2008年12月

2008年12月30日

続 Draft Gear

Thomas Diecast Frames コメントで栗生氏に絶賛して戴いた。大切なことは、本物の構造を知っているということである。
 その点については、かねてから申し上げていることである。模型雑誌しか読まない人が多いと思う。
 「アメリカ型をやっている」とおっしゃる模型人とお話しするチャンスがあった。「ロコサイクロ、カーサイクロをお持ちですか?」と聞くと「何?それ。」という方が多い。
 それらを読めば構造がよく分かる。今は円高でチャンスなので、ぜひともお買い求めになることをお勧めする。最近は、版権が切れてPublic DomainになったものからCD-ROMで安く売り出されている。1922年版は30ドル以下で市販されている。

Thomas Draft Gear 5Thomas Draft Gear 


 
 
 
 このバネは伴板(英語では、spring plates) に、ちょうど良い固さではまる。抜けてこない。ブラスのピンを刺せばそのままはめ込むことが出来る。カプラの根元はここに嵌まるのだ。
 非常に模型的であってうまい設計である。

Thomas Tanks これらはタンク本体である。右はスティール板製である。ブラスが高い時期があったのだろうか。この程度の量なら、価格にはほとんど響かないはずなのに鋼板を使っている。しかし主台枠のチャネルはブラス製であった。

2008年12月28日

Draft gear

Thomas Draft Gear 1 Draft Gearは何と訳すのがもっとも適当かは、いつも悩むところである。連結器を収める箱状の物である。連結器の軸方向の緩衝以外に、左右動の緩衝も引き受けている。
 Kadeeは、押す、引く、両方の緩衝能力はない。片方だけ多少の緩衝能力があるだけである。ガタも大きいから、引き出し時にはかなりの音がする。それも楽しい音ではあるが、実物どおりに作動する模型も面白い。

 これは以前紹介したThomasのタンク車である。筆者はこれを見つけると買うのでかなりの台数を保有している。最近は円高のおかげで安く手に入る。

 筆者はほとんどKadeeに換装するが、一台だけオリジナルの組立て品を持っている。
その動きは興味深い。

Thomas Draft Gear 2Thomas Draft Gear 3Thomas Draft Gear 4 





 
 まず、左は押し込んだところ、次いで中は引き出したところである。そして、右の写真は首を振ると、スプリングの端が傾くので復元力が生じるところを示す。
 簡単な構成でここまで見事な動きをする模型は珍しい。残念なのは付属のカプラが、非可動であることだ。TransPacificの記事中同じような図が載っているが、首振りのセンタリングまで含めて解決している点で、この製品はすばらしいと思う。可動カプラにすれば全て解決する。

 しかしダンパーがないので、蓄えられたエネルギが飛び出してくる。したがって、実際の動きはややギクシャクする。適当な摩擦を生じるように板バネを挟むと良いかもしれない。

2008年12月26日

100トン CD カヴァード・ホッパ  

Thrall 100 ton Hopper Weaver社の車輌の話を続けると1月以上掛かるのでここで一休みして、この車輌を紹介する。これは昨年のO Scale Westで見つけたものである。
 Pullman Standard PS-2 Center Discharge Covered Hopperだ。

 誰が作ったのか、全く分からないが、かなりの手練の作品である。材料は有機ガラス(ポリメタクリル酸メチル)とPETフィルムだと思う。細いアングルは鉄板製だ。
 有機ガラスで作ったかなり丈夫な骨組みの上に、Vacuum Formingした薄い板を貼り付けてある。大量生産を前提に、手順をよく考えた作品である。50輌ほどが山になっていて、1輌$10という値がついていた。埃も積もっていて、ちらりと見ただけではその価値は分かりにくいので、全く売れなかった。
 おそらく、故人の作品の山を家族が処分したのであろうと思われる。連結器つきでこの価格なら買うべし、と2輌購入した。もっと買っておけばよかったと後悔した。残りはあのまま粗大ゴミになってしまったのだろうか。

