2006年11月

2006年11月30日

トルクチューブ

Torque Tube  トルクチューブの説明をしておきたい 。

 筆者は自動車の構造にも興味がある。もちろん、動力で動くものはみな好きだが…。
小学生の頃、乗用車のスプリングは「リーフ・スプリング」であった。急加速するとばねが妙な形にねじれるのを知った。作用・反作用の原理で説明できた。ばねの隙間の摩擦が振動を吸収することもよくわかった。

 そのうちに「コイルスプリング + ショックアブソーバ + リンク」の時代が来て、リンクが反作用を受け持つのを知った。ショックアブソーバがないといつまでも車体のゆれが止まらないことも理解した。

 鉄道模型を、固定軸の「EB電関」というおもちゃで始めたころはわからなかったが、動輪がスプリングで可動するタイプの機関車を見て、これはインチキだと思った。というのは、反作用でギヤボックスが倒れてくるのを支えるものが何もない。怪しげなゴムのチューブでつながっていて、反作用があればそれがたわむ方向または伸びる方向に作用した。しかし、ゴムチューブは硬いらしくびくともしない。ということは、ギヤボックスの自由な運動を妨げている。TMSを読んでもほとんどそれに関する記述を見たことがない。

 しばらくしていすゞのジェミニという車が発売された。その動力伝達機構は、それまでのタイプとやや違っていた。反作用を受け持たせるリンクがなく、単純な構造であった。これでは走らないはずだと、よく調べたら、ドライヴ・シャフトが、やや太目のパイプの中を通っている。そのパイプの一端が車体に取り付けられている。これを「トルクチューブ」と呼んだ。当然、推進軸の反作用もそれで受けている。当時、いすゞはGMと技術提携していた。GMの車にはこれを採用したものが多い。ポルシェも採用している。

 うまい工夫である。これを採用しようと思った。現在、祖父江氏の工房で動力機構を改装するとほとんどこのタイプが採用されてくるはずだ。

2006年11月29日

ウォームギヤとスパーギヤ

90-degree drive 筆者がなぜここまでウォームギヤにこだわるのか。他のギヤで「押して動く」のでは満足できないのか。

 Model Railroaderへの投稿原稿にも書いたが、最大の利点は食い違い直角伝導であるということだ。ギヤボックスの設計、製作が容易で、小さくできる。

parallel drive スパーギヤでは歯車は大きく、モータは吊り掛け方式にならざるを得ない。佐藤昌武氏の名作C53はスパーギヤが動輪の内側に密着して取り付けられている。ギヤボックスはとても作りにくい。油の飛散を防ぐのは困難だ。また、たとえイコライズしても、軸重の均等化は無理である。モータもあまり大きいのは使えない。一段ではギヤ比が足らないので2段以上にせねばならない。

 電気機関車のような各軸モータであっても、イコライズの問題以外、それは同じことだ。筆者は油が飛散するような車輌が自分のレイアウトに進入するのを極端に嫌う。レイルが汚れて集電が悪くなるからだ。

 ベベルギヤはギヤボックスの設計が難しい。製作はもっと難しい。目的に合う歯車を製作してくれる工場を探すのも難しい。また、機関車への納まりも、ウォームギヤほどうまくいかない。実は祖父江欣平氏が試作してくれたベベルギヤ・ドライブの機関車もあるが、横から透かして見たときのシルエットが良いとは言えない。

 おそらく、スパーギヤ、ベベルギヤの効率は90%近いだろう。二段なら80%だ。ウォームギヤが70%として損失はかなり違うが、その分大きなモータが楽に入るメリットがある。

最後に音の問題がある。ウォームほど静かなギヤはない。理論的にはバックラッシュをゼロにすることもできる。蒸気機関車がわずかでもジコジコとギヤの音をさせて走るのは興醒めだ。筆者はサウンド装置を搭載しているので、余計に音には敏感である。ディーゼルは多少の音があっても許される。

 ところで気になっていることがある。皆さんの模型のギヤボックスには、動輪の駆動に伴うトルクの反作用を受けるトルクアームまたはトルクチューブがついているだろうか。昔からTMSなどに発表される作品でこれがついているのをめったに見ることがない。怪しげなシリコン・ゴム・チューブで繋いでお仕舞いというのが多い様に思う。これでは前進・後退で調子が違うのも当たり前である。

2006年11月28日

アメリカでの再評価

clinic in San Jose 2006 昨年カリフォルニアで開かれたコンヴェンションに参加する通知を出したら、「3条ウォームギアによるFree Rolling Drive」について講演会をやらないかというお誘いを受けた。発表から20年で、そろそろノウハウを全部公開してもいいのではないか、という意味だろうと解釈した。二つ返事で承諾して、45分間の講演をすることになった。
 
 人数は多くはないだろうと思ったらしく、70人くらいの部屋があてがわれた。実際は立ち見が多くて、100人以上の参加者があった。主催者側はずいぶん驚いて、来年は大きな部屋を割り当てると言っていた。

 質問も多く活発な議論が交わされた。とても愉快な雰囲気で、冗談も通じ、何か懐かしい雰囲気であった。アメリカ人は相手が何人であろうと、何かのBreak-through(技術上の突破口を開くこと)を成し遂げた人には最大限の敬意を以って接する。

 2台の機関車が、同一のレイルの上で片方を押して発電し、もう片方が走る場面(動画)では、拍手もあった。「信じられない」という声も上がった。 

 韓国でアイデアを盗まれたというくだりでは、聴衆のなかから「韓国人は泥棒だ。」という声が上がったのにはちょっとびっくりした。「だから特許をとらなかった。」と言うと、「そうだ、とってもやられる。恥知らずだからな!」という叫び声さえ上がった。シリコンヴァリイという場所柄もあって、切実な話題であったのだろうと思われた。この『恥知らず』、英語では"shameless"という言葉は、かなりひどい侮蔑的表現である。


 講演終了後はいろんな人から声をかけられた。ギヤを売ってくれという人たちも何人かいた。「コアレスモータを使わなければ何の意味もない」と強調すると、「それならそのモータも一緒に売れ。」と言う。ボールベアリングを通して集電すると、ベアリングが壊れるという話をすると、すぐ納得したのは意外であった。集電ブラシが必要であることには、念を押した。

 残念ながら大半の人は昔ながらのジコジコ走る機関車が、レイルとの間でバチバチと火花を散らしながら走るのが普通で、ミリアンペア単位の電流しか流れない機関車は特殊な機関車だと思っている。大きなレイアウトで走らせると、その違いが顕著であるのに、カリフォルニアといえども、レイアウトはあまり大きなものはない。せいぜい20輌程度の貨物列車を牽くのが普通だ。貨車の車輪はプラスティックが多く、摩擦が大きい。これではあまり効果はなさそうだ。

 来年はRP25の話をすることが決まっている。

2006年11月27日

モータの能力を限界まで使う

出力策定 モータの特性図を描いて、この辺りなら大丈夫だろうと、見当だけで補重してしていた。その後、大事なモータを焼いたら大変だというのと、その持っている能力を、最大限に搾り取るにはどうしたらよいかということを考え始めた。

 保有する貨車が増えてきて、60両編成の貨物列車を牽くようになったからだ。1.75%の勾配を登らせると、時々スリップする。定電流装置のせいもあり、スリップすると止まらない。実物通りではあるが、運転は大変だった。

 父にモータが焼けるのはどんなときか聞いてみた。答えは単純で「放熱が悪くて、電流が大きい時」であった。「モータの製造元にThermal Resistance(熱抵抗)という項目があるか聞いてみよ。」というので問い合わせたところ、(3.5+8.0)[degree/W]という返事があった。父は「なかなかまともな会社のようだな。」と言った。3.5はロータ・ボディ間、8.0はボディ・外界間の値であった。後者はヒートシンクと冷却ファンをつければ小さくなるだろう。

 そんな時、吉岡精一氏がモータの性能を最大限取り出すには、という大変細かく検討されたレポートを軌動楽会に提出されていることが分かった。直接連絡をとり、ご指導いただいた。大体のところは既に考えてあったものと一致した。ただし、ロータの温度上昇による電気抵抗上昇の項が抜けているという指摘を戴いた。しかし、電流が減る方向に働くのでそれでよしとした。

