2022年12月10日

ABS の劣化

Pullman-Standard 60ft boxcar kit by US Hobbies 思わぬものが見つかった。1970年代に購入したプラスティック製のキットである。50 ftの Boxcar でPULLMAN-STANDARD の当時の新車だ。製造元は US Hobbiesであり、Kemtron の社長ケマルヤン氏がMax Grayの会社を引き継いで作った会社だ。彼は1976年に亡くなったので、その直後の在庫一掃セールで買ったような気がする。これも安価だったので、ほとんど記憶に残っていない。冷暗所にあったので、劣化していないと思った。しかし箱を開けて細かい部品を手ではずそうとしたところ、ランナの方が折れた。これは要注意のサインで、薄刃のカッタで切り離した。

LDLD2 全体にもろくなっている。実はほぼ同型をもう一輌組んだのを持っている。それを参考にしようと紙袋に入れて持ち帰ったが、自室で紙袋が破れた。ほんの30 cm弱だが、木の床に連結器から落ちた。 

time-related deterioration この連結器はバネで実際に縮むように出来ており、十分な緩衝力があるから壊れるはずはないと思ったが、妙な音がして連結器の付け根付近から折れてしまった。素材が劣化しているのだ。これは接着剤では直らないから、その縮む部品をブラスで作り直すしかないと覚悟した。
 上記リンクの貨車は自作だからエア・ダンパがついているが、このキットにはそんなものは無い。押し込むと、手を放した瞬間にぴょこんと飛び出すが、適度な摩擦でそれほど速くは飛び出して来ない。

 このキットを組み始めたが、やはりもろい。大きな部材は安心だが、細いものは割れてくる。直ちに溶剤で溶かして付けるが、期待はできない。可塑剤が加水分解されている可能性が高い。細かい部品はブラスで作って差し替えるしかない。  

 当鉄道にはプラスティック製のものは少ない。経年劣化が予想されたからだ。いずれこのように割れてくると確信したのだ。ABS製と書いてあってもこの程度である。たった40年でこの調子だから、この先どうなるのだろう。
 非常に虚しい。これは読者諸氏のプラスティック製模型の未来を暗示しているのだ。結晶性でないプラスティックは、全て同じ運命をたどる 

2022年12月08日

covered hopper を仕上げる

 天気予報を見て、塗装の準備をした。とりあえず3輌を塗ることにした。磨き砂で洗って皮脂を取り、エアコンの吹き出し口に置けば、朝までに完全に乾いている。ミッチャクロンを吹いて、べとついているうちに塗るのが骨(こつ)らしい。

painted 3輌の貨車を裏返しに置き、回転させながらどの角度から見ても塗り残しがないようにする。横に向けて斜めに保持し、同じように回転する。最後に正置して屋根の部品の隙間によく入るようにし、全体に薄く塗って出来上がりだ。この種の貨車はとても塗りにくく、手間がかかる。

 天気が良いので、輻射熱で 40℃ 位になるから、夜まで放置すると固まる。

BORAXO covered hopper ディカールはF氏が譲ってくれた。このBORAXOのディカールは、今では貴重品である。長年探していた。古くなっているので、膜を厚くする薬品を塗ったら、少々厚くなり過ぎて、浮き上がった。細かく切れ目を入れて再度ソフナを塗ると落ち着く。適度なウェザリングを施すと出来上がりだ。この当時は連結器にも塗装をしていた。現在は法律で連結器、バネ、車輪、車軸、枕梁等への塗装は禁止されている。ヒビを見つけやすくするためだ。

2022年12月06日

covered hopper に手を加える

covered hopper (2) 先日の記事で紹介した貨車である。ホッパの裏には ”かすがい” があるがそれが何の脈絡もないところに付いている。このかすがいはホッパの滑り板を撓ませないように、骨を支えているのだ。骨としてアングルを斜めに切ってハンダ付けした。 
 本物は鋳鋼でできた丸みを帯びた部品で出来ているが、そこまでは凝らないことにした。

 HOとは異なり、相手の板が厚いので炭素棒で付けた。狭いところに手が4本要るような面倒なハンダ付けだ。ハンダを余分に塗っておいて炭素棒で融かして固定する。汚いのはそのせいである。さっとキサゲで仕上げれば、全く問題ない。下側だから、そのまま塗ったとしても誰も気が付かないだろう。当鉄道では横から見えるものしか付けない。 

brake arm 貨車はシルエットが大切である。横から見たときに透けて見える部分に何らかの造作が見えるだけで、俄然実感が増す。正確である必要はない。それらしく影になって見えるだけで良いのだ。
 ブレーキ・アームとその支え板も、それらしく作ったが、覗き込むと正確には作っていないのが分かるかもしれない。それで良いのだ。ここに何もないと、非常に不可思議な感じがする。筆者は実物を見た印象が残っているから、余計に感じるのかもしれない。この斜めの支え板は引張りしか受け持たないので、薄い板である。

2022年12月04日

ニュートン を使う

 測定された値は誰でも認知することができる単位系で発表されるべきである。
「何ニュートンですか?」との質問には、「ニュートンはわかりません。」という答であって、愕然とした。

 世の中がcgs単位系からMKS単位系に切り替わったのは一体何十年前だろうか。最近は車のタイヤの空気を補充に行っても、パスカルを理解しないと入れられない。

 1 Nの大きさを知るのは物理教育の大事な局面だ。小さなリンゴを探す。100 gほどの小粒を紐で吊り、その紐を滑車で90度曲げて横から引く。これが1 Nだ。滑車を使わないと縦方向の力で、「質量」の概念から逃げ切れない。横に引けば、「力」であることが誰でも分かる。
 100 gのリンゴはあまりないので、ミカンで良い。ニュートンがリンゴが落ちるのを見てニュートン力学を構築したという故事に絡めているだけのことで、リンゴを題材にしたのには大した意味はない。

