2006年09月

2006年09月30日

E8の前頭部

49c882ae.jpg この写真はフロリダのBob Smith氏のロストワックス製前頭部である。日本では考えられない青銅(ブロンズ)製の鋳物である。

 どういうわけか、アメリカではブロンズ製ということが謳い文句になっている。ということは、ブラス製より高級感があるように感じる人が多いということだ。

 最近見たディーゼル用台車の軸箱は、わざわざブロンズ製と書いてある。軸受けにはブラスより適する、という気持ちが強いようだ。 

 この前頭部の鋳物を始めて見た時は、砂型鋳物かと思った。しかしよく見ると、埋没材(砂の代わりのセメント状の鋳型)は細かく、細部までよく鋳込まれている。表面が梨地になっているので、サンドペイパでざらつきを落とせばぴかぴかになる。

 先日のE8の前頭部を外して取替えることになっている。キャブ・ドアがないのでこれは新製する。その下の梯子も、形よく作り直すつもりだ。この程度のことはわけなくできる。

 問題はスカートで、ブラス製ロストワックス部品があるがUPの形ではない。一部作り変えるぐらいなら全部作った方が楽かもしれない。60年代までは、スカートのなかに連結器を隠したタイプもあり、それもなかなかよい。

 このE-8はCity of Los Angelesの14両編成の先頭に立つもので、ある程度は時代考証をしておきたい。客車の方は半分以上出来ている。もちろん、フルブラス編成である。今、荷物車をスクラッチビルドしている。これもあと一年以内に塗装までもっていける予定である。

2006年09月29日

Janのエッチングキット

c4b61f1d.jpg この写真の右手にボディ側面の傾斜が始まる部分がある。その線で車体が接続されている。窓枠もその線の延長上で接続される。こんな細いところでつながなくてもとも思うが、これがなかなかよいアイデアで車体の曲げ加工が簡単にできるようになっている。このGTELはヴェランダ・タービンと呼ばれている。回廊部屋根のひさし高さで全周を継いであるのだ。

 こうすることによって、エッチング板の構成が非常に簡単になり、価格を低く抑えている。
 
 細い窓枠の裏にはブラスの線を貼り付けておけば外れることはない。外側に見える継ぎ目は、やすり落としてしまえばよい。
 
 初め、このキットを見たとき、「こんなもの、できるものか」と思ったが組み立ては容易で、驚いた。
このような発想のキットは他に例を見ない。

 Janのキットにはホワイトメタルが多用される。先日のEMDE-8もそうである。出来がよければいいのだが、たいてい何かおかしい。

 「ここのキットを元に作りました」という作品のうち、素晴らしい出来のものは、エッチング板以外はすべて作り直したものが殆どだ。

 Janは数年前に亡くなった。

2006年09月28日

太くなるヤトイ

6afeab18.jpg モッチー様が正解である。よくおわかりになられたと思う。あまりよい写真ではないがこれで勘弁願いたい。
 英語ではExpanding Mandrelという。快削材で出来ていて、簡単に所定の太さに削れる。そうしてロック・スクリュウを締めれば多少広がって固定される。つかみ様のないパイプ状のものには適する。
 機関車のタイヤを削る時には不可欠である。

 
 さてJan Lorenzen氏のキットの話に戻ろう。彼のキットはいわゆるエッチング・キットである。昔鉄道模型社が出していたようなものと言えば、お分かりになる方もいらっしゃるであろう。非常に緻密に考えられたキットで、平面を組み合わせて三次元の模型を構成する。思わぬところで接合させるので、意外性があって面白い。

 「機関車のキャブの窓枠が、機関士の視線の高さで接合される」と言ったら、信じて戴けるであろうか。当然、添え木を当てることになるがうまく接合されている。

 Janには一度しか会ったことはない。ありとあらゆる機関車、貨車のエッチング・キットを作り出している。しかし、下回りはどれもこれも感心しない。聞くところによると、建築の方の出身で機械工学は知らないと言う。さもありなんという感じである。コンピュータを一切使わず、すべて手で計算して、原図も手で書くと言っていた。

 まだ、組んでいない彼のキットがいくつかあり、下回りの設計に頭を悩ませている。最終的に下回りは捨てて、自分で作ることになる。

2006年09月27日

続 塗装はがし

627dea02.jpg この写真はJan Lorenzen氏のキットを組み立てたものの塗料を剥がしているところである。大きなポリ袋に入れて、ブレーキ液を掛ける。時々ひっくり返せばよい。
 このキットはホワイトメタルの前頭部にエッチングのボディ・シェルを付けた物で前頭部の形が非常に良くない。前面の窓が小さすぎるのだ。ボンネットの丸みもややおかしい。

 JanはMIT大学院終了だそうで、ややこしい組み立て法を取るエッチング板の寸法は大変よく計算されていて、誤差が全くない。しかしこの前頭部でも分かるように板金で作られていないものの出来は良いとはとてもいえない。
 動力も評価できない。しかし、最初から二段エッチングの手法を取り入れたことは素晴らしい。

 この前頭部はBob Smith氏の青銅ロストワックスの前頭部に取り替えることになっている。

 
 ブレーキ液に漬けておくと一日でこのような状態になる。多少付着しているが、すでに塗料は軟化しているので、ブラスのワイヤ・ブラシでこすると見事にきれいになる。前頭部と妻板は新品が用意してあるのですぐ換装できる。

 この車体はE-bayで安く競り落としたもので、あとはBユニットをどうするかである。台車も入手してある。



 さて、昨日の写真に対するお答が、どなたからも、まだない。いかがであろうか。

2006年09月26日

塗装はがし

32f80f06.jpg 塗装してある模型を塗り替えたい場合、日本ではラッカ・シンナにつけるという手が紹介されてきた。それしかないと信じている人も多い。シンナは臭うし、火気厳禁で扱いが面倒である。

 Billが「自動車のブレーキフルード(液)に漬けるとよい」と教えてくれた。たまたまその月の雑誌にも載っていたが、Billが言うには、「こんなこと常識さ。車の保守を自分でやる人なら誰でも知っているぜ。」と言う。
 確かに、ブレーキフルードを入れ替えるとき、こぼすとその辺りの塗料が見事にはがれる。アメリカの中古車屋でエンジンフッドを開けてもらうと、自分で保守してきたであろう車はブレーキのマスタ・シリンダのまわりの塗料がはげて錆が出ている場合が多い。むしろそんな車の方が程度がいい場合がある。ちゃんと手を入れてきた証拠であるからだ。

 自動車のブレーキ液は油ではない。「水と油」という言葉にあるように油なら水に溶けない。ブレーキ液はアルコールエーテルという物質で沸点が高く、融点が低い。-80℃から280℃以上まで液体である。化学が進歩しても、これに勝る液体は見つかっていない。
また、水が多少混入しても中に含まれる添加剤が水と反応して沸点の低下を抑える。

