2018年02月23日

続 プラグマティズムについて

鉄道模型の話をしましょう。アメリカでは、「走行第一主義の鉄道模型を作りたい」という人は、走らせるための線路を持ち、自分で改造、あるいは製造できる設備を整え、試行錯誤しながら、自分の考えを具現できる人がほとんどです。

もちろん、「写実第一主義の鉄道模型を作りたい」という人もいます。そのようなモデラーは凝ったレイアウトを作り、模型を楽しむわけです。走行第一主義者と写実第一主義者とで話をすると、互いに目的が違い、フォーカスするところが異なるため、お互いにやはり考えが違うなと感じるでしょう。ただ、意見を言いあって、考えが違っていても、否定をされたとは捉えません。主体性があるから、人は人、自分は自分という考えがはっきりしていて、ブレがないからでしょう。

他人が何を言おうが、自分の評価は自分が決める。故にアメリカ人は自己主張が強いと言われるのでしょうが、自分の幸せを自分で追求するのがこの国の特徴でしょう。

 

一方日本では、他者評価を気にする人が多いのではないでしょうか。目的が違えば、考えも違って当たり前なのです。たとえば写実第一主義者の方からの意見に、「それは『走り』を追求する上では採用できない。」と言えば、”否定された” と感じる人が多いのではないかと思います。その逆のパターンの場合も同じです。

 人と同じであれば良い、人より幸せであれば良い、という比較の判断基準は他人の眼ですから、「違う意見=否定」と捉えられても仕方がないのかもしれません。

                                                                     <続く>



2018年02月21日

プラグマティズムについて

 1月10日号のコメントを読んで、アメリカから長文のコメントを戴いた。日本とアメリカで自然科学を研究されている方からである。日米の鉄道模型文化の比較論である。興味深いので、紹介したい。コメントは800字を限度としているので、数回にわたって送られてきたものを編集した。

 
 私は、こうすれば良くなる、こうすればできると考えたらやってみたい、と思うタイプの人間です。ところが、日本の殆どの人は、考えただけでできた気になり、やらない人が多いと感じます。いざとなったらやるし、やればできるはずと思うのでしょうが、実践していない人には経験から得られる勘所がないので、それまで手を動かしてきた人間にはかないません。それだけではなく、考えたことをやってみてどうなるか見たいと思わない人は、最後まで実践することもできません。

「考えたことをやってみたい!」と行動する人間と、「考えた。理屈上うまくいく。」と満足する人間とは、生き方の根幹が違うからです。

 

アメリカには、考えて終わりという人はあまりいませんね。学生達は、私などそっちのけで考えを言い合い、白熱した討論の後、必ず「その実験をやってみよう」となります。残念ながら、日本ではあまり見ない光景です。

日本では考えは言い合っていますが、自ら行動することは非常に少なく、大学院にもなって「指導してもらう」という感覚の学生がいることには驚きます。教育の違いかと考えたこともありますが、結局、主体性があるかないかの違いなのだと思うようになりました。主体性があるということは、「自分がこうしたい」という目的意識がはっきりしているということです。そのため、その目標達成のためにはどうすべきか考えて、実践するということになります。
                      <続く>  




2018年02月19日

集電装置

electrical pickup このところ、集電装置を作るのに忙殺されていた。転車台が回転すると、DC回路は途中で極性が反転するが、DCCはそのままである。照明は、電源とは無関係に点滅させたい。場合によっては人形に旗を振らせることもできるようにしたい。


Lionel collector 集電レイルは5本ある。回転の抵抗はなるべく小さくしたいが、確実な集電を期したい。いくつかの方法で実験をして、力学的抵抗の小さい物を採用した。それはライオネルなどで使われている、回転ドラムである。
 ライオネルは焼結合金を使っているようだが、バネが強く、摩擦抵抗が大き過ぎる。
 バネは縮んだ時と伸びたときで、接触圧が随分と異なる。いつも同じように接触させようと思うと、よほど長いバネを用意しなければならない。

 しばらく前、軽井沢の駅前で草軽の電気機関車を見た。集電装置は錘による上昇である。それを見て閃いた。コンプライアンス(追随しやすさ)は小さくても良いので、この錘方式を採用した。錘は 10 g であるから、接触圧は 0.1 N で一定とみなせる。
 廃材を使っているので、部品が不揃いだ。誰にも見えないところだから気にしないことにしている。ただし、軸受等は機械加工して寸法は同一である。

 錘と言えば、TMSのHOの記事で、先輪や中間台車に錘を付ける記事があった。あれはまずい。HOといえども、走行すれば線路の不整で車輪が飛び上がる。軸重という言葉があるので、重さを掛ければ良いと思っているのだろう。慣性質量があるものを、動く部分に載せるのは間違いだ。いわゆるバネ下質量の問題である。脱線機を押しているようなものだ。止まっている時と走っている時では、全く異なる様子を示す。

 軽くバネ圧着するのが一番良い方法なのだが、その種の間違った記事はよく見た。走らせていないから、気がつかないのだ。バネにすれば、走行音もずっと良くなるのに。
 Oスケールで錘を載せると、速度が大きいので、たちまち脱線だ。しかし、この転車台は極めてゆっくり廻るので、錘方式でも十分に不整に追随する。

electrical pickups 集電レイル間隔は 30 mmであるから、集電子は千鳥配列にした。同一直線状にはないから、微妙に傾けて接線方向に向けてある。すべての可動部は、撚り線で結んで接触抵抗を低減している。

 これらの写真は2週間以上前のもので、その後線を1本増やす必要が出てきて、5本になった。

2018年02月17日

constant velocity

 角速度が変化しないという意味である。
 
 CV joint  等速継手というものは、30年ほど前から生産量が格段に増えた。いわゆるFF自動車がたくさん売れたからだ。FFは、50年ほど前は、国産ではスバル1000という車ぐらいのものだった。友人の父君が乗っていて、乗せてもらうと水平対向の独特な音だった。BMW のオートバイの音である。バックでステアリングを切って坂を登ると、切れ過ぎる方向に行くとのことであった。一方、四日市の椙山氏はシトロエンに乗っていて、これまた陸上の乗り物とは思えない乗り心地であった。

 これらの車には等速継手が使ってあった。ステアリングを切っても駆動軸の回転と車輪の回転が完全に一致した。即ちステアリングに何ら振動が伝わって来なかった。その後、筆者はスバル・レオーネに乗っていたことがあるが、12万キロも乗ると等速継手が摩耗して、ステアリングを切るとカラカラと音がし始めた。

 80年代になるとトヨタ、日産も大量にFFを売り出し、FRをはるかに凌ぐようになった。等速継手の材料、工作技術、潤滑が進歩し、耐久性が飛躍的に向上したのだ。今乗っている車は15万キロをはるかに超えているが、ステアリングは新車同様の切れ味で、全くガタがない。進歩したのだ。

 この頃はステアリング・ホィールいわゆるハンドルの軸の曲がっているところにも使われている。昔は、エンドウの継手で言えば、ABAまたはCBCのタイプを使っていたが、これなら軽くできるからだ。もしこれが不等速継手であると、カーヴを曲がるときに非常に奇妙な感じがする筈だ。ガードレイルを擦る人が増え、人身事故も大幅に増大するだろう。そういう点でも、等速であるということは大切なことだ。


 ユニヴァーサル・ジョイントを単独で使うと、何が起こるのだろう。角速度が変化するのだ。二つ組合わせてその変化量を打ち消させると、出力軸は入力軸と等速になる。もちろん中間軸は速くなったり遅くなったりする。伊藤 剛氏の解説によると、
「中間軸は細くて軽いものですからね、速度が増減しても、殆ど問題は起こらないんですよ。でもね、出力軸の角速度が増減すると、人間が乗っていますからね、激しい振動が生じれば乗り心地が悪くて困ってしまいます。もちろん出力軸が入力軸と平行でなければ多少の不具合は起こりますが、工夫をする前と比べたら大幅に緩和されていますよ。
 中間軸が高速で廻れば、問題が起きるでしょうから、そういう用途には向きませんね。別の等速ジョイントを使うでしょうね。その辺は経験に依りますな。それを使わなくてもね、最近はそういう角速度変化を吸収する継手があるのですよ。強化したゴムでできています。それが付いていると、高速回転での振動が大いに軽減されるんだそうです。」

という事であった。


CV or not  今回の電車の模型の台車がカーヴで振った時は、まさにその状態ではあるが、間違った位相の時に比べてはるかに振動は低減されるはずだ。この図は極端に誇張して描いてある。角αは角βより大きいから、等速にはならない。しかしかなり良くなっている。
 この角度が小さいときは、α≒β だから、等速と近似できるだろう。振れる量を小さくしようと思ったら、センタピンの位置をジョイント側に近付けるべきだ。もちろん荷重を負担するものを、台車中心に付けねばならない


 このyoutubeをご覧戴きたい。中間軸の不等速を、カードを押し当てて発生する音で分かり易くしている。非常にうまい表し方だ。模型とはいえども、こういうことを知っていないと、よく走る模型はできない。


2018年02月15日

続 困ったユニヴァーサル・ジョイント 

 先回の記事に対し牛越氏から送られてきたコメントには、恐れ入った。このブログ始まって以来、最大の衝撃を受けた。旧製品は3種3個の部品からなるようで、「それらの中の同一のものを組合せると、対称的なものができる」というアイデアだ。非常に賢い解決方法である。牛越氏には感謝する。これを広めるべきだ。

 しかし、メーカーはどうして3種作ってしまったのだろう。何かむなしいものを感じる。

 先回の写真を使って解説しよう。

ABC これは最初の状態である。仮に左からA,B,Cと呼ぶことにする。もう一組あるから、これらをばらばらにしよう。中間軸の B はひねることができない。

ABA 次に、 A に B を挿し、そしてもう一つの B を挿す。これで第1組の完成である。


CBC その次は、C に B を挿し、次いで C を挿す。これが第2組である。こうして正しいものが二組完成した。

 
 実に賢明な方法で、作り直す必要はない。生産する時はとりあえず C を作るのをやめるだけで済むという訳だ。 売るのはA-B-A だけにすれば良いということだ。


nakazawanakazawa2 最初のコメントを戴いた中澤氏から、写真が送られてきた。形が変わっている。既に型を変更して、スプライン軸が片方の部品と一体になっているように見える。
 誰かから指摘を受けて直したのだろうが、それが公表されていないというのはおかしな話だ。

 写真を探すとイモンのウェブサイトにもあった。これは位相が間違っている。市場には、かなりの間違った製品が在庫されているものと思われる。エンドウは、とりあえず市場にあるものすべてに、この方法を知らせる紙を添えるべきだ。それによって企業のイメージを向上させることができれば、却って大きなプラスとなろう。今のままではいけない。


 railtruck氏からお知らせ戴いたウェブサイトの最下行には、正しいことが書いてある。"constant velocity" という言葉が使ってあるのが、すばらしい。 どうして日本の模型界にはこのような”常識”がないのだろう。おそらく、走らせている人の数が少ないということに起因している。走らせていなければ気が付かないことだからだ。外見しか興味がない人の比率が多いのだろう。
 ある程度の編成を牽いて曲線のある勾配線を走らせれば、如実に差が出ることである。

2018年02月13日

困ったユニヴァーサル・ジョイント

MPギヤ2 10年以上前に、このブログで扱ったことのある話題だ。先日所属クラブの会合があり、HOの人たちと話をしていた。ある会員が持って来た動力車が、大半径の曲線上では快調であるのに、小半径の時はゴロゴロという音がする。
 どうしてだろうと皆が裏返して見ている。結論が出なかったようで、指名があった。見てみるとユニヴァ―サル・ジョイントの位相が間違っている。回転ムラを助長する方向の接続である。

revised この写真を加工して、正しい配置にしてみた。こうでなければならない。要するに左右対称でなければならない。こうすると不等速はかなり打ち消される。以下の写真は、加工していない他の車輛のものである。 



MPギヤ3「こりゃダメですよ。中間軸を90° ひねらないと・・・。」
バラしてひねろうとすると、それはプラスティックの成型品で、スプラインがモールドされている。打つ手はない。ということはたくさんのダメな製品が日本中にばらまかれているということだ。

MPギヤ その場にあった何台かの動力車を見たが、すべて間違っている。困ったことだ。その会社はエンドウである。MPギヤという製品の一群の中にある。たくさんの製品を売ってしまった後なのだろうが、良心があれば、無償交換すべきであろう。中間軸のスプラインが90° ひねられたものと現物を交換すべきだ。安いものだから、現物との交換ではなく、申し出があれば渡すという選択肢もある。

