2006年12月

2006年12月31日

大晦日は車検の日

 大晦日である。

 昨日は貨車の車検を行った。一台ずつ目視検査、質量測定、連結器高さ測定をした。レイアウトの線路に載っている130輌余を3時間かけて行った。

 その結果、10台ほどが車検落ちで3台廃車、残りは修理工場に入った。貨車の質量は、NMRAのRP推奨規格である程度の数字が決まっているが、現在の筆者のレイアウトでの運転ではこの数字は重過ぎると結論付けられる。この数字はTMS206号のミキストにも紹介されている。

 確かに重いのは脱線しにくい。しかし、脱線は他のファクターが大きく、決して重さだけでは解決しない。以前お話したショック・アブソーバは大変有効である。スプリングの利いた貨車は殆ど脱線しない。イコライズだけの貨車より脱線しにくい。

 殆どの車輪がLow-D車輪であるので、それだけでも重心が低く脱線しにくいのだ。木製.プラスチック製の車輌はそれだけでは軽すぎるので、鉄の板をちょん切ったものをシリコン・シーラントで貼り付けてある。ブラスの貨車は皆ほどほどの重さで具合がよい。当鉄道では、NMRAの基準値から長さ部分の比例値だけを採用している。全車が36ft以上の長さでばらつきが少ないから問題ない。

 アメリカで入手した1940年代あるいはそれ以前の木製貨車(中古車)は、接着剤が良くないせいか徐々に、はがれたり、割れたりしてきた。トンネルの中で引っかかって大事故を起こし、その余波でその前後の数輌が被害を受けた。これを機会に廃車とした。使える部品は外し、ゴミ箱に投げこんだ。かわいそうだが仕方がない。

 これで今年最後の運転は万全だ。 

2006年12月30日

Oil Column

Oil Column これは重油焚きの機関車用の給油設備である。先端についているのはバケツではない。給油口が低いときの油の飛び散り防止用のじょうごである。これこそスパウトというべき物かも知れない。
 
 このOil Columnも協同ライト商会の製品である。バランスの良い製品である。これは量産品ということである。

 かなり古い品であるが、製作者の熱気が伝わってくるような製品である。

 問題は重油タンクである。給水タンクは2本立てたので、Big Boy、Challengerクラスが数台給水しても大丈夫という想定だが、Challengerの重油タンクを満たす容量のタンクはかなり大きい。ガスタービン機関車のテンダときたら、90トンもの重油を飲み込む。GTELだけでも3台あるのでよほど大きいものを作らねばならない。

 写真集めを始めた。当然自作しなくてはいけない。リヴェットを数千本打たねばならないだろう。タンクの建設用地も探さねばならない。ということは重油積み下ろし用の設備も作らねばならないだろう。

 機関区を作り始めた時は、灰捨て場と灰処理施設、給水施設(浄水小屋も含む)、給炭施設くらいしか考えてなかったが、かなりややこしい形になりそうだ。

 ターンテイブルの写真を見せよというリクエストもあるが、まだ骨組みしかないので、もう少しお待ちいただきたい。 


2006年12月29日

Water Column

Water ColumnWater Columnは機関区に必要な設備である。日本ではスポートと呼ばれている。これはSpoutのローマ字読みであろうから、正しい発音はスパウトである。

 Spoutは樋など水の流れる筒状のものを指すので、この写真で言えば大きな筒の部分を指すことになる。全体はWater Columnというのが正しいだろう。ちなみにColumnは「柱」という意味だ。

 このWater Columnは1960年代にKemtronに輸出されたものでよくできている。まさに手作り品であった。こんなに手をかけては商売が成り立たないだろうと感じる物である。e-Bayのオークションで競り落としたものでよい買い物をしたと満足していた。価格も相場程度であった。

 最近協同ライト商会とメールを交わすようになり、この写真をお送りしたところ、意外なことが判明した。これは試作モデルであるそうだ。要するに、輸出するに当たり、「これでよいか」という承諾を取るためのpilot model(試作品)である。当然、量産品とは異なる部分もあるだろう。

 輸出した当時のことをお父様が思い出され、どうしてこれが日本にあるのか不思議がっていらしたそうだ。多分、輸入した会社は既にないので、解散後何度か転売されて、筆者が入手したのだろう。

 これに限らず、試作品、Pilot Modelというものは手作りだから珍重される。
 時々e-Bayに仰々しく"Pilot Model"として出品されることもあるが、たいていは勘違いで、後でトラブルが生じるようだ。Pilot Modelかどうかは、作った本人以外には分かりにくいものだ。 



2006年12月28日

小さいスプリングをはめる時の工夫

installing small springs 久しぶりに台車を組み立てた。

 小さなコイル・スプリングを片方に3つずつ押し込んでやらねばならない。以前は大きなポリ袋の中でやっていた。というのは、間違ってスプリングを飛ばすとたちまち紛失してしまうからである。しかしポリ袋の中は見にくく、能率が悪い。

 あるウェブ・サイトを見ていたら、面白い方法が紹介されていた。まず針と長い糸でスプリングを全部通してじゅず状にしてしまう。そしてスプリングを適当な工具で台車に押し込む。間違って飛ばしても、手元に落ちる。すべて糸の長さの範囲内だ。
 スプリングを嵌めたら糸を抜くと出来上がりというものであった。

 ちょっとしたアイデアであるがきわめて効果的で、ひとつも失うことなく120本のスプリングが納まった。

 このアイデアをあるウェブサイトで紹介したところ、内野日出男氏が「素晴らしい!」と激賞してくれた。「いや、私のアイデアではないのですよ。」と申し上げたら、「素晴らしいアイデアを紹介するのが素晴らしい。」ということであった、

 どのサイトだったかの記憶がない。アメリカのサイトであったことだけは覚えている。どなたかご存知であればお教え願いたい。


追記
 Google で、"install spring truck thread" と検索すると沢山出てきたが、みな孫引きであった。私が5年ほど前に見た記事は見つからなかった。 Dec.31,2006
  

2006年12月27日

Granite

red granite graniteは、グラニットと発音する。日本では、ほとんどの人がグラナイトと読む。

 グラニットは花崗岩であり、砕石機で砕いてバラストとして撒く。このための貨車が何十輌もつながって側線に置いてある。

 場所により赤い花崗岩もある。今日の写真はネブラスカ州のノース・プラットというところで拾ってきたものである。このあたりは何十マイルにも亘って、この赤いバラストが敷いてある。これをPink Ladyと言うらしい。 

 UPの本線上でこのような場所は珍しい。しかし早速この赤いバラストを、商魂たくましく売っている模型業者がある。売れているか聞いてみると、顔をしかめて"No good"と言っていた。

 やはりバラストは白いほうがよく売れているらしい。

 日本でアスファルト舗装道路に使う骨材、コンクリートの骨材の石は、昔は石灰岩であった。磨り減って粉塵となって舞い上がったものを吸い込むことを考えてのことだろう。コンクリートの場合も骨材は石灰岩が多かったが、砂は珪砂であろうから、粉塵は肺に溜まるかもしれない。最近の酸性雨で、雨の当たる古いコンクリートの骨材が溶けて凹んでいるのを見ることがある。

 これは昔話で、現在は各種の骨材があるようだ。

 石灰岩は微粉となって吸い込まれても、肺の中で二酸化炭素と反応し、徐々に溶けてしまうはずである。チョークは石灰岩と同じ炭酸カルシウムだから、チョークの粉も、そういう意味では安心である。 

2006年12月26日

砂利

ballasted track 昨日の写真はその前の写真と少し違う。砂利が撒いてある。

 この砂利はゴムでできた砂利である。なかなか良い感じになるので一部の線路には撒いてある。しかし可般式線路には向かない。移動のたびに少しずつはがれてくるからだ。
 やはり可搬式の場合は土屋氏式のほうが良い。バラストがついていると多少は見栄えがするかと思ったが、何もないほうがすっきりして良いという意見が多かった。