 さて、ブレーキ液に浸すと、塗料は見る間に膨れ上がりひびが入ってはがれ始める。あとはワイヤ・ブラシでこすって水洗いすればよい。臭いも殆どなく引火もない。これが「有毒」だという誤った情報を流す人もいるので、困っている。もちろん飲めば危ないが、手についても平気である。洗えばよい。もしも触っただけでも毒性があるというのなら、自動車修理工がたくさん死ぬことになる。どなたか、そのようなことを聞かれた人はいるだろうか。
 「手につくとひりひりする」という話もまことしやかに流されているが、明らかなウソである。化学的知識の欠けた人の作り話である。
 この物質の仲間はマジックリンという洗剤にも含まれている。だからマジックリンは塗料を侵すのだ。

 塗料が溶けたブレーキ液は上澄みを集めて保存し、沈殿は燃えるごみで捨てる。徐々に空気中の水分を吸収するので体積が増えてくるが、効果はさほど変わらぬ。

<追記>
 2009年7月24日から三回に亘ってさらに詳しい記事がある。参照されたい。

 

 さて今日の問題。この写真の物体は何であろうか。

2006年09月25日

続々QCTP

a88cd98a.jpg これはQCTPにつける自作アタッチメントである。複合刃物台の角度が、平行かどうかを確認するためのものである。これは日本製の高級品がつけてある。

 ダイヤルゲージをテスト・バァに当て、刃物台をスライドさせればすぐわかる。もちろんその前にチャックの心が出ているかをこれで確認する。

 今まで面倒な方法でダイヤルゲージを当てていたが、これさえあればたちまち完了する。

 最近中国製のダイヤルゲージがとても安く手に入る。心の振れを見るぐらいなら、何の問題もなく使える。磁石のついた自在台もこれまた安い。こういうものは使えればよいので、アマチュアには低価格はありがたい。目盛りがミリでもインチでも関係がない。動けばよいからだ。
 何種類ものダイヤルゲージを買ってしまった。内径用のインジケータはアタッチメントがいろいろあり、工夫してその組み合わせを考えるだけでも楽しい。

 先ごろ核兵器開発に使える超高級精密測定機器を、低級品と偽装して輸出した件で検挙された会社も、売上をかなり食われていると推察する。最近はかなりの赤字だったらしい。この値段で売られてはたまらないだろう。

 QCTPのカートリッジには、他に綾目のローレットを切るための専用のものもある。2つのローラーがついている。高さを無段階に変化させられるので、先端が首を振らなくても、アタリを均等に設定できて都合が良い。

2006年09月24日

続QCTP 内径削り

13047d7d.jpg 鉄砲鍛冶という仕事は内径削りの作業が多い。あまり詳しく書くと、読者の中で逮捕者が出る可能性があって書けない。ほんのさわりの部分だけにしておく。

 Billの内グリ作業を見学していると、ただひたすら、「刃物を高くせよ」という。刃物は切削によりたわむから、ちょうど中心を通る水平線上に刃物があると食い込んでしまう。その結果えぐった内径が大きくなってしまうから始末が悪い。

 高く保つと、たわんでも刃が工作物から逃げる方向に行くので安心である。角バイトよりも、このような丸いバイトの方が、刃先の角度を調節できるので便利である。この写真では見えないが簡単に目盛りをつけて角度を覚え易くしてある。 

 QCTPは内グリ時には大いに威力を発揮する。刃物をZ軸方向のみならずY軸方向にもネジで動かせるので、高さの調整をしやすい。これがシムによる調整だけではとても難しい。BillはQCTPではなく、特製の内グリ用刃物台で高さを決めていた。

 昨日の写真で心押台に付いている銀色の丸いものは何かという質問を戴いた。それは傘センタ(Bull Nose Live Centerという)である。大きな丸い穴が空いている物に押し込むことによって安定保持ができる。作っても良かったが、安いものなので完成品を買った。パイプを切ったりするときは不可欠である。

 その写真では複合刃物台のDROの取付け法も分かる。多少傾けてあるので見やすい。

2006年09月23日

QCTP

5a17a1f0.jpg  QCTPというのはQuick Change Tool Postのことである。旋盤の刃物台の一部を瞬時に取り替えられる工夫である。

 旋盤作業で面倒なのは、刃先の高さを合わせる作業だ。刃物の下に敷くシムをたくさん用意しておいて、刃物を締め付ける。切粉が入ると誤差を生じて面倒なことになる。

 QCTPはひとつの刃物ごとに高さをネジで調節してロックする装置がついている。ということはどの刃物も取り替えただけで刃先の高さが合う。

 これは大変な変化をもたらす。作業時間が大幅に短縮されるのだ。今まで刃物を3回取り替えれば、そのたびに数分間が無駄に費やされ、合計15分ほどは仕事をしていない。QCTPならその時間が限りなくゼロに近くなる。

 刃物を取り付ける部分(カートリッジという)を刃物の数だけ持っていると良い。以前はそれがかなり高価で、なかなか買えなかったが、現在は中国製の廉価版が出ている。たくさん買っても、悩まなくて良い価格であるので、20個ほど持っている。上にあるネジを廻して高さを決め、ロックナットで固定する。

 カートリッジはいろいろな形があり、角バイトをはさむ形はもちろんのこと、丸い刃物を保持するものとか、突っ切りバイトを保持するものなどがある。

 どれもかなり出来がよい。完全な互換性があるので番号さえ間違えなければ、どのメーカの部品も合う。

 ツール・ポストはピストン式といって上のレバを廻すと1mm程度飛び出してくる。するとカートリッジが斜面に密着して固定されるのだ。


2006年09月22日

逆ネジの効用

01566f0c.jpg この模型を見るまで、逆ネジなど模型には関係ないと思っていた。ライヴスティームの世界では、機関車の左右の部品を区別するために逆ネジを使う人がいるということは聞いたことがある。
 
 これはBill Pope氏のディーゼルのキットである。ダイキャストでできた左右型を逆ネジで締め上げている。こうすることによって隙間なく完全な組み立てができる。すばらしい発想だ。

   
 電動模型の世界ではあまり例を見ない。逆ネジを使えば、ネジの回転により二つのナットの距離を変えることが自由にできる。何か面白い利用法はないものかと考えている。ターンテイブルのディスクブレーキぐらいしか思いつかない。

 筆者の旋盤では逆ネジが切れない。逆ネジダイスを用意しなければならない。

 
 本日で開設以来、一月を迎えた。これも読者の皆様のお力添えと感謝している。記事は時間のあるときにある程度書き溜めておき、適当に切って公開している。難しいのは写真である。人に見せることを前提にしていない写真ばかりで、単なるメモでしかない写真が多い。そのあたりのことを御斟酌戴いて、お付き合いをお願いする次第である。

2006年09月21日

続・共晶ハンダ

e7853051.jpg 手元の金属学の本からハンダの組成図を書き写そうと思っていたらこんな図がネット上にあった。解説まであるので、殆ど書くことも無くなった。

 これをご覧戴ければ一目瞭然で、ABD,BCFの二つの三角形の領域では細かい金属結晶が存在し、「こしあん」状態であることが分かる。その状態なら「ハンダを盛る」という芸当が可能である。
 しかし下手に動かすと「こしあん」が干からびた状態になりひびが入る。コテの熱を供給しながらこねなければならない。「こしあん」で言えば多少の水を加えてこねる訳である。