 このブログで大きな話題になったから、この種の間違いはもう存在しないと思っていたが、とんでもない思い違いであった。
 このブログで、もっと頻繁に繰り返し扱うべきことなのだろう。TMSの記事で、この種の間違いは、昔はたくさんあったが、誰も指摘しなかった。しても無駄、と感じていた人も多いのだろうと思う。

 まさか現行のMPギヤに間違いがあるとは思わなかった。エンドウともあろうものが、こんな間違いを放置するとは信じられない。

2018年02月11日

working path

 先日、ER25というコレット・チャックを取り付けた様子を紹介した。これはどう考えても、ワーキング・パスが長いからダメである。
 要するに工具が飛び出しているから、スピンドルの位置が高い。即ちコラム(柱)の高い位置にスピンドルが留まっているわけで、コラムが撓み易い。刃物はスピンドルから飛び出しているので、これまた撓み易い。極めて不利である。工作の力が伝達される経路(path)はなるべく短くしなければならない。

micro mill with ER11 自宅の工具箱を隅から隅まで探した所、ER11が出て来た。しかもMT2が付いている。これなら20 mmほど短くなる。左の写真は取り替えてみた様子を示す。MT2の引きコレットに直接つけると、さらに20mm弱短くできるが、取り外しが大変だ。


 とにかく刃物は短くくわえて、スピンドルは最大限低く保つのがコツだ。ワーク(被工作物)は万力の上の面ぎりぎりで把持する。そういう意味では各種の高さの平行台(正直板、ヨーカンともいう)を所有し、最良の高さに保持しなければならないのだ。以前雑誌の記事で、「万力の底の部分にワークを置く」とあったが、あまりにもお粗末であった。
 ER11は小さなコレット群で、掴める範囲は 0.5〜6 mm であるが、実際に使うのは4 mm と6 mmだけだろう。それらを専用に残して、あとは自宅に持って帰った。

ER11 collets 堅木の小片があったので、7/16 インチ(11.1 mm)径の刃物でコレットの置台を作った。鉛筆で罫書きを入れたけれども、DROの数字だけを見て作ったので、罫書きの意味は全くなかった。

 ER25は旋盤の方に移設してみよう。8 mm径までなら材料を貫通させられることが分かった。ただし、引きボルトがない場合である。普通の作業なら引きボルトは要らないだろう。もっぱら、6 mm径までの部品作成専用である。
 引きボルトは、M10 で首下110 mmのネジがあれば良い。中空のネジであれば好都合だが、作りにくい。MT3の引きボルトは中空のものを見たことがあるが、最近はない。


2018年02月09日

既製品のダブルスリップ

 もう一つのアイデアを紹介する。これは所属クラブの大先輩の杉山洋二氏からお聞きしたことである。

 シノハラがダブルスリップを出している。杉山氏は買ってみて走らせたのだが、全く駄目でことごとく脱線する。ゆっくり走らせても、脱線するので、じっくり観察したそうだ。

 細かいレイルが、微妙な量、上下していたのだそうだ。要するにすべてのレイルが同一平面上にはないのだ。そこで氏は、飛び出しているものをヤスることにした。定規を当てて、出ているところを削り始めたのだが、とても難しい。そこで、大きな油目のヤスリを全体に当てて、数十回軽くヤスったのだそうだ。
 すると、出ている部分が完全に削れて、低い部分と同じ高さになった。車輌を高速で走らせても、全く脱線しなくなったという。先日、M氏のレイアウトでそれをお伝えしたら、早速試されて、快調になったそうである。 

 杉山氏は、
「メーカーで、出荷前に大きな定盤上にサンドペーパーを貼って、その上にダブルスリップをうつ伏せに置いて、ざっとヤスればすぐできるのにね。」
とおっしゃった。その後数十年経ったが、目立った進歩はないようだ。

 筆者が作るダブルスリップは、それをお聞きして、レイル表面の整列には気を遣っている。

 杉山洋二氏はTMSの100号時代あたりから載っている電車模型の大家であった。近鉄を1/80、18 mmゲージで作られた方である。

2018年02月07日

sound cam

 先日クラブの会合で披露したところ、評判の良かったアイデアを紹介する。

 蒸気機関車のサウンド装置には、ドラフト音を動輪の回転と同調させるために、動軸にカムが入れてある。このカムを入れるためには、正攻法としては動輪の嵌め替えをせねばならない。慣れている人には簡単だが、一般的には難しいようだ。

 アイデア商品として、僅かに弾力を持つカムを、開いて軸に無理やり横から押し込むものがある。他に、二つに割って組むものもある。どちらも、そういう部品がないとできない。

 筆者が採用しているのは極めて楽な方法である。クロスヘッドは前後しているので、その前後の死点付近に針金を出しておく。もちろん、絶縁パイプを介して固定する。当たっても抵抗がないように曲がりやすいバネにしておくことが大切である。左右で4点の接触がある。4点も要らないという方は、片方で2点にすれば良い。

 あまりにも簡単で拍子抜けするほどだ。針金は洋白が錆びにくくて良い。線が見えるかもしれないからいやだ、という方は、シリンダブロックの中に入れることもできる。

 この方法は25年ほど前、祖父江氏と話していて思い付いた。氏は早速やってみて、「うまくいくよ。簡単だからいいよね。」ということだったが、注文主から見ると手抜きをしているように見えたらしい。仕方なく回転するドラムを付けていたが、筆者のは、針金接触方式である。誰も気が付いていない。

 このようなヒントは無数にある。Model Railroaderの特集号で”764 Helpful hints”というのがある。楽しい本で、いつも寝る前に読んでいた。類するものは、TMS誌上にもたくさん載っていた。これこそがプラグマティズムである。まともにやろうと思ったら、大変な手間が掛かるが、これでも可能というアイデアを出すわけだ。
 鉄道模型はプラグマティズムの実践の場である。まともに唯一絶対の解を求めていたら、お金や時間がいくらあっても足らない。

2018年02月05日

ER25コレット

ER25 collets and holder 自宅の工作室の抽斗を整理したら、ERコレットのMT2シャンクが出て来た。ER25も1 mm〜16 mmまで完全に揃っている。しかも引きネジはどういう訳か、M10であった。つまり、そのまま使えるわけだ。これを付ければ、引きネジを緩める必要がなくなる。即ち、上に飛び出しているZ軸DROが、邪魔にはならないということだ。

 博物館に持って行って取り付けてみた。40 mm以上突出するので、ワーキングパス(working path)が長くなって多少不利であるが、小径の刃物しか使わないので問題がないかもしれない。ブレが大きければ、元に戻しても良い。エアスプリングの取り付け位置も下げて、動く範囲の邪魔をしないようにした。少々大き過ぎるような気もする。もう少し小さいERコレットがあると短く掴めて良いのだが。
 モータの出力から考えても、12mm径の刃物は使うはずもない。

 新しく来た旋盤の主軸もMT2なので、それに付けても使える。旋盤付属品のコレットチャックは、少々出来が悪い。調整幅は各 2 mmということにはなっているが、可動域の端の方の寸法の材料は掴めない。即ち、掴める範囲が連続でないのだ。仕方がないから、薄い銅板で作った円筒を挟んで掴んでいる。これも、ERなら連続した寸法を掴める。ただ、貫通穴がないところは不便だ。

 ER25コレットはどこに仕舞うべきか考えたが、下手に仕舞うと目的の大きさのコレットを取り出しにくい。一覧できなければならない。そういうホルダをブラスの板を切って作ろうと思って居たところ、具合の良いものを見つけた。
 もう少し大きめのR8コレット用のロータリィ・ホルダである。実はR8を入れるつもりであったのだが、オーク材でやや贅沢な専用ホルダを作ってしまったので、行き先がなくなってしまったのだ。

collet holder フライス台の背面壁に取り付けた。3つは余るが、それは大径の16, 15, 14mmのものだから、抽斗に仕舞った。もちろん一覧できるような仕切りを付けた。

 

 道具や部品が一覧できるというのは、時間の節約になる。昔、近所の自動車修理工場に行くと、すべての道具が、壁に絵を描いて、その通りに掛かっていた。あんなことしなくても、と当時は思ったが、非常に理にかなった方法である。

 実は模型の部品もすべて一覧できるように、床と壁に並べてある。床は正月には片づけなければならないが、壁はそのままである。これは便利である。


2018年02月03日

Z軸 DROの取り付け

Z-axis DRO フライス盤の改良工事を終わらせておかないと、転車台のちょっとした部品の製作にも支障が出る。切込み深さ方向のディジタル表示器が必要であるが、クイル部分が本体とは別に微妙に回転するのが困ったものである。
 クイル quill とは鳥の羽の軸部分を指す言葉で、要するに中空軸のことだ。電気機関車にもクイル駆動がある。中空軸があって、中で別の軸が回転するようなものを指している。このフライス盤は設計が拙くて、少しだが、上下するクイル全体が廻ってしまう。中央の太いスティールの丸棒が廻るのだ。考えられない間抜けな設計で、廻らないようにするのはとても難しい。

Z-axis DRO3 クイルが回転すると、取り付けたDROが捻じれてしまう。クイル表面の円周上で0.3 mm程度の動きである。当て金を作って、そこに当てて変位を検知しても良いが、仕上面の精度で0.02 mm程度はばらついてしまう。

 支点を遠くに持っていって、微妙な角度の動きの影響を無視できるようにしてみた。長い棒を立てたとして、先端を少し振らせた時、高さが測定できるほど変化するか、を考えればよい。
 取付け位置はクイルの外周上より少し遠いところにある。200 mmの棒の先が、0.2 mm左右に振れると、概算で背の高さは0.002 mm弱低くなる。DROは0.01 mmの差を拾うので、全く影響はないと言える。十分に近似は成立しているのだ。
 
Z-axis DRO2 この棒は2x4 mm のブラス平角棒で、左右の剛性はほとんどない。前後にはやや曲がりにくいが、多少は撓むので2x2の支えを入れた。これはよく効くブレイスで、後ろには全く撓まなくなった。しかし左右には自由に撓む。
 落として使えなくなったノギスのアゴを切り落とし、ネジで留めた。デプスゲージ部分を上にして、ハンダ付けした。あらかじめハンダメッキしておいて、炭素棒で 一瞬でくっつける。ネジの本数を減らして、接着剤で補助している。

Z-axis DRO4 ノギスの切り落とした少しの出っ張りを、フライスで削り出した部品で押えている。下の台形の断面のブラス隗は、その辺にあった切れ端を使っただけで、形には全く意味はない。
 クイルを最大限捻じっても、読みには全く影響しない。それは成功なのだが、上に突出しているので、コレットの引きネジを廻すのが少々やりにくくなった。左手でやれば済むことではある。引きネジを廻さない方法を考えるべきかもしれない。
 一方、短くすると、かえってうっかり引っ掛けやすくなるようにも思う。しばらく考えて、結論を出そう。

2018年02月01日

走れ!!機関車

走れ!!機関車 アメリカの子供向け絵本の翻訳書である。往々にしてこの種の本は鉄道マニアから見て、面白くなく、間違いが散見されるものである。しかし、この本は違う。鉄道マニアが読んでも面白い。翻訳の間違いらしきものもない。northerns484氏から紹介され、長らく書店で探していたが、ついに見つけることができなかったので、通信販売で購入した。

 ネブラスカ州オマハから、サンフランシスコまでの鉄道の旅ができるようになったのは1869年である。開通直後のユニオン・パシフィック鉄道、セントラル・パシフィック鉄道(のちのサザン・パシフィック鉄道)に乗って大平原を越え、山地を抜けて太平洋岸に到達する様子が、淡々と、しかし躍動感ある記述と絵で表されている。

走れ!!機関車2 筆者はこの沿線を何度か車で往復しているから、様子はよく分かっている。その風景は150年前も今も変わりがない。この絵はネブラスカ州のノース・プラットの東の方だ。本当に何もない。今も同じだ。ただ、線路が複線になっているだけである。

 途中の食事の様子、トイレの様子、連結手が危険な仕事をしていることなどを紹介している。チキンのはずなのに、プレーリードッグの味がしても質問してはいけない、とあるのには吹き出した。
 気になったのは、挿絵の中の看板などが日本語に書き換えられていることだ。子供向きだから日本語の方が良いという判断だろうが、元のままにして、下に訳を付ければ良かったのに、と思った。

 アメリカの歴史の中で、鉄道の敷設というのは非常に大きな部分を占めている。鉄道がなければ、あの巨大な国は機能しなかったのだ。

 英語版を発注した。1週間で届くというから驚いた。


2018年01月30日

御殿場線ものがたり

御殿場線ものがたり たまたま寄った古本屋で見つけた。福音館の子供向けの「たくさんのふしぎ」シリーズの一つだ。30年ほど前の号である。このシリーズは我が家の子供たちも読んでいたが、これだけは買っていない。アメリカに居た頃なのだろう。その後の調べでは、再版されて単行本になっているようだ。