 このゴムの砂利はどうやって作るか。

 ゴムを液体窒素に突っ込んで凍らせ、それをミキサーで粉砕する。後は適当に篩い分けるとGゲージ用からNゲージ用までできてしまい、無駄のない方法である。

 これはゴムのガラス転移点以下では脆性が生じるという極めてありふれた現象を利用している。

 ゴムの小片は水性ボンドなどで簡単に接着できる。シーナリー付きのレイアウトにおいては絶大なる効果を発揮する。実にリアルなのである。接着しなくても置いてあるだけでも良い。気に入らない時には掃除機で吸って撒き直す。もちろん掃除機のごみだめに行く前にストッキングなどでプレ選別する必要はある。このゴム砂利を敷くと音が静かになる。明らかに高音部の消音効果がある。接着したものより、置いただけの方が静かである。

 市販のものはこのような石灰岩色のものから、グラニット(花崗岩)色、赤いグラニット色などいくつかある。

 赤いグラニットの線路は確かに存在するが、日本では奇妙に見えるだろう。



2006年12月25日

Acoustics

stackable track"acoustics" とは音響学のことである。日本では「アコースティックス」という人が多いが、これは間違いやすい発音で、本当は「アクースティックス」である。

 吉岡氏はオーディオの趣味もお持ちで、音にはたいへんうるさい方である。たくさんの試作品のなかから、天然ゴムの薄板が効果があることを見つけ出された。写真は天然ゴムの板の上にフレキシブル・トラックを置いたタイプである。カントがついて持ち上がっている様子がお分かり戴けよう。

 レイルをゴムでくるんでみたり、スポンジの上に張ったりして工夫されたそうである。しかし、ゴムの板の上にフレキシブル・レイルを置いたものがベストであったそうだ。

 しかし、天然ゴムを道床の砂利型に切るのは至難の業である。これは押し出し成型以外ない。

 そんな時、土屋巌氏が助け舟を出して下さった。土屋氏は自動車業界にいらっしゃる方で、天然ゴムと同等の性質を持つ、軟質ポリ塩化ビニルの押し出し品を提供して下さったのだ。

 ポリ塩化ビニルは耐光性に優れ、直射日光下でも20年以上持つ。また、寸法精度もよく、我々としては願ったり叶ったりであった。そんな訳で、土屋氏も仲間に入って戴き、4人で300本くらいの道床を発注した。
  
 組み上がって納品されたものには直ちに塗料を塗り、安定化させた。ジグによりレイルの位置を合わせて作れば、どの部材も必ず合うようになる。即ち、組み立て時に番号順に組合わせるということから解放される。緩和曲線だけ長さが違うので識別は容易である。
 
 組み立てるときは箱から出して、適当ににつなげば完成だ。収納はもっと簡単で、抜いて積み重ねれば終わりである。この積み重ねにも工夫がある。カントが付いていると、片方のレイルが高い。接続金具に当たるといけないので、金具を取り付けるネジは皿ネジを用いて沈めてある

 机の上に並べると道床の高さがほどほどで見栄えがする。また、庭の芝の上に敷くと適度に沈んでなかなか良い感じである。

 音は低周波がよく聞こえて、鉄道模型をよく知らない方からも、「いい音がしますね。」と言われた。

 魚田氏と筆者は二人で複線になるように発注したのに、あの地震でそれも叶わなくなった。


2006年12月24日

続 可搬組み立て式線路

 問題は精度の高い「ほぞ」をどう作るかである。日本の気候の中で経年変化を含めた耐久性を考えなければならなかった。

 吉岡氏の近所の木工所がハーモニカの木部を作っていたらしく、良い木をいくつか紹介してくれた。見本をいくつか作らせて検討し、最終的に数百組の互換性のあるほぞを作った。合板製の本体もついでに作ってくれることになり、比較的安く作ることができた。ほぞ材は朴の木を使った。

 給電部はS工房にプレス部品を発注し、ブラスの板で、スプリング圧着させることにした。これが大変に具合がよく、ほぞ先端を丸くしたことと相俟って、組み立ては本当に一瞬である。しかも、スプリングが利いているのでその下の机に多少の不陸があっても何の問題もなく接続でき、また外れることもない。

 この組み立て道床にはもうひとつの大きな工夫がある。それは音に対する工夫である。市販のいろいろな道床の上を車両が走る時にいろいろな音がする。聞いていて不愉快なのは高周波成分だ。「シャー」とか「カー」という文字では表せそうもない、高い音が出る。いかにも模型的な音で、実物の「ドドン」とか「ガッタンゴトン、ゴトン」という音からは程遠い。

 高周波成分を共鳴させなければ良いわけで、それには内部損失の大きい材料が必要である。音響学の専門家に聞くと一番大きいのは生体であるという。確かに人間の手で支えた線路の上では車両は良い音を立てる。人間の代わりになるものはないか。

 コンニャクの薄切りの上に上にレイルを置いて走らせると、えもいわれぬ良い音がした。しかしこれでは現実的ではない。ある程度重くて内部損失が大きいものは天然ゴムである。
 自動車タイヤ用のSBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)は内部損失を小さくするような分子構造をもたせてあるから、これは使えない。

 木部の足の部分にはフェルトを切って張った。 

2006年12月23日

可搬式組み立て線路

 track joint w/tenon 吉岡精一氏はアイデアに満ちた方である。
 次から次へと湧き出るアイデアを精緻な図面にして送ってこられる。

 15年くらい前であろうか、筆者がマンション住まいを余儀なくされていたころ、走らせる場所が必要なので、公民館を借りて運転しようという気持ちが強くなった。神戸の故魚田真一郎氏と相談して二人で複線のエンドレスを持ち、ヤード部分は仮設で行こうということになった。

 吉岡氏に相談すると、「こういうアイデアがある」と旧くから温めて来られたものを見せて戴いた。木製の積み重ね式線路だった。

 一般の可搬式線路には、いくつかの欠点がある。
\僂濬鼎佑襪肇譽ぅ襪当たり、壊れやすい。
▲譽ぅ襦Ε献腑ぅ福爾あると嵌め難いし、すぐ壊れる。
ジョイナーに頼った給電方式は接触抵抗が大きい。
ぅ譽ぅ襪療典つ餽海馬鹿にならないのでレイルを通電体とするのは避けたい。
テ讃欧プラスチックのものは、厚みがないので芝生の上などには敷けない。

 それを克服するには、木製ほぞ組が良いことになった。
“型にすることにより、レイルに当たらないよう保護される。
▲譽ぅ襦Ε献腑ぅ福爾鮖箸錣覆韻譴弌∩箸澆笋垢い群れることもない。
ほぞに給電接触子を取り付け、接触抵抗を軽減する。
と型道床の中に、き電線を置き電気抵抗を小さくする。それによって、鉄レイルの使用も可能になる。というものであった。

 また、曲線においてはカントをつけることも可能で、ヤードのポイント類も、極めて合理的に分割併合でき、既存のいかなるメーカの製品に対しても圧倒的に優位に立つものであった。

 写真はカーヴ用のもので、カントがついている。カントは木製くさびを貼ってある。


2006年12月22日

続 間違い探し

sectional truck 昨日の写真1枚からでも解る方もきっといらっしゃると思った。

 それは向こう側のドアの位置である。上から見れば、ドアはこちら側と点対称の位置についている。決して線対称ではないのだ。

 荷役作業上、都合がよいと書いたのは、ヒントであった。もし線対称なら、向かって右の方の荷役は大変不便である。

 これを間違って300両作り廃棄する羽目になったわけで、さぞかし社長は頭が痛かっただろう。思い切って、全部とは言わないまでも、50両くらい貰って来ればよかった。レイアウト上ではエンドレスの内側から見る限り正しい車両に見えるのだから。