 DBF線より下では完全に固まっている。183℃以下では固体しかない。ABC線以上では完全な液体である。大きなコテで十分な熱を加えればこの状態を作り出せる。私の場合、ハンダ付けが下手な時代はこの完全液体状態を作り出す温度まで加熱することが出来なかったからだろう。強力な加熱装置を持っていなかったときは、ハンダ付けは難しいものだと感じた。その時偶然手に入れた共晶ハンダは融け始めた瞬間に液体化するので、つるりと隙間にしみ込んで、多少動かそうとも、完璧な美しいハンダ付けが完成した。それを「うまくなった」と感じたのだ。

 この説明によると、昔の配管用のハンダはスズ34%鉛66%で、強くて美しいハンダ付けが可能だそうだ。スズの多いハンダはあまり見ない。

 筆者はこの配管用のハンダを大物用に使っている。ガスで加熱すれば、とろとろと流れて極めて美しいハンダ付け(この説明の中ではWiped Jointという語を使っている)ができる。

 この説明の中にデンドライト結晶の話が出てきたのには驚いた。図も美しく描かれている。最近話題になっている、リチウムイオン電池の発火の原因の一つらしい。

 弱電業界ではいま世界的に無鉛ハンダの使用が義務付けられている。無鉛でしかも"eutectic"でなければいけないので、面白い配合比のハンダが何種類か出現しているようだ。

 どうして"eutectic"でなければならないかというと、いわゆる「ハンダ割れ」からの脱却の必要性である。私の保有している古いドイツ車の電装品がよく故障する。外して見てみると、リレイなどのハンダにクラックを生じている。ハンダが"Eutectic"ではないからだ。なるべくきれいにハンダを吸い取り、新しいハンダで修理する。新しい部品を買うと出費が大きいが、簡単な修理であるからやってしまう。目指す部品にすぐ手が届くところはいかにもドイツ的で好きではあるが、故障しない方がいいに決まっている。

 最近の自動車部品は多分改良されていることだろう。それにしてもガス器具の故障修理による死亡事故はいたましい。製造者のハンダに対する知識が乏しかったことが一番の原因であろう。

2006年09月20日

共晶ハンダ

4dbb2ae8.jpg 共晶ハンダはスズ63%、鉛37%からなる。融点は183℃と習った。
 ハンダが一瞬で固体と液体の間を行ったり来たりする。初めてこのハンダを使ったとき、何かハンダ付けがうまくなったように感じた。

 当時は高校生で理屈が良くわからなかったが、その後多少は勉強したので知識が整理された。英語では"Eutectic Solder”という。訳語としては「融けやすいハンダ」という意味になる。

 普通のハンダは183℃よりは多少高い温度で融けるが、その融けた状態は2種ある。一つは完全に融けた液体の場合、もう一つは「こしあん」のような半流動状態である。後者は、場合によっては殆ど流れない状態もあるし、流れやすい状態もある。ただ、液体の中に何かの粒子があるように感じる状態である。

 「こしあん」状態の時、ハンダ付けしようと思っているものを動かすと、「こしあん」の粒子がささくれ立った状態になり、ハンダが多孔質になる。すなわち殆どくっついていない状態になり、力をかければぽろりと外れる場合が多い。英語では"cold joint"という。日本ではこれを「ハナクソ・ハンダ」というのだそうだ。

 普通のハンダを使う時は、この「こしあん状態」をすばやく通過させることが最も大切なテクニックである。大物の時は押さえているのも大変であるから、水を掛ける。Billの作業台には水を噴射するスプレイが在った。アメリカのハンダ付けの手引書にはたいていこの水を掛ける方法が紹介されている。
 場合によっては噴射ノズルを口にくわえて足で水タンクを踏む(蹴る)という離れ業まである。

 写真は私が使っている共晶ハンダで太さ0.032インチ(0.81mm)のものである。切って使うと、長さで量をコントロールする事が出来て便利である。包装単位は1ポンド(454g)である。下のほうの白帯にSN63PB37と書いてあるのが読める。

 融けているか、固体かのどちらかの状態しかないので、その特性を示す非常に興味深い実験がある。
 
 ある程度の大きさの真鍮板(厚さは0.8mm程度)にフラックスを塗り、多目の共晶ハンダをつける。ハンダが融けているのを確認してコテをゆっくり滑らせる。熱が伝わってハンダが融けるとコテは滑り始める。しかしとなりの領域はまだ温まっていないので、ハンダは固化する。コテは真鍮板に瞬時に固着し「コン」と音がするときがある。その次の瞬間、ハンダが融け始めて、また滑り始める。

 適当な大きさの力を掛け続けると、ハンダゴテがコンコンコンと音を立てながら滑っていく。共晶ハンダだけがこの音を立てる。すなわち共晶ハンダを自作する時は、これが成功か否かの試金石となるわけだ。

2006年09月19日

Self-Ejecting Chuck Wrench

e75a0824.jpg これは旋盤のチャックを締めるハンドルであるが、小さいスプリングがつけてあるのがミソである。

 旋盤を持っている人なら、どなたも一度や二度はハンドルを挿したまま起動させて、冷や汗をかいた経験がおありではないだろうか。
 
 Billの旋盤では、このスプリング付きのハンドルを使った。手を放せば飛び出してくるのである。
 うまい工夫だと感心していたら、「そんなもの、戦争前からあるぞ。」と言われてしまった。日本ではまず見ないように思うが、いかがだろうか。Bisonの製品はこんな形である。

 筆者のチャック・ハンドルには、スプリングをはめるのに適する細くなった部分があるので、適当なスプリングをはめて使っている。あまり堅いスプリングでは押し込みにくいので、かなり柔らかい物を使うのが良いようだ。

 ボール盤のドリル・チャックのハンドルを、挿したまま起動することもたまにある。鎖でぶら下げてあるので飛んでくる心配はまず無いが、かなりびっくりする。これも同じ理屈で出来ないかと試作したが大変調子が悪い。太くなりすぎて良くない。
 中心の部分が、ぴょんと飛び出るようにできればいいのだが、熱処理してあって穴をあけるのは難しそうだ。焼きなまして加工してみようと思っていたら市販品があった。
 ただし、これはかなり大きなキィである。小さいのを作ってみたいものだ。人間の考えることは世の東西を問わず、みな一緒であると納得した。

2006年09月18日

Z軸 DRO

7c283d38.jpg どうしても目盛りが半分に表示される装置が欲しいので、電子工学の専門家のK・K氏に頼んだ。二つ返事で作ってくれた。

 これがその装置である。任意の場所でゼロを設定することが出来、直径および半径の差分が表示される。

 これを使うと便利な事この上無い。あと0.02mm削るなどという切削も訳なくできる。これを導入してから殆ど失敗が無くなった。

 このような便利な装置がどうして売られていないのだろうと調べてみたら、三軸DROを買えばその機能が付いていることがわかった。しかしとても高価だ。


 しばらく前に写した写真であまり整頓していないところはお許し戴きたい。
 写真の右奥が昨日の説明の心押台である。4インチ(100mm)のノギスをちょん切り、ブラスのリング状のスクラップと角材で作った支持台につけた。見やすいように角度をつけてある。2時間の工作である。
 X軸は6インチ(15cm)のノギスをつけた。これもジャンク箱を探してそれらしい部品を介してつけた。
 Z軸はK・K氏に戴いた物で、Mitutoyoの高級品であった。デジタル出力を強引に取り出してある。