御殿場線ものがたり2 著者は宮脇俊三氏、絵は黒岩保美氏である。間違いは無さそうだと手に取って、中のページをめくって驚いた。どの絵も素晴らしい。特に筆者はこの見開きの絵を見て、衝撃を受けた。このようなスイッチバックを作りたいと思っていたことがあるからだ。すぐに買って、帰りの電車でじっくり読み直した。

 御殿場線は田舎を走っているのに、隣に線路があったような跡があるのはなぜ?駅の構内が広いのはなぜ?という疑問から始まる謎解きがある。

3御殿場線ものがたり 東京駅から電気機関車でなくC51の牽く特急が国府津に到着すると、30秒で後補機のC53が連結され、峠まで押していく。そこで走行中解放する様子が躍動感溢れる絵で表されている。東京から電気機関車だと、付け替えの時間が掛かるからだ。


 当時はC53が出たばかりなのだが、特急「燕」の本務機はC51なのだ。信頼性があったのだろう。一方、普通列車は小さな機関車で牽いている。

 筆者も関西本線でC51が本務機の、重連鳥羽行き快速に乗ったことがある。C55と組んで、ぶっ飛ばした。当時名古屋ー桑名間(23.8 km)は18分であった。平均速度は 79.3 km/h である。当時近鉄は木曽三川を渡る鉄橋が古く、そこでの最高速が40 km/h に制限されていて、とても国鉄の快速には敵わなかった。
 その後この記録は40年間破られることなく、ディーゼル快速「みえ」で再度18分になった。今は最速17分半だと思う。

 C51はブラスの帯を沢山巻いた、お召し列車に使われるような機関車で、古いけど魅力的であった。その列車と相前後して発車する湊町行き快速も良かった。それはたいていC55とC57の重連であった。昭和33年頃の話だ。毎日駅まで行って観察していた。素晴らしい時代であった。写真があれば・・・、としみじみ思う。


2018年01月28日

続 砥粒

 早速メイルを戴いたので紹介したい。

 砥粒の話、そのように教えられたり聞いてはいても、気にしないモデラーが多いでしょうね。実際に擦り減って支障を起こすほど使わない(使用時間が長くない)からでしょう。問題が発生しない、もしくは擦り減るという経験をしていないので、理解できないのだと思いますね。 

 模型車両の軸受の構造も、よくこれで持つよなあと思うものが大半です。海外メーカーの米国型HO蒸機がギクシャクして肩を振るようになったので分解してみたら、単に長方形に切り欠いただけの軸受に真鍮の車軸が嵌まっていて、擦り減っていたということを経験しています。ちゃんと注油し、綿埃などは取り除いていたにもかかわらずです。油が砂埃?を巻き込んだのが却っていけなかったのかもしれません。
 こういう場合はグリーセムのような固体潤滑の方が良いかもしれませんね。ギヤの露出も問題です。埃だらけの居間の壁際に敷いた線路で、ずっと走らせていればそういうことにもなるのだろうと思います。長時間連続して走らせることなどは、想定外なのでしょうね。博物館や商店の展示レイアウトの車輌の消耗やメンテナンスはどうなっているんでしょうね。

 
おっしゃる通りで、アマチュアの旋盤で、磨り減るほど使ったものにはお目にかからないから、良いのかもしれない。
 筆者も現役のころは旋盤、フライス盤に向かうのは週に1時間ほどであった。最近は毎日2時間くらいであろうか。これくらい使えば減るかもしれない。ベルトは擦り切れて2回取り替えた。刃物の消耗はかなりあるが、最近はダイヤモンド砥石があるので、修正は簡単だ。
 
 建設中の博物館の車輛は、すべて密閉式ギヤボックスを持ち、軸受はボールベアリングである。それらは十分持つだろうと思う。問題はロッドである。ひと月に一度溶剤スプレィで洗い落とし、再注油する。洗うと黒いものがたくさん落ちる。これはロッドの金属粉なのだろう。
 数年に一回、ロッドの孔のスリーブを入れ替える必要があるかもしれない。これは比較的簡単な作業である。

 模型においては消耗ということを考えることは少ないが、博物館が開業するとそれは深刻な問題になりうる。そういう点ではLow-D車輪は減らないから良い。

 JRなどが開いている博物館のHOレイアウトでの車輛の消耗は相当なものである。どんどん下廻りを取り替えているらしい。
 しばらく前、3条ウォーム、コアレスモータ、Low-D車輪の組み合わせをHOでやりたいという人が現れ、図面を提供した。博物館のメンテナンス・コストを小さくするという触れ込みで、応札したらしいが、見事に負けたらしい。勝ったのは既存の模型店で、イニシアル・コストが低いからであったそうな。当然メンテナンスには多大な金がかかり、模型店は左うちわだそうだ。資源の浪費は著しい。困ったものだ。



2018年01月26日

砥粒

 フライス盤の改良記事中、「砥粒が落ちる・・・」と書いたところ、質問を戴いている。そんなに気にするようなことだろうか、ということである。

 筆者は大変気にする。摺動面がある機械では、摺動面に砂ぼこりが噛むと、たちまち磨り減る。送りネジはもっと気を遣う。

 旋盤工の仕事を見るのは面白かった。子供のころ、近くの工場でよく見ていた。最後にサンドペーパを当てる時に、油を塗った新聞紙をベッドの上に広げて、ホンの少しではあるが飛び散る可能性のある埃を受けていた。新聞紙の裏表は当然区別する。

 その仕事が終わると、丹念に埃を払い、新聞紙を丁寧に4つに畳む。筆者が質問すると、大事な旋盤を少しでも長持ちさせるためには当然のことだと言った。
 自分で旋盤やフライス盤を持つようになってからは、埃が掛からぬように気を付けるし、サンドペーパは極力使わぬようにしている。使うときは習った通り、油と新聞紙で防護し、電気掃除機を持ってきて、発生する時点で吸い取っている。

 職人の仕事は研究すべきなのだが、もはや職人はほとんどいなくなってしまった。旋盤の上で、サンドペーパを無頓着に使う人は、よく見る。やめるべきだと思う。
 筆者の子供時代は、職人たちが働いているのをよく観察できる時代であった。今思えば、貴重な授業を受けたことになる。そういう意味では現代の若者は不幸だ。なんでも教科書に書いてある通りにすれば出来ると思っている。なかなかそうはいかない。正解は、年月をかけた経験からしか得られない。
 Knowledge is from books, wisdom is from age. (知識は書物から、知恵は経験から。 )
 

2018年01月24日

終活

 就活かと思っていたら、終活という言葉があるそうで、少々驚いた。人生の終わりに近づくと、様々なものを整理する人もいるらしい。

 最近何人かの模型人が、工事中の博物館にいらして、
「うちに置いておくと、僕が死んだら捨てられてしまうから、事前にこちらに持ってきてよいか。」
とお聞きになる。お預かりするのは良いが、展示できるかどうかはやや難しい。ショウケースが足らない。3階が空いているので、それを展示スペイスにすれば何とかなるが、まだ先の話だ。内装工事やエアコン設置が必要である。場合によってはエレベータも必要だ。資金が要る。

 伊藤 剛氏は15年ほど前、面白いことをおっしゃった。
「そのうちに、鉄道模型は持ち主が死んだらどういう風に保存するかを考えねばならない日が来ます。宗教法人にするという手もありますよ。お寺が良いですな。
哲藻院 應迎寺 というのはどうですか。読み方?テツモイン オウゲイジですよ。
そういう宗教法人にして、お布施を戴いて永代供養するというのはどうでしょうな。」

 もちろん剛氏一流の冗談ではあるが、時が経つと現実味を増す。
 この博物館の建設が始まるときに、土屋巖氏は、
「いろいろな人が模型を持ってきて預かってくれという日が来るが、タダで受け取ってはいけないぞ。相応の保管料を貰って運営するのだ。」
とおっしゃった。その日が近づいてきたような気がする。

2018年01月22日

Z軸DRO

 フライス盤の動力系の改良が終わり、残るはZ軸のDROの取り付けだ。

 非常に困ったことに、クイルが、スピンドル本体の中で0.5度ほど回転する。DROを付けたら、捻られてしまう。 回転を止めるにはどうすれば良いか、考えているが、妙案が浮かばない。
 回転を許容して摺動するようにすると、どうしても1/20mm程度の誤差を認めなければならない。根本的に構造を改良するにはかなりの工事が必要で、そこまでやるほどの価値もない。

 このフライス盤は、いろいろな点で詰めが甘い設計で、経験の足らない人がやっつけ仕事でやったことは間違いない。つまらないところの剛性が必要以上に大きい一方、ここぞというところがダメである。

 この機種の拡大改良版は 幾つかあるが、どれも共通した欠点がある。筆者の自宅にある機械はその部分を徹底改良した。原型をほとんど留めていない。どうして売る側がそれに気がつかないかが不思議だ。

2018年01月20日

回転計とトルク計

tachometer and torque indicator フライス盤の改良で、回転計を用いて回転数を測定した。これはレーザ光を発し、反射光を数えるタイプである。アマゾンで安価にて購入した。写真中央下のものである。この話を教えて下さったのは、時々登場する Dr.Y である。氏は様々なモータを測定して、一覧表にされたのだ。100機種弱を整理されたデータで、非常に興味深い。
 電圧電流が直読できる安定化電源と、トルク計を用いれば測定できるとは言え、大変な労力を投入したデータであり、貴重だ。

 写真中央上はトルク計である。三爪チャックでモータの出力軸を掴み、所定の電圧で廻してバネ秤で直読する形式になっている。表示単位は昔懐かしい ”g重cm” である。 

 Dr.YはHOを楽しまれているので、モータのトルクはせいぜい 100 g重cm である。筆者に見せて下さった時、Oスケール用のものも測定してみよう、ということになった。しかし、たちまち振り切ってしまった。もっと大きなものが必要であった。

torque indicatorcalibration その後、ヤフオクで目を皿のようにして探し、ついに 600 g重cm のものを購入することに成功した。これらの写真をご覧になるとお分かりかと思うが、正逆回転に対応した目盛りになっている。
しかしこれでも振り切るものがいくつかあり、低電圧で測って高電圧のトルクを、外挿して求めることになった。筆者は商売柄 ”Nm” しか使わないので、980を掛けて何桁ずらすのだったか、再計算にやや手間取った。
 径が大きなものはモーメントが大きいので、概して高トルクである。マイティ800に付けてあるのは出力11.5 Wで、大人を載せた客車を牽いても、かなりの加速を示すはずである。もちろん客車にはボールベアリングを付けていることが条件だ。
 
 模型機関車用のモータとして適するのは、強力な界磁を持つ低回転モータで、負荷の掛かった時の回転数が落ちる率が小さい物である。吉岡精一氏が書かれた「モータ調書」のデータとよく一致する。昔から定評のあるEscapの低回転モータは、その点、抜群の性能を持つ。もちろん、伝達系は高効率であることは最低条件で、ろくに廻らないギヤトレインでは、話にならない。

 吉岡氏がデータを採られたのは25年前で、当時無かったモータもあるので、再度調べてみる。近々導入予定のパシフィックの強力機に搭載するモータを決める必要があるのだ。重量客車数輌を牽いて、15.6‰を駆け上がらねばならない。


2018年01月18日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑸

 ようやく体調が戻ってきたので、フライス盤の現物をばらして調整をした。結論としては、小プーリィを0.8 mm上げれば、すべて解決である。もちろん大プーリィは最大限下げておく。ガードとスピンドル・ロックを兼ねた角材に大プーリィの縁が当たるので、そこには 0.3 mm程度の隙間を空けておく。 

 製造元に聞いてみると、小プーリィの取付けもキィでできるのだが、キィを削ってするすると入るようにするという知識を持っている人が少なく、叩き込んで失敗する例を避けたいのだそうだ。大した力が掛かるわけでもないので、このような簡易キィでも十分だろう。組立て方は皆さんにお任せする。

small pulley 小プーリィの細く飛び出した軸穴部分は、ごく適当に削っても、バランスその他で問題が起きることは無い。筆者は旋盤で削るのが面倒だったので、手で回転させながら卓上型ベルトサンダで落とした。紙やすりの上で手で磨っても、すぐ完了である。

mortor ballbearing 面取りを施し、削り屑をブラシを通して掃除した。溶剤スプレィで洗って、ミシン油を塗って嵌め込んだ。キィは使わずに、ブラスのピンとネジで留めた。驚いたことに、差し込むとボール・ベアリングのインナレースの黒い油が均一に付いた。十分に平行に削れたということになる。削る部分の断面積が小さいので、アッという間に削れる。
 このベルトサンダは便利な道具で、ちょっとした調整はこれに限る。削れる速度が大きいので、保持するのも楽である。木材、スティール、ブラス、アルミ合金など、なんでも来い、である。

pulleys in correct height 試運転中の写真である。多少手間取ったが、ベルトは水平になり、最高速で廻してもモータ音しかしない。意外と、このモータはうるさい。ブラシがあるからだ。小さな三相モータを付けて、インヴァータで制御すると静かになりそうだ。あるいはブラシレス・モ−タだ。そうすると変速装置は不要となるかもしれない。そうなれば回転数は0〜5000 rpmまで無段変速である。出力も増大する。
 暇になったらやってみよう。しかし改良が無限に行われると、最終的には3軸マシニング・センタになってしまう。しかし、4軸ないと面白くないのだ。そうなると外注するほうが出来が良くなる。あまり考えない方が良さそうだ。

