2006年10月

2006年10月31日

急カーブを曲がるには

15' gauge truck w/swing bolster どんなに工夫をしても、軌間の10倍程度の半径では、内外のレイルの円周差が10%にも達し、フィレットではまかないきれない。

 軸重が小さい時はさほど大きな問題にはならない。摩擦力は軸重に正比例するからである。しかし重い車両のときはカーブでの抵抗は無視しえない。市電が交差点を曲がるとき、キュンキュンという音を立てている。あれはこの車輪のスリップ音である。標準軌の半径250Mでさえも、スリップ音が聞こえる。この音をフランジがすれる音だと勘違いする人は多い。超望遠レンズで前方から覗いてみても、フランジ側面が当たってはいない。

 しばらく前、近所のボランティア団体で15インチ軌道の豆列車を作ろうということになった。半径4Mを廻る必要がある。いきさつ上、筆者がその走り装置を作る羽目になった。計算してみると、人間が5人も乗っているとその摩擦力はかなり大きく、連結器端での出力500ワット程度の動力車でも、秒速0.5Mくらいが限度であった。要するに摩擦力はすこぶる大きい。並みの動力車では牽けないことが判明したのである。しかも、2台の客車を牽きたいという。

 こうなれば、左右の車輪を別回転にする以外ない。近くのNTNの技術者の長と知り合いになれたので、思い切ってお願いしてみた。ボランティア団体ですのでお金がありませんと。

 するとその方のお計らいで「研究用」としてサンプル供与をして戴いた。自動車の前輪用複列ボールベアリングその他一切を戴いた。簡単な作図の後、旋盤作業に取り掛かった。熔接機も出力7KWのを別の方から戴いた。

 鋼材屋からアングル、チャンネルを買い、チップソウ(鋼材を切る円鋸)で切断、ボール盤で穴を開け、組み立てた。近所の人は鉄工所を開業したと思ったらしい。1ヶ月ほどで2両分が完成した。

 内側揺れ枕付きで、この台車1つが39kgある。早速車体を取り付け試運転した。半径4Mでも走行抵抗は直線とほとんど変わらなかった。

2006年10月30日

スラックとカント

superelevation 鉄道模型を楽しむ人が、実物を縮小した世界を実現したいのは当然である。鉄道の知識が増えてくると、鉄道工学書を読むようになる。するとスラックとかカントという言葉に出会う。実物の線路脇にはスラック値、カント値が表示された標識があり、それを見て納得するようになる。

 模型でもそれをやってみたくなるが、前述したようにスラックはすでにレイル・ゲージとホイール・ゲージの差が大きいのでつける必要はすでにない。もし、さらにスラックをつけると、二軸台車の後ろの車輪はカーブでより内側に引き寄せられる。内外レイルの行路差により、その現象が起こる。すると台車はますます外側に向き、フランジが接触することになる。軸数の多い蒸気機関車の場合も、ほとんどはスラックをつける必要がない。むしろ、機関車の内部の設計で解決できる場合が多い。

 カント(米語ではsuperelevation)は全く意味がない。遠心力を計算してみると、スケールスピードでは重力加速度の数百分の一以下の値となる。要するに外側のレイルを軌間の数百分の一以下しか持ち上げる必要がない。これは誤差範囲以内であろう。

 すなわち模型でのカントは「気分の問題」である。外側が持ち上がっていると気分がよいのである。筆者のレイアウトにも、ごくわずかであるがカントはつけてある。Sカーブの前後で列車がうねる様子が見られて楽しい。ビジターが喜ぶ箇所である。

 あまり調子に乗ってカントを大きくすると、列車が内側に引き倒される可能性がある。上り勾配でスパイラル線であれば、むしろ逆カント(negative superelvation))が望ましい。観客から見えない部分であればぜひ逆カントにすべきである。  

 実物でも超低速運転の鉱山列車ではカントを逆につける例がある。アメリカ東部の炭鉱地帯の上り専用のスパイラル線では、そのような例が多く見られた。乗り心地を考えなければ、そのほうが安全であるのは自明である。

 ちなみに、かの有名なテハチャピ・ループではカントは少ない。

 写真はSカーブを通るピギ−バック列車

2006年10月29日

NC旋盤屋

improved frog 当初、RP25でどの程度の走行抵抗があるのか調べたくなった。材質を、摩擦の少ないステンレスにするとどうなるのかも、興味があるところであった。

 材料の自動供給装置付きNC旋盤をもつ旋盤屋を「量産屋」という。量産屋を訪ね歩いて、見積もりを取り、とりあえず発注した。こういうときは「現金、領収書なし」というのは大変効果がある。かなり安い値段で引き受けてくれた。もちろん1000軸単位でしか引き受けてくれない。友人と連絡をとってかなりの数を注文した。
 
 受け取った友人はみな大喜びであった。SUS303ステンレス製のRP25など、どこにも売っていないのだから。しかも原価で頒けたので、価格は信じられないほど安かった。

 しかし、筆者は走行テストを繰り返した結果、まだまだ性能アップの可能性はあると踏んでいた。そういうときに、吉岡精一氏からの助言により、大いに力づけられたのだ。

 フランジ形状のみならず、「ユルミ」まで踏み込んだ検討は、当初の予定を超えていた。「ユルミ」を減らすと、踏面の幅を減らすことができる。RP25の踏面はどう考えても分厚すぎるから、これはありがたかった。これで前面から見た車輪の形状は、かなり改善された。

 吉岡氏との連絡を密にして検討を繰り返した結果、決定版というべきものが生まれた。これを1万軸作ることにした。再度友人からの注文を取り、余ったら海外にも紹介するという予定であったが、殆ど国内で捌けてしまった。しかもあっという間に。

 3年後に「再度作ってくれ」と云う人が多かったので、その量産屋に行ってみたら、更地になっていた。倒産して夜逃げした、と近所の人が教えてくれた。残念至極である。

 同じ質量の車両に同じ台車を付け、筆者のレイアウトのエンドレス上で、突放して停止するまでの走行距離を測定するテストを、繰り返し行った。やはり、RP25の2/3の抵抗しか無いことが判明した。同じ列車でもカーブ上で五割増しの牽引輌数ということになる。

 曲線上でもLow-D車輪では100両以上の牽引が可能であることが証明されたのである。
 Low-Dとは"Low Drag"すなわち低摩擦のことである。

 写真はフランジウェイが狭いフログ。車輪が落ち込まない。しかし、ガードレイル側は少し広くせねばならない。

2006年10月28日

点接触の必要性

SUS303 RP25 RP25の車輪を実際にいろいろな曲線上で走らせてみて、どこが接触しているのかを望遠レンズで覗いてみた。明らかに、踏面とフランジの変曲点との二箇所で接触していることが分かった。

 上の写真は、使用済みRP25の拡大写真である。筆者のレイアウトで12年間殆ど毎日走らせたもので、硬いステンレスと云えども踏面が多少磨耗している。フランジにご注目あれ。

 明らかに、フィレットよりも先の部分が当たっている。すなわち2点接触である。2点での回転半径は異なるので、速度差が生じる。それは摩擦力として牽引力を減殺する。


SUS303 Low-D 下の写真は筆者の低抵抗(Low-D)車輪である。10年間の走行でも、フランジに全く磨耗の痕が見られない。フィレット部はかなりよく当たっているらしく、光っている。踏面の磨耗は同様である。この写真は車輪の接触が1点であることを裏付けている。これを見れば、フランジの高さはもう少し低くても良いことが分かる。

 一昨日の写真でもお判りのように、Low-D車輪のホイールゲージは、RP25よりわずかに広い。すなわち「ユルミ」を少なくしている。これでもS-4規格のフログを何の問題もなく通過する。

 フランジの厚みもわずかに少ないので、やる気になればフログのフランジウェイを狭くすることもできる。そのとき、ガードレイルのほうのフランジウェイを広くする必要が生じる。