 この辺りのことを纏めて、とれいん123号に発表した。合葉博治氏がまた電話をかけてきて、現物を見せてくれとおっしゃる。車輌と線路をお宅まで持っていって走らせた。その性能には驚嘆されたようだ。「今度、京王百貨店でこれをディスプレーするよう、案を作る。80両の貨物列車がジワリと動いて、惰力を効かせて止まる様子を見たら誰もがびっくりするよ。」

 この記事は合葉氏にはかなりの衝撃を与えたようだ。「模型界、最初にしておそらく最後の工学博士論文だ。」とまでおっしゃった。「あなたはいったいこのような知識をどこから得ているのか。」と何度も問われたが「門前の小僧です。」としか答えられなかった。高校の物理と何冊かの専門書以外、勉強した覚えはない。ただ、父にいろんな機会に話を聞いただけである。あとはひまな時に演繹の練習をしたぐらいのものだ。「社内の論文講読の材料に使える。」とまでおっしゃったのには参った。

 十数年後、関西合運でお会いした稲葉清高氏が「ああやって限界値を求めるとは初めて知りました。」とおっしゃった。多分稲葉氏がおつくりになっている民生機器では別の考えがあるのだと思うが、そこまでは明かされなかったが…。筆者の設計手法は兵器の設計思想に基づいている。父に聞いたことが元になっていることは事実だ。  

2006年11月26日

定電流制御装置

Fuel and Water-level simulator 効率が高いとどのような挙動を示すであろうか。これは高校生のとき友人と議論したことの延長にある。

電車通学だったので、毎日運転台の後ろにかじりついていた。起動電流は580Aで、減流継電器が働いている様子がよく分かった。加速が終われば電流がなくなる。減速は電気ブレーキで、停車すると床下の抵抗器から発する熱気が立ち昇った。冷房のない時代の、窓が開放されていた懐かしい思い出である。


 モータは電流で廻る。当たり前のことであるが、意外と抜け落ちていることである。電圧は分捲特性があるマグネット・モータだからこそ多少は意味があることであり、本来は電流制御でなければならないと考えていた。電流がトルクを決める。ここまでは高校生でも分かった。  
 
 1983年に定電流電源装置を作った。ゼロから任意に指定した電流値までは出る。電圧は24Vまで掛け放題という恐ろしい電源だ。これでFEF-2を制御すると、まるで本物の蒸気機関車を運転しているような錯覚に陥った。
 単機では消費電流が少ないのでうんと絞って起動させねばならない。勾配で長い列車を牽き出すときスリップする限界電流値で起動すると、本物が出発するようなスリップぎりぎりの加速をする。巡航運転に入ったら電流を絞るとその速度を保つ。急停車をさせるときは数十オームの抵抗器を用いて短絡する。するとグググッと減速する。同時に抵抗器が熱くなる。 

 これはちょうど弁装置をフルギヤにして起動し、巡航に近づくと絞るのに似ている。違うのは、ボイラの能力が実物と異なり、無限大であるということだけだ。
 これを定電圧電源と組み合わせると面白いことになると思った。電圧を制御することはスロットルを絞ることに対応する。

 二つを直列につなぎ、最初は電流を流し放題にしておいて、電圧を上げていく。ある程度の速度になったら電流を絞りながら電圧を上げる。このようにすると、あたかも自分が機関士になったような気がした。今ある「電車でGO」とは全く次元の異なる『実感』であった。

 これもミルウォーキイに持っていった。Model Railroaderの電子工作の記事を書いていたDon W.Hansen氏に見せた。運転させてみるとすごく感動していたが、この機関車を持っている人以外、誰もその意味を理解できないよ。」というので、「それでは10年後に発表しよう。」ということになった。
 
 そのとき蒸気機関車の運転台型のパワーパックのスケッチも持っていった。スロットルが上からぶら下がっていて、あまりにも大掛かりな雰囲気であった。その後、MR誌は、ウォーク・アラウンドの方に興味が向いてしまい、DCCの台頭で筆者自身の気持ちもやや離れてしまった。しかし、DCCでもう一度この形でできないか、と考えている。
 次に実現する時はボイラの容量、水位、テンダの水量もパラメータとして入れる。このアイデアはDonのものである。'85年5月号に発表されている。

2006年11月25日

機関車の効率

Motive Power Peerformance Review 模型機関車の効率はいったいどれくらいなのだろうか。どうすれば計れるのだろうか。高校生の頃は、それで頭がいっぱいであった。せっかく物理の時間に習った知識を使ってみなければと、実験装置を作ったが、ストップウォッチもなく、電流計がいいかげんなテスターであったので、あまりよい結果が出なかった。言える事は10%以下であったことだけだ。

 NMRAの会報中、一番興味があった記事は、Robert E.Higgins氏の連載記事で、"Motive Power Performance Review" 動力車実力測定報告とでも訳すのだろうか。ありとあらゆる機関車の性能分析が10年くらい続いた。

 起動電圧、最高速、牽引力、効率、騒音、スケール・スピードが測定され、簡単な感想とともに纏められていた。毎月その記事を真っ先に読んだ。

Efficiencyこれを見ると、模型機関車の効率は信じられないほど低い。せいぜい6%、たまに良いもので13%くらいのものである。ひどいものでは2%というのもあった。父に聞くところによると、本物のモータは適正な負荷時では効率は95%以上あるという。あとは怪しいギヤ・トレインのせいだろうか。

 
 良いモータ、優れたギヤさえあれば50%以上が出るはずである。何年待っても、そのような機関車は出現しなかった。そうなると作るしかないということだ。祖父江欣平氏との共同作業を経て、世界最高効率というお墨付きがアメリカの雑誌に載るほどの機関車が出現した。

 冒頭の図はHiggins氏の記事に使われていたイラストである。この装置は簡単に自作できる。ある一定距離を走る時間と電流・電圧、勾配だけで計算できる。

 押して動く機関車では、最初の出だしで機関車が勾配を滑り落ちてしまうので、保持の仕方にコツがある。
 
このFEF-2の効率は61%ほどだ。

 50%を超えると、もう別世界である。単三電池一本で起動してそろそろと走る。起動電流は40mA以下。80両牽いてスケール・スピードで70マイル/時で走る時でも電流は800mA以下だ。



2006年11月24日

フィリップス・ヘッド

phillips-head screws いわゆるプラスネジである。このネジ頭は適合するネジ回しには、くさび効果で食い込み、外れない。すなわち、自動のネジ締め機に適合する。1936年にアメリカで発明された。


 韓国ではMS Modelという会社にも出向いた。今もあるのかどうかは知らないが、OMIの下請けでAJINとは競合していた会社であった。社長のM.S.Park氏は若く、やる気がありそうな人であった。工場を見せてもらい、何かおかしなところはないかと聞かれた。おかしなところはかなりあったが、ネジ回しには参った。全く適合しないネジ廻しを使っているではないか。

 フィリップス・ヘッドのネジを締めるのに、細いマイナスネジのネジ回しで締めているのである。完成品を見ると、ネジ頭にはキズが付いていて、正しいフィリップス・ヘッドのネジ回しは、正確な位置まで差し込めそうもない。

 このように正しくない工具の使い方については、筆者の子供の頃、父には厳しく戒められた。ペンチで物を叩いたりすると叱られたものだ。

 間違いを指摘したものの、社長はさほど反省したようにも見えなかった。その次に訪問したとき、フィリップスの#0、#00の細いネジとそれに適合するねじ回しを持っていった。「こうするとね、ほら、ネジは摩擦力で保持されるんだ。」と説明したときの彼らの驚きようは今でもはっきり憶えている。
いわゆるカメラネジを紹介してやると、大量に購入した。ネジ回しも…。

1987年以前の韓国製模型と、それ以降とでは格段の違いがあることをお分かりいただけると嬉しい。

 帰国後、このことを祖父江氏に伝え、「ますます日本の模型屋は商売ができなくなりますね。まずいことをしたでしょうか。」と聞くと、「なーに、構やしないさ。だって、俺だってアメリカの模型屋をつぶして、飯を食ってきたんだからさ。順番だよ。これからは、あっちが逆立ちしたってできないものを作るしかないやね。」と答えた。


2006年11月23日

はす歯歯車

kyusan.u.井上研究室website AJINに行っていた時、材質、加工、伝導など、ありとあらゆる相談を受けた。
 一番驚いたのはギヤボックスだった。ちょっとした工夫で、トラクション・モータ型のギヤボックスを作ってあり、中に平歯車を入れて2段減速の製品だった。