 この継ぎ目が水平にないつくりの車両はB&O鉄道(Baltimore & Ohio RR.)ではいくつかの機種で見られる。カブースもこの構造のものがある。


 ところでこの貨車が載せてある線路について少しお話したい。これは吉岡精一氏の案に乗って、故魚田真一郎氏たちと共同で作った可般式組み立て線路である。

 「組み立て式レイアウト」という日本語がある。これに相当する英語はなさそうだ。レイアウトは固定式のものであるらしい。この写真のようなものは"Sectional Track”と言うのが比較的近い言葉らしい。Ntrakのようなものは"Module Layout”という言葉を使う。  
 
 組み立て式の場合、組み立て調整に時間がかかり、また撤収も大変であるとやる気が失せる。組み立て5分、撤収3分というのが目標であった。 

2006年12月21日

間違い探し

間違い探し 栗生氏のブログで、サンの模型の塗装間違いが一部の好事家によって貴重品扱いされているという話が取り挙げられている。なぜアが太字になっているかというと、アクセントがここにあるからである。アメリカで買い物するときは、ここに注意しないといけない。どういう訳か、日本では60年代の天賞堂の広告の時代からアサーンになっている。


 さて、切手の印刷間違いなどでは、その趣味者の間では途方もない価格がつけられて取引されているのを報道によって知ることがある。

 さて、今日の写真を見てその間違いに気が付く方はいらっしゃるだろうか。車番は筆者の好みでつけているので、それは除く。

 これは世界で一台しかない。AJIN社製のOverland Model向けの製品になるべきところであった。しかし直前にミスが見つかって廃棄されることになり、ゴミ箱に山積みになっていたのを一台貰ってきたものである。

 上回りの間違いだったので、下回りは自作である。

 この車両はB&Oの"side to side" というつくりだ。屋根に水平方向の継ぎ目がないので、「雨漏りがない」という触れ込みで1940年代の終わりに登場したタイプである。

 ドアが両側に二枚ずつ付いていて荷役が楽である。これは40ftだが50ftのものは自動車も積むことができ、autocarと呼ばれている。            

2006年12月20日

センタビーム・フラット・カー

 Centerbeam Flat Car この貨車は最も合理的な設計の貨車であると思っている。

 一般にフラット・カー(床面が平坦で重いものを載せる貨車)は、積荷に比べて自重が大きい傾向がある。床を平らにすると撓むので、床下を補強せねばならない。結果として骨組みが太くなり重くなる。ゴンドラ・カー(いわゆる無蓋車)は日本と違って側面のあおり戸が動かない。つまり側面を耐力壁として強度を確保している。このため、軽い自重の割にある程度の重量物を載せることができる。

 ゴンドラ・カーで動くのは妻板だけである。妻板は大抵内側に倒れる。長尺物はこうして次の貨車にまたがって載せる。

 フォークリフトで物を載せるのであるなら、フォークの長さはせいぜい貨車の幅の半分までである。それなら両方から載せればよいわけで、中心部に壁があっても困ることはない。荷台を中心に向かってやや傾けてあるので荷崩れの心配が減少する。ドンと突き当ててフォークを抜けばよいので積むのも簡単である。
 積荷は、キルン・ドライ(乾燥炉で処理)の2x4材が大半で、傾いて困るものでもない。

 フラット・カーの床下の構造物を壁にして全長に通せば、耐力壁としては最高である。しかも高さがあるのでより丈夫になって長いスパンでも耐えられる。衝撃で積荷が進行方向にずれるのを防ぐために、バルク・ヘッド(隔壁とでも訳すのだろうか)が両端にある。バルクヘッドはセンター・ビームが倒れるのも防いでいて、一石二鳥である。

 このような発想でセンタビーム・フラット・カーが開発された。結果として単なるフラットカーより軽くて長く、より重い貨物を積める貨車が出来上がった。
 しかも荷物に掛けるワイヤもセンタビームの中に納められていてオペレータ1人で仕事ができるようになっている。

 この開発の過程を読んでどうしても欲しくなり、作ろうと思っていたら韓国のメーカが作ったのでその試作品を貰ってきたのがこれである。どういうわけか、極めて重い車両である。よく考えて作れば、実物同様軽くできるはずなのに、厚い板を使ってあるからだ。仕方がないので、貨車といえどもボールベアリングを入れた台車を使っている。
 今の水準ではよくできているとは言い難いが、興味深い車両ではある。


2006年12月19日

続 再度 ユニヴァーサル・ジョイント

角速度変化 KKCとは、今野喜郎、浮津信一朗、出羽文行の各氏が中心となって設立された同人であり、商業誌には載らない個性ある記事をまとめて会誌を発行されている。

 筆者も設立されてすぐにその情報を入手したが、KKCが古典機、軽便、地方鉄道の略語であることを知り、入会をためらってしまったのである。筆者が製作しているのは、同じKKCでも高出力、高効率、超大型であり、全く方向が違うものであった。しかし内容はかなり近いものであると、お互いに感じている。

 この問題のユニヴァーサル・ジョイントは○るまや社製のものであったそうだ。その後改善されたかどうかは情報がないが、アメリカのNWSL製のものは正しい配置になっている。
 エンドウのMPギヤ附属のユニヴァーサル・ジョイントはやはり位相がずれたかたちになっている。もっとも、この商品は平行にずれる使い方はしていないから、やや事情が違うかもしれない。

 
 会報中、昨日の写真の機関車の説明には、「なぜか肩を揺すります。どうも、動力台車の上面が平面でなく、フラフラするところに、ギヤードモータのトルクが悪さをするようです。なんとか、センターピンの遊びを殺してビビリを取り、そこそこ走るようになりました。」とある。この時点では、指摘を受ける前で、ジョイントの接続にまだ気がついて居られない。

 角速度の変化は、こんなに大きな影響を与え得るという、非常に分かりやすい例をご紹介した次第である。

 気になるのは、この日本製のユニヴァーサル・ジョイントは、模型誌に紹介記事も載り、たびたび広告も載っていたことである。

 どうもこの辺に大きな問題が潜んでいるように感じている。

2006年12月18日

再度 ユニヴァーサル・ジョイント

KKC13号より許可を得て転載 11月22日のユニヴァーサル・ジョイントの記事をご覧になった方から、KKCの会報にも載っているというお知らせを戴いた。会報をお借りして読んでいたら、14号「1998年8月31日発行に載っていた。図がすばらしいので御許可を得て、転載させて戴く。Shay式機関車の伝導部品である継ぎ手の向きが間違っていると、他の会員から指摘を受ける部分である。以下、自動車会社のエンジニアの方の調査報告である。
       −−−−−−−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−−−−−−−−
KKC14号より許可を得て転載
 2軸が交差する場合、または2軸の食い違いが大きい場合には自在軸継手が用いられる。自在軸継手には不等速型等速型の2種があり、不等速型には十字軸型(Hooke type、Cardan Type)、食違い十字軸型、こま型などが、等速型にはベンディックス-ワイス型、バーフィールド型などがある。
 
 不等速型自在軸継手においては、2軸の角速度比γは一定にならない。駆動軸と被動軸の角速度をω1,ω2、2軸の交差角をαとすると、
γ=ω2/ω1=cosα/(1-sinα^2・cosα^2)  
 (中略)
 すなわち角速度は軸が90度回転する間にcosαから1/cosαに変動し、トルクはその逆数となる。この欠点を避け、滑らかに回転を伝えるためには交差角の等しい2組を同一平面状で使用すればよい。
とあります。

 ユニバーサル・ジョイントを1組で使うというのはまったくの振動源と言うことですね。必ず、2組を水平にして、かつ折れ角が等しくなるように使って初めて回転角速度、トルク変動が抑えられるということのようです。