 現在、ニュートンを理解しない人は、すでに現役の世代にはいないはずである。”グラム重” を使っているのは、定年退職者以上の世代であろう。これでは消え去っていく老人のお遊びで終わってしまう。我々は次の世代のために、基礎を作っておかねばならない。そのためには、測定に対して正しい理解を持つことが不可欠である。

 前々回紹介したような怪しいグラフを見ると、測定について理解していない人は何か意味があるかのように取ってしまうかもしれないが、そこには何もない。鉄道模型誌にも正しい物理的理解を助ける記事が必要である。1年ほど前に載った牽引力を調べたという表も意味不明であった。
 
 雑誌には、正しい情報を載せるべきである。能力ある方を査読者にするように強く働きかけるべきである。


2022年12月02日

続々 測定をするということ

 前回のグラフは、いくつか机を並べただけの凸凹のある線路上で採られたものだ。曲線の半径も不明だし、その材質も明らかでない。レイル面が研いであると信じたいが、そうではなかったという情報もある。機関車のタイヤはよく洗ってあるのだろうか。こうなると何をしているのか、本人もわからないだろう。多分、言いたいことは、「張力計を入手したので、テレメータ化しました。」だろう。すなわち、これは測定ではない。牽引力を調べたいなら、平面上で連結器と車止めを張力計で結べばそれで解決だ。効率なら、標準貨車を牽いて斜面を走らせる必要がある。曲線抵抗は別の話題である。

 筆者は小型機の伝達効率を調べる時、サンプルとなる標準列車を用意した。20輌の質量、台車、車輪、潤滑剤は全く同一である。質量はすべて355 gにした。それらを斜面を滑走させて平坦線を転がし、その到達距離がほぼ同じであることも確かめてある。

 均一な斜面で引き上げるときの張力を測定するのだ。目盛りは動かず、一定値を示した。速度も一定値である。このような状況でないと、何の意味もない。効率という概念がわからないまま、「調べた」という記事もどこかで見たような気がする。 

 均一な斜面を作るのは大変であるが、正しい測定値を望むなら、やらざるを得ない。先日OJゲージの方から相談を受けた。アルミアングルで補強して線路を作ったのだが、少し撓むという。見るとまずい設計だ。

反らせない工夫 この図の 水平部分は、ほとんど剛性の増大に寄与していない。どうせなら、平角板を路盤側面に貼るほうが良い。ここで合板を厚くしても、ほとんど意味はない。 
 さらに、ここでアルミ材を使うのは賢明でないことにも気づかねばならない。鋼板は安くて堅いから、それを用いるべきである。アルミはヤング率が鋼の 1/4 ほどしかない。薄い鋼板を横からエポキシ接着剤で直接貼ってしまえば良い。鋼板なら薄くても十分だ。縦の長さの3乗で効く

2022年11月30日

続 測定をするということ

 その実験は何が目的なのか、を考えない人は実験をしても発表する意味がない。見せられても当惑するだけだ。

ある”測定値”「牽引力を調べる実験をしました」とあるので見ると、こんなグラフがあった。これを見た瞬間に読もうとする力が萎えてしまった。これが結論だそうだ。このグラフは張力測定器を貨車に積んで、出てきた値をコンピュータの画面に出しただけのものである。これは多次元のファクタが ”ごった煮” になったもので、この中から牽引力の次元の測定値だけを取り出すのは極めて難しい。だからと言って取り出さずにそのまま見せて良い訳はない。
 このグラフは単に、「スウィッチを入れました」というだけのものである。中学生にノギスを持たせて、何かの大きさを計測させると、とんでもない”測定結果”を持ってくる。それと大差ない。

 測定というものは難しいものだ。筆者は測定の専門家だったこともある。他分野でそれをしていたが、かなりの熟練が必要だ。
 あるデータを取ろうと思うと、最初にやることはまず2つある。
・ゼロ点が出るか。(これはそれほど難しくない時代になった)
・化学で言えば、基準物質を作り、そのデータが必ず毎回同じになるかを調べる。もし結果がずれていれば、何がそのずれの原因なのかを究明せねばならない。基準物質のみならず、計測器の誤差も考える。

 後者は非常に難しい。その基準物質を精製し、安定に保存するだけでも一苦労だ。この模型の場合で言えば、牽かせる車輌が完全な平面上でどの程度の抵抗があるのかを測定することである。10数輛を牽かせていたようだが、個別のデータを取る必要がある。それをどのようなつなぎ方をしても一定の張力で一定の速度を保っているかを調べねばならない。むしろ、機械ブレーキを積み、一定の摩擦力で抵抗を作り出すという手を用いれば1輌で済むから簡単であろう。

 連結器のナックルというものは意外に撓みやすく、張力を掛けると多少伸びる。すなわち列車には固有振動数があるのかも知れない。激しい乱高下が示されているが、そのファクタが無視できない可能性がある。このような測定をしたいなら、測定用の負荷を作り出す専用列車を仕立てる必要があるだろう。多数輛による列車であるなら、連結器はガタのない剛性の大きな材料を使用すべきだ。 
        (この項続く)

