のものがたくさんある。それに載せて少々加工すればよいと思って、競り落とした。数が少ないものは競争が厳しく、決して安くはなかったが、手に入れて久しぶりに幸福感があった。
 売主はカナダ人で、日本に送ってもらうのはとても高かった。アメリカへなら安いので、テキサスの友人宅に送ってもらい、それを持ち帰った。  

 模型は韓国のAjinの製造で、インポータは Overland Models であった。時代としては1990年頃であろう。出来が良いとは期待していなかったが、手に取ってみると愕然とすることがある。
 外観はさほどおかしくない。たぶん多数の図面、写真を手に入れて作業を始めたのであろう。それなりに良くできている。板が薄いのは残念だが、許せる範囲にある。
 問題はキャブの中である。伊藤剛氏は、「室内は室外である。」という名言を残されている。外から見えてしまうところはそれなりに作れよ、ということなのである。

2012年01月08日

続々々 Etchant

 長年温めてきたアイデアがあって、検証実験を始める前に、特許を調べてみた。どの程度のものがあるのか知るためだ。
 やはり、ある程度のものは既に押さえられている。「醤油+過酸化水素」の骨子となる物質を特定して指定してあるので、もうその方面のアイデアは面白くない。
 今考えているものは、具体的には言えないがもう少し高級な発想であって、それについては今のところ特許が成立していない。しばらくその方面を考えることにしよう。

 鹿ケ谷氏からクエン酸を過酸化水素と混ぜて使うというアイデアを戴いているが、これはかなり具合の良い方法である。速度が大きく、反応後の液は青緑色になる。廃液は捨てずに取っておいて、過酸化水素を加えればまた使える。この方法がうまく行くのはキレート化が起こるからである。キレートとはリガンドが環状の結合を作ったもので、例えば銅アンモニア錯イオンの二つずつのアンモニアを結んでそれぞれ五角形の結合を作る場合である。

 「塩酸と過酸化水素」の組み合わせは動画が見つかった。美術分野のエッチングである。レジストとしてフェルトペンを使用している。溶解作業中は細かい泡が出ている。反応後の液は黄緑色である。

 すでに述べたように、塩化鉄(III)に頼るエッチングというのは前世紀の遺物と言っても過言ではなく、さらに進化した方法をとるべき時代であることは間違いない。

 また、電解エッチング(電解研磨の延長)や、電解リヴェット生成などは、広く採用されるべきものであろうと思う。 

2012年01月06日

続々 Etchant

 エッチャントは酸性のものばかりではない。アンモニア水でも効果がある。昭和40年代のTMSにも載っていたように記憶する。アンモニアは酸化剤があれば銅と良く反応する。
 昔の冷凍機はアンモニアを使用していた。その中に空気が混入していると、銅パイプは腐食されてしまう。故障した冷凍機の中には、青い結晶が見つかることがあった。それは銅イオンとアンモニアとの化合物である。

ammonia as a ligand 要は金属が溶ければ良いので、「酸化剤 + 溶解を助けるもの」 があればよい。アンモニアは銅、亜鉛、ニッケル、銀に対して良く働く、錯イオンをつくる配位子(ligand)である。鉄、鉛やスズとは反応しないので、青銅、快削黄銅、ステンレス鋼、炭素鋼などには意味がない。 酸化剤としては酸素でも十分であるが、酸素を供給しようとして空気を吹き込むとするとアンモニアが逃げてしまう。それを避けるには低温にするので反応速度が小さくてうまくいかない。
 過酸化水素を加えれば低温でも働く。生成する液が銅をたくさん含んでいれば、極めて濃い藍色になり、美しい。
 快削黄銅は鉛を含み、多少反応しにくい。スズを含んだ合金も困難だ。

 非酸性エッチャントの必要性を感じている。アンモニアより効果が大きく、また蒸発しにくく、さらに臭いが無いものが欲しい。ある程度の候補は見つかっているので、検証実験をする。公表するからには、毒性が低いものでなければならない。
 いずれアマチュア用として良い候補を用意できるだろう。

 もう25年も前に「醤油で機関車を洗うときれいになる」ということを、所属クラブで発表した。これには誰も乗ってこなかった。会報には”Hint of the Mouth" という題でコラムに載った。そのタイトルのつづりがMonthではなく、Mouthだったので、真に受ける人が減ったのかとも思ったのだが、そうではなく、本当に誰も興味がなかったのだ。

 醤油には各種のアミノ酸が含まれ、それらは銅イオンとかなり安定な錯イオン(キレート)を作るので、酸素の助けを借りて銅を溶かす。10円玉を醤油で拭くときれいになる事実をご存知の方も多いだろう。
 もちろん、「醤油+過酸化水素水」 でもよく働く。