2018年01月16日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑷

belt drive⑺ ベルトを嵌めてみる。横から見て、完全に水平であれば、良しである。張力は1.5 Nほどだ。150 gw程である。強くすると損失が大きく、弱くすると滑り易い。刃物が噛んだ時に滑る程度にすれば良いので、そのあたりはご自分で調節願いたい。
 この写真を見ると、小プーリィが微妙に低い。モータ軸に対してより深く挿さねばならないから、少し削る必要がある。

 回転数は3段階で、無負荷最大値で、3010, 1840, 1020 rpmである。この数値は実測値である。元の状態よりはるかに速くなったから、細い刃物を使い易くなった。

⑻ ガードの内側のスピンドル・ロックを掛ける部分がプーリィに当たる可能性があるので、黒い中空ネジを外し、アルミ部分を0.5 mm程度削り、ロックをやや浅めに留める。これはスピンドルを駆動ユニット床板に対して中心に置いたから起こることである。もし基盤をやや手前に付けたなら、このような問題は起きないであろう。(下から挿すネジが、手前に引張った時、スピンドルのフランジの、両方の孔の手前の縁で当たっている状態なら良いという意味である)

⑼  ガードを下からネジ2本を締めて、固定する。ガードにはスピンドル・ロックが付いている。鋼製のロック機構を考えていたが、径の大きなところで押さえれば、小さい力で済むので、ブラス製部品にした。中にはスティールの棒が通っている。相手はアルミ合金だが、十分持つだろう。ミシン油を注しておくと良い。基本設計は筆者で、造形は任せた。なかなか良いと思う。

 これで機械的には終了で、筆者による組立て時間は、このマニュアルを書きながら、2時間半であった。すべての部品は小気味よく組上げられる。作業を始める時に、工具、材料をすべて用意しておくのが、時間節約の基本である。
 キィは使っても使わなくても良い。ただ、キィを使うときはバリを取って、するすると入るようにしておく必要がある。引っ掛かるようでは分解ができない。キィ使用の時は、一般的には軸方向の抜け留めが必要で、軸にスナップリング等で留めねばならない。それを使わないようにするためには、ネジでキィを押し付ける必要がある。ブラスの小片を使うときは、軸のキィ溝にそのブラスが喰い込むようにしている。


2018年01月14日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑶

installing motor mount⑹ モータを取り付けたモータ台を本体に組み付ける。ネジの組み立て手順は、この写真を参考にする。黒い大きなネジを締めて、ベルトを掛けた時、動かなければよいのだ。向かって左には、赤いファイバ製のワッシャを噛ませ、適度な締付トルクを与えながら、袋ナットを被せてロックナットにする。ブラスのシムには潤滑油を一滴落としておく。右の手で締めるネジには、大きな金属製ワッシャを挟む。

⑺ 紫の↑はガードがクイルに当たりそうで削ったものだ。実際は当たらないのだろうが、見掛け上、気になるので1 mmほど削った。

⑻ 赤の←の、コレット引きボルトを少し削って、細くした。寸法があまりにもぴったりで、締めると抜けて来ない。ということは締付トルクがかなり無駄になる。後で引抜く時も、喰い込んで面倒である。旋盤で0.05 mm削ったら解決した。
 dressing pullbolt headこの種のガタは、仕事を早く進ませるために必要なガタである。こういうところは、中国製らしい。経験がないのでわからないのである。薄くグリスを塗っておくと、締め易い。
 この引きボルトはM10である。筆者はインチサイズのMT2コレットをかなり持っているので、それ用の引きボルト(3/8”、約9.5 mm)を作る。普通の長尺の全ネジにナットを熔接して削り落とせばよいので簡単にできる。何本か作っておけば欲しがる人もいるだろう。

 それはそうと、旋盤の心押台延長の左ネジを欲しい人がかなり居る気配だ。筆者はU氏に作って戴いたのだが、同じ方法で作るのは大変である。専用の左ネジM10-P1.0のダイスを買えば訳なくできる。これも筆者の旋盤上で、ダイスホルダを使えば、あっという間にできるだろう。一人で買うと高いものだが、多人数で割れば、どうということもない。
 もちろんその後の加工はご自分でやって戴く。材料はS45Cだから、卓上旋盤では出力不足になりかねない。手回しクランクでやるのが良いだろう。 
 希望者がいらしたら、コメント欄で<私信>として連絡されたい。数がまとまれば動き出してみよう。

2018年01月12日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑵

brass shim 向かって左の円柱上端にはブラス・シムが入っていて、0.050 mm低い。問い合わせたら、「そのようにした」と言うのだ。こちらの図面には描いてなかったが、摩擦が大きすぎるので、たまたまあった0.050 mmのシムを切って挟んだと言う。なかなか気が利いている。注油しない人が多いので、減らない工夫だ。右の方は見るからに摺動面で、減りを気にする人は多いが、ピヴォット側は放置ということが多い。アルミ合金は磨り減りやすいので、このような配慮が必要なのだろう。勉強になった。

⑴ まず手前のガードと角材を外す。ネジは固く締まっている。これを取っておかないと、あとでベルトがはまらない。 

⑵ モータのギヤを外して捨てる。新しいプーリィの径の大きい方を上にして、飛び出しているところが、モータのボールベアリングのインナ・レースに当たるように嵌め込んで、様子を見る。この時、シャフトにはリング、ワッシャなど、何もついていないことを確認する。小プーリィの飛び出しているところを0.8 mm削り落とす。削るのは、旋盤が一番良いが、サンドペーパ上で回転させながら削っても何ら問題ない。この操作によって、小プーリィは0.8 mm高い位置につく。面取りを施し、孔の中をよく掃除する。 キィ溝にネジ穴を合わせて、完全に奥まで差し込み、穴からブラスのピン(短い方)を入れ、ネジを締める。元のキィは使わない。ミシン油程度の油を塗っておいて組むと楽である。
 要するに、ベルトは水平でなければならない。

⑶ モータ台にモータを置き、線の取り出し方向を考慮し、位相を決めて固定する。プーリィを傷つけないように、箱に入れて保護しておく。ネジは元のモータ取付け用を用いる。

installing base⑷ 下から駆動ユニット床板を留める。付属のM6ネジを 用いるのだが、位置が決まりにくい。手前に引張りながら、側面がベッドと平行でなければならない。半締めして、プラスティック・ハンマで叩き、細かく移動させて本締めすると良い。外すことは無いと判断すれば、少量の接着剤を塗っておくと良い。将来ビビリが発生することが無くなる。
 このM6のネジ(5.88 mm)は、スピンドルのフランジの孔(6.44 mm)に比べて小さい。ガタの中で、基盤を最大限手前に引張った状態で締める。

fixing pulley⑸ 大プーリィをスピンドル(クイル)上方から挿す。下まで完全に落とし込む。この時、駆動ユニット底板からプーリィ下面まで、1.3 mmのクリアランスがあるのが望ましい。0.5 mm板と0.8 mm板を重ねて挟んでおいて、引き抜けばよいのだ。もっと低くしたいが、大プーリィがガードの角材に当たる。

 せっかくキィ溝があるので活用した。キィの幅はぴったりだが、高さ(法線方向)がやや高いので、ベルトサンダで削り落とした。プラスティック・パイプ(竹筒でも良い)を嵌め、プーリィをハンマで軽く叩いて沈める。所定の位置で、ネジを入れて締め上げる。キィを使ったので、ブラスのピンは使わなかった。プーリィを落とし込む時、ハンマで不均等に叩くと、クイルが曲がる可能性があるから、必ずパイプ状の物を介して叩くようにする。仕上がりは良く、簡単に入るようになっている。精度は十分だ。むしろ、クイル表面のざらつきのほうが気になった。細かいサンドペーパで擦って、メクレ等を取り除き、洗浄スプレィで洗ったのち、ミシン油などを塗って嵌めると良い。サンドペーパを使うと砥粒が落ちるので、孔をあけた新聞紙を被せて、全体を保護し作業終了とともに掃除機を掛ける。

2018年01月10日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑴

 この造形は、以前取り寄せたアメリカ製のものとはかなり異なる。ベルトの嵌め替えの面倒な曲面ガードを廃し、厚板でガードした。また、ネジ一本でベルトの張替えができるようにした。しかも指で廻せるようにしてある。3段変速だから、この設計は役に立つはずだ。
 筆者は最近右手拇指が故障しているので、これでも少々廻しにくい可能性がありうる。夜中に関節が外れることも、たまにあるのだ。
 そういう時は、例のセレーションの付いたレヴァに取り換えざるを得ない。歳を取ると、様々なところが劣化してきて、模型工作すらできなくなるような気がしてきた。
 要は使い過ぎたのだ。こういう作業を何もしない人は、殆ど変化がないように見える。安楽マニアは問題が起こらないのだろう。

 先日庭のデッキを修理する時に、帰省中の長男と3時間ほど働いたのだが、金槌をフル・ストロークで打ち下ろせないことに気が付いた。親指が弱く、握力がないからだ。以前は83mm(3.25インチ)の釘を1ポンド(455 g)のハンマで3回で打ち込めた(これがアメリカの大工の必須事項)のが自慢だったが、もうダメである。インパクト・レンチも両手で保持する。

 クイルから歯車を抜くのに困る人はお知り合いの自動車修理屋あるいは機械修理屋、水道屋などに頼んでギヤ・プーラを貸してもらうと良い。壊しても良いものなので、ドリルでいくつか孔をあけ、鋸で切れ目を入れて、割ってしまっても良いだろう。鋼製の中空軸は意外と固く嵌まっている。クイルには焼きが入っているわけではないので、曲げないようにしなければならない。どこにも借りる伝手がない場合はお貸しするが、たくさんの要望がある場合には、こちらからの指定順で、巡回させることになる。その場合の送料は、順次ご負担願う。

2018年01月08日

X-1 micromill conversion kit 到着

conversion kit 年末に発送したと連絡があったが、正月を挟んだので、少々時間が掛かった。DHLで 名古屋空港NGOの倉庫までは来ていることが分かったが、通関に手間取ったようだ。関税は十分に払うからと言ってあったのだが、安くしてくれたようだ。

 綺麗な仕上がりで良かった。スピンドルのロックも思うような構造にしてくれた。ネジはドイツ製だと言っているから、信用できるはずだ。
 ベルトは三ツ星の高級なベルトで、これは日本で調達した。不思議なのは外地の方が安いのだ。これを取り寄せてくれた親しい工具屋のK氏は、「大量だったら向こうから仕入れるべきだな」と言う。特別価格にしてくれても、1本1060円だった。向こうでは普通に一本買っても900円だという。在庫がなかったようなので日本で調達した。

 どういうわけか、英語での説明書を入れてくれたが、文法的ミスで理解不能な点が多い。このブログで取り付け方をお知らせするのが一番簡単だろう。
 
 これであの騒々しい運転音と、歯車駆動の不安が一挙に解決するのなら、有難いと思っている。実は2回喰い込ませている。モータが非力で助かっているが、怖い話だ。プラ歯車はゴミ箱に叩き込んだ。

 実は珍しくインフルエンザに罹り、寝込んでいる。発送は少し遅れるかもしれない。

2018年01月06日

インヴォリュート歯車

 その方にどうして100%ということがありうるのかと聞くと、99.99%以上だという。少し後退した。何か怪しい。その電車に乗ってみて音を聞いた。モータ音以外に歯車音もある。これでは99%近辺だ。歯車箱を触ってみればすぐわかる。かなり温かいはずだ。
 普通の平歯車は98%である。効率を上げるには径を大きくしたり、モヂュールを小さくする以外に、斜歯(はすば)にする方法がある。そうすると重なり噛合い率が上がる。