 製作者はプラスティック業界人であったと思われる。いろんなところで、なるほどと思わせるプロのテクニックが散見される。

Thrall 100 ton Hopper BN  手摺は薄鋼板製なのでブラスより細く出来て有利である。実に繊細である。


 多少の補修をしてBN塗装にした。ディカールのミスプリントも気にならない。しかし、ラニングボードの高さは気になる。何とかしたい。

2008年12月24日

続 Quality Craft のプラスティック貨車

Weaver ACF Center-flow 4-bay Covered Hopper BNWeaver ACF Center-Flow 4-bay Covered Hopper BN2 これはACF の 4-bay Covered Hopper である。発売された時の塗り分けは筆者の好みではなかったので塗装を一部はがして塗り替えてある。塗料、ディカールとも栗生氏にご手配戴いた。このBNグリーンは発色がすばらしい。栗生氏が特注で作られたプラスティック用のスプレイである。
 この車輌も全部の塗料をはがすのは大変なので、文字の入っているところだけ、こすってはがした。元の文字の廻りに多少の段差が出来るので、それを緩和するために#1500の耐水サンドペーパで水研ぎした。このような滑らかな大きな面に文字がある場合は簡単である。

4-bay Covered Hopper from Weaver これはWeaver社の発売したそのままの車輌である。かなり珍しい車輌のようだ。日本ではまず見ないLOGOである。これもいずれ塗り直すことになるだろう。

 この4-bayのホッパや2-bayホッパは発売当初に大量に購入した。当時は社長のウィーヴァ氏が「日本で売ってくれ」と言うので、代理店のような立場になったが、たちまち市場が飽和して辞退した。あれから20年経つ。

 Weaverは「アメリカ製」にこだわっている。一部のブラス製品は輸入であるが、主力の貨車、客車は完全なアメリカ製である。「安易に中国に作らせている会社とは違い、全て自分の目が届くところで仕事をさせている」と、社長は胸を張った。

 Weaver社は4-bayしか出していないが、実車は3-bayの方がはるかに多い。だから、それが欲しい客を狙って、ウェイトを兼ねたブラス製の3-bayの床板を売り出した会社があった。面白いプロジェクトであった。かなり儲かったと聞いている。

2008年12月22日

Quality Craft のプラスティック貨車

50' Tanker 1980年代に入り、プラスティック・インジェクションによって貨車の完成品を作り始めた。これがその第2号である。第1号は2-Bay Hopperであった。サイドを別型にして、3種の製品を作ったのは賢明であった。
 リンク先の写真は三線式ハイレイル用であるが、当然スケールの製品もある。

 このタンク車もかなりよく設計されていた。今はもう無くなっているが、デッキの手摺と、床面と同じ高さのが、あらぬ角度にモールドされていた。それらをねじって孔に突っ込むと、細いプラスティックにストレスが掛かって、非常に堅い手すりになった。うまい設計であった。
 この例のように、細いものに力を掛けて組み立てるという発想は、ドイツあたりから始まったようだ。

 これは50ftであるが、40ftも少々の変更で同時に発売した。この調子でいろいろな製品が出てくると、きっと大成功するだろうという予兆を感じさせた車輌である。

50' Tanker Stripped タンク上のデッキ手摺が、事故で壊れて何年も経つ。直すついでに塗装も削り取った。全部の塗料をはがすのは大変だから、楽な方法をとった。文字の入っているところは塗膜が厚いので、そこだけ細かいスティール・ウルで擦って、#1500の耐水ペーパで水研ぎしたのだ。文字の部分は塗装が厚いので その周辺との高さを合わせるためである。このように大きな面に文字がある場合は、簡単である。

 手摺は0.75mmのブラス・ワイヤと1.5mmアングルの組み合わせである。巻き付けてハンダ付けするととてもしっかりする。アングル内側にはブラス・ワイヤをハンダ付けしてそれを本体に開けた孔に差し込む。相手がプラスティックなので、強く挿して摩擦で抜けないようにする。接着剤なしでも十分なくらいである。あまり強く差し込むと時間が経つと割れてくるから、針金の長さ方向にニッパで傷をつけて差し込む。そのとき、本体の孔はやや大きめにして傷をつけたときに出来るふくらみの先端が食い込むようにする。文字で書くと難しいが、やってみれば簡単である。これがクリープ割れを防ぐ方法である。
 この写真では深く差し込みすぎて上端が傾いているが、後で修正した。