2022年11月28日

測定をするということ

 測定というものは、その結果がどうなるかを予測して行うものである。結果が見当もつかないものは測定できないのだ。

 最近の話題では牽引力を測定するという事例があった。牽引力を縦軸に、時間を横軸にとると、どのようなグラフになるだろうか。出発時は牽引力をゼロとする。次の 4つの中から選んでみよう。

4つのグラフ ここで大半の人は B を選ぶはずだ。停止している機関車がゆっくり動き始めると連結器がピンと張り、列車が動き出すだろう。他のグラフでは、その数値が表す挙動を考えると、そんなグラフはあり得ないと思うのが普通だ。       

 こうして B のグラフを予測して実験し、それから外れるようなら何がその原因なのかを調べねばならない。測定値が負であれば、線路が水平でないとしか考えられない。測定値が一定値で動かなければ、定常状態である。定常状態を作り出すにはどうしたら良いか、も考えておかねばならない。
 ここまで読むと、「思った通りの結果が出るように実験する」と勘違いする人が出てきそうだが、それは捏造であって論外である。
       (この項続く)

2022年11月26日

慣性増大装置の今後の展開

 先日のKKCの会合で披露された3種の慣性増大装置についていろいろな意見を頂戴している。否定的な意見はないが、「HOの作例が思ったほどではなかった。」という感想を戴いた。

 作者のT氏も認めているように、小さなものは本物の挙動との乖離が大きくなる。慣性モーメントは大きさの関数であるので、小さくなると極端に不利であり、一方、摩擦というものは小さくしにくい。ボールベアリングは摩擦を減らすと信じている人も多いが、中のグリースの撹拌抵抗は無視できない。また、軸の径はそれほど小さく出来ないので、相対的に抵抗は大きくなる。
 それでもある程度の効果は見られ、この動画でもそれは分かる。

 摩擦を減らす工夫が必要であるので、ある方法をヒントとして差上げたところ、たちまちそれを実用化する方策を立てられたようだ。楽しみである。  

2022年11月24日

ジャンクの再生

junk covered hopper この貨車は30年以上も、このままの形で放置されていた。ホッパ下部の部品がない。それだけを直せば良かったのだが、特殊サイズのチャネルが必要で、それが仕事を億劫にしていた。一念発起して部材を作り、その他の細かい部品を手作りした。もちろん連結器と背骨を結ぶ部材は、1.5 mm厚である。こうしておけば、ガシャンと連結しても全く安心である。

 カヴァド・ホッパというものは立派に見える貨車で、いつも何のディカールを貼るべきかと迷う。特にこの側面が三角に空いて居るタイプは1950年代のデザインであって、珍しい。すなわち、そのタイプを採用した鉄道会社は少なく、塗色、文字、ロゴなどすべて特殊である。手持ちのディカールの中で適合するものは少ない。アメリカの市場で探すのだが、思うようなものは見つからない。 

 この貨車は落下品らしく、細かい部品が紛失し、屋根が少し凹んでホッパが壊れていた。屋根は外して裏から押し上げると、ほとんど気にならない程度に直る。
 貨車というものは、実物もあちこち凹んでいることが多く、全く気にならない。伊藤 剛氏のおっしゃる ”Authentic" である。

 いくつかのディテール・パーツを作って足すと、世界で1台のカスタムモデルになる。こういうものをアメリカからの客に見せると、よだれを垂らす。複数あれば、1輌進呈すると飛び上がって喜び、次回行くと最大の歓待をしてくれる。


dda40x at 11:24コメント(0)貨車 この記事をクリップ!

2022年11月22日

新車のロールアウト

 しばらく前から用意してあった貨車を塗った。このところ天気が良いので、順次塗っている。ミッチャクロンのお陰で、そう簡単には剥げない塗りができる。

UP wartime composite hopper これは先回の記事で、天地逆に転落したと書いたものである。ありがたいことに、ほとんど被害はない。
 これは1942製のwartime composite hopperである。直訳すると、「戦時型・複合材料ホッパ車」である。要するに、鋼板を節約するために、木板で囲いを作ったわけだ。滑る部分は鋼板でないと滑っていかない。安達製作所製である。本当は1944年製にするべきだったかもしれない。

B&O wartime composite hopper これは連結器を下にして落ちたが、トリップ・ピンが僅かに曲がった程度で、他には全く傷がない。
 これもwartime emergency composite hopperである。このように「非常」という言葉を入れることもある。アメリカとは言えども、材料の節約はかなり徹底して行われたようだ。連結器から、斜め上に、ホッパの滑る部分を支える支柱がある。ここを補強すると、今回のような事故に耐えうる車輌になる。

WIF boxcar これは1949年に塗ったことになっている。西インド諸島果実航送鉄道である。フロリダとハヴァナを結んでいた。実物を見たわけでは無いが、筆者の好きな絵柄だ。northerns484氏の作図とDr.Yの作成による特製ディカールである。大きなものを貼るとき泡が入らないようにするのは、かなりのテクニックが必要である。同型をあと2輌作っている。

