2020年04月01日

続 アメリカ製キット

 このキットも厚さ40ミル(1.02 mm)の板で出来ている。持った時の堅さが気持ち良い。ただエッチングが甘いので、access door latch の形が面白くない。遠くから見れば同じなのだが、じっくり見た時にラッチを外すハンドルの形が見えると良い。

 たまたま、20年ほど前に友人から買い受けたGP15のキットを点検していたら、エッチングが間違っている。どういうわけか、二段エッチングのはずが裏からエッチしてあった。即ち、ドアラッチが無い、のっぺらぼうの側面になる。
 これは回収すべきだったのだろうが、製作者が脳梗塞で入院し、そのまま還らぬ人になってしまった。だからそのままになったのだった。そのまま組むと、妙なものだ。このキットはCLWの製品ではあるが、エッチングを主体とする繊細な作りで、それ以前のロストワックス主体の物とは作風が異なる。韓国製の模型に対抗するために、改良したのだろう。

access door latch (2) このロストワックス部品を大量に入手してあった。ドアラッチである。必要量の10倍くらいもある。
 顔を出す部分は、2.5 x 5.5 mmである。フランジ部分の段差は、0.50 mmである。板に角穴をあけて裏からハンダ付けすればよいのだ。角ヤスリで丁寧にあけて、付けた。

 薄板ならそのまま、置いてハンダ付けして良い。上述の厚い板には裏から孔の周りをフライスで削って、厚みを減らした。これが大変な手間で、参ってしまった。削れば、ヤスる量は減るわけで、多少楽にはなる。1.02 mmを0.55 mmにするのだ。しかし、フライス仕事は手間がかかる。

access door latch (1) 出来たものはこんな具合だ。部品の周りにハンダがぐるりと取り囲んで見えている。こういうハンダ付けをしたい。



solder ところで、ジャンク箱からこんなハンダが見つかった。多分アメリカ製だろう。直径は19 mmであった。3/4インチだ。
 柔らかく使い易い。刻み目があるので、長さを確認して切りやすい。置きハンダには便利だ。使った感じでは、スズ60%の鉛ハンダだろうと思った。


2020年03月30日

アメリカ製キット

CLW GP38-2 (1) レイアウトの工作ばかりでは疲れるので、車輛工作も手掛けている。30年ほど前アメリカで安く買ったジャンクを、少しずつ加工している。これらはCLWの製品である。アメリカ製のキットを組んだものだ。
 1日1時間のつもりだったが、意外と面白くなり、毎日超過勤務をしている。

CLW GP38-2 (2) この手前の機関車はGP38-2である。全く経験のない人がハンダ付けを初めてやったという感じの「作品」で、どうしようもない。部品を削って形を整えてからハンダ付けするべきだが、鋳物の湯口を付けたままでハンダ付けしてある。板もエッチングの指示している外形まで削ってから組むべきなのに、無理矢理付けている。ヤスリや糸鋸の存在を知らないようだ。前後の昇降台のハシゴが入るところだけは、金鋸で切り込んだ跡がある。
 ハンダのしずくで金属がつながっているような付け方であって、二つの金属板の隙間に浸み込んだような付け方は一箇所たりともなかった。曲げも、裏にV字溝を彫って曲げるところを、ペンチでぐいっと曲げただけで、話にならない。焼き鈍して、プラスティック・ハンマで叩き延ばした。
 
CLW GP38-2(3) 普通なら途中で諦めるのに、最後まで行ったところは、ある意味ですごいと思う。ペーストを使っているので、全体がべとべとである。少し錆び始めて、裏は緑色であった。
 結局、全体が漫画みたいに歪んだものができた。動力も押し込んであって、一応動かしたようだ。要するに、本物の形を観察しないで、箱に入っていたものを順に付けただけである。エポキシ接着剤は使ってないところが珍しい。

 すべてのパーツをガスバーナで焙りながら外す。よくぞここまで、という感じである。伊藤剛氏に教えて戴いた英語に、”the man who has ten thumbs" というのがあった。全部の指が親指であるということは、どういう状態かお分かりであろう。その実例は前にもあったが、これはそれを下回る。

 すべての板の外周部を単目のヤスリで削り落とし、油目ヤスリで仕上げた。完全に直線を出しておかないと、歪んで後で後悔する。削り粉がたくさん出た。ハンダは、ガスで焙って圧搾空気で吹き飛ばした。回収して使えるほどたくさん使ってある。

 このキットは板厚が 40ミル(1.02 mm)もあるので、極めて頑丈である。ぶつかっても被害が少ない。組み上がるとかなり重い。ハンダ付けは、200W以上の大きなコテか、炭素棒に依るのが望ましい。

 組み直すと立派になるはずだ。

2020年03月28日

日本製のボールベアリング

 ”日本製の高級なボールベアリングを使用している”と書いたところ、突っ込まれた。最近は、日本製のNMBボールベアリングはないようだ。だからおかしいということらしい。その方は民生機器を作っている会社にお勤めのようで、そこではボールベアリングを使う製品を作っているらしい。経験は豊富なようだ。

 先日のヤスリの件でも書いたことだが、妙に自信家の方がこの趣味界には多いらしく、すごい勢いで書いてくる。インターネットでは顔が見えないから物が言いやすいのだそうだ。実世界では相手の顔が見えると同時に自分の顔も晒すので、うかつなことを言うと恥をかくと思うのだ。インターネットなら言いたい放題なのだろう。自分はこの世界では専門家で、何でも知っている。ここに書いてあることは間違いであるぞよ、と言いたいのだ。

 しかし世の中は広い知らない世界もあるのだ。そのボールベアリングは民生用ではない。詳しいことは分からないが、軍需用の物であった。
 もうかなり前にお亡くなりになったが、親しくして戴いた方が、某軍需産業のこの地域のトップに居た。Oスケールを楽しんでいらした。
 筆者が軸重の大きい動輪軸に、ボールベアリングを入れ始めた頃のことである。彼もいっしょにやり始めたのだが、
「ちょうど良いものがある。」と廃棄されたNMB製の高級品高精度品をある程度の量、くれたのである。それは珍しくメトリックの規格のもので、日本製のある重要な装置の部品らしかった。こういうものは時間で交換するものらしい。たとえ不都合がなくても外して廃棄してしまうとのことであった。新品の価格は民生品用の数十倍らしいが、外したものはゴミであることは間違いなかった。その廃棄品であるが、どう見ても新品というものが大半で、たまにグリスが少し汚れてはみ出しているものがあった。
 軸を通して回転させ、共鳴箱に当てて音を聞く。この方法で選って、最高に良い物を集めた。実のところ、不良品など無かったが、その中でも特に静かなものを選んだのだ。
 
 そういうわけで、このFEF2、FEF3の機関車には、とんでもなく高級な日本製のボールベアリングが使ってある。決して勘違いでもない、本当の話である。
 だからこそ、長距離を走らせて様子を見ているのである。 

 筆者には軍需関係の友人が、日米に何人か居る。そういう連中からの情報、部品などは、筆者の模型をより高性能に導いてくれる。ありがたいことである。


 yardbird様からのご指摘で高精度品と改めました。


2020年03月26日

続々 Texasからのメイル

 もう一人のMike Rは糖尿病の医者である。こちらも週2日しか、仕事に行っていないという。レイアウト漬けになっている。静電気で芝を植える装置を改良して、猛烈な速度で緑化したようだ。
 知らない間に橋を架けた。トラス橋は韓国製のブラス製である。ガーダ橋は Atlas の製品だそうだ。本体は金属製で、上のデッキ部分は耐候性のあるABS樹脂である。屋外での使用を考えた製品らしい。
 このレイアウトも線路はすべてハンドスパイクである。ここまで来るのに20年以上掛かっている。生きているうちにはできないと言っているが、もったいないから早く作れ、とけしかけてある。

 

「Tad が来てくれると出来る。航空運賃を払うから一月ほど来ないか。」と言ってきたが、こちらは信号機と転車台で忙しいから断っている。
 逆にこちらへも来たいという。彼は48年前に横須賀の海軍病院に赴任していた。当時はまだ蒸気機関車が沢山いた時代なので、日本中写真を撮りに歩いていた。コダクロームのスライドが数千枚あるそうなので、それを日本で出版したいとも言っていた。それもあって日本に来たいのだ。その時はうちに居候する予定だ。博物館の工事を手伝ってもらう。

 彼のところにはLow-D車輪が沢山ある。先日それを付けたタンク車を線路に置いて振り向いたら、それが消えていた。猛烈な速度で1%の勾配を下り降り、レイアウトをほぼ半周して目の前に止まった。事故はなかった。「壊れないで良かったけど、ひやひやしたぜ」と言う。この動画を送ったら、全く同じ走りだったそうで、喜んで見ていた。


 彼はFEF4のメカニズムに非常に興味がある。驚異的なメカニズムだと言っている。テンダの先台車の首振りリンクもやりたいようだ。 

2020年03月24日

続 Texas からのメイル 

21027 二人の Mike は二人とも医師である。最初のMike Wは前立腺の専門医であったが退職し、模型三昧だ。広大なレイアウトを作っている。この人はストラクチュアをスクラッチビルドするのが好きで、今回はこの大きな橋をブラスで作っている。これは駅の前の広場、駐車場を載せている。
 ハンダ付けはすべてペーストを使っているそうだ。ブラスならそれで良い。塗装前に熱湯で洗って洗剤でこすり、完全に落とさねばならない。塩化亜鉛なら水で洗い落とせるのだが、中々言うことを聞かない。

 信号橋の写真を送ってやったらとても感心して、作るのにどれくらいかかるかと聞いてきた。2本作るのに1か月と答えると、速いという。その橋は2年掛かっているそうだ。ようやく完成する。
056 次は駅本屋だそうで、これは石造りだ。どうやって作るのか興味がある。ボール紙でモックアップを作ってある。
 リヴェットを2万本打ち出したそうである。しばらくは、もう打ちたくないそうだ。


 筆者のFEF4の動画は、「実に面白い。」と書いてきた。
「たとえこんなことを考えても、作る奴はいなかった。動きが面白いから素晴らしい。世界で一番よく走る機関車だ。MRに載せろ。」

 よく走るかどうかは、レイアウトを持っている人には切実な問題だ。走らない、あるいは走らせると壊れる機関車は許せないと感じるのだ。
 日本の模型人は、そこを考えて欲しい。ほとんどの模型人はレイアウトを持っていない。持っていても勾配がない。外見だけで評価する風潮がずっと続いている。

 鉄道模型は走るということが、非常に大きなウェイトを占めていることを確認したい。走ることを前提としていないものは、鉄道模型とは言い難い。
 static(静態)なものならもう少し写実的に作るべきだ。プラスティック・モデルはとても出来が良い。ここまでやるかと思うほどよくできている作品を雑誌で見る。出来るものなら、細密感はそのレヴェルまで行くべきだ。現在の鉄道模型の作品レヴェルは、造形という次元だけで考えるなら、中途半端である。 

2020年03月22日

Texasからのメイル

 Dennis の調子が良くない。手術後今リハビリ中で大変だ、と奥さんが知らせてくれた。早速元気付けに行こうと思ったのだが、肺炎騒ぎで行けそうもなくなった。毎年この時期には、花粉症対策と称してアメリカに逃避していたのだ。今年は、行ったは良いが、帰って来られなくなる可能性もある。
 彼のところには、たくさんの友人が行っている。人望のある男だから、助けに行っているのだ。遠くカリフォルニアからも助っ人が何人も行って、レイアウトの工事をみんなでやっているのだ。かなり進歩したらしい。

 先日のFEF4の動画を送ったら、みんなで見たと連絡があった。単機で動輪がスリップする様子を見て、興奮したと書いてきた。MRに早く載せろと言うので、その準備を始めた。

 ついでに送ったEM-1が長編成を牽く動画は、評判が良くない。EM-1はこんなに牽けないというのだ。119輌を牽くには3重連が必要だという結論になったそうだ。時々片方のエンジンがスリップして音が変わるのは、とても楽しくて良いそうだ。様々な動画を送ってあるので、みんなで見てワイワイと批評して楽しんでいるようだ。ともかく、一人でつまらぬリハビリをしているより、はるかに良い。

 FEF4がスリップする場面は評判が良い。テンダの中身の写真を見て、皆仰天したらしい。車軸の回転をどうやって取り出しているのかわからなかったのだ。こちらはいつもやっているから当たり前だと思っているが、普段ウォームの逆駆動などしたこともない人は、実感が湧かないらしい。デニスが、虎の子の3条ウォームを取り出して廻して見せたら、のけぞったそうだ。軽く動くし、全く無音と言っても良いほどなので、ウォーム駆動とは思えないそうだ。
 ともかく、テンダ車輪の 6/7 から動力採取して増速してフライホィールを廻すメカニズムは理解した。それが機能して、テンダが機関車に当たり、それを押して行く場面は何十回も再生したという。慣性がここまで大きいのが面白いのだそうだ。

 予定ではDennisのところに寄って、後二人のMikeのところに寄ることにしていたが、それもダメになった。 


2020年03月20日

実感を与える

UP FEF3 久し振りにFEF3が本線上を走った。ここ3年はChallengerの牽くプルマン特急しか走っていなかった。Challengerにはminor problemが発生し、工場入りしている。マイナ・プロブレムというのは大したことのない故障であって、ごまかして使えないこともない程度であるが、完璧を期すために修理している。
 draw bar が外れやすいのである。坂の途中で外れると電気配線のソケットを引き抜いて、機関車だけがどんどん走っていく。当鉄道では機関車だけで両側集電しているから単独走行が可能であるからだ。ボールベアリングを装備しているので、タイヤからの集電ブラシを付けないと走らない。それを2組付けているのだ。サウンドは途切れてしまうから、切れたことはすぐわかる。

 テンダは機関車と同一極性にしてある。こうすれば、機炭間の無用なショートから逃れられる。10年ほど前、それをHOの友人に話したら大変驚いていたが、下らない昔の考えに捉われる必要などないのだ。
 ドロゥ・バァには斜めに切り込みが入れてあって、ワンタッチで連結できるが、その押さえのラッチ・バネが弱いのだ。すぐ直るが、あちこちついでに見ておこうと、休車扱いにした。すべての先輪、従輪、テンダ車輪は、既にLow-Dに替えてある。