2012年01月04日

続 Etchant

 初瀬春日氏のコメントにもあるように、塩化鉄(III)水溶液は常に空気と触れさせていないと能力の低下が著しい。このあたりのことは化学的な常識があればすぐ理解できることなのだが、エッチングの手法を紹介した記事を見てもあまり触れられていない。業界の人は常識だと思っているから書かないし、一般人はたまにしかやらないので調子が悪くても気が付かないのだ。

 その点、過酸化水素を用いる方法は気楽である。ただ浸しておくだけで良い。もちろん両面を同時にやるときは裏にも液が回るように何らかの支えを必要とする。

 筆者は30年以上前からこの過酸化水素を使う方法を採用している。業界でも最近は採用例が多くなってきたようだ。しかし、アマチュアが使っているようには見えない。
 日本で市販されている過酸化水素水は3%であり、全く危険はない。鹿ケ谷氏のコメントによれば、オーストラリアでは6%水溶液が市販されているそうだ。筆者の実験では10%以下ならまず問題なさそうである。この程度であるならば、何かあれば冷水を入れると収まる。横に氷水を置いておくことだ。
 15%では非常に危ない。湧き立って、しかも温度がかなり上がる。これは爆発の前兆だ。20%以上の実験は、怖くてしていない。
 発熱しながら気体が出る反応は、反応を抑える方法がない。エネルギが蓄積し、さらに温度が上がる。すなわち連鎖反応が起こっていて、爆発する。氷水では抑えきれないのだ。
 東京の高速道路での爆発はまさにこの状態だ。運転手はタンクに触れて熱くなっていることに気が付いたので退避したら、直後に爆発している。

 少々脅かし過ぎたが、勝手な判断で濃度を上げると大事故になるということは肝に銘じておかねばならない。
この種の情報は、部分的に伝えられて、聞いた人が勝手な判断をすることが多い。「成功事例というものは、そこにある情報を元に完全に再現されたときにうまく行く。」のだが、勝手な改変をして失敗する例はよく聞く。基礎的知識を十分持たない人は、謙虚であるべきだ。


2012年01月02日

Etchant

 エッチャントとはエッチング液のことである。

 塩化鉄(III)は銅や亜鉛を酸化し、自身は還元される。すると、ある条件下では沈殿ができることがある。これは二価と三価の鉄イオンが組み合わさった化合物である。また、銅が酸化されたときに二価のイオンができればよいのだが、往々にして一価の銅イオンの化合物ができて沈殿に混じる。塩化鉄(III)を用いる反応は工場のように条件を一定にできる条件なら良いが、素人が扱うには問題点が多すぎる。

「過酸化水素 + 塩酸」は手軽であるのと、銅イオンが二価だけしか出来ないので、あとの処理が容易である。筆者は物好きにも、あとで銅を回収し、廃品回収業者に渡すが、一般人はそこまでやる必要などない。 筆者の処方はいわゆる濃塩酸と3%過酸化水素水を1:1に混ぜるだけである。反応速度が小さくなってきたら、過酸化水素を足す。一回ごとに捨てなくても上澄みをガラス瓶に入れて冷蔵庫に入れておき、次回に過酸化水素を少し足せば使える。反応容器はプラスティックの皿である。冷蔵庫で保存するときは、密栓せずに少し蓋を緩ませた状態で丈夫なポリ袋に入れて口を軽く縛る。多少は過酸化水素が分解して気体が発生するかもしれないので、その安全のためである。過酸化水素の分解は鉄(III)イオンの存在、何かの固体物質の表面が触媒になるので、鉄の釘などを落とさないこと、沈殿は保存容器に入れないことである。
 頻繁にやるのでなければ一回ごと廃棄する方が良い。消石灰と混ぜて反応させ、沈殿を燃えないゴミで出せばよい。銅イオンは毒だと書いてあるサイトもあるが、問題にはならない。ブドウ園に行けば、硫酸銅水溶液をボルドー液と称してばらまいているが、公害が起こったという話は聞かない。

 硫酸の場合は、濃硫酸を水で薄める。この時、かき混ぜながら水の中に少しずつ入れる。逆にすると大事故が起きることがある。かなりの発熱があるから、プラスティック容器が変形することもあるので気を付ける。パイレックスなどのガラス容器中で薄めるのが良い。
 三倍に薄めた物に、過酸化水素水を1:1で加える。塩酸とさほど変わらない腐食速度である。これも同様に液を保存できる。廃棄の仕方も同じである。

 酢を使うこともできる。酢と過酸化水素水を1:1に混ぜると出来上がりだが、多少腐食速度は小さい。これらの反応では酸は、単に銅イオンの相方のイオンになる。銅イオンを水に溶かしているだけである(沈殿ができないようにしているという意味)。酸化剤はあくまでも過酸化水素であって、過酸化水素が消耗する。継ぎ足すのは過酸化水素水である。

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