 外れているプラスティック部品をヤスって、新しい面を出し、リモネンを塗ってクランプすると完全に接着する。

Weaver 50' tankcar BN 黒く塗って、ディカールを貼ると、出来上がりである。

2008年12月20日

続々々 Quality Craft のキット

40' Bulkhead Flat Car UP w/ Pulpwood この貨車は当鉄道で一番重い40ft車輌である。880 gある。軸重が200 gを超すとボールベアリングを装備せねばならない。
 先回の貨車はいずれも400 g台で軸重は約100 gである。これならステンレス・ピヴォット + デルリン台車 + モリブデン・グリスで調子よく走る。積荷は迷った結果、庭の木の枝を乾かしたものである。発泡ポリスチレンを芯にして軽く作るはずであったが、横から見て透けないのはおかしいことに気づき、全部を本物にした。透けて見えるのは気分が良いが、とても重い。

89'Trailer-Train Flat Car これが木製だとは誰も思うまい。このキットを手に入れたとき、果たしてうまく出来るか心配であった。
 トレーラは、後でたくさん入手した。これも木製とは思えない仕上がりを得られる。
 何度も磨いてつやが出るくらいにした。下廻りは横から丸見えなので、力を入れて作った。エナメル・スプレイを買ってあったのでそれを塗った。当時は飛行機に持ち込んでも文句を言われなかったので、バーゲンで2本99セントで買い込んだものを大量に持ち帰った。のどかな時代であった。この色がT/Tの黄色と同じだったからだ。その他、黒、白とかRoof Brownなども具合の良い色が多かった。
 そのブランドはRUST-OLEUMというもので、庭先のいすなどに塗るものらしい。エナメルはラッカと異なり、空気に触れて徐々に硬化する。ラッカを塗り重ねると、しわが出るから注意が必要だ。乾いた後のつるりとした仕上がりはラッカとは全く異なる。二回塗りで、一回目が乾いてから、耐水ペーパで研いである。隠ぺい力はやや小さく、物によっては3回塗ってある。厚塗りするとディテールが埋まってしまう。

 組み掛けのを買ったものもあるので、ディカールが不足した。本物を乾式複写機で複製を作った。ディカール用紙は厚いのでインクに相当するトナが十分定着しなかった。仕方なく、裏からヘア・ドライヤで加熱して定着させた。これで十分使用できるディカールが出来た。結果はご覧の通り。

40' Outside Braced Boxcar これはもう5年もこのままの状態で昼寝している。この下塗りはアメリカ製の自動車用のサンディング・シーラ(サーフェサ)で使いやすい。もう持ってこられないので、これを塗って最後の一缶が無くなった。
 骨組みが外にある木造車で、内部の幅は狭い。どうしてこんな構造にしたのだろう。一応、Auto Car ということになっている。1920年代の車輌である。当時としては、背が高い大容量のBoxcarであった。

2008年12月18日

続々 Quality Craft のキット

40' Hi-cube Boxcar これも古いキットからの車輌である。Hi-cube Boxcar はこの40 ft以外に80 ftもあるが、それはまだ塗装していない。  
 これもハイドラ・クッションで連結器が飛び出している。この模型は40 ftであり、スペイスがなく可動させてない。CB&Qの車輌は当鉄道には少なく貴重品である。

Canstock Car ネイヴィ・ブルゥの粋な貨車である。B&Oがどのようなつもりでこの貨車を作ったのかは判然としない。角ばったデザインで面白い。
 何度も下塗りをして、木目を消したつもりであるが、まだ分かる。このように大きな面を滑面にするのは難しい。艶を消せば分からないのだが、1970年代はまだ新車の輝きがあったはずなので艶ありにしている。

 当鉄道のポリシィとして、貨車は50年代に走っていたグループと70年代に走っていたグループに分けている。前者は蒸気の時代なので汚れている。後者は新車として出現したばかりなので艶ありのものを多くしている。