 このFEF3は1985年にロールアウトして、おそらく1000キロメートルは走っている。日本で、いや世界で一番長距離を走った模型機関車かもしれない。自宅のレイアウトで、20年ほど、80輌牽かせて毎日1時間くらい走らせていた。山の手線と同じで、同一方向に走らせるとフランジが片減りするので、毎月初めに回転方向を逆にしていた。
 ひっくり返して見ると、従台車、テンダ―の車輪がかなり摩耗している。めっきがはげてブラスが見えている。フランジも形が良くない。直立に近づいている。これらはオリジナルのカツミ仕様であった。Low-Dに取り換える。動輪は一度も交換していないが、十分に持っている。鋼のタイヤだからだ。ボールベアリングはNMB製である。さすが日本製の高級品で、十分性能を保っている。ギヤボックスを開けて見たが、なんの問題もない。二硫化モリブデングリスは健在で、歯形も良い。

signals (5) この機関車を作るにあたって、本物を丹念に観察した。気が付いたのはキャブの下がり方と、除煙板の波うちである。前者についてはしばらく前に触れた。波うちは金床の上で木槌で丹念に打って再現し、内側には骨を付けた。配管も少し歪ませた。
 祖父江氏は、目ざとくそれに気が付いた。「でもねぇ、商品が歪んでいると、お客さんは買ってくんねぇよ。」
 実感的な歪みというものに、かなり興味を持ったようだが、実現には時間が掛かった。例のビッグボーイの配管は、実物の観察から、僅かの歪みを与えている。
「歪ませましたね。」と言うと「わかるかい。たいていの人は気がつかないと思うよ。その程度にしといたよ。」とのことであった。  

2020年03月18日

真ん中を凹ませる

 先日の記事で、ヤスリで平面を出す方法について述べた。コメントそのものは少なかったが、コメント欄を通じた<私信>はかなり来た。私信であるから、公表はできない。知っている人も多かったが、未知の人からも来た。連絡先は書いてない。

 かなりの調子で、「ありえないことを書かないほうが良い」と言って来た。自信家と見える。「あの固い鉄のヤスリは曲がりません」と書いてあるのだ。鉄という言葉が間違っているのは、ここでは追求しない。どんなものも、力を入れれば曲がる。

 こういうことを言う人は、ご自分の見聞きしたことが世の中のすべてである、と信ずるタイプの人であろう。いわゆるスクラッチ・ビルダの中には多く居る。自分がアマチュアであることに気が付いていない。世の中は広いのだ。過去のTMS の記事はこういうタイプの人が書いた記事が大半である。だから進歩が殆どない。プロの世界を紹介する記事、プロから見た見解を書いた記事が必要なのである。

 この件をクラブの掲示板に書き込んで、経験のある方はご披露下さいとお願いしたところ、年配の会員がこのように書いて下さった。
 その通りです。R加工のときは反りを大きくします。小生は63年前、仕上の授業で習いました 余談ですが平ヤスリには片面にRが付いており、反対面はストレートです。手持ち(200 mm)を確認したところ、1本は両面ともRが付いていました。(フラットな面も先端は細くなっています)R加工の反りは、スェイさす事です。

 
確認したところ、スェイとはスウェイ(sway)揺動させることである。

 また今野氏から、これまた年配のフライス工の方が、
手作業なら出来るよ。フライスが無かった時代は、そうやって平面を出していたもんだよ。」
とおっしゃっていた、と伝えてくれた。 

 ヤスリを反らせるにはコツがある。筆者の習った方法は、下記のようなものである。まずヤスリのわずかに丸味のある面を下にする。左手の親指を中央に当て、中指と薬指を先端に掛ける。押す瞬間に力を入れると撓む。丸味をなぞるように押す。
 できないと言っている人は、プロの世界を知らないのである。筆者はそういう世界が好きで、覗くのが趣味であった。もうすでに、そのようなテクニックは殆ど世の中に存在しないが、特定の場所にはまだ存在している。


 大きな会社であれば、技能五輪に出場するための部署がある。某企業の担当者とは親しいので聞いてみた。それは当然という感じで教えてくれた。
 ヤスリだけで定盤を削り出せるそうだ。そういうところでは高級なヤスリをまとめ買いして、選り出して使う。残りは廃棄する。それを筆者のところにも、時々廻してもらっていた。余談であるが、日本の選手は優秀だそうだ。
 時として課題に間違いがあるそうだが、それを指摘するという。他の国の選手は出来なくて困っていた。出題側は、間違いを認めて問題を修正したそうだが、その時点で日本の入賞は決まっていたらしい。


2020年03月16日

2本の電線

 大電流を取り出せる変圧器を分解してみたら、2次線が2本並列に巻いてあった。
これは問題である。確かに見かけは2倍になるが、その線がいつも2本あるとは限らない。

 例えば、屋内配線で許容電流値が足らないからといって、平行に2本並べて張るのと同じである。これは禁止されている。ネズミが齧って、線が減ることだってあるからだ。トランスの中でも安心はできない。接続が緩くて片方しか通電していないこともありうる。電圧は出るから、不良に気付かない。即ち事故の原因になりうる。鉄板製の筐体に入っているから、鼠の害はないと信じたい。
 購入されたら、内部をよく見て、線の接続具合を確認する方が良い。もしも圧着が緩かった場合には少し巻きほどいて、正確に圧着端子で留め直すべきだ。あるいは太い線を巻くべきだろう。
 これは意外と楽である。筐体に収めることを無視するなら、太いものを巻けば済むし、しかもその巻き数は少ない。試す価値がある。

 中国製のトランスはこのように二本巻きのものが多くあるという話である。

2020年03月14日

炭素棒ピンセット型ハンダ付け機

carbon pliers 筆者は炭素角棒の付いたピンセット型のものを使うことが多い。
 これは炭素棒が2つ、ワークとの接触部も2点あるので、単純に考えると電気抵抗は2倍だ。同じ電圧ならば出力も半分になる。つまり、これを使う時には入力電圧を上げねば、同等の発熱は得られないことになる。
高電圧用スライダックを用いて電圧を130〜170 Vほどにすると、出力が120 Wくらいになって、瞬時にハンダ付けができる。加熱点がハンダ付する箇所の両面にあるので、明らかに温度上昇が早い

 今までは必要があるとそのスライダックを持って来て接続をしていたが、今回の装置が導入されたので、単極の太い電極の場合は新型を用い、ピンセット型は、旧来のタイプにスライダックを接続済みのものをそのまま使うようにする。

 いずれにせよ、炭素棒ハンダ付けは数秒で終わることであり、変圧器が焼けることは考えられない。
 ところが電気工学を勉強したと称する方は、必ず、こんなものを紹介するのはおかしい、火災の危険があると言ってくる。しかし、忘れてはいけないのは連続定格ではないということだ。どんな電気装置であっても、短時間なら焼けない
 筆者の父は、昔、面白い表現を使った。
焼けるまでは焼けていない。」
 どんなものにも、熱容量がある。発生熱量がそれを昇温させる。熱くなると外界に熱が逃げる。逃げる熱量が少ないと温度が上がって来る。しかし許されないところまで温度が上がる前に、電源が切れていれば何の問題も無いのだ。

 この装置のトランスではその制限時間は30秒くらいだろう。それ以上時間が掛かるものには使うべきではない。普通は5秒程度である。そして、次の通電までには10秒ほどおけば全く問題ない。それでも文句を付けてくる人が居るから困ったものだ。客観性のない人たちだ。

 こういうことを考えて見よう。ノーフューズ・ブレーカは各家庭にある。ショートするとバチンと音を立てて落ちる(トリップと言う)。ショートしてから切れるまでの間、0.1秒弱は、電流が数百アンペア以上流れている。内部のバイメタルが焼けて温度が上がって曲がり、引き金を引いて切るのである。文字通り、短時間はショートしているけれど、火事にはならない。そういう仕組みを理解できれば、炭素棒ハンダ付け機が危険だと言うのは矛盾していることが理解できるはずだ。

 炭素棒ハンダ付け機を何かの装置に埋め込んで使う人はいないだろう。目の前に置いてあるのだから、焼けた臭いがすれば切るだろうし、温度ヒューズも付いている。手でスウィッチを入れるのではない。足で踏むのだから、踏みっ放しにはならない。また、ワークを手で持った炭素棒で押さえるのであるから、手を離せば電流は切れる。すべて意図しないと働かない方向だから、安全であると言えるだろう。

soldering 炭素棒ハンダ付けを導入すると、完全なハンダ付けが誰でも可能になる。先回紹介した信号橋の歩み板は、骨組の上に置いた角材に、少量のハンダで完全密着している。普通の方法ではコテが入らないから難しい。これを見た友人はかなり驚いていた。歩み板(0.5 mm厚)の裏面にハンダを少し付けて所定の位置に押さえ込み、上の面から炭素棒で触るだけである。一回で半径 5 mm程度が融けるので、それを順にやればできあがりだ。反ることがないから誰でもできる。何の骨(コツ)もない。

signal bridges 歩み板の上面は炭素棒の痕が付いているが、融けたりしたわけではない。実はこのエッチング板の表面には、レジストが残っている。それが熱分解して痕を残しているわけだ。磨き砂でこすると無くなる。アメリカ製の物にはよくある。面倒なのでそのまま塗るつもりだ。見えなくなる。 

2020年03月12日

トロイダル・コア

 昨年末に、むすこたかなし氏から相談があった。炭素棒ハンダ付け機の電源を作る工夫である。トロイダル・コアのトランスを二段階接続して(これを直列接続とは言うべきではない)、100 Vから 5〜6 Vを得る方法だ。素晴らしいレポートがあるので、詳細はそれをご覧戴きたい。

 驚いたのはそのトランスが一つ1000円ほどで出ているということである。パチスロというものがある。筆者にはどんなものか見当もつかないが、ソレノイドを多用した遊戯装置らしい。大電流を使うという話だ。出力は 24 Vで 10 A〜20 Aの電流が取り出せる。このトランスの放出は今だけなのか、それとも継続的に行われるのかも見当がつかないが、現在はインターネット・オークションでいくらでも見つけ出すことができる。 ただ一つの懸念は、たくさんの人が同時に買おうと殺到すると価格が上がってしまうことだ。そこはわきまえて安く買う工夫をされたい。

 トロイダル・コアは、変圧器の鉄心としては最も高効率のものである。昔、筆者の父が作ってくれた変圧器は戦災で焼けたケイ素鋼板をネジで締めたもので、通電するとブーンと音がした。隙間があったからだ。これは全く音などしない。

transformers 仕様を絞って見て行くと、出力 41 Aというとんでもないものが見つかった。要するに1 KVAである。質量は9 kgもある。これを2段目に使い(右) 、1段目に350 VAの(左) を使うと、1段目の容量が無駄にならない。それを購入して、2段目の入力を1段目の出力に圧着端子で固定接続した。総質量は12 kgある。そう簡単には動かせない。

 筆者は、炭素棒ハンダ付け機は既に2台持っているが、いずれも出力不足に悩んでいた。より大きなものを付けたい時には大電流の機種が必要であったので、安価にそれが実現できるわけでありがたい。もちろん、2回も変圧器を通すのだから、損失は多少はある。しかし、長時間使うものでもないので、安くできれば、電気代がわずかに余分に掛かろうとも全く問題ない。

 これをキャスターの付いた台に載せ、作業台の下に滑り込ませるようにする。手元のコードは可撓性のある電線を用いるが、5.5平方mmを使わねばならない。炭素棒も 8 mm径のものを使うつもりだ。ここまで来るとかなりの太さで、自動車のジャンパ線か、熔接機の電線のような感じである。

 以前の頒布終了後、多くの方から再度の頒布を要望されていたが、これで殆ど解決したように思う。前回のキットをまだ組まずに持っているから値が上がる、と信じているおかしな人もいるようだが、これでそんなことは何の意味もなくなる。今回の価格破壊で、どんどん作る方が増えるだろう。この技法を広めて戴きたい。


2020年03月10日

信号橋

signal bridges 1月から殆ど信号機に掛かりきりである。信号橋はそこそこの細かさで完成したが、時間が掛かったのはそれに付く信号機そのものと、手摺り、歩み板である。
 この場所に置くのではないが、たくさん並べて写真を撮った。これらは、まだ未完成の状態であることをお断りしておく。まだ手摺りが付けてない。下にある独立型は完成している。

 日本語では、手摺りは縦横両方の部材を指す場合が多いが、英語では手に触れる棒が hand rail, 縦の柱は stanchion という。
 
cantilever signal bridge (3)cantilever signal bridge (2) 片持ちの信号橋は完成した。手摺りが付いていると立派に見える。これは、重心が偏っているので、”L”の字の針金を裏にハンダ付けし、台枠にあけた孔に挿してある。下手に接着すると収拾がつかないこともあるので、抜き差しできるように配慮した。人形と比べると、かなり大きなものである。. 