 NMRAのフログの規格はあまりにも古い。古い車両を通す必要から古い規格を温存している。筆者の場合、すべての車輌の車輪を取り替えたので、より狭いフランジウェイのフログを採用できた。持込み者にはあらかじめお断りして、所定の車検を行ってからの入線をお願いしている。もっとも、筆者の友人は、殆どが新開発のLow-D車輪を採用しているので、問題が起こることは無い。
 車検をすると言ったら、「失礼だ」と怒った方が過去に一人いらした。その方は博物館ができるほどの日米欧の雑多なコレクションをお持ちの方だ。過去にご自慢の車輛を持って来たが、車輪が油でべとべとであった。また、ギヤボックスがないものも多かった。油を撒き散らす車輌は入線をお断りしている。牽引力を大きく損ない、レイルも車輌も汚れるからである。
 どちらが失礼なのだろうか。これはマナーの問題である。

2006年10月27日

低抵抗(Low-D)車輪の開発

RP25 目的ははっきりしている。
「実物よりも急な曲線を、摩擦を少なくして通過させる。」
 これを実現したい。




 曲線の抵抗の原因は大きく分けて2つある。
 .侫薀鵐犬外側レイルに接触する。
 内外レイルの半径差に基づく道のりの差のスリップ。

 いずれも、摩擦の少ない硬い車輪を使えば、摩擦というファクタは同じなのでいずれにも効果はある。プラスティックの車輪は安価なので多用されているが決してよい結果はもたらさない。金属車輪までがプラスティック車輪の影響を受けて汚れるという観察も報告されている。
 材質はともかく、軟らかい車輪は転がり抵抗が大きいのは自明である。

ゝ浙弊ではフランジが外側レイルに接触する。RP25ではフランジ角がないので接触しやすい。どうしてこのような形が良いことになったのか、首を傾げざるを得ない。フランジ側面が接触しても抵抗が大きく、牽引力を減殺する。フランジ角を設け、フランジ側面が接触することをなるべく排除するだけで、曲線での抵抗は大いに減少する。
 
 レイルヘッドがフランジに接触する直前には何が起こるだろうか。フィレットへの乗り上げにより、見かけ上の車輪半径の増大が起こり、フランジはレイルから遠ざかる。この半径をどのくらいにするかの見積もりは、かなり手間取った。種々の作図により、レイルヘッドの半径の2倍強が良いことが判明した。

△猟餽海亡悗靴討魯好薀奪で解決すると考えてしまう人は多い。スラックの効果は実物のような半径、運転速度のときその効果を発揮するわけで、実物換算半径数十メートルでは、路面電車のようなものであり、両輪の半径差で解決できない。最大限広げて、車輪が落ち込むまで広げても、要求される道のりの差を満たすことは出来ない。すなわちスリップせざるを得ない。そのスリップを少なくするのがフィレットである。

 フィレットに乗り上げれば、車輪半径は十分増大するからである。
 
 RP25ではもうすでに、スラックを輪軸に内包していると考えられる。というのは軌間に対しての輪軸のガタ(日本の鉄道業界ではユルミと言うらしい)がかなり大きいからである。



       写真右はRP25、左は筆者の低抵抗(Low-D)車輪

2006年10月26日

RPとは

 NMRA Standard いろいろな場面で聞かれることがある。
「この機関車は何台くらい牽けますか?」……何と答えたらよいだろう。

 正直に、「私のところの標準的な40ftの貨車なら、平坦な直線では150台以上引き出せます。」などと答えたら、かなりの顰蹙(ひんしゅく)をかうだろう。全て、牽かれる物の責任であるのだが…。

 私の保有する貨車は全て摩擦の少ないステンレスのピボット車輪に換装してある。フランジはRP25ではない。直線なら問題ないが、急曲線がある模型のレイアウト上では、RP25では抵抗が大きくたくさん牽けない。

 先日の関西合運で、「そのフランジについて書け」とリクエストを戴いた。しばらくこの話題で続けたい。

 私はレイアウトを建設するに当たり、80輌以上の貨車、14両編成の旅客列車を牽かせることを目標とした。この話をするとアメリカ人にさえも、"Crazy","Ridiculous"(狂ってる、ばかばかしい)と言われた。

 「牽ける訳ない」と言われて、「実物が牽けるのだから可能さ」と答えると、ますます「あいつはおかしい」ということになる。
 
 しかし被牽引車の摩擦を減らせばいくらでも牽けるはずである。そんな時、吉岡精一氏から貴重な助言を戴いた。「RPは推奨項目(recommended practice)であって、それに従えとは書いてない。」 
 線路規格は、ある程度尊重せざるをえないが、その線路を間違いなく走れば自分の好きな形でできるわけである。

 RP25のフランジは曲線のみで構成されている。脱線抗力となるフランジ角を構成する直線部がない。フランジと踏面との境の丸み(Fillet)の大きさも十分とは言えない。軌間と車輪の遊びが大きく、その分タイヤが厚く、見かけもよくない。

 フィレット(その昔、TMSには「フィリット」と発音が示してあった)はレイルヘッドの角の半径によって、その効果が変化する。

2006年10月25日

関西合運

関西合同運転会 タイトルの漢字だけ見ると一体何だろうと思う。関西合同鉄道模型運転会の略称である。今年の正式名称は、2006鉄道模型大集合IN OSAKAという。
21、22日両日交野市で開かれた。お招きを戴いているので出かけた。

 この運転会は過去10年以上も続いている和やかな会である。名前は存じ上げなくても、いつもよくお会いする方々が多い。

 その中で、ある方が「いつも拝見してます。とても面白いです。」とおっしゃったので、びっくりした。

 このブログを始めるに当たって連絡も差し上げていないので、正直なところ、腰を抜かしそうになるほど驚いた。

 「他のウェブサイトへの投稿を拝見していましたのですぐ分かりましたよ。いや文体ではなく、内容で分かります。あんな文章を書かれる方は、どう考えてもこの人しかいないと思いました。」とおっしゃった。素晴らしい眼力の持ち主である。

 
 このブログを始めるに当たって、なるべく客観的な記述をすることを心がけた。仕事上の必要性でそのような文章を書くことが多い。趣味の世界にそのような文章を持ち込むのは、少々かみ合わないようにも感じたが、なるべくこの調子を保ちたいと思う。

 関西合運ではHOJCの部屋を訪ねる時間が一番長い。この部屋では全員がDCCを採用し、機構的なことを話し合えるメンバーがそろっておられる。牽引力をストレイン・ゲージで測定したり、ディジタル速度計も用意されたりしている。機関車の機械効率を測定された方もいらっしゃる。

 このように、客観的なデータが目の前に出される雰囲気は、模型界では珍しい。

2006年10月24日

ロウ以外の材料

 GTEL truck sideframe
 ロウを用いて空洞を作り、そのなかに熔湯を流し込むという基本的な概念は、おそらく2000年以上前から存在していると思われる。

 「奈良時代の仏像もロストワックスでできている」と言うと驚かれる方も多いはずだ。粘土で作った内型にロウを塗り、彫刻を施す。それにさらに粘土を塗りつけ、外側で大規模な焚き火をすれば空間ができる。そこに融けた銅合金を流し込んで外型を壊せばよい。

 日本ではロストワックスの基本特許が成立していない。戦後、アメリカの業者が特許をいくつか申請したらしいが、全て拒絶されている。そのとき、この歴史的事実を示すと出願者は退散したそうだ。これは特許庁の役人の談話としてO氏から聞いたことである。

 ロウは取り扱いが容易で便利な材料だが、熱膨張率が大きい。すなわち、加熱すると埋没材にひびが入る可能性がある。だから、加熱速度が非常に大きな問題になる。

 他にはよい材料がないのだろうか。尿素がよいことが分かっている。尿素は133℃で融解し、簡単に熱分解する。しかも熱膨張率が極めて低い。ただし、水に溶けやすいので、水ベースの埋没材では扱えない。水中で尿素が使える工夫があればロストワックス技法は大きく変化するだろう。

 

 簡単に書くつもりであったが、ずいぶん長くなった。ロストワックス鋳物を手にご覧になるとき、じっくり眺めて戴きたい。そのなかには長い歴史が潜んでいるのだ。

 写真は3-unit GTELの台車。Billの原型を用いて鋳造した。   


2006年10月23日

なぜ鋳造ができるか

 DD35A 台車 鋳造ができるのは当たり前だと考えられているかもしれないが、良く考えてみよう。たとえば砂型鋳物を作る時、砂の隙間にどうして融けた金属が入ってしまわないか。という心配がある。これはよく質問を受けることだ。

