2019年12月05日

japan

IMG_20191204_0002_page-0001 japanとは何を意味するか。大文字ではない "j" で始まるのが、今回の題材である。
 chinaは陶磁器なら、japanは何だろう。常識的には漆(うるし)であろう。

 Union Pacific 鉄道 の古文書を漁っていて、見つけた。1930年頃の客車の内外装に関する文献だ。BURNT SIENNA IN JAPAN とか DARK OLIVE IN JAPAN という名前でそこら中に出て来る。

 Siennaはイタリアの地名で、トスカーナ地方の都市である。地面の色は鉄の酸化物のせいで赤っぽい。それを焼いたものは赤褐色の顔料である。それを漆に分散させたものを使っていたことになる。
 vehicleという言葉が見える。これは乗り物という意味で使う場合が多いが、何かを乗せているもの、即ち溶かしているもの、分散媒という意味である。ペンキで言えば、顔料を沈まないように分散させている油である。1920年代に、漆がそんなにアメリカに輸出されていたとは知らなかった。

 漆はもともとの色があり、他の色の顔料を混ぜて色を出すのはかなり難しかったはずだ。筆者が知っているのは、昭和の初めにレーキ顔料(アルミニウム水酸化物などと共に沈殿させたもの)を混ぜる技術が見つかって、黒、赤以外のものができるようになったことだ。それが同時にアメリカの客車の塗料に使われていたとは驚いた。漆の持つ艶、耐久性が評価されたのであろう。

 この古文書は、蒸気機関車の塗装の変遷を調べるために手に入れたもので、いずれ発表するが、いくつか思わぬ発見があった。

2019年12月03日

天賞堂のキャンペーン

 どうして当選したのか、はっきり覚えていない。Youtubeにいくつか動画を載せているので、それを見て勘違いして連絡が来たのだと思う。正直にOゲージであると返答しておいたのだけど、当選したと言ってきた。何かの怪しい勧誘メイルかと思ったが、調べるとそうでもないらしい。住所を知らせると送って来た。

 箱を開けると、パンタグラフや車輪はプラスティックのようで、ソリッドモデルかと思ったが、中の小箱にパワートラックが入っていた。コアレスモータ使用らしい。これを完成させて感想を知らせよ、ということなのだ。
 3か月以内にSNSで発信してくれたら、品物は差し上げる。オークションに出したら直ちに訴えて取り下げさせる、とある。
 車体キットにウェイトが入っていたのには驚いた。モータライズ・キットに付けるべきもののような気がする。ソリッドモデルには要らないものだ。

Tenshodo 要するに、ある程度のレヴェルの客に商品を配って、感想を述べさせ、宣伝に使おうというわけだ。困ったことに、こちらはHO国鉄型の知識はあまりない。組んだこともないので、どうしようかと悩んだ。天賞堂の趣意書を読むとコアレスモータを使ったところが売りで、これだけを使ったものの動画でも良いらしい。

Inspection car しばらく前に鋳造した inspection car を、これを使って動力化してみようとも思ったが、今忙しいのでそんなこともしていられないし、動力装置を完全自作する方がよほど楽である。


completed 迷っていたが、クラブの会員が集まった時にその話をした。M氏が「僕が組んでみる」と言ってくれたので、お渡しした。彼のレイアウトでの走行の様子の動画を撮ってくれるそうなので、助かる。撮影後は彼の鉄道に移籍する。博物館には置かない。

Campaign 昨日それを持って来て、見せてくれた。パンタグラフは金属製に取り換えてあった。手際よく組んであって、走らせたときの感想も聞いた。牽引力は少ないそうである。電車であるからそれは当然だ。動画が楽しみである。


2019年12月01日

快削ブラス

 最近、模型界では快削ブラスが市民権を得たような気がする。40年前はおそらく殆ど知られていなかった。大阪の福原金属だけが売っていたという情報はあるが、大半の模型屋で売っているものは普通のブラス板であった。本当に切りにくくて腹が立った。一方、建材の引戸レイルは、糸鋸でとても切りやすかったことが印象に残っている。大きなモータに付いている銘版は粘い材料で、油を付けても切りにくかった。

 アメリカに行くと、ブラス板は少々色が違って緑っぽい感じがした。糸鋸ですいすいと切れるし、シアでは、すとんと切れる。
 性質が違い過ぎて、同じ金属とは思い難かった。日本製のブラス模型の色は赤く、アメリカ製は黄緑色であった。

 日本の材料屋でその違いについて聞くと、「快削と指定して取り寄せてあげるよ」と言う。それならばと、t0.3から順に定尺を全サイズ買った。とても使い易く、友人に譲ったりして、その後は快削しか買わない。今は 0.3 mmが市販されていないようである。昔は、この板は時計の歯車用に大量に消費されていた。

 今野氏と知り合ってそのことを伝えると、KKC内部での頒布材料は、すべて快削材になったと言ってよいだろう。いろいろな場面で感謝されることがある。

 しばらく前に、クラブの会合に手持ちの半端材料を大量に持って行って、安価で処分した。半分ほどは快削でなかったので、印を付けておいた。そうしたら、買おうとした人が、「えっ、快削じゃないの?僕は快削しか使わないんだ。もう普通のブラスなんて買う人は居ないよ。」と仏頂面で、のたもうた。その言い方にはとても驚いたが、内心とても嬉しかった。皆さんが使ってくれているんだと知って、多少なりとも貢献していることを実感した。これには今野氏の努力が大きい。この記事など、読んでくれた人など殆ど居ないのだから。 

2019年11月29日

快削材のパイプ

 ブラスの材料の話である。たいていのブラス製パイプは快削でない。主動輪のクランクピンにボールベアリングを入れる時にハウジングを作らねばならなかったが、その材は快削でないと無理である。
 35年前にUPの4-8-4 2輌を作った時は、S45Cで作った。明らかに過剰品質である。リーマを通して、つるつるに仕上げて嵌めた。油がいつも注してあるので錆びることはない。
 今回は砲金で作った。たまたま切れ端があったからで、快削ブラスでも良かった。ぴったりの寸法のブラスのパイプもあったが、旋盤には掛からないので諦めた。食い込むからリーマを通せないのだ。

 今回、材料置き場を丹念に探すと、40年以上前にアメリカで買ったブラスパイプが出て来た。11/32、13/32、15/32インチの滑り込みの三兄弟である。試しに糸鋸で試し切りをするとサクサクと切れる。

turning smokestack 煙突を作らねばならなかった。きちんと寸法の出ているものを4本作るのはなかなか難しいから、これは有難かった。快削丸棒から中グリして作るつもりだったから、大幅な材料と手間の節約である。
 外径13/32インチ(10.31 mm)が希望寸法に極めて近いのでこれを使った。チャックでは潰れるので、ERコレットで掴んで廻した。切粉がカンナ屑のようにシュルシュルと出て、見事であった。

 この小型卓上旋盤はまだDRO化されていないので、ハンドルを廻し、ダイヤルの目盛を数えて廻した。久しぶりのことだ。4個は全く同じ長さに無事作成でき、台座にハンダ付けして完成に近づいた。さて何を作っているのだろうか。正解者は今のところお一人である。


2019年11月27日

遠藤機械製切断機の回転軸を削る

turning shaft 5/8インチ(15.87 mm)かと思っていたら 16 mm径であったという現物を預かった。
 筆者の自宅の旋盤は 3/4インチ(19.05 mm)まで通せる貫通穴があるので、簡単に銜えられる。今回は、心が出ていなくても全く問題にならないが、一応心出しをして削った。Set-Tru Chuck は便利である。ブラスの旋削作業をしているので、切り粉を掃除すべきなのだが、今回はごく微量の切り粉しか出ないから磁石で取り除ける。

 やはり軟鋼は削りにくい。軟鋼は、快削でないブラスのようなもので、切り粉が刃物にまつわりつく。ワークが綺麗に見えない。削ってもざらついて面白くない。これがS45Cなら、硬いがかなり削りやすい材料なのだ。
 快削鋼はとても素晴らしい削り味だが、こういう用途には向かない。ねじ切れる可能性がある。

 他の購入者は無事交換できたと信じたい。折れたら交換する、という方も居るが、それでは意味がないのではないだろうか。折れたら大けがをする可能性が高いのだ。テイブルが付いていると、余計危ないことになる。

 ところで、鋼材屋で聞いた話によれば、我が国ではインチ材が珍しくなった。あることにはあるが、直ぐには揃わないらしい。SS(軟鋼)はよいが、S45Cの材の切り売りは勘弁してくれ、とのこと。買うなら定尺物(4 m)を買ってくれということだ。1万円ほどの価格だ。440 mmにしても、8本しか取れないだろう。刃の厚みもあるからだ。希望者が8台分あれば発注する。


2019年11月25日

シリンダブロックの構造

Mr.Sofue's cylinder block 先日steam chestの話題を出したが、どなたからも応答がなかった。少々難しすぎる問題だったようだ。
 答はさておき、現物を見た人が非常に驚いていたので、その写真をお見せする。


cylinder block construction シリンダブロックの前後の板は1 mm厚で、かなり分厚い。そこにシリンダ前カヴァが付いている。これは挽き物を嵌めて取り付けてあるのだが、かしめてある。突っ込んだ部分に穴があいていて、それをポンチで潰して抜けないようにしている。後ろ側も同様である。こうすれば、ハンダ付けの時、部品が取れて来る心配はない。これはプロならではのアイデアである。

 前後の板はスペイサを入れてハンダ付けしてある。しかもスペイサは縦横2枚入っていて、それに外板を巻き付けてハンダ付けしてある。過剰品質ではないのか、という声もあった。これは祖父江製作所の仕様である。シリンダ部は踏んでも壊れないほど堅固だ。ネジで台枠とボイラを締め付けるので、弱いと狂ってしまうからだそうだ。

 今回、外に巻いてある板を外して一部のスペイサを切り取った。そして新たな部品を 6 mmと 3 mmの板を切り抜いて貼り足した。炭素棒でなければこんなハンダ付けはできない。もちろんバラバラにならないように、ブラスのピンを通してかしめてある。さて何を作っているのであろうか。

cylinderblock covering 巻き付けてある板は、0.5 mmの薄板であるが、巻き始め部分に工夫がある。溝に差し込んでハンダで仮留めし、力を入れて巻き付ける。そうしてから全周をハンダ付けしたようだ。こうすれば隙間は無くなるし、強いものができる。これも祖父江氏の手法である。


2019年11月23日

続 遠藤機械の切断機ハンドルを取り替える

recipro saw 2台目の修理は、まず回転軸を切断することから始まる。砥石で切るつもりだったが、埃が出るのと、火花で火災を引き起こす可能性がある。レシプロ・ソウで切ることにした。たまたま良く切れる刃を入手してある。写真の軸の下に敷いてある合板は、切断した瞬間に刃が下に落ちて、傷をつけるのを防ぐための保護板である。 
 相手は軟鋼だから、30秒ほどで切れる。もちろん切削油はふんだんに注す。

 2箇所切って、カムを取る。片方は簡単に取れたが、他方は動かない。しょうがないから、12トンプレスで押し抜いた。2.5トンほど掛けたら、取れた。これでは、叩いても動かないわけだ。

619_1462 取り出した軸を見てびっくりした。押しネジが少しずつずれて軸が塑性変形している。軸が軟らかいからだ。このように軟らかいものに押しネジを使う時は、縦フライスで十分な平面を作る必要がある。ところが、浅い穴をドリルで掘っただけだから、ずれていくことがある。筆者のように1mmを大量に切る人は傷みやすい。この写真で、片方は数年前に縦フライスで修理した痕が分かるだろう。
 
