2011年12月17日

2011年12月17日

圧着端子

GOW_3190 今回頒布の手持ち電極の接続部分は圧着端子を用いた。大電流を間違いなく通すためには、この方法しかない。
 裸端子用の圧着工具を一般の方はお持ちでないだろうと、締めてからお渡しすることにした。そうすると握り部分を通す必要があり、結局手持ち電極全体を作ってお渡しすることになった。この工具は30年も前に購入したものだが、使用頻度は年に数回である。今回200回ほど締めたので、10年分以上に相当する。
 完全に締まるまで、開くことができない安全装置が付いているから、これで締めれば、品質は保証できる。 
 旋盤工作は別にむずかしいことではないが、ネジ切り、圧入、握りの穴開け、軸との接着、電線の切断、圧着をこなすのに1週間ほど掛かってしまった。そういうわけで、工程表から4日遅れの発送となった。

GOW_3186 さて、圧着端子はこのような形のものである。純銅を打ち抜いた板を丸く曲げ、付き合わせてロウ付けしてある。軟らかいロウを使っているのだろう。その部分をプレス工具でつぶしても、他とつぶれ具合に差があるわけでもない。そして、スズめっきを掛けてある。さて今日の本題はそのスズの働きである。

 圧着工具でプレスしたあとの圧着端子を糸鋸で切り、中の電線をほぐしてみようと思っても、全て堅く結び付いてばらばらにすることはできない。あたかもハンダで固めたような感じである。 これはどうしてだろうか。
 今回の電線の中の細い線は、スズめっきしてある。それが非常に大きなファクタを持つ。単なる錆止めではない。これはハンダ付けがなぜできるかということと、同じ原理である。

 ハンダにはスズが含まれている。最近の無鉛ハンダにもスズは含まれている。しかし、スズの含まれていないハンダがないわけではない。それらにはインジウムが含まれているはずだ。スズ、インジウム、水銀などは他の金属と接触により合金を作り易い。水銀は常温でも自然に混じり合うほどだ。すなわち、他の金属をぬらしやすい。
 スズはある程度の高温で、母材に拡散し合金を作る。これは圧力を掛ければ常温でも起こる。

 圧着端子の中ではスズを媒介としての、金属結合が形成され、電気伝導性が飛躍的に良くなる訳だ。極端な話をすれば、水銀を塗って締めると合金化し(これをアマルガムという)一体になるが、危険なので誰もやらない。

 ハンダ付けができるのはこの合金化(amalgamationという)による。アマルガメイションが起きる金属元素は、常識的な範囲では上記の3つほどしかない。     

Recent Comments
Archives
Categories
  • ライブドアブログ