 塗り立てを持って行ったので、まだウェザリングを施してない。   

2022年11月20日

転落事故

 慣性増大装置の実演をしている時に2輌のOゲージ貨車が落下した。線路の末端の車止めに雑誌が広げて置いてあり、貨車が乗越え易くなっていたのだ。ジャンクから組直したもので、もとは事故車を安く買ったものである。そのジャンクは衝突事故で、両端が潰れた状態であった。連結部がめり込んでいたのだ。壊れやすいのは背骨の末端の連結器がついている部分である。板が薄くて座屈していた。そのあたりをすべて切り離し、新しく部品を作り、組み直した。

fixing reinforcement in the spine その部分に1.5 mmの厚板を貼り重ね、連結器の付く部分だけを、フライスで0.3 mm削り落とす。厚板は背骨の溝の中に完全にハンダ付けする。これは炭素棒でないと無理である。こうすると極端に丈夫になる。もちろん上下左右には細かい骨で支えてある。たっぷりのハンダを付け、接合部の隙間には完全に流し込む。この種の仕事はコテでは難しい。既製品では、このあたりのハンダ付けがチョイ付けであるから弱いのだ。全面的にハンダが流れるようにする。連結器はエポキシ接着剤で付ける。接着は剪断力に対しては強い。重しを掛けて、接着剤層を薄くするのが秘訣である。
 事故直前にご覧になったTMSの名取編集長が、
1.5 mmですか!?」と驚かれたが、「必要なのですよ。」とお答えした。  

 今回の事故の1輌は連結器を下にして垂直に落ちたようで、Kadeeのトリップピンがわずかに曲がっていた。もう1輌は完全に裏返しで落ちたようだ。上面にかすり傷があった。 
 前者は事実上被害なしである。後者は、タッチアップして補修完了である。Pタイルの床には傷がついたかもしれない。
 
 奇しくも、事故によって頑丈さが立証された。何人かから、どうして壊れなかったのかという質問があったようだが、この程度の答で良いだろうか。この種の貨車は引っ張りには十分強いが、圧縮には弱いので、そこを補強するのがミソである。既製品の構造ではとても足らない。当社の貨車はすべてこの仕様で作られているから、かなり荒っぽい連結作業にも耐える。 

2022年11月18日

続 慣性増大装置

 この動きについて、いろいろな人から感想を戴いた。実物の鉄道の慣性の大きさ(すなわち、摩擦の少なさ)には改めて感じ入るものがある、というものが多かった。

HO gauge momentum emphasizer これはHOゲージ用である。T氏が作ったものだ。最初はこの径の材料を挽く旋盤がなかったので、5円玉を重ねて作った。次に筆者に連絡があったので、ちょうど良い材料を挽いて差し上げた。軽く動くが、如何せん、小さいので素晴らしい効果と言えるほどではない。しかし、1 mほどは惰行する。
小形の4-4-0あたりに牽かせると、逆回転ブレーキを実現できるはずだ。
 設計をさらに工夫すると、もっと軽く動くようになると思う。

 今回は大型のマウンテン(4-8-2)しかないので、とてもその慣性を実感するほどのことは出来なかった。そのマウンテンはHO用の高効率ギヤを搭載し、極めて滑らかに走る。低速も高速も自在で、しかも静粛なことこの上ない。

 ある人が見ていて、走行音がしないのには驚いたようだ。高効率ギヤの組見本を触って、その滑らかさ、静粛性に感嘆した。押したときの感触にも驚いたようだ。
まがい物とは全く違いますね。モータが付いていないような感触です。」
と言う。実際には押すと発電してライトが点く。

2022年11月16日

慣性増大装置

 13日のKKCの総会で、3種の慣性増大装置を披露した。

 OゲージはいつものFEF4ではあるが、例の「逆起電力キャンセラ」を追加搭載している。逆回転ブレーキが、熟練しなくても出来る様になった。等価慣性質量は170 kgで変化はない。

G gauge momentum emphasizer 今回はA氏にお借りしたGゲージの補助テンダを披露した。質量は約 5 kgだが、等価慣性質量は 700 kgである。要するに軽自動車ほどの質量を、摩擦の非常に小さな台車に載せているのと同等である。押しても動かない。しばらく力を入れていると、少しずつ動き、止まらない。長さ5.4 mの線路をゆっくりと端から端まで転がった。ギヤはOゲージ用の高効率3条ウォームである。全く無音で動力採取、放出が出来る。チェインは2本掛けで、計4本ある。2本ではとても持たない。各2本を、位相を半分ずらして取り付けている。本物のような鋼製のチェインであれば、このようなことをすると直ちに壊れるが、この模型のチェインはPOM製で少し伸びるのだ。だからこの形が音の点で最良となる。 

 A氏は自宅庭に敷いた線路で運転しているが、この車輌は実物換算350 mの惰走をしたそうだ。曲線上の記録であるから、直線なら実際はもっと走るはずだ。

2022年11月14日

乗越カルダン

乗越カルダン 電車の台車を作り始めた。近鉄電車はもともと大好きであったので、それを作らないかという誘いに乗ってしまったわけだ。

 台車は当然3Dプリントで、ナイロン製である。適度な細密性を持ち、最高の動力性能を持たせることが狙いだ。こういうものは試作が重要である。3D図面の上で検討しても、思わぬ伏兵があるものだ。これは3次試作品である。ようやく、他人に見せてもあまり恥ずかしくない形にはなったが、まだまだである。

 乗越カルダンで、1軸伝動だ。これで2輌牽ける。もちろん相手が「Low-D + ボールベアリング装荷」の場合だ。両軸モータであればその倍ということになる。例のジョイントを使っている。これはやや怪しい作りのジョイントで、角速度がどのようなグラフになるのかと問い合わせたところ、「わかりません」ということだった。要するに考えていなかったのだ。当初のカタログには「等速」と謳っていたので、それは削除すべきであると伝えた。
 とりあえず、前後対称に曲がるように使えば等速になるはずではある。
 

センタピン保持 センタピンは軸を通すので二股になる。それも3Dプリントで作ったが、底に孔があいているので弱くて、加工中に割れてしまった。とりあえずブラス片からフライスで作ったが、手間がかかるものだ。改良品を発注する。