 今頃になって思い出したが、その時も抜くのに苦労した。ついでに両方やればよかったのに、片方しか加工しなかったバチが当った。軸が膨らんでいるので、プレスで押し抜いた時に、カムに ”めくれ” が生じたのが見える。

Finished! 新しいハンドルは、すぽっと嵌まり、キィを入れると固くなる。うまく行った。これもハンドルの、手に当たるところは削っておいた。テーブル上のものは切り落としたシャフトだ。軟らかいから叩く台にもならない。切り刻んでウェイトにするしかない。


Finished!! これで2台完成だ。この2台の仕様は、すべての点で異なる。カムの留めネジの角度まで違うから、部品の流用はできない。互換性ということを一切考えていないのだ。一台は自宅に持って帰る。

2019年11月22日

中澤 寛氏の死去

 中澤 寛氏の奥様から、訃報を受け取った。あまりにも早く、ただただ驚いた。博物館の完成時には来て戴けるとのことで、お互いに楽しみにしていた。

 中澤氏は2年ほど前から体調を崩され、時々入院したりしていたが、とても精力的に活動されていた。筆者とは頻繁にメイルをやり取りし、例のTMS問題では、今後改善されるのか、ということを心配されていた。

 先月末に、「マイルが貯まっているので、点滴の合間に、来月、Empire Builder大陸横断弾丸ツアーをする予定です。Seattle -> Chicago、金曜発で水曜夜に帰ってきます。往路はSFO乗り継ぎで、電車の乗りつぶしもしてきます。」との連絡があった。その土産話を楽しみにしていたところだ。
 類まれな、手先の器用な方で、アイデアを形にする天才であった。お互いに情報交換をして、楽しい時間を共有できたのは、筆者にとっても幸福なことであった。

 中澤氏は、「走る鉄道模型」を実践された方だ。とはいえ、ディテールの表現、ギミック、塗装は素晴らしく、バランスの良い模型を作られた方である。
 ご冥福を祈る。

2019年11月20日

遠藤機械の切断機ハンドルを取り替える

 頒布元が仮組でもたついている間に、早速組み立てた人がいらしゃる。二日遅れで、筆者も組み立てた。

 ハンドルの孔の内側を仕上げるのは簡単だったが、回転軸を外すのは大変だ。材料がナマクラで、抜こうと思って叩くと太くなる。
 もちろんブラスの塊を当ててから、sledgehammer(大ハンマー)で叩く。そうしないと軸は変形する。助っ人にブラス塊を保持してもらって、10ポンド(4.5 kg)のでゴンとやるのだ。
 
 ある程度まではズレるが、その後が動かない。逆方向に叩いたりしているうちに、軸の先端が太くなってきたことに気が付いた。軟らかい金属塊を当てているのに、である。ひどい話だ。この材料はごく普通の軟鋼である。S45Cではない。修理ができないような材料を使っているのは、だめだ。
 仕方がないから、大きなヤスリで軸端を少し削り、軟らかい材料のボルトを差して叩いて、それで押し抜きした。12トン油圧プレスがあるのでそれで抜くつもりだったが、ふところがあと 30 mm足らず、その方法は諦めた。

 S45C の 5/8 インチの丸棒を注文するつもりだ。今のままでは、押しネジの当たっているところが、徐々に変形してまた抜けなくなる可能性が高い。現在のは、ディスクグラインダで真ん中から切って分割すれば、抜き取れるだろう。ご希望の方があれば、同時に注文すると割安だ。

 ハンドルはちょうど良い大きさの孔に調整できた。軸に縦フライスで5mmの溝を切った。細いエンドミルで中心を削り、両側をゆっくり送って削り、滑らかに仕上げた。

tapping with mallet 組立ては木槌でコンコンと叩いた。ハンドルもキィも、そこそこの固さで入り、軽く納まった。
ということは、抜くことも難しくない。



finished ハンドルはある程度、ディスク・グラインダで削ってみたところ、手に優しい感じである。面積が大きいので圧力が少ないためであろう。丸棒よりずっと気分よく切れる。ちょうど裾の絞ってある電車のような断面になった。黒い箱はLED照明の電池箱である。
 
 とりあえず、ペンキを塗ってみる。その上に何を被せるかは思案中だ。被せなくても構わないような気もしてきた。
 1台完成だ。あと1台が難物なのだ。どうしても抜けないのである。軸を切り刻んでバラすしかない。


 ハンドル購入者から連絡があった。なんと、その方の回転軸はΦ16だったという。5/8インチより 0.13 mm太いのだ。ハンドルの穴を拡げねばならないが、大変だ。軸を旋盤で挽いて、細くすることができるから、それをやってみよう。
 申し訳ないことをした。まさかそんなヴァージョンがあるとは知らなかった。この会社の製品には、一体何種類のヴァリエイションがあるのだろう。



2019年11月18日

工作機械とジグ

 先日来訪した友人が一通り見て、質問した。
「一体何輌あるのか?」
「ざっと機関車が40輌、客貨車が400輌位だろうか。ここにある機関車の大半は土屋氏から来たものだけどね。家には自分の機関車が40輌位あるかな。未完のものもかなりある。」
 この数字には驚いたらしい。

「20代から、機関車は年に1輌、貨車などは月に1輌という目標でやってきたから、そんなものだよ。」
「どれも、みな押して動くようになっているのか。」
「動くよ、ほら。」と何輌かの機関車を押した。
「やらせて貰って良いか。」と聞くので、
「どうぞ。」と許可した。
 UP9000を押して、彼は仰天した。
「こんなに軽く動くの?ギヤが外れているみたいだ。」

 120輌の貨物列車を牽いている時に、登り坂で停まると滑り落ちてくるのには興奮した。
「三条ウォームは逆駆動できるとは知っているけど、こんなに軽く動くとは思わなかった。」
歯型潤滑剤が大切なのだ。歯数も考慮しないとだめだ。手で廻して軽く回るから満足するようではいけない。十分な負荷の掛かった時に、本当に等速運動できないと意味がない。」と言うと、
「そこまで考えないと、この性能は出ないのか!」 と感慨しきりであった。それと走行音がほとんど無いのにも、驚いたようだ。機関車は事実上無音で走る。車輪とレイルの転動接触音だけである。ギヤ比が小さいことも貢献している。伝達効率が良ければ、低ギヤ比に出来る。高ギヤ比は様々な点で損である。

 工作機械、ジグをたくさん用意している事について説明した。
「TMSの100号から300号あたりに沢山の記事があるけど、あの凄い記事に出て来る機関車を走らせても、真っ直ぐ走るのは少ないよ。」と言うと、
「そうかもしれないね。当時は旋盤を使っていないからね。」と納得した。

 ジグの大切さには共感してくれた。quartering jigを使わないで組まれた動輪が、うまく作動するはずがないのだ。
 プロは手間がかかっても、必ずうまく行く方法を採る。素人は、殆どうまく行くはずの無い方法で作って、泣きを見る。そういう意味では、この種のジグを持っている人が仕事を有償で請け負うことは、模型界のためになるはずだ。決して自分だけのために秘匿すべきではない。
 但し、すべてのジグが正確に90度を出せるか、ということは別問題だ。つまり、あるジグで組んだ動軸を、他の物と混ぜると、具合が悪くなることもあるだろう。それぞれのジグによって、何らかの印を付けるべきかもしれない。そうしておけば、”X氏のジグによって組まれた動輪は、Y氏のとは互換性がある”、などということも分かるようになる。


2019年11月16日

続 先台車を作る

new smoke box 先台車はガタが無いように作るのが基本だ。よくできた機関車なのに復元がないというのはよく見る。また復元が効いているのに、車軸が台車の中で左右に動くものがある。これでは何の意味もない。この写真は現在製作中の4-8-4である。steam chest 部分が切り取られているのはなぜだろう。


pilot truck 当鉄道では内側先台車は、すべて共通部品を使っている。細かい部品は、外から見えるところしか付けない。機能を最優先しているからだ。
 ボールベアリングは、台枠にロックタイトで固着する。車軸もロックタイトで留める。片方の軸(ここではたまたま前方)は左右つないだものの中心に溝を切って、台車枠の蓋部分の支点に嵌める。こうして3点支持が完成する。前軸は少し捻ることができるが、左右には全くガタがない。

centering device 中子にはボールベアリングの小さいものを用いて、V字斜面を転がらせる。ほんの少しの偏倚でも強い復元力が現れる。この写真のバネは仮のものである。もっと硬いバネを用いる。

 この台車のボールベアリングは外径 8 mm、内径 5 mmのタイプだ。軸が太いので、グリースの撹拌抵抗が大きいことが危惧された。 
 案の上、完成したものを手で押しても、軽くは走って行かない。押せば動くが、慣性でするするとは行かない。重いものを載せて軸重200 gもあれば、0.5%の坂でも下り降りる。無負荷なら1.6%くらいでかろうじて滑り降りる。このグラフの通りである。

 径の大きなボールベアリングは抵抗が大きい。普段はΦ19の車輪に内径 2 mm 外径 5 mmのボールベアリングを付けていた。2 / 19 であって、テコ比で軽く動くが、今回は 5 / 21 だから重いのは当然だ。
 HOではΦ1.5を使っても 1.5 / 9.5 だから、軽くは動かないだろう。軽負荷ならピヴォットに限るというのは、こういうことだ,
 優秀な旋盤屋で良い材料を使って作ったピヴォットは、極めて優秀な値を叩き出す。

 この先台車も、細い軸にすることはできないことではないが、機関車には思わぬ力が掛かることがある。例えば脱線時に、前につんのめったりする。その瞬間の衝撃力で、軸が曲がることは十分に考えられる。軸はステンレス材なので、塑性変形し易いのだ。細い軸の場合は堅い炭素鋼を使うべきだが、錆びやすいから考え物だ。


2019年11月14日

再度 Four's a Crowd

619_1417619_1416 例の映画の話だ。伊藤剛氏から来た図書の整理をしている。”模型鐵道”は大半揃っているが、その中の16号に、”Four's a Crowd” を紹介する酒井喜房氏の解説があった。この映画については、以前ここで you tubeによるダイジェスト版を採り上げた。
 戦前の検閲の厳しい折に、裕福で自由なアメリカの生活を賛美するような映画が封切られたことには、驚きを禁じ得ない。部分的にカットされた状態での公開だったのかもしれない。 当時の字幕スーパーが見てみたいものだ。

 再度検索すると、驚いたことに全編を見られるウェブサイトが見つかった。しかも再生速度を遅くできるので、あの早口が聞き取り易い。

 この映画については400号あたりのミキストだったかで山崎氏が何か書いていたように記憶する。まだ探し出せていないが、手放しの褒めようであった。当時はこれを戦前に見た人が生き残っていた時代であるし、またそのような人が限られていたから、紹介記事を書けることが自慢であったのだろう。

 Four's Crowdの意味であるが、これは英語のことわざ(成句)にこんなのがあることから来ている。これは16世紀から使われている言い廻しだという。”Four’s” は ”Four is” の短縮形である。

 Two is a company. Three is a crowd.