Rail Box Car レイルボックスはリース会社の貨車である。最近は見ないが、70年代はどこに行ってもこの貨車があった。当時このディカールは貴重品であった。なかなか発売されなかったので、この貨車を入手したときは嬉しかった。

2008年12月16日

続 Quality Craft のキット

 クオリティ・クラフトというブランドは Oゲージ界に浸透し、かなりたくさん売れたようだ。しかし、売れてもその1/4くらいしか完成されていないように思う。
 今でもOゲージのショウに行くと、新品箱入りが山のように積まれている。またそれを、思わず買ってしまうから始末が悪い。多分筆者のところには未組キットが40箱以上あるはずである。同じ種類のものならまとめて作ると早い。いつぞやは2-bay Hopperを10輌弱同時に組んだ。若かったのだ。

34' Composite Hopper このコンポジット・ホッパは、war emergency composite hopper である。名前の通り木と鋼の組み合わせて、鋼材を節約する戦時中の代用品である。木目を残した仕上げにした。日本製のブラスモデルもあるのだが、美しすぎてよくない。木部は木製であると嬉しい。


50' Auto Car このAuto Carは筆者の好みである。ディカールが特製品で、美しい。リブ付きのMilwaukeeのもある。1950年代の貨車をたくさんつないだ列車を作りたかった。
 AthearnのキットにもAuto Carはあるのだが、この木製キットの方が味があった。ディカールも自分の好きなように貼れるので、番号を変えて作ることも容易であった。アサンは側面がシルク・スクリーン印刷で番号を変えるわけには行かなかったのだ。

Air Slide Covered Hopper このエアスライドのディカールは美しい。貼るのはなかなか難しかった。デッキ部の壁に、何か飛び出しているのにご注意戴きたい。エアスライド部のホッパの延長上に突き出している。このあたりの描写はなかなかいいところを衝いている。これを省略すると面白くない。ワークスK氏のブログでご紹介戴いたGreat Northernのエアスライドにも、ちゃんと付いている。HOのプラスティック製品には付いているものが少ない。Overlandの製品には付いているが、やや小さいのではないかと思う。
 空気パイプは長年の間に外れてしまっている。近いうちに修理したい。

UP Wood Caboose UP のカブースはWeaver氏の好みである。当時はこの木製の車輌がなかった。しかしこの直後に韓国でブラス製が出たのはショックだったようだ。台車はそのブラス製が手に入ったので載せてみたが、出来が良いとは言えない台車でバネは固く、摩擦は大きい。

Extended Hopper for Wood Chip Quality Craftの貨車のうち、筆者のもっとも気に入っている貨車である。これは既製品にはない。
 かさの大きなパルプ用のウッド・チップを運ぶ車である。積荷は、ロッギング・レイアウトの大家の古橋正三氏から戴いた粗いおがくずである。この粗さは探してもなかなかない。

2008年12月14日

Quality Craft のキット

34' Wood reefer Weaver氏は1965年頃からこの手のキットを売り出していた。クラフツマン・キットと呼ばれた。いわゆる割り箸キットである。完成させるのは大変な手間が掛かる。しかし、完成すると「自分で作った」と自慢できるキットである。事実、ウィーヴァ氏は、このQuality Craft ブランドのキットの箱に、
  You can say, "I built it.”と書いていた。ディカールが気に入って買ったようなものだが、このディカールを貼るのは大変難しかった。いくつかに切って貼ったように記憶する。後にこれと同じ柄のプラスティック製のビルボード・リーファが他社から出ている。

40' Wood Reefer 筆者はこのキットを次から次へと購入し、ほとんど完成させた。全部で数10輌あるだろう。作り方は大体同様で、Bass Woodで出来た部材にラッカ・サーフェサをしみ込ませ、それをスティール・ウルで磨く、これを二回繰り返したあとで専用の接着剤で組み立てる。組み立ててから、さらにサーフェサを吹きつけ全体を磨く。