2022年11月12日

銀ハンダ

 銀ハンダのことをここに書いても、実用化する人はほとんどいなかったようだ。最近このブログで拝見し、心強く思った次第である。
 筆者は銀ハンダを多用する。それは温度差を利用して、細かい部品が落ちないようにするためである。もちろん、硬さを利用して、間違った孔の埋戻しに使う。小さなブラス片を押し込み、塩化亜鉛を塗ってガスバーナで炙れば良い。ロストワックスの鬆(す)を埋めるときも使う。
battery lid 銀ハンダというものは、あまりうまく流れてくれない。ガスバーナで焙ってもこの程度である。すなわちこれを使う限り、ハンダで埋まってしまうということはまずないのだ。



 この部品は、ディーゼル電気機関車の脇のデッキ上にあるバッテリィ・ボックスの蓋である。ラッチを立てて引き上げるようになっている。ここが単なる歩み板では面白くない。思い付いて孔をあけ、裏からロストワックスの部品をはめた。この部品は売るほどあるのだ。孔を正確にあけなくても、バーナで炙って裏から銀ハンダを押し付けると、適当に流れて孔の隙間が埋まる。その時、細部が埋まってしまうことはない。このときの裏の盛り上がり具合をご覧になると、流れにくさが実感できるはずだ。63%を用いると、一瞬で裏に廻ってハンダが全体に均一に付いてしまう。上の部品は部品がまっすぐ付いていないことに気が付いてやり直した。

 こうして出来た部品を炭素棒で所定の位置に取り付ける。強く加熱しても、細かい部品が落ちることはないから気楽だ。 


2022年11月10日

続々 ある装置

 先に写真で示した装置の一群は、トランジスタを組み合わせたもので、作動することは作動するが、起動電圧が低くはない。3 V程掛けないと動かないので面白くない。1 V以下で起動するようにしたかった。  
 しかもトランジスタは抵抗器でもあるので、多少の発熱もあるから良くない。その後開発されたものはSCR(Silicon Controlled Rectifier) を使っている。通称サイリスタ(Thyristor)である。
 はじめはそれと等価なものをトランジスタの組合わせで作ったのだが、損失が無視できなかった。定数を変化させて効率の良い部分を探したが、SCR にはとても敵わなかった。

 SCR は発熱が少ないから放熱板は要らない。ゲートが on になれば、そのまま導通を保つ。回路は、ある程度詳しい人なら、たちまち分かるであろう。原氏の電車類にはこれが大量に採用されているはずだ。

 筆者は機関車を改良していたので、この装置は使っていない。フライホイールをモータ軸に付けたものをこれで廻すと、確かに惰力でよく廻り、止まりにくいが。それは鉄道車輌の本来の動きではない。動力車は慣性モーメントが小さくなければならないのだ。
 付随車に十分な慣性を与えるべきである。


2022年11月08日

続 ある装置

 昨年のKKCの総会で、筆者の慣性増大装置付きの機関車を披露した。短い線路の上でまずまずの走りであったが、電源装置に問題があった。中点OFFなのだが、惰行させるには線路が短か過ぎて、操作が難しい。ところが、この逆起電力キャンセラを搭載すれば、何も考えなくても、惰行の途中で逆転ブレーキを掛けられる。テンダに内蔵されたフライホィールからのエネルギィ放出を、動輪の逆回転で行うことができるのだ。これは今までは、かなり広い場所でないとできなかったのだ。
 秋のKKC総会でそれを披露することになった。

 機関車自体はほとんど見かけ上の変化はない。あと、HOの機関車に3条ウォームを搭載したデモンストレータを持っていく。現物を触って、その効果を確かめられると良い。内野氏の作品も高効率ギヤに取り替えてあるものを持っていく。

2022年11月06日

ある装置

BEMF canceler この装置は1984年に作ったものだ。試運転だけしてそのまま放置され、埃にまみれていたのを洗ってみた。
 
 当時、筆者と祖父江氏は、走りの改善に血道を上げていた。たがいに、思いつくすべてのことを実験した。どんな些細な思いつきでも報告しあい、可能性がないか探っていた。その中で祖父江氏が、芦屋の原邸で電車を走らせているのを見て、問題点を報告してきた。コアレスモータ + スパーギヤでよく走るのだが、惰行が良くない事がある。
「スロットルを下げると減速してしまうんだぁ。中点オフの逆転スイッチで回路を遮断するとうまくいくんだけどね。なんかうまい工夫がないもんかい?」
と聞いてきたのだ。電源装置の中でモータの発生した電力が喰われてしまっているというわけだ。

 要するにモータの逆起電力を遮断することができればよい。印加電圧より発生電圧の方が高いときは回路が切れればよいわけだ。様々なことを考えたが、友人の電気マニアが考えた回路が一番簡単であった。早速作って試してみた。これはその初号機である。
 数台作って祖父江氏に渡したが、筆者はその後出国してしまい、しばらく会えなかった。その間に色々なことがあったようだ。原氏の電車を作っていたT島氏の弟が電気技術者で、同様のものを作り、その方が性能が良かった。それを採用したようで、問題は解決した。しかし筆者は電車をほとんど作らないから、筆者の興味の外にあった。