2006年09月17日

”DRO"について

bc373a4d.jpg これがC型コレットとクローザ(締めるもの)である。主軸を貫通して締める。中空軸であるから長材を通したまま、つかめる。入手したものに少々の加工を施して筆者の旋盤に合わせた。

 ブラス色のものは前述のEmergency Colletで好きな太さの穴をあけて使える。今はミリサイズの穴を空けて使っている。

 今日の表題のDROとはDigital Read Outのことである。すなわちデジタル読み取り装置だ。普通、こういう装置は20万円以上するものだ。しかしいくらなんでも高すぎる。
 

 筆者はインチサイズの旋盤を使用している。インチのネジが手に入りにくかったので自分で作るには便利であった。しかし、そのようなネジも日本で簡単に手に入るようになり、わざわざ自分で作ることも無くなった。 車軸はミリ規格だし、いちいち換算して作るのが面倒になってきた。送りネジをメートルネジに取り替えればメートル法の旋盤になる。この際、取り替えてみようかと考え始めた。

 そんな時、中国製のデジタル・ノギスが異常な安さでアメリカで市販され始めた。1本20ドル以下なら迷うことも無い。たくさん買って友達に分けたりした。4インチ、6インチのノギスを旋盤に当ててみたらどうやら使えそうだ。それでは、DROを限りなく安く作ろうということになった。ノギスの首をはねて、取り付け金具を介して固定するのだ。そうすれば、インチもミリも両方同時に使える。

 心押台のドリルの進み代は今まで、1回、2回と数を数えてこの目盛りまでという具合で加工していた。それをデジタルで直読できればありがたい。いつでも0に戻せるので、0起点からの深さがすぐ出る。思いついたその日に作ってしまった。

 次はX軸である。これも訳なく作れた。Z軸(前後方向、つまり工作物の太さの方向)には参ってしまった。取りつけたは良いが、1mm進むと直径は2mm細くなる。今まで失敗したことが無いのに、DROをつけたら余計に失敗するのである。どうしても数字を信用してしまうからである。だから、直径をあと0.05mm削るところを0.10ミリ削ってしまうことが多くなった。
 しかも、もう材料が無いものに限って失敗して、頭を抱える羽目になる。どうしても刃物が進む量の二倍を表示するものが必要である。

2006年09月16日

コレット

9790f6f0.jpg これは私の持っているコレットのカタログである。 すでに30年は経って印刷も変色している。

 引棒はステンレス製で握りに荒いローレットが刻まれている。コレットは中古をE-bayで探して買い集めている。どうしてもミリサイズも要るので、それは新品を買わねばならない。

 下の列の中央がコレット・スリーブである。MTにはめて使う。

 主軸が回転中に、このコレットを開閉する装置もあるが、私は量産はしないので買わなかった。メカ的には面白そうで欲しかったが…。

 この種の旋盤付属品はE-bayを見ているといくらでも手に入る。問題は発送方法と送り先で、殆どが海外には発送しませんとある。たまに海外発送するとあっても、航空貨物に限るとある。それは大物で高価な品なら十分に引き合うが、安い小物では贅沢すぎる。

 仕方が無いので、友達に頼み込んで受取人になって貰う。幾つか集まったら再発送を頼んだり、現地に行く用事があれば取りにいく。いつぞやは工具を50kgも頼んでしまい、スーツケースに木箱ごと入れておいたら検査で引っかかり、一時間も調べられてしまった。

 どうしてもミリ規格の工具が要る時は仕方が無いが、切削工具はインチ・サイズで問題ない。その方がトータルでは安くつくのは間違いない。

2006年09月15日

くさび

3a55bdd0.jpg これがMTを外すためのくさびである。これは必ず生の材料(要するに焼きが入っていない材料)で作れと教わったので、拾ってきた鋼材の端を切って作った。

 トングがついていれば楽に外せるが、もしこれがトング無しであるならと考えてみられよ。私の工具箱の中のMTのうち、大半はトングなしである。そのようなMTを使っていると外せなくなるというのは日常茶飯事であろう。
 
 運がよければ、引きネジの頭をプラスチック・ハンマで一撃すれば取れるだろう。それでも取れなければこれは悲劇である。

 イギリスの工具屋はMTをたくさん扱っている。上記のような問題を承知して使うよう勧めているのだろうか。アメリカではMTは人気が無い。

 イギリスにはMTの斜面を使ったコレットが市販されている。アメリカの商品にもある。これは良く締まるだろうが外しにくいだろう。しかもスピンドルの内側を毎回滑らせるわけだから、使用頻度が多くなると磨り減って、テーパが狂う。また、コレットは貫通型には作れないので長い材料は使えない。

 私はスピンドルのMTに嵌るコレット・スリーブを入れ、Cコレットを差し込んで使っている。コレットの引き棒は、当然中空で長い材料が貫通する。



2006年09月14日

モース・テーパとR-8

c2c479fc.jpg 旋盤のスピンドル(主軸)、テイル・ストック(心押台)の内側にはテーパがついている。たいていはモース・テーパ(日本ではモールス・テーパと発音する人が多い)である。以下「MT」と略す。
 他にはBSテーパとかJテーパなどがある。いずれも角度が緩く、はまり込むと自分の摩擦力で抜けにくくなるように設計されている。これを自己保持力(Selflock)という。


 写真の左はMT3テーパのスリーブである。スリーブというのは細いMT2のシャンク(軸)をMT3に嵌めるために太くするためのものである。日本で紹介されている(素人向けの)参考書には殆どMTを利用した製品の利用しか載っていない。素人向けに販売されている縦フライスのスピンドルもMT仕様である。
 
 そのためか、工作好きを対象にしたウェブサイトを見ていると、「MTのスピンドルからシャンクが抜けなくなりました。どうしたらよいでしょう。」というSOSが発せられているのを時々見かける。

 これはMTの性質上当然の結果であり、そのような使い方を推奨、あるいは他の方法を取りえない設計をしてしまった方に責任があると考える。

 Billにはこのように習った。「MTは抜くためのくさびが打ち込めないところには嵌めてはならない。くさびは押し出すためにある。MTを引っ張って抜こうとは考えるな。」
 
 この写真をご覧になればお分かりのように、縦に長い穴が作ってある。これはくさびを打ち込むためのものである。もしこのスリーブに細いMTのシャンクを挿し込んだ時、長穴から先端(トング)が見えない時は使うなということである。

 写真の右はR-8テーパである。これは角度が急であり、引張りを開放すればするりと抜ける。 ボール盤や縦フライスのように軸方向の力が掛かる所には適する構造である。これはMT3を差し込めるようになっているスリーブであり、これを持っているといろいろな工具を差し込める。