 噛合い率とはいくつの歯が噛んでいるかということである。斜歯なら、3枚程度を噛ませることができる
 転位させて歯先と歯元を薄くすることができれば、殆どがピッチ円付近の接触になり、転がり摩擦に近づく。この辺のことは50年前に亡父から聞いた。
 船のスクリュウのように連続負荷なら良いが、鉄道では衝撃負荷が多いので、斜歯は感心しないのだそうだ。斜歯は弱いのだ。それから、設計時は歯車の効率を95%と見積もって、発生する熱をどうやって捨てるかを考えておかないと実戦で役に立たないのだそうだ。今はもう少し良いだろう。潤滑油の進歩もある。第二次世界大戦の兵器はそんなものだったのだ。斜歯の場合は負荷によって性能に差が出る。力が掛かると歯が曲がるのだそうだ。要するに彼は、軽負荷での性能を拡大解釈しているのだろう。

 もう一つ父は付け加えた。斜歯にするときは歯先、歯元ともに薄くしてはならない。すべてが当たるようにすると、効率が上がるというのだ。その理由は聞きそびれたが、多分、噛合い率が上がり、歯が曲がりにくくなるのだろう。

 話題になった電車は、出力が小さいので斜歯であるが、機関車などで一台1MW(1300馬力)もあるモータでは使えない。即ち効率は98%程度だ。
 歯車の効率はコンピュータが進歩し始めたときに、数学の先生に計算してもらった。そう簡単には騙されない。一応は勉強しているのだ。


2018年01月04日

続々々 困った3条ウォームギヤ

 歯車は奥が深い。筆者は父から聞いた話と、数冊の本を読んだ程度の知識しかなく、高度な計算を伴う設計はしたことが無い。ウォームギヤについて知っていることは、
・バックラッシを小さくできること、
・摩擦を低減することができれば効率は上がること、
・進み角を大きくすると単純な滑りではなく、転がりに近くなって効率が格段に上がること、しかし、進み角が18度を超えると、歯形を変更しなければならないこと、
である。
 先日来、この項目で、某模型店製の進み角の小さな3条ウォームを紹介しているが、ある方から次のようなお便りを戴いて、新年早々大笑いした。

 3条ウォームの件は本当にお気の毒様です。私に言わせれば、小さな進み角の制限のもとで3条もの溝を成立させる方がよほど難しいです。故にこれは、貴殿の方式を貶めるため、相当頭の切れる策士が緻密に練った謀略に違いありません。

 これはジョークにしても、どうやって考えるとあんな結果になるのかは、本当に不思議だ。



 話は替わって、スパーギヤ(平歯車)の効率は100%ではない。この動画は歯車が摩擦しながら動いている様子をよく表している。この線の角度が圧力角である。中心から遠い部分と近い部分での周速度は異なる。その速度差分が損失を生じる。ピッチ円上だけが、完全な転がり摩擦だ。
 スパーギヤの効率を上げるには、ピッチ円付近でしか接触しないようにすることが必要である。径を大きくすると、ピッチ円付近しか接触しなくなる。即ち、相対的に大きくするにはモジュールを小さくすることが同じ働きをするだろう。その他、高度な工夫もあるが、結局は摩擦から逃れることはできない。即ち効率は100%にはなりえない。

 しばらく前、ある実物業界の方が、インボリュート歯車は完全な転がり摩擦だとおっしゃるので、質問してみた。どうやら歯車メーカの効能書きの受け売りをしているようで、実際に運転時に触ってみたことは無さそうだ。100%なら発熱は無く、潤滑も要らないだろう。
 人の言うことやカタログを信用する人は進歩できない。しかし、その方は筆者に「もっと勉強せよ。」としか言わなかった。ご自分がどんな勉強をしたのかを、聞いてみたかった。



2018年01月02日

続 転車台インデックス装置の完成

 いくつかお答を戴いている。ほとんどが正解である。ヒントを目ざとく見つけられて、完璧なお答の方もある。一方、いつもコメントを戴く方々からは、お答がなかった。 

 正解は高粘度シリコーン・グリースを用いた粘性結合継手である。信越化学がいくつかの粘度のものを出している。中粘度のものが良かった。これはトイレの蓋のヒンジなどに使われているアレである。ゆっくり閉まるのは粘性による。写真の中に信越化学の丸い瓶があるが、それがヒントである。ShinE…という文字しか見えないが、分かる人にはすぐ分かっただろう。
 この種の継手を鉄道模型に使ったのは、これが世界で最初の例ではないだろうか。MRに投稿してみようと思う。作るのは簡単で、消耗せず、半永久的に持つ。

 シリコンsiliconとシリコーンsiliconeは異なる概念を指す。前者はケイ素の単体あるいは元素を指す。例えば、シリコン整流器という言い方をする。後者はケイ素と酸素が交互に結合した骨格を含む合成高分子(シリコーン樹脂)を指す。間違える人は多い。

 さて、円柱とそれにかぶさる円筒の隙間を変えて、様々なテストをした。隙間が0.1 mmでは狭すぎる。0.2 mm弱が一番良いことが分かった。長さは必要とされるトルクに応じて調整した。廻していると温度が上がるかと思ったが、出力がせいぜい 0.3 W 程度なので、30分くらい廻っていても温かくなる兆候は見られなかった。ある程度の推力を生み出して停止していても、何の問題もない。バーサインの分だけ押し戻されても、推力が増えることはない。バネを介して押すよりはるかに確実であり、利点が多い。
 この装置には3つの粘性継手が使われている。作動が穏やかである。よく見るソレノイド等のガチャガチャとした作動ではないが、正確なインデックスが可能である。ずれても戻せるところが面白い。


2017年12月31日

続々 困った3条ウォームギヤ

 このウォームを発注した時の仕様書らしいもののコピィがある。判読が難しいところもあるので、読めるところだけ書くと、モヂュールは0.6らしい。

 歯先円直径は 7.8 mmとある。これはどうしたことだろう。この現物はもう少し
太い。ピッチ円を指定していないところが不可解だ。また、軸穴を3.0 mm径と指定している。これはまずい。2.5 mmにすべきだった。そうすればかなり細くなり、進み角は大きくなる。このあたりは経験不足から来ている。どうして先駆者に聞かなかったのだろう。小学校の算数と理科の範囲である。 
 材質はS45Cである。どうして快削鋼にしなかったのかは疑問だ。快削鋼であれば、表面の粗さが、より良いものができる。逆駆動には、このあたりの微妙なところも大切なのである。イモネジはM1.4らしい。

 ウォーム・ホィールは28枚歯で、歯先円直径は18.7 mmとある。これは正しい。歯数が互いに素であることは良い。これもイモネジ(M1.6)で締めるようになっている。このような留め方は避けたい。僅かの偏心が逆駆動の妨げになりうる。材質はリン青銅で、これは良い。

 組み込んで動かなかったものだから、その模型店には客から文句が来たようで、その返答のコピィを見せてもらった。それは私信に属するから、写しは取らなかったが、概要はこういうことであった。
 逆駆動するには動軸にボール・ベアリングを入れないとダメである。逆駆動はこの程度が限界であると認識されたい。なじんで来れば多少は良くなるかもしれない。”

 何を言っているのか、全く理解できない。滅茶苦茶である。かなりの金額を支払ったそうだが、全て灰燼に帰している。もったいないことであった。
 ウォーム軸にスラスト・ベアリングを入れれば、動軸側には無くても逆駆動できる。進み角の小ささと歯面の仕上げの悪さが、こういう事態を引き起こしている。快削鋼で作っていれば、きっと動いたであろう。進み角が小さいので、効率は良くないが、一応は動いたはずだ。モリブデン・グリースを使うことも必須だ。

 筆者の機関車は、同一の線路に2輌載せて、片方を押すと発電してもう一輌が走り出す。正しい設計とそうでないものとは、ここまで違うのだ。
 筆者の発表した記事には、全ての必要項目が書いてある。そのまま作れば、必ず動いたのだ。そして、そのグループでも標準仕様として採用されて、動力機構の改善が進んだはずだ。下手な知恵を出すからこういうことになる。残念な限りだ。もう既に時効だろうが、正しいものを作り直させることが必要だ。

 返すがえすも残念なのは、そのグループには吉岡精一氏も居たのに、吉岡氏に相談しなかったことだ。吉岡氏は筆者の設計の歯車を多角的に解析し、実験結果を含めた「ウォームギヤ調書」という数十ページのレポートをグループ内で配布している。それは筆者がアメリカに居る頃で、日本では盛り上がっているのだろうなと想像していたが、結果はこれであった。誰もその内容を読んでいないのだ。非常に分かり易く書いてあるのにだ。吉岡氏曰く、”中学生にも分かるように書いた”とのことであったが。吉岡氏は筆者のギヤを活用されていた。 

 筆者の正しい3条ウォームは手持ちに余裕があるので、希望の方にはお譲りしている。

2017年12月29日

続 困った3条ウォームギヤ

 問題の3条ウォームをお借りした。組み立てて試験をしてみよう。

triple-thread worm gear setcorrect triple-thread worm 径が大きく8mmほどある。この進み角は9度ほどだ。大昔の2条ウォームがこれ(右)である。直径は、6 mmほどである。この進み角は11度強である。
 3条なのに、2条より緩い角度なのである。困ったものだ。

 この2条ウォームギヤは逆駆動できる。両端にスラスト・ベアリングを付けたらかなり楽に動いたが、効率はそれほど高くないことが分かったので、採用しなかった。 

 左のウォームにはネジ穴がある。非常に理解しにくい設計だ。こういうものを押しネジで締めると偏心するから、ろくでもないことになる。ロレットを切って圧入するか、ロックタイトを使うべきである。

 このウォーム・ギヤのセットはさる高名な模型人が諸元を決めて、発注されたようだ。その書簡の一部も発見された。作って売った模型屋の言い訳の手紙のコピィもある。どうしてこういうことになるのだろう。

 3条ウォームにするということだけしか考えていない。3条にすると2条の時と何が違うのかを考えていないのだ。モヂュールが同じで、同じピッチ円なら、進み角が大きくなる。こんなに径が大きければ意味がないことは明白だが、おかしいとは気づいていない。設計者に「動かないじゃないか。」と文句を言う人がいたらしいが、設計がおかしいじゃないかと言った人はいないのだそうだ。

 そのグループ内にこのギヤが頒布されたようで、皆「動かない!」で不満が溜まった。結局、「3条ウォームはインチキである。」ということになったそうだ。
 よく動くものがあり、その写真もあるのだから、比べて検証すれば良いのだが、それもしない。相手を非難するだけでは、何の進歩もない。しかし一部の人達はカツミ製の輸出用ギヤボックス(祖父江氏設計)を手に入れ、よく動くと重用している。そのギヤは筆者設計で、進み角は17度である。

 このあたりのことを見聞きすると、この国の模型人の、物理に関する理解度が知れてしまう。機関車が走るのも、止まっているのもすべて物理の法則による。工作の上手、下手とは異なる次元の、極めて大切なものが抜け落ちている。それは物理という言葉で表す必要もないほど、単純明快なことなのだ。 


2017年12月27日

転車台インデックス装置の完成

turntable index completed かれこれ2箇月も掛かってしまった。先日ようやくすべての部品を組付け、試運転を行った。結果は上々で、慣性モーメントの大きなものがグワーンと動き、ギューンと正位置に停止する。この写真は10日ほど前に撮ったものである。現在はもう少し進歩している。近日中に動画を撮って、お見せしたい。

round notch 目的の位相に近づいた時、インデックス装置を作動させると、プランジャが伸びて円盤に当たる。プランジャ先端のローラ・ベアリングが刻み目を拾うと、回転している円盤の慣性によってインデックスは横にずれる。その時、ダンピングが起こる。
 以前の写真では平行な切れ目が付いているが、現在はローラ・ベアリングの丸味に合わせて、僅かな丸い凹みが付けてある。

 電線は、通称「尺取虫」で支えてある。これがないと局所的に疲労し断線するだろう。メインテナンス・フリィを眼目としているので、各部分の疲労が無いような設計である。この尺取虫の本名を調べたのだが、分からない。御存じの方はお知らせ願う。

 センタリング装置を作動させると、ゆっくり正位置に向かって動き、アラインメントが出る。センタリングはタンジェントが1/3である。ボール・ベアリングで転がすので、抵抗はほとんど無い。引張る部分はボール・ベアリングで3方向から支えてあるので、抵抗は感じられない。非常に効率が良い。ラックをギヤード・モータが引張ると、するっとセンタリングするが、円盤の大きな慣性モーメントがあるので、ゆっくり動き、時には行き過ぎる。再度センタリングをすると所定の位置に止まる。この動きが実物のようで、満足している。全自動のコンピュータ制御のものとは全く異なる実感のある動きである。
 この装置全体で、ボール・ベアリングは28個使っている。