34' 2-bay Covered Hopper 小物部品はホワイトメタルと鉄線である。ブラス線ではないところがアメリカ製である。適当に補重して連結器をつけて塗装する。下地処理が完璧であると木製とは思えない。細いアングル、チャネルも全て木製である。完成後30年は経っているが、かなり原型を保っている。
 これは事故車で、ひびが入っている。木製であることを強調するために登場させた。車輪が光っているのはご容赦を願いたい。取り換えてから塗ってない。近々車輪を塗る予定である。

2008年12月12日

続 Weaver FA+FB

 Weaverが後発メーカでありながら大躍進したのは、ライオネルの市場に切り込んだからである。このあたりの事情は興味深い。現在の社長のJoseph Hayterは、Bobの娘婿である。

 ご存知のように、スケールではないハイレイルの(鉄道模型と言うべきか、鉄道玩具というべきか迷う瞬間がある)市場はとても大きい。1970年代は12倍という数字であったが、最近は、皆が20倍と言うからそうなのであろう。

 要するにスケールの客だけを相手にしていては、飯が食えないのである。70年代はライオネルの凋落期で、新しい車輌の種類が少なかった。中古車輌を売買する程度では満足できない客層がたくさん居たのである。

 ウィーヴァ氏はそれまで割り箸キットと呼ばれる、木製のいわゆる Craftsman Kit を発売していた。そのブランドは Quality Craft であった。それなりの評価を得ていたが、プラスティック・インジェクションで作る塗装済みの貨車をスケールとティンプレートの両方で売り出すことにしたのだ。2-Bay Covered Hopper、タンク車、ACF 4-Bayなどがヒット作である。

 それらは、乾いた砂に水を撒いたが如く市場に吸収され、増産に次ぐ増産でたちまち巨大メーカになった。また、これらがきっかけで、ティンプレート車輌の細密化がスタンダードになった。

 ティンプレートとハイレイルとはどこが違うかと聞かれることがあるが、全く同じ概念である。印刷済みブリキ板を曲げて作った車体という意味である。
 中空の背の高いレイル(Tubular Rail)を用いているところがスケールとは異なる。車輪の規格が異なるので共通化しようと思うと、台車の構造に工夫が必要である。

 Weaverはこのあたりのことを、そつなくこなした。その成功を見て、MTH、Atlasが急速に参入し、ハイレイルの市場はますます大きくなった。
 スケールの客は、そのおこぼれに与っているのである。欲しい車輌の製造数があまりにも少ないので、特定の車輌を作ろうと思うと、ハイレイルの製品の上廻りを利用して下廻りは他の車輌からの流用という例が増えている。
 筆者のFA、FBもそれに似た事例かもしれない。

2008年12月10日

Weaver FA+FB

Weaver FA ABBA これらは筆者の持っているALCO FA+FBである。上の2輌は正規品である。下廻りは処分した。フレームはブラスで新製してある。これだけで2 kg以上ある。
下の2輌はかなり珍しいものである。Weaver社を1989年に訪ねたとき、社長のBobが歓迎してくれ、自ら社内を案内して塗装、印刷セクションを見せてくれた。そのとき、失敗品をかごに放り込んであったのを貰ってきたのだ。

 ステップの欠けた物などをテスト用に使ったのであろう。UNION PACIFICの文字だけを黒いプラスティックに印刷している。

 この会社はもともと印刷業を本業としていた会社である。社長の道楽が意外にも成功して、かなり大きな模型製造業者になった。Bobはサスケハナ川を見下ろす大邸宅に住み、その地下には50坪ほどの大レイアウトがあった。驚くべきことは、全ての車輌がUPであったことだ。それは不思議な景観であった。

 「どうしてUPばかりなのか?」と問うと、「好きなものは仕方がない。」と言う。「不自然だとは感じないか。」と言うと、「とても幸せだ。私が好きなのはUPだけだ。」と言ったのには参った。そこで持参したDDA40Xを走らせた。30輌ほどの貨物列車を牽いて、電流値が0.1 A台であった。「電流計が振れない。これは不思議だ。」と言った。

 「実はね、」と説明した。「高効率のモータ、ギヤを装備するとこうなるという見本です。」と言うと、熱心に話を聞いてくれたが、価格の話をすると、天井を仰いで、「そんなに高い機関車を買う人はいない。私の客はその1/10の金しか出さない。」とため息をついた。「個人的には欲しいがね。」