 その答は、
 〆修篭眤阿陵参魃佞砲呂未譴覆
 金属の融解液の表面張力が著しく大きい
の2つである。

 ,燭箸┐仗絛笋鮑修忙悗任覆召辰萄遒辰森造卜し込むと、水銀は決して砂の隙間にしみ込んだりはしない。水を流し込めばたちどころに吸い込まれてしまう。金属は砂によってはじかれているという表現が良いだろう。一方、水は砂と親和力が大きく、表面で保持されることはありえない。これを、「砂粒は水に『ぬれ』るが、水銀には『ぬれ』ない」という。

 ▲汽肇ぅ發陵佞両紊鯏召る露は丸く、水銀は玉のようになる。水銀の表面張力はきわめて大きい。水の5倍以上もある。融けた銅では18倍ほどである。

 すなわち、融けた金属は型によってはじかれながら流れ込む。細かい凹凸があればはじかれて(サトイモの葉の表面のようになり)流れ込まないところが生じる。それだからこそ、圧力をかけて押し込まねばならない。

 時々聞く表現であるが、「融けた金属は粘り気があるから流れにくい」というのがある。これは正しくない。

 融けた銅は水の2.5倍程度流動しやすい。ハンダは7倍くらい流動する。水銀は9倍ほどである。湯流れが悪い時は、型の温度が低くて途中で固まるか、鋳造方案が悪い、以外ありえない。

2006年10月22日

湯口

sprue 湯口は英語でsprueという。これがその写真。漏斗状に作っておき、この上に鋳造方案に従ってツリィを組み立てる。

 鋳型の一番高いところから注ぎ込んで、製品にならなかった部分がそこに残る。
湯口にはもろもろの不純物が濃縮される。ブラスの場合は埋没材と反応して、亜鉛分の少ない部分が残ることになる。スラグ(ノロ)も含まれている。

 一般的に言えば、湯口は捨てるのが賢明だ。しかし、ベリ銅はそのまま何度でも使える。これが非常に大きな利点で、今まで述べてきた諸事情を考慮すると、ベリ銅による鋳物が最も簡単かつ経済的で高品質であることになる。

 最近戴いたメイルによると、日本製のロストワックス部品にも赤い材質の物があり、やや硬いのでベリ銅ではないかと言う指摘である。現物を見ていないのでなんともいえないが、その可能性は高い。

 亜鉛を含む鋳物はダイカストのような高圧をかけるもの以外はうまくいかないと考えるべきであろう。事実、見掛けはよくても拡大してみると、細かい気泡がある鋳物が多い。

 最近、日本国内の工業的な規模でのベリ銅の消費量はいちぢるしく伸びが大きい。プラスティック成型用型材としての利点が分かってきたからであろう。アメリカに遅れること20年である。

 模型材料として、色の点を除けばよいことばかりである。しかし、「ブラス模型は全て金色でなければならない」というのはおかしな思い込みである。部分的に洋白を使うのはよくても「銅の色は許せない」と言うのはおかしい。洋白の色は鋼の色とは違うので玩具っぽく見える、と筆者は感じる。

2006年10月21日

脱ロウ

脱ロウ炉 埋没材に埋め込まれたロウは、加熱して抜き取る。湯口部分を下にして、ロウの融点以上に数時間保つ。すると8割程度のロウが抜き取られる。また、埋没材の水分も蒸発する。この操作は専用の脱ロウ炉中で行う。写真はその内部を示す。

 大規模な鋳造業ではこのロウは全て回収され、次回のロウ型の原料となる。しかし、模型の製作程度では、回収したロウのなかのごみ除去の手間を考えると、使い捨てのほうが楽である。

 ロウは融けて埋没材に滲みこむ。これは燃やしてしまう以外、除去の方法はない。そのときかなりの臭気が発生する。O氏の発案の触媒装置でかなりの臭いは無くなった。しかし、住宅地の中でやるのは難しい。

 折りしも、オウム真理教事件で日本中が大騒ぎしていた時期で、警察に踏み込まれても文句が言えない雰囲気であった。それ以降、鋳造は家の中ではやっていない。

 近い将来、田舎に工房を移転して再開するつもりである。

 埋没材を加熱する時は、ゆっくりと温度を上げていく。これは非常に大切なことで、手動ではうまくいかない。300℃まで2時間掛けて昇温し、2時間保つ。ここでロウを気化させる。そのあと5時間掛けて800℃まで上昇させる。

 この温度調節は手動ではうまくいかない。フィードバック付きコンピュータ制御で行う。この焼成炉もO氏の手作りである。

 いったん加熱が始まったら、冷やしてはならない。冷えると埋没材にひびが入る。すなわち、鋳造作業は開始から鋳造まで連続して作業せざるを得ない。焼成炉に入れてからの8時間に睡眠時間が来るように予定する。

2006年10月20日

熔解炉

熔解炉 実際そのとおりで、ベリ銅であれば、どんな複雑な形状のものでも、下手な鋳造方案であっても、素晴らしい鋳物ができる。 結局のところ、労力を勘定に入れれば、安上がりな方法であると言える。

 また、鋳造後、仕上げを施して電気炉で熱処理をすると、素晴らしく硬い物が出来る。Ralphにカウキャッチャをベリ銅で作ったのを見せてもらったが、正面衝突すると相手の機関車のカウキャッチャに食い込むそうだ。

 熱処理をしなくても、ベリ銅の鋳物は硬い。叩くと、焼き入れした工具鋼のようなキンキンという音がする。ブラスのゴンゴンという音とは異なる。ベルを作ればいい音が出るだろう。 


 熔解炉は黒鉛のるつぼを用いる。鉄系合金では炭素が入ってしまうので避けるべきであるが、銅系合金ではそれは全く問題ない。
  
 熔解に必要な電力は意外と少ない。水に較べてはるかに比熱が小さいので、熱が逃げないようにうまく設計してあれば1KWもあれば十分すぎるほどである。

 融けた金属に少量のフラックスを入れ、表面の酸化物など(いわゆるスラグ)を黒鉛の棒で巻き取って除く。

 蓋を開けると、800℃以上に焼けた炭素に空気中の酸素が結合して、一酸化炭素が発生する。それに引火して青い炎が出ることがある。るつぼは消耗品である。全体をアルゴンガスで包めば、消耗は完全に抑えられるし、一酸化炭素中毒になることもない。

 温度を調べるには、熱電対温度計を用いる。非常に高精度で瞬時に計れる。これもO氏の手作り品である。

 地金を融かす時に注意しなければならないことは、大きな塊を入れないことである。これをやると熱膨張でるつぼを破壊する。必ず小さな粒を入れるようにする。長いものは縦に差し込む。当たり前のことであるがやってしまうミスである。
 
 融けた金属はとても重いので、取っ手を二つ付けた。鋳込みは照明を消して、暗がりで行う。人間の目は意外に正確に温度を測ることができる。温度計の数字を見て、眼で色温度の確認を行いながら鋳込む。左は、真空鋳造機、右は熔解炉。

2006年10月19日

ブラスの鋳造は難しい

電気炉 ベリ銅とブラスとは何が違うのだろうか。
 
 ブラスは黄銅と呼ばれ、銅に亜鉛を混ぜたものである。快削性を持たせるには鉛を添加する。亜鉛の代わりにスズを入れると青銅になる。

 青銅と較べるとブラスの実用化はかなり遅い。ブラスが大量に用いられるようになったのはせいぜい300年くらい前からである。イギリスは亜鉛の製錬法を東洋から導入し、大英帝国の発展とともにブラスは世界中に広まった。

 なぜ亜鉛は製錬が難しかったのか。それは沸点が907℃と低いからである。融点は420℃である。還元炉の中で亜鉛が生成するのと沸騰するのは殆ど同時に起こりうるからだ。せっかく還元して生成した亜鉛は、煙とともに消え、煙突の上部で青い火を上げていたのだろう。