       −−−−−−−−−−−−−−−−・−−−−−−−−−−−−−−−−−

 さらに御紹介すると、このエンジニアの方は以前模型雑誌社にも話したが取り上げてくれなかったとのこと。技術者の国家試験ではしばしば登場する問題なのだそうだ。

                       この項続く


2006年12月17日

チェーンによる駆動

chain drive arrangement 12月6日のチェーン駆動についてお話しておかねばならないことがある。

 先日藤井直氏にお会いした。「見てますよ。」と声を掛けられたのだ。「互いに素の話は当然のことだけど、ほとんどの模型は間違っているね」と仰る。

 たまたまフライホイールつきの下回りを持っていったので、それをお見せしたところ、痛いところを突かれた。筆者も気になっていた所であった。

 「チェーンで駆動する場合、駆動軸が上にあるときは良いが(左図) 、駆動軸が下にあるとまずい(右図)。」その通りである。工学のエキスパートの薀蓄をお聞かせ戴いた。重力が働くので多少のたるみが生じるとき、間違って隣の歯にひっかることもありうるのだ。

 自動車のエンジンは、大抵、下から上を駆動するようになっている。DOHCヴァルヴのカムシャフトの駆動チェーンがそうだ。だから、その場合の不都合を無くするために、テンショナーが工夫されている。

 自動車のエンジンは一定方向だから良いが、モータは正逆回転する。テンショナなど付けられない。

 仕方がないのでモータ台とフライホイールの台にシムをかませた。いずれチェーンが伸びれば取り替えることになろう。多少緩めのほうが抵抗が少ない。

 藤川昭三氏にも声を掛けていただいた。「ユニヴァーサル・ジョイントの件はほんとに駄目だな、雑誌社の連中が知らんのだな。あれは大きな声で言っとかないとイカンよ。常識なんだけどな。」と仰った。


2006年12月16日

続々 地下室

 地下水位の調査は大切である。日本の平地はいたるところに水脈があるそうで、3mも掘ると、沼のようになるかもしれない。

 筆者が家を建てた場所は標高80mの丘の上で、いくら掘っても水が全く出ない所である。一応簡単な防水は施したが、その必要もなかった。緩い傾斜地なので半地下であり、一番深いところで160cmほど埋もれている。大きな材料を出し入れすることもあるので、車庫用のオーバーヘッド・スライディング・ドアを設置した。建築確認は車庫としてある。このドアは断熱気密ドアで外から埃や湿気が入ることもない。電動で上下するようにした。このドアとモータは当然自分で取り付けた。

 モータ付キットが450ドルほどで手に入った。組み立ては3日ほど掛かったが、実に調子よく働く。建築確認どおりに車が入らないといけないので、一部の線路は車が入る分だけ外せるようになっているが、一度も外したことはない。

 冬は多少涼しすぎるので、深夜電力で働くエアコンとベースボード・ヒータで保温している。エアコンは750w、電熱ヒータは2KWである。タイマによるシーケンスを採用している。費用は一月2000円も掛からない。深夜電力は、昼間ピーク時の単価の1/4くらいなので、有効利用している。

 夏もエアコンが深夜電力で作動し、除湿を行っている。年間を通じて、湿度は48%くらいだ。照明はハロゲン電球である。

 地下室の利点は、もう一つある。音に関して全く考慮しなくても良いことである。サウンド装置で最大限の汽笛を鳴らしても外に漏れることはない。これは深夜に運転することが多い筆者には最大の利点である。

 床は1フィート角の陶器のタイルである。色は白だ。小さな部品を落としたとき、最も探しやすい色である。自分で貼った。これは例のタイル屋の友人に世話してもらった。居間も同じタイルなので、全部で1トン半くらい買ったことになる。

 居間から地下に下りる階段は螺旋階段で、この会社のイージーオーダーのキットを買った。この手の物はアメリカで買うと安い。ちゃんと鉄骨で出来ていて、オークの踏み板と手すりがついている。このカタログ番号でCTC-2というものと同等である。鉄骨は白く塗った。 

2006年12月15日

続 地下室

 Bobのレイアウトではその後何回も保線には付き合ったが、とうとう、屋根裏のレイアウトはやめると言い始めた。不都合が多すぎて手間をかけるのがいやになったのだ。裏庭の地下を掘ると言う。

 「なあ、お前も日本に帰ったらレイアウトを作るだろ。絶対地下室にするべきだよ。多少金が掛かっても楽だぜ。」と言う。

 Bobの忠告を守って半地下のレイアウトを作った。確かに1年を通じて温度差は4度くらいのもので、保線などしたことがない。天井がやや低い(185cm)のは残念であったが、10cm深くするたびに乗用車一台分くらい余分に掛かるのであきらめた。背の高いアメリカ人が来るとかがんで入ってもらう。
アメリカの地下室はバスケットボールができるような深さにする家が多い。

 地下室を作るのは寒冷地では当然のようになっている。もともとは『凍上』と言う現象を防ぐためのものである。土が凍って家が持ち上げられないようにするのが目的であった。しかし、地下を機械室にして残りのスペースを子供部屋や娯楽室にしている例が多い。そこにレイアウトを作る人が多いわけだ。

 日本ではまず聞かないことだが、大陸では岩盤が固いので、地下に閉じ込められているラドンという気体が湧き出して来ることがある。ラドンは放射性の不活性元素で、地下のラジウムがα壊変してヘリウムとラドンになる。ヘリウムは分子が小さいのでさっさと逃げ出し、ラドンは残る。これがわき出してくるのだ。これを吸い込むと被爆する。日本は地盤が軟らかいので、脱け出したあとだから安心だ。

 余談だがこのヘリウムが抜けずに溜まっているところがある。そこを堀り抜けば、天然ガスに7%も含まれているヘリウムが取り出せる。それはオクラホマ州にある。そこでは、『世界一軽い貨物列車』が走っている。ヘリウム・タンカーだ。

 ちょうど我々がアメリカにいた頃、ラドンの湧出による被爆で肺ガンが急増したというニュースが流れた。借りていた我が家もラドン検出フィルムを買って一週間地下に置き、現像所に送った。結果は「痕跡なし」だったが、場合によっては「直ちに退去すべし」というのもあるだろう。

 日本ではラドン温泉というわけの分からないものもあるが、彼らは極端にラドンを忌避する。ちょうどその頃、ナショナル・ジオグラフィックという雑誌に、『日本人は放射性物質が好き』という記事が載った。友達がそれを見せに来て、冷やかした。
 
 その記事にはラドン温泉に浸かって嬉しそうな表情の老人が写っていた。これは国辱ものだ。そろそろこんな馬鹿なことはやめてもらいたい。ほとんど人間に害がない程度のものしか出ていないのだから、ラドンを標榜することはおかしなことだ。


2006年12月14日

地下室

 アメリカではレイアウトを数多く訪ねた。経済的に余裕のある人は庭に平屋の別棟を立て、そこで楽しんでいる。

住宅内にあるものは、大抵地下室にある。そうでないものは屋根裏にある。屋根裏といっても、仕上げてない居室という感じである。車庫の屋根を持ち上げて二階を作り,そこに作る場合もある。

 親しかった友人のBobは腕のよいタイル職人で、小さなといっても15畳くらいの屋根裏レイアウトを持っていた。このレイアウトの保線作業にはよく付き合った。季節の変わり目には電話が掛かってきて、手伝ってくれないかと言って来る。レイルの伸縮で不都合が起きるからだ。こんな保線はサーキット・テスタを使って二人一組でやればすぐ終わる。
 
 彼は住宅地に住むのがいやで、峠の高いところに住んでいた。峠といっても大陸分水嶺に近く、標高が2200mくらいはあるところだ。冬はマイナス50度になる。夏はやはり35度くらいにはなる。寒暖の差が80度を越すといろいろな点で不都合が起こる。