2008年12月08日

続 衝突に耐える

F9 freight unit combined with E9's F9Aをどのように料理しようかと悩んだ。そもそもF9Aは希少機種である。UPには16輌しかいない。いずれもF3AEMDに下取りさせて、エンジン、発電機、モータなどをアップグレードしたものを購入したものだ。
 F7F9の外見の違いはほとんどない。丸窓の前に通気用のルーバーがあるのがF9である。さらに細かいことを言えば、丸窓の位置が多少違うそうだ。
 筆者は、このあたりのことは弱い。栗生氏のニュースにその違いが記されていて、大変参考になった 。

 UPのディーゼル機関車の歴史を書いた本にF9AのSnow Plow付きの写真があった。これはとても具合が良かった。AtlasF9Aパイロットに大きな切り欠きがある。ハイレイル用の大きな連結器をつけるためである。これを埋めようとしていたが、かなり面倒であるし、曲面の完全な再現の自信がなかった。切り取って円筒の一部のようなものを作ろうかと思っていた。しかし、それも陳腐である。

Snow Plow equipped F9 大きなスノウプラウをつけることにすれば、諸々の問題は解決する。平面で構成されたプラウは作りやすいし、取り付ければ見栄えもする。

 ただし、せっかく作っても運転中に引っ掛けて、ぐにゃりと曲がるのも許せない。硬い材料で作りたい。材料箱を探すと、ちょうど良い厚みのリン青銅板が出てきた。板の「目」を調べると、引っ掛けて曲がりそうな方向に弾力が強いことが分かった。とても好都合だ。

 リン青銅板は加工硬化するので、もたもた工作していると硬くなる。加工は一気に行うべきである。曲げる部分は裏をV字型に削り、曲げやすくする。丸く曲げる部分は、例の金床の上にテープで留めて、ゴムハンマーで叩いて曲げる。これも何回かで曲げようとすると失敗する。とにかく一回で曲げる。満身の力をこめて一気に叩く。 

2008年12月06日

衝突に耐える

Metal Touch 筆者には、衝突に耐えるようにということが、いつも念頭にある。これは常識だと思っていたのだが、HO以下の場合にはそのようなことはあまり考えなくてもよいのだそうだ。むしろ壊れるのは落下によるという。Oゲージでは落下すると、まず全損である。使える部品だけ取ってあとはスクラップである。

 衝突時の力の掛かり方を予測して補強を入れたりすることもあるが、大切なのは、メイン・フレームへの力の掛かり方を考えておくことである。折れるかも知れないと思うところは、思い切って壊れやすくするのも手だ。
 
Pilot installation カウキャッチャの取り付け方は大切である。厚板の後端を平らに削って、フレームと密着させておく。それをネジで固定すると、力はそのままメイン・フレームに伝わる。ネジに剪断力は掛からない。

 昔韓国製の模型を見て驚いたのは、パイロット全体は実にきれいに組まれているのだが、薄い板一枚で フレームに取り付けられていたことだ。これではちょっとした衝撃で板が曲がり、ハンダが外れる。これはAJINに伝えたので、それ以降は直っていると思う。

Sky Scraper 高層ビルの建築が始まった頃、その鉄骨を工作する場面をテレビで見た。確か、霞ヶ関ビルだと思う。主たる構造を受け持つH鋼の端面は、精密に研削される。組立て時はH鋼同士が接触し、継ぎ手はズレを防ぐだけという工法であった。
 それを"Metal Touch" と言うのだそうだ。こうしないと、たくさん積み上げたときの精度が出ないということであり、また、強度も大幅に改善された。


 それを見て以来、筆者の頭の中にはメタル・タッチにせねばならないという強迫観念が生まれたようだ。F9はロストワックス鋳物のボディ・シェルにきっちり嵌まるように仕上げたフレームが納まる。取り付け時は押し込むくらいにせねばならない。連結器はフレームに付いているから良いのだが、それ以外に前方に大きなものがボディに付けられているからだ。それについては後述する。