 日本ではこのようなR-8テーパを持つ縦フライスなどが、アマチュア用に市販されていない。おそらく日本中で「MTが抜けなくなった」という悲鳴が上がっているはずである。「棒を突っ込んで上から叩く」などと指南する人までいて、あちこちで精度の失われた機械が出現することになる。こういうときはスピンドルをばらして、油圧プレスで押し出す以外ないのだ。

 写真を見ればお分かりのようにR-8はMT3をちょうど包み込む大きさである。Billは「スピンドルがR-8の機械を買え。アマチュア向けにもたくさん工具が出ている。」と勧めてくれた。


2006年09月13日

微調整付き三爪チャック の内側

64c2532d.jpg 内側はご覧のとおりで右の穴に左の飛び出したフランジが差し込まれるようになっている。嵌めあいは緩く、1/32インチ(0.8mm)くらいの遊びがある。つまり0.4mmの偏心は吸収できるわけである。

 右の方で少し飛び出した黒いネジは偏心の微調整用である。本来は直交しているべきなのだが、何かの部品を逃げるためにこのようにやや傾いた形になっている。使用上は全く不都合は感じない。

 昨日の写真の長いネジは十分に細く、チャックの偏心をその撓みで吸収して締め付けるようになっている。このあたりの発想が実に賢いと感じる。

 爪はリバーシブルであり、Soft Jaws(生爪)にも簡単に取替えできる。

 BillにBisonを勧められてから、彼が勧める理由は何だろうと考えつづけてきたが、その答は使ってみてようやく分かった。今までチャックは中国製、日本製、イギリス製を使ってきたがBisonは抜きん出てよい。

 これに味をしめて、フライス用のチャックもBisonを買った。日本製より安いのには驚いた。

2006年09月12日

微調整付き三爪チャック

74e13bc8.jpg Bisonの鋼の質が一番良いということだったので、苦労して探した。鋼の専門家が言っているのだから信用するしかなかった。
 アメリカ製のBisonはすでに市場にはなく、Poland製の物しかない。それは、すでにBillのお勧めのBisonではないことになる。

 E-bayの工具のところを、ずいぶん長い間探していた。ついに「新品、30年ほど棚ざらし品、少々錆あり」という絶好のものを格安で見つけた。

 発送も船便で出してくれるという最高の条件の店であった。大きな箱にすると運賃がかさむので、なるべく小さい箱でと指定した。そうしたらチャックにぴったりした箱で送ってくれた。あたかもダンボール一枚を巻いたような状態で、10kg以上の鋼鉄の塊そのものを送ってくれたのだ。E-bayのほとんどの工具屋は「航空貨物で発送する」以外、受け付けない店がほとんどである。高価品は良いが、このような安い品では、運賃の方が高くなってしまう。
 配達に来た郵便屋さんは重くて持ちにくいので、郵袋にいれて抱えて来てくれた。申し訳ないことをした。税関も中身をちらりと見て、そこから錆が見えたらしく、免税であった。

 旋盤のスピンドルを少し加工してチャックのバックプレートをつけた。普通はバックプレートを加工するのだろうけど、私は「旋盤は工具」と割り切っているのでさっさと削り落とした。このあたりはBillからの仕込である。

 今日の写真は正面から撮った物で長いネジは固定ボルト、チャックの円周面に小さく黒いネジが見えているのが調整ネジ。バックプレートにはそれがあたる部分が見える。

 錆はそれほど深く進行していたわけではなく、丹念に磨いて防錆油を塗った。動作は完璧で焼き入れした物をつかむと、その剛性感が直接感じられる。低級品では硬いものをつかむと、内部のどこかがつぶれるような感触がある。 

2006年09月11日

step collet

6171601b.jpg これらがステップコレットのステップである。用途に応じて、ありとあらゆるステップが作ってある。

 筆者の持っている旋盤の教科書(日本語3冊)をもう一度おさらいした。やはり、コレットについてはさらりと説明してあるだけである。ひたすら四爪チャックで心を出すテクニック、ヤトイを作って心を出す方法、いろいろ書いてある。

 アメリカ人の工作の達人たちは必ずコレットをたくさん揃えている。このあたりの違いはどこから来ているのだろう。しかも生爪(ヤキの入っていない軟鋼の爪)を使う方法も日本の教科書には紹介されていない。私の持っている教科書が偏っているのだろうか。
  
 普通のコレットも生の材料で出来たものを売っている。中にはブラス製のコレットがある。耐久性は無いが、望みの径に内グリして使える。これを"Emergency Collet”という。非常用というのは言い過ぎのような気がするが、持っていれば便利ではある。

 Billは「チャックは高くても良い物を買え」と言っていた。銘柄を聞くと
"Bison”が良いと言う。私の旋盤に合うBisonを長年探して、ようやく見つかった。

 今まで三爪チャックはスピンドルにぴったり合う、いわゆる印籠組みになっていた。これではチャックの固有の誤差は絶対に除くことが出来ない。チャックのつかみ径が違えば、その径での固有の誤差が出てくる。多分0.1mm以下の誤差ではあるが許されるものではない。この誤差を克服するには、スピンドルの印籠部分を0.5mm程度細く削ってしまい、そこにチャックをつける。チャックの締めボルトをほんの少し緩めておいて、工作物(ワークという)の「振れ」がなくなるまで、チャックをプラスチックハンマーでコンコンと叩いて心を出す。要するに、チャックをスピンドル軸に対してわずかに平行移動させて偏心させるわけだ。これは近くの工場の経営者に教えてもらった。

 こう書けば面倒くさそうだが、意外に早くできるものである。練習すれば1分くらいで可能である。もちろん、調整が終われば、ネジを締め上げて、再度チェックしてワークを削る。

 明日はその叩く操作をネジで行うタイプのものの内部を紹介する。もちろんBison製である。これを、Adjustable Chuckという。商品名は"Set-Tru"である。最近の価格は信じられないほど高い。

2006年09月10日

3-unit GTEL

3492a22d.jpg GTELとはGas Turbine Electric Locomotiveのことである。ディーゼル機関ではなくガスタービンで発電機を動かし、それを各軸のモータに分配して列車を牽く機関車を言う。
 日本のこれまでのディーゼル機関車には電気式のものは少ない。最近久しぶりに電気式が現れた程度であるが、アメリカはその逆で殆どが電気式である。大出力ではトルクコンバータ内のクラッチが持たないからである。
 
 Union Pacific鉄道は世界の鉄道の中で、その種の機関車を最も多く保有し、稼動させた鉄道である。初期のものは4500馬力程度であったが、何度かの改良により最終的に8500馬力の機関車を30両稼動させた。この写真の機関車はその中で最終機番であり、意欲的な改造実験により11,000馬力を叩き出したモデルである。
 
 8500馬力級の機関車は3ユニットに分かれ、1両目はコントロールユニット、2両目はパワァユニット、3両目はテンダ(炭水車)である。もっとも石炭ではなく重油を積んでいる。重油は粘いので、ヒータで予熱して圧送する。水は積んでいない。

1両目には補助のディーゼル機関(それでも750馬力ある)と空気圧縮機などの補機類を積み、2両目にはガスタービンが積まれている。排ガスは2両目の最後尾から、炭水車の上をかすめて斜め後ろに噴き出す。その音はまさにジェット機の離陸時の轟音であり、UPのように田舎を走る鉄道にしか許されない凄まじさであった。