 厳寒期に遊びに行った。雪もマイナス30度以下では砂利と同様になり、全く滑らない。普通タイヤでも坂を登って行ける。帰りは遅くなるので、冷え込む夜半にもエンジンが掛かるかと心配したら、「なーに、このヒーターをつければ大丈夫だ。」と貸してくれたのは電灯線で働くオイルヒータとバッテリ・ヒータだった。エンジンのオイルパンの下に磁石で貼りつけるのだ。バッテリには小さい電気毛布みたいなものをクリップで巻きつける。確かによく効いた。こういう商品は日本では見ない。

 一番困るのは潤滑油である。そのレイアウトは居室ではないので、断熱はしてあるのだが暖房を切ると十数時間後には外気と同温になってしまう。グリースは石のように硬くなり、用を為さない。液体であるはずの油もシャーベット状になっている。Mobil1を使うべきだ。事前に部屋を2時間ほど暖めておかねばならない。すると、ブラスモデルはチリチリと音を立てる。伸縮により、ハンダ付けがはがれる音だ。韓国製のハンダ付けが怪しい車両は壊れていく。走らせて見ると突然大きな部品が落下することがある。どうするのかと思ったら、エポキシ・セメントでつけると言う。これが一番確実だそうだ。

2006年12月13日

続 正直Jackのこと

この件がきっかけとなって、Jackの店は大はやりだ。一応通信販売もやっているようだが、在庫の回転がすさまじく速いので、なかなか、「これ!」というものを押さえるのは難しい。

 電話するなりして、次のコンヴェンションの場所を聞き、その場で買わないと難しい。
 掘り出し物が多いので彼の店はいつも人が一杯である。最近は店員も多くなり並ばなくても買える。価格が適切なので素人でも安心して買えるというのが「ウリ」であろう。
 以前は車両のみであったが最近はレイル、しかも引き剥がしてきましたというのがありありと見えるものがかなりある。恐らくレイアウトを解体したのだろう。
  
 筆者が必ずコンヴェンションに年一回は出かけるのは、このようなブローカとの出会いを楽しむためだ。顔ができれば、指値をして頼んでおいて、送ってもらうこともできるようになる。彼らのなかには、たまに腹黒い奴もいるが、そういうのは直ちに淘汰されていく。 

 アメリカの新聞を見ていると、[鉄道模型レイアウト付きの地下室あり]という不動産屋の広告もたまに見る。 

 いつぞや我が家にやってきたアメリカ人は、「レイアウト付だからこの家は高く売れるぞ」と私にささやくのである。私はぎょっとして、「日本では売れないよ」と言うと、彼は「宣伝の仕方さ。」と言うのだ。
 そういう点でも日本の模型界でリセール・ヴァリュについての認識が深まらなかったのは残念なことであったと思う。

 趣味も経済活動の一つであるからには、何でも売ります、買いますというのがあってしかるべきである。先日の01175氏のコメントにもあったように、雑誌社の努力が足らなかったのは間違いがない。



2006年12月12日

正直Jackのこと

 日本ではブローカという言葉の響きははあまり良いものではない。安く買い叩いて高く売る人というように思われているのではないだろうか。
 アメリカではブローカとして名を成している人は、膨大な知識を持ち、良識があって正直な人ということになっているように感じる。日本では仕入れの10倍で売る人もいるようだが、アメリカでそんなことをしたらたちまち商売が成り立たなくなってしまうでだろう。

 アメリカでのブローカの適正利潤は2割と言われている。そんな中で「15%しか上乗せしません。」と言い始めた業者Jackがいた。Jackはその少ない利潤で経費をまかない食べていかなければならないのだから、その目利きはたいしたものだ。
 だんだん評判を高め、いろんな人が彼に査定してもらいたいと依頼するようになり、売上高も大きくなり始めた。コンヴェンションでの彼のブースは徐々に大きくなり商売は順調になりつつあった。
 そこである"事件”が起こった。

 ある未亡人にところに呼ばれたJackは、彼女の夫のコレクションの査定を頼まれ、相当の金額で買い受けることになった。支払いが済み、コレクションはJackの事務所に運ばれた。
 商品の点検をしていたJackはある貨車の中に数十枚の百ドル紙幣を見つけた。それは、亭主のへそくりだった。
 次の日、Jackは車で5時間もかけてその未亡人の家に行き、「貨車は確かに買ったが、その積荷は買わなかった。」と言ってその現金を返したそうだ。
 未亡人は感激して、その日のうちに亡夫の友人たちの所に電話し、その噂は1週間でアメリカ中に広まったと言う。
 
 それ以来、"Honest Jack"として有名になった。Jackに会うことがあったので、その話を切り出すと、照れ臭そうにしていた。ウソではなさそうである。

 中古市場が大きくなるとブローカ同士の競争が起こり、必然的に淘汰も起こることであろう。日本ではまだまだとてもその域には達することが出来ない。地震で亡くなった友人のコレクションを安く買い叩いている業者もいるようで、奥様が不憫でならない。
 その中にはJackから買ったものも含まれているのだから。


2006年12月11日

コレクションの行方

Gary Herberger 縁起でもない話で申し訳ないが、お付き合い願いたい。

 近年友達を亡くした。そのGaryとは長い付き合いだったが、メラノーマ(視神経のガン)であっという間に逝ってしまった。ちょうど訪米の予定があり、一週間後に彼の家を訪問しようとしていたとき、病院に行くと連絡が入った。彼の妻Deniseは、「Garyは私の腕の中で死んだ。一人で死んだのではない。」とメールしてきて、それを読んだ私の家族は皆泣いた。
 それから一度弔問したが彼のコレクションについては忘れていた。彼の娘達には男の子がいたので、その子が趣味を継ぐのだろうと思っていた。

 その後e-bayで何となく気になる機関車2台があり、適当な値段をつけておいたところ、なんと意外な安値で、二つとも勝ってしまい、送金の通知を送った。
 たったの2人しか入札者がいないという不思議な状況で、相場の7割にも達しない価格であった。
 すると、よく知っている友人がその売り手で、返事には「あれは亡くなったGaryのコレクションだよ。オレが仲介を買って出た。」とあった。
 「それならもっと高くても買っていたのに。」と書くと、「Garyがお前のところに行かせたかったのだ。彼の意思が働いたのさ。ありがたく買い受けておけ。」と返事を寄越した。早速Deniseにメールすると、「あなたが買ってくれて嬉しい。私がそちらに行けば、また会えることになる。」と書いてきた。

 さて本題に入る。あなたの死後、あなたのコレクションはどうなるのか。ちゃんと趣味を受け継いでくれる方がいらっしゃればよいのだが、そうでなければクズ屋に二束三文で、ということにもなりかねない。

 アメリカのコンヴェンションに行くと、奥様方が甲斐甲斐しく受付その他の運営を手伝っている。日本ではあまり考えられない。
 中古の市場も成熟し、有能なブローカもたくさんいる。奥様達もここで売ればいくらになるということを知って、亭主の道楽を大目に見ているのかも知れない。
 あるときかなりの年配夫婦がかなり手の込んだ細工を施したBig Boyを自分のブースで3000ドルで売り、「35年前に500ドルで買って、35年遊んで3000ドルになれば安い趣味だよ」と喜んでいた。
「どんな収集品も持って死ぬことは出来ない。」これは確かである。

 我々の死後、友人が公正な方法で適正価格で処分するというのはなかなか難しいが、e-Bayを使うというのには驚くともに、そのしがらみのなさを活用する思い切りのよさには感心した。
 というのは以前ある方のコレクションを処分するのに、仕切った人の意向で妙なしこりが残り、気分が悪かったという話を聞いたことがあるからだ。 
  
 欧米のコレクションでは、オーナの存命中に管財人の弁護士を選任してあるのが普通だそうで、日本でも近々そのような時代が来るのかもしれない。我々のコレクションはとてもそんな大それたものではないが、適正価格で処分できればそれに越したことはない。
 そういう意味でのリセール・ヴァリュ評価システムをある程度確立させておくべきではないかと考えている。ブラウン・ブックに相当する各ゲージ別のものがあってもよいのではないか。