 「どうも調子が悪いので、どこを直せばよいのか教えてくれ。」ということであった。ふたを開けて驚いた。単純なスパーギヤではなく、はす歯歯車であった。

 はす歯歯車は、回転時にスラストを発生する。多段であれば、回転数が大きい時はトルクが少ないので歯の角度は大きくなる。低回転部分ではトルクが大きい分だけ、歯の角度を小さくする必要がある。

 一つの軸に大歯車と小歯車があれば、その両者が発生するスラストが打ち消しあうようにせねばならない。すなわち、歯の傾く方向は互いに逆向きになるべきである。

 ところが、見せられた製品はスラストが助長しあうようになっていて、モータの回転により、歯車がギヤボックスに強く押し付けられながら回転するようになっていた。摩擦は極めて大きい。それを指摘し、歯の角度を反転させたところ、極めて調子のよいものとなった。

 このようなことが次々に改善され、AJINの製品は急速に向上した。しかし、アメリカのインポータの意向で、押して動くギヤが採用されることはなかった。 Overland Models の技術力のなさが露呈していた。


 写真は自動車用の変速機の内部。ギヤ比に応じてねじれ角が変化し、なおかつスラストが互いに打ち消しあう設計になっている。 

2006年11月22日

等速でつなぐ

universal joints この二組のユニヴァーサル・ジョイントを御覧戴きたい。微妙な違いがある。位相が90度ずれている。どちらが正しいのであろうか。

 韓国に技術指導に行ったときに、AJIN社の製品は全て上のような配置になっていた。趙社長に「これでは駄目だ。」と言うと不思議そうな顔をした。「今までこれで出荷してきたけど誰も文句を言ってこなかった。」と不服そうである。

 仕方がないので、中庭に停まっていたトラックの床下を覗かせてみた。「あっ、逆になっている。」と驚いた。

 「どうしてだ」と聞くので。簡単な三角関数を使って角速度の変化を描いて見せた。中間軸が傾くと、中間軸の角速度が変化する様子を見せたのだ。

 二組のユニヴァーサル・ジョイントが、互いにその変化を打ち消すようにすれば、モータ軸と駆動軸が平行である限り、等速で結合される。自動車のような実用機械ではこれは大変重要なことである。模型であっても、角速度変化は騒音の発生源のひとつである。

 ディーゼル機関車の駆動装置では台車の回転によってモータ軸と駆動軸は平行にはならないが、微小な変化量では平行とみなせる。すなわち緩曲線での騒音が少なくなるはずである。

 日本の模型雑誌を見ていても、ユニヴァーサル・ジョイントの位相が間違った写真はよく見る。アメリカの雑誌ではあまり見ない。このあたりの違いはどこから来ているのであろうか。

2006年11月21日

誤解

UP9000 3-cylinder  押して動くギヤを装備した機関車を持ってあちこちに出向くうちに、「そのギヤを売ってくれ」と頼まれることが多くなった。

 ギヤセットとボールベアリングを渡すと喜んで受け取る。しばらく経つと不思議なうわさが流れてくる。「あいつのギヤはインチキだ。全く動かない。」

 親しい友人が様子を知らせてくれた。なんと、コアレスモータを使わないで、ごく普通の有鉄心モータをつけていたのだ。モータそのものの軸をまわしても廻りにくいものを、その数倍の速度で廻せる訳がない。スラストベアリングが入っていなければ、力任せに廻して、たちまちラジアルベアリングがパンクしたであろう。

 大抵の場合は、御本人に連絡すると「なあんだ、そういうことか。」と納得して戴けたが、最後まで御理解を得ることができなかった方たちも複数あった。

 このあたりのいきさつを父に話したところ、「新しい技術を導入すると、そういうことが起こりうる。」と言った。要するに100%そのまま使わない人がいるからだ。
 
 父は昭和10年頃に某電機メーカーの技師になった。その頃は欧米からの新技術の導入が猛烈な勢いでなされていた。100%のコピイを作ればそれは問題なく作動した。ところが日本の技術者が「こうするといい」と、一部の改変をする。すると不都合が生じるのだそうだ。改変する人は自信があり、改良だと思うのだろうが、実はそこに落とし穴が潜んでいることが多かったという。総合的な力が不足している場合は、全てを受け容れるべきであった。

 旧国鉄のC53の開発にもそのような部分があったようだ。3気筒機関車が欧米でかなりの成功を収めていたのに、日本のそれは極端な短命で終わった。最も大切なヴァルヴ・タイミングの遅れを小さくする工夫(剛性のあるテコ)を無くしてしまった(軽め穴を開けたこと)のがその原因という説がある。

 かえって、低開発国においては輸入品に手を加えずに使うので、技術導入が成功することが多いと、友人から聞いた。

2006年11月20日

押して動くディーゼル機関車

chain drive 祖父江欣平氏の工房には走行装置取替えの依頼が殺到するようになった。その点ではこのビジネスは成功であった。

 ミルウォーキの会場で出会ったアメリカ人が、デモ機のFEFをいくらで売るかと聞いてきた。「私の宝物だから売らない。」と言ったら、「それなら注文をするからたくさん作れ。」ということになった。
 祖父江氏はカツミ模型店の下請けをしていたので、「カツミ模型店を通しての下請けならやってもよい」ということになった。仕事は始まったが、彼らの資金が続かず、結局のところアメリカには数台の輸出で終わったようだ。残りは国内で捌けたという。
 
 しかし、うわさがうわさを呼んで、祖父江氏のところにはアメリカから直接、改造注文がやってくるようになった。

 蒸気機関車の改造がある程度済むと、次はディーゼル機関車の改造を望む声が大きくなった。
Bill Wolfer氏が「ディーゼルは車輪径が小さいから難しいね。」と言ったので余計やる気になった。

 確かに車輪が小さければ、その分車輪を回転させるトルクが小さくなる。しかし、車輪数は多いから、押した時掛かる力が分散して、有利になる。駆動軸を床下に通すとモータの収容場所がなくなり、結局チェーンで上から下ろすことになった。このチェーンはプラスチック製で、精度高くできている。台車間が長い大型機の場合はモータから直接に駆動できる。

 この方式で部品を標準化し、いろいろな形式の改造に応える方法をとった。これはアメリカの模型屋を経てかなりの数が出て行った。一部はシカゴの科学工業博物館のレイアウトで、運転用に採用されたと聞いた。毎日数時間走らせるのであるから、耐久性に目をつけたのである。

 この一群の製品には、祖父江氏の発案で、車輪と車軸の固定に細目のネジを用いた。細目とはISOネジのうち、細かいピッチのネジである。同じトルクでも締付け力が大きく外れない。ちょっとしたことなのだが大きな進歩であった。


2006年11月19日

互いに素

FEF2, FEF3 歯数が『互いに素』であるというのはどんな意味をもたらすであろう。ここが、このギヤの最大のノウハウである。アメリカで売り出された韓国製のものには40:4というものもあったそうだそうだ。これでは駄目だ。

 よく見るスパーギヤの歯数比に40:20などがある。これは最も避けるべき組み合わせである。必ず同じ歯が、小歯車の回転2回に1回当たることになる。何かのきずがついたり、異物を噛み込んだりしていると、いつまでもその影響から逃れることはできない。

 それでは40:19であったらどうであろうか。互いに素であるから、全ての歯が異なる組み合わせで当たるであろう。

 実用機械では歯車の組み合わせはこのような比になっている。自動車の変速機のギヤ比を調べてみれば直ちに分かることだ。決して割り切れない比率になっている。ぜんまい式掛時計の、長針短針の関係を作る歯車(日の裏歯車という)を除くすべての歯車はこの組み合わせを採用している。そうでないと、時計は引っかかって止まってしまう。

 これは英語で"harmonic wear"すなわち『調和のとれたへり方』を期待できる組み合わせである。また、材質としては歯数の少ない方を硬い材料で、多い方を軟かい材料で作らねばならない。

 このようなことは機械工学の常識である。実はそのことは技術者であった父から教えられたことだ。模型においてはその点が極めて怪しい。ゴロゴロという音がするものは、ギヤトレインの設計が間違っている可能性が高い。

 面白いことに、アメリカには日本製の模型の動力装置を取り替えることを生業としている人たちがいる。さすがにその人たちの製品を点検してみると、歯数の比は『互いに素』である。この点では合格である。