 いよいよ信号機の配線に掛かる。問題は細い電線であった。パイプの中を電線が通るのだが、絶縁が強く、ある程度しなやかな線を探していたが、なかなか見つからなかった。クラブの会員が提供を申し出てくれたので助かった。

 信号機ができれば、あとはポイントマシンの配線だ。これはDCCだから簡単である。連動のパターンを検討している。

2020年03月08日

続々 US Hobbies のギヤボックス

 どうしてこのようなギヤボックスを作る必要が出て来たか、というのは少し説明が要る。Ajin製のヘリカルギヤだけのギヤボックスが複数見つかり、それにはEMD E7の車輪(36インチ)がついていた。 1:1のギヤボックスだから、事前に減速ギヤで減速しないと走らせることができないわけだ。
 
 これがうまく行くかどうかは、使ってみないことにはわからないところがある。というのは、減速されて大きなトルクが台車に伝わる。すると、反作用で車体が反対方向に傾く可能性がある。輪重も一定にはならないかもしれないから、それは脱線を誘発するだろう。しかし既製品は曲がりなりにも走ったようなので、うまく行く可能性もある。
 理想論を言えば、前後の台車のひねられる方向を逆にするために、ウォームのネジを鏡像にすれば良い。当然モータは2個を逆方向に回転させることになる。しかし、コストが増大するから、そんな模型は見たことがない。むしろ台車ごとにモータを付けて、独立した状態にするのが確実である。

 過去に筆者が作ったものは、すべて台車内で3 : 23にしている。即ち、ドライヴシャフトで伝達するトルクは小さいから、車体が傾く心配はまずない。
 今回のギヤボックスはCLWのE7に取り付ける予定で、それは砲金で鋳造された前頭部を持ち、すこぶる重い。ということは大きなトルクで推進軸を廻しても、その反作用に耐えてくれる可能性が高い。

2020年03月06日

続 US Hobbies のギヤボックス

 歯数が決まっているので、ギヤ比は変えにくい。ちょうどよい歯車があれば良いが、この M0.8 の手持ちは少なく、なかなか難しい。M0.5 であれば、異なる歯数の歯車をふんだんに持っている。軸距離を計算して可能な組み合わせを選び出す。今回、歯数が14枚に満たないものはすべて廃棄した。そんな歯車を使っている以上、ガリガリ・ジャラジャラ音からは絶対に抜け出せないからだ。(”M”とは歯車の歯の大きさを表す”モジュール”である。)

 ギヤボックスの内側のえぐりをフライスで拡げて、大きな歯車を入れると、自由度が増した。大きな50枚を最終段に置き、中間を大小二段の歯車にした。与えられた条件内で、14枚以上を用いた組合せを、限られた空間内に押し込んだ。設計にはかなり苦労した。
 まさに「フライスと旋盤の実技修了試験」のような工作であった。すべての孔をフライスとリーマで仕上げて、ボールベアリングはすべり嵌めである。全くガタの無い軸というのは気持ちが良いが、もう一つ作るのは勘弁してほしい。フランジ付きは、ミネベア製の高級品である。

US Hobbies gearbox modified 歯車のボス部分は細く削ってボールベアリングのインナ・レースのみに触れるようにした。また、正確に削って、予圧を与えることに成功した。
 ワッシャ無しで嵌めるように、ぴたりの寸法に削ったのである。ここでガスケットの圧縮による分を、計算に入れてある。最終的なギヤ比は 約 1 : 7 である。非常に軽く動き、音もほとんどしない。
 ガスケットの厚さは、ネジを緩く仮締めした時と、強く締めたときの差を、マイクロメータで調べた。その中間でネジを固定するわけだ。難しくはない。この方法は10年ほど前に思い付いたが、実践するチャンスが今まで無かった。ネジはロックタイトで固着させたので、中を開いて見せるわけにはいかないのが残念だ。

 上のモータに行く軸は撓み継手である。この頃はこういう部品が安く手に入る。以前は苦労して作っていた。事実上、一直線上に設定されたモータ軸ではあるが、微妙な曲がりがあっても全く問題がなくなる。こういうところには、ユニヴァーサル・ジョイントは使いたくない。効率が下がるからである。


2020年03月04日

US Hobbies のギヤボックス

US Hobbies gear box 次はUS Hobbiesの推進軸を下げるギヤボックスである。先回のMax Grayの時代から進化して、ダイキャストで作っている。この設計者も祖父江氏である。


KTM gearbox ネジは裏表互い違いになっていて、型を一つしか起こす必要が無い。ガスケットをはさんで14枚、16枚、28枚の歯車を収納している。軸は4mm軸で、スティール製である。フランジ付きオイルレスメタルによって保持されている。新しく組んだら、油を注して放置し、油が馴染んでから慣らし運転をする。歯数がすべて2で割れるのは面白くない。
 どうして偶数にしたのかと、祖父江氏に聞いたことがある。その理由は偶数の歯車は注文すればすぐ製作してくれる。奇数とか素数の歯車は時間が掛かる。「互いに素」は知っていたが、そうでなくても密閉型の場合は、さしたる問題は起きたことが無いそうだ。

 実情はそうかもしれない。しかし、3条ウォームの時は、「互いに素」を強く主張した。出来て来たものを組んでみた時、初めは多少しっくりこないところがあったが、1分も廻すと実に滑らかになったのには、祖父江氏は感銘を受けたようだ。2条で偶数歯のものは、特定の場所でひっかかりがあるといつまでも抜け出せない。3条で互いに素にしたら、全くひっかかりが無いものができたのだ。
「これは参ったねー。本当にあんたの言う通りだよ。大したもんだ。」
と称賛した。のちにこれと同じことをディーゼル用ギヤボックスを作ってくれた友人も言った

 このギヤボックスのオイルレスメタルは、内径 4 mm、外径 6 mmである。フランジは内側に付ける。軸を Φ3 にすると安価なボールベアリングが使える。たまたまフランジ付きボールベアリングがある程度の数あったので、それを使ってみることにした。そうすると今回の場合は、設計が極めて楽になる。筆者は過去にフランジ付きを使ったことはまず無い。その理由は前に述べた。今回は構成が全く異なる。フランジ付きを使わざるを得ない。


2020年03月02日

Max Gray のギヤボックス

MG gear boxes (1)MG gear boxes (2) ジャンク箱の中のギヤボックス中、一番古そうなのは、このFM Erie-builtの推進軸を下げるギヤボックスだ。ブラスの砂型鋳物を、大きなヤスリで削って平面を出し、孔をあけてギヤを入れてある。鋳物をフライスで削るのではなく、すべての面を手で削ってあるのには驚いた。大した腕である。普通の人が平面を削り出すことは、まず無理だ。よく見ると合印があって、番号も振ってある。その字は祖父江氏の筆跡ではないか!「8」の字に特徴がある。
 このハンダ付けも見事である。100 g以上もある塊りを一発で付けてある。しかもハンダが光っている。そう簡単にできる技ではない。

 40年ほど前、祖父江氏は筆者にヤスリ掛けの指導をしてくれた。四角のブロックを削って、真ん中を凹ませよと命じたのだ。そんなことが出来るわけがない、と思ったが、彼はちゃんとやって見せた。30 mmのスパンで、真ん中が 0.2 mmほど低くなった。定規を当てると光が通るのである。そうやっておいて周辺を削ると、平面になると言う。
 真ん中を凹ませるのはヤスリを少し反らせて、その反りに従って動かすのだ。もともとヤスリは腹が膨らんでいるものである。それをさらに反らせてやるのである。そんな馬鹿なと思う人が多いだろうが、彼はいとも簡単にやった。これは仕上工の必須技能だそうだ。腕に自信のある方はやって見られるとよい。これをやるには姿勢が大切なのだ。万力に向かって立つ位置が決め手だ。もちろん高さも重要である。
 のちに筆者もできるようにはなったが、もうそんな必要もない。フライスで一発である。

 ギヤ比は14 : 16 : 28であった。シャフトはスティールであるから滑りが良い。歯数が偶数であるのはまずいが、14枚という数字が祖父江氏らしい。12枚とは明らかに音が違う。他社製のギヤボックスがうるさいのは、歯数が足らないのである。少ない歯数で行こうと思えば、ホブを替えなければならない。そんな単純なことも出来ていないのが、この国の模型である。韓国でさえホブを替えたのに、どうしてできなかったのだろう。この国の模型雑誌で歯数に言及した例があっただろうか。
 
MG gear boxes (3) グリースが、固まって石鹸のようになっていたので動かなかったが、灯油で洗ってスピンドル・オイルを注したら、軽く動いて、音も静かであった。肉が厚いので油が保たれるから、摩擦が少ない。


MG gear boxes (4) 一つ110 g 近辺だ。捨てるには忍びない。そのまま使うことはないので、この半分を加工して新たなギヤボックスを作ろうと思う。フライスで彫れば、いかようにもできる。
 要するに単なるブロックであると考えて作るわけだ。あいている孔には、ブラスの棒を突っ込んでハンダ付けして塞ぐ。両側を鋳物にする必要はないので、片方をブラスの板にする。そうすると数が2倍になる。もちろんボールベアリングを入れる。使える機種を探している。この合わせ目に見えるハンダは、二つを合わせてヤスリ掛けするために仮付けした時のものだ。うまく付いているものだと、改めてじっくり見た。


2020年02月29日

Samhongsa のギヤボックス

Samhongsa gear box (1) 先日、Ajinのギヤボックスを改良して安価に、かつ、そこそこの性能を持つものを作り出せた。捨てるものから役に立つものができるのならと、ジャンク箱を漁っていた。
 韓国製のギヤボックスがバケツ一杯ほど出て来た。選り分けると、比較的近年のものは何とか逆駆動出来そうである。その中にこのサムホンサのギヤボックスがあった。

 これは土屋氏のC&O J3 4-8-4を改装した時に出たものである。変な色のグリスがぎっしり詰まっていて、動きにくい。
 蓋を開けてみて驚いた。これにもモジュールの大きなヘリカルギヤが使ってある。ヘリカルはスラストが発生するから、その処理をしないと損失が大きいのだが、このギヤボックスにはスラスト・ボールベアリングが使ってあるではないか。そこだけは出来過ぎである。ただ、グリスが粘くて動きにくい。また灯油に漬け込んでから、溶剤スプレイで洗い落とした。

 スパーギヤの3段減速なのだが、モジュールは 0.5 で歯数は14:28である。この14枚は、何かを感じる。Ajinで筆者が教えた奴が、競合するサムホンサに就職した件と関係ありそうだ。その次のヘリカルは 8:13である。互いに素にしたのも、ピンと来る。こんな偶然はめったにない。
 間違いなくこの設計者は筆者に会っている。スラストベアリングの話もした。しかし14:28は間抜けだ。どうせやるなら29枚を使えば良かった。最終段の14枚がブラス製なのはどうしてだろう。ここは力が掛かるところなのに、何か抜けている。眼鏡を掛けた坊主頭の若い男だった。本質を理解していないから、記憶に頼って失敗している。

Samhongsa gear box (2) よく洗って研磨し、再組立てしたが、手で廻すと何か触るような感触がある。ほんのちょっとなのだが、気になる。分解してみて仰天した。歯先がギヤボックス内面に当たっているではないか。よく見ると、その部分は縦フライスで削ってある。設計ミスで追加工しているのだが、削り方が足らなかったのだ。今まで当たっていた数枚の歯は、歯先が光っている。最低だ。
 仕方がないから、縦フライスでさらに削った。歯先はダイヤモンド砥石で再調整した。スピンドルオイルを注し、組み立てると素晴らしく滑らかに廻るようになった。
 ギヤ比は14/28 ✖ 14/28 ✖ 14/28 ✖ 8/13 = 1/13 である。減速比が大き過ぎる。1段減らす工夫をしてみよう。それほど難しくはない工作だ。すべての軸にボ−ルベアリングを入れることも可能である。このギヤボックスを何に使うべきか、思案中である。1/6.5程度のギヤ比ならば、パシフィックに付けて見たい。


2020年02月27日

Kemtron の Alco RS2

 先日の韓国製ギヤボックスの高性能化が、意外なレヴェルで可能であったのに驚き、もう一つやってみた。初段のギヤを外してギヤ比を下げた。これで効率がさらに上がるだろうし、押して動かすことも楽になる。ほとんどの場合、ギヤ比は高過ぎる。ギヤ比が低いものほど高効率が達成できる。これは筆者の経験によるが、自動車でも同じである。原動機の回転数が高いと損失は大きくなる。ポルシェのギヤ比は低い。
 高トルクのモータを使ってギヤ比を低く、というのはあまり見ることが無い。これを採用すれば、ピニオンの歯数を増やして音が小さい模型を作れるが、だれもやらない。ほとんどの人は外見が綺麗に出来れば満足してしまうのだろう。
勾配線で重列車を牽けば実力はすぐわかる。コンテストでそういうことをしない現状では、スケールスピードで走って、重負荷でもつまずかない機関車を誰も評価しない。

 高トルクモータは仕様書を読めばすぐ見つかる。300台も注文すれば作ってくれる。30年前、祖父江氏との共同作業の中で特注したものは、その後その会社の定番商品になっている。
 今でもかなりの数を持っている。ディーゼル電気機関車の3条ウォーム化改造に適する回転数とトルクを持つ。

Alco RS2 Alco のroad switcher RS2 である。先のスウィッチャは、S2 であった。要するに、本線用にも入替用にも使えるというのがウリであった。この会社の名前の付け方は単純である。その点EMDはややこしい名付け方法を採っている。NW とは900馬力(nine hundred HP)で熔接台枠(welded frame)を使っているのだそうだ。こんな話であれば、付き合い切れない。 

 Kemtronのキットは重い。ボディの丸味のある部分はすべてロストワックス製で、それに30ミル(0.76 mm)の厚さのブラス製ボディがかぶさる。床板は同じ厚さで、そこに1/8インチ(3.2 mm)厚、1/2インチ(12.7 mm)幅の帯材を両側に貼り付けるという堅牢な構造である。下廻りの床板関連だけで、600 gほどもある。
 ハンダ付けは炭素棒でも良いが、筆者はピンで位置決めしてクランプで挟み、ガスバーナで焙り付けである。隙間なくできると気持ちが良い。床は堅く、パイロット部は一体鋳造で安心である。相手が貨車なら、正面衝突しても決して負けないだろう。

 動力はAll-nationのものを推奨していたが、開放型のギヤボックスは当社の方針に合わないので、すべて売却した。その動力装置はアメリカでは希少価値があり、ずいぶん高く売れた。その後3条ウォーム化したものが1輌、ダミィが1輌あった。今回のAjin製をそれにつけることにした。改造費はジャーナル部のボールベアリング8個とコアレスモータだけである。在庫は十分で、すぐできる工作であった。レイアウトの作業が終わってから2時間くらいずつ、それに充てた。

Alco RS2's Kemtronの製品は、荒っぽく扱っても決して壊れない丈夫さがあり、筆者の好みである。ただ、ハンダ付けは素人にはできないだろう。ということは、これを手に入れておくと、ハンダ付け教室の良い教材になるということに気付いた。しかしもう入手することは困難だ。

 Alcoの機関車は美しい。当時から、EMDに比べると頭一つ出ているデザインであった。

2020年02月25日

EMD NW2

 改装で細かい傷がついたのでタッチアップした。先日の神戸の催しに持って行って、披露した。筆者がスイッチャを持って行ったのは初めてだそうで、「珍しいね。」と言われた。確かに今までは本線用の大型機しか持って行かなかった。
 下の写真の、UPカブースの付いているタンク車一編成を持って行った。Texaco は新作である。このディカルを Dr.Yに 新しく作ってもらったので、一気に増えた。本当は Texaco だけで60輌編成が組みたかったが、当時はディカルが高くて、とても無理であった。  

 S2 と NW2 とを同じ線路の上に置き、片方を押すと、もう一つも走り出す。これを見せたら、驚愕した人が居た。彼には初めてだったらしい。話には聞いたことがあるけど、本当に動くとは思わなかったそうだ。どういう風に話が伝わるとそうなるのだろう。あいつはウソツキだと言う人も居るらしいから、油断はできない。この動画を撮って、早くUPしておく必要がある。 名古屋の会合で撮って貰った動画があるので、それを近日中に youtube にUPする。 

displayed in Kobe 神戸の催しでは、モハメイドペーパー氏による解説が日に4回あるので、そこでの紹介に入れて貰った。押して動かすと、どよめきがあるかと思ったが、そうでもない。皆よく分からないのだろう。しかし、数人が接触してきて話をした。「面白いですね。」と言ってくれる人も居る。