 FA-2、FB-2は、外殻がハイ-インパクト・プラスティック製であり、弾力があるから構造を考える必要はあまりないのだが、やっぱりそうしてしまった。車重が掛かると、クリープと言って徐々に歪むのだ。暑いところに置くと顕著である。

2008年12月04日

FA-2 のフレーム

FA-2, FB-2 Frames FA-2はWeaver社製のを持っている。比較的安価で簡易な製品である。昔は全体がプラスティックであった。最近は下回りをダイキャストで作り直して高価で販売中のようだ。筆者が持っているのは20年前に販売された製品である。上廻りは十分に精細に出来ている。正直なところ、レイアウト上を走らせるのが目的で、その細密さを鑑賞するわけではないから、これで十分である。

Another sides of the frames 下廻りは要らないので捨てた。ボディ・シェルだけ20年も放置してあった。F9の工作が始まったときに、ついでにフレームを作ることにした。4輌編成なので手順を決めて掛かれば、手間を省くことが出来る。

 ボディ・シェルがプラスティックであるということは、下廻りが完全でないと、衝突時その他の事故時に重大な被害が生じる。下回りは念を入れて頑丈な構造にせねばならない。材料置き場を探すと、9.5mm角のブラスのバーがたくさん出てきた。3/8インチ材である。この手のインチ材は建築材料である。昔の商店などでガラスの引き戸の下に敷いてあったレイルのようだ。知り合いの工務店が倉庫をつぶすというのでもらってきたものである。釘孔が開いているのはご愛嬌である。
 その他、1.6mm厚の長い蝶番の片割れとか、およそブラス製材料なら何でももらってきてある。そのような廃材を使って作るのは楽しい。価格を気にせず、最大限丈夫なものが作れる。ネジで仮止めして、トーチであぶってハンダを流す。120%流れたところでフライスで余分なところを落とせばよい。FA用は450gある。FB用はやや細い1/4インチ角材を使っていて250gである。

2008年12月02日

F9 のフレーム

F9 underframe F9のフレームをハンダ付けしているところである。
ブラスの3/8インチのアングルと1/4インチ角棒を切ってあぶり付けである。今回はペースト状のハンダを用いた。永末氏から分けて戴いたもので、プリント基板につけて部品を置いてオヴンに入れる方式の特殊ハンダである。ボディ・ボルスタは1.5 mm厚である。絶縁は2 mmベークライトを用いた。この液状ハンダは永末氏の工場での賞味期限切れのものであるが、模型工作にはなんら差し支えなく使える。注射器のようなものに入っている。先端を切り落として押し出す。

 お問い合わせになれば、適価で分売してもらえるはずだ。周りについたフラックスは、つついて大半を取り、残りはリモネンで拭くと取れる。
 松脂系のフラックスなのでリモネンの分子構造と近い部分があリ、よく溶ける。

 角棒を切断してドリルで孔を開ける。ネジを切ってブラスのネジを締める。強く締めて1/4回転戻すと適当な隙間が空く。接触面にはキサゲで傷をつけておくと、ハンダの流れるすきまが完全に確保される。締め付ける前にハンダ・ペーストを塗り、締めてからもつなぎ目に少し塗る。あとはガス・トーチでゆっくり温めれば出来上がりである。ハンダがきらりと光って流れた。

 今回は車体が必要以上に重いので台枠も丈夫にした。前頭部のカプラ受け(この写真では向こう側)は、衝突に耐えるように10X8mmを用いた。いずれも電動鋸で切っただけである。仮組みしたら直角が出ていたので、捻れが出ないように注意して温めた。

 材料が快削材なので、工作は極めて簡単である。タップを立てるのも鼻歌交じりである。完成したので垂直に立てて、ゆっくり体重を掛けて見たが大丈夫であった。

 ボディシェルとの嵌合を確かめながら、先端の丸いところを大きなヤスリで削る。隙間なく押し込めるように出来れば、衝突に強い。機関車の質量は2100 gもあるのでいい加減な工作では、ちょっとした衝突でゆがんでしまう。

 このようなフレームを作るときは、フライスで切って直角を出すのが普通だが、今回は手抜きでもうまく行った。2時間程で完成した。

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