 彼らは日本の模型をかなり馬鹿にしている。露骨に「日本には機械工学の分かる奴はいないらしい」と言う。そういう連中に、この押して動くギヤを見せてやると、息を飲む。言うべき言葉が見つからないらしい。

 しかし、みな同じことを言う。「下り坂では暴走するだろう」と。「電気ブレーキが効く」と言うと、「下り坂で止まっていることができるか」と聞いてくる。

 「モータの焼けない程度の電流を流しておけば、問題なく止まっていられる」と答えると、「そんなバカな」と信じない。単三電池一本をつないでやって見せると、「そんな高級なモータを使うのはばかげている。」と捨て台詞を残して行ってしまった。

 現在では、コアレスモータはそんなに高いものではなくなったし、DCCなら、ブレーキを作動させることぐらいわけない。。

2006年11月18日

海外での反響

FEF2 w/free-rolling drive 日本ではあまり反響がなかった。しかし、合葉博治氏が直接電話して来られ、歯車とモータの諸元を知らせよとおっしゃったので、Faxで送った。その後すぐ京王プラザホテルで会うことになった。氏は工学者としての観点からの感想を述べられ、「将来は世界中の鉄道模型のスタンダードとなるであろう。」という予言を戴いた。発表した歯車について効率を計算したデータを持って来られた。「ギヤは効率の高い部分を選んである。しかもモータの特性がこの機関車の要求に合っている」とお褒めの言葉を戴いた。「あなたは工学部出身か?」と聞かれた。「いや、門前の小僧です。」と言うと、ずいぶん驚かれた。「この歯車とモータの組み合わせを世界中に広めるお手伝いをさせて戴く。」と約束されたが、その直後に病魔に斃れられた。

 海外での評判は熱狂的であった。世界中から、称賛の手紙を戴いた。フランスからは、英仏ごちゃ混ぜの凄まじい手紙が来た。ドイツからはまともな英語の手紙が来た。もちろんアメリカ、イギリスからもたくさん来た。

 雑誌の発表と相前後して、祖父江氏を案内してミルウォーキのNMRAのコンヴェンションに参加した。2台の4-8-4を同一のレイル上に置いて、片方を押せばもう一方がその発電した電力で走り出す。このデモンストレイションで、人気を博し、地元のテレビも取材に来た。

 その様子をじっと見ていた人がいた。AJINの趙南達(チョーナンダル)氏であった。「すばらしいデモンストレイションだ。これは世界中に広めるべきアイデアである。」と話し掛けてきた。

 趙氏はその後、技術指導を仰ぎに来た。何回か韓国に出向き3条ウォームの製作指導をした。しかしその結果は思わしいものではなかった。

 不思議なことに、私が手取り足取りして教えた社員はその次に行くと姿が見えないのである。そんなことが3回ぐらいあって、ようやく気がついた。彼らは筆者から得たノウハウを持って、ライヴァルのサムホンサなどに就職したのだった。
 しばらくすると押して動く機関車がサムホンサから出てきた。

 アメリカ人の友達が電話を掛けてきて「お前のアイデアは高く売れたのか?」と聞く。「盗まれたんだよ」と言うと「やっぱりな。うまく動かないよ。」と言った。筆者はその時点で100%のノウハウは伝えてなかったのであった。

 AJINはヨーロッパ市場向けの製品に搭載したようだ。これは確実に作動したという。

2006年11月17日

押して動く機関車の実現

Model Railroader 指先で押しただけで動く機関車を実現するには、次の3つの条件がある。どの一つが欠けても不可能である。

 .灰▲譽好癲璽拭´■馨鬟Εーム ボールベアリング
 ”當未離泪哀優奪肇癲璽燭任蓮鉄心が吸いつけられているので動き出せない。
 ▲ヤ比は比較的小さくした。そうしないと押して動きにくくなるからだ。それには低回転モータを使うことが前提となる。
 ボールベアリングは当然のことである。しかし潤滑剤もまた大切だ。普通の潤滑油では、停止時に逆駆動すると、歯面が強く押し付けられ、極圧剤がなければ動き出せない。

 何台かの機関車にこのギヤを装備して、レイアウト上を走らせた。極めて快調であった。何かの手違いで電源が切れても急停車することはない。すなわち、列車の脱線事故が、ほとんど皆無となった。

 震災で亡くなった神戸の魚田真一郎氏に、「電源を切っても3mくらい惰行するよ。」と伝えると、「そんなん、あるわけないやろ。ホンマやったらフランス料理のフルコースをおごりますわ。」と言った。その週末、車で来た彼を仮設レイアウトに連れて行き、60両編成の貨車を牽いた走行を見せた。
 「エライことになりましたなあ。これで世界中がひっくり返りますわ。」と言った。当然、フランス料理を御馳走になった。

 祖父江欣平氏の工房で魚田氏の機関車を改造した。受け取った彼は喜んで、「ホンマに世界一の機関車ですねん!」と電話の向こうで叫んだ。

 これは特許を申請すべきか、ずいぶん考えた。当時、韓国をはじめとする新興国では不法行為が続発していた。たとえ特許を取得できても、海賊版が堂々と売られることになるだろうことは予想できた。特許防衛に手間をかけるのは現実的でない。

 多からぬ特許収入より、発表して名を残すべきである。という結論に達した。早速日・英文で原稿を書き、投稿した。

 「とれいん」誌には直接電話してページを空けて貰い、原稿と現物を送った。その記事は直ちに翌月号に載った。Model Railroader誌には3ヵ月後に載った。

その年の夏にミルウォーキーでNMRAのコンヴェンションがあった。それに出品しようということになった。

2006年11月16日

試作

1-thread worm2-thread worm3-thread worm 



 

 左から順に、1条、2条、3条のウォーム  
 
 しばらくして祖父江氏の工房を訪ねたとき、「こんなものがある。」と言って小さなギヤボックスを見せてくれた。「モリコーといってね、昭和20年代の終わり頃、こんなギヤを出していたんだよ。」

 それは、まさに頭の中で考えていたものであった。ただ、スラストベアリングがなく、ちゃちな板金のギヤボックス内でカラカラと音を立てて廻る玩具っぽいギヤであった。ウォームは2条で細く作られ、進み角は15度くらいであった。

 これを厚板または鋳物で作ったギヤボックスに入れ、スラストベアリングを装備すれば完成する。

 祖父江氏もまた同じことを考えていたのだ。「ディーゼル機関車用の13:2というギヤに、よく油をさせば動くんじゃないか?」という。そこで3条ウォームの話を持ち出した。
「ギヤ比は互いに素にして、細いウォームを作り、潤滑剤は二硫化モリブデン、スラスト・ベアリング装備にすれば完璧ですよ。」

 祖父江氏は大満足であった。もやもやとした考えがはっきりとした形になったのだ。早速、歯車屋に注文した。

 その2ヵ月後、祖父江氏から電話があり、試作品ができたから見に来いという。「動くけど動きが渋い。どうしたらよいだろう。」と言う。
 普通のグリースを使っていた。よく溶剤で洗ってから、持っていった軟らかい二硫化モリブデンを塗った。すばらしい動きであった。祖父江氏は感動していた。「何であんたこんな潤滑法を知ってんだ?」 

2006年11月15日

コアレスモータとの出会い

コアレス・モータ そうこうしているうちに、祖父江欣平氏の工房を訪ねることがあった。祖父江氏は滑らかな運転が可能な駆動装置を長年追求されていた。双方向クラッチも試作されていたのだ。のちに、このクラッチは井上豊氏の記事で紹介された。

 そこで、コアレスモータを見せてくれた。氏は「模型クラブの会合で見せてもらったから、買った」と嬉しそうに見せてくれたのだ。これぞ探していたモータだ。鉄心がないから、マグネットの吸着もない。要するにコッギング(米口語ではTeething)がない。今思えば、内野日出男氏に見せてもらったのだろうと思われる。内野氏は1971年にLongnecker氏からコアレスモータを貰ったそうだ。

 逆駆動が簡単にできる。筆者も小さいものを二つ買ってみて、そのリード線を直列につないで片方の軸を廻してみた。なんともう一つのモータの軸も回転するではないか。効率が90%近いとこういうことが起こるのかと、感心した。

 仕様書を読み解き、自分の機関車に適合するかどうかを調べた。ギヤ比は何とかなるが、出力が足らない。当時の手持ちの貨車40両を引き出すのに必要な力を測定すると、起動できることは分かったが、3%の勾配はとても登れないことが分かった。