UP NW2DCC NW2 はまもなくDCC化する。DCC化すると、2台並べて片方を押す演示は出来なくなるのは残念だ。その前に1枚写真を撮った。なかなか良い雰囲気である。

 この種の機関車はこのスロットルがあると面白そうだ。動画を見て欲しくなった。アメリカ人の作るものだから、厚みはかなりある。今後進歩するだろう。

2020年02月23日

続 Model Railroader Feb.2020 issue 

「HOは 最初から1/87.1 以外を指さない」と言っている人がまだ居るようだが、このような客観性の無いことを大声で言うことは、まさに宗教である。教義を唱えて、それに反するものは異教徒として抹殺しようとするのと変わらない。

 その怪しい新興宗教の教義を唱える人たちは、この最近号のMRを見て、何と言うのだろう。その教義では説明できない。この号にはある日本人の写真が載っているのも、奇しき縁である。これらのページを見ていないのだろうか。
 
 その不発弾のお方は、その教義を流布する文書で、筆者を攻撃している。様々な方から、再度の不発弾を転送してもらっている。話のついでに要約を紹介する。
 
 決着のついている件に口出ししている。自分が注目されたくて理屈をこねているだけである。かき回すのが目的の人だから、最初から結論を出そうとしているわけではない。話をすり替え続けるだけだ。ああ言えばこう言う人であるから、相手にするな、と言っている。

 これはご自分のことを言っているのではないだろうか。すでに事実が判明しているにもかかわらず、捏ね繰り回した屁理屈を作って、さもそれが真実のように流布するのは法律に触れる可能性が高い。「ああ言えばこう言う」と言うのは、反論出来なくなった人が吐く決まり文句である。出来ることなら、反論するべきである。 

 決着は付いている。HOは最初から 1/87.1であったというのは虚構である。某国のように歴史を捏造しているのだ。ゲージが先に決まっていて、スケールは各社が自由に決めたのは歴史的事実である。日本型を1/80で作ってHOゲージの上を走らせて満足している人に向かって、お前たちは間違っていると言う必要などさらさら無い。また、日本型の1/80、16.5mmゲージの方たちは、「私たちはHOゲージを楽しんでいる」と、自信を持って大きな声で言うべきだ。
 昔から16番という小難しい言葉を使う模型屋は、親TMS派の模型屋で、大半の模型屋はHOゲージと言っていた。何も間違っていない。それこそ世界標準である。

 先日「ヒットラー〜最期の12日間〜」という映画を見た。完全に追い詰められて、もうダメというところまで来ているのだが、「勝利はわが軍にあり」と叫んでいる。重なるところがあると感じた。

 問題はTMSというメディアのあり方だ。史実を捻じ曲げて報道するつもりならば、自分の首を絞めることになる。名取氏の舵取り能力が問われるところである。 社長は口を出さないと宣言しているが、手を出すのは良いとは言わないだろう、と信じたい。

2020年02月21日

Model Rairoader Feb.2020 issue

Feb.20 MR cover 最近はMRをとっていない。電子配信を購入していたが、殆ど読むべき記事もなくなり、1年前に期限が切れた。なくても気にならなかったので、そのままにしていた。思えば、すべての記事・広告を舐めるように読んでいた時期があったが、当時は若かったのだろう。最近はアメリカの友人から連絡があると、その記事を送ってもらって用が足りていた。


p.10 Feb.2020MRp.11 Feb.2020MR この号のコピィを友人が送ってくれた。その記事には興味深いことが書いてあった。10ページのカブースの紹介には「HO scale」、11ページの子供向けアセラのショーティーには「HO gauge」と書いてある。要するに、前者は最近のスケールの製品であって、後者はHOゲージを走る玩具である。プラレールを進化させた程度の、子供向けである。
 これは以前から彼が指摘していたことであるが、
   HO scaleは1/87.1の意味、
   HO gaugeはゲージが 16.5 mmの意味
であることを、MR編集部はルールとしている
ということの証である。

 

 HOの本家本元といわれているアメリカでも、HO gaugeという概念が残っているわけだ。この概念は O gauge、O scale の概念と同じである。
 
 「HO gaugeは和製英語」などと大々的に発表していた人が居たが、それも削除され、平和が訪れたのかと思っていた。
 ところが最近ある友人から、「ゲージ論の決着はつかないのですか ?」という質問を受けた。それには少々驚いた。
 決着はついている16.5mmゲージはHOゲージである。これは明確に示されている。HOスケールというのは、最近は 1/87.1であるようだが、これも戦後ずいぶん経ってから、ようやく決まったことも、文献が示している。今回示された記述は、その実例に過ぎない。
 いまだに情報操作が続いているとしたら、由々しき事態だ。



2020年02月19日

続々 FEF4 UP850

centipede tender (2) テンダは最前部のデッキを切り落とせば済むわけではなかった。キャブが延長されているので、それと連結するにはデッキ下の台枠を13 mmほど延長してやらねばならない。機関車の連結部を伸ばすと、オウヴァハングが大きくなる。これは避けるべきである。テンダのdraw barのピン位置は10 mm移動した。この部分は力が掛かるところであるから、十二分に補強してある。床板にはチェインが通る穴があいている。強度を持たせるために、ボディ・シェル側に太い骨を入れて、それとネジで連結するようにした。銀ハンダで付けてあるから、オリジナルより丈夫かもしれない。

 テンダのボディ・シェルの骨は、重いのをわしづかみにされても凹まないように設計した。また、シェルと床板をネジで締める部分は、力がシェル全体に掛かるような設計にした。こうしておけば、メネジ取り付け部が剥がれたりしない。ここまで考えておかないと、塗装完成後に壊れて泣きを見る。ここまで重いテンダはまずないから、気を付けねばならない。

centipede tender オリジナルの模型の製造は1966年頃で、祖父江氏による。まだKadeeはなく、怪しいダイキャスト製のダミィ・カプラが付いていた。その取付部の高さは、どのように工夫してもKadeeには適合しない。フライスですべて削り取り、ブロックを作成して埋め込んだ。テンダは重いので、バネの沈み込み量が大きい。実験・測定を繰り返して、高さを決めた。

FEF4 painted (1) 今までの車輛とは大幅に異なる質量を持ち、なおかつ客車ほど長くない。即ち平均密度が大きい。初めて触れる人はきっと驚く。落とすまいとしっかり握るから、何も対策しないとつぶされる可能性があった。だいたい、わしづかみにする人はHOの人で、Oスケールの標準軌車輛を持ったことが無い人だろう。

 博物館に来た人で、車輛に触りたい人が居るが、それは遠慮願っている。HO以下の模型とは全く異なるので、壊す可能性が高い。握って客車の窓をぶち抜いたり、荷物室扉を押し潰したりする例は多い。機関車を持つときは、どこが一番堅いかを調べてからしか、持ってはいけない。テンダについては今まで特に注意を与えなかったが、これに限っては重いので最高の注意が必要である。

 今回は審査員が触るという前提があったので、最大限の補強を入れているし、壊れそうなものは付けなかった。一般論で言えば、他人の車輛には手を触れてはいけない。


2020年02月17日

続 FEF4 UP850

UP FEF4 finished (2)cab support キャブは新製である。オリジナルは、落として凹んでいたので捨てた。0.5 mm厚の板から作り直した。
 火室は大きくした。実物で 8 inch 延ばした。運転室内に余裕があるので室内方向に延ばし、キャブ前端は移動していない。FEF3は石炭焚きで登場した。今回は、そのストーカ部分のスペイスが浮いたのである。

 all-weather cab いわゆる密閉式キャブである。ナイアガラと寸法的には近いので、キャブ後端の絞りはそれに倣った。作図して、半径2800 mmと8番分岐で、当たらないことを確認した。ドアは解放状態と閉まった状態の2種とした。
FEF4 painted (2) 運転装置はぎっしり詰め込んである。DCC化するとキャブの照明が点くので、良く見えるようになる。ハシゴのデザインは、NPのZ8を参考にした。同時代のAlco製の機関車だ。下がすぼまっている。図面はA氏から提供戴いた。 
 屋根上の樋の形も、各種の機関車を参考にした。シンダ除けを付けてある。これも叩いて作ったものを取り付けたのだ。

 座席は4名 + 補助椅子2名とした。補助椅子は後ろの壁についていて、引き起こすタイプである。後ろの壁は全体が外れるようにした。そうしないとキャブ・インテリアが付けられない。

ts_90823_39hanging cab キャブは例によって後ろ下がりとした。本物のFEFは、新車時以外、すべてキャブが下がっている。ボイラ後端から突き出た三角の支えにキャブが載っている。落ちて行かないように、火室上部から伸びているボルト2本がキャブを引っ張っている。そのボルトは天井の裏にあって、ナットで締めて、持ち上げるようになっているが、キャブ全体が薄板なので、徐々に歪んでくる。そうするとキャブは後ろにぶら下がる感じである。これが水平に真っ直ぐだと全く実感味が無い。当鉄道のUPの機関車は、すべてぶら下がっているようにしてある。知らない人は「曲がっていますね」と言うが、苦労して下げているのだ。FEF4はキャブが長いので、三角板では間に合わず、角パイプで支えている。また、ハシゴ部には蹴込みがあって、後ろにスペイスが要る。だから三角板は付けにくい。

 後ろの妻板にはドアがある。そのドアは少しオフセットさせた。そうしないとテンダによじ登った時、手摺を掴めない。手摺りはオイルタンクの縁に付いているからだ。これも身長180 cm(模型で3.75 cm)の人形を置いてステップ等の位置の可否を調べた。

2020年02月15日

FEF4 UP850

UP FEF4 finished(4) 機関車の外観については、詳しく発表していなかった。

 まず前頭部である。パイロットは Holizontal Swing Coupler を付けている。要するに水平回転収納型である。Vertical Swing 縦に動いて収納するタイプは、転換操作に二人必要で、評判が悪かった。FEF1とFEF2は縦型だったが、後に水平型に取り替えられたのは、このような理由だ。
 NYCのナイアガラは縦に動く。それは殆ど起伏のない線路を走るので、重連をすることがなく、問題が無かったからだ。UPは山岳路線であって、多重連が日常茶飯事であったから、連結器の出し入れがしやすいタイプが望ましかった。
 水平型は、夏は良いのだが、冬は凍り付いて全く動かなかったらしい。だから、冬は出しっぱなしにしていた。

 除煙板は、文献によっては、French type small wingsとあったりするが、わざわざCanadian National type と明記してあるものがあった。調べてみると、小さなものは一つしか該当するものがみつからなかったので、その形を採った。位置は簡単には決まらない。列車番号を掲示する行燈が見えなくなってはいけないのだ。だからあまり前には出せない。高さも問題だ。結局、行燈位置を少し上げて解決した。番号板を差し替える時、人が登らねばならないので、握りも必要だ。ステップは煙室戸に付いている。実際に人形を置いてみて、握りの位置を確認した。こういうところをおろそかにすると、不自然な模型になる。
 除煙板は、煙室から生えたアングル、チャンネルに付けられた。ここを持っても壊れない程度に、強度を持たせた。煙室に近いところにあるので、人は外側を通る。当然手摺も要る。それはボイラ側面と同じ高さにしないと危ない。あとで黒く色を塗った。

4 smokestacks 煙突は4本で巨大である。出力を上げるには、通風面積を増大させ、大量の燃料を燃やすことしかない。FEFは1本から始まって、2本が主流になり、後に試作で3本ができた。そしてこれは4本である。本物の図面を基に、設計手法を分析し、その延長上で作ったのがこれである。ST氏にはお世話になった。
 空気圧縮機の排気管も付いている。40年前、ある人が穴がないことを指摘したので、今回は実物の寸法を調べてパイプを付けた。取付けの六角ナットの位相はすべて変えてある。3Dプリンタによるインヴェストメント鋳造だから、こういうことは容易にできる。
 開口部が大きいので、この下にスピーカを付けることにする。そうすると、ドラフト音、汽笛音などすべて矛盾が無くなる。戻ってきたらDCC化する予定だが、瞬時の逆転、急加速ができるか調べている。

 今だけは、前照灯はLEDを押し込み、電池で点燈するようにしてある。スウィッチは煙突の下に付けてあるから、棒を突っ込んで操作する。この写真は、水平に付けて様子を見ていた時のものだ。
 
 塗装は当時のグラファイト塗装である。ざらざらにしたかったが、もう少し目が細かい方が良かったかもしれない。汽笛の引き棒に針金を付け、ボイラ・ケーシングに引き込んだ。

 給水温め器は、Worthington SA型である。文献を良く調べて、配管を正しく施した。lift ring 吊りボルトも付けたのはよく目立つ。
  
 アフタ・クーラは割合よく目立つので、付けて正解であった。


2020年02月13日

続 慣性

 動画はご覧戴けただろうか。午前中、公開までの審査時間が掛かって、見ることができないという苦情を戴いたが、昼過ぎには見えるようになっていた。この頃は投稿された動画の内容を審査するのだそうだ。人間と機械で見るそうだが、大変な話だ。 

 今回の慣性増大装置付きテンダを作っている時、何人かの友人に見せた。すぐに真価を読み取って、期待してくれた人は多かった。しかし、完成したものを見せると、その動きには驚嘆した。こんなに慣性が大きいとは思わなかったと言う。慣性モーメントの計算は事前にある程度してあったので、筆者としては大体予想通りであった。途中で、回転体を軽くせねば事故が起こることが分かった。それで変更したことに関しては、やや心配した。小さなスプロケットを使う羽目になったので、効率が低下するからだ。結果としては十分な効果があった。

 また、メイルで概要を伝えただけなのに、「ケガに気を付けてください」と書いてきた人はSG氏だ。慣性の大きなものを扱っていらっしゃるから、よく分かるのだろう。確かに高速で廻っているフライホィールに、何かが巻きこまれると、大変なことになる。そう簡単には止まらないからだ。過去のSG氏の作品には小さいながらよく動くナロゥの機関車がある。モータの回転数の数倍の速さで小さなフライホィールが廻っている。