 いや、ちゃんとした後継者の育成が一番大切かも知れない。それともBig Boyの老夫婦のように、ある程度のところで見切りをつけて全部売ってしまうというのも手なのだろうか。

 日本の場合、コレクションの評価(リセール・ヴァリュ)ということにTMSのヤマ氏が否定的だったので、この模型趣味の社会的評価が高くなり損ねたという気がしてならない。趣味も経済と連動しているはずなのだから。


2006年12月10日

金曜日の夜

金曜日の夜 中学生の時、英語の教科書に「ウィークエンドは金曜の夕方から始まる。」と書いてあって、土曜のミスプリントではないかと思ったことがある。教師に聞いても、「そうだよな。」としか言わなかった。
 
 当時は週休二日などありえないことであったので、ほとんど誰もその違いについて分かる人がいなかったのである。

 その後、アメリカで暮らした時に、上記の表現はあまり正しくはないことが分かった。正確には「金曜日の昼から始まる」である。昼休みになると、皆うきうきとして、週末の予定を話す。早退するものもいる。
 

 アメリカのUP沿線の田舎町に住んでいたことがある。生活レベルは中の下くらいだろうか。
 物価が安いのでまずまずの暮らしであった。模型屋の店先で知り合った仲間に誘われ、HOレイアウト所有の家庭を訪問した。彼は鉄道員で小さな家に住んでいた。地下のユーティリティ(ボイラ、洗濯機などのある機械室)に狭い階段を通って入った。洗濯機などのすき間を有効利用した6畳程度の大きさのレイアウトであった。決して立派なものではなかったが、あちこちに工夫がちりばめられ面白い走行が楽しめるものであった。乾燥機の脇には小さな椅子が5個ありそこで交わされる会話は本当に楽しいものであった。毎月第三金曜日の夜はそこで集まり夜中の2時まで楽しんだ。気がついたら外は大吹雪で、車が埋もれてしまい、友人のジープで家に送ってもらったこともある。

 ここまで読めば、「なんだ、やっぱりレイアウトがないと面白くないのか」という感じを持たれるかも知れない。

 実は毎月そこで行われていることは、技能の交換なのである。旋盤を持っている人は誰かの仕事を引き受け、ロウ付けの腕がある配管工はそれを引き受ける。塗装の得意な人は…というわけで、集まるとそのやりとりが始まる。面白いのは仕事に対して対価があるが、それは$10とか$20という少額の現金である。しかしやりとりが終わると全員がほとんど±ゼロで帰っていくのだ。私は何もできることがなかったので日本からいくつか商品を取り寄せてさしあげた。
 この現金を介在させる方法はあとくされがなく、今思い出してもほほえましい光景である。

 アメリカでレイアウトを持っている人は確かに日本のそれより多いが、ほとんどが持っている、というのはとんでもない勘違いである。鉄道模型は作る楽しみ、集める楽しみ、走らせる楽しみ…がある。いくらでもやり方があるのだ。あの集まりの面々でレイアウトを持っていたのは一人だけだった。他のメンバーの家にも行ったことがあったが、戸棚一つと工作机だけという人も何人かいた。しかもその集まりには、ポテトチップスかコーラを1本持っていくだけである。それで一月楽しく過ごせるのだから本当に安いものだ。
 
 あの集まりがレイアウト無しで行われたとしてもそれはまた楽しいものだ。たまにはそういうこともあった。写真や本を持って集まり知識の交換会となる。大人の趣味とはこういうものではないだろうか。

 日本の趣味界で最も欠けているのは、ここで紹介したような助け合いの気持ちであろう。地域の仲間が特技を生かして助け合えば、実に楽しい交流が生まれる。そこに小額の現金を介在させることにより、貸し借りがなくなり、実にすっきりしたお付き合いができる。このようなシステムが機能すると面白いと思う。

2006年12月09日

続 ショックアブソーバ付き車輌

hydra-cushon ショックアブソーバ付き車輌は、1970年代から使用され始めた。当初は珍しく、その動きを見るのが楽しみであったが急速に普及して、そうでない車両の方が珍しくなった。

 貨車の見分け方としては、屋根上のランボードがなくなったことが一番外見上の違いとして大きい。大きな文字で"LD"と書いてある。これはLess Damage(損傷が少ない)という意味である。

less-damage ストロークは24インチ(610ミリ)もあるものがある。18インチとか12インチもある。写真に示すものは24インチタイプのものである。

 ブレーキホースがUの字に撓んで、伸縮できるようになっているのがお分かり戴けよう。開放テコが伸縮に耐えるようにひねれる構造になっている。

 ガチャンとぶつかって押し込まれると、プシュと音がして縮む。そのあとスプリングで戻るのだが、そのときの音が面白い。実物の中にはプーッという音がするものがある。オイルダンパーのオリフィス(細穴)を油が通過するときの音だろう。

 この模型の作動音もややそれに近い。押し込み時はシュッという。伸びるときはクー、クックックという。元に戻るまでの時間は約2秒である。

 4,5年前、静岡のグランシップでデモ運転をしたとき、長大編成を、という要請があった。貨車を大量に持っていってつないだが、このショックアブソーバ付き車両を何台か途中に入れた。お陰で全く事故もなく、128両を牽いて皆さん大満足であった。しかし、どなたもこの車両のことに気が付かれなかったのは残念であった。

 この車両無しでは、ちょっとした速度変化でもドン突きが起こり、沢山の車両が脱線する。連結器はKadeeなら安心であるが、他のメーカの製品は信用できない。クリープ割れ(プラスチックにシャフトを押し込んで留めた場合、時間の経過とともにクラックが入る)が起こりナックルが落ちることが多い。

 余談であるが、テハチャピのループ線に行くと、ナックルがちぎれたのがよく落ちている。

2006年12月08日

ショック・アブソーバ付き車輌

shock absorber equipped reefer 長い貨物列車が走り出すとき、連結器遊間が、ガチャガチャ、ガチャーンと連続的に音を立てるのを聞くのは、少年時代からの楽しみの一つである。

 80両もあると、連結器が本当に伸びるのが分かる。この伸びというのは、スプリングが伸びるのを指しているのではない。『ナックルの材料が撓む量を158倍すれば目に見える』ことを指している。列車の最後尾を手で引くと、そのたわみが実感できるのだ。約3mm程度伸びる。

 逆に、減速時は連結器の遊間が縮むのでガチャガチャと音を立てる。実に楽しい音で、それを聞きたさに運転するといっても過言ではない。加速に比べて減速は加速度が大きくなりやすい。運転上の問題で急停止することがあるからである。そんな時、長い編成の後ろの方から大きな力で押されることになる。カーヴに差し掛かっていると、数台の貨車が押し出されることがある。

 貨車の数が増えてきたとき、ショック・アブソーバつきの車両を作るべきだと気が付いた。ストロークを大きくして、エネルギを吸収すれば事故は減らせるはずであると確信した。

 いろいろな工夫の後、ブラスの角パイプに密着して滑り込む、もう一つの角パイプをピストンにした「エア・ダンパ」を設計した。押し込むときの空気の逃げ場所は細い穴とし、それを薄いリン青銅板で押さえて、リード・バルブとした。戻るときに吸い込む空気は、角パイプの隙間からの吸気である。この構造は、学生時代に乗っていたスズキのバイクのダンパを参考にした。角パイプにしたのは回転させないためである。

 5つほど作って、調子の良い物を選んで、残りは捨てた。エア・ダンパはオイル・ダンパーに比べ、メンテナンスが楽である。油が漏れることもない。今はR/C用のオイル・ダンパが安く手に入る時代である。多分信頼性も高いだろう。

 貨物列車の中に20両に1台くらいの割合で紛れ込ませておくと、よほどのことがない限り脱線はしなくなった。
 もちろん機関車が押して動くギヤを採用しているから、停電時に機関車がつんのめることがないというのも大きなファクタである。