 そもそもどうしてこのようなタービン機関車が導入されたのかというと、燃料費の高騰に端を発している。ディーゼル用の軽油の値段に比べ4分の1のC重油を使うにはもっとも簡単な方法であったそうだ。ただし、距離あたりの消費量は軽油の2倍ほども喰い、決して良くなかった。機関車自体の保守費用を考えると、高性能なディーゼル機関車が出現すれば、負けそうな範囲にあったという。
 しかも、アイドリング時でもフルパワァの半分もの燃料を無駄喰いしたのである。

 事実5000馬力のDD35、6600馬力クラスのDDA40Xが出現すると、たちまち廃車になってしまった。しかしこの機関車は、UPの飽くなきハイパワァへの挑戦を象徴している。そしていつの世の鉄道ファンも、これを特別な機関車として敬愛の目で見つめるのである。


 

2006年09月09日

ステップ・コレット

f128182d.jpg 皆さんよくお分かりである。 


 Billは「旋盤を持っているか」と聞いた。筆者は殆ど使ったことがなかった。
「旋盤を持っていないと鉄道模型は作れない。小さいのでいいから買うんだな。」と勧めた。
 それからしばらくBillの旋盤で練習をさせてもらった。

 三爪チャックで締めると多少の心ぶれが出る。それを修正するわけだが時間が掛かる。「コレットを使うのだ」と言って、見せてくれたその数の多いこと。1/32インチ(0.8mm)ごとに全寸法を持っていた。六角や四角のコレットもあった。

 日本で見た旋盤の教科書にはコレットのことはあまりたくさん書いてなかったように思う。コレットは、その構造上、心が完全に出る。その代わり、つかめる範囲はきわめて狭く、±1/64インチぐらいの余裕しかない。

 錆びるといけないので油で湿らせたぼろきれに包んであった。蒸気機関車の動輪のように大きくまた、クランクピンが飛び出しているものを心を出してつかむには、特製のコレットを用意する。

 今日の写真がそれである。これはまだ未加工のものでスリ割の幅の広い部分に同じ厚さのものをはさんで引き、絞り上げる。その状態で、くわえたいものの大きさまでコレットを削る。車輪の踏面にはテーパがついているのでそれもつける。フランジのフィレット(丸み)を面取りで逃げて、フランジの斜面で当たるようにしておく。クランクピンの逃げは最初から大きくえぐり取って置く。

 このようなコレットは、Dish Collet とか、Step Colletと呼ばれる。どうしてステップなのかというと、削り取る穴を階段状にすると各種の大きさの物がつかめるからである。Billは、あたかも階段教室のごとく加工したものをたくさん持っていた。

 このようなブランクのコレットはそれほど高価ではないので、まとめ買いをしておく。


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2006年09月08日

工具を買う

de5190b7.jpg 9月6日の問題には、どなたからも回答がなかった。少々難しかったようだ。

 これは針金を曲げる道具である。歯科の技工に用いるもので、入れ歯を止める針金の曲げをコントロールするために作られた道具である。

 曲率が徐々に変化しているので、どこで挟むかによって、自由に曲率が選べる。これを使っているのを見ても、確かに便利だが買うほどのこともあるまいと思っていた。しかし、使わせて貰うととそのありがたみがわかる。
 歯科材料店でも売っているが、とても高価である。筆者は15年ほど前、Micro-Markという通販店で買った。インド製とか書いてあったが、特に不都合はない。価格は5分の1程度であった。最近はカタログに載っていないようだが、似たものはある。

 歯科とか、耳鼻科で使う道具は模型用に都合の良いものが多い。Micro-Markはそのような道具を探し出して、比較的安く売っている。おそらく模型工作用に人件費の安い国で作らせているのだろう。高価なものを買わされることがないので私は満足している。

Micro-Markのカタログを久しぶりに見ていたら、Billが使っていたものも載っていた。これは卓抜したアイデアである。ちょっとした嵌めあい調節にはとても具合が良い。


 刃物は日本製かアメリカ、ドイツ製あたりのものが優秀である。しかしブラスを切削する程度なら、中国製のものでも十分役に立つ。筆者のフライスの刃とかバイトは半分以上が中国製である。もちろん鋼を切削するとてきめんに駄目になるものが多い。

 さて今日の問題。これは何であろうか。

dda40x at 09:08コメント(2)工具 この記事をクリップ!

2006年09月07日

運転室つきと運転室なし

b38b803c.jpg 日本の機関車はすべて運転室が付いている。この機関車には、運転室のないブースタというタイプがある。
 正確に言うと、既存の中型の運転室のついた機関車の補助機関車として、ブースタを採用した。ブースタをたくさん購入してみたところ、すべてこの5000馬力に統一してみたくなった。そこで運転台つきを発注したという訳である。
 
 昨日述べたように、当初1輌5000馬力というのは大変魅力的な機関車であった。当時、貨物の重量が飛躍的に増え、1列車10,000トンというのが常識的になった。すると、どうしても15,000馬力分の機関車が欲しい。3輌で済めば楽であった。鉄道会社としては機関車の単位長さあたりの出力が大きいほうが有利であるからだ。

 まだまだ1輌1600馬力の機関車がたくさん残っていた時期だ。それを9輌もつないでのろのろと貨物を牽いていた。この老朽化した機関車には調子が悪いのもたくさんいて、蒸気機関車と間違うくらいの黒煙を吐き出すのをよく見かけたものだった。

 それにしても8動軸機関車というのは大きい。軸重30トン近いので200トン以上もある。当時のUPの規格ぎりぎりの長さであったので、運転室付きにしてもその長さを伸ばすことは出来なかった。そこで背を高くし、ラジエータを斜めにして面積を変えずに長さを詰めた。このデザインは当時としては画期的なものであった。この写真をご覧いただきたい。
 前部エンジンのスタートは運転室から行うが、後部のエンジンスタートは回廊を通って後部エンジンルームの壁にあるスイッチを操作せねばならなかった。これが大変評判が悪かった。この地域は冬季はとても寒い。標高2600 mの峠を越えていくので時にはマイナス50℃以下にもなる。そんな時、運転室から外に出るのは勘弁して欲しいのだ。この機関車も1973年当時すでに故障が起こりやすい時期に来ていた。

 列車が走行中に、機関車が不調を生じた時どうするか。それが切り離せる時には、適当な側線に押し込んで放置する。残りの機関車だけで走れるかどうかは状況による。その先、上り坂が続いていれば多分無理であると判断して、救援機関車を要請する。

 救援機関車がすぐ手配できるかは、その時機関区の手持ち機関車の数による。場合によっては対行列車から外して付け替える。

 こんなわけで、比較的小さい機関車を数多く持った方が経営的に楽である、という判断が下された。一昨日のDDA40XはこのDD35より5年も新しいが、これまた意外に早くリタイヤさせられてしまった。