 今、ここに170 kgの錘があるとする、と言っても実感が湧かないだろう。それならこれはどうだろう。小型の梵鐘程度の物体がぶら下がっている。小型といっても170 kgもある。それをつっ突いて振幅 2 cmほどで揺らす。堅い壁の近くにぶら下がっていて、揺れて壁に触りそうな状況を考える。その隙間に指を突っ込むと・・・
 そんな馬鹿なことをする人は居ないが、やれば指は潰れる可能性がある。重いものは危ないのである。それと同等の慣性を持つ模型車輛が走るのだ。

 今回のテンダは、車輪が滑るから安全である。もしラック式の模型であれば、極めて危険だ。車輪が滑らないから、連結時に指を挟むと大けがである。
 設計時に様々な計算をした。チェインが先に切れるか、車輪が滑るかを知りたかったのである。重いとチェインが切れることは予測できた。もちろん、4軸から動力採取している方だ。
 
 Low-Dはステンレス製なので、摩擦はやや少ない。動画でテンダだけを押し付けて動かす場面があるが、摩擦を大きくするためである。押さえ付けておいて速く動かして加速すると、チェインが変な音を立て始めるのを感じる。また、強く押し付けて無理に加速すると、たちまち切れるだろう。

 慣性を軽く見ると、事故の元であるのは間違いない。


2020年02月11日

慣性

 昔は駅ごとに貨物取扱があって、何輌かの貨車が止まっていた。日通の倉庫もあり、貨物用に起重機(古い言い回しだ)もあった。貨車移動機もあって、入替をしていた。押された貨車は切り離され、200 mほど先まで滑って行った。途中で係員が飛び乗って、足でブレーキを踏んだ。
 子供のころ、それがやりたくて同じような線路を敷き、軸受に油を注して押したが、全く走っていかない。父に聞くと、「はずみ車を入れれば何とかなるが、お前にはまだ無理だ。」と言われた。

 おもちゃの自動車を押した。いわゆるフリクション・ドライヴである。床に押し付けて前進させると、ぴゅーと走っていく。なるほどとは思ったが、これを全ての貨車に付けることができるとは思えなかった。

 要するに、模型の慣性はとても小さい。1/48なら、慣性による滑走距離も1/48になるということは、以前示した通りである。小さな体積に詰め込んだものにエネルギィを蓄え、見かけ上の慣性を表現するのは、このはずみ車以外ない。DCC運転では、ある程度の慣性表現ができるが、それは電気的に作られた見かけの慣性である。物理的な慣性の方がはるかに実感的である。
 幸い、高効率のウォームギヤの逆駆動により無音で増速でき、チェインでさらに増速できたので、比較的軽く、また、小さくまとめることができた。

 テンダはオリジナルで1.3 kgある。砂鋳物の台車であってかなり重い。それに丈夫な支持台とはずみ車が付いているので2.4 kgほどである。補強には材料を100 gほど使った。重くないと摩擦力が稼げないが、重過ぎると摩擦力が増え、チェインに負担が掛かる。

 テンダの先台車は、2軸から動力を採取している。一方、5軸台車の方は4軸から動力を採取しているので、後者のトルクは2倍である。後部のチェインには前部の2倍の張力が掛かる。ここにはスペイスがあるので、いずれスプロケットを増設して、2本掛けにする。そうしないと、加減速の時のチェインの音を小さくできない。

 こんなに小さなフライホィールなのに、回転速度が大きいので、蓄えられるエネルギィは大きい。機関車の起動時、テンダ無しなら1.3 V、75 mAで動き出すのに、4 V 0.80 A必要だ。非常に重い列車を引っ張っているかのようだ。もちろん動き出したら、ほとんど電流は喰わない。
 このフライホィールは570 gほどしかないが、170 kgほどの錘と同等の慣性を持つ。大人の男性2人強の静止質量が、摩擦の無い台車に載っていると思えば良い。出発時、ある速度に到達するまでの間、かなりの時間、力を入れて引張り続けなければならない。高校で物理を習った時、F = ma を実感させる実験を見たことがあるかもしれない。重い物を早く加速するには、大きな力が必要である。細い紐で引張ると、切れてしまう。
  
 この模型で、その紐に相当するのはチェインである。初めの作例よりフライホィールを小さくしたのは、全体を軽くして摩擦力を減らし、トルクを制限する必要があったからである。元のままではチェインは、いずれ切れると予測された。それほど、この慣性は大きいのだ。

 慣性モーメントの計算は久しくやったことがなく、 かなり手間取った。
S氏やT氏の助けもあり、慣性の値を確定させることができた。当初の筆者の計算値は、10%ほど小さめであったが、加速時のチェインの張力は、見当が付いたので質量を小さくした。作品が戻ってきたら、チェインの補強をするつもりだ。ここを歯車にすれば良かったのに、との能天気なご意見も戴いたが、それでは事故時に修復不能なダメージを受ける。工作機械にベルト伝導が用いられているのと同じである。チェインは、電気器具で言えば、フューズの役割も持っていることになる。 

 走行状況を Youtube にUPした。とりあえず英語版だけである。 

2020年02月09日

sealed beam

 シールド・ビームという言葉とC62とが結びつく人は、60歳以上かもしれない。北海道に渡ったC62は、シールド・ビームを補助前照灯として付けていた。常磐線のカマも一部付けていた。

 シールド・ビームは、既に、あまり使われない言葉になってしまった。自動車のヘッドライトには必ず使われていた時代があるし、電車その他の鉄道車輛にも全面的に使用されていた時期がある。現在はHID か LEDになってしまったから、自動車のヘッドライトは、自由な形にできる時代になった。

 歴史を繙いてみると、アメリカでは1940年から、シールドビーム化が始まった。交通機関の車輛にはこれを使わなければならなくなったのだ。既に設計が始まっていたものには猶予されたらしい。即ち戦後製造されたものには、ほぼ全部に使われている。1980年代までその法律は生きていて、シールド・ビームの種類が限られているから、自動車のヘッドライト周りはその形が限られていた。即ちデザインの自由度が、かなり制限されていたのだ。 
 筆者は70年代にアメリカに居て、それに気づいた。どうして車の前頭部がもう少し形の良いものにできないものか、と知人の自動車業界人に聞くと、シールド・ビームの形が決まっているからだということが分かったのだ。

 シールドビームはレンズ、反射鏡付き電球である。ガラスの枚数が一つ少ないし、その間に埃が溜まることが無いので光量が増す。しかし、ハロゲン電球を使えば、より効率が高くなるので、シールド・ビームの利点は意味がなくなる。
 ハロゲン電球は、フィラメントと電球のガラスとの距離がある程度小さくないと意味がない。ガラス面が350 ℃くらいになると、蒸発したタングステンが再度戻って来るようになっているのだ。このあたりのことは、化学熱力学の良い教材となる。
 即ち、小さなハロゲン電球とレンズ、集光鏡、プリズムとの組み合わせになった。そうすると対向車に対する減光をせずとも、確実な遮光により、目眩みを低減できるようになった。これは自動車の話であるが、鉄道でもある程度は共通する。

 鉄道車輛においては、今までの径のヘッドライト筐体を使おうと思うと、2つの電球が入る。NYCのナイアガラは水平に2個入れている。縦の配置の機関車もある。縦横はどうでも良いので、今回製作の機関車では縦にした。小さなLEDを二つ並べた。電球色なのだが、色が白っぽい。本当はシールド・ビームの色温度はやや低いので黄色っぽくなければならない。何かで色を付けてみるべきかもしれない。

 以前 Big Boy の前照灯切れの話を書いたが、ディーゼル電気機関車のシールドビームはとても切れにくくなったそうだ。しかも2つあるから、片方切れてもすぐには取り替えなくて良いのだそうだ。

2020年02月07日

Ajinのギヤボックス

3 unit turbine + S2 この機関車S2の製造元がどこかは分からない。GTEL タービン電気機関車も Alco製である。しかし、大きさが全然違う。
 台車の造形は素晴らしい。よくぞここまでというほど、よくできている。しかし、台車にバネは無く、単純な2点支持である。肝心の動力部分の構成は最低で、直ちにゴミ箱行きであった。入れ替えるべきギヤボックスの伝達様式を考えた。3条ウォーム以外も探っていたのだ。

 先日、処分するものをより分けていたら、比較的新しいアジン製のギヤボックスを見付けた。なんと、逆駆動できそうな気配である。少々ぎこちないが、整備すれば行けそうな感触だったので、早速バラして灯油に浸けておいた。グリースが溶けてきたところで、溶剤スプレイを吹き付けて洗い、ダイヤモンド砥石で歯車のバリを完全に取った。すべての回転部分を研磨して、入念に再調整した。
 スパイラルギヤには二硫化モリブデングリスを少々塗り、他のギヤにはスピンドルオイルを垂らした。オイルレス・メタルによく浸み込ませてから再組立てした。

 このAjinのギヤボックスは、アメリカで開かれるショウで安く並べておくと、喜んで買っていく人が居る。今までそうやって処分してきた。今回のは今までのとは形が違った。

 アジンには80年代によく行って、ある程度の技術移転をしていた。その後に作られたものだと思う。
Ajin gearbox アジンに持って行ったギヤ・ホブ(少ない歯数の歯車には、専用の歯切り用ホブを使うように助言した)を使ったようで、そこそこの性能を得ているようだ。だから、10枚歯でも音が小さい。(わが国で売られている小歯車の歯型はひどいものが多い。14枚以下は全滅に近い。)
 このギヤボックスでは、小さな歯車は硬い材料で、大きな歯車は軟らかい材料で、という原則は守ってあるようだ。ところが最終段の90度ひねりが全く駄目である。どうしてこんな歯数の少ないギヤを使うのか、理解できない。8枚歯では歯車とは言い難い。見るからに歯型が良くない。モジュールを小さくして歯数を増やせば、効率はずっと上がる。(逆駆動しにくいから、無理やり廻して歯を折った人が居るのかもしれない。だからスティール製の大きな歯にしていると考えると、合点がいく。)


 ジャーナル 即ち車軸端にはボールベアリングを嵌め、台車を組立てた。押してみると見事に逆駆動できる。ギヤ比が大きいので、3条ウォームほどは軽くないが、台車の自重の摩擦力で、逆駆動できた。潤滑油であるグリースの粘性によって、廻りにくかったのだ。ここまでの整備時間は、4時間くらいである。
 車輪は替えなかったので、やはりめっき音がする。アジンはどういうわけか、車軸が Φ4.5 なのだ。車輪を替えると、各種のスリーブを嵌め替える手間がかかるが、いずれ替えることになるだろう。しかし少々先の話だ。
 この台車は2点支持のイコライズ方式だ。バネがないから、レイルの継ぎ目音がカツンカツンと頭に響く。軽い機関車だからまだ良いが、衝撃は大きい。
 次回の整備時には、ボルスタの心皿にゴム板をはさむことにする。機関車にバネを入れずにイコライザ支持だけで、ジョイント音が良いと悦に入っている人が多いが、Oスケール以上ではそれは非常にまずい。車輛、線路双方に影響がある。衝撃でハンダが疲労して外れることがある。分岐のフログ付近がよく傷む。
 HO以下では問題になることは少ない。この機関車は、当鉄道では初登場の、バネ無しでイコライザのみの機関車である。実のところ、こんなに響くとは思わなかった。枕木下にエラストマが敷いてあっても、かなり響く。これがなければ、もっと凄まじい音だろうと思う。車輪踏面が真円でないこともファクタの一つかもしれない。バネ懸架、あるいはゴムによる緩衝が必要だ。

 モータをコアレスモータに取り換えて、試運転した。
 もう一輌の方(3条ウォーム)は1.5 V, 0.07 Aで起動するが、これは1.3 V, 0.06 Aほどで起動する。12 Vでの無負荷走行電流も、他方は 0.09 A に対して、0.07 Aしか喰わない。12 V掛けてスリップさせるときの電流は0.36 Aと0.31 Aである。起動し易さは同等であるが、最大負荷時の効率に関してはウォームに微妙に勝る結果が出ている。おそらくこれは、前者のギヤ比が大きいことと、後者ではチェインがわずかに伸びて効率を低下させるファクタが大きいと思う。

 いずれも、車輛の質量は1.17 kgと1.21 kgであってほぼ同じである。引張力はどちらも2.9 Nである。多段スパーギヤは非常に良い結果を出している。このギヤボックスは、チェイン無しの駆動ができるところが大きな利点である。ギヤボックスにボールベアリングを入れることができれば、さらに良くなるだろう。しかし、押した時の動き易さということに関しては、3条ウォーム + チェインの方が、はるかに良い。
 改装費用は1/10、時間は1/4であったから、その点でも助かった。もう一輌分見つけ出したので、やってみよう。

2020年02月05日

続 UP switcher

NW2 (1)NW2 (6) ハンダ付けがへたくそで、肝心の部品が取れて来る。上廻りを床に留める金具がパラリと落ちる。ハンダが廻っていない。左が取れる前、右が取れて落ちた物。塗装してあるので、ハンダ付けはできない。良く磨いてエポキシ接着剤を塗り、クランプで締めた(圧締)。こうすれば極めて強力に付く。

NW2 (3) 運転室(キャブ)があるので、推進軸支えの位置をキャブ側は中心に近く、手前に置き、機関室側を遠くに置いた。モータ位置も少し移動した。そうしないとユニヴァーサル・ジョイントのスペイスが無いからだ。オリジナルでは、モータも床上にあったのは同じだが、中央のギヤボックスで推進軸を下に降ろし、極端に短いユニヴァーサル・ジョイントで無理につないでいた。しかも位相は間違っていた。そのせいで、カーヴでゴリゴリという音がした。改造したら、とても静かになった。ユニヴァーサル・ジョイントは、ある程度の長さが必要で、曲がる角度を小さくすべきなのだ。
 改造により、燃料タンクの中が空になったので、活字をぎっしり詰めた。すると、ハンダ付けが不完全なせいで、重さにより分解して試運転中に落下した。仕方がないので、丈夫に作り直すことになった。こういうことは、韓国製の模型の宿命である。

NW2 (4) ジョイントはこんな形である。Ajinのジョイントを拾っておいたのを、有効利用している。あまり精度は高くない。中間軸が微妙に震えるが、軽いものだから我慢する。ブラスで作ったスリーヴと接合するのだが、抜け留めが要る。超硬の 0.5 mmのドリルで軸を貫通して孔をあけ、針金を通して曲げる。ドレメルで3万回転であけるのだ。これには熟練を要する。