 (恋仲の)二人はうまく行く。しかしそこに三人目が居ると、 意見が分かれてうまく行かない、という意味だ。似たような意味で、fifth wheel というのがある。車輪は四つで良いのに五つ目を付けると、とんでもないことになるわけだ。そういう意味では、大型トレーラのトラクタ後部に付いている回転部分を fifth wheel と言うが、それはこの言葉を知っている人が、わざと付けたのだろう。 


 そこでこの題名だが、四人だったら・・・という、茶化した題名である。
 日本での公開時に付けられた題は ”結婚スクラム” だったらしい。これまたわからない題名だ。本来なら “四人でしっちゃかめっちゃか” くらいが良いだろう。


2019年11月12日

折れない切断機用ハンドル

shear handles 折れないハンドルの注文がある程度溜まったので、発注した。切断機の回転軸の5/8インチ(15.87 mm)径の切れ端、キィ材のサンプルを添えて、切り出しを依頼した。厚板でも正確に切る自信があるとは言っていたが、さすがにキィをそのまま入れる注文は初めてだそうだ。
 うまくやってくれた。レーザの入射側はぴったりだ。油目ヤスリで調整するだけで、するっと入る。反対側はバリが多い。うまく切れているようだが、融けたものが再付着している。送り出す酸素の量を、もう少し増やすべきだったかもしれない。

 反対側は甲丸ヤスリでゴリゴリと出ているところを落とすと、ぴたりと入った。調整に要する時間は、5分ほどだ。

 角が手に痛いので、それはディスク・グラインダで落としてしまうべきだ。ホースの切れ端か、自転車の握りを付けると良いだろう。

 たいていの方はフライス盤をお持ちのようで問題ないが、少数の方はキィ溝を彫って差し上げる必要がある。難しいことではないので引き受ける。

 このハンドルは 19 mm鋼板であるから重いが、レターパック・ライトに入るので安く送れる。郵便屋さんは、持つと驚くだろう。

 少々残っているのでご希望の方はコメントを使って連絡されたい。本文にメイルアドレスを書いてくださると、具合が良い。公表はしない。

2019年11月10日

cantilevered signal bridge

cantilever signal bridge 門型の信号橋は作ったが、線路配置上、cantilever型の信号橋が必要となった。日本語では”カンチレバー”と書かれるが、この発音はなかなか難しい。キャンティリーヴァに近い。片持ち梁のことである。太字を強く発音する。
 この種の信号機はよく見るし、模型もふんだんにある。しかし満足のいく形の物は少ない。その話を northerns484 氏と話をしていたら、図面を描き起こしてくれることになった。
 上の部分は資料があるが、土台部分は写真も少なく、一体どうなっているのか見当もつかなかった。試しにいろいろな絵を描いてもらったが、しっくりこない。

cantilever signal bridge そうこうしているうちに、所蔵の本の中に本物の図面が載っているのを発見し、鮮明な1ページ大の写真を雑誌で見つけた。それで急速に話が進み、図面の完成を待って、2種類発注した。もう一種類も近日中に出来る。ミソはアンカ・ボルトの位置と、その周辺の構造である。フランジを二重にして、長いボルトを土台から飛び出させている。上と下の二段で締め込むから、締結力は強い。その模型構造は非常に巧妙に組まれたパズル的な構成で、すべての部品を差し込むと自然に目的の形になる。間違えると部品が入らないので、必ず正しい形になる。northerns484氏には改めて御礼申し上げる。

cantilever sssignal bridge (1)cantilever sssignal bridge (2) これらの写真は、ステンレスの切り抜き部品を全て組立てた状態で、これからガセットを作って貼り付ける。ハシゴの横木も、まだ付けていない。



 ガセットは小さく、数がそれほど多くもない。キャットウォークは金属製にするか、木製にするかで悩んでいる。木目のエッチング板もあるが綺麗過ぎるのだ。
 この1本は、観客からの鑑賞距離が近い位置に立てるので、皆さんがじっくり見る可能性がある。リヴェットはディカルで表現するものもあるので、それを貼り足してみよう。 

2019年11月08日

laying flexible track

 古い知人のI氏が博物館に来訪した。工事を手伝ってくれるそうで、その下見に来てくれたのだ。 筆者は彼が高校生の時から知っているが、今年定年だそうだ。
 I氏は希望していた電鉄会社に勤め、 駅務から始めて車掌、運転士となり、長い間、特急電車の運転をしていた。そののち助役に昇進して退職したのだそうだ。

 根っからの電車ファンで、高校生の時から出色の作品を作っていた。特急電車の塗装が綺麗で、感心したことを覚えている。彼は今HOのレイアウトを作っている。彼のレイアウトセクションはいくつか見せて貰っているが、とても美しい。電車の運転士をしていたので、電車から見える景色を再現しているのだ。普通の人とは視点が少し異なる。

 博物館で列車をいくつか動かして見せた。120輌が音もなく動き始めるのには、驚いたようだ。ほとんどの車輛がブラス製というのは信じられない、と言った。
 車輪の現物を見せると、とても驚き、「信じられないほど綺麗ですね。」と言った。踏面の仕上げが、めっきとは違うことに気が付いたので、めっきの車輪を転がした音と比較した。既製品の車輪が一つもないことには感銘を受けたようだ。

 何に一番驚いたかと聞くと、
「線路の曲線が美しいですね。完全な緩和曲線が付いていて、しかも曲線の曲率が完全に一定になっています。」と言う。
「僕は運転士をしてましたから、そういうことには敏感です。今までいくつかのレイアウトを見てきましたが、ここの線路は別格です。ケチの付けようがありません。本物の線路のようです。」
と褒めてくれた。
「どうやったら、こんな綺麗な線路が敷けるのですか。いつも曲率を一定にするのに苦労しています。大きなコンパスも作りましたがうまく行きません。」と聞かれた。

 そこで、例のレーザで切り抜いたテンプレートを見せた。本線用の一定曲率のものと、緩和曲線のものを出してきて、実際に嵌めて見せた。彼はとても驚いた。
「これって高いのですか。」
「これは薄い鉄板だから安いよ。使い捨てでも気にならない程度だ。」と言うと、どうやら作ってみる気持ちになったらしい。

 この種のテンプレートは市販されるべきだろう。筆者のは貸し出したことがあるが、例が少ない。HO用は必要な人が多いに違いない。


2019年11月06日

先台車を作る

 先台車にはLow-Dを使うべきである。振れがなく遊びの少ない車輪が、先台車の車輪として適する。それを台車枠にガタなく付けねばならない
 
619_1393 三点支持にして、ローラ式の復元装置を付ける。台車枠はレーザで切ってある。それを底板と組み合わせてハンダ付けする。大きな穴は固定軸である。そこにフランジ付きのボールベアリングを入れる。旋盤で正確に削った車軸を差し込み、ロックタイトで車軸と固定する。

619_1395 可動する軸は、チャンネル材を切ってはめ込む。その両端には角材を押し込んで、銀ハンダで固める。ガタが出ないように注意して、嵌めあい部分を仕上げる。ボールベアリングは両端に専用工具で彫り込んで嵌め込み、車軸を通す。下から中が見えるので、ロックタイトを付けやすい。これで全くガタの無い先台車が完成する。

 中心部を一点で支える。軸距離が小さいので、上下 0.5 mmも動けば上等だ。これで脱線しない先台車ができた。小さいボールベアリングを仕込んだ中子で、上から押さえる。動輪軸の半分程度の軸重を掛けると、実物のような復元力を持つようになる。


2019年11月04日

クランクピンにボールベアリングを入れる

 4-8-4の出力は大きい。牽引力も速度も大きいからだ。主動輪のクランクピンには大きな力が掛かる。1985年頃、大きな仮設レイアウトで60輌ほどの列車を、長時間全速力で牽いていた時に、big endが熱くなった。本物と同じだ。出力が10 W程度もあり、それがロッドを介して伝わるのだから、その摩擦は無視できない。熱を持つのは当然であり、その損失は大きい。ビッグエンドとはメインロッドの太い方を指す。国鉄時代から、現場で使われていた言葉である。
 
 クランクピンは、Φ4 で、それに嵌まるボールベアリングは外径 8 mmもある。ロッドのビッグエンドの外径とそう変わらないから、無理だ。ここに収めるにはクランクピンを Φ3 にして、外径 6 mmを用いるしかない。ベアリングは複列にして転ばないようにする必要がある。即ちパイプ状のハウジングが必要だ。その外径は Φ7 である。それに各種のロッドが、三層にはまることになる。

619_1387 かなり面倒な工作であったが。なんとか押し込めた。この種の工作は3回目であるが、あまり慣れない。


2019年11月02日

display layout

 このブログでは過去に何回かディスプレイ・レイアウト話題を出している。

 景色が付いているレイアウトのことをscenery layout 、走行を見せるレイアウトをdisplay layout と呼ぶ。わが国には前者をレイアウトと呼ぶことだけが紹介されてきた。後者の好例がペンシルヴェイニア州の友人宅にある。色は薄い白に近いグレイであった。

 そのレイアウトは 30 mx15 mほどあり、高架でのベント・ドッグボーンと平坦線の同様の線路があり、渡り線で行き来できた。一周10分弱掛かった。景色がないのは物足りないようにも思えたが、長い列車の走行を見ると満足できる。渡り線の操作で、上下を自由に走らせられるのも面白かった。
 
 シーナリィがないとは言え、築堤部分はそれなりの形をしている。トンネルもあるが、ストラクチュアがない。彼のレイアウトはよく整備されていて、いろいろな人が列車を持ち込んできて楽しむ。勾配があるので、動力機構を改良したものでないとモータが焼ける。

 線路にはバラストが敷いてある。これはゴム製の粒子で、ただ撒いてあるだけである。所定の幅に敷けるように簡単なジグで撒き、刷毛で整えてある。地震がなく、完全な空調が効いているから、砂ぼこり、綿ぼこりもない。気に入らないところは、掃除機で吸って撒き直す。このバラストの視覚的効果は大きい。 

 貨車の車輪はLow-Dになったので、さらに長大な列車を牽けるようになった。土屋氏と訪ねたことがある。土屋氏はとても気に入ったようだ。そこでレイアウト高さの考察もした。
 彼らは背が高いので、テイブルの面は、52インチ(約1320 mm)もあった。高架部の最高地点は、64インチ(約1620mm)であった。15‰の長い勾配を
登って行く様子は、実に素晴らしかった。もちろんDCCでサウンド付きである。
 観客はストラクチュアのないことなど忘れている。 

 勾配、サウンド、長編成が、ここでの大切なポイントである。
 
 博物館の崖の完成した様子をお見せする。岩山に沿って線路を敷き、一部を崩してヤードを作ったという感じがするだろうか。
rock wall (2)rock wall (1)rock wall





2019年10月31日

TMSからの返事

このブログで扱ったTMSへの批判をまとめて、編集長の名取紀之氏に手紙を出した。「編集者への手紙」としてである。
 その返事が届いた。信書であるから、その内容全文を公表することはできないが、核心部分だけはお知らせしておきたい。

 中澤 寛氏の記事で意味不明の部分に関しては、原稿執筆者の意図に反する紙面展開となったことを反省し、今後は著者との間で校正をやり取りするなどの対策を講じたい、とある。
 これは大きな前進である。TMS誌が大人の雑誌になると感じている。今までは、”載せてやるぞ・文句言うなよ感”を拭えなかったが、執筆者と編集部が意思疎通できるとなると、紙面には大きな変化がもたらされるであろう。

 Big Boyの煙突に関しては他の御一方からの指摘もあったそうである。いずれ訂正が載ると思う。この件に関しては、事前に「詳しい方に素読していただいた」とあるが、その方もお詳しくなかったということだ。

 各分野に精通している人は居る。それを網羅して、どの人に聞けば正しい答が返ってくるかというリストを持つということも、能力ある出版社の要件である。そういうことは、このブログでさえも行っていることである。いかにも詳しそうでも、おかしなことを言う人は、居ないわけではないのだから。

2019年10月29日

Driver Quartering Jig

MR quartering 崖製作のお手伝いに来て戴いた F氏から、quartering のアイデアが古いModel Railroader '61 10月号 に載っていると、連絡があった。
 
 この手法では、HOの機関車加工を考えている。クランクピンをネジで締める方式でないとできないから、Oスケールでは使えない。クランク角を90度にするよりも、むしろすべての動輪のクランク角を等しくすることに重きを置くべきである。