2006年09月06日

キズをつけない小型バイス

c7cfa30b.jpg SEC様が正解である。先端から見るとこんな風だ。

 これは元々は、宝石屋さんが指輪などを挟んで、石を嵌める時の保持台として使われているもののようだ。Billがドリルの刃先を修正する時これにはさんでいるのを見て、買った。
 商品名はたしかNon-marring Viseだったと思う。「要するにキズがつかない」というもの。今はさんであるのは薄板用ドリルという物で業界ではローソクドリルと言っているものである。
 このバイスを締める時には、後ろにくさびを差込む。皮が張ってあるので摩擦が大きく、緩まない。頭としっぽをひっくり返しても全く同様に使える。

 ドリルは刃が二枚なので、これではさむと砥石を当てる角度が2回とも同じになり勘違いしない。以前は三爪チャックではさんだりしていたが、2箇所削るものを三爪ではさむのはまずいものである。
 しかもこれだと、刃のついた部分をはさんでも問題ないので力の掛かっている点と支点とが近く、モーメントが小さくなるので保持が正確になる。
 机の角に押し当て、細かい砥石を当てる。

 子供の頃、近所の時計屋のおじいさんが作業するのを、ガラス窓越しにじっと観察していた。その時に見たことは何十年も経って少しづつ形として現れる。熟練した職人の作業を見るのは楽しかった。近所にはブリキ屋さん、かざり職人、鍛冶屋さん、鋳物屋さんなどがあった。学校から帰ると、飽きもせずその人たちの仕事振りをじっと眺めていたものであった。
 
 それしかなかった、ということもある。私は小学校のときは体が弱く、友達と走り回って遊ぶということがあまり出来なかったからである。

 あの人たちが使っていた道具は今思えばたいしたものではないかもしれない。しかし長年の経験で無駄がそぎ落とされ、機能だけが生き残った物ばかりだ。
 また、彼らが作業をするときの姿勢、腕の向き、光の当て方など極めて合理的なものであった。

 模型を作る時には、それらのことが少しづつ思い出され、結果として大きな力となっている。


 さて今日の問題は、右のペンチ状のもの。これは何であろうか。




追記
 Micro Markのカタログ中にあるのを発見した。これである。
 筆者のものと微妙に形が違うようにも思う。ほとんど一緒であるが値段が安すぎる。手元のものは20年位前に10ドルくらい払ったように思う。いまなら25ドル以上だ。
この写真の持ち方では安定せず、失敗する。机の角にこのバイスがはまり込む部分を作り、そこに押し当てて作業するのが正解。 Sep.9, 2006


2006年09月05日

2台のDDA40X

333ade85.jpg やはりこの機関車が好きである。手前がBillのキットで、向こうがスクラッチビルドのキャブ。
 
 駅の方に行けば必ず機関区を覗いてみた。DDA40Xが居れば模型化する資料の写真を撮る。機関区の連中も、変な東洋人が特定の機関車ばかり見ているので、興味を持ったようである。運転室に乗せてもらったり、エンジンの始動をさせて貰うほど仲良しになる。

 アメリカの機関車はダイナミック・ブレーキが付いているものが多い。下り坂で1万トンもの貨物列車を暴走させないために、エンジンルームの上に放熱器がつけてある。大きな扇風機もついていて、ブレーキを掛けると駆動用モータが発電機となり、発電した電力はこの放熱器の中の抵抗グリッドの中で熱に変わる。その熱を、これまた発電した電力で回る扇風機で冷やす。つまり、ダイナミック・ブレーキのファンは、力行時は廻らない

 下り坂では巨大なかげろうを立てながら降りてくる機関車を見ることができる。その時、放熱ファンがブーンと独特の音を立てていることに気がつく。

 DDA40Xはその放熱器を使ってエンジンの全負荷試験を行うことができる。要するにエンジンを全開でぶん回しておいて、その出力をすべて抵抗器で熱にして捨てる。なかなか壮観である。

 ガスタービン電気機関車(GTEL)が60年代に終焉を迎えたのにはいくつかの原因がある。その中でディーゼル機関の高出力化の実現がある。それまで2000馬力どまりだった出力が3000馬力以上になった。
 2台積めば6000馬力になる。こういう単純な発想で2台エンジン(Double Diesel)機関車が出現した。しかし、エンジンは故障するものである。1台故障するともう1台のエンジンが生きていても工場に入れなければならない。すると巨大機関車の運用に穴があく。3千馬力の機関車をたくさん持っていて、故障したのを外すだけならさほど問題ではない。たとえば、一編成の貨物列車に3000馬力6輌の運用が5輌になっても許容範囲である。6000馬力3輌のところが2輌になると大変な問題である。
 
 高校の頃、数学の確率の問題で「双発の飛行機と四発の飛行機ではどちらが安全か」という問題があったことを思い出す。ある程度以上の故障確率では双発の方が安全になるという結論であった。それとよく似た話である。
 当初は8500馬力のGTELを置き換えるために2500馬力機関2台搭載の機関車を2輌と言うアイデアであったが、貨物の増加量のほうが想定を上回った。

 4軸台車というものにすごく興味があった。何らかの方法でイコライズしてあるのかと思っていたが、バネのストロークがやや大きい程度であった。固定軸距離が長いので、ポイントなど急曲線では線路の方が壊れてしまう。このDDA40Xは、保線の方からはかなりの不満が出ている機関車であった。

2006年09月04日

おみやげ

0f57dbaf.jpg Billの父親も鉄砲鍛冶であったそうだ。この種の職業は往々にして世襲である。
 日本には鉄砲鍛冶という職業は殆どない。銃砲店でさえも、顧客の猟銃の手入れをする程度で、一から作るところなどまずない。
  
 時々、試射をするから付き合わないかと言う誘いがあった。初めの内は興味津々でついて行ったが、だんだん事情がわかってきた。試射とは危険なものらしい。その銃が破裂するかも知れないのだ。肉を薄く作った試作品は、Bill自身も怖いらしくて、銃を固定し引き金に紐をつけて発射する。何発も撃って、変形していないかマイクロメータで寸法を測定する。「特殊鋼を手に入れたから次はもっと軽いものを作る。」と嬉しそうに語っていても、試してみるまでは何が起こるかわからないから怖いものらしい。


 ライフルとは実に良く当たるもので、100 m先の空き缶のど真ん中を撃ち抜くことができる。ピストルでは10 mくらいまでしか当たらない。
 照準用のスコープの調整をするのは試射をしながら行う。

 帰国する時、Billが小さい箱を持ってきて差し出した。
「これ、記念に持っていけ。」
 開けてみるとぴかぴかの35口径のリボルヴァ6連発であった。
「これを持って帰ると刑務所に3年くらい入ることになる。」と言うと、
「日本は正当防衛でも刑務所に行くのか。」と聞く。
「いや持っているだけでも犯罪で、警察官などの特殊公務員以外所持は禁止されている。」と説明すると、
「日本ではオレは失業だ。」とため息をついた。
「まあ、いいや。またこちらに住むようになったら取りに来い。」と言ってくれた。残念ながらBillはその4年後にガンで亡くなった。
ガンと言うのは悪性腫瘍のことである。念のため。