2006年12月07日

三軸台車の伝導方式

7580e8cc.jpg 昨日の機関車の三軸台車は当然全軸駆動である。凹凸のある線路に完全に追従させるためには、三軸が自由に動かねばならない。このような場合の伝導方法は藤井直氏がTMS誌に20年以上前に発表されている。確かEF62の記事であった。筆者は撓み継手を採用している。

写真は古い1985年製の韓国製台車に取り付けたものでボルスタの剛性が足らない。荷重をかけると、ハの字に開いてしまうお粗末なものである。いずれ作り直す予定である。先方に問題点は指摘した覚えがある。現在の製品は直っているだろうか。

 この手の台車の伝導方式は、合理性に欠ける方式が多数発表されている。藤井氏の方式が唯一合理的である。ただ、それは自在継手が一つなので、厳密に言えば角速度は多少変化する。もちろん、これは全く無視できる範囲にあるから問題にはならない。

 最近、撓み継手が非常に手に入り易くなった。写真に示したものは1つ200円台で買える樹脂製のものである。しなやかでねじり剛性は大きく、剪断力に耐える。すなわち、これがトルクアームの代わりをしている。

 今までいろいろな方法で3軸目のギヤボックスを浮動させ、回転だけ伝える工夫をしてきたが、この方法をとるようになってから、極端に楽になった。

 同じ撓み継手といえども、大昔のスプリング・ジョイントとは全く異なる使い心地である。

 DDA40Xのような4軸台車の場合はこれを二つ使えばよい。もちろん中の2軸は共通の駆動軸を使用する。

 極めて静かな高効率の駆動方式である。ゴムチューブは内部損失が大きく、駆動部品としては適さない。またゴムでは剪断力に耐えないのは当然である。

2006年12月06日

慣性を大きくする

Flywheel equipped Diesel Engine 本物の慣性は大きい。山手線など駅を出たら次の駅まで慣性だけで走っていく。運転士は「動かしているのか止めているのか判らない。」とまで言う。

 模型は質量が小さいと同時に速度が小さい(これは二乗で効く)ので、慣性はほとんどない。内部に隠したはずみ車を高速で回すしか、見かけ上の慣性を稼ぐ方法はない。チェーン・ドライブを作る時、はずみ車を作り、ボールベアリングで支えた。もちろんスラスト・ベアリングも組み込んで、衝突に耐えるようにした。

 多少増速して、モータの回転以上で回るようにした。この効果は大きく、巡航速度に達すれば、電流を切ってからエンドレスを周回するほどである。

 あまり速く廻すと、ジャイロの効果でカーブを廻り損ねる可能性すらある。DCCによる起動時のモメンタム(擬似慣性効果)とは全く違う、本当に質量があるかの様な走りをする。

 この機関車(Aと呼ぶ)と、普通のはずみ車のない機関車(Bと呼ぶ)を重連で貨車なしで走らせていた時、非常に面白い現象に気がついた。

 Aを休ませておいてBだけで駆動すると、たった2両しかないこの重連が、極端な重さを感じさせるのである。しかし動き始めたら止まらない。発電ブレーキで止めなければならない。これは何かに使えないだろうか……。

 子供の頃、機関区で仕業につく蒸気機関車が単機で走っていくのを見ていた。その時、スロットルを開くと、動輪がシュルシュルとスリップする。止まる時もかなり荒っぽく止まるので、動輪がロックした状態で数メートル滑っていく。たまに逆転して止まるのもいた。これが再現できるはずである。普通の模型ではそれは絶対に再現できない。サウンドと組み合わせるとそれは絶大な面白さを演出する。 

 今作っているチャレンジャの1両は、テンダにこのはずみ車を入れる予定である。センティピード・テンダなら、見かけを損なわずに簡単にできる。増速を強めに掛けておくとどうなるか。単機で走り出してもスリップするはずである。本物のように。止まる時は逆転を掛けて止まるということもできそうな気がする。おそらくテンダは巨大なはずみ車を収容して、機関車より重くなるだろう。軸受けの摩擦が少ないので、凄まじく大きな慣性を生み出すはずである。

2006年12月05日

続 プラグマティズム

 筆者は幼少の頃より鉄道模型に親しみ、楽しんできた。学校で習ったことは全て応用してみた。

 高校の物理の教科書に書いてあることはほとんど全部やってみたと思う。それ以降は、あまり関係のない方面に進んでしまったので、工学はほとんど独学である。

 模型雑誌を見ると、あまりにも非常識なことがたくさん書いてあるので読む気がしなくなった。そのような誤りは、ほとんどが思い込みからきている。あるいは他人からの吹き込みである。

 筆者は、現在、客観性が必要な仕事をしている。いかなることも、原理原則から導き出さねばならず、本に書いてあることを全て疑ってかかるのが性になっている。

 模型雑誌の責任は重大である。年寄りはともかく、若年層に対して正しい知識を与えねばならない。編集者は博識でなければならない。もし、知識がなければ、正しい知識がどこに行けば得られるのかを知っていなければならない。

 この点、日本の模型雑誌には合格点はつけられない。

 さて、アメリカとドイツの話をしよう。彼の国で進歩した鉄道模型を分解して驚くのは、機械工学の常識がちりばめられている事である。軸受、歯車、モータいずれも文句の付けようのない組み合わせである。ライオネルの歯車は3条ウォームで(押して動かす目的ではなさそうだ)、ウォームには硬い材料が使ってある。メルクリンのスパー歯車は、『互いに素』である。軸受けは摩擦軸受けだが、軸は細く、円周速度を小さくして損失を抑えている。接点は硬質ニッケルめっきが施され、耐久性に富む。

 当たり前のことばかりであるが、この中で日本の有名模型店製の車輌中、実現されているものがどれくらいあるだろう。

 これは社会の成熟度だけでは説明できないと思う。より優れた模型を作ろう。そのためには何をせねばならないかということを考えねばならない。

 どうしても、外観重視になるようだ。模型雑誌を見ると、ディーテイルをこうつけましたという記事が大半だ。走らせるということを忘れている。そんな模型にはモータとギヤは必要なかろう。

 鉄道の魅力はどこにあるのだろうか。筆者が気に入っている表現を掲げさせていただく。
 「鉄道の社会的背景を取り去り、情緒を抜いて全てを裸にすれば、それはメカニズムの美しさである。」

2006年12月04日

プラグマティズム

11月19日のワークスKさんのコメントには考えさせられた。再録させて戴く。

>私も実は機械屋のなれの果てでして、歯数を互いに割り切れない数にすることは、学校で確かに習いました。韓国でも中国でも、それは絶対に常識のはずです。
>ただし、歯車にはモジュールとかピッチとか、門外漢に判りにくい概念がありますから、それを知らない人なら、どうしても要求される歯車比や軸間距離から既成の歯数を使ってしまうという様なことがありそうです。
>昔の我が国を含め、問題は、機械工学を修めた者が、模型製造に関わらなかったところにあるのではないかと思います。社会の成熟度合いの関係ではないでしょうか。

 社会の成熟度合いだけではなさそうだ。これはこの国の教育のせいであると思う。
 明治以来、日本は努力によって身を立てることが美徳とされた。江戸時代までの身分制度から解き放たれ、自己の才覚で生きていくことが求められるようになった。すると学業が能力の目安として用いられるようになり、学業が優秀であると生涯安泰な仕事に就けることになっていった。企業も然り、軍隊も然りである。

 富国強兵の時代はそれでもよかった。戦後の日本では、経済の発展とともに進学競争が盛んになり、学校の勉強は試験に通るためのものに変化していった。

 本日の表題のプラグマティズムとは、簡単に言えば「勉強は役に立つ」という哲学である。そもそも勉強とはそういうものではなかったか。
 日本も貧しかった頃は、勉強して知識が増えればそれだけで確実に生活レベルが向上した。今でも低開発国ではまさにその実践を見ることができる。