 抄訳(筆者の注釈付)を載せると、
 ‘偉悗離丱奪ゲージの長さの丸棒を用意する。
  直径はフランジ径よりも大きくなければならない。
  輪心部分は少し凹ませておく。
◆90度にケガキ線を入れる。それを他方にまで延長する。
 反対側にも同じ位相でケガく。
ぁ―住線は、異なるクランク半径の動輪のために余分に描いておくと良い。
ァヾ殍世房崋瓦同じ太さの孔を貫通させる。 
Α‘偉惻憾把衢僂離優弦Δ鮑遒襦動輪軸より太い留めネジを使うこと。
А‘偉惻瓦鮹γ緲僂垢襪燭瓩旅造鯢佞韻襦
  糸鋸、ヤスリで削っても良いが、フライスで削り取るのが楽。
➇ 動輪のクランクピンのネジ孔位置にドリルで穴をあける。 
  ネジ山に当らない太さのドリルを使うこと。
 反対側にも穴をあける。
以降はどうでも良いことだが、孔を貫通させておくと便利(ジグのAB線上の孔を貫通させておくと、目視でクォータリングができるし、動輪にクランク孔がない場合に新たにネジ孔を作るガイドとしてのジグにもなる)とある。

 発案者は機械工らしく、簡単にできるように書いてある。しかし、これを間違いなく作るのは、かなりの腕前と設備とが必要である。ジグは丸棒を切った物を正確に加工して作る。大きなコレットがないと難しそうだ。卓上旋盤の四爪では、切れ目を入れてからは、どうやって掴んでもうまく行かないような気がする。

 腕に自信のある方は挑戦して戴きたい。ここで一番問題となるのは、ネジ穴の中の山の部分にちょうど接触するが、ガタの無い寸法のドリルがあるかということである。僅かに太いものを使って、ネジ山が削れるのは良いかもしれない。その代わりすべての動輪のクランク穴にそのドリルを通しておく必要がある。

 この技法を見ていて感じるのは、垂直に削り、垂直にドリルで孔をあけられる技量を持つまでには、かなりの修練が必要であるということだ。筆者は、二回くらいは失敗せねば、出来ないような気がする。

 このジグを持つと、組立てた動輪の踏面の切削にも使える、とある。その場合は、ジグごとコレットで掴むことになる。あるいは、心を出して掴むための他の工夫が必要である。大きな旋盤でないと難しそうだ。Δ離優犬2本以上あれば、四爪チャックでも掴めるかもしれない。ネジが1本では、片方の端を強く掴むと歪んでしまう可能性がある。

2019年10月27日

崖を塗る

trimmed rock wall 崖をグレイの油性塗料で塗る。毛の長い刷毛に塗料を含ませ、溝の中に入れる。多少の塗り残しはそのままにして、次の部分を塗る。細い刷毛に替えて、もう一度塗り直す。塗り残しを探して刷毛を奥まで入れる。時間が掛かった。這った姿勢であるから、かなり大変だ。

  ”ドリルと発破で修整した部分”は、縦にも刷毛を動かす必要がある。ドリルで掘ったように見えねばならない。
 塗料がかなり飛び散る。周りは、半径1.5 mほど古新聞で完全に覆ったので、飛散は完全に防げた。グレイに塗ると、全体が落ち着いて見える。

rock 次の区間は水平な地層で、仕事は単純である。あっという間に完成だ。この左の部分は擁壁になる。脆い岩山を崩し、擁壁で抑えて線路を通した想定になっている。そのように見えるようにしたつもりである。

retaining wall 擁壁はT氏に頼んで枠を厚紙からレーザで切り出して貰い、プラスティック板をレンガ風にエンボス(押出加工)したものを裏から貼った。曲線に馴染ませる必要がある。円錐台側面に貼る部分と直線部分、そしてその緩和部分があるから、かなり面倒である。この写真は仮置きの状態を写したものである。整列させてから写真を撮るべきであった。 
 色は、全体を今までと同じグレイにする。これは土屋氏からの指定事項だ。車輛以外には色があってはいけないということなのだ。


2019年10月25日

続 崖を作る

 ただ天井材を積んだだけでは、隙間がたくさんある。そこに天井材のかけらを自然に見えるように詰め、ワイヤブラシでこすってなめらかにつなぐ。パテも少し詰めた。助っ人が来てくれたので、お手伝い戴いた。遠くから見て、修正箇所を教えて貰ったので、ほとんどの穴が塞がった。

Rock (1) 新聞紙、マスキングテープ、マスキングフィルムを使って、周りを養生し、ペンキが飛んでも問題ないようにする。そうして、天井に塗った白い水性塗料を塗る。毛の長いブラシを左右に刷毛を動かし、たっぷりと浸み込ませる。
 要するに、この塗料はプライマとして使っている。そうでないと、油性塗料がいくらでも浸み込んで仕舞う。また、水性塗料を浸み込ませるときに、刷毛の動きで、天井材のちくちくした断面が多少丸くなるので、風化したように見えて具合が良い。

 次の日の油性塗料を塗るための準備をした。他にもある塗らねばならないものを全て並べ、段取りを良くしておく。油性塗料は、缶の蓋を開けている時間をできる限り短くするべきである。酸素が入って反応すると、少々粘くなると同時に、固まりにくくなるからである。これは、部分的に重合し、硬化するのに必要な腕の数が減るからであろう。


2019年10月23日

崖を作る

 崖を完成させることにした。天井材を割って貼り重ねた状態で、1年ほど放置してあった。残りの部分を完成させ、塗装する。岩は重なっているが、ある程度の傾斜を持っている。全体を通じて、その傾斜の辻妻が合わなければならない。

 要するに、大きな岩山があって、その岩を避けて線路が敷かれたことになっていなければならない。必要があってどうしても崩さなければならなかった部分は、それなりの形に修整する必要がある。そうすれば、全体を見た時に歴史的な変化が分かる。

 以前写真をお見せしたものは「背斜」の部分で、その続きが必要であった。傾斜は少しずつ緩やかになり、水平に近くなる。こうすれば、全体を見た時、自然な感じがするはずだ。

trimmed rock wall この部分はドリルで深く掘って、小規模な発破をかけ、崖の傾斜を垂直に近くしたものを模している。岩が堅ければ良いのだが、脆い場合は擁壁を作らねばならない。これは下塗りの状態である。 
 土木の専門家に聞くと、擁壁は垂直でも何ら問題ないのだが、少し角度を付けたほうが安定感があるとのことであった。80° 程度にした。

 擁壁のデザインはあちこち見たが、昔 New York州 Albany付近で見たものが気に入っていたので、それらしきものを作った。


2019年10月21日

quartering jig 2

quartering jig USA2 アメリカで入手したジグはこれである。作者はクラインシュミット氏ではない。彼の家で同じようなものを見たがそれはスティール製であった。これとは出来がかなり違う。
 スライドバァがあって、それに沿って滑らせる。へそはバネで支えられていて、出入りする。2枚のブラス厚板は、平行に動く万力で締める。本当は縦に動くプレスで締めるべきだ。

quartering jig USA この写真は上下を逆にして写している。クランクピンの入る溝は妙に長い。HOでも使えるかもしれない。ただし、そうするにはクランクピンにはパイプを被せて、太くせねばならない。
 また、右先行と左先行の2種類に適合する。アメリカにも左先行があったのだろうか。120度クランクには適合しない。
 以前は軸箱を支える構造のものを作ったが、ややこしい割に精度が良くなかった。やはりセンタを支える方が良いのだ。

quartering jig USA3 これも上下を逆で、反対側から見たものである。スライドバァの中心は、伸縮ピンから外れたところにあるので、万力で締めればうまくいくはずである。しかし、万力の精度によっては傾いて締められる可能性もある。口が開き気味の万力では、何の意味もない。
 大きな万力の口金を整備して、直角を出して使ったが、やはり専用機が欲しかった。
 手持ちのすべての機関車を調査して、どの大きさにすると最大径の動輪を締められるか調べた。あまり大きな装置だと、移動させるのも難しい。それで津田駒の100 mmを入手したのだ。もちろん、125 mmの方が余裕があって、設計がより楽であった。


2019年10月19日

quartering jig 

quartering jig2quartering jig3 このジグには「へそ」がある。出べそだ。




 HO以下の模型を加工されている人にとっては、まず見るチャンスがないと思い、ここに写真を載せることにした。本物の機関車の車軸にはセンタ穴がある。旋盤では、そこを支えて旋削するのだ。
 Oスケールの模型には、センタ穴があるから、これを使って心を支える。(HO以下ではセンタ穴がないものもある。)押し込むときは、その出べそが引っ込まねばならない。心を保ちながら引っ込むようにするのだ。バネで支えて伸縮させる。ここにガタがあってはいけない。そういう意味では精度を高くせねばならないから、気合を入れて作るつもりであった。

 万力を奮発した。最高級品の津田駒製である。これを入手して、口金を新調した。S45C製である。この万力の平行度には感服している。まがい物では平行に締まらないから、だめだ。

 車軸を支えれば良いではないか、という意見もあろうが、筆者の手法では車軸中央部は露出していないのが大半だから無理だ。両方の軸箱はパイプ状の canon box でつながっているからである。また、フランジで支えるという手もあるが、フランジは車軸と同心であるとは限らない
 以前、韓国製のとんでもない機関車を見たことがある。フランジが偏心していたのである。材料をいい加減に掴んだのだ。旋盤工が職人としての気構えを持っていないとこういうことになる。以来、フランジは信用できないものとしている。

2019年10月17日

Sofue Drive

 1985年、3条ウォームが実用化された。 これを世界中に広めたいと、祖父江氏と筆者はかなり努力した。雑誌に発表し、現物を持ってアメリカ中見せて廻った。その真価は理解できるようだが、なかなか浸透しない。

 カリフォルニアのある富豪が、現物を見て目を輝かした。名刺を渡したら早速連絡があり、試しに一台送るから改装してくれと言って来た。

 それは1950年頃の安達製作所製のミカドであった。もともとは酒井喜房氏の設計である。この機関車は動輪がブラス製で、台枠は、t1のブラス板をプレスでコの字断面に曲げてある。軸距離は怪しい。しかもクランクピンがネジ留めであるから、クランクピンが緩みやすいし、磨り減りやすい。正直なところ、改装の価値がない劣悪な模型であるとは思ったが、祖父江氏が丁寧に直してドライヴを入れ替えた。

 それを送ったら、大変興奮して電話を掛けて来た。日本は深夜だったので驚いたが、その興奮はよく分かった。その後の彼の注文数は凄まじかった。300輌ほどの機関車を順次送ってきて、その改造で祖父江氏の生活は成り立った。
 大半はカツミ製(祖父江製)であったが、アメリカ製、韓国製もかなりあった。それらの改装のノウハウも掴め、順調に注文をこなすことが出来た。

 その後30年経ち、その富豪は亡くなり、コレクションが売りに出された。Sofue Drive付きだから、価格はすこぶる高い。しかしすべて売れてしまった。その後、筆者のところに、改装を依頼する連絡が届き始めた。祖父江氏の代わりをせよというリクエストが大きくなってきたのだ。
 本業の仕事を辞めて、そちらにシフトしようと思っていた矢先に土屋氏から博物館設立を頼まれ、Sofue Drive受注はしばらく中止となった。動輪リビルトの道具一式を揃えたのに、日の目を見ることがなくなった。

 しかし、今回あるきっかけで、既存の機関車を改装し、新製に近い形で完成させねばならないことになった。その第1号がこの4-8-4であった。今ボイラまでばらして、新しい缶胴を作っている。50年前の製品のボイラは、一部間違いがあり、ばらさないと修正できなかった。煙室は新製である。キャブも新製である。
  
quartering jig 動輪嵌め替えジグを引っ張り出して、整備した。これはアメリカで普及しているタイプであり、日本ではあまり見ない。これを自作するつもりで、northerns484氏の親しい職人に部品を作ってもらっていたが、彼はあっという間に全体を完成させてしまった。これには驚いた。筆者はジグを自作した、と言いたかったのだが、有難いことに言えなくなってしまった。さてどんな構造であろうか。