 円盤は940 mm径だが、フレは0.2 mm以下である。非常に正確にできた。回転橋のフレもその程度であろう。180度廻したときのずれが大きいと具合が悪いので、そこには最大限の注意を払う。

 すべてのモータにはある装置が付けられ、逆駆動も可能であるし、負荷が掛かっていてもモータは停まることもない。さて何であろうか。正解発表は新年にしたい。ヒントは写真の中にある。

 尺取り虫の正確な名前は、椿本チエインのケーブルベヤであることが分かりました。ご教示ありがとうございます。

2017年12月25日

gusset plate を貼る

steel bridge ガセット・プレートを順次貼っている。意外と時間が掛かるものである。リヴェットを打ち出したものをシァで切って、叩いて平らにしたものを貼る。接着剤はスーパーXである。
 薄く塗っておいて、両方になじませ、マスキング・テープで仮留めする。位置を確認してから、軟らかい木材を当てて締め付ける。中の方まで固まるまで、1日以上掛かるようだ。
 クランプを外して次の列を数枚貼る。これを繰り返してようやくここまで来た。あと少しである。

 見えるところは全て貼りたい。内側も大きな面積のところは貼りたくなってきた。今ガセット・プレートを増産中である。

 塗装を考えている。色はどうすべきか。黒か銀かそれとも濃いグレイだろうか。レイアウト全体が薄いグレイであるから、突出した色は避けたい。


2017年12月23日

逆駆動

 押して動くか、すなわち逆駆動出来るか、ということは、ウォーム歯面の勾配と摩擦の大小に依って決まる。歯面の摩擦は避けられない。効率を上げるには摩擦係数を小さくするしかない。摩擦関係の本を数冊読んでみると、いくつかのことが分かった。

 まず、潤滑を良くすること。これには極圧剤が不可欠ということも書いてあった。次に材質を異にすると摩擦が小さくなるとあった。これは常識らしい。確かに同じ材質なら、圧力が掛かった時にくっついてしまうかもしれない。先人の経験から、快削鋼とリン青銅の組み合わせがベストということになっている。

 斜面で、摩擦によって静止できるのは角度が4度以下ということになっているらしい。それ以下でも、振動を与えると動き出すとあった。そうかもしれない。ネジが緩むのはそれが原因だ。

 ふつう我々が斜面の効果を実感するのは、ネジや楔(くさび)である。ネジ込めばネジは締まるし、楔を叩き込むと隙間が無くなる。
 逆に、押すとネジが廻ったり、楔が飛び出すのを見ることはまずない。3条ウォームでは、それをやろうというのだ。風車を考えてみよう。風は平行に動き、その中で風車は回転する。
 難しい流体力学はすべて無視して、ただ斜面の効果だけを考えれば、大体同じである。羽根の角度が90度に近ければ廻りにくい。45度付近が一番廻りやすいだろう。

 亡父が話したことで印象に残っているのは、「大砲の砲尾の閉鎖機(弾と火薬を詰めて蓋をする装置)は、5条か6条のネジになっている。半回転以下で締まるが、爆発時の圧力には十分に耐える。逆回転しないようにラッチが掛かっている。」であった。そんなネジがあるのかと興味を持った。それが小学校高学年の頃だ。

 3条ウォームを最初に設計する時は、そのようなことを思い出していた。ネジの進む角度は径が小さいほど大きい。しかし、角度が大きいとウォームホィールの歯に当たることもわかった。そういうわけで17度という角度が決まった。
 歯車屋に行って注文すると、大将はむかっとした顔で、
「あんたねえ、俺が何年こんな商売やっていると思ってんの。ウォームは逆には廻らんよ。廻ったら、逆立ちしてやるよ。全部タダにしてやらあ。」
と啖呵を切った。

 電話があって受け取りに行き、
「逆に廻ったら金は受け取らないんだね。」
と確認した。
「来週ギヤボックスを作って見せに来るから、金はその時でいいか。」
と聞くと、大将は、
「もちろんだ。持って来い。出来るもんか。」
と胸を張った。

 約束の日にギヤボックスに付けて見せに行くと、大将は愕然とし、へなへなと土下座した。
「こんな商売を30年やってても、気が付かなかった。俺はバカだった。考えてみりゃあ、斜面が急なんだから廻るよな。あんたは天才だよ。金は受け取れねえ。次もタダでいいよ。あんたの注文はどんな注文だって聞いてやるよ。」
と言った。
 結局最初に20セット作り、次に300セット作った。本当にタダにしてくれた。その歯車屋とは仲良くなって、いろいろな歯車を作ってもらったが、そのうちに大将は病気になり、廃業した。残念だった。


2017年12月21日

正しい3条ウォーム 

triple thread worm 先日友人に見せてもらった3条ウォームは、正しい設計であった。実はその存在を20年以上も知らなかった。

 日本製のフランス型機関車である。有名なPacific231という機関車だ。これをばらしたものを見せてもらった。ギヤボックスはダイキャスト製で、中にはブラスの細いウォーム、POM(いわゆるアセタール樹脂、商品名ではデルリン)のウォームホィールが入っていた。歯数は40であった。互いに素である。

gear box ギヤボックスを見て驚いた。そのマークはどこかで見たものである。Asterではないか。アスターはもともとキャッシュ・レジスタなどの精密機械を作っていたので、技術者をたくさん抱えていた。そういう人たちが作ったのだから、正しいものを作れるのは当然、と言えば当然である。その辺の模型屋には無理なのも、仕方ない。

 アスターがこのギヤを採用したのは、おそらく電動の1番蒸気機関車の駆動に必要だったからだろう。押して動くことに、価値を見出したのである。押しても動かない1番ゲージの蒸気機関車を想像すると良い。そんなものは意味がない。
  大きな重い機関車だからこそ、押して動くということに意味がある。HOサイズの人たちがあまり興味を示さないのは、そこに原因がある。
 
 このギヤボックスにはスラスト・ベアリングが入っていない。精度高く作れば、要らないのである。普通のラジアル・ボールベアリングでも、かなりのスラスト(軸方向の推力)を受けられる。押されたときに拡がらないように、外側を支える部分を正確に作ってあれば良いのだ。筆者が最初作った物は挽物のハウジングで、ガタを見越している。そういう設計の時は、スラストを確実によそで受けておかないとまずいのである。後にCNCで精密に作った時はスラスト・ベアリングを排除した設計にした。非常にうまく動く。

 ともかく、1番用をOスケール用に転用したのだ。逆駆動は簡単にできる良い設計である。ただ、モータは高級なコアレスを使わないとダメである。これがいつまで経ってもわからない人が、一定割合存在するのは残念だ。

2017年12月19日

困った3条ウォームギヤ

 最近3条ウォームギヤに出会うことが多い。模型人の友人が見せてくれるのだ。しかし、少々頭が痛い。

「動かない!」と言って、筆者に文句を言う人が居る。そう言われても、その設計には関与していないのだから、文句を言う相手が間違っている。
 Oスケールの3条ウォームは筆者設計のもの3種、某模型店製の1種の2系統しか国内にはないと思っていたが、もう一つあった。それは後述するが、出来が良くて、ちゃんと逆駆動できる。

 HO 用のものは2条で以前話題に上ったが、2:30という割り切れる歯数で感心しない。
 某模型店製のものは悲惨である。動かないというのでそれを見ると、進み角が小さい。ウォームギヤの径が大きいからだ。3条であるのに進み角が普通の1条と大差ないのである。これではだめである。話にならない。

 筆者が発表した記事には全ての情報が詰まっている。
 進み角を大きくすること、材質を異にすること(快削鋼とリン青銅)、潤滑油は二硫化モリブデンを含むものを使うこと、ギヤ比は互いに素にすること、スラスト・ベアリングを使うことである。
 それらをすべて守れば、必ず正しく動く。しかしながら、そんなことは何一つ考えていない。真似をするならすべて真似をすれば良い。こちらは特許申請していないのだから、直接問い合わせて来てもよいはずだ。喜んで教えただろう。似て非なるものが世に出て、それが本家の評判を下げているとは思わなかった。いい迷惑だ。

2017年12月17日

gusset plates

 鉄橋の工事が停滞していた。ガセット・プレートの加工が遅れていたからだ。いつもお手伝い戴いているクラブのN氏が見かねて、代わりに作ってくださった。

LED lightingLED lighting2  工具一式をお渡しして、お願いした。リヴェットは下から押し出す方式である。型紙の大きな丸にダイをあてがい、どの方向からも白い部分が見えなくなった時に打てば、所定の位置に押し出せる。それを手前以外に向こうからも見なければならず、数枚を作ってもう体力が無くなったのである。目の良い人でないと難しいと思っていた。若い人が集まった時にお願いしようとも思っていたのだが、N氏は、LEDで照明を当てながら鏡で見るという方法を考え付かれたのだ。三方から同時に見られるので、仕事は大幅に早くなったそうだ。実際にはLEDはほとんど使わず、蛍光灯の光だけで十分だったとのこと。

gusset plates すごい数のリヴェットを短期間で打ち出して戴いたので、早速貼り付けに掛かっている。この写真の下が型紙を貼った物で、上はできあがりを裏側から見たものである。


 それをシァで切り落とす。リヴェット打ち出しで、全体が反っている。それを修正するために、金床の上でゴムハンマで叩く。満身の力を込めて一発で仕留めるのだ。リヴェットの裾野は平らになり、全体も平面になって落ち着く。

 貼り付けるべき場所を確認する。これが意外に大変な作業なのである。よく似たものが多い。型紙は両面テープで貼ってあるので、きれいに剥がして、接着剤で貼る。マスキング・テープで仮留めしてから、軟らかい木の板を挟んでクランプで締め付けると密着する。

 N氏が述懐する。子供のころはお金がなかったし、腕も知恵もなかった。ただ視力だけは十分にあった。今は視力だけがないと。
 本当にその通りだ。筆者は、若い時はとても視力が良く、両眼とも2.0であった。ところが現在はかなりの遠視で、眼鏡をいくつも首からぶら下げているが、それでも足りない。  


2017年12月15日

フライス盤の制御回路

 このフライス盤は直流モータで駆動されている。マグネットモータである。困ったことに、磁束が漏れている。モータ側面に鉄片が吸着されるのだ。磁束漏れは出力低下の原因である。いずれ厚肉鉄パイプを被せてみよう。


motor controlto fit into the box 制御装置はこんな形である。寸法を測って金属製の箱を買ったが、入らない。箱の前後の妻板が10mmほどオフセットしていて、奥行がないのだ。

ventilation こういう時はいつもの手を使う。妻板に孔をあけて、飛び出させて、それを別部品で覆う。発熱する部品なので、換気用という大義名分も使える。 

 アルミ箱の片方の妻板を、何度か曲げ、疲労させて折り取り、それを後ろに持って行く。ネジ留めしても良いが、接着でも良い。操作盤は手前に持ってきて、底面に接着する。5 mmのベークライト板で嵩上げすると、操作パネルの下端の高さがちょうどよくなる。

nibblerswarf ゴミ箱の上で、電動ニブラ(nibbler)で孔を開ける。切り粉は燃えるゴミでよい。アルミニウム屑はよく燃えるからだ。この程度の切りくずなら、回収する価値はない。


 この道具を使えば、切るのは簡単である。意外とこれを持っている人は少ないようだ。筆者は、エアコンのダクトを構成する薄鉄板をくりぬく作業をすることがある。それには便利な道具であって、安いものだ。これは日本製である。切粉はこのような三日月状である。

 電気ドリルに付けるアタッチメントとしても売っているが、これは専用機である。
 0.8 mmの鉄板でも簡単に切れ、切断速度が大きいので楽である。アルミなら、紙を切るような感じで切れる。直線を切るときはガイドを取り付けてそれを添わせて使う。円を切るときは半径を決める定規を付ける。
 機関車の床板に使う1.5 mmのブラス板も、大きな板から切り出せる。切り口は多少凸凹しているのでヤスリを掛ける必要があるが、大した作業ではない。