 その後永末氏が作ってくれた筆者専用のDCC完全直流デコーダでは、惰性で走るときは完全にOFFになるので、具合が良い。これは1985年に得た教訓を生かしたわけだ。

2022年11月04日

ヒステリシス

 histeresis ヒステリシスは、物理の時間に出てくる。磁気ヒステリシスという言葉に記憶がある方も多いはずだ。

駆動ヒステリシス この模型の挙動をグラフにするとこうなるだろう。印加電圧を横軸に、動輪回転数を縦軸にとる。分巻特性のマグネットモータだから電圧で問題なかろう。通常型の場合は、ある程度の電圧を掛けないと動かないから、原点からしばらくは横に行く。伝達部の様々な障碍を乗り越えると、途端に回転が始まり、その速度は大きい。その後は滑らかに加速していくだろうが、起動時の挙動は面白くない。減速時は起動時ほどではないが、あるところで突然止まってしまうであろう。
 逆転時は、これまた困ったことが起こるかもしれない。「往きはよいよい、還りはこわい」で、そう簡単には動かないかもしれない。このグラフではそれを強調している。
 実際には、このグラフが逆になっていることもあるだろう。すなわち後退はよく走るが、前進はちょっと…という場合である。

 一方、「高効率ギヤ + 六角ジョイント + トルクアーム」では赤線のようになる。囲まれた部分の面積は小さい。この面積(積分値)は損失に比例する。
 損失は少ないに越したことはない。


2022年11月02日

高効率機関車の挙動

 友人が、高効率歯車を搭載した機関車を運転した感想を伝えて来た。一言で言うと、スロットルの廻し具合と、機関車の動輪のトルクが一致するのだそうだ。

 比較的急な勾配で、ある程度の負荷を牽かせると、途中でスリップして止まってしまう。普通ならそこからの再起動はできない。動輪が滑るだけで列車は止まっているはずだ。  
 ところが高効率ギヤを付けている場合は、ゆっくり再起動して、動輪の再粘着により、少しずつ引っ張り上げて行く。滑ればスロットルを戻し、少しずつ引き上げることが出来るという。
 通常の動力装置であると、電圧を上げてもなかなか動かず、ある程度の電圧をかけた瞬間に回転を始め、スリップして摩擦係数が減るので動き出せない。再度止めて起動しても、結局は同じ結果であるらしい。 

 この様子を別の工学系の友人に説明したところ、興味深い言葉が出てきた。
「つまり、通常型の場合はヒステリシスが大きいのだね。」

2022年10月31日

内野氏の輪心製作

 内野氏の工作手順を紹介する記事を公開しているが、思わぬ手応えがあって、筆者は驚いている。いろいろな方から感想を戴く。もっと見せてくれとの意見が多い。
 達人の手の内を見せる記事には価値があるということだ。プロの手の内はなかなか見ることができないから、内野氏のような上級アマチュアの仕事は、チャンスがあれば見ておきたい。

wheel center 左はインデックスで孔をあけた状態である。中は切り抜いて、スポークを丸く削り出した状態で、鋳型として完成した状態だ。右は鋳こんだロストワックス鋳物である。スポークの丸みが実感的にできている。
      
wheel center plan 図面があるが、この輪心のものであるかどうかは、確証がない。上手な図面で、さすがに専門家である。スポークのテーパを指定する断面を描いている。


2022年10月29日

車輪踏面の粗さ

 筆者はNゲージには触ったことがないが、それに詳しい人が言う。
「Nゲージの車輪の転動音はかなりひどい。」

 シャーという音が響いて、会話もできないそうである。走らせることをシャーシャーするという人もいるそうで、それには呆れる。
 彼は筆者の博物館に来て、その静粛性に驚いた。
「模型の音がしない。」と言う。

 Nゲージのその音はどこから、来るのだろう。レイルを撫でてみると、かなり滑らかである。そうなると車輪しかない。
 もし伝手があれば、車輪の表面を電子顕微鏡で見ると面白いだろう。ニッケルめっきが施してあろうが、それの表面は月の表面のようにあばただらけになっているはずだ。
 それを改善するにはめっき面を研磨するしかない。#1500程度のサンドペーパを湿らせて当てれば良い。もちろん旋盤上である。ほんのちょっと磨くだけで格段の差が生じる。旋盤のベッドは保護しておくことは不可欠である。
 HOの車輪を研磨する人は、このブログで初めて見た。

 問題は、この種のことが全く話題にならないことである。どうして雑誌にこのことが記事として採り上げられないのだろうか。これはメーカ・サイドの問題である。製造時に一手間かければ出来ることで、それによって得られた静粛性は、他社に差をつける大きな切り札になるはずだ。めっきは、旋削に比べて表面が粗いことを知らないはずはないのだが。

注: めっきは日本語であり、外来語でないから、ひらがなで書くべきである。JISもひらがなである。 

2022年10月27日

続々 「私たちの立ち位置」

 今野氏率いるKKCの会員は、金属工作による車輌群の製作を趣味とする人達である。KKCの内部では様々な情報が交換され、共有されている。これは素晴らしいことである。雑誌には載らない常識、誤謬の訂正などが伝達され、然るべき時間の後には、雑誌に載ったりする。
 
 若い会員は、先輩の指導で様々なことに挑戦し、その試行錯誤の様子も分かる。ここで大切なことは、会員の殆どが実践者であることだ。自分で手を動かし、やってみて確認したことを報告している。糸鋸の使い方、タップの立て方にしても、雑誌に書いてあることとは一捻り違うことが紹介されている。ハンダ付けのコテを改造する例も紹介されている。 

 最近では模型人は製品を買うだけの人が多いと感じる。筆者は、それほど懐に余裕がなかったから、自作か、中古品を改造することを中心にしていた。博物館のコレクションは、土屋氏からのものを除けば、ほぼ100%中古品からの再生である。動力装置はすべて取り替えられ、サスペンションも更新されているものが多い。
 それを知っているアメリカの友人は、再生を頼んで来た。渡してやると、さらに友人に自慢し、それが次から次へと輪を広げていった。こうして祖父江氏は忙しく仕事をするようになったのは、嬉しいことであった。