2019年10月15日

Cockerham Drive

 Doug Cockerham氏には何度か会ったことがある。ダグは背の高い黒髪の男で、自分の伝達装置にはかなりの自信を持っていた。
 筆者は現物を2組持っていたが、間違って廃棄してしまったような気がする。あるべき場所で、ここ数年見ていない。ブラス屑の処分の時に捨てたのかもしれない。もったいないことをした。

Cockerham Drive 蒸気機関車用のギヤボックスの構成は、薄肉のロストワックス鋳物で作ったギヤケース内にベークライト製のウォームホィールを入れ、鋼製の細い2条ウォームをボールベアリングで支えていた。ギヤボックスは歯車、ベアリングの外径 + 3 mm 程度の形で、なかなか優美であった。残念ながら、その写真をGoogleで探しても、”Cockerham Driveという街路(drive)” の名前しか、見つからない。
 split line(分割面の線)上にはネジのタブが付いていて、それを3本締めるようになっていた。軟らかいグリースを使っていたのは、先回紹介したのと同じだ。 

 逆駆動が出来た。ギア比は35:2の互いに素であり、進み角は12度程度で、かなり急な部類に属する。当時はモータが直捲、あるいは有鉄心マグネットモータの時代であるから、押しても動かなかったが、効率は非常に良いと感じた。ベークライトのギヤを使った理由は分からない。悪くはないが、良いとも言えない。リン青銅との組み合わせを使うのがベストだ。

 1995年頃、彼に3条ウォーム + コアレスモータの実例を見せた時の、驚愕した顔は忘れられない。当時はそのようなものに需要がなかったし、経験のない走行性能であったから、事故が起こるという心配の方が大きかったのだろう。
「これでは勾配の途中で停車できないからダメだ。」と言った。

 コカハム氏の方が、ホワイト氏より工学の素養があったようだ。

2019年10月13日

Jerry White Drive

Jerry White Drive (4) Jerry White氏は、Lobaughの職人であった。数多くのカスタム・ビルディングをこなした。腕の方は素晴らしい。絵で言えば、水彩画のような機関車を作った。特徴をよくとらえた造形で、板厚は薄目である。直接には会ったことは無いが、1990年代に手紙のやり取りはある。10年ほど前に亡くなった。

Jerry White Drive (3)Jerry White Drive (2) ギヤボックスは独特の2条ウォームで滑らかである。逆駆動はできないわけではないという程度だ。どういうわけか30:2である。感心しない。薄い板金工作で出来ている。厚みは15ミル(0.38 mm)である。ウォームの先端はボールベアリングで受けている。軸径は、3/16インチ(4.76 mm)、外径は3/8インチ(9.52 mm)である。実に滑らかな動きをするベアリングである。このべアリングが付いているから、逆駆動できる。ギヤは快削鋼だが、シャフトにはブラスを使っているのは不思議だ。ギヤボックスを支えるトルクアームはない。ドライヴシャフトが反作用を受け持つから、そういう点ではスティール軸の方が良かった。

Jerry White Drive (5)Jerry White Drive (1) ウォームホィールはブラスである。外径はボールベアリングと近い径である。もう少し細くすれば、進み角が大きくなって、効率が上昇したはずである。残念だ。
 グリースは軟らかい。ギヤボックスは、普通にはない分かれ方をする。下半分は動軸から外れない。ウォーム部分だけが外れる。そのウォーム部は長いストラップ状のもので、下半分に連結されて固定される。前後を逆にすると嵌まらない。即ち互換性は無い。
 どういうわけか、このドライヴが付いていると値が高い。今回の機関車は全体がかなり破損していたので、超格安であった。このドライヴだけでも欲しい人が居るので、外してアメリカで処分することにする。動輪を抜くと購入者が困るので、付けたままの方が売却しやすい。予備の動輪は持っているから、それに3条ウォームを付け替える。


2019年10月11日

続 歯車の要件 

 他の友人たちとの会話の中で、歯数の少ない正しい平歯車が欲しいという話が出た。どれもこれもやかましいのは、角速度が一定にならないからだ。市販のものは怪しい歯型で、しかも偶数歯の物ばかりだ。奇数歯のものがあれば、かなり助かる。”互いに素”を作りやすいからだ。しかし一般的に言えば、14枚以下のものは感心しない。

 他のゲージも含めて走行音を聞いて歩いた。歯車の音がするが、正直なところ、誰も気にしていない。本物ではありえない音を立てていると、気分が悪い。車輪の音も誰も気にしないのであろうか。明らかに「めっき音」がする。
「めっき音」というのは、筆者が勝手につけた名前だが、精密な旋削だけで出来たものと、ブラス素材をめっきした物と比較すると如実にその差が分かる。めっきしたものはゴロゴロ音がするのだ。表面が粗雑なのだが、光っているので研磨されていると信じてしまうのだろう。
 以前にも述べたが、細かい紙やすり(#2000程度)で磨くとかなり改善される。

 話が飛んだが、模型用の正しい歯型の、奇数歯の歯車が欲しい。こういうものこそ皆で共同して出資し、作るべきである。模型クラブ組織があるのだから、出来ないことではない。インヴォリュート歯車の設計能力のある人も居る筈だ。歯車は意外と高くないものなのだから。

2019年10月09日

歯車の要件 

 スパイクモデルの2条ウォームをたくさん持っている、という友人Bob氏が来た。
「残念だよね。dda40xさんの記事を読めばすべてのノウハウが書いてあるのに、それを読み取れないんだね。どうせ盗まれてしまう特許より、名を残すという手に出ているんだから、教えてくれと言われたら教えたんだろ?」
「そりゃそうさ、世界で一番素晴らしいものが作れるように指導したさ。」

 現実に出来たものは感心しない出来で、このブログで検討されている。それでも動くそうだ。割り切れるギヤ比で、もったいない話である。ダイキャストの型代を掛けて、変なものを作っている。もし正しい設計の物であれば、素晴らしい走りを提供し、模型界を席巻したに違いない。模型人は人の指導を仰ぎたくない人が多いらしい。”オリジナルを凌ぐコピィなし”ということが、わからないのだろう。

 インヴォリュート歯車は角速度を等しくするために作られたのだが、それを忘れた実例もある。歯型が正しくないものはダメなのである。「動きます」とは言うけれど、正しい角速度で動いている証拠を見たいものだ。重負荷をかけて高速で駆動する時、角速度が等しくなければ音がする。
 ウォームギヤの特質は、バックラッシを理論上、ゼロに出来ることである。こういう歯車は他にない。即ち無音に出来る(現実には潤滑油が廻るように、ごく僅かの隙間を空けるが、普通の歯車より、ずっと近づけることができる)。工作機械で使う割出し盤にウォームギヤが使われているのは、そういう理由である。
 オルゴールに付いている2条ウォームもどきが、どういう動きをしているかはよく分からない。スプリングモータで軽い羽根を動かしているので、この場合、問題は見えて来ない。

 平坦線でぐるぐる廻しを楽しむ分には、それでも良かろう。最近問い合わせを戴く方々は、筆者と同じように勾配線を重負荷で登りたい、そしてエンジンブレーキを掛けて下りたいという人達だ。正しいギヤを使わないと泣きを見る。 
 先日博物館のレイアウトを見学にいらした方は、本当に無音で機関車が動くので、とても驚いた。彼は、
「想像したのと違っていた!」
と叫んだ。ある程度はガラゴロ音がするのだと思っていたらしい。
 道床のエラストマも騒音減少に貢献しているが、動力車の無音化は、それとはまた違う話だ。

 歯車の最小歯数については既に述べた。そういう歯車しか使っていない人がこれを見れば、驚くのは当然だろう。

2019年10月07日

関西合運参加

go-unn 年に一回だから、行かねばならない。自宅から山を越えて街道を行く。早朝で交通量も少なく、平均速度は 50 km/hだから、かなり速い。高速道路は山崩れとか、いろいろな障害があって、渋滞気味で避けた。燃費の良い車で、35 km/L も走る。軽快なドライヴであった。

3D printing 今年は新作の貨車3輌と切断機(テーブルと折れたハンドル、その代替品)を展示した。高精度3条ウォームの実物を見たい、というリクエストもあったので、持って行った。
 3D プリンティングの見本を置いておくと、興味のある方はじっくり見ている。質問にはお答えした。今まで紹介されている材料とは違うことに興味がある人が多い。

 切断機の諸問題については、興味のある人が多く、テーブルと新ハンドルの注文 を受けた。テーブルは、あと6台ある。もう再生産はしない予定なので、売り切りである。ハンドルは、1/2インチネジのを持っている人は不安で、注文が多かった。皆さんフライスはお持ちのようで、こちらも気楽である。キィ材と共に送る予定だ。ご希望の方はコメントを通じて連絡されたい。

 すでにテーブルを買われた方が、感想を知らせてくれた。横についている定規が便利で、役に立つということである。テーブルが薄くて、小さなクランプで材料を留められるのも有難いとのことだ。設計者としては、この種のお褒めは嬉しい。

 遠藤機械の切断機については、専門家のコメントとして、「ハンドルが折れないのが奇跡だ」という話には、皆驚いていた。

 3条ウォームの新しいギヤボックスには興味津々で、廻してみて愕然とする人が多かった。ただ廻りますというのとは、異なる世界であることがお分かり戴けたのだ。押して動かす動作をすると、感動するらしい。  

 紹介した本の英語版、日本語版を置いておいた。意外なことに、日本語版は持っている人が多いことがわかった。英語版の著者名にLinn Westcott氏の名前を確認すると、皆さんは安心するようだ。 

2019年10月05日

MKT covered Hopper

MKT CD covered  hopper このホッパ車はずいぶん前に紹介した。長らく色を塗れなかった。塗料も用意し、ディカルはY氏が作ってくださったが、上面のrunning boardが無かったのだ。

 入手した時の歩み板は気に入らなかった。加熱したプラスティック板を型に押し付け、印象を付けたものを張り合わせて構成してあったが、高さがおかしかった。足の長さが足らない、しかも本数が少ない。なおかつそれが弱い材料で、壊れた状態であった。
 この歩み板を自家製エッチングで作るつもりであったが、ある事情で断念した。それは近々、むすこたかなし氏が解説されるはずだ。大きな "breakthru" が必要だったが、それができなかったのだ。むすこたかなし氏は筆者の経緯説明を聞いて、すぐに解決策を開発された。思わず膝を打つ、簡単で素晴らしい工夫である。これはエッチングの手法に大きな進歩をもたらすであろう。化学屋として、誇りに思うことである。

 さて、金属製歩み板の製作でひっかかって10年ほど遅れたが、T氏が紙をレーザで切り抜く方法を紹介され、それを作ってもらった。足はブラスで作り始めたが、今回の3Dプリンタが使えると気付き、お願いした。足の高さは完全に揃う。

 スーパーXで貼り付ければ、完成である。色はMKTグリーンを入手してあった。BNグリーンとは異なり、広葉樹の若葉の色である。MKTとは、Missouri-Kansas-Texas鉄道のことである。


2019年10月03日

台車各種

 Walthers, Lobaugh, 3Dプリンティングの台車を比較してみる。

4-wheel Pullman 4輪台車である。これらが同じ台車とは信じがたい。
 左のダイキャスト製はバネが抜けてない。これを抜いたところで形が悪すぎるので、40年以上放置である。車輪だけLow-Dにしている。背が高い。
 中のLobaughは形が良い。バネを切り抜いて適当なコイルバネを接着してある。実感的だと評判であったが、やや小さい。
 右は今回の台車だ。図面通りだ。