 金属が沸騰する様子を見たことがある人は少ないはずだ。亜鉛の兄弟元素の水銀は357℃でポコポコと音を立てて沸騰し、蒸気を冷やすと忽ち液化する。減圧下ではかなり低い温度で沸騰する。

 燃えさかる火の中に亜鉛のたくさんついた釘を入れると亜鉛は気化し、青い炎を上げて燃える。昔、暖炉の中でよくやったものだ。

 融けたブラスの温度が900℃に近くなると明らかに亜鉛が気化し始める。温度を上げないと粘り気が大きいし、上げると亜鉛が気化する。ぎりぎりの温度で鋳造するのだが、泡が入る可能性は否めない。特に真空鋳造では深刻な問題である。また、高温では埋没材と反応して表面が変化する。

 ベリ銅は全く泡が出ないので、温度をかなり高くできる。また、埋没材と反応することもないので、素人でも美しい鋳物ができることになる。O氏がおっしゃるには、「ブラスで良い鋳物を作ろうと思うのは、はっきり言って、無いものねだりだね。」

 写真は電気炉。煤けて黒くなっているのは脱ロウ後も多少残っているロウが燃えた時のもの。

2006年10月18日

ベリリウム銅

GTEL Clamps ベリリウム銅(以下ベリ銅と略す)をロストワックス鋳造に使うとよいと最初に教えてくれた人はBillの友人のRalphである。Ralphは本業(交響楽のフルート奏者)のかたわら、鉄道模型が趣味から仕事になってしまった人である。

 HOのディーテイル・パーツを作っていたUtah Pacificの社長であったと言えば、分かる方もおありだろう。彼の家には非常に細かくできたレイアウトがあった。どんなものも動くレイアウトである。車両のみならずストラクチュアも全てモータライズされている。彼は主席フルート奏者であったが演奏は夜が多く、昼間は少し練習するだけなので、その時間をロストワックス製造に充てることができたと言っている。

 Utah Pacificの部品のなかで赤い銅の色をしているものがあれば、それはベリ銅である。曲げてみると、妙に硬いはずだ。鋳肌はきれいである。
 
 ベリリウム銅は熱処理によって工具鋼と同等の硬さが得られる。磁性がないので、磁気を嫌う環境で用いられた。例えば、録音テープの編集用ハサミ、ピンセットなどをはじめとして、磁気機雷の除去に当たる掃海艇のエンジン、歯車、ボールベアリングなど、全てベリ銅製である。
 
 しかしベリリウムの酸化物などを吸い込むと、いわゆるベリリウム肺になる惧れがある。昔、蛍光灯の蛍光物質がベリリウム化合物だったことがあり、蛍光灯工場で患者が続出したらしい。そのせいもあって日本ではベリリウム銅の加工まで厳しく管理されるようになった。これは過剰反応で小さな鋳物にする程度のことでは、まず問題はない。

 ベリ銅は湯流れが極めてよく、細部まで再現される。Mother(母)型から作った鋳物をDaughter(娘)という。その娘から再度作った鋳物をGrand Daughter(孫娘)という。

 たくさんの部品を作らなければならないときは、20個の娘をベリ銅で作り、それをツリーにして、再度、型を採る。そうすれば一回に20×20個くらい孫娘の鋳造ができる。この方法では複製時の劣化がほとんどない。


 写真はその方法で作ったGTELの屋根上のクランプ(孫たち)。一部湯が廻っていない。湯流れの悪いブラスで作ったからである。

2006年10月17日

続 鋳込み

centrifugal casting machine 熔湯に圧力を掛ける方法は大きく分けて次の四つである。
_,慧鬚鬚垢襦
何らかの方法で湯の表面に高圧の気体を接触させる。
C魴燭領側から真空ポンプで吸う。
け鷽肝呂撚,傾む。

〕侏散眤阿禄鼎い里如⊃爾気20cmもあれば水柱で1.5mくらいに相当する。表面の印象が気にならない構造用のものなら、これでも十分である。

∋科で行われた義歯の鋳造法のひとつである。融けた金属の液面を覆うように作られた蓋の内側に、アスベスト等を湿らせて入れておき、押し付ける。高温であるから急速に水蒸気が発生し、その圧力で熔湯が押し込まれる。この蓋を圧迫蓋(あっぱくがい)という。

これが筆者の採用している方法で、硬化したinvestment(埋没材)の中を多少の空気が通過するので、熔融金属を流し込んで型の下側を真空タンクに直結すると熔湯は吸い込まれる。
大物に適する方法である。真空タンクの容量が大きくないとうまくいかない。

せ慘悗覆鼻⊂物に適する方法である。investmentを詰め込んだステンレスパイプ(フラスコと言う)の前に置いたるつぼ中で、アセチレンバーナを用いて熔湯を作り、ばね等などに蓄えたエネルギで回転させ、遠心力を与える。
 
 あまり大きなものは回転させられない。カウンタ・バランスを調整しておかないと、振動して、事故の元になる。
 
 また、加速度が大きくないと意味がないので、その構造にはいくつかの工夫がある。これを「大きな金だらい風の容器」の中で作動させる。たらいの役割は融けた金属が飛び散るのを防ぐためである。写真はかなり大型の遠心鋳造機である。腕が折れるのは加速時に熔湯が飛び散らない工夫である。ぜんまいばねは極めて強力である。重力加速度の数倍の加速度がかけられる。


2006年10月16日

鋳込み

casting design
 ワックス型がたくさん出来たら、鋳造方案を考え、それに従って配置し、いわゆるツリィを作る。
 ツリィとは、ちょうどクリスマス・ツリィのように、幹から枝が生えて、そこにいろんな物がぶら下がった形を表す。


 写真は失敗作であり、お見せするのは心苦しいが、良い鋳造方案が出来た時のものである。何が失敗かと言うと湯(溶けた金属)の量が足らなかったので半分しか出来なかったのである。

 放射状についているのはタービン電気機関車のテンダ台車枠であったが、ちょうど半分で終わっている。悲しい限りである。

 このときの湯はベリリウム銅(以下ベリ銅と略す)である。ベリ銅は湯流れがよく、硬くて加工がた易い。しかし、ベリリウムの酸化物は吸い込むと健康を害する恐れがあり、加工時の被曝時間が制限されていたりして、日本では扱いが難しい。

 私はベリ銅の鋳造はテキサスの友人に頼んでいる。彼の家の裏庭から次の家まで、50マイルあるそうなので、排気を撒き散らしても全く問題ないそうだ。鋳造方案を絵に描いてワックス型を送ってやれば作ってくれる。地金は会った時にインゴットで渡してある。
 始めは、私の鋳造方案を見て、ぶつぶつ言っていたが、「確かにうまくできる。自分の鋳造の時も真似をしたらうまくできた」と評価してくれている。この頃、大物の鋳造時は、鋳造方案の相談を持ちかけてくれるようになった。

 鋳込む時は金属の表面張力で細かい所に流れないので、圧力を掛ける必要がある。この表面張力はかなり大きい。ハンダを融かした時、あるいは体温計の水銀が転がる時を思い出して戴きたい。型の細かい部分にはそう簡単には入らない。

 圧力を掛ける方法は4つある。

2006年10月15日

鋳造方案

wax injector 鋳造方案(casting design) という言葉を御存知の方は少ないだろう。

 湯口から流し込まれた熔解金属は鋳型の末端まで融けたまま流し込まれて固まる。そのとき冷え方が急で、金属結晶が析出しながら流れると粗雑な鋳物になる。温度が高すぎると固まるときに縮んで皺が入ったりひびが入ったりする。

 理想的なのは、末端に入ったときは融けているがやがて固まり始め、続々と融けた金属が注ぎ込まれて、固まるときに体積が減った分だけ補充されるようにすることである。

途中に体積の多い空間(湯溜り)を作り、融けた金属がそこに十分にあれば凝固に伴う収縮を補償するという考え方もできるし、先端に行くほど細くなるようにすればよいという考え方もできる。

 簡単に言えばそうなるがこれは非常に難しい。このようなことを考慮して、よい鋳物を作るように湯口を決め、押し湯(融けた金属が高く注ぎ込まれて、圧力が掛かるようにすること)、湯溜りを決めることを鋳造方案という。