 モータ・マウントは1.6 mmの板で、4 mm角の棒に銀ハンダで付けてある。簡単なジグ上で、焙り付けである。角棒にフライスで溝を入れ、軽く押し込んで付けた。その時、板にはニッパで軽く傷を付けて、押し込んで噛合わせた。こうするとハンダが廻りやすい。工作が簡単な割には、剛性が大きく、具合の良いものであり、お薦めできる技法である。普通のハンダでは強度が足らない。

UP NW2UP S2 30年の懸案課題が解決した。同時に中身の怪しいスウィッチャ Alco S2 も整備した。 これは後述するが、軽整備である。モータを取り替え、車軸にボールベアリングを入れただけだ。
 DCC化するが、近々ある神戸の行事に持って行ってからの予定だ。

2020年02月03日

UP Switcher

chain drive (3)chain drive (2) ギヤボックスの上にはモータからの推進軸が来る。その支えは9 mm角棒を切って、2 mmの板に貼り付けたものだ。銀ハンダであるからとても強い。貼ってからフライスに掛けても、剥がれる心配はない。高さが足らなかったから、1 mmの板をはさんで持ち上げてある。


 チェインドライヴの紹介のついでに、このスウィッチャについて書いておこう。この機関車はずいぶん前からたなざらしになっていた。80年代にアメリカに居た頃、友人から買った韓国製の機関車だ。彼の手による、美しい塗りであった。本物を毎日見ている人であったから、エンドビームのスコッチライトは本物を切って貼ってある。
 上廻りにはそれほど不満が無かったが、下廻りは悲惨だった。 とにかく走らない。集電が悪いのは車輪のメッキの問題、軸の仕上げ、集電ブラシの材質に問題があった。要するにまるでダメである。台車の鋳物は軟らかく、すぐに歪んで、車輪が浮く。ギヤボックスは固くて廻らない。

NW2 (5) 駆動装置はすべて廃棄して、新型ギヤボックスを付けた。運転室の床下には、限られたスペイスしかないから、スプロケットの位置を少し横にずらす必要がある。要するにチェインが少し斜めに掛かることになる。したがって、推進軸支えは短くせねばならない。下げる量を計算してフライスで削って沈める。こういう時は、三角関数にお世話になる。便利なものである。銀ハンダで付けてあるので、事後のフライス加工にはためらいが無い。外れて飛んでいくということはない。

 運転室は、窓が大きいので丸見えだ。機関士の人形を見付けたが、縮尺が違う。身長 2 m以上あるだろう。尻を削って座高を低くしたが、まだ大きく見える。体重は120 kgはあるだろう。そんな人も居るから、良しとした。 

2020年02月01日

Servolink

sprocket-group-pic-1-600px チェインはServolink社の製品だ。もうかれこれ発売45年の、実績あるチェインである。これを初めて見たのは Bill Wolfer のところである。彼の GG1はこのチェインで駆動されていた。伸びたり切れたりしないかと心配したが、重い客車を引っ張って彼のレイアウトを疾走した。その後何回も見せて貰ったが、交換もせず、よく持っていて感心した。
 チェインは結晶性プラスティック製なので、へたらない。このあたりのことは専門的になるので理屈は割愛するが、ポリエチレンとかポリスチレンとは全く違う性能を持つ。小負荷なら金属製チェインよりはるかに性能が良い。使用による伸びとか寿命についても、データが公表されている。

 最初は少し分けて貰っていたが、祖父江氏の要望でかなり大量に、直接買った。その後いろいろな人に頒けたが、みな喜んで使っている。へたったという話は聞かないから、耐久力は十分なのだろう。効率は、スプロケットの外径が大きいほど良いはずだ。リンクの曲がり角が小さいからだ。また、同じトルクでは引張力も小さく、摩擦が小さい。当鉄道のディーゼル電気機関車群、タービン電気機関車群には標準装備されている。大型機には二重掛けをしているから静かだ。 

 問題は軸径がインチ規格なので、それに合うスリーヴを旋盤で挽いて組合せねばならない。デルリン(POM)製なので、無理をして打ち込むと割れて来る。ギリギリで作って軽くロレットを掛け、接着剤と共に押し込む。このように加工したものは時々確認して割れていないか見る必要がある。Weaver社のプラスティック製機関車にも大量に使われていたが、ことごとく割れた。無理な圧入をしたからで、回収されていた。いわゆる応力割れである。
 当鉄道では、力の掛かるところは接着剤ではなくピンを通してある。

 Kleinschmidt氏はギヤの方が静かだと述べていたが、コストを考えるとチェインに軍配が上がる。歯数を互いに素にし、はす歯のギヤと予圧を掛けたボールベアリング支持にしようと思うと、よほど大量生産しない限り、とてつもなく高いものになる。

 軸を平行に下げるギヤボックスは様々なものを見るが、どれもまともな設計とは言い難い。唯一、カツミ製のものが静かで抵抗が少ない。
chain drive (1) この写真は当鉄道で標準化したチェイン・ドライヴである。スウィッチャの台車用だ。運転室側で、高さに余裕がなく、しかも少し右にずらさないと 入らなかった。ギヤボックスは、新設計の無調整型である。素晴らしい性能である。

 Servolink社のスプロケット、チェインはたくさん持っている。使ってみたい人があれば、お譲りする。但し、旋盤加工はご自分で、とお願いする。

2020年01月30日

ボールベアリング

 重いフライホィールを確実に支え、摩擦を少なくするにはボールベアリングを取り付けねばならない。この大きさからすると 5 mm軸はやや細いが、なるべく小径にしたい。静止しているものではなく、走る車輛だから事故を起こす時もあるだろう。その時に壊れてはならない。丈夫な軸受にスラストベアリングと共に取り付け、ラジアル方向だけの力だけを受け持つようにした。

stopper 基礎になる1.5 mm厚の板に、厚さ6 mmのブラスの板をハンダ付けしたものを、前の軸受にした。本体の床板と合わせて、底面の厚みは2.5 mmとなるから、十分な剛性である。支えも付けて、耐衝撃性を持たせた。この支えの材料は廃金属商で買ったブラスの円盤で、直径は75 mmあった。あいていた穴には、 6 mmの棒を通してハンダ付けして埋めた。
 メタル・ソウで円盤を平行に切って生じるかけらを、支えにしたのだ。ハンダ付けは銀ハンダで確実に付けている。こういう仕事はガスバーナーで念入りに行う。ハンダは完全に浸み込み、合金層は薄いからとても強い。ロウ付けと同等の強度だろう。母材が焼きなまされないから、結果としてはこちらの方が強いであろう。後ろの支えは、支えを付けたものをネジ留めした。スラストベアリングを挿んで取り付ける。

installing ball bearing ボールベアリングは、専用工具で埋め込み、予圧を掛けてスペーサを固定する。これは日本製のベアリングであって、極めて静粛である。某国製のベアリングは、シャーと音がするものが大半である。こういう高回転で重負荷の物には、とても使えない。

2020年01月28日

5軸台車にギヤボックスを付ける

centipede tender こんなに狭いところに5軸あるので、ギヤボックスを無理なく収めるのには少々苦労する。例えば3軸台車なら、2軸を一つにまとめてドライヴ・シャフトで結び、もう1軸はルースなジョイントでつなぐことを考えるだろう。そのギヤボックスに反動受けのリンクを付ければ、完成だ。
 しかし5軸あると、そのような方法が採れない。2軸ずつにして中間の1軸は捨てて、そこに伸縮するユニヴァーサル・ジョイントを置くしかない。しかし、そのスペイスすらないのだ。こうなると、六角軸のジョイントでつなぐしか方法が無い。

 この六角軸ジョイントは、六角レンチの頭が丸くなっているタイプを思い起こして戴くと、理解できるだろう。少しくらいの角度なら、問題なく廻る。厳密に考えると等速とは言えないのだろうが、角度が浅ければ全く問題ない。線路の上に載っているのだから、それほどの段差はなく問題は起こらない。よくできた部品だと思う。これは、カツミ模型店にいた高橋 淑氏のアイデアだ。写真では、ずれが大きいところを見せている。軸受を外して作動状況を見せているのだ。走行時には殆ど直線状である。

 チェイン・ドライヴは前後2つに分けた。1つにすると負荷が大きすぎると判断した。これは前述した許される最大加速度の計算時に、チェインの張力が算出されたからだ。また、先台車の偏倚によって、ドライヴ・シャフトが曲がって大きくずれ、効率が低下するのを避けたかったからである。
 車輪が滑るほどの加速度を与えると、チェインの音が大きくなる。プラスティックのチェインであるから、張力で多少伸びるからだ。もっと張力を掛けると切れる。
 
 このフライホィールの慣性モーメントはかなり大きく、加速するには大きなトルクが必要である。スペイスが許せばチェインを二重にしたかった。2つのスプロケットの位相を1歯の半分ずらすと、音が静かになる。次に改造する時には考慮したい。

2020年01月26日

工程表

 限られた時間で完成させようとすると、どうしても工程表が要る。工程表が無いと、くだらないところに時間を掛け過ぎてしまう傾向がある。

 各単元の工程の時間は、経験上分かっているので、細かく分けて書く。ここまでは何月何日に出来ていなければならない、という目安は大切である。
 単元ごとに検査し、あとでの再調整を不要にしておくことが時間節約になる。これは建築工事と同じだ。組んだものをバラして再調整するのは、膨大な手間が掛かる。今回は既製品の改造なので、既存の構造を利用できるところは残す。他を切り取るので、補強が要る。補強を後廻しにすると寸法誤差が出るので、補強工事を最優先にし、その後余分を切り取るようにした。
 テンダの中は太い骨が入っている。もともとはがらんどうであったが、重くなるので持った時に潰れないような構造でなければならない。
 
 旋盤工作は意外に時間が掛かる。刃物やドリルを取り替える手間が多いからだ。その必要が無いものは早い。小さい方の旋盤にはDROが付いていないので、目盛を読んで作るのは意外と大変である。1回転で何mmということから計算するので、計算用紙、電卓が必要である。早見表を作り見やすい位置に貼ってある。すべての材料、工具は並べておく。材料探しというのは、するべきではない。

 最初に見積もったスケジュールより早く進んでも油断せずに、先の方の予定でも時間が掛かりそうなものを先に作っておく。
 ロストワックス部品は念入りに仕上げてバリを取り、足の長さを調整して完全に密着するようにしておく。そうしないとハンダが完全に廻らない。
 細かな組立ては、机の上を整理して行う。前掛けをして、落とした部品がひっかかるようにする。落とした部品探しというのは、時間の無駄そのものである。
 塗装は4日掛かるとみた。初日は塗装剥がしである。塗ったらオヴンに入れて加熱する。100℃で2時間だ。マスキングは丁寧にする。失敗すると時間が無駄だ。塗り終わると同時に剥がして再加熱する。

 結局のところ、〆切の2日前に落成した。テンダがとても重く、宅配便で送るわけには行かない。持って行く途上で、T氏には助けて戴いた。ナンバーボードのスクリーンを忘れたのだ。コンピュータで作って戴いたものを付けた。


2020年01月24日

リンク機構の工夫

making link (1)making link (2) テンダの先台車はリンクで結ばれている。左右に振れると、先台車は微妙に回転し、曲線上に載る。前後のガタは全くない。ピンはネジだが、パイプを切って嵌めてあった。要するに段付きネジのようになっているのだ。友人のO氏に見せたら、ピンに僅かのガタがあると指摘されたので、旋盤で精密なピンを挽いて、作り直した。ガタがあれば、台形リンクの意味がない。
 ガタをなくし、微量のグリスを塗った。当然、穴にはリーマを通してある。磨り減ることはないだろう。

 フライスのDROで設計寸法に孔をあけてから、外形を切り抜くが、今回はギヤボックスがあるので一筋縄ではいかない。少し逃げている。そうすると固定台車の第一軸の車輪が干渉する。絶縁側は念の為、さらに1 mmの逃げを付けるのが、当社の方針である。するとリンクは直線にはならない。

tailoring a link こういう時は、距離を保ちつつ途中の経路を変更するので、屈曲させるわけだ。十分な剛性が必要で、なおかつ設計寸法が変化するのを避けたい。そういう時はこの方法が確実である。図は誇張してある。
 .團鷙Δ鬚△院太い副木(そえぎ)を当ててピンを通し、ハンダ付けする。
 副木に食い込むくらい切り込んで、障碍物を回避する。
 A澗里鮴扱舛垢襦

 これを3次元でやるので、できあがりのリンクはあらぬ形をしているが、ちゃんと機能する。

stopper 先台車のリンク支持には大きな利点がある。直線の線路上では、自然に台車が真っ直ぐ向く。即ち線路に載せ易い。問題は、センタピンが無いので、車体を持ち上げると台車が落ちてくることである。今回はそれを解決するために、ひっかかりの爪を作って落ち留め(写真)としている。左右に滑らかに動くことが条件だ。二硫化モリブデンを塗ってあるので、滑らかに作動する。
 復元装置は付けなかった。今のところ、なくても脱線したことは無い。機関車に引張られているというところが大きいのだろう。推進時にも問題はなかった。ただ、設計最小半径未満では脱線する。ガタが無いので当然である。

2020年01月22日

鳥羽給炭所

 もう60年以上昔の話だ。親戚が居たので、志摩半島に年に一回は行った。
 名古屋から亀山までの湊町行き快速列車は、たいていはC51と C57の重連だった。快速は、亀山までの60 kmがちょうど1時間で、表定速度は60 km/hである。単線での蒸気列車としてはかなり速い。快速用の機関車は磨かれて、輝いていた。
 亀山からはC51の単機が牽いた。それも快速列車だった。姫路から来る快速もあった。伊勢を過ぎて鳥羽までは、平坦線であって軽やかに走った。当時は伊勢まで行くのでも、国鉄の方が近鉄の中川乗り換えより、ずっと早かった。


 筆者の世代は、蒸気機関車が全速力で走るのを見た最後の世代であろう。蒸機はノロいと思っている人が多いだろうが、決してそんなことは無かった。速い乗り物の代表だった。筆者の父親の世代はもっと速かったのだ。蒲郡駅で上り下りの特急がすれ違うのを見るのが楽しみだったそうだ。どちらもC53で100 km/hをはるかに上回る速度であったと聞いた。蒲郡駅はどちらからも下りで谷のようになっている。 
 

 参宮線の六軒駅で大事故があり、機関車が証拠物件なのか、長く放置してあった。ブレーキの構造が重連仕様でなかったのが原因らしい。アメリカの機関車は重連用のブレーキ管を持っている。 