 こうしてみると、ボルスタ高さ、軸距離など思いのほか、異なっている。

6-wheel Pullman 6輪台車である。左の二つはコイルバネが抜けていない。切り抜いたものもあるが、いまひとつである。
 今回の台車はブレーキシュウもついているし、しかもそれがタイヤ踏面に当たっている。ナイロンだからこそできることだ。絶縁材料は助かる。

 造形的にはLobaughのものが良い。凹凸の深さも適当で、黒く塗ると十分に気分が出る。しかし、抵抗が大きく、ショートする。

 今回の試作で、いろいろな改良点が分かったので、次期量産品は素晴らしいものとなるだろう。アメリカに送って評判を聞いてみる。

2019年10月01日

続々 3Dプリンタによる台車

GSC2 イコライザの裏側には支えがある。この支えは薄く長いので撓む。位置関係を保っているだけである。荷重はコイルバネが受け持つ。
 この写真は台車枠から外した状態である。イコライザの位置は保たれている。そのまま台枠に締め付ければできあがりだ。ナイロンだから出来る。疲労することもない。このアイデアをHOに使えないかという打診もあるが、おそらくうまく行かないだろう。縮小模型は堅いのである。うんと細くするか、別の工夫が必要である。というわけで、これは O scale には適するアイデアである。 

GSCGSC 6-wheel truck この台車はGSC General Steel Castings の鋳鋼製6輪台車である。この市販品がなかったので、新規開発品である。イコライザ部品はプルマンと設計が共通である。ある特別な客車に使うことになっている。 

woodframe プリンタ出力時は、なるべく密に詰めないと損なので、例えばこんな形に並べて出力する。出力後黒染めを施してある。ナイロンは極性が大きな高分子であるから、染色が容易である。塗装するのだが、その前に黒くしてあると気分が良い。塗料を吹き付けると浸み込んでいくのが分かる。防水性を向上させるので、高湿度時の強度低下も防げるだろう。
 ナイロンは水分によって強度が低下する。それはガラス転移温度が下がるからである。要するに常温付近でも流れるようになる。堅い筈の樹脂が曲がってしまうのだ。濡らしてはいけない。  

 ナイロンは結晶性の高いプラスティックで経年変化が少ないものである。荷重を掛けていてもクリープが少ないから、台車には適する。価格が高いところが問題であるが、性能を考えると妥当であろう。今後この種の材料はどんどん進歩するはずだ。ソフトウェアがあれば台車の再生産は容易であるから、将来への不安はない。
 その昔のダイキャスト製品は大半が膨らんで割れている。それと比べると、このナイロン製ははるかに信頼性がある。

 ステンレス製・ピヴォットとの相性はとても良い。0.25%以下でも転がる。POM(通称デルリン)では0.3%ほどであった。 

2019年09月29日

続 3Dプリンタによる台車

4-wheel Pullman truck Pullmanの4輪の客車台車である。これは36インチ車輪を付ける。
 すっきりしている。今までのはWalthersの文鎮のようなダイキャスト台車であった。それを糸鋸で切り抜いてヤスリを掛け、バネを接着すると可動のように見えた。膨大な手間を掛けて改造していたが、新しい台車を見ると古いものは投げ捨てたくなった。

 ブレーキシュウまできちんと付いている。隙間が少なかったようで、少し削る必要があった。次回生産では改良する。摩擦が極端に少なく、するすると走って行ってしまう。

Pullman 6-wheel truck Pullmanの6輪台車である。これはイコライザ可動である。この台車もすっきりと出来ている。普通に考えると、非金属でイコライザを作っても、動きにくいし、組むのも難しい。
 ところが、S氏はそれを思わぬ方法でクリアした。本当に、イコライザが軸重を均等にしているが、組立ては一瞬で終わる。そのアイデアは素晴らしい。
 
exploded view キングピン(台車の回転軸)は中央車軸の真上にある。キングピンのネジを下から締めるのは難しいが、それを克服している。台車ボルスタを下から締めている。そのネジは、揺れ枕の底板の穴から締められるようになっているのだ。
 未塗装で、光をしかも上から当てているので、ざらつきが強調されているが、実際はもう少し滑らかに見える。  
             【後半部分を差し替えました。】           

2019年09月27日

3Dプリンタによる台車

 S氏に作って戴いていた台車が何種類か届いた。

 客貨車の台車はナイロン製、POM製が良い。ショートによるトラブルから逃れられる。軸受の耐久性は全く問題ない。毎日走らせているが、減ってきた兆候はない。おそらく50年以上持つであろう。壊れたら差し替えれば良いので、気にする必要はない。

 3Dプリンタで作ると、人智を超えた構成に出来る。組立てなくても、込み入った形がそのまま出力される。作ろうと思えば、しなやかな鎖でさえも、そのまま出来る。外見だけのコイルバネは、再現できる。もっとも、荷重を掛けるバネは金属製にするべきである。
 車輪を嵌め込むときに部品を脇に寄せ、それを戻してネジ留めすればおしまいだ。ネジも切った状態で出力されている。部品には弾力があるので、曲げても復元する。

Woodframe caboose truck 今回どうしても欲しかったものは、この木製台枠のカブース台車だ。Low-Dの33インチ車輪に適合する貨車用台車である。 ブラス製のものも何種類か作ったが、決して満足できない。たまにショートする。その点、これは素晴らしい。(やろうと思えば、絶縁車輪の向きを変えて、1台車で2極の電源も採れる。)
 ざらついて見えるが、30 cmの鑑賞距離からでは実に自然な感じである。高精細のものもあるが、実用上はこれで十分だ。HO以下の場合は別の材料の方が良いかもしれない。Oスケールは強度が大切である。
 もちろん塗装するのでかなり滑らかになる。焼結ナイロンは多孔質で、瞬間接着剤、塗料は吸い込まれていく。写真の状態は染色を施したものである。生地は白い。 

UP CA3 この台車を付けるのは、この車輛をはじめとする数輌のUPカブースである。1950年頃までのUPカブースはこの色であった。Red Caboose という話は、しばらく前にした。この写真は仮の状態で、収まり具合を見ている。以前に比べて、高さが低くなり、安定感がある。まだ細かい部品は付けてない。 

2019年09月25日

疲労しにくいハンドル

shear handle この形で行こうと思う。どこにも角がない形にする。レーザで切って作るのだから、好きなようにできる。多少重くなるのと、重心位置が遠くなるので、バネの力に勝って、何もしなくても刃が降りると面白くない。場合によっては、バネを強くする(何か挟み込む)ことが必要かもしれない。
 厚さ19 mm(3/4 インチ)までは垂直に切れることが分かっているので、キィ溝もレーザで切ってもらう。追加工なしで完成の筈だ。手に当たるところだけは削って丸くする。伊藤英男氏の方法で、四角を八角にし、それを十六角に・・・するのだ。そこにはちょうど合う太さのゴムホースでも被せておく。自転車ハンドルの握りでも良い。

 回転軸は 5/8 インチの丸棒だから、外してフライスでキィ溝を彫る。こういう仕事は訳ない。抜け留めは、軸の末端にワッシャ付きのネジを締めれば良い。

 キィ材は考えている。インチ材は各種あるがミリ材がない。自分の分はインチでも良いが、友人から頼まれるときはミリ材の方が良い。N氏によると 5 mm角が適合するそうだ。 

 この構想を友人たちと話していたら、蒸気機関車のメインロッドの形にしたらと言う人がいた。残念ながら、メインロッドはトルクを掛けることを想定していない形である。EF15のブレーキレヴァのような形も良いが、その通りに作ろうと思うとコスト的に難しい。

 希望者はコメント欄を通じて連絡して欲しい。連絡先は本文に入れて送られたい。公表はしない。軸のキィ溝切りも必要があれば引き受けざるを得ない。


2019年09月23日

続 金属疲労

 クラブのN氏はこういうことに詳しい。
「ネジ溝からだね。おそらく、遠藤機械には情報が入っているはずだ。ネジを変えたっていうのも、それに関連あると思うよ。設計変更で折れにくいネジにしたのじゃないか。」
 自動車ならリコール事案だろう。

screw extractors 博物館に来てくれたので、埋まっている折れたオネジを取り出すことにした。こういう時のために、専用の工具 screw extractor がある。それを使ったところ、折れてしまった。エクストラクタには逆ネジが切ってあって、ドリルであけた穴にねじ込んで、取り出す。それがあっけなく折れたのだ。日本製だったから意外だった。これには焼きが入っていて硬いから、それを取り出すのは難しい。写真は細いものを示している。
 件のネジは、よほど強くねじ込まれていたのだ。仕方がないので、周りに小さな凹みをドリルで掘った。そこにポンチを当て、抜ける方向に根気よく叩いた。ところが、エクストラクタを使った時にネジが太くなってしまったのか、全く廻らなかった。

broken screwbroken screw2 最終手段として、カッティング・ディスクをドレメルに付け、ネジに溝を切って、大きなネジ廻しで廻すことにした。径の大きなディスクを当てると、周りに傷がつく。多少減って径の小さくなったものを使うと具合が良い。左の写真では、孔の周りに傷がついている。この程度は仕方がない。ネジ廻しの先端は砥石で研いで、角を出してから始めた。
 ところがそれでも廻らない。モンキーレンチを使って二人がかりで廻した。少しずつ廻って、取ることに成功したが、時間が掛かった。大きなネジ廻しは、ねじれて壊れてしまった。それは父の代からの60年以上使った古いものであった。

 あまり力を入れると、また右手が壊れそうで、ひやひやしながらの作業であった。一人ではとてもできなかった。N氏には感謝する。
 材料が塑性変形し易い。ネジを思い切りねじ込むと、少し変形して抜けにくくなるのだ。次回はロックタイトで抜け止めをし、トルクをあまり掛けないようにしたい。

 どうするかを相談した。もちろん、現行のハンドルは捨てて、新しいハンドルにする。現行ではネジを折る形になっているから折れやすいのだ。そういう愚かな設計は避けたい。留めネジはやめて、キィにしよう。 
 さてどうするか。思い切った形の物にしようと思う。疲労しにくい形が良い。きっと欲しがる人も居るだろうから、余分に作ろう。そうするとまた売れ残るかもしれないが。


2019年09月21日

金属疲労

broken by metal fatigue 遠藤機械の切断機ハンドルが折れた。ケガはなかったが、かなりびっくりした。破断面を見ると、metal fatigue 金属疲労特有の模様が見える。力を入れた瞬間に破断するので、場合によっては大ケガをする。注意されたい。

metal fatiguemetal fatigue 2 この写真の上の矢印から始まっている。虫眼鏡で見ると、色が暗い部分に同心円の貝殻状の模様が見えるのが証拠だ。僅かなヒビが入り、使用と共に、それが広がったのだ。下の方の輝いている部分は、折れた瞬間にコジて擦れたところだ。
 筆者の祖父は金属屋だったので、疲労の話は聞いていた。しかしこんなに太いものだし、手で押す程度のものだから無縁のものと思っていた、

 この機械は古い。1978年ころの購入だ。これと同時代のものは今野氏のものむすこたかなし氏のものくらいしか見たことが無い。足の間隔が 330 mm のものだ。これはハンドルのネジがインチネジである。1/2インチの 12TPI、要するに径が12.7 mm、ネジ山が1インチ当たり12本である。この2本は比較のためである。赤い方がより古い。博物館のと自宅のものとを比べている。

 よく似た太さのM12に比べるとネジ溝が深い。ということは疲労がそこから始まりやすいのだ。そのせいかどうかは知らないが、80年代には 5/8インチになり、90年代からはM16に変更されている。