2017年12月13日

フライス盤を分解する 

 来週あたりにベルト・ドライヴが発送されるようなので、下準備を始めた。

motor gearBlogPaint モータを外してみたら、とんでもないことになっていた。樹脂製歯車が少し下がって(抜けて行く方向)、絶縁用のプラスティック板に当たっている。摩擦熱が発生して、ギヤが変形を始めていた。キー溝がすでに30度ほど回転している。温度が上がって、クリープが起こったのだ。その原因は、ギヤを留めるスナップ・リングの欠落である。もともとなかったのかもしれない。中国製だからとは言いたくないが、ひどいものである。この状態でしばらく使うと、ギヤの中でキーが回転していくのだろう。一周するとどうなるのだろう。 

disassembling gear traindisassembling gear train 2 スナップ・リングを専用工具で外す。めったに使うものではないが、これが無いと作業が困難だ。ギヤを1枚外してみると、その先は鋼製のスリーヴ(ギヤ間のスペイスを稼ぐもの)と、もう一枚のギヤがある。これが固くて取れない。嵌めあいが、きつ過ぎるのだ。


gear pullermill spindle 仕方がないので、ギヤ・プーラを持ってきてセットした。プラスティックの歯車に爪を掛けるのはためらわれたが、壊れても良いのでそうした。この種の道具は、ドイツ車と米車とを持っていた時の整備工具である。よく壊れたが、すぐ修理できるので、部品とパーツを沢山保有していた時代があった。懐かしい思い出だ。
 上端のネジをレンチで廻すと、すぐ抜き取れた。 外すとこんな様子だ。フランジにバカ孔が2個ある。ここにベルトドライヴを付けるのだ。

gear case 箱は外してみるとこんな形である。これだけで、2 kg弱もあった。熔接はへたくそで、ひどいものである。鉄クズ置き場に直行だ。

2017年12月11日

続々 turntable indexing

index roller 転車台のインデックス(割出し装置)は、当初の計画をかなり変更した。楔を差し込む形を考えていたが、ローラ・ベアリングが一つ見つかったので、それを押し付けることにした。そうすればスリットに入らずに滑っているときの抵抗は少ないし、潤滑も要らない。 

DSC_0023 ローラ・ベアリングを収める部分は3 mmの板で作り、軸を真っ直ぐ通すために、縦フライスで孔をあけた。刃が長いものは4枚刃しかなかったので、ドリルで適当に穴をあけ、その後でフライス刃を差し込んだ。一瞬で正確な穴があき、その部分は完成だ。2枚刃なら下穴なしで切り込めるが、4枚刃ではそうはいかない。

DSC_0020DSC_0025 前後に動くプランジャ部分は、当初側面に溝を掘ってボールベアリングを偏心スリーブで受けていた。溝の角にボールベアリングのアウタレースが当たると、いつかは減るだろう。重さを別に受ける必要がある。部品を新製し、ボールベアリングを仕込んだ。簡単な工作だが、機械がないとできない仕事だ。

 真ん中にラック・ギヤをはさんで角棒をハンダ付けする。全く隙間の無い、完璧なハンダ付けをした。ラックの背が低いので、別の角棒で下から支えている。
 このような長いものを付ける時には太い針金を曲げて作ったバネクランプで、全体を締める。ネジ式クランプではハンダが中まで入らない可能性がある。もちろん、接着面はキサゲで刻んで、めくれを付けてある。僅かの隙間をあけておくためである。塩化亜鉛飽和溶液を塗って、ハンダを置いてガスバーナで焙れば、できあがりである。切り口を見ると完全に一体になっている。


2017年12月09日

スコヤを捨てる

squares これらのスコヤ(英語でmachinist square、直角定規)を捨てることにした。どれも狂っている。軟らかい材質と組んでいるので、落としたりすると、組んだところが塑性変形したのだろう。
 狂ったのだから直せるが、直してもまた狂う。より狂いやすくなる。
駄目なのは印をつけて箱に投げ込んであったが、先週全部解体して捨てた。ブラスの部分は切り取ったから、いつか何かに使うことになる。ステンレス部分は磁石に付くクロムステンレスであったので、鉄くず箱に入れた。

solid steel square 右にあるのは一体型のスコヤである。これに限る。元はイギリスで作られた形のようだが、今は中国製である。機械の精度で作られているので、どこで作っても同じである。価格は比較的安い。輸入してクラブ員に頒布して喜ばれた。総数100本ほど輸入した。ほとんどが、スーツケースで持ち帰ったものだ。

 一度手持ちのスコヤをチェックされたい。愕然とする人が多かろうと推測する。
このスコヤを希望する人が多いので、いずれ再輸入してみよう。
 
composite squares 捨てる時にタガネで根元を割った。驚いたことにスリ割りを入れただけで、刃型の丸味が見える。ということは両端でしか接触していない。当然狂いやすい。ハンダ付けしたこともあったが、またすぐ狂ったのはこのせいだ。

 X-1のベルトドライヴは、間もなく入って来る。写真が送られてきた。まじめな男で好感が持てる。


dda40x at 12:09コメント(2)工具 この記事をクリップ!

2017年12月07日

続 modifying tailstock

 いろいろなところに手を入れた。本来旋盤という機械はそういうものである。買っただけで性能を発揮できるということは無い。使う人が手を入れ、部品を手作りして、はじめて、性能を発揮するのである。この記事の機械はやや凝り過ぎだが、素晴らしいものである。

 大切な点は、スピンドルの精度である。ベアリングのガタがなく、心押台のセンタとぴたりと合えば、まず問題ない。その他の部品は気が済むまで改良していけばよい。改良用の部品は無数にある。昔はそれが何処に売っているのか見当もつかなかった。工具屋に行って聞いてもよくわからない。

 町工場の社長が一番よく知っている。友人の父君には色々なことを教えてもらった。様々な部品も貰って、それを加工して使った。アッと驚くテクニックもあって、勉強になった。
 最近「ミニ旋盤を使いこなす本」久島諦造著 を再度熟読した。ほとんどのことは頭に入っていたつもりだったが、チャックに入らない太いドリルでワークに孔をあける方法には再度驚いた。ゆうえん様が「パズルゲームのようなもので」とおっしゃったが、本当にその通りである。

 模型工作の蘊蓄を語る人は多いが、旋盤を持っている人は少ない。旋盤を持てば、人生観が変わるはずだ。少ない金額で、これほど楽しめるものはない。模型屋に行く回数は激減するだろう。

moving support  写真は自宅の旋盤で、転車台のシャフトを挽いている様子だ。自分で改造した移動振れ止めで支えながら、Φ40の砲金の棒を中グリしている。刃物も自作である。刃先の位置が、振れ止めの位置と一致するところがミソである。写真では拭き取った後でよく分からないが、ワークの外側にはグリースを塗って作業する。昔鉄砲鍛冶に手ほどきを受けたので、中グリは得意である。  
 シャフトは最大限に太くして、剛性を大きくしないと、回転橋の動きが珍妙になる。

2017年12月05日

modifying tailstock

tailstock2 テイルストック(心押台)は、既製品のままでは具合が悪い。繰り出し量が少ないから、何とかしようと思っていた。畏友U氏が同じことを考え、改造されたことを知った。左ネジを切った長い押し棒を作られたのだ。筆者も自分で作ることにし、材料のS45Cの丸棒を調達した。長いから、削るときに中間を移動振れ止めで押さえねばならない。その準備もして、左ネジを切る算段をしていたのだが、久し振りのことでネジ切りの歯車セットをどこにやったのか、思い出せない。
 もたもたしているうちに、U氏が作って送って下さったので、ありがたく頂戴し、嵌め替えた。ネジが長くなったので、MT-1のテーパ・シャンクが長過ぎる。U氏に教えてもらった通りにテーパ部を22mmとした。何で切ろうか迷ったが、結局のところ、Brass_solder氏のアイデアで糸鋸で切った。1本12分かかって、糸鋸刃は1本折れる。計算通りだ。

 この旋盤のテイルストックには他にも問題があった。繰り出しのリミッタを兼ねるネジが、こちらから向こうに、水平に押している。これではセンタの心が出ない。
 やはりU氏も同じことを考えられ、スリ割りを入れてネジで締める形にされている。早速、1 mm のスリ割りを入れた。鋳鉄だからと甘く見たのはとんでもない間違いで、切削油を大量に使っても、切るのは苦労した。後で油の処理が大変であった。

 肉が薄いのでやや心配したが、M5のネジを立てて、セレーションのついたネジで締めた。この方法では全体を絞るので、センタが出る。当然、締める座はフライスで削って平らにした。
 廻り止めを兼ねた繰り出しリミッタは、20 mmずらして先端に近いところにM4タップを立てた。短いネジを締めたら、それだけで一発で解決した。

modifying lathe 刃物台も、セレーションの付いたクランプネジで締めた。道具を使わなくても操作できるので楽である。よく使うところはこれに限る。目立つ色にしたのは正解だ。
 刃物台が鈍く光っている。軽く面取りを施し、ゴム砥石で研いだのだ。来たばかりの時はフライス目が出てザラザラであった。ザラザラだと錆びやすいのだ。 

2017年12月03日

共通点

 Tortoiseなどは常時通電式である。微弱な電流で動くモータを使っている。所定の範囲を動いて停まると、その先は、直列につながれた抵抗にほとんどの電圧が分配され、モータは単なる電線であるから、熱が出ず焼けない。50年前、父がアメリカ製のエアコンの電動弁をばらして、驚いていたことを思い出す。それは、Honeywellの製品であった。それは、いわば「電気的辷り」とでも言うべき方法である。

 要するに通電しても仕事にならない「辷り」を生じさせて、無視できるほど僅かな発熱を承知で使っているのである。その動作をメカニズムで実現したかった。共通点は「辷り」である。

 モータが動き、ラックとピニオンで所定の位置まで行って当たると、発生する推力によって軽く押し付けられている。
 電力供給が止まれば、逆に押されて戻るようにしたい。機械的辷りを作り出さねばならない。単純な摩擦式ではいずれ壊れる。電気的な処理方法はあるだろうが、筆者の方針には合わない。

 このメカニズムは、様々な図を描いて検討した。ノッチの向きもそうだが、直線で曲線を近似するのをやめて、外側にもう一つの回転するドーナツ状の板を作り、それから内側へトングが出る方法も考えた。しかし、それはあまりにも複雑で、摩擦が大き過ぎる。

 簡単にして、何十年も全く故障なく使える、というものでなければならない。今回採用のアイデアは15年ほど前に思い付いたのだが、なかなか使う機会が無かった。

 さて、どんなメカニズムであろうか。


2017年12月01日

推力を一定にする

versine 転車台のindex(割り出し装置)はnotch(切込み)にtongue(楔状のもの)を差し込んで行う。相手は回転するから、位相差はトングの長さに影響する。
 要するに正規の位置にあれば短いが、多少ずれたのを戻すので、その時にversineが無視できない。僅かな距離だが、それをバネで補うとエネルギィが溜まるから、中心に行きにくくなる。正規の位置から外れた位置の方が、安定だからだ。それではセンタリングが効きにくくなる。

 慣性で回り続けようとする重い円盤のノッチにトングが差し込まれた時、ダンピングが働き、軽くブレーキが掛かることも要求される。別部品としてエアダンパをいくつか作ってみたが、大げさであるし、動きも要求を満たさなかった。
 トングを差し込むにはネジ式、ラック式などの方法があるが、バネを介してモータで押し込むと、エネルギィが蓄えられてしまうのだ。外れた位置から元に戻るときは、復元モータが働くのだが、その時抵抗少なく(多少のダンピングを伴い)所定位置に行って欲しい。軽く、いつも一定の力で、押し込まれていてほしいのだ。この解決法はなかなか難しい。

 これらの諸問題を同時に解決する方法を模索していた。一つにはTortoiseに代表される常時通電式のポイントマシンを使うことだが、これは逆駆動が難しい。トータスのギヤトレインの効率が良くないし、そのモータは普通の有鉄心マグネットモータだからだ。より高効率のメカニズムはできるが、その後の保守などを考えると得策ではない。要するに、壊れようがないメカニズムが必要なのだ。

2017年11月29日

rack & pinion

broken plastic rack 春先に自宅のWashlet(TOTO製)が壊れた。比較的高級な機種(TCF815)で、購入して4年ほどであった。故障ではなく、壊したのである。最低だ。


 使用中に、バリバリメリメリと音がして、ノズルが引っ掛かって止まった。押しても引いても動かない。突き出したままだから、トイレは使えない。仕方なく安物を買ってきて、仮に取り付けた。外したものを営業所に送って修理してもらおうと思ったが、現場での修理しか受け付けないと言う。こちらの都合など全くお構いなしで、取り付けた状態しか駄目だと言うのだ。取り付けられている状況を見ないといけないと言う。
 何が知りたいのかと聞くと水圧、水質、電源、日照の有無、気温、湿度だと言う。すべての正確なデータを測定して送ったが、屁理屈を付けて、「現場で」と言い張る。
 再度取り付けたら、トイレは使えない。滅茶苦茶な方針を押し付けようとする会社だ。出張費が欲しいのだろう。見掛け上の修理費を安くする方便に違いない。押し問答の末、正確な訪問時間を決め、元に戻した。