 仕様書を見ていくともう少し大きいのが見つかった。捲き線の多い低回転モータで、12Vでの無負荷回転数が5400rpm、トルクが106mNmと大きいものである。負荷を掛けたときの回転の落ち方も少ないものであった。価格は目の玉が飛び出るほど高かったが、満足のいくものであった。これを使えば、いつか逆駆動ができるギヤができたとき、押して動く機関車ができることになる。

 コアレスモータを扱う商社で、いったいどんな顧客がいるのか聞いてみた。最大のお得意様は防衛関係だという。ミサイルの制御システムは応答が速くなければならないので、慣性モーメントの小さいコアレスモータが求められるというのだ。

 二番目のお得意様はと聞くと「それは貴方だ。」という。今まで何人か来たけど、10台以上買った客は貴方しかいないという。

 しばらくはその地位を守っていたそうだ。

 余談だが、ロールスロイスのエアコンの風向きを変えるフィンを左右に首を振らせるモータが、その会社のコアレスモータだったと教えてくれた人がある。

2006年11月14日

逆駆動可能なウォームギヤ

3-thread worm gear set その頃、仮設レイアウトで40輌ほどの運転をしていた。2,3台しかない機関車を徹底的にいじくり回して楽しんでいたのだ。滑らかに起動から停車できるようにはなった。

 あるとき、父と模型の話をしていた。父も昔は模型が好きだった様だ。
「ウォームギヤは逆駆動できないから…」と切り出すと、「そんなことはない。ねじれが急角度なら逆に動くはずだ。」という。
 確かに、オルゴールのガヴァナのウォーム、車のステアリングのウォーム、いずれも逆駆動している。

 図書館で歯車の本を調べてみて驚いた。ウォームは逆駆動できると明記してある。むしろ、そのあとに続く文章にはもっと驚いた。「セルフロックを望む場合は(要するに、逆駆動ができないようにするには)進み角を4度以下にすることが必要」とあったのだ。

 つまり、鉄道模型のギヤは、わざわざ逆駆動できない角度のものを作っていたわけだ。

 後に、アメリカ製の模型のギヤを調べて驚いたことにはそのほとんどが逆駆動可能な設計であったことだ。そのほうがギヤの効率が高くなることにも気がついた。

 
 しかし、仮によいギヤの設計ができたとしても、逆駆動されるモータがあのマグネットモータでは無理である。どうしてもよいモータを探さねばならない。場合によってはそのようなモータを作る必要もあるだろう。直捲モータなら抵抗は少ない。

 探しているうちに髭剃り用の直捲モータを見つけたので捲き線をほどいて、捲き直してみた。ある程度は軽く廻るが、とても軽やかとは言えないものであった。これでは駄目だ。

2006年11月13日

スラスト・ボールベアリング

thrust ball bearing ウォームギヤのスラストはかなり大きい。ちょっとしたエンドレスを10両程度の貨車を牽かせて10日ほど連続運転してみたことがある。ウォームの端を支えるワッシャが擦り切れてしまった。

 スラストベアリングは意外に安価な商品だ。これをウォームの前後にはさんでみるだけで電流がかなり減る。負荷が掛かっているときの損失がかなり減っている。次にラジアル・ベアリングを入れると多少電流が減った。ウォームギヤそのものの効率はそれほど悪くはなさそうだ。

 2台の蒸気機関車のギヤボックスにベアリングを入れて悦に入っていた。そのころ、井上豊氏がTMSに「D51にボールベアリングを入れる」記事を発表された。

 ついでどなたかが、ギヤボックスにベアリングを入れて発表された。そのギヤボックスには、不思議なことにウォーム軸の前進時のスラストを受けるようにラジアルベアリングが2個直列に入れてあった。起動時のスラストより、急停車時のスラストの方が遥かに大きいので、これは無意味だと思われた。

 考えてみれば、モータが止まれば動輪が止まり、動輪からモータが回らないのは不思議だ。どうして、誰もそれを不満に思わないのだろう。ウォームギヤは逆駆動はできないのだろうか。電源の一時的な遮断でさえも、列車全体がつんのめるような衝撃が起こり、そのたびに列車の一部は脱線する。とてもいやな気分だ。これでは実物のような80両編成の運転などはできるわけはない。

 どうしても慣性のある列車の運動を妨げない駆動装置が欲しい。その願望は高まるばかりであった。

 ウォームギヤは、鉄道模型には適した歯車装置である。1段で大きな減速比が得られる。直角駆動であるから、車体に大きなモータが入れられる。もしこれが簡単に逆駆動することができたとしたら、モータは猛烈な速度で廻されることになる。モータ軸を回転させてみて、その抵抗を調べた。このトルクに減速比を掛けたトルクで動輪を廻さねばならないのだ。

 「これは無理だな」と直感的に感じた。たとえギヤの問題が解決しても、コッギングのないモータが手に入らない限り実現は不可能だ。


2006年11月12日

ボールベアリング

フランジつき ベアリング屋に少量のボールベアリングを買いに行くと、番頭が応対してくれた。その番頭はずいぶんと世話を焼いてくれ、そのうちに価格も大口の顧客並みにしてくれる様になった。

 ミニチュアベアリングは普通のベアリングのように圧入してはいけないということを知った。「滑り嵌め」をしなければいけないと習った。軸に油を付けて、手で押し込むと、ぬるぬると油の粘性を感じながら入っていく。このときがマイナス17ミクロンと教えてくれた。確かにマイナス15ミクロンでは固いし、マイナス20ミクロンではするすると入ってしまう。なかなかうまい方法を教えてくれたものだ。
 
 シャフトを外注するときはベアリングを一つ渡して「これがぬるぬると入る様に」というとちゃんとその様にしてくれる。

 その後、番頭が退職してからは、その店とは自然と疎遠になってしまった。残念なことだ。

 さて、最初に買ったベアリングはフランジつき、両シールドというタイプだった。フランジが付いていると、軸受けハウジングに嵌めるだけでよいので気に入った。しかし、その番頭に嵌め込んだものを見せると、「これは間違った設計だね。軸箱に一つしかベアリングが入っていないというのは、ありえない設計だよ。」と軽くいなされてしまった。

 どんなときも、軸箱一つに二つのベアリングというのは鉄則だ。そうでないと、荷重が掛かるとベアリングがひねられる力が掛かる。

1941 locomotive cyclopedia より複写 本物の写真を見ると、蒸気機関車では左右の軸箱が円筒でつながれて、転ばないようになっている。伊藤剛氏の解説によるとそれはキャノンボックス(大砲状の箱)というのだそうだ。なるほどこうすればよいのかと、膝を叩いた。



蒸気機関車用canon box
問題はウォーム・ギヤボックスである。ここには大きなスラスト(軸方向の推力)が掛かる。これを受けるにはスラストベアリングが必要である。

2006年11月11日

軸受け

ball bearng 学生時代に、「軸受」という本を読んで愕然としたことがある。「軸受の厚さは、軸径の2.5倍必要である」と書いてあったからである。要するに油膜を形成するためにはそれだけの幅が必要だということだ。

 2mmの軸なら5mmの厚さ、3mmなら7.5mmの厚さが必要である。模型のどこにそんな軸受けがあるというのだ。

 当時私が見た限りにおいては、せいぜい1mm厚の板に穴をあけて軸を通し、油を注すという程度だ。これでは軸受けではない。

 ピボット軸受というものもあり、TMSには「油をさしてはいけない」とまで書いてあった。

 近くの時計屋の息子と仲が良かったので、時計職人のおじいさんに聞いてみた。答は、「軸受けで油を注さなくてもいいものなど無い。」ということであった。宝石を付けた軸受けでさえも、石油ベンジンで薄めた油を注す。ベンジンを揮発させると、薄い油の膜ができる。

 やはりピボットにも油を注すべきだと思い、時計に倣ってほんの少しの薄めた油をさしてみた。摩擦は1/3くらいになった。

 車軸が通る軸穴に厚い板を貼り重ね、穴をあけてリーマを通した。油をさしてみると、摩擦など無いかの如くするすると走った。

 しかし、軸箱のためのスペースは確保しにくい。ボールベアリングを入れたいと思った。そうすれば薄い軸箱ができる。近くにベアリングの代理店があり、ショウウィンドウを覗くと小さなベアリングがあった。価格を聞いて耳を疑った。とても高価であった。