 そんな無茶をしたわけでもない。1mmの定尺板を連続で数枚切って、最後の一枚の耳を落とそうとしただけである。公称の性能の範囲だ。長年の使用により、金属疲労が進んで、たまたま今日折れたというわけだ。ブラス板はたまたま快削板ではなかった。快削ならより楽に切れるが、それが原因とは思えない。

 どうするか考えている。完全に復旧して1/2インチのネジを切るなら、旋盤でやると早い。筆者の旋盤はインチ仕様だから、ネジはすぐ切れる。しかしまた折れるだろう。クラブ員にはこの種の設計に詳しい人が居るから、相談することにした。

 この種の切断機をお持ちの方は、注意されたい。使用頻度が高いものは危ないと思われる。

2019年09月19日

続 HOm

 国鉄のゲージ 3 ft 6 in の1/87.1の模型をHOmと呼んでも、何ら問題ないと先回書いたところ、親しい友人が、
「それを言っちゃぁ、おしめぇよ。」
と電話を掛けて来た。
「ナロゥとは認めない人が大半なんだから、あんなことを書くとますます反発が大きくなるよ。」と言う。
 しかしながら、客観的に見れば明らかにナロゥなのである。


 別の友人から、お知らせ戴いた興味深い情報を、紹介する。SAR(南アフリカ鉄道)のRed Devilという機関車のHOスケールの機関車が市販されている。
 その表示はHOmである。国鉄型よりもはるかに大きな機関車である。それをHOmとしているのだから、国鉄型をHOmとは呼べないとは言えないだろう。

 そのゲージは1067mmだと信じていたが、1065 mm(3 ft 5-5/16 in)だそうだ。この広告では残念ながら fine scale とある。カナダの模型屋だそうだが、この点はかなり遅れている。

 ニュージーランドなどではHOn3-1/2と書いてあるようだ。いずれにせよナロゥという認識だ。
 

 しばらく見ていなかったが、友人たちから、イモンのあのページの表現が大幅に変わっているというお知らせを戴いた。だんだん短くなっている。
 かなり改善されたが、まだまだである。読むとめまいを感じる。いまだに山崎神話から抜け出せない。彼のミスリードの罪は、小さくない。1/80は HO gaugeの線路を走っている


2019年09月17日

ゲージが先か…

newer scales いまだに罵詈雑言の続きが来る。HOはスケールが先だと信じているらしい。
 先日の本の核心部分は既に公表したが、さらに決定的な文があるから紹介する。これで罵詈雑言からは縁を切れそうだ。それでも送って来た場合は、IPアドレスを公開するかもしれない。

 HOの説明の後、p.85にはこう書いてある。
 The next three scales to be described are much 'purer' - that is, more exactly truthful - than the oldest established ratios, in which the gauges were first selected quite arbitrarily in neat fractions of an inch , the linear scales being afterwards chosen to agree with them in a very approximate way.
 とあって、その後に、gauge S, gauge TT, gauge N という順で書いてある。"arbitrarily"という語は時々目に掛かるが、イギリス語とアメリカ語で発音が異なる。ここではもちろんイギリス風に発音するのだろう。”任意に”と訳すと意味が通じる。 

 それに対する日本語訳は、
 次に述べる3つのスケールは、古くから決められていたスケールよりも純粋、つまりより厳密な正確さを持っている。古いスケールでは、初めにゲージは何 mmと決められ、線分比はそのあとで大まかにゲージに合うように選ばれたのである。
とある。何mmとは書いて無かったが、まずまずの訳である。 
 
 すなわち、HOはゲージが先に決まっていて、スケールをあとで決めたと書いてあるのだ。ここで言う古くから(戦前から)あったゲージとは、HO、O、1のことであり、スケールはさまざまであった。
 そして戦後確立されたゲージは、スケールとゲージを一致させるようにしたのだ。もちろん標準軌の場合である。
 
 HOの成立初期から1/87.1と決まっていたと、大上段にかぶって言う人達は、そのころのHO模型を見たことがあるのだろうか。ひいき目に見ても模型とは言い難い。正直なところ、おもちゃであって、サイズはモータの入る大きさに作られただけである。ある方は、「昭和30年頃のEB電関みたいなものだ。」と言う。非常に当たっている表現だ。
 1/87が当たり前になってきたのは、アメリカでも戦後しばらくして、である。50年代になっても、柄の大きなHOはアメリカでもいくつかあった。カワイのリオ・グランデの機関車なども、サイズが大きな良い例である。

 その3つのゲージについて、要約を書くことにする。多少、筆者が加筆している。
 Sゲージは、1番ゲージの半分であるから、HIゲージと呼ばれていたこともある。ゲージは7/8(seven eighth)インチで、サイズが 1/64(one sixty-fourth)、スケールが3/16(three sixteen)インチで、3つのSが付くことから名付けられた。
 線路幅は標準軌の縮尺通りに極めて近い。(1番ゲージの1/32と同じこと)

 TTゲージは120分の1で12 mmゲージである。これも標準軌の縮尺通りと言ってよい。しかし、後にヨーロッパでは 3mmスケール(1/101)も出現した。

 Nゲージは、イギリスで 2 mmスケール(1/152)でスタートした。これはOOO トリプルO から発展した。多少の混乱の後に、現在のNゲージはアーノルトが1/160を採用して、標準軌の縮尺通りに近くなった。


2019年09月15日

ウォームを外す

gear removing 手伝いに来て下さるクラブ員に聞かれた。
「このモータが安くて強力なので使いたいが、ウォームが外れない。どうしたら外れるものだろうか。」

 最近話題になっているモータであるが、ウォームが固着していて、そう簡単には取れないらしい。今野氏の話を思い出した。ウォームを掴んで旋盤で廻せばよいのだ。

gear removing2 早速、術式を真似してコレットでつかんだ。9 mmのコレットがぴったりだ。深く掴んで、高速で廻し、突っ切りの先を変形させたバイトで削った。コレットは心が出ているので、モータは微動もしない。

gear removing3 軸の手前まで削って、虫眼鏡で見ながら軸に触る寸前までバイトを進めると、ぽろりと取れる。



 後は万力にウォームを銜えて、糸鋸で平行に二回切る。軸に傷を付けないように気を付けて、軸の近くを平行に切るのだ。ペンチで挟んで捻れば取れる。簡単である。
 時間にして5分足らずである。見ている間に出来たので、依頼者はとても喜んだ。読者の皆さんもお試しになると良い。

2019年09月13日

エポキシ樹脂のリヴェット?

 手が不自由な間、ずいぶん大量の本を読んだ。雑誌もたくさん目を通した。日本を離れていた時期の雑誌は、始めて見るものも多かった。

Train2 ゲージ問題関連の記事があるものだけ、付箋を付けている。その記事を読む時に、ついでに周りの記事も目に入ってしまう。また、気になるところを見つけてしまった。例の連載記事である。
 エポキシ接着剤を多めにつけて部品を貼り付ける時に、中心に孔が開いていると接着剤が裏にはみ出し、ちょうどリヴェットのようになると書いてある。そうすると丈夫に付くのだそうだ。

Train1 冗談でなく、本気で書いているらしい。接着剤は、接着面以外の強度は無いも同然である。その証拠に、接着剤チューブについている固まった部分は、簡単にちぎることができる。


 圧力を掛け、接着剤自身の厚さを薄くすると、最も接着力が強い。塗装も同じである。厚いと良くない。なるべく薄く塗る方が、はがれにくい。本物の電車は、必ず元の塗料を剥がしてから塗る。塗り重ねると弱くなって、剥がれやすくなるのだ。

 この記事では、繰り返し間違ったことが書いてある。普通は叩かれたら、少しぐらいは勉強するものだ。技師と名乗るなら、専門書を開いて熟読すべきだ。眺めているだけではだめである。分からないなら書かないことだ。迷惑する人がいる。

2019年09月11日

HOm

 鉄道模型が他の模型と根本的に違うのは、決められた線路の上を走ることである。それならば、縮尺よりもゲージが、その製作に当たって最優先に考慮される、ということは明らかなことであろう。HOゲージは線路幅が先に決まって、スケールは後に付いてきた概念である。相も変わらず意図的なウソにしがみついている人もいるようだが、勝ち目はない。飛行機や船は縮尺を決めて作られる。それらとは違うのだ。

 書き忘れたが、先日の本はイギリスの本である。執筆陣はかなりの有名どころを揃えている。TMSの1970、71、72年のミキストを調べたが、この本に関する記述は見つからなかった。読者の皆さんの中で、気が付かれた方はお知らせ願いたい。当然献本があっただろうが、都合が悪いから黙殺したのかもしれない。

 山崎神話は、無意識のウソ(無知から来たもの)であったが、あとでそれを持ち上げ、これが正しいと言って来た人たちは責任を感じないのだろうか。1970年代以降、外国からの情報はいくらでも手に入るようになっている。それなのにろくな調査もせず、間違った情報をばらまいてきた雑誌には、大いに責任がある。先日の不発弾では、「古い戦前のModel Railroaderを買い集めたり」などと得意そうに書いてあるが、それを熟読分析したわけではなさそうだ。眺めているだけではだめなのである。

 先日、1970年頃祖師谷のTMSを訪ねてゲージが先に決まったのでしょう、と山崎氏に質問した人の証言を得ている。
「これ以上俺にゲージとスケールの話をするな!」と怒鳴り付けられたそうである。客観的な人であれば修正するだろうが、彼はそうすることができなかった人である。それがここまで問題を長引かせているとは情けない限りだ。彼は外国の情報を遮断していたとしか思えない。

 今、少しずつであるが、NMRAのBulletin(会報)を通読している。NMRA結成当時の資料を大量に再掲載している部分がある。これを分析すると、もっといろいろなことが分かると思う。

 スケールを統一することを理念として挙げるなら、異なるゲージの車輛すべてを模型化して市販しなければならない。京王の車輛が出て来ないのはどういう訳だろう。線路(特に分岐)車輪の規格を全て決めて公表して市販し、ストラクチュアなどを大量に市販する用意ができてから言うべきであろう。

 本物のゲージごとの模型化をするということはあまりにも多岐にわたってしまい、とてもできないから、Bemo はメータゲージ(1/87.1にすると11.5 mm)をHOm(12 mm)として売っているわけだ。そう考えると、日本の12 mmゲージをHOmと言ってはいけない理由があるとは思えない。我が国での成立の過程を見ると、根は同じなのである。 

 10年後にはどうなっているのだろう。

2019年09月09日

日本のHO

HO その本の英語版 p.80 には、
 
 All HO models are intended to run on track that has a gauge of 16.5 millimetres(0.65 inch), but the earlier manufacutures of the earliest HO models were not so sure about the best linear scale to use on track of the width - the scale ratios 72:1, 76:1, 80:1, 82:1, and 90:1 were all tried. One can still find a few commercial HO models on sale in these unusual scale, but most American, Europian and Japanese manufacturers now stick consistently to scale of 3.5 millimetres (0.14 inch) of model to 1 foot of prototype - that is, a scale ratio of 87:1 - which is the correct scale for the gauge. In America, France, Germany, Japan and several other countries HO has become by far the most popular modelling gauge.