 当日、修理を見ていたら、内部のノズル繰り出し装置がフレクシブルなラックであって、それが折れていた。疲労したのだ。それはプラスティック(多分ナイロン)のラックの中に編みワイヤを封入したもので、いかにも細い。座屈して折れるのは、当たり前だ。
「なんだ、設計が間違っているじゃないか。」と言うと、修理員は申し訳なさそうな顔をして、「この機種の修理はすべて無料でさせて戴いています」と言う。最初からそう言えば良いのに。リコールの対象であるはずだ。購入者に不便を強いている。
 代替部品はかなり太く、これなら折れないだろうという形であった。座屈発生というのは、設計者にとって最低の失敗だ

 こんな設計はダメである。今回の転車台のメカニズムの設計は、それを見たときの印象が、大きく影響している。


2017年11月27日

続 turntable indexing

ring gear リング状の歯車を作った。もちろん既存の歯車の内側を削ったのだ。ボス付きの歯車のボスを銜えて廻し、所定の半径に中グリをする。
 DROの無い旋盤で、中グリをするのは怖い。うっかり削り過ぎると失敗だ。もう余分の材料は無い。何回も寸法をチェックし、2/100mmずつ削って、滑り込みにする。ボスから切り離した瞬間に、このような状態になる。 これをパイプに嵌めてハンダ付けする。モータでパイプを廻すと、ラックが出入りするのだ。

 ラックによる伸縮はネジ式に比べると利点が多い。ネジは逆駆動ができないのだ。もちろん三条ウォームのように進み角を大きくすればよいのだが、そんなネジを作っている暇はない。ラックとピニオンなら単純なメカニズムだ。ラックは十分に丈夫な太さにして、転がり摩擦で受けている。ガタはなくした。

 今回作っている装置は、すべて逆方向に力が掛かると滑らかに戻る。インデックス(割り出し)の動作で所定の位相で停止するが、制御者の意思が働いていない時は自由に回転できる。制御にはリミット・スウィッチは使わない。スイッチがあると、いかにも機械仕掛けで動いています、という感じを与えるからだ。つまり、玩具っぽい動きになる。本物はとても重いので、カチンカチンと動くことは無いのだ。あたかも人間がそこに居て、動かしているような感じを与えるような設計だ。

 要するに人間が意思を持って押しているような動きである。力を入れて所定の位置に持って行く。そこで力を緩めると、別の力が掛かっている時は、逆に動き始めるのだ。言葉では説明しにくいが、試運転を見た人は非常に驚き、「機械の動きのようには見えない。」という言葉が出た。

 すべての機構は、2度作り直した。

2017年11月25日

セレーション

tailstock 旋盤、フライス盤の整備を続行している。様々な留めネジをレヴァ式に改造している。六角レンチで毎回、締めたり緩めたりするのがとても面倒だからである。
 フライス盤の場合は、その位置にDROを付けたのでレンチが入りにくい。ネジの当たり面が浅いところにあるときは、座面を相対的に近づける必要があり、座面を削った。鉄鋳物だから、簡単に削れる。

locking lever この種のレヴァは作動位置を選んで、一番都合の良いところにネジの位相を決められる。締めるのは角度で30度くらいの範囲だから、その範囲が手の届きやすい向きにあれば、邪魔にもならず好都合だ。

 中のネジ頭の外周には刻みがある。これをセレーションという。綴りは serration である。大昔にその言葉は父から聞いたが、綴りを知ったのは30年ほど前である。語源は、ラテン語の鋸だ。シエラ・ネバダ山脈の Sierra とも関係がある。スペイン語でシエラは鋸、ネバダは雪である。雪の積もった鋸山という意味だ。
serrationserration2 要するにギザギザがあって、レヴァの内側にもそれと噛合う内歯がある。バネで押し付けられているから、それに逆らって持ち上げて位相を変える。ギザギザの歯型は、当然インヴォリュートではない。

 似たもので、スプラインがある。 splineは、軸上で動力伝達を行いながら移動する場合である。様々な歯型があり、最近は多数のボールを用いて滑らかに動くものもある。インボリュートもあるようだが、星型とか、六角とかいろいろなものがある。 
 
locking lever2ZAMAC 最近自宅のフライス盤の留めネジが壊れ始めた。シーズン・クラックである。使おうと思うと、割れて下に落ちている。4個のうち2個が壊れた。力を入れたときに壊れたわけではない。

 中国製だからということもあるだろうが、ダイキャストは信用できないことが分かる。最近の中国製の鉄道模型はどうなるのか。ダイキャスト製はいずれこのように割れてしまうのだろうか。


2017年11月23日

等角逆捻り機構のあり方

 先回で、T氏による解説が終わった。
 客観的であって、自説を売り込もうとか、俺は専門家だぞ、というところが全くない素晴らしい考察であったので、掲載させて戴いた。これで、この範疇のことは一応の決着が付いたように思う。小難しい学術用語は極力排除して戴いてあるので、誰にでも読めると思った。
 本来、こういう原稿はTMSに載せるべきであったが、もうすでにそういうこともできなくなりそうだ。

 過去に何回も論じたことだが、イコライザとバネは切り離して考えるべきである。議論の前に、ルールを決めなければいけない。自分の都合の良い方向に話を持って行くために、異なる次元のものを持ち込もうとする人がいるからだ。

 弾性梁というものを持ち出したい人もいるが、それは「バネ」と「イコライザ」を同時に用いている。
 世の中のどんなものも、完全な剛体ではない。しかし剛体と考えて理屈を考えようと言っている。その部材は多少撓むのなら、そのファクタを、別に「バネ」として考えるべきだ。しかし、模型のように小さなものは、事実上剛体として考えて良いのである。ヤング率が一定だから、モーメントが小さい時は曲がらないと考えて、何ら問題ではない。
 「バネ」は曲がるような形に作られている。コイルバネをよく見て戴きたい。細かく見ればよく分かるように、原理はトーション・バーなのだが、それを極端に長くしてあって、微小区間での捩じりは目に見えない。しかし全体では、その総和としての伸びが観察できるほどになっている。

 さて、天秤棒…は作ってみるまでもなかったが、簡単な実証モデルを作ってみた。作動状況は極めて良くなかった。「使い分け提案」にもあったように、車体の慣性モーメントの小さな、軽いモデルには使えるのかもしれないが、Oスケールでは全く駄目である。車体がプルプルと小刻みに振動し、おもちゃ以下の状態である。
 バネで台車を留めた車輌は、この天秤棒…と力学的に等価であるが、調整すれば良い走りを示すし、揺れ加減も具合が良い。ダンピング(振動を減衰させること)のおかげである。
 普段ダンピングを考えない人は多いが、それは摩擦の多い模型が大半だということの裏返しなのである。摩擦を減らすと、ダンピングが必要であることが分かる。
 理屈をこねるばかりでなく、実証モデルを作ってみられたい。しかし、それをしない人が多過ぎるのである。実験は大切だ。 

 コメントを寄せて戴きたい。

2017年11月21日

第6章 各種等角逆捻り機構の使い分け提案

(8回連載の8回目)
 最後に、ここまでの考察を通して各機構の使い分けについて考察します。なお、ここでは「ロンビック」を強制的に等角逆捻りさせるリンク機構の代表としています。魔法使いの弟子ヨー軸シーソーの方式もロンビックと同等でしょう。

 それでは、
ロンビックイコライザ(以下
Rh式と略)」
フカヒレイコライザ(同
F式)」
ロール・トーション・バー等角逆捻り(同
RT式)」
ピッチ・トーション・バー等角逆捻り(同
PT式)」
4
つについて考えます。

 Rhは基本的な原理が確立していますし、ガタや弾性変形を伴う動きが無いので、等角捻りを必要とする任意の車輌に搭載できると思います。

 次にFは図3のように斜め軸を回転軸としているので、厳密にはロール以外の運動が含まれてしまいます。そのため、ボギー車の場合、台車の回転に伴って、回転軸と台車ピッチング軸の成す角が近付くと、レイルのピッチングの影響を受けやすくなります。この条件になるのは、全長が短く、車幅の大きい(つまり回転軸がロール軸に対して大きな成す角になる)車輌で、しかも台車の回転角度が大きい、つまり急カーヴを曲がる車輌の場合と考えられます。これはちょうどナローのカブースなどではないでしょうか。このような車輌ではFはピッチングの影響を受けやすいと推察します。

 RTは、既に説明したとおり、軽量の小スケール車輌に簡単に組み込むのに向いていると思います。ボギー車の場合は、台車回転軸がロール以外の動きをしないように、何らかの形で拘束しないといけないでしょう。捩じりバネだけで輪軸を支持するには帯板の使用が有用と思われます。根本的には短編成に用いる二軸車に使用する簡易な方式だと思います。

 PTも前述のとおり、ピッチ剛性が弱いので全長が短い車輌が向いていると思います。あえてピッチングを弱くするのも、動きに面白味を与える上では良いかもしれません。

 最後に、これらの使い分け案を表1にまとめて掲載します。

表1 各等角逆捻り機構の使い分け案まとめ


 

名称

 

提案名

 

原理

 

動作

確実性


工作性(上)

調整性(下)

 

考察結果

ロンビックイコライザ
リンク式強制等角逆捻り全般)

リンクによる
強制ロール等角逆捻り



○〜△

工作が可能ならば全般的に良好

フカヒレイコライザ

上記を簡易化し、
バーサインを、
リンクの小さなガタで
巧妙に吸収



台車が大角度で回転する小型ボギー車には懸念有り

天秤棒イコライザ

ロール・トーション・バー等角捻り

バネ釣合による
ロール軸等角逆捻り


○〜△


小型二軸車などに容易に設置可

90度捻り天秤棒

ピッチ・トーション・バー等角捻り

上記のピッチ軸版



短尺小スケールの
二軸車等に有用



2017年11月19日

第5章 輪軸の弾性支持に関する考察

(8回連載の7回目)
 輪軸の弾性支持(要するにバネを利かせること)は、小型模型では【質量 バネ定数】の比率が本質的に実物と同値にできない上に、輪軸の変位が実物よりもはるかに大きいため、非常に難しい課題です。

 見掛けの動きだけを実物的に見せるのであれば、変位を最小限に抑える非弾性支持の等角逆捻りで良いと思いますが、ジョイント音や弾性的な動きに魅力を感じる様でしたら評価が全く異なると思います。ちょうど中間的ないわゆる「天秤棒イコライザ」、ロール・トーション・バー等角逆捻りは、ロールだけを弾性支持にしたものですので、ワークス
K氏の言うように「軸座バネ式の自由度を減じたもの」でしょう。こちらはイコライザ同様に変位を最小化可能であり、バネ長が長いため比較的大きなロール角度の変位に対応できるというメリットがあると思います。

 また、
HO程度の小型模型で輪軸を弾性支持にする場合、実物のバネを模した物をあきらめて、実物よりも細くて長いものでなければ、輪軸可動の効果を得ることは困難でしょう。その意味でも「天秤棒」のような長いバネは小型模型用には使いやすい構成です。例えば長いバネ2本をちょうどレイルと平行に床板下に這わせて、それで前後の輪軸を支持し、その2本のバネの中点で車体と結合するなどの応用もあると思います。



2017年11月17日

第4章 ロール軸の高さに関する考察

(8回連載の6回目)
 ロール軸高さの議論は、第1章で考察した通り、実車は車輌全体の図心軸を中心に捩じれますので、実車の近似的再現という意図であれば、回転中心は床上よりさらに上でも構わないと思います。ただし、模型としての機能性を考えますと、ワークスK氏の提唱される線路面と同一高さにロール軸を置きますと、車体の「レイル面に対する移動量」(地上座標系での車体変位)を最小化できます。(純粋な輪軸のロールのみなら重心高は変化なし=仕事しない)
 
 したがって、模型の線路に存在する大きな誤差に対しても、不自然に大きな車体の揺れを低減できると思います。また、コン氏が提唱されるロール軸を車軸高さ(輪軸のロール方向の図心)とした場合、車体と「輪軸との位置変化」(輪軸上に置いた座標系での車体変位)を最小にできます。なお別の視点から見ますと、ロール中心高さが連結器高さと大きく離れていると、連結運転で重牽引している際に曲線(特に登り勾配)で連結器からロール方向モーメント成分が大きく生じるので、ボディーが倒れやすくなる懸念があります。特に弾性支持の場合が気になるのですが、ロール・トーション・バー等角逆捻りでは床板近傍にロール軸(トーション・バーそのもの)があるので、連結器からのロール・モーメントが小さくなり問題は少ないでしょう。

 また逆説的に、ロール軸を高くするほど線路の誤差に対して車体が大きく変位するので、自由形などでは、あえてロール軸を高くして、フラフラ、ユラユラとユーモラスな走らせ方をさせることもできると思います。つまりロール軸高さは車輌に与えたい特性や工作性を考えて個々に判断する要素ではないでしょうか。



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