2022年10月25日

続「私たちの立ち位置」

 非常に多くのご意見を頂戴している。

 ほとんどの方の意見は一致していて、まとめて言えば”主体性の有無”である。これについては過去の記事で扱っている。


 例のコンテスト以降、鉄道模型のあり方について考えることが多い。コンテストの是非は別として、「入賞したいという意欲」が、昨今の問題の原点にあるような気がする。他人は他人なのだが、コンテストで入賞するためには、ある概念の中での出来不出来を競うわけだ。そうなると、見かけ上良くできている、ということは極めて重要になってくる
 筆者は何十年もコンテストを無視してきた。その入賞作品を見て、感動することもほとんどなかった。「ご苦労様」という言葉しか、感想として出てこなかったというのが正直なところである。中身についての工夫はほとんどなかったからだ。 

 筆者は、「世界で一番良く走り、耐久性のある模型」を作りたかった。祖父江氏も全く同じことを考えていたので、35年に亘る親交を結べた。懸架装置、歯車を含む駆動装置、耐衝撃性、耐摩耗性、静粛性の点で傑出するものを作ることだけを考えてきた。被牽引車は低摩擦であるべきで、緩和曲線を備えた線路を精密に作り、長大編成を牽かせることを目標にした。

 その目的達成以外、何も考えていなかったので、他の人からの雑音は耳に入らなかった。ある程度の完成形が見えてくると、車輪、歯車等を欲しがる人が出てきたので、原価で提供した。その購入者が筆者と同じことを考えていたかは不明ではあるが、さらにそれを見て、「僕も欲しい」と言う人が現れるのは嬉しかった。原価で頒布してきたのは、それを工場に注文するにはある程度の数を揃える必要があり、その協力者への謝礼という気持ちもあった。100個しか注文しないのと、3000個の注文では単価は数倍以上違う。

2022年10月23日

最高速度

 高効率ギヤを購入し、換装された方々からレポートを戴く。どなたも、走行性能の格段の向上に驚き、絶賛して下さる。最高速についての不満はないようだ。揚げ足取りを目的に、速過ぎると書く人もいるだろうが、それは的外れだ。最高速について、かねてから思っていることを書こう。

 ファンタジィの世界に入り、実物との違いを考えていない人が多いのだ。以前、無負荷での最高速は意味がないと書いた。実物の場合は無負荷のように見えて、たいへん大きな負荷を掛けての試験である。それは空気抵抗である。120 km/hを超えると、空気抵抗はかなり大きい。小出力の動力車は、空気抵抗だけで最高速が決まってしまう。

 数千馬力もある機関車は空気の塊を押しのけて、楽に200 km/hを出せる。ただし、機械部品の最高回転数は制限されているので、むやみには出せない。壊れてしまうからだ。
 新幹線を考えてみよう。仮に先頭車に動力があったとして、1輌だけを走らせたとすると高速は出せない。 長い後続車に動力があり、総出力が大きいからこそ 300 km/h以上が出せる。すなわち、先頭車の後ろの連結器には、大変大きな推力が掛かっている。ヨーロッパの高速列車は前後部に強力な機関車を付けているから、少し話が異なるが、空気抵抗が大きな部分を占めることには変わりがない。
 一方、模型の場合は空気抵抗はあって無きが如し、である。すなわち、最高速など考えても仕方ないのである。 

 最近は行っていないのでよくわからないが、大きな催しで、最高速、最低速コンテストがあるそうだ。どちらも負荷を全く考えていないから、夏休みの自由研究と変わらない。出場資格は小学生以下とすべきだろう。

2022年10月21日

絶縁軸

 brass_solder氏のブログに、Katoの機関車の動輪を分解した写真が載っている。これは話には聞いていたが、見るのは初めてだ。フランジの形はかなり良い。

 カツミに居た高橋 淑氏の話を聞いた。60年代に高橋氏はアメリカに行くたびにIrvin R. Athearn氏に会った。アサン氏は鷹揚な人物で、
「今度は何を盗んで行くんだい?」
と聞いたそうだ。それほど日本の模型はアサンからの影響を受けているということなのだ。

 1980 1970年代に、カツミはHOゲージのEF65を作った。それはベストセラーになり、カツミは大きな収益を得た。その設計には、この絶縁軸が初めて採用された。これはアサンの機関車には1960年代から採用されたアイデアである。今でもカツミ製のギヤボックスにはこのアイデアが使われているという。

 同様にNゲージの動力車には当然のように採用されている。

 ”Athearn”の発音は不明なところが多い。筆者が聞く範囲では、ェアサンという人ばかりだ。エイサンが正しいと言う人もいるが、筆者の知人に、「友人はAthearnという名字だが、本人は”ェアサン”と言っている。」と言われたこともある。この話題の人物本人が、なんと言っていたか、知りたいものだ。

 読者諸氏からのご指摘を受け、発売年を訂正しました。ご指摘感謝します。 

2022年10月19日

続 内野氏の動輪の構成

driver counter balance weight 輪心の厚み方向からの撮影である。カウンタ・バランス、クランクは 6 mm厚の板を嵌めたので、同じ高さであるはずだが、カウンタ・バランスにはさらに 1 mmの板を貼り足してある。

 この鋳物ができたら、旋盤上でクランクだけ挽くのである。全周廻すとカウンタ・バランスが削れてしまうので、チャックハンドルを差して、45度位の範囲だけを手で往復させて削る。大変そうだが、それほど難しくはない。ただ、バイトはよく切れるものを使わないといけない。