とある。3.5 mmは0.138インチ弱であるが1/100インチの桁までしか書いてない。また、HOはゲージだと書いてある。

 日本語版の記述は、下記の通りである。

 現在、HOの模型はすべて、16.5mmの軌道を走るように設計されているが、初期のHO模型の製造業者は、この幅の軌道を使うためにどんな縮尺が最もよいか、確証が持てなかった。縮尺比72:1、76:1、80:1、82:1 それに 90:1 などが試みられた。今もって、この異常なスケールのHO模型はいくらか市販されている。しかし、現在ではアメリカ、ヨーロッパなどの製造業者は、たいてい実物30cmに対して模型3.5mm ― すなわち87:1 ― のスケールに決めてしまっている。そしてこれがHOゲージの正確なスケールということになっている(日本のHOは、80:1である)。
 アメリカ、フランス、ドイツ、日本およびその他の諸国では、HOゲージがこれまでのところ最も一般的になっている。 

 
こちらでは、1 footを30.48 cmとせずに30 cmとしている。また、縮尺比 (scale ratio) の一部の訳にスケールという言葉を使っているが、良くない。stick to 〜という言葉の訳は良い。これはしがみついているとか、離れようとしないという意味の米語である。イギリスではあまり使わないように思う。ここはWestcott氏が書いた部分であろう、と推察する。

 この訳者は、日本の製造業者というところを外して、わざわざ、日本のHOは80:1と書いている。当時の製造業者の生産額の大半はアメリカ向けであって、国内向けより一桁多かったのであるから、原本のとおりの訳の方が良かったのである。当時僅かに東海道新幹線のみは1/87であったが、それのことだとは思えない。

 HOは、ゲージとして紹介されていることに、注目したい。決して縮尺比率を表しているわけではないことが分かる。
 ともかく、これからも判るように、HOが当初から 87分の1 であったというのは、明らかなウソである。山崎氏の主張とは異なるわけだが、ウェストコット氏は山崎氏が師と仰ぐ人であったから、黙殺するわけにもいかなかっただろう。英語版を手に入れて読んでいれば、その後の彼の言動に影響を与えているはずだ。
 そのころのTMSのミキストには何が書いてあったのかは、調査中である。


2019年09月07日

Fine Scale という言葉

 ようやく右手のリハビリに入った。動かせない期間、博物館の本を順番に読んで、整理をしていた。その中に、Guy Williams編、The World of Model Train(1970年刊)という本があった。これは全く目を通してなかった。

619_1154 素人向けに、非常に広く浅く書かれた本であるが、編集者の中に Linn Westcott 氏(Model Railroaderの編集長)もいるからには、変なことは書いてないはずだ。どういうわけか、日本語版も出ている。模型機関車/この魅力の世界 秋野忠弘訳(実業之日本社1970年刊)である。この秋野氏がどういう方なのかは、見当が付かない。検索しても、この本以外の訳書は見つからない。

 この2冊を並べて読んでみると、訳がかなりまずいところが見つかる。ゲージ関係の説明はよろしくない。それは後述するが、Fine Scaleという言葉の説明があったのは驚いた。英語の説明は良い。対する日本語は、言葉の選び方が良くはないが、ウソはない。p.80から引用する。

 The idea of modelling to exact proportions in every possible respect, and most especially in respect of the track and wheel contours, originated in great Britain, where new approach is called Fine Scale. The term is misnomer, since the scale is not actually changed. In America, the words fine standard or exact standards are usually preffered and give a more accurate idea of the purist modeller's intention.

 この部分の日本語は、

 できるだけ多くの点で、特に軌道と車輪の外形で、正確な比率の模型を作ろうとする考えは、イギリスで起こった。イギリスではこの試みを ”精密スケール” と呼んでいたが、実際にはスケールは変わらないのであるから、この用語は誤称といえる。アメリカでは ”精密基準” あるいは ”正確基準” という言葉の方が好まれており、この方が潔癖な模型製作者の意図にかなっている。

とある。英語を母国語とする人もおかしいと言っているのだ。

 この言葉を日本に持ち込んだのは、とれいん誌である。1970年代に否定された言葉を80年代中頃に持ち込んだような気がする。その細かい年代は、まだ調べていない。そこには、意図的なものを感じる。あるいは完全な無知から来るものである。

 井門氏の文章から、最近はファインスケールという言葉を探し出せなくなったのは、喜ばしいことだ。間違った言葉であることは明白だからだ。
 気が付かないうちに少しずつ変化している。もう少し待てば良くなるだろうか。 

2019年09月05日

再度 慣性について

 むすこたかなし氏の記事を読まれた感想を、たくさんの方から戴いた。

 Tavata氏が、慣性力は見かけの慣性力はスケールに応じて小さくなるという証明をされている。その通りなのだ。

 模型を作られる方の中で、模型は本物とは違うと考えた上で作られる方は少ない。特に実物から入った方には、縮小したものを作るとそれが実物のように動く、と勘違いしている人が多いように思う。非常に細かいところまで作って悦に入っているのだが、走りが良いものには、あまりお目に掛からない。あちこちの運転会に行って、走りを見ているが、ギィギィゴロゴロと走る車輛が多い。

 小さい模型は惰力を再現させることが難しい。管 晴彦氏のナロゥゲージの小型機関車が走るところを、ご覧になった方もいらっしゃるだろう。素晴らしい慣性を見せてくれる。HOスケールでここまでの慣性を持たせるために、管氏はモータ軸と同軸のフライホィールを増速している。径が小さいので、高回転にする以外、慣性モーメントの効果を大きくする方法はないのだ。

 縮小模型の慣性は小さい。高校1年程度の簡単な物理計算であるから、模型を作る人は一応やっておくべきだろう。
 摩擦を減らし、質量を大きくし、回転数を上げる。この三つを同時に組合せれば、見かけ上の慣性が増大し、素晴らしい走りを再現できるであろう。筆者が考案した、慣性が本物のように有るテンダの試作機は8割がた出来ているが、博物館が開業するまでは完成できない。

 どんなに精密につくられた模型も、よく走る模型には敵わないということは、椙山 満氏のレイアウト上で体感している。HOの世界では、井上 豊氏の作られた模型の走りが群を抜いて良かった。高校生の時にそれを見せて戴き、その時に受けたインパクトが、現在にまでつながっている。

 2月からの罵詈雑言を含めて多量のコメントを受け取っているが、その中に、
「走行性能ばかりを言うのはおかしい。よく走らなくても良いではないか。」
と書いて来た方があった。
 こういう方が 12 mmゲージ陣営の中にどの程度いらっしゃるのかは知らないが、非常にまずいことだと思う。

 管氏のリンクを更新した。完成時の動画はこちらにある。 (9/6/2019)

2019年09月03日

続々 またまた3条ウォーム 

 久し振りに「互いに素」のことを書いた。割り切れない組合せにしておくだけで、滑らかな伝達が保証される。
 歯車は工業製品である。優秀な歯切装置で作られたものであれば、ばらつきは少ないが、ゼロであることは無いだろう。僅かなばらつきや、微小な傷、異物の噛み込みなどの影響で、噛み合わせに異常を来すことが無いとは言えない。

 そういう時はこの「互いに素」が効果を発揮する。様々なファクタによる不具合を薄めて、自然に支障の無い状態になる。
 このウォーム・ギヤボックスを作ってくれたY氏は、組んでみて廻したとき、微妙なひっかかりに気が付いた。ところが廻しているうちに問題がなくなったので、改めてその効果に驚いたそうだ。
 進み角は tooling cost(新規に必要となる刃物の価格)の掛からない18度以下にするべきだ。また、伝達効率もその辺りが良い。特殊な刃物を用意せずに作った進み角の大きなウォームでは、高効率は望むべくもない。
 ウォームホィールの歯当たり部分を凹ませた物は、高級に見えるらしい。残念ながら、伝達効率はそのほうが低下するという報告も出ている。ともかく、この歯車セットは、工業的に最も具合の良い条件を組み合わせたものである。単なる思い付きを形にしたものではないのだ。これを実現するために、複数の歯車の専門家に話を聞き、コストも考えて設計した。

 クラブの集会に持って行くと、皆で寄ってたかって触る。逆駆動できるウォームとは言っても、かろうじて廻る程度の物だろうと思っていた人が多かったようだ。車軸を廻すと、ウォーム軸がビューンと廻るのには皆さん驚く。ウォーム軸は小さな物なのだが、高速で回転するので、慣性で廻り続けようとするのを見て、皆さんは驚く。(動画の前半部分のみ)

 HO車輌に嵌め替えた人も何人か居る。動輪の大きな蒸気機関車には嵌まるそうだ。押して動く動画を送ってくれる人も居て、嬉しい。

 ギヤボックスを作っても開放ではいけない。ゴミを巻き込んでダメになる。動輪軸にガタがあると、それだけで損失が増大する。HOの蒸気機関車のギヤボックスには、そういうガタがあるものが多いように思う。

2019年09月01日

続 またまた3条ウォーム

 むすこたかなし氏の目は、かなり細かいところまで届いている。インナ・レースは軸と共に廻るが、それがどこかに触ると、とんでもない損失を生み出す。ギヤボックスの内側は微妙に削り、何が起こってもインナレースが触らないように出来ていることを、見抜かれた。素晴らしい注意力である。これは、今まであまり誰も指摘しなかったことなのだ。

 今まで、いろんな方が作ったギヤボックスを見て来た。せっかくボールベアリングを使っているのに、ここが触っている例が多かったのだ。ウォームギヤは大きなスラストが発生するので、触ればそこで発生する摩擦損失は大きい。

 このギヤボックスは、ディーゼル電気機関車用に開発された。以前のΦ2.5軸系列のウォームギヤは、ロストワックス鋳物のギヤボックスを用いていた。鋳物は精度が出にくいので追加工をしたが、そのばらつきは無視できず、調整に時間が掛かった。それに要する時間がもったいなかった。噛み合わせ調整に時間を掛けるというのは無駄以外の何物でもない。
 だからギヤボックスを精密機械加工で作ろうとしたのだ。歯車の残数も少なかったので、思い切って完全な新規生産にした。

 潤滑はモリブデン・グリースをほんのわずか塗ってあるだけである。沢山入れると安心する人は多いが、決して褒められない。撹拌損失を増大させているだけである。歯の当たる部分にだけ塗ってある。互いに素であると、最初は渋くても、1分も運転すると極めてよくなじんでくる。もしこれが 30:2 だったりすると、ゴロゴロ感から逃れられないことがある。

 新製品の開発は成功で、時間の節約ができた。動力化する機関車の数がかなり多いので、多少の出費で省力化ができれば有難かった。しかも動力性能が完全に同一になるので、重連の時に全く問題がない。当時は博物館の構想すらなかった時代であったが、思い切って作ったのは大成功であった。

 歯車はたくさん作ったので、今後のギヤボックスは3Dプリンタで作ってみたい。ナイロン12で作るものなら、油に漬けても変化がないことが分かった。これについてはミシン油浸けで3か月間日光に当てた試験をしてある。

2019年08月30日

またまた3条ウォーム

時々コメントを戴く、むすこたかなし氏が連載されている記事が興味深い。筆者が自分で書くより、客観的な記事を書いて下さるだろうと思い、サンプルをお送りした。

 このギヤボックスは10年ほど前に、硬いアルミ合金からCNCフライスで削り出したもので、かなり高価なものである。飛行機の部品を作っていたY氏が作ってくれたものだが、再生産は難しい。ネジはM1.4を使用している。ネジ孔はタップを立ててあるが、切削タップではない。転造タップである。これは素人が手で廻すものではなく、高性能のCNCマシニング・センタでなければできない。切削後、黒染めを施してあるので、プラスティック製と間違える人が居る。

 スラスト・ボールベアリングを用いていない。小型化を狙ったので、ラジアルベアリングだけで作った。
 むすこたかなし氏の解説にもあるように精度高く作ったベアリング・ハウジングに油を付けて滑り込ませてある。アウタ・レース(外輪)はハウジングに油膜によって支えられている。油がないと玉が押し出されて、壊れやすいはずだ。

 ミクロン単位で作られているので、無調整で最高の性能を発揮する。噛み合わせの調整は全く要らないというところがミソである。組み立てただけで所定の性能を発揮する。手製のギヤボックスでは到底考えられないところまで行っている。


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