 現在でもこの鋳造方案の完全な決定法はない。鋳造現場の技術者が指示する。鋳造方案を考えるだけで一生を費やすほどの難しい仕事である。スーパーコンピュータがあっても解決することではないようだ。これはある程度の指針を出すソフトである。

このなかにタービン鋳造時の湯流れをシミュレイションする動画がある。これは押し湯を大きく取る工夫をしている。

 実際の湯流れはこのように単純ではないらしい。



 写真はワックスをゴム型に注入するときに用いる注型機である。保温しながら圧力を掛け、ゴム型を押し付けると瞬時に注入される。ノズルに工夫がある。

2006年10月14日

印象を採る

a74fd4bc.jpg 一言で印象を採るといっても、極端な格差がある。機械部品の場合は表面が多少粗雑でも問題ない、歯科の技工の場合は噛み合わせの問題があり精度が要求される。
 さらに高精度な印象採取に挑まれた方がある。

 N社の最高顧問のO氏である。O氏は25年ほど前、クライスラ社からの依頼でレザーそのものの感触を持つ自動車のステアリング・ホイールを作られた方である。また布地そのものを印象採取して、金型に転写し射出成形することができるようにされたのもこの方の業績である。また。当時出始めていた、ターボ・チャージャのタービンの鋳造も、この方の指導のもとでなされた。セラミック・タービンはO氏によって開発された。

 運のよいことに、御子息の紹介で弟子入りがかなった。シリコンゴムによる印象採取の基本的な理屈はこの方から教わった。また、高性能な電気炉を自ら設計製作される方で、それもお世話願った。熔解炉もO氏自ら作って下さったものである。

 O氏の下で1年ほど教えていただいた。その間見せて戴いたヴィデオの中に、ロストワックスがいかにに高精度に出来るかというデモンストレイションがあった。フランスのVTRである。ピストルを鋳造し、そのまま湯口が付いている状態で組み立てて、発射するというのがあった。これには驚嘆した。

 これは何を物語るか。
  |鮟未澆蓮∩瓦謄灰鵐肇蹇璽襪任る
  ▲優厳蠹まで全て鋳造で可能であること
  8λ瓩靴覆ても鋳肌そのものを平滑にすることが可能であること 

 模型用では専ら外装部品しか必要でないが、この技術が適用可能であるなら蒸気機関車のフレイムを一体鋳造することは不可能ではない。全てのネジ穴もネジが切ってある状態で鋳造することができれば面白い。本物の鋳鋼台枠を再現するのである。
 それにはかなりのリサーチが必要であるが、将来やってみたいことの一つである。

 熔解する温度、鋳型の温度管理が大切であるのは言うまでもないが、もう一つの困難がある。

2006年10月13日

原型からゴム型を作る

ea687956.jpg 原型は何で作っても良い時代になった。以前はハンダ付けでは駄目で銀ロウ付けをしなければならなかったが、技術革新で楽な時代になった。

 まずブラスなどで作りたいものの3%ほど大きい原型を作る。この3%は「鋳縮み」という。このとき湯口(融けた金属が通る道筋)をどこにするか決めるのだが、それにはかなり面倒なことを考えねばならない。鋳縮み量は形によるので、一概には言えない。

 それを生ゴムとともに箱に押し込み、圧力を掛けて160℃くらいに加熱する。すると生ゴムの「加硫」という現象が起き、柔らかい生ゴムが弾性体になる。この装置は電気アイロンとクランプで自作できる。それをナイフで切り開き、原型をつくる。切り開く時は、後でずれないよう、ジグザグに切る。

 加硫の温度が200℃であると、ハンダが融ける場合があるので、銀ロウ付けをしなければならない。そののちに、より低温で加硫できるようになり、ハンダ付けでもよいことになった。

 現在はRTVといって、室温(Room Temperature)で加硫(Vulcanize)できるシリコンゴムが主流になっている。これを使えば、相手がプラスチックでも印象をとることができる。いくつかのブランドが日本製にもあるが、筆者はフランス製のものを使っている。寸法変化が少ないのと弾力が桁違いに良いからである。

 そのゴム型を開いて空気抜きのパウダーを塗る。ゴム型からワックス注入時、空気が抜けやすくする。ゴムの隙間から空気が抜けるが、ロウは抜けない。このパウダーの塗り方にもいろいろなノウハウがあるようだ。

 ワックスを融かして圧力を掛け、ゴム型に注入する。このときゴム型が変形しないよう、うまく押さえ込みながら入れるわけである。この操作をWax Injectionといい、専用の機械がある。ノズルが非常にうまく出来ていて、押すと瞬時に注入される。ゴム型が冷たければロウは数秒で固まる。ロウはいろいろなタイプがあるが、固まったとき硬くなるタイプを用いると、プラスティックで出来ているかの如くパリパリのものができる。また、固まっても柔らかいものもある。ロウは何種類もある。
 
 中空のものを作る時は工夫して、中子(なかご)を抜くように作る。写真は、その中子の丸棒付きのゴム型である。灰色の台ごと外して、ロウ型を抜き取る。

2006年10月12日

ロストワックス鋳造法

Billの工房 錆について書き始めたら、読者数が3割以上も増えたので驚いている。また、いろいろな方からコメント、メイルを戴き、感謝している。

 取り挙げる内容についてはいくつかリクエストもあり、その順に書いていく。
 
 最初の頃のロストワックス鋳造の話を読まれた方から、もっと詳しく書くよう要請があったので、しばらくはその話をしたい。

 ロストワックスは熱によってロウを流し出して作った空隙に、融けた金属を流し込む鋳造法である。厳密にはinvestment鋳造法という。investmentとは詰めたものという意味である。ここでは石膏などの材料をいう。

 まず、このウェブサイトをご覧戴きたい。これは宝飾用銀製品を作る方法を示している。ただ、テクニックを紹介しているだけで、技術的なことは何も明らかにされていない。写真を見て判ることは、ピンクのロウを加工して造形し、埋没材(investment)に埋め、乾燥、加熱してロウを流し出す。焼成して熱いうちに融けた銀合金を何らかの方法で強制的に流し込み、その後、その鋳型ごと水中に投下して破砕する。磨いて出来上がりというだけである。

 技能的にはこれでよいが、技術的にはかなりの工夫が必要である。わが国では「技能」という言葉と「技術」という言葉が混同されている場合が多い。殆どの場合「技能」と言うべきところを「技術」と表現しているように感じている。

 「技能」は経験のあることを間違いなく実行する能力であり、「技術」は経験のないことまで、持っている知識を活用して演繹する能力である。いわば、科学的思考力を用いて見えない山の向こうを透視する能力であるとも言える。

 
 鋳造ほど難しいものはないと思う。筆者は3人の優れた鋳造技術者に出会った。
 最初はBillである。彼は「一応大学には行ったのだ。でもあそこで教えることは知っていることばかりで、意味がなかったからやめたよ。」と言っていた。確かに金属加工、鋳造、鍛造については大変な知識の持ち主で、新しい情報も雑誌で得ていた。何を聞いても、非常に筋の通った答が返ってきて、いつも感心した。
 プラスティックを使った鋳造法はかなり古くからやっていたようだ。

2006年10月11日

ステンレスの功罪

d1006b85.jpg マグネシウムは2価の陽イオンであり、水の中で多少酸性を示す。酸性では鉄の腐蝕は起こりやすい。また、塩化マグネシウムが潮解性を持つところも、大きなファクタである。ナトリウムイオンは中性である。

 台風が来た後、屋外のステンレス製品が錆だらけになることに気が付かれた方はないだろうか。これは風が運んでくる海水のせいである。パチンコ屋のピカピカのステンレス外装が、一夜にしてサビサビになる。また、駅のエスカレータのステンレス外装も錆だらけになる。錆びた部分は不働態膜が壊れているので直ちに錆を落とさねば、全体が錆びていく。

 クロム・ステンレスは安価なので、建物外装に使われるが、このように塩水には極端に弱い。ニッケルが入っているとかなり錆に強くなるがまだ足りない。電気温水器は水道水の消毒用塩素の影響を受けないように、ニオブなどを含んだ高級な材料が使われている。核爆弾の製造時に使う冷却器の材料と多少似ているそうだ。