 当時の国鉄鳥羽駅はそこそこに大きな駅で、貨物も扱っていた。三重交通志摩線では貨物も扱っていたし、鳥羽港で陸揚げした砂利置き場もあった。プラットフォームは1本しかなく、到着列車は海側に着くことが多かった。その窓からは転車台が見え、給水タンクも目の前であった。接続電車まで時間があると、客車の窓から機関車の動きを見ることができる。
 切り放された機関車は軽やかに走って転車台に向かい、転向する。水をたくさん呑んで、前後に走り、ポイントを渡って先頭に着く。

 ちょうど目の前に機関車が来た時、機関士が大きな声で叫んだ。
「おーい坊主!見てろよ。」
 機関士はスロットルを少し強めに引き、動輪をしゅるしゅると一回転させて発進した。それは禁止されているはずであったが、見せてくれたのだ。単機でも動輪がスリップするのは初めて見た。単なる格好つけであるが、少年の眼には焼き付いた。その後、機関車は列車の先頭に行って停止するが、その時もブレーキを使わずに、動輪を逆回転させて停めた。実に見事なスロットルさばきで、機関車が止まる瞬間に動輪も止まった。機関士は満面の笑顔で、どんなもんだい、という顔をした。こちらは飛び上がって喜んだのは言うまでもない。

 その時の情景は鮮明に思い出される。いつかあんな動きをする模型を作ってみよう、と思ってから50年以上経つ。今それが完成したのだ。
 列車を牽いている時にスリップさせることは容易だが、単機では不可能だったのだ。

 
 
 T氏から、このウェブサイトを紹介戴いた。元機関士の方が公開している。写真は自由に使ってよい、とあるのがすごい。また、別の角度からの写真を紹介するウェブサイトもある。懐かしい風景だ。近鉄が鳥羽に乗り入れて、志摩線も買収された。標準軌が賢島まで続いたので、貨物は廃止された。以前は電車が貨車を牽いていたのを見たことがある。

19670224tobaekimeikanban 国鉄の旧鳥羽駅には真珠と海女の看板があったのはよく覚えている。日和山(ひよりやま)のエレベータにも乗った。天気が良ければ富士山が見えるとあった。しかしそれは、鳥羽駅が火事になって延焼してしまった。
 写真は上記の藤田憲一氏のサイトからお借りしている。

2020年01月20日

慣性モーメント

Flywheel (2) このテンダは全軸コイルバネ懸架である。錘を載せていくと、3 kgでバネが完全に沈み込む。即ち、2.4 kgほどに仕上げないとバネの意味がない。そのあたりではバネがよく利いている感じがする。摩擦係数から、取り出せる最大トルクが分かり、フライホィールの慣性モーメントから、テンダ車輪がスリップしない最大の加速度が計算できる。物理が得意な人なら、自力で計算できるだろう。ギヤ比は3: 23 で、チェインでの増速は 15:20 であるから、増速率は 10.2 倍である。チェインの場合は歯数に公約数があっても、ほとんどの場合問題にならない。

 ウォームによる増速は無音である。当初はチェインが枠に当たる音がしていたが、それは完全に修整できた。ごくわずかのチェインの音がするが、気になるほどでもない。大きな円筒が高速で廻るのはなかなか壮観である。それは発電タービン音のヒューンという音に似ているが、テンダの車体を被せると殆ど聞こえない。聞こえるのは車輪の転動音である。

first generationsecond generation 当初は左の写真のような大きなフライホィールを廻していたが、やや重過ぎることが分かり、小さくしたと同時に、回転数を上げた。回転数を上げれば、その2乗で効くので、最終段の 4/3倍は 1.78倍の効果を生み出した。即ち、フライホィールの長さを56%にしても、慣性モーメントは元の値と同じである。重いフライホィールは衝撃に対して弱いから、少しでも軽くするべきである。留めネジ(ホロゥ・セットスクリュウ)の短いのが見つからず、とりあえず撮った写真である。現在は短いものを用いている。

 事前にある程度の計算は必要であるが、結論は摩擦係数の比より明白である。動輪は鉄タイヤで、テンダはステンレスタイヤであるから、摩擦係数は異なる。機関車動輪上重量が2.0 kg以下であると、動輪がテンダ車輪より先にスリップする。機関車の質量は、その数字を満たす範囲にある。


 機関車の質量は3.0 kg程度が良いことが分かった。大まかに機関車の質量を積算すると、おおよそ2.8 kg見当なので、200 gほどの補重で足りる。35年前作った時は、牽引力の限界を計算して1.2 kgほど足したが、今回はかなり軽くなる。重心位置の補正錘程度でよいことが分かった。先従輪には十分な軸重を与えて、復元を利かせている。
 前回は機関車の動輪のスリップ限界をモータの焼けない電流値から算出したが、今回はテンダのスリップ限界がすべてを決める。動輪は余力を持ってスリップしてもらうことになっている。重客車列車を牽かせるが、十分な引張力があることは確かめられている。但し、運転は習熟した者しかできないはずだ。駅で所定の位置に止めるのは、難しい。

 筆者が何をしたいかは、読者諸賢には既にお分かりだろう。

2020年01月18日

続々 ”Super 800” 

 テンダ台車からの動力採取は、6軸とした。1軸は構造上、捨てる方が都合が良い。7軸中の6軸であるから、十分だ。ディーゼル電気機関車用に開発したギヤボックスが一番小さいので、それを入れたが、ぎりぎりである。当初はギヤボックスで回転軸を平行に持ち上げる予定であったが、とても入らない。また、横から見えるのは避けたい。既存のテンダの上廻り構造変更も避けるべきなので、チェイン・ドライヴとした。

swing motion link もう一つ、このテンダには特筆すべき工夫がある。先台車の心皿がドライヴ・シャフトに干渉する。即ち、心皿のキングピンを長孔の中で左右動させることは、不可能である。この写真の左の写っていない部分にもう一軸ある。それは先台車の前軸である。キングピンは存在しない。

 設計時にそこに気付いたので、リンク機構による左右の偏倚を採用した。当然、偏倚時に所定の角度の回転をさせる。心皿の代わりに、種類の異なる平板を置いて摩擦を減らし、モリブデングリスを少量塗った。滑らかに偏倚する。

swing motion linkage1 ある程度の回転があれば良く、フランジが確実に触っている必要はないので、そこは割り切った計算にした。むしろ、5軸台車の方が苦しい。本物も後進では脱線し易いが、当然だろう。これは、Low-D採用のおかげで脱線しない。軸の左右動を少し許した。

swing motion linkage2 リンクの長さはS氏に検証してもらった。最近はコンピュータの画面上でシミュレイションが可能だ。この図は、northerns484氏に描き直してもらったものである。リンクは、寸法的にはこの通りだが、実際には台枠に当たる可能性があるのと、絶縁車輪のタイヤに触れるのを確実に避けるために逃げている。下の図は 2800R 上の挙動である。

 この図でわかるように、5軸台車は軸方向の動きを許す構造でないと脱線する。

2020年01月16日

続 ”Super 800”

 問題はテンダである。キャブが伸びた分だけ、台枠を伸ばさないと連結できない。今まで ストーカ・エンジンが入っていた部分は、水と重油で置き換えられる。容量は 23,500 gals から、25,000 gals(94.5㎥)になる予定だったとある。体積を計算すると、既存のもので賄える大きさであったので、手を入れたのは、前部デッキだけである。機関車とテンダの長さは 12 mm(580mmほど)長くなる。薄い板では壊れるので、4 mmの板から削り出して、銀ハンダで付けた。そのすぐ後ろの床に大きな開口部があるので、太い材料で枠を作り、耐衝撃性を持たせた。オリジナルより丈夫になったはずだ。

 友人は、例の慣性増大装置を入れよ、と言った。その点はなるほどと思った。他に例がない。コンテストでそれを評価させることができれば、大きな前進だ。5軸イコライザは作ってあるが、作動の自由度が大きすぎて、素人が持つと外れてしまうことが考えられる。個別スプリング式で行くことにする。コンテストの審査会で壊れてしまっては、元も子もないからだ。冒険は避けたい。

Flywheel (1) フライホィールの材料は入手してあった。廃金属回収商で買った外径 47 mm、内径 20 mmの砲金の中空材である。水道部品製作用の連続鋳造品で、均質である。長さが300 mmほどあるので、旋盤のチャックに銜えて心を出し、内外を削った。同心であるから、フレはない。中削りは神経を使うが、正確にできた。質量は980 g  である。支持は5 mm軸で、ラジアルとスラストのボールベアリングを付けている。本当はもう少し太くしたいが、例の撹拌抵抗のことを考慮して、なるべく細くした。
 テンダ中にはボールベアリングが、46個使われている。


2020年01月14日

”Super 800”

 Union Pacific鉄道は、大型の4-8-4(four-eight-four FEFという)を採用し、類稀なる信頼性の高さを誇っていた。これは、高出力、長大な航続力、低メンテナンスの点で、世界最高の性能を持っていたことは間違いない。その他の鉄道会社は、UPほど高頻度の長距離高速運転をしていなかったので、比較しようが無いのだ。Tom Harvey は、 その実力を称して、"flying machine"と言った。

 その圧力は300 lb/insq(約21気圧)であった。新型は350 lb/insq(約24気圧)を予定していた。想定される連続最大出力は6500馬力以上であったそうだ。これの単機で、当時の特急に使われたディーゼル電気機関車の3重連の出力を凌ぐのである。 

 機種名はFEF4、”Super 800”である。20輌を発注するつもりだったらしい。このあたりの情報はDon Strack氏から聞いたことを基にしている。当然Tom Harvey からの情報とも重なる。設計者は1946年にイギリスに行き、帰りの飛行機が落ちたため死亡した。同時にこの計画は廃案になってしまった。

 外観の変化は、Franklin式ポペット弁、4本煙突、allweather cab(密閉式キャブ)Worthington式給水加熱器、小さな除煙板、重油テンダ、シールドビームである。ある程度の図面を描くと、テンダの下廻りにはかなりの変更点が生じることが分かる。キャブが伸びた分だけ、テンダの下廻りを延長しないとつながらないのだ。

 一番面倒だったのは、キャブの形である。このような大型機の場合、キャブの後ろを絞らなければならない。オウヴァハングが長いと曲線(たいていは分岐)で隣の車輛に当たってしまう。何機種かの図面を確認し、実際に作図して当たり具合を調べた。

Modified UP 9000 cab UPの9000という4-12-2のキャブは、驚くべき絞り方をしている。機炭間のバッファを更新した時に12インチ(約300 mm)の延長が必要になり、その分キャブをうしろにずらすことが可能になった。それまではキャブ内が狭くて困っていたので、これ幸いとキャブを後ろに下げた。ボイラの後端が、相対的に前にずらされたのだ。
 そうすると、ただでさえ、ボイラが太くて前が見えなかったのが、余計苦になった。思い切ってキャブ前端を最大限に膨らまして視界を確保すると同時に、後端を伸ばしたことにより当たる分を、狭くしたのがこれである。12輌ほどがこの形に変更されている。

 過去のTMSには、日本型の 4-8-4 などの空想大型機の作例がいくつか載っていたが、どれも建築限界に当たりそうである。レイアウトで実際に走らせていないと、こういうことには気付かない。さすがに祖父江氏の機関車は、正しく絞られている。

 ベースになった模型は、以前テキサスから持ち帰ったFEF3で、事故車であった。かなり修復してはあったが、ひどい壊れ方をした部分があり、ボイラは一部新製するつもりであった。煙突、煙室、キャブ、ヴァルヴ・ギヤは捨てて作り直した。
 これらはハンダを剥がして、板を延ばし、新しい板に寸法を写し取って新製した。当然設計変更をしている。パイロットは更新した。
 機関車内に、ボールベアリングは34個使っている。滑るように走る。

 クイズの正解者はLittle Yoshi氏とRailtruck氏のお二人であった。Little Yoshi 氏はかなり早い段階から正解を出された。”UP” ”4本煙突” ”Poppet” で検索すると見つかったそうである。 

2020年01月12日

続 500時間

 最初の10日間は、資料を再度読み直す調査期間とした。イギリス、フランスの文献を探した。ドイツには参考になるものは見つからなかった。
 その機関車には、高速時の高出力が求められていた。それには poppet valve の採用しか、解決策が無い。ワルシャートやベイカー弁装置では、成しえないものである。これらは弁が徐々に開き、徐々に閉じる。力が要る瞬間に、蒸気が少しずつしか入らないようでは、出力が出ない。大きな開口面積で、大量の高圧蒸気が瞬時に流れ込んで、ピストンを押せば、出力は増大する。高回転の旅客用の大型蒸機に求められる性能である。貨物用機関車には縁が無い話だ。

 その後は設計に没頭した。数十枚の図面を描いた。すべて方眼紙に手描きで描いた。今回はフルスクラッチ・ビルディングではないから、寸法の採取には大変手間取った。リンクの長さを決定するのには苦労した。寸法を決めておけば、材料の選択、加工の時間を節約できる。使う材料は選び出して机の上に順に並べ、取り出しやすくした。机が広いのは有難い。博物館には広い机が沢山ある。
 工具類、特にリーマ、タップ類を点検した。ボールベアリングは十分にあったから、注文せずに済んだ。この種の準備に時間を割くことは、後の作業時間を大幅に節減できる。工作の途中で材料や工具を探すと時間がもったいない。 

 ポペット弁は、アメリカではNYC、Pennsylvania、C&O、AT&SFなどに採用例があるが、その数は多くない。この機関車が必要とされたのは、対日戦争勝利後の旅客需要の増大に対処するためである。当時の大陸横断は鉄道によるものが大半で、ディーゼル電気機関車の出力不足、信頼性の低さには参っていたのだ。やはり、信頼性の非常に高い蒸気機関車を高出力化することが、当時としては最良の案だったのだ。

 ポペット弁に関する情報は日本では極めて少なくて困ったが、工学エキスパートのT氏からお借りしたイギリスの本に、参考になる記事が見つかった。Franklin式を採用することにし、valve chestを切断した。

removing valve chest 作り始めて気が付いたが、改造をするべきではなかった。シリンダブロック全体を新製すべきであったのだ。今回は時間がなく、そのまま突っ走ったが、いずれ3Dプリンタにより、文句なしのものを作って嵌め込むつもりだ。 この写真では既に先台車は新製され、Low-Dを装備している。
 また、ワルシャート式リンク機構は外され、スライドバァの保持枠も余分なところを切り捨ててある。この後、クロスヘッドは作り替えられる。