 それから10年ほど経ち、ミニチュアベアリングの価格がかなり下がったことを新聞で知った。1つ250円くらいになっていた。蒸気機関車に使うと良さそうだと思い、まずテンダ台車の換装から始めた。素晴らしい性能に驚いた。普通の線路の上では停止させておくことは難しい。水準器代わりになるほど、よく転がった。手歯止めが必要だった。

 ついで、先従台車にも取り付けた。動軸については治具が無かったので外注した。すると、起動電流が1/2になった。要するにモータさえ廻れば、走るようになったわけだ。ここまで来ると、モータの性能が大きくかかわってくる。ブラシ圧力を調整し、軸受けの心が本当に出ているかを確認した。ギヤを溶剤で洗い、軽い油を入れて調節した。すると電流はさらに減少し1/4になった。

 低電流走行の可能性に気がついたのは、この瞬間である。

2006年11月10日

潤滑油の構造

 penetration oil潤滑は油であればすべて可能なのかという疑問がある。潤滑油は石油ではないのか。

 1859年、アメリカのペンシルバニア州で石油が噴出したとき、その用途について議論百出したが、結局、それまでの動物油、植物油由来の灯油をケロシンという石油由来の物質に切り替えただけで、あとの成分は何の用途も見出せなかったそうだ。わずかに高沸点の半流動油がやけどに塗ると、空気に触れなくて痛みを和らげることになっただけである。これは今でもヴァセリンと言う名前で売られている。ガソリンの用途など、自動車が現れるまで見当もつかなかったようだ。

 荷馬車の軸受けの潤滑油は動物性油脂しか効果がないことが知られていた。ところが、その厄介物の石油に動物性油脂を少し混ぜるだけで、潤滑油として大変効果があるということが分かった。

 いわゆる油脂は脂肪酸RCOOHとグリセリンのエステルという化合物である。脂肪酸は酸の一種なので金属とは反応する。ここで金属をMとするとM-OOCRという結合を作るだろう。すると金属に無数の脂肪酸が化学的に付着したものが生じる。いわば、小川の川底に無数の水草が生えて覆われた様な状態になる。このような小川のなかを歩くのは滑りやすくて難しいことが実感できる。Rの部分は大きな炭化水素基で、石油とは同類である。

 つまり、金属と何の関係もなかった石油が、脂肪酸の仲立ちで金属と結びついたのである。水草のおかげで、その上を滑っていく別の金属は直接の接触を避けられる。また水草は簡単に抜け落ちることもない。現在ではその様に解釈されているが、昔は経験的に知られていただけに過ぎない。
 
 自動車のエンジンの中とか日本の蒸気機関車の軸受けは全て流体摩擦のはずだ。そうでなければ直ちに焼きつく。
その昔、井上豊氏が国鉄の指導機関士だった昭和20年代、新車を受領すると、試運転は彼の仕事だったそうだ。「新米に任せるとすぐ軸受けを焼きつかせる。」と、何十台と慣らし乗りをしたと聞いた。コツは燃費が悪くても、フルギヤーで走らせることだそうだ。軸受け合金の当り面が平滑化するまでは油膜が切れやすいので、力が脈動する掛かり方をするような運転をしてはいけないのだ。

まさに境界潤滑への移行を避けた運転法である。そののち極圧剤が開発されてからは、こんな話は意味が無くなったようだ。

写真は車の修理用に使っている浸透性油 

2006年11月09日

歯車の潤滑

M5 Worm gear set ウォーム歯車は、スパーギヤに比べて摩擦が多いので、極圧剤が配合された潤滑剤を使用すべきである。自動車のハイポイド・ギヤ(FR車のデフ・オイル)には極圧剤が入っている。これと二硫化モリブデンを使用すればうまくいくはずである。

 模型用の潤滑剤としてテフロン入りグリースと称する物が市場にある。筆者はこれに対して大きな疑問を抱いている。

 テフロンは極圧潤滑には向かないはずだ。層状構造をもたないからである。黒鉛は層状構造を持つが、誰も歯車潤滑剤としては使用しない。黒鉛は50気圧で流動する。鉛筆の芯が滑らかに文字を書けるのは、紙上の摩擦で、瞬間的に50気圧程度の圧力が容易に生じうるからである。

 余談であるが、鍵穴に鍵が刺さりにくくなったときは、この黒鉛の粉を使うのが正しい解決法だ。CRCなどを噴射すれば一時的には解決するが、後日ますますひどい状態になる。油分が埃を集めるからである。アメリカで鍵屋に行くと、この黒鉛粉末を噴射するスプレイ(と言っても単なるゴム製の浣腸器みたいなもの)が売られている。ヤスリで軟らかい鉛筆を粉にして、なすり込めば十分である。

 二硫化モリブデンは層状構造を持ち、それが極めて大きな圧力に耐え、層間のすべりを生じながら金属同士の直接接触を阻止する。自動車用品店に行けば、ワイパ・ゴムのビビリを防ぐと称するゴムへの塗布スプレイがある。あれは二硫化モリブデンが主成分である。新しくギヤボックスを組んだときは、それを歯面に付けて、軽く負荷を掛けて慣らし運転すると。数分でよくなじむようになり音が極端に静かになる。

 日本の模型の歯車は、ブラス同士の組み合わせというのが多いが、これは歯車の常識に反する。同じ材質同士では摩擦が大きいことが証明されている。歯車の本を見れば、最適な組み合わせとして、快削鋼とリン青銅の組み合わせが紹介されているはずだ。
 プラスティックの歯車を使うのであれば、熱の逃げやすい金属と互い違いにするべきなのに、守られていない場合が多い。熱は瞬時に発生し、それが逃げられないと歯面の変形を引き起こす。小さいから大丈夫と思っても、ちょっとした過負荷で極めて短時間に起こりうる。お手元の機関車で異音がするものがあれば、多分それが原因だろう。 

 写真は電車の制御機駆動用のウォームギヤ(の廃品)

2006年11月08日

潤滑

hypoid gear oil 潤滑には大きく分けて流体潤滑と境界潤滑がある。

前者は油膜を挟んで摩擦面同士が離れている状態である。荷重に対して摩擦面を浮かせている力は、潤滑油の粘性とか圧送される油圧、摩擦面で発生する圧力である。自動車のエンジンの内部はすべてこれだ。テフロンとか二硫化モリブデン粒子を入れた潤滑強化剤というのがあるが、効果は疑問視されている。事実アメリカでは焼き付き事故があり、訴訟が起きて販売できなくなったと言う話を聞いたことがある。日本では○○○ロロンとかいう名で販売されているようだ。使うと却って油膜切れの原因になるという報告もある。

 本物の蒸気機関車の潤滑はすべてこの流体潤滑である。仕業点検のときに、シリンダの上部、少し後ろのオイルポンプに油をなみなみと注ぎ、グリス・ニップルからグリス・ガンで押し込んでいた。懐かしい風情である。

 後者は大きな圧力が加わった摩擦面での潤滑である。この領域では摩擦面が滑りやすい物質に変化していないと潤滑されない。 摩擦面が直接に擦れあうと高温になる。ここにハロゲン化合物が存在すると、熱により金属と化合し、膜を作って滑りやすくなる。これが極圧剤と呼ばれるオイル添加剤である。極圧添加剤は塩素系炭化水素、硫黄化合物、リン化合物で、デフ・オイルには普通に添加されている。焼き付く寸前、高温になると効果が発揮されるのだ。

 デフ・オイル特にハイポイド・ギヤ用と書いてあるものは必ず塩素系化合物が含まれていて、最近は焼却時にダイオキシン発生源発生源としてマークされている。
 ここで簡単な化学実験をひとつ。よく磨いた10円玉にデフ・オイルを一滴落とし、裏から半田ごてで暖めてみられよ。たちまち変色して銅の色が黒く変化する。これが極圧剤の効果である。

 模型ではギヤが焼けることはまず無いだろうから、このような極圧剤はそれほどの効果を期待できない。また、これはエンジンオイルには配合されていない。

 二硫化モリブデンは極圧潤滑剤のひとつだが、固体潤滑といって固体そのものが滑りやすいものである。鉛筆の芯の黒鉛もそうだ。
 面状結晶が滑りあうのである。黒鉛は高圧には耐えないが二硫化モリブデンは極めて高圧に耐える。