 快削ステンレスはニッケルが入っている高級品である。このステンレスはかなり錆びにくい。日本製の機関車はこのステンレスでタイヤを作ってある場合が多い。日本での製造時に錆びてしまって、不良品として返品されるのを恐れたからであろうか。
 アメリカではこの種のタイヤは非常に評判が悪い。理由は二つある。
 )犹い小さく、牽引力がない
 ⊇古鼎悪い

 ,砲弔い討鰐世蕕に摩擦係数が小さいので、レイアウトでの運転には障害となる場合はあろう。アメリカ人の中には、わざわざ摩擦の大きい鋳鉄で機関車のタイヤを作ってはめ替える人まで居たのだ。

 筆者は摩擦が少ないことを逆手にとって、貨車の車輪をステンレスで作った。曲線での走行抵抗が格段に小さくなる。これはフランジ形状がRP25とは違い、さらに低抵抗のコンターになっている。これについては後述する。 

 △海譴脇颪靴ぬ簑蠅任△襦集電ブラシをたくさん付ける以外ない。快削鋼ニッケルめっきのタイヤと比べると集電ブラシの数が2倍要る。先従輪まで集電するようにする。

2006年10月10日

塩が錆を作るが・・・

b8fd30ca.jpg 塩は錆のもとである。塩水を浴びると鉄は錆びやすい。しかしそうでもない場合がありうる。塩化マグネシウム(にがり)を含まない塩水では鉄はかなり錆びにくい。すなわち、塩化ナトリウムだけの岩塩を使う分には錆が少ないことが立証されている。要するに海塩を使うと具合の悪いことが起こるというわけである。
ドイツでは岩塩が取れるのでそれを撒いても鉄が錆びにくいそうだ。日本でよく用いられる塩化カルシウム(冬になると高架橋や交差点に置いてある)は、最近純度が上がったので問題がないが、以前はマグネシウムを含んでいていろんな問題を引き起こしていた。

 塩分濃度が高いとどうなるかという実験結果も出ている。興味深いことに、海水程度の3.5%くらいの塩水中の腐蝕が、一番激しい。どんどん濃くしていくと、錆びにくくなる。酸化剤としての酸素の溶解量が減るからであろう。

 住んでいた町の近くの塩湖に塩田があり、そこに遊びに行くと、ブルドーザがエンジンルームだけ水面から出して塩を押しているのに出くわした。キャタピラが完全に水没する深さで飽和食塩水に浸かっているわけだ。ここの塩田は太陽光の吸収がよくなるように、塩水の中に青緑色の染料を溶かしていた。意外なことに、キャタピラ、スプロケットいずれも錆の痕跡もない。白く塩が析出しているが銀色の鉄の地肌が出ている。

 近くに塩水に浸かったレイルもあったがこれもほとんど錆びていない。しかし少し離れたところにある鉄の杭は錆びていた。
 つまり、塩の濃度が高いと錆は抑えられる。しかし、マグネシウムイオンが多少は入っているので、ある程度薄まると錆が進むというわけである。

 この塩湖の塩分は、当時海水の8倍で、死海ほどではないがかなり濃い塩分を持っていた。
湖岸に簡単なリゾートがあり、泳げた。これは戦前の絵で、竜巻と火災で壊れる前の隆盛を示している。市の中心部から特別列車が出て、一日遊んで帰るということが行われていたそうだ。駅の跡地には客車の残骸もあった。

 1970年代はただ泳ぐだけの場所があった。機械で掘って深くしてある。そうでないと遠浅で、1キロ歩いてもヒザの深さしかないからだ。貸しレンガ屋というのがおもしろかった。1人50セントでヒモの付いたレンガを貸してくれる。それを足首にくくりつけて水に入ると、ちょうど首だけ出る程度に沈む。それを付けないと、バランスが悪く、腹が浮いて頭が沈む。シャワァ用には巨大なタンク車が真水を運んできていた。確か25セントで使い放題だった。

 その後、気候の変動で湖水の水量が増し、せっかく作られた新しいリゾートは水没した。お化け屋敷みたいになった様子が今日の写真である。
 湖水の塩分もかなり減って、塩田は殆どが廃業した。 

2006年10月09日

錆が少ないわけ

8d936467.jpg アメリカで生活し始めた頃、日本と違う点を一番感じたのは錆が少ないということだ。 それにはいくつかのファクタがある。順に挙げてみよう。
 .撻鵐の使用量と質が違うこと。
 ⊆承い少ないこと。
 K瓢処理が当然のように行われていること。
 こご澆ら遠いこと。


 .撻鵐はとにかく安く、塗り方も工夫されている。当時ロ−ラ刷毛というものは日本では見たことがなかった。家庭用の吹付け機(しかもエアレス方式)が安く売られていた。水性エマルションペイントが当然のように安く売られ、しかも隠蔽力がよい顔料と耐久性のあるバインダ(要するに固まる油のこと)が組合わされている。私自身ペンキ塗りは好きで実家の手すりや塀などを塗ったことが多々あるが、耐久性が全くなかった。それに比べてアメリカのペンキの塗りやすく、長持ちすることは驚異であった。よく友達の家のペンキ塗りを手伝った。

 確かに湿気は少ない。しかし屋外のものは、ペンキを塗らなければならない。室内のものは全く錆びない。手を触れると、掌の汗の塩分が付き、そこだけ錆びる。模型のレイルも鉄製のものが多いが全く錆びない。

 0 ̄瑤瓩辰の使用量が極端に多い。当時日本から輸出された自動車は床が錆びるというクレームが多かった。高速道路に塩をまくことが当時の日本の限られた高速道路ではほとんどなかったので、経験できなかったからだ。米国北東部では、冬季の塩の消費量はすさまじい量だ。塩化物イオンは鉄の表面の酸化膜に穴を開け、そこからの腐蝕を容易にする。鉄はもともと酸化されやすく、ほんのわずかではあるが不働態化している。塩がそれを破るのだ。
 日本の自動車産業は鋼板に片方だけ亜鉛めっきすることを始めた。しかもめっきしてから加熱し、表面だけではなくある程度まで亜鉛を浸透させるという離れ業をやってのけたのである。あたかも冷たいパンにバタを塗り、トースタで焼いて滲みこませる如く。これが大成功を収め、問題の多かったガソリンタンク内側にも採用された。その結果、日本製の車の燃料系統のつまりは、ほとんどなくなった。

 また、亜鉛微粒子を含む防錆下塗りペイントが、どこでも入手可能なことが大きな要因の一つであろう。屋外で使うものは必ずこれを塗ってから上塗り塗装するのが常識となっている。

 い海譴楼娚阿斑里蕕譴討い覆い海箸任△襦3ご澆ら約100kmまでは、海水のしぶきに含まれる塩が風に乗って飛んでいく。日本で海岸線から100km以上のところは長野県の一部だけである。すなわち、日本ではどこにいても鉄は錆びることになる。
 この塩の微粒子はどこにでも入り込み付着する。それは水蒸気を集め、水溶液となって鉄の腐蝕に参加する。したがってアメリカの内陸部、すなわち大半の地域では、室内の鉄は錆びない。
 私はレイアウトを作るに当たって、風が入らないように気密な部屋を作り、エアコンで湿度を40%台に保っている。おかげで鉄レイルは全く錆びない。
 
 写真は工事中のレイアウトの一部である。鉄レイルで出来たポイントの様子をご覧いただきたい。ガードレイルは、しばらく屋外に放置し、少し錆びさせて取り付けてある。

2006年10月08日

Oh, my Gosh!

b0ecd1b3.jpg  "Oh, my Gosh."は、"Oh, my God."の変化した形で俗語である。驚いた時に発する。
 
 しばらく漬けて置くとこうなる。ステンレスのせいで、鉄が錆びやすくなっているのだ。あとは細いドリルでほじくってやれば終了する。

 一般論だが、日本でのステンレスの使い方は、かなり出鱈目である。周りのことを考えずに部分的にステンレスが使われているので、ステンレスは生き残るが、その周辺の鋼はたちまち錆びて消滅する。よくあるのは、スチール製ドアのちょうつがいとドアノブだけがステンレス製という例だ。ステンレスの周りだけ、ががたがたに錆びている。以前住んでいたマンションの階段室のドアがそれで、台風のときにねじ切れて飛んだ。事前に警告していたのだが、管理会社が無能で理解できなかったのだ。