 「理科を勉強すれば気候の変化には理屈があることが分かる。太陽の軌道の変化が分かれば、夏涼しく、冬暖かい家はどうしたら実現できるか考えることができる。」

 実は上の2行は、昭和23年の中学校の理科の教科書からの抜き書きである。占領下の日本ではこのような教育が行われていたのである。ところが時は過ぎ、戦後20年も経つと、生活が豊かになると勉強は形骸化した。テストのための勉強の時代が始まった。

 「いくら知識を持っていても、それを使えなければそれを知らないのと同じである。」アメリカの哲学者デューイはプラグマティズムをこのように説明した。

 筆者宅に来られた技術者(高学歴で大企業にお勤めの方)が機関車を持参された。拝見したが、どう見ても何の工夫もなく、できのよい中学生の工作にしか見えなかった。そしてレイルに乗せて電圧を掛けると、「あっ、動いた。」と叫んだのである。ジコジコと走って止まった。喜色満面である。車輪が少し偏心しているらしく妙な揺れ方をしていた。

 この方はいったい何をされている方なのであろうか。有名大学の工学部を出られてどんな仕事をされてきたのであろうか。学校で学んだことが、その模型のどこに生かされているのであろうか。模型はこんなものだという気持ちがあるとすればあまりにも寂しい。

 好きな機関車がジコジコと首を振りながら走っても何も感じないのであろうか。問い詰めたくなる気持ちを抑えながら、筆者の車両を動かして見せた。「凄いですね。たくさん牽いて走りますね。」とはおっしゃるものの、何が違うのかという質問はなかった。「動いた。」と言ったのは、動くかどうかもわからなかったのではないか。この方はしばらく前に亡くなられた。

 まさにプラグマティズムの欠如である。 

2006年12月03日

続 関節式機関車の駆動

Jabelman Challenger ディファレンシャル・ギア(差動歯車)の話を続けたい。自動車の左右車輪の回転の和が動力から伝わるようになっている。片方がぬかるみでスリップすると、反対側の車輪の駆動力は殆どなくなる。

 関節式蒸気機関車ではボイラーからの蒸気はレギュレータを通り、前後のエンジンに分配される。片方のエンジンがスリップして蒸気の消費量が多くなると、レギュレータで絞られているのでもう片方への蒸気供給圧力は格段に減る。というわけで、実物の引き出し時のスリップは重い列車を牽き出せないことに結びつく。

 差動歯車の作動は、まさにこの関節式機関車の前後のエンジンへの蒸気分配状況を再現するのに最適なはずであった。

 R/C用の差動歯車を買って、ボイラーの底を切り裂き、無理やり載せた。成功ではあったが、ボイラーの底をかなり切ったので横から見ると透けて見えて不細工であった。仕方が無いので、ボイラーの下半分を作ってフレーム側に付け、透けて見えないようにした。当時のR/C用差動装置は金属製で、スリップ時にガラガラと音が出る代物で気分を害したのは事実である。

 メカニカルな方法は制作意欲をかき立てるが、電気式解決法にはいろんな点で負けてしまう。やはりDCCが一番のようだ。

 永末さんの DE5 8Fx DUAL DC DECODERは、出力を前後で変える事が出来、しかも完全無音で、ブラスの機関車のビビリ音は完全に解消している。このデコーダはBEMF(逆起電力)検出によるフィードバックはついていない。なぜかというと、効率がよいメカニズムなのでどの回転域でも滑らかに回り、あえて定速にする必要がないからである。BEMFは低速で躓く可能性のある機関車には有効であろう。
 

2006年12月02日

関節式機関車の駆動

early Challenger mechamism 古いチャレンジャを廉価で3台入手した。e-bayのおかげである。動力機構は、例によって二つのギヤボックスをゴム・チューブで繋いだ野蛮な構造で2条ウォームを用いてボールベアリングで支えてあった。しかし、駆動軸を支える軸受けもあり、トルクチューブのチューブのない構造であった。
 なぜ3台かというと、どうせ作るなら1台も3台もさほど手間は変わらないからである。考えている時間の方がよほど長いからだ。部品を外注するのにも数が多いほど安くつくことになる。昨日のトルクチューブの写真はそれである。

 実は完成させたものを、もう2台持っている。これはアメリカにいたとき買ったもので、友人が手放したものである。これらの伝導方式はベベルギヤでボイラの中央に巨大な穴をあけてモータを収めてある。もちろん、モータの下側にはその切り欠きをふさぐボイラーの一部が用意されているので、穴は全く見えなくなる。以上の話は前部エンジンの駆動の話で、後部エンジンは通常どおり、火室にモータを入れている。
写真はそのうちの一台で前期型である。今、一部手直し中でデコーダも外してある。

 二個モータにすると重負荷時の起動で、本物のように、片方だけスリップするようになる。現役時の映画を見ていると前部エンジンだけが、するするとスリップする。機関士がスロットルを少し閉めると再粘着して走り出す場面がある。これを何度も見た。どうしてもやりたかった。

 故井上豊氏が、生前「俺がやり残したこと」として、単式関節機(simple expansion articulated steam engine)の前後エンジンを自動車用の差動装置で結ぶ方式について、いろいろな案を示された。「君がやれ。」と言われたのでR/C用の差動装置を買ってきて試してみたが、その差動装置が優秀でなく、ガラガラと音を立てたので、諦めた。

 二個モータにすると簡単であったが、なかなか思うようにスリップしてくれない。そんな時、永末さんとお知り合いになれた。筆者のレイアウトでチャレンジャの走行を見て、「これはいけますよ。」と専用DCCデコーダを作ってくださった。簡単そうに思えたが、何度も試作を重ねて、実証試験を数十時間行った。途中で煙を吹いたりする事故もあったが、すばらしいデコーダが完成した。

 要するに、2台のデコーダが同時にコントロールされるが、起動時、前部エンジンへの供給電力をあらかじめわずかに増やしておくのである。スリップしたら、スロットルをわずかに戻すと前後が同一出力になる。極めて自然な起動状況で、説明しなければ誰もその仕組みについて疑問を持たないほどの出来である。大型のHOテンダの中になら、入る大きさである。

2006年12月01日

トルクアーム

torque arm トルクアームはギヤボックスの倒れ止めに過ぎない。簡単な工夫で、軸箱の上下動を保ちつつ反作用を受け持つ。

 このような工夫さえない機関車が多く存在するというのは、この国の理科教育がいかに無力かを知らせているようだ。

 ゴムチューブでつないだものをよく見るが、軸箱の上下動を妨げている。前後進で調子が変わって当たり前である。

 ずいぶん昔の話になるが、故酒井喜房氏がUnitedの設計をされていた頃である。「前進と後進で調子が違う。バックのほうが調子がよいのは駄目だ。」とインポーターのPFMに言われたそうだ。「仕方がないから、ウォームを逆のねじれにしたところ、前進の調子が良くなった。」と嬉しそうに話された。それを聞いて、「トルクアームをつければいいのですよ」と言うと、「あっ、そうか。」と妙に納得されたようだった。その後改良されたかどうかは確認していない。

 ギヤボックスをなぜ必要とするかというのはギヤの分離力(反発力)に耐えて軸距離を保ち、スラストを閉じ込め、外部にはトルクのみが現れるようにするためである。要するに、モータとはトルク以外何の関係もない状態にせねばならない。モータとの継ぎ手はオルダム継手ユニヴァーサル・ジョイントのようなルースな継ぎ手が望ましい。オルダム継手はここに動画がある。 

 モータ軸に直接ウォームをつける方法は、相変わらずよく見るが、どんな理論武装をしてみても褒められる話ではない。モータというものは、モータ軸にスラストを継続的に掛けてもよいようには設計されていないからである。

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