 私は粉を塗りつけて軽くなじませ、全体に広がったところで極めて軟らかい極圧グリースを塗っている。それが混合されたものも使っているが、大差ない。

2006年11月07日

塗装

ブレーキ・クリーナー 4台を塗り分けるのに6色を必要とする塗装作業があった 。一色ごとにエアブラシをばらして洗って再組み立てするのはかなり疲れる。

 私はシンナ代わりにスプレイのKUREのブレークリ−ンなどを用いる。
これはもともとは自動車のブレーキ液にまみれたブレーキ・キャリパの洗浄に用いるスプレイで、、細いノズルから高圧で洗浄液が噴射される。中身は、炭化水素(ガソリンに近いもの)と少量のイソプロピルアルコール等である。
 
 これを使えば色が変わるたびにばらす必要は無い。ノズル側から1秒噴射し、吸い込み口からの塗料を落下させ、逆に下から1秒噴射しノズルから洗浄液のみが噴射されるのを確認するだけで良い。つまり色替えに要する時間は5秒ぐらいのものである。

 この商品はクルマの部品屋とかスーパーマーケットの車用品売り場にある。
 新聞のチラシを注意してみていれば、特売で1本300円ぐらいで手に入ることがある。

 エッチングプライマを使うのが常道であるが、表面の酸化皮膜をプライマ代わりに使う方法もある。ハンダ付けが終わったら水洗いして、キサゲでハンダを削り、そのまま外において1月ぐらい経つと、多少錆びて来る。ここが潮時である。多少汚れがついているので毛の長い刷毛でさっと埃を払い、カプラでぶら下げてこのブレークリーンを吹きかけると、表面の油分がさっと落ちるから、日なたで暖めて塗装する。
一回塗るたびに日なたで暖め、カブリを防ぐ。場合によってはヘア・ドライヤで内側から熱を加える。
 そのあと、電気炉の中で100度くらいで保温すればよい。2時間でデカールが貼れる。塗り分けがあればさらにその倍の手間がかかるのだが、今回のは塗り分け無しで4時間で完成。

 洗浄スプレイは各社から同等品がでているので、どれを使っても大差ない。この間2本で398円というのもあった。お試しを。


2006年11月06日

プライマーの原理

paint-stripped caboose 一昨日、接着についてさらりと書いたが、実際は簡単な話ではないのだ。
 
 表面にきずをつければ食いつきを良くする事(投錨効果と呼んでいた)ができそうに思うが、これは実験により効果が完全に否定されている。塗装と接着は全く同じ概念である。母材と塗料あるいは接着剤は分子間力という力によってくっついているのである。分子間力は弱い電気的な力であり、イオン間の力があればそちらのほうが遥かに強くなる。
 
 たとえば、生ゴムに硫黄を混ぜ加熱する加硫というプロセスによりゴムを強くするのであるが、そのとき磨いた銅の棒を入れて加熱すると銅とゴムとの間に異常な接着力が生じることが、昔から知られている。
ここでは、【銅】…イオン結合…【硫黄】…共有結合…【ゴム】という経路で力が伝達され、はがれなくなる。これは昨日のスティール・ラジアル・タイヤの銅めっき鋼線に応用されている。

 これと同じ事ができればはがれない塗膜になるはずだ。塗料側に金属を酸化し陽イオンにする何か(酸化剤)が入っていれば金属と塗料側をイオン結合させることができる。しかし酸化剤は塗料のビヒクル(ラッカーで言えばクリヤー・ラッカー)と反応する可能性があるので長期の保存はできないはずである。2液性になっているのは使う直前までビヒクルと接触させないためである。1液型のものは寿命が短いはずである。常温でたなざらしになっていたようなものには効果は期待できないだろう。

 「エッチング」とは、酸化により金属表面を溶かす操作であるが、塗装しただけでは目に見える変化は無い。真鍮は屋外に置いてやや錆びた状態のほうがよく付くのはこのためである。洋白はニッケルを含むので錆びにくく困難だ。どちらにしても塗装前の脱脂が大切である。

 亜鉛にはややこしい理屈があり,塗装が難しい素材である。ダイキャスト製品には脱脂してラッカー系塗料を塗るのが最も楽な方法だ。油脂系塗料(亜麻仁油をベースにした塗料で模型に使う人は稀だ)にはなじみが悪いことが分かっている。したがってトタン板に普通の油性ペンキを塗ってもすぐはがれる。合成樹脂ペイントを塗らねばならない。最近は亜鉛にも有効なプライマーがある。2液形のものはOKのようだ。

 プラスチック用のプライマ−にはすべて個別の事情があり、この項でお話するべき内容ではなさそうだ。

 シール剤は、本来多孔質の材料に塗る吸い込み防止剤であり、金属工作物には無縁のものである。

 エッチング・プライマ−を塗ったらある程度の高温にすると化学反応が良く進んでよりよい結果が出る。私は120℃で30分ベークする。

 写真はプライマー処理後塗装し、塗り直しのためブレーキ液ではがしたもの。プライマー(黄色)は、はがれていないことに御注意。

2006年11月05日

スティール・ラジアル・タイヤ

steel radial tire 戦後長らくスティール・ラジアル・タイヤが普及しなかった原因は、おそらく鉄とゴムとの接着性の悪さに起因している。
 
 ゴムと鉄とはくっつかない。しかしゴムと銅とは、化学結合に基づく極めて強力な接着が可能である。それでは、鋼線に銅メッキを掛けたらどうであろうか。このアイデアはタイヤ業界では、最大の発明として、知られている。

 タイヤに入れられているスティール・ワイヤは銅めっきをした上で入れられている。戦前ミシュランがスティールベルト入りタイヤを発明したとき、銅メッキは無かったはずである。戦後特許が成立したはずだが、それには銅メッキのことが書いてなかったと記憶している。浅学にして、この銅メッキを誰が発明したかは知らない。

 ゴムは硫黄を数%入れて加熱し、流動しないようにしている。これを加硫という。この硫黄と銅は極めて強固なイオン結合を作る。これを利用するのだ。

 銅線にゴムをかぶせたキャブタイヤ・ケーブルのゴムが極めて外れにくいことは、古くから知られていた事象である。だから、銅線には紙などを撒きつけてからゴムに封入してある。また、エボナイト(硬質ゴム)と強く接触しているブラス(真鍮)のボルトが外れにくくなるのはよくあることだ。

 1970年代のスティール・ラジアル・タイヤのワイヤは、既に銅メッキであった。現在はブラスメッキになったはずだ。より強度があるからである。ブラスメッキは銅と亜鉛を陽極に並べてメッキするもので、理論的には怪しいところがあるのだが、現実には極めてうまくメッキできる。銅と亜鉛がよくぬれあうからだ。
捨てられているタイヤに切り込みを入れると鋼線に薄くメッキしてあるのがよく見えるのでお試しあれ。

 最近は鋼線とゴムとの接着を界面活性剤で解決する方法が見付かったそうだ。ナフテン酸コバルトというものを介在させる方法である。実はこれが環境にやさしくないものらしく、業界では対応に苦慮している。

 いずれにせよゴムと鋼線とのぬれを改善することが、タイヤ工業の最も大きな問題なのだ。

 ところで、ミシュランが作った鉄道用ゴムタイヤを装備した車両があったのをご存知だろうか。もちろんガイド用の車輪はフランジ付き鉄車輪だが、駆動用、荷重受け車輪はゴムである。どんな音で走ったのであろうか。

 佐野衡太郎氏のBugattiの車輌には、ゴムを挟んだ車輪が装備されている。これは弾性車輪のさきがけとなったものであろう。

2006年11月04日

接着と塗装

フロクイル塗料 母材によくぬれる物質が、母材間で硬化すればそれば接着である。母材表面は清浄であれば、接着力が働く。この力は分子間力と呼ばれる力で、静電気的な力である。 

 実際の接着はうまくいかない場合が多い。液体が固体になる変化時に、生じた固体の中に応力が発生する。簡単に言えば体積変化などで「ひきつれ」が発生するのだ。このため接着剤が弱くなり、本来の接着強度の1/100ぐらいしか発揮できない場合が大半だという説まである。

 硬い接着剤が具合が悪いのなら軟らかいものを調べてみると、ゴム系接着剤とか、シリコン・シーラントがある。これらの接着力は意外に強力である。内部応力の問題があまり無いからだ。また、力の伝達経路を分散させることも大きなファクターであろう。強力両面テープにスポンジがはさまれているのはこのためである。