2020年01月10日

500時間

 昨年末、ある機関車を作った。正味2箇月しか時間が無かったのだ。500時間で作らねばならなかった。各単元分野の仕事は、大体の時間が計算できるので、工程表を作れば、製作可能かどうかが分かる。

 9月末に、親しい友人からその話が持ち込まれた。コンテストに出せ、というのである。筆者のコンテスト嫌いは知られていて、過去一度も出したことが無いし、今後も出すつもりがなかった。友人は、
「このまま逃げ切るつもりか。お前は作品を出すべきだ。世界の模型界に影響を与えた過去の作品群も、コンテストの入賞作であったら、日本国内でのインパクトがさらに大きかったはずだ。コンテストに出てないから、山崎氏が意図的に無視したので広まらなかった。」と言った。
「でもさ、それを審査する人達の資質の問題があるんだよ。外観ばかりじゃないか。自宅にレイアウトを持っていないような人が審査するんじゃ、意味は無いよ。こちらは最高の走りを実現することが目的だ。外観なんてそこそこに出来ていれば十分だと思っているのだからね。
 過去の実際の入賞作には、構造が根本的に間違っている作品が多々あったことは前にも話しただろう。審査する側に能力が欠けていることは明白だ。そんな人たちが審査するコンテストなんて、意味がない。」 
と蹴飛ばしていた。
「それじゃ、内容を審査するように、説明をちゃんと付ければよい。実際に走って見せて、驚かせればいいんだろう?」と畳みかけられた。

 その後主催者側に通じている人に聞くと、運転して審査するということだったので、それならやってみるか、ということになった。


 作ろうとしているモデルは、実際には製造されなかった機関車なので、どうあるべきかを考えねばならない。資料は集めてある。関係者からの情報を精査し、ありうる形にしなければならない。その機関車は、当時の最先端の技術を採り入れた史上最強力の機関車であった。誰も模型化していない。雑誌に紹介記事が載るのだが、例によってBenett氏の絵があって、いくつか間違いが含まれている。蒸気機関車の構造が全く分かっていない人が描いた絵などには価値はない。

 その話をすると、
「それじゃちょうど良い。むこうが『恐れ入りました。』というものを作ればいいんだよ。」
とけしかけられた。

 さて何を作ったのだろう。正解者は今のところお一人である。かなりヒント発表されているのだが。

2020年01月08日

エアブラシの保守

airbrushfixing airbrush hose Badgerのエアブラシを使っている。もう20年も使っているから、かなり擦り切れている。先日、使おうと思ったら、細いホースの根元が切れていて、空気が音を立てて漏れ出している。仕方がないから、根元で切り、金具を押し出して嵌め直した。3 cmほど短くなったが再生された。

 このエアブラシの欠点の一つは、ボタン(空気を出すボタン)の丸い部分が外れやすいことだ。そのボタンはどこかに行ってしまった。外れていると、指に痛い。

 思い付いて、コンパスの針の締めネジを付けて見たら、ぴったりである。このネジは0-80であろう。1.5 mm位だ。
 これより少し太い1-72というのは1.8 mm程度のネジで、通称1番と言う。1インチにネジ山が72個ある。それより細いのは0-80である。1-72、0-80は、昔からO、HOのパンタグラフのネジとして知られている。それがコンパスにも使われていたとは思わなかった。これより少し太いのは2-56である。2.1 mm程度である。
 このあたりのインチネジは昔はいたるところに使われていたが、我が国では、もう痕跡すらなくなった。しかし、コンピュータ部品には使われているそうだ。

 博物館は元文房具店の店舗を利用している。売れ残りのコンパスの部品などが見つかり、その用途を探していたところだ。ちょうど良かった。のちに別のネジを見付けたがそれはメートルネジで、M1.6 のようだ。要するに、合うものがあるかもしれないという程度の情報である。お役には立たないかもしれない。 

2020年01月06日

ワッシャを作る

 ワッシャを作る人はまずいないだろうが、時と場合によっては作らざるを得ない。外径9.5 mm、内径 7.0 mm、厚さ0.3 mm のワッシャは売っていないし、たとえ既製品があったとしても、プレス製で平面度が低い。
 メインロッドとコネクティング・ロッドの間に挟みたい。色はブラス色は避けたい。快削のステンレスは持っていないので、洋白の板から作った。色が良くないが、仕方ない。作り終わってから写真を撮ってないことに気が付いたので、別の部品を作るときに撮り直した。作り方を紹介する。

turning1turning2 まずΦ10のブラス丸棒に洋白の t1.2を二枚ハンダ付けし、水洗いする。こういう時には炭素棒で付けるに限る。但し洋白板は熱伝導が良くないので熱が廻らず融かしてしまう惧れがある。ブラスの方を加熱する。
 コレットに銜え、角を落として所定の寸法にする。快削ではないが簡単である。
 
turning3turning4turning5 センタ・ドリルでセンタを出し、Φ3のドリルで穴あけをする。炭素棒で挟んで加熱し、挽物を外す。ドリル穴付近で塑性変形して、二枚が喰い込んでいるので、外れにくい。熱いうちに木槌で叩いて外す。

turning6 リーマを通し、ハンダを油目ヤスリで取るとできあがりだ。この間8分。慣れれば早い。この丸棒は、コレット全長の長さが必要である。短いものを先端だけで掴むと、正確に銜えていないことがありうるからだ。あるいは、短いものを掴むときは、コレットの反対側に別の同径の短いものを銜えても良い。

turning7 何に使うのか。この部品である。手前の人形その他は無視されたい。向こうのロッドのビッグエンドの留め環である。人形はこの後、姿勢と色とを調整した。


2020年01月04日

マボーコー

磨棒 ボ−ルベアリングを装着する軸が必要であった。生憎、必要なサイズを切らしていた。
 表題の店に電話して、手に入るサイズを聞いた。漢字では「磨棒鋼」と書くのだ。昔、初めてこの発音を聞いた時、中華料理の名前かと思った。一般には「磨き棒鋼」と言っている。あるいは「シャフト屋」である。

 Φ2から、2.5、3、4、5のステンレスSUS304シャフトを注文した。長さは2m単位である。もう少し太いものだと 4 mだから乗用車には載らない。その場で半分に切ってもらって、持ち帰る。ワンカット150円くらいだと思う。細い物はボルトクリッパを持って行って自分で切る。
 写真は添え木に縛り付けたものを示している。裸で渡してくれるわけではない。ちゃんと曲がらないように配慮してくれる。

 この手のシャフトは、すべてマイナス公差である。まかり間違っても表示寸法より太いことは無い。ミニチュア・ボールベアリングは滑り嵌めが原則である。ミシン油を付けて、にゅるにゅると入るのが正しい寸法だ。するするでは駄目なのだ。
 彼らは専門家であるから、よく知っていて、何も言うことはない。

 一般人には縁遠い店だが、筆者はよく行くので、ついでがあれば購入してお分けする。上述の寸法であれば、手持ちの物を切って、即納できる。長さはレターパックに入る長さを基本とする。ボールベアリングを普通鋼のシャフトに嵌めるのは避けたい。普通の保管法では錆びて抜けなくなるからだ。

 蒸気機関車の車軸用の、SUS303材の末端を加工したシャフトを注文する必要がある。どのくらいの価格で応じてくれるか、楽しみである。
 動輪の嵌替えは、最適の材料、工具、テクニックが無いと難しい。今までは祖父江氏がやってくれていたが、筆者が引き受けざるを得ない状況になってきた。ノウハウはすべて受け継いだ。問題は動輪を掴むコレットの種類があまりないことだ。80インチ、63インチはできる。他のサイズ用は作らなければならないが、そのコレット材料がないので、ebayで探している。

2020年01月02日

伊藤 剛氏の折畳み貨車

剛氏の折畳み貨車  (1) 昨年折り畳み貨車を友人のF氏に見せた所、「僕にレストアさせてほしい。」と申し出て下さったので、早速お願いした。
 年末に届いたので、封を開けてびっくりした。素晴らしく綺麗だ。最近の画像複製技術の進歩で、本当に木で出来ているのかと思うような仕上がりである。
 ドアヒンジは各扉2箇所の時代があったのだ。小型ドアは2枚、大型ドアは3枚であった。

 2016年に、剛氏のところからお引き取りしたものを順次開被して、確認していた。そこで出て来た時には、修復は難しいと思っていた。塗装を全部剥がしてハンダ付けをやり直し、側面を新製すると、もうそれではレストアではなくなってしまう。

剛氏の折畳み貨車  (3)剛氏の折畳み貨車(2) F氏は塗装を温存しながら、綺麗に洗い、完璧なレストアをしてくれた。裏表で異なるサイドを持つ。ありがたいことである。この貨車はあと4輌ある。いずれ修復して戴けるもしれない。今後様々な点で、お世話になることが多くなるだろう。

 問題は台車である。オリジナルのダイキャスト台車枠は劣化が進み、使えないものがある。さりとて、それを現行品にして、しかもLow-Dにしてしまうのは気が引ける。台車を複製するという手もあるが、それは気が進まない。

2019年12月31日

余分のハンダを取る

 ハンダというものは、すべての接続部を満たしていなければならない。隙間があればそこから錆びる。大きな平面に小さな平板を付ける時、側面から半分しかハンダを入れない人は多い。いずれ剥がれて、泣きを見る。完全に付けるべきだ。

 しかもハンダは富士山の裾野のようになだらかに広がる必要がある。そうなっていないと完全に入ったという証拠にはならない。それでは形が良くない。部品の側面が垂直になっていないといけないという部分には、良い方法がある。 
 電線をほぐして銅の心線だけ取り出し、良く捩じっておく。それに塩化亜鉛を少しつけ、炭素棒あるいは熱い鏝で押さえつける。余分のハンダは99%吸い取られて、エッジが出る。あとは磨き砂で磨けば、綺麗になる。
ハンダの色が見える」と言う人は、どうぞお好きなようになされればよい。

 先月号のTMSに名取氏が、コンテスト応募作品の開封時に壊れているものが多いことを紹介している。それはハンダが廻っていないということである。筆者はいかなる部品も、それだけで全体をぶら下げられる程度の強度で付いていることを確認する。こうしておけばまず壊れることが無い。

2019年12月29日

リーマ

reams reamer と綴るが、アメリカ人の大半はreamと言う。なぜだろう。

 先日博物館に来てくれた友人(日本人)にリーマを見せたら、「始めて見た」と言った。これには驚いた。
 今までドリルで孔をあけて、軸を通したと言う。それではいけない。リーマを通さなければ、軸受にならない。油膜が切れてしまうからだ。

 筆者は1 mmから12.7 mmまで、かなりたくさんのリーマを持っている。シャフトを通すところには全て必要だ。傷をつけないよう、大切に保管している。
 継手など旋盤で作っても、その内側を平滑にしないとシャフトが通らない。ミシン油を塗って組む。油膜が必要である。

 ドリル寸法が公称値よりわずかに細いことは、知られている。即ち、ドリルで孔をあけてもシャフトは通らない。リーマを通す前提になっている。使っているシャフトの寸法のリーマは持つべきだ。

 ロックタイトを使うときも、リーマを通して滑り込みにし、そこに浸み込ませると世話が無い。その程度の隙間に入るように設計されているからだ。

 圧入する時は微妙に細いリーマを使う。リーマは 1/100 mmピッチで揃っているし、特注寸法も買える。ドリルであけただけではダメなのである。
 昔何かの記事で、ドリル孔をそのまま使えば、細いリーマを使ったのと同じ効果で圧入に使える、と書いてあった。これはとんでもない間違いで、拡大鏡で孔の内側を見れば、あまりにも違うので驚くだろう。細密工作が自慢の方達なのが、基本的なことをおろそかにしている。
 圧入用の少し細いリーマは、特注しても3、4千円程度で買えるものである。

2019年12月27日

四角棒を削る

 ユニヴァーサルジョイントのちょうど良い長さのものが無いので、スプラインを作り直した。既存のものを分解して角棒を作り直せばよい。 

turning square rod 旋盤のコレットに四角棒を銜えた。自宅の旋盤のコレット群はアメリカ製で、6分割になっているから、六角棒は具合よく銜えられる。博物館のは8分割であるから、四角棒を銜えられる。本当は多少傷が付くので避けるべきなのだろうが、表面を磨くので問題ない。

 快削材なので調子よく削れて、短いスプラインができた。伸縮は僅かに0.8 mm以下である。ガタガタのユニヴァーサル・ジョイントを使えばスプライン無しでも行ける範囲だったが、音がするのが許せないので、この方法を採った。

 ごく狭い範囲の軸ずれを吸収するには、例の六角ジョイントが良い。これも部品を作る。六角棒を削って作るのだ。六角ジョイントの構造は、先が丸味を持っているヘキサレンチを考えれば良い。多少の傾きを吸収する。角速度は、厳密には一致しないはずだが、角度が小さいので、無視できる範囲にある。実際に使ってみて、振動、騒音は感じられない。かなりうまく出来たものであると思う。

2019年12月25日

続 洋白材を削る

milling 3 横から見るとこんな形をしている。土台の 2.6 mm厚のブラス小片との対比で大きさがお分かりであろう。溝や穴は0.35 mm彫り込んである。


 removing soldering ハンダを外すとこんな形である。周りをヤスリで削って成型する。この種の仕事に使うヤスリはセイフ・エッジを持たねばならない。それがあれば、簡単に削れるし、失敗が無い。これの縁をさらに薄く削り、例の丸アンヴィルに載せて、ゴムハンマでぶん殴るとできあがりである。丸みが大切で、ここがうまく出来ていないと密着しない。

finished これが完成品である。ここまで来るのに2時間もかかった。これは蒸気機関車のボイラ・ジャケットに付けてあるステップである。飛び出している状態と、畳んだ状態があるのだ。出ているものは7個あった。畳んだものを用意してあると思っていたが、どうしても見つからない。板材を切って貼り、ごまかすつもりであったが、置いてみると不自然だ。結局彫り出すことにした。ロストワックス部品というものは高価であるが、自作するともっと高くつくという事例である。

steps 完成品を貼り付けるとこんな状態である。例によって、完全なハンダ付けがしてある。絶対に剥がれない。付着したハンダは吸い付けて、磨き砂で磨けば取れる。ちなみに黒いのは炭素棒の粉であるからすぐ取れる。吸い付けるというのは別項でいずれ紹介するが、毛細管現象を利用するものである。


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