 ところでこれは何であろうか。
 ヒント: 宝石屋にあるかもしれない。

2006年09月03日

2種の歩み板

2584525b.jpg この写真をご覧になって「あっ、DDA40Xだ」とおわかりになった方はかなりのUPファンである。殆ど病的な域に到達されているのではなかろうか。
 英語でラニング・ボード、日本語では歩み板という。アメリカでは走るのが基本らしい。しかし、大きなガスタンクなどにへばりついている狭い手摺つきの階段などはキャット・ウォークという。猫は歩くものらしい。機関車と炭水車との隙間をギャング・ウェイという。ギャングというのはもともとは船の乗組員のことだ。桟橋に着いたとき上下船する階段を意味した。言葉は難しい。 
  
 上はエッチングで作ったもので、下は引っ掻いて作ったもの。よく見ると凹凸は逆になっている。上を"Recessed Diamond"(凹んだ菱形)、下を"Raised Diamond"(盛り上がった菱形)という。どちらも実際に存在する。

 サンドボックスは仮につけてある。いずれ作り直す予定である。それにしてもこのサンドボックスは大きい。厚さは25cmくらいある。これひとつで砂が1トン近く入るのではないだろうか。
 アメリカの機関車はスリップするのを前提に作られている。要するにトルクは十分過ぎるくらいある。発車時には猛烈な勢いで砂を噴射しながら発車する。スリップしているので当然ながらレイルは削れる。車輪はかなり硬い材質を使っているらしく減りにくい。
 
 あるとき、スリップばかりしてうまく発車できない場面に遭遇した。砂をやたらに撒き散らし、砂はレイルの高さより高くなった。レイルが見る間に削れて1cmぐらいの深さの凹みが出来た。ようやく発車したあとそのレイルをなでてみた。かなりひどい状態だ。次の列車が差し掛かると、ドドドンドドドンと大きな音がする。どうするのだろうと心配していたら、一月後に新品に交換してあった。

 先日のアウトハウスについて何人かの方から質問があった。三日月は何を表すかと。記憶がやや不鮮明だが、こういうことだ。男性用は星型の窓をつける。女性用は月型の窓を付ける。一般的に男性用は汚くなるし、殆どは立小便で済ますので男性用は必要なくなる.その結果打ち捨てられて消滅する。大の方は女性用を使って済ます。結局すべて月型の窓のものしかないことになる。
 少々怪しい説明だが、複数の人から聞いた話が一致しているので、多分正しいのだろう。

2006年09月02日

ヤスリをカスタマイズする

53c1f6af.jpg 鉄砲鍛冶という仕事は、簡単に言えば鋼を削ることである。機械加工した後、ヤスリで削る。そのあと砥粒を油で練って磨き上げる。
 Billの工房にはありとあらゆるヤスリが、おそらく数百本は揃えてあった。買い置きの1ダースの封を開け、一本ずつ検査する。そりがないか、ねじれていないかを調べて、駄目なのはその場で折って捨てる。柄の方はキサゲ用として取っておくが、目の立てられた方は使い道がないという。2本は捨てられた。使える10本にグラインダを当てて、目が立てられてない面を削り落とす。この面を"safe edge"という。
 
これで終わりかと思ったら、「そこのアーカンソーを取ってくれ」という。何のことかわからず戸惑った。それはアーカンソー・ストーン(目の細かい砥石)のことであった。油をつけて丁寧に研ぐ。10本研ぐのに30分近くも掛けた。研ぎあがったヤスリは虹のように光った。

 両面のヤスリ目を片方だけにしたり、隣り合う2面を削り落としたりしていろいろなパターンを作った。Bill曰く、「買ったばかりのヤスリはcrude file(粗なるヤスリ)だ。石油だってcrude oil(原油)から、ガソリンその他を作り出す。原油はそのままでは使えないだろ?」

 工房にはBillが手を掛けた特製ヤスリばかりが並んでいた。先の曲がったヤスリも何本かあった。これらはRiffler Fileというそうで、鉄砲鍛冶の現場で握りを波状にへこませるときに使われ始めたものらしい。
 2本だけ記念に貰ってきた。現在手持ちのヤスリはBillの教えに従って加工してある。写真の下にある2本はグラインダーで削り落としただけのもの。上の2本は研ぎ上げたものである。Billのヤスリのように虹色には光っていないが、#1000の砥石で研いだものである。

 傷をつけたくない面にsafe edgeを当て、そこにほんの少しの油をつけてヤスリを動かす。実に滑らかに滑って、目的の面だけが削れていくのを見るのは快感である。 

2006年09月01日

抵抗発熱型ハンダ付け

d6bb09b7.jpg むろん電気を使う限りどんなものでも抵抗発熱型だが、これはその発熱部分が少々異なる。
 左がピンセット型の発熱装置で、先がニクロム線の特別に太いもので出来ている。これで小さい部品をはさんで通電すると、接触面積が小さいのでその部分の発熱が大きい。あっという間に400℃くらいになる。電流は25Aくらいだろうか。5Vだから125Wに相当する。電線はかなり太いものを用いる必要がある。
 
 ロストワックスの小部品をよく磨いて塩化亜鉛ペーストを塗り、軽く通電する。トランスのスウィッチは足で踏む。糸ハンダを触らせれば、たちまちハンダめっきができる。相手にもコテでハンダめっきを施しておいて、部品を押し当て、5秒ほど通電すれば完璧にハンダ付けできる。
 場合によっては炭素棒を押し当てる。素材をアースしておけば触るだけでOK。接触面で発熱するので熱が逃げるひまがなく、あっという間に温度が上昇する。省エネルギでもある。
 
 Billの工房には30センチ四方の分厚い真鍮板が張ってある机があった、その上で車体を組み立てる。自然にアースが取れるので実に効果的である。
 板を張り合わせる時の秘密兵器もあった。なんと炭素棒ではなく炭素ローラである。直径2インチ(5cm)、幅1/2インチ(13mm)の黒鉛の円盤の中心に軸を差込み、握りをつけたものである。あたかもピザ・カッタの柄から太い電線が生えたような格好である。これでごりごりやると、たちまち全面ハンダ付けが完了する。出力は500Wくらいである。どうやらこれはパテント商品らしかった。

 ピンセット型の出力120Wというものを買った。当時(20年前)の価格で50ドルくらいだったように思う。電源は自分で作ろうと思っていたら、電気の専門家のI氏が、ジャンクのテレビから外したトランスを巻き替えると安くできると教えてくれた。要するに、二次巻線は太いものをくるくると巻いただけで出来上がり、とおっしゃる。簡単なものであるが、とにかくケースに入れて一次巻線にタップを付け、出力が3段に変化するようにした。確かに出力調整はあると助かる。調整がないと、足踏みスイッチをこまめに踏んで時間的平均値を小さくするしか方法がなかった。スイッチが壊れそうなほど踏みつづけたものだった。

 最近はかなり洗練された商品が、Micro-Markから出ている。詳しくはこちらをご覧あれ。

 右は、Bill直伝のキサゲである。折れたヤスリを研いで、ヤスリの柄に挿したものである。握りにこれぐらいの太さがあると力が入るし、微妙な向きの調整ができる。
 刃を下にしてこれを握って、肘をついて…。その様子を頭の中に描いて見られよ。何とやり易いかたちではないか。

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