 塗料も乾燥硬化すると、内部応力が発生する。薄く塗るほうがはがれにくいのは、このためであろう。その点、フロクイルという塗料はたいしたものである。薄く塗っても被覆力があるので、内部応力の小さい丈夫な塗膜になり、はがれない。

 本物の電車のペンキでは、はがれたところに塗り重ねたものは、重なったところがすべてひび割れている。やはり、ストリップしてから薄く塗らないとだめである。
 これはまさに塗膜の中の応力が現れたものである。大手の電鉄会社の塗装ラインを見学したとき、ストリッピングに大変な手間を掛けていた。仕上がりは素晴らしく、「経験が豊富な会社は違う」と感心したものだ。

 接着剤も薄く塗るほうのが強くつくことになるのだろうか。答えるのが難しいが、総論から云えばYESということになる。ABS系プラ用セメントはかなり違う種類の接着だから、エポキシに限った話にする。

 正しい接着が行われていれば、引張ったとき母材が破断する。ここで接着層が厚いと、接着層が破断する。やはり、内部応力が働いている。「エポキシは硬化時に体積が減少しない」と、能天気に書いている本が多いがこれは誤りで体積が変化する。

 鉄板をよく磨いて洗い、少量のエポキシセメントを塗って万力で締め付けると驚くべき接着力を発揮する。しかし普通はそんな使い方をしないから、参考にはなりにくい。最近のエポキシは硬化後もやや弾力がある。昔のものはパリパリになったから、進化したのだろう。多少軟らかいと、上述の応力の問題をクリヤーしやすいと思われる。可塑剤が入っているようだ。
 
 筆者においては、むしろエポキシはフィラー(filler)としてパテ代わりに使うことが多くなった。このパテもどきを作るときは何かの微粉(チョークの粉など)を入れて練ると具合がよくなる。単なる増量剤ではない。応力が分断され、また力の伝達経路が分散されるからである。コンクリートがモルタルより強い理由と似ている。

 瞬間接着剤も昔のものに比べるとかなり軟らかくなった。経験上そうなったのであろう。この種類の接着剤も、密着する面を清浄にして薄い接着層にすると極めてよくつく。模型のばあい、針金で作った手すりをプラの本体に突っ込んで留めるのが目的だったりするから、薄い膜はあまり関係なさそうだ。

2006年11月03日

『ぬれ』の応用

applying decal on a tank car 問題の答えは 銑Г料瓦討任△襦6眤案瓜里よくぬれあうので、めっきも半田付けも出来るのだ。ハンダ付けの不得意な人は材料をよく洗い、塩化亜鉛の飽和溶液を使えば必ずうまくいく。もちろん大きなコテを使って十分な加熱が必要なことは言うまでもない。すき間に融けたハンダがつるリとしみ込むのを見れば、『ぬれ』を実感するであろう。銀ロウ付けもハンダ付けと全く同様、『ぬれ』による。Г陵仞椶睚貂爐鰺擦すと生じる半液状の金属とぬれ合う。

 接着とは固体の2つの母材のどちらにもぬれあう物質が、液体から固体に変化することである。塗装は母材がひとつの場合である。もし接着剤や塗料よりも『ぬれ』の良い物質が母材に付着しているとそこで『はがれ』が起きる。溶剤や洗剤で、確実に母材を露出させる必要がある。

 潤滑は母材になじみの良い油を選び、種々の添加剤を加えたものである。25年ほど前、LPSなるスプレー式潤滑剤の宣伝で、塗布した機関車が水槽の中を走っていたそうだが、これは、その潤滑剤の金属に対する『ぬれ』が、水のそれに勝っていたことを証明するものである。添加剤により、ぬれを改善した具体例である。

 さて、デカールを貼るとき塗膜はよく水をはじくから、何らかの方法で『ぬれ』をよくすることが大切である。筆者は、滑面(つや出しにする)に#1200のサンド・ペーパーを軽く掛け、ドライウェルを混ぜたソルバ・セットを塗る。こうすると、デカールを貼りたい面に薄く水膜を作ることが出来るから、そこにデカールを手早く載せて水がしみ出して来るのを待つ。『ぬれ』さえ良ければ水は急速にデカールの範囲外に出て、上記のように乾いていく。もちろん綿棒などで水を吸い取らせるのも助けになる。このときの温度は、ある程度高いとうまくいく。水の粘度がかなり小さくなるからである。
 気泡が出来ても気にせず乾くまで待つ。気泡のあたりによく切れるカッター・ナイフを当て、1ミリピッチで軽くデカールのみに切込みを入れる。ドライウェルと混ぜたソルバ・セットを少量置くと、『ぬれ』が良いので空気を押しのけて水が入り込む。切り込みは必ず平行にする。もし碁盤の目のように切り込むとみじん切りになってしまうから注意されたい。

『ぬれ』は界面化学の分野の用語のひとつである。

写真はデカル貼り

2006年11月02日

『ぬれ』とは 

wetting on window shield 10月23日の記事中、『ぬれ』と言う言葉を用いたところ、複数の方から『ぬれ』とは何かという質問を受けた。

 『ぬれ』は英語でwettingと言う。水で何かを洗うことができるのは、汚れが水にぬれるからである。その汚れが水をはじくものであれば水では洗うことはできない。例えば、油がしみこんだ布は、水洗いで油を取り除くことは不可能である。

 『ぬれ』とは、「濡れ手に粟」という言葉のように、濡れている手では粟粒を労なくして取ることが出来るという、その「濡れ」である。
 
 車のガラスを洗剤とスポンジでごしごしこすって洗うと、ガラスに水がよくなじむようになる。するとガラスに水が広がり、極めて薄い膜になり、最終的に虹のような干渉膜が出来る。この膜は薄いので、瞬時に蒸発する。『ぬれ』が良いと水の表面積に対する質量の比が小さくなり、蒸発速度が大きくなる。

 本日の写真はその様子を写したものである。風が吹けば、この程度の水膜は一瞬にして消滅する。

 写真の現像等に詳しい方は、フィルム現像のとき、ドライウェルという界面活性剤(一種の洗剤)を使うとぶら下げたフィルムから急速に水が滴り落ちて、乾きやすくなることをご存知であろう。最近、車のドアミラーに貼って水滴を着かなくするフィルムをよく見る。『ぬれ』をよくして均一な水膜を作り、見通しを良くしているのだ。

 明日からしばらくこの話題を展開したい。その前に、予告編としてちょっとした問題を1つ……

次の模型用語のなかで『ぬれ』に関係があるものをすべて挙げよ。

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2006年11月01日

操舵台車

15 実はこの件は20年以上前に実験済みである。片方の車輪の内側をくりぬき、極小のボールベアリングを入れた。直線での走行にはややふらつきがでたものの、曲線での振舞いは秀逸であった。今思えばボールベアリングを入れるほどの荷重がないので、単に車輪をゆるく取り付けて、注油しただけでも十分であったろう。

 もう一台の台車は、ボルスタを長くして、外側リンクで吊った。どちらの方が乗り心地が良いか調べるためである。結果は外側方式の勝ちであった。部材が長いので、荷重によって多少のたわみが生じ、それが乗り心地の向上につながった。ただし材料が多く必要で、台車1台は51kgもあった。

 動力台車はさすがに左右別回転には出来ない。自動車で言えば、デフロックした状態でないと牽引力が出ない。本当のところを言えば、全部の動軸をギヤで連動したいところだ。

 ここで一つ問題を。動軸上重量が等しい蒸気機関車と電気機関車(EF58のような旧型機)がある。どちらの起動時の牽引力が大きいか。

 答えは当然前者である。すべての動輪が連動しているので、すべてがスリップするまで静止摩擦力が働くからである。各軸につけられたモータでは一つでもスリップするとそれは動摩擦力となり、牽引力は減少する。

 大きなモータ、揺れ枕をつけると軸距離が長くなり、急カーブではフランジが当たるようになる。損失も大きいが、それ以上に脱線しやすくなり、人が乗る車輌としては問題点が多くなる。操舵台車以外、解決法は無い。

 幸い、事情をご理解願って、NTNから、ベアリング、テフロンのすべり板などを戴いた。半径 4 mでも軸箱が35mmほど動けば十分である。操舵台車を走らせるには軌道の方も、それに備えた線路の敷き方をせねばならない、スラックをゼロとし、Sカーブでは車輌1台分の直線を挟む必要がある。これを怠ると、とんでもない方向に操舵することになる。



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