 筆者が家を建てた時も、事前の注意にもかかわらず、水道屋がステンレスで出来た温水器を鉄管で配管して行った。「直ちに取替えに来い。」と言うと、「行きます。」と何度も言うのだがついに来なかった。けしからぬ話だ。その後、その水道屋は倒産したらしい。バチが当たった様だ。
 
 5年も経っていたので、パイプレンチで自分で外して見て驚いた。管の厚みの半分以上が腐蝕している。
Oh, my Gosh! あと3年位で破裂するところであった。

 鉄道車両はステンレス製のものもある。鋼製台枠の上に車体を載せているので、台枠が錆びやすくなる。浮かして絶縁するか、犠牲電極をたくさん取り付けるしかない。船舶もステンレスの推進軸を使うことがあるので、周りには犠牲用の亜鉛ビレットを打ち付けてある。

 大型トラックにステンレスの飾りを多用する人たちがいる。いわゆる「デコトラ」である。表面はきれいだが、その下はぐずぐずに錆びている場合がある。

 住宅にはステンレスが多用されているが、施工者に知識がないので、鋼材とステンレスが接触している場合が多い。ニューヨークのクライスラー・ビルステンレスのドームは絶縁して浮かしてあるそうだ。1930年代から、既にステンレスは周りの接触している鉄の腐蝕を速くすることが、アメリカでは知られていたのだろう。

 翻って、日本の話に戻る。近くの駅に、ステンレスの板を普通のボルトで締めた箇所がある。風雨に晒されてボルトは急速に錆びていく。3年位でボルトは消滅する。ステンレス板が風でひらひらするようになると、また新たにボルトで締める。これを繰り返している。根本的に駄目である。注意して差し上げたのだが、理解できないようだ。鉄道設備にはこのような箇所が目立つ。

 さらに気になるのは東海道新幹線駅プラットホームの柱だ。鋼材で作ってステンレスが巻いてある。絶縁して浮かしてあるだろうか。次の大地震がくればその結果が出る。

2006年10月07日

Oh, my Heck!

0ae21f6c.jpg  "Oh, my Heck." は少々品のない英語で、「こん畜生、やっちまったぜ。」という意味だ。Billがたまにそう言う時は、ドリルやタップを食い込ませて折った時だ。
 折れ込んだタップを取り出すのは大変である。相手が鋼の時は、アセチレンガスで赤熱する。灰の中に放り込んで保温し、全体を焼きなます。そして少し細いドリルで粉砕するのだ。

 相手がブラスの場合は、「Muriatic Acidに漬ける。」という。この言葉は俗語であり、化学技術用語ではない。字義通りに訳せば「海の酸」という意味で、塩酸のことをいう。

 鉄は銅に比べ錆びやすいので、希塩酸の中に漬けると、鉄が溶けて銅が残る。ブラスは亜鉛も含むので亜鉛は溶けるが、表面だけで内部までは溶けない。

 2日ほど漬けておくとブラスの表面は銅色になるが、鉄合金のタップは消滅する。鋼の中の炭素がわずかに黒い粉末として痕跡を残すのみだ。

 今日の写真は何であろうか。ステンレスの手桶の中に台車枠が放り込んである。

そうだ、タップが折れたのだ。海水程度(3.5%)の食塩水に漬けてある。水は雨水である。ゴミ、埃がかなり入っているがかまわない。

 これは筆者の工夫で、塩酸を使わないで鉄を速く溶かす仕掛けだ。ステンレスを使うところがミソである。単なるイオン化傾向の差ではないところをご理解戴きたい。

 ステンレスの流し台に鋼の包丁、空き缶などを置くと極端な錆が生じることに気が付かれた方もあるだろう。ステンレスではなく鉄が錆びるためだ。金属の専門家の説明によると、「ステンレスは銀より電位が高い」らしい。ということは、これを使うと銀電極を使ったボルタ電池風の物が出来るというわけである。鉄はどんどん錆びていく。このとき亜鉛は溶けるはずだがそれは表面だけで内部は関係ない。タップはかなりの速度で腐蝕する。

 その時、食塩の塩化物イオンがあると水溶液の電気伝導性が増大し、溶解速度が増大する。pHが低いと良いのだが、最近の酸性雨程度で十分である。

 3日ほど漬けて置くと完了である。色々な方から「うまく行った」との報告を戴いている。

2006年10月06日

ダイナミック・ブレーキ

6afb4bf1.jpg ダイナミックブレーキについては9月5日の記事で少し触れたが、さらに詳しく書けという御要望を戴いている。

 下り坂をブレーキ無しで下るのは不可能だ。軸受けがローラベアリングになると摩擦がほとんどなく、空気抵抗だけといってもよい位の状態になる。機関車の後ろには1万トンの列車がある。抑速ブレーキが必要である。機械式(摩擦)ブレーキではすぐに焼けてしまう。

 幸い電気式ディーゼル機関車は各軸にモータが付いているので、それを発電機にすれば、電気ブレーキが効くことになる。このときモータの界磁には励磁電流が必要である。補助発電機で起こした電気で励磁して発電する。作られた電力はエンジンの上部に取り付けた抵抗グリッド(抵抗器でできたバーベキュー網状のもの)に通す。発生した熱は、ファンで大気中に放出される。

 そのファンはモータで発電された電力で廻る。GP9では1番と3番のモータで作られた電力で廻ると書いてある。すなわち、力行状態では止まっている。
 ダイナミック・ブレーキを作動させたときだけ廻る。その回転音はブレーキのノッチ切り替えによって変化する。
 ベアリングの寿命を考えると、止まっているときに衝撃があると痛みやすいようにも思うが、風でいつも少しずつは廻っているので、問題はないのだろう。

 どんな機関車にも付いているわけではなく、本線上に長大な勾配がある路線のみに採用されている。発注時に取り付けるかどうかを決める。

 ギヤ比もいくつかの組み合わせが用意されていて、旅客用・貨物用、線区の勾配などを考慮して発注できるようになっている。

 運転マニュアルを見ると冷却液の調合も指定されている。-60℃までのグラフがあるのはさすが大陸横断鉄道を持つ国である。

 筆者が体験した最低気温は、自宅裏庭で-37℃、標高3300mのスキー場で-57℃である。そのグラフはハッタリではない。

 写真はKemtron社製のロストワックス鋳物である。さすがに45年前のものなので少々古臭い。右は自作のWinterization Hatchである。 

2006年10月05日

続 Winterization Hatch

000a558f.jpg 昨日のWinterization Hatchの図はかなり反響があった。栗生様以外からも連絡を戴いた。私は動力車の構造に異常に興味を示す体質で、いろいろな機種のマニュアル(本物)を手に入れている。
 もう50年以上も経過したマニュアルは、劣化が進みコピーし直して保管しているものもある。いずれCDにしておきたいとも思っている。(最近はウェブ上にもコピィがUPされている。実は昨日の図はウェブからの引用。)

 そのなかにGP7の冷却装置の図がある。これを見るとはっきりするのは、ラジエータは直列で(当然といえば当然だ)ファンの作動数を加減することで冷却量を調節できる。右がキャブ側である。

 冬モードにすると、左のVentГ亙弔犬蕕譴襦3圧いラジエータで加熱され、上に吸い出される。その一部を吸い込むと、それは空気圧縮機あたりを保温し、また冷却する。エンジンの回りは十分に暖かく、温められつつ右に流れる。その空気はキャブに近いラジエータの下のVentイ鮠し開けておくことにより吸い出される。イ鉢Δ隆屬砲漏嵎匹あるというのも大事なポイントである。
 ラジエータ・グリルは別名レジスタとも言う。まさに吸気抵抗を増して、エンジン・ルームからの吸出し量を増やしているのだ。ここで強調しておかねばならないのは、エンジンルームは負圧であり、冬季モードに切り替えられたハッチから吸い込まれているということだ。決して押し込まれているのではない。ハッチ内部の垂れ壁は、経験上決められた長さなのであろう。水平方向に固定された蓋も程よい長さで温風を吸い込むようになっていると思われる。
 夏モードなら、全てのラジエータの下が空いている状態なのでエンジン・ルーム側面のルーバ(ガラリ)から吸い込まれて、上に抜ける。冬季はルーバは閉鎖される。

 このマニュアルからはそのように読める。しかし一部の機関車E-8,E-9あたりでは冬季は冷却ファンを上下逆に取り付け、ラジエータを通った空気を本当に押し込んでいたとUPの整備員から聞いた事がある。

ALCOの機関車にもWinterization Hatchはあるようだ。Walthersのカタログの
Details Westの図の中にあったような気がする。また小型のフッドディーゼルの冷却ファンの上にかなり大き目の箱が載っているのは多分それだろう。

2006年10月04日

Winterization Hatch

f3eb1b28.gif 昨日のGP7の写真をご覧になった方から、「ラジエータ・ファンの上に載っている妙な形の箱は何か」という御質問を戴いた。皆さんが詳しく見ていらっしゃるので驚いた。
 
 これはWinterization Hatchという。前の語の発音はウィンタリゼイションに近い。中身は空でシャッタが付いているだけである。
 
 エンジンルームの中は負圧になっている。冷却用空気はラジエータのみを通過するのではなく、内部の補機類を冷却してからラジエータを通過する。もちろんその中間点には、手動・自動のシャッタがあり、気温その他の条件により、エンジンルームの中の空気流通量を加減する。冷却ファンも条件により動く数を変えられる。

 さて、猛吹雪の中を走るときは何が起こりうるだろう。雪はエンジンルームに侵入する。負圧だから当然である。多少のことは良いのだが、UPのように山岳路線を持つ鉄道では、それは大変なトラブルを引き起こすことがある。比較的温度の低いところでは雪が溜まり、凍結してしまうのである。したがって、冬将軍がやってくる前に相応の準備が必要である。

 この図はEMDのGP9の取扱い説明書からのコピィである。この中央左にあるダンパを半時計廻りに90度回転させる。同時に、エンジンルーム側面にあるルーバ裏にあるエア・フィルタを板で塞ぐ。するとエンジンルームはかなりの負圧となり、ラジエータから放出された熱気はほとんどが吸い込まれる。その結果、エンジンルーム全体に程よい温度の空気がいきわたり、凍結から守られる。

 このハッチ(箱)の上は、ファンの上だけ開放されている。四角の穴が開いているだけだが、たいてい粗い金網が付けられている。小動物(リスだとか鳥)が侵入するのを妨げるためである。

 夏はダンパを下向き(この図の通り)にすれば熱気は大気中に全て捨てられる。

 模型には何の関係もないことではあるが、構造を知っていると、ちょっとしたディテイルを付けて、より実感味が増すはずである。
 この図ではわからないがダンパの軸は外に突き出て小さいハンドルとロック・ボルトがある。 

2006年10月03日

放熱ファンのルーバー

e6c58f3c.jpg 内野氏と話した思い出の中に、放熱ファン・ルーバの放射状の部材がどうして少しねじれているかということがある。

 写真はGP7の放熱ファンである。この鋳物は誰が作ったものかは知らない。多分PSCの鋳物であろう。良い形をしている。完全な放射状ではなく、わずかにずれている。中心部が少々時計廻りに回転している。どうしてだろうか。

 何人かでわいわい話していた時だ。内野氏と筆者の見解が一致した。最近、伊藤剛氏に確認したところ、それでよいということであったので公表したい。

 放熱ファンに限らず、使用時に温度差があるときは、材料の伸縮を逃がす方策をとらねばならない。この場合、温度が上昇すると放射状の部材は膨張して長くなる。すると中心部がわずかに右廻りに回転することになる。

 このような設計法は、工場のいたるところで見られる。蒸気パイプが大きくΩ(オメガ)状に曲げられているのもそれである。

 当然のことながら、蒸気機関車のポイラの支えも伸びを逃がすようになっている。鉄橋の自由端の伸び縮みはとても無視できない量だ。最近はその伸縮を逃がす支えが、摩擦の少ない特殊樹脂で出来ていてローラは使われていないそうだ。

 そんな話から始まって、ありとあらゆる工業製品とその加工の話を伺ったのがつい昨日のような気がする。

 
 
 浮津信一朗氏からも内野氏の早すぎる死を悼むコメントが寄せられた。

2006年10月02日

訃報

9dffc2fa.jpg   内野日出男氏が亡くなった。68歳だった。

 氏とは25年ほどお付き合いをさせて戴いた。まだ都庁の建築課にお勤めの頃であった。東京駅八重洲口でお会いした時、豪快なビールの飲み方に驚いた記憶がある。

 「遊びにおいで」と誘われて、ご自宅にお邪魔した。
 工作台に0.8mmの真鍮板を置き、コンパスで半径3cmの円を描かれた。

 ドリルでその円周上に孔をあけ、糸鋸の刃を通されたのだ。何をされるのかと思いきや、突然鼻歌交じりで、さくさくと円周を切り始めたのである。

 「ほら、廻してご覧なさいよ。」とおっしゃる。机の上に真鍮板を置き、円板をその穴の中に置く。指先で廻すと、どこにも引っかからずにするすると廻るではないか。円周上のどの部分も隙間が均等で、真円と言ってよい仕上がりであった。

 自宅に帰ってやってみたが、これはとても難しい芸当であることが分かった。内野氏の達人ぶりを示す良い例で、友人にこの話をすると皆さんとても驚かれる。

 また旋盤工作の名人で特殊なヤトイを自作されたりして、その工夫は私も活用させて戴いている。

 懸架装置のイコライズはもちろん本物通りにも作られるが、量産品用の簡易三点支持装置(某模型店が特許と言っている)は内野氏のアイデアである。また、曲線で伸縮して車両隙間を狭く見せるカプラーも内野氏のアイデアである。

 オリジナルのアイデアを大切にされる方で、私もいくつかお褒めに与ったものがあり、懐かしい思い出である。

 その他鉄道模型界に多大な貢献をされ、アメリカの模型界にもMainline Modeler誌を通じて大きな影響を与えられた。

 3年前ご夫婦で訪米される時案内をさせて戴いたが、その後体調を崩され一昨日の悲報となった。
 
 まことに残念なことである。



写真は2003年2月、シアトル市内から空港へ向かうリムジン車中でのひとコマである。左は筆者(の腕)。



2006年10月01日

もう一つのE8の前頭部

13da92d9.jpg これはJanの前頭部である。ホワイトメタル製で少々出来が悪い。どう見ても前面のガラス窓が細い。
 その他気になるところがあり、たちまちごみ箱行きになる運命である。 もっとも捨てるわけではなく、るつぼで融かしてウェイトになる。

 今まで手に入れたJanの製品の下回りは、すべてウェイトになってしまった。どのように贔屓目に見ても機関車の台車がホワイトメタルでは、満足な走りは期待できない。

 昨日のBob Smithのエッチングはあまり感心しないので、「この二人が手を組めばどうか」と提案したことがある。Bobは「オレに喧嘩を売る気か」と睨み付けた。
 Bobとは15年ほどお付き合いがあったが、5年ほど前に亡くなった。

 大量生産品に対して、ここで紹介しているような製品は一部の好事家が買って楽しんでいるわけである。ごく一部の熱狂的な支持者が満足すればそれでよいと言う立場で作っている。
 一からスクラッチビルドするのは大変だから、図面を書いて数字を割り付けるところまではしておいた。あとはお好きにやりなさい。ガタガタ文句をいうのなら買ってくれなくてもいいんだよ、という感じである。

 店で売っているわけでもなく、雑誌にたまに載る広告を見て予約する。手紙がきたら送金するというわけである。むしろ、あちこちで行われるスワップ・ミート(交換会)に行って買うのが安心だ。物好きは複数買って、数年後に手放す。人気商品は高くなるし、そうでないと安くなる。

 ネット・オークションはこのスワップ・ミートの代わりをしてくれている。便利な時代になったものだ。

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