 カウンタ・バランス・ウェイトが大きく飛び出していると、非常に迫力がある。Oゲージは実物より1.8 mm弱、線路幅が広いので、下手にこれをやると、破綻する場合が多い。微妙にシリンダ中心を移動したり、クロスヘッドの裏を削ったり、というような様々な工夫でごまかすことが必要であった。内野氏もそこには気を遣っていた。 

2022年10月17日

内野氏の動輪の構成

driver center これはDM&IRの2-8-8-4の動輪を作るプロセスを示している。旋盤で挽いた輪心に、概略の形を鉛筆で描いてある。そうして色々なやり方で、形にするべく試行していたのだ。


 クランクやカウンタ・バランス・ウェイトを貼り付けて、旋盤で挽き落とす方法も試したようだ。結局は、結果には不満であった。クランクを厚板から切り抜いて、孔に落とし込んでハンダ付けしている。

crank この板は 6 mmの厚さだ。実に見事に切り抜かれている。左は完成した鋳物の原型である。これは変色していないから、シリコーンゴム(RTV)でゴム型を作ったのであろう。生ゴムで型を取ると、加硫時に発生する硫黄化合物の蒸気で、ブラスは黒く変色する。 
 
 カウンタ・バランスも同様に切り抜いて嵌め込まれている。嵌め込んでから、裏を削って肉を盗んである。そうしないと、ヒケが出て、表面が凹んでしまうからだ。一方、クランク部は旋盤で表面を削るから 多少のヒケは問題ではなくなる。バランス・ウェイトは鋳肌のままである。 

2022年10月15日

「私たちの立ち位置」

 仙台の今野氏が率いるKKC会報のコラムに、今野氏が表題の件について書かれている。
 概略を書くとこのようなことである。(著者承諾済) 

 我々は金属工作によって車輌を作り、それが模型としての唯一の最高峰であると思ってきた。最近のTMSのアニバーサリー・チャレンジの結果を見ると、それが通用しないことに気が付く。スクラッチから機関車を作るということはこの趣味の本筋ではなくなったのだ。
 機関車を作る人はそれを走らせるレイアウトを作るところまで行く人は稀である。また、レイアウトを作る人は、機関車を作ることは少ない。
 KKCでは、走りの追求をしようとする方向に向かいつつある。伊藤 剛 模型鉄道館のような、簡易なシーナリィではあるが高精度な線路を持つ運転場
(ディスプレイ・レイアウトと呼んで欲しかった)を作ろうではないか。

というものである。
 今連載中の内野氏の工作は、すでに過去のものとなってしまったのであろうか。そうではないはずだ。偉大な模型人のテクニックは、語り伝えなければならない。

 高効率ギヤが普及すると、どうしても長編成を走らせて勾配を登らせてみたくなるものである。さて、これでいくつかのディスプレイ・レイアウトが、日本にも出現するであろうか。  

2022年10月13日

内野氏の糸鋸作業

coping saw 内野氏の”抜きカス”を拾って来てある。これが何の部品になったのかは、しかと覚えがない。このようなものを大量に正確に抜くのは難しいと思うが、内野氏は鼻歌交じりでスイスイと抜いていた。鋸刃は 4/0 だった。
 ある友人は、「その鼻歌に秘密がある」と言う。糸鋸はリズムが必要だ。いつも同じように引かないと、引っかかる。そのリズムの元が鼻歌だと主張する。そうかもしれない。
 最近はそれを思い出して、実行している。なかなか良い。

wheel center blank 右はインデックスで穴あけをしたあと、糸鋸で抜いてスポークを作る直前の状態である。左は何をするつもりであったのだろうか。

 祖父江氏の工房を訪問したときも、このような状態のものがあった。糸鋸を通して、筆者と喋りながら抜くのだ。ほとんどワークを見ていないような感じがした。そのスポークの仕上げはキサゲであった。

2022年10月11日

続々々 内野日出男氏の工作

 内野氏の工作の上手さは、糸鋸、ヤスリがけ、旋盤、ハンダ付けである。要するに、金属加工の本質を深く理解しているということ以外には、筆者は何も言うことができない。   
 内野氏がどのようにしてそのような能力を身に付けたのかは、よくわからない。ご実家はその種の仕事をしていたわけではない。特定の誰かからテクニックを学んだということでもないようだ。翻訳家の日吉菊雄氏とは、家が近くで親しかったとは聞いている。

 遺された工具類を点検すると、全てのヤスリのsafe edgeは見事に研ぎ上げられている。旋盤も良いものだが、特別なものではない。
 糸鋸は荒い目の物が多い。#1程度の刃がたくさんある。これでステンレスを切ると、かなり早く切れる。糸鋸の枠も極めて普遍的に売っているもので、特に変わりはない。

 筆者も若い頃は目が良かったので、糸鋸加工は得意だった。内野氏達と話していたとき、ケガキ線に沿って切るとき、どこを切るかという話で盛り上がった。内野氏が「ケガキ線を半分残すんだ。」と言ったので、皆が納得したことを思い出す。

2022年10月09日

続々 内野日出男氏の工作

brake shoe(1) これはブレーキ・シュウである。本物のようにアームがシュウの溝の中に納まる。これを旋盤で挽いてヤスリで削り出してある。難しいのは、8個取りの角度を等しくすることだ。


brake shoe(2) 違う角度から見てみよう。溝がよく見える。8個の穴は自作のインデックス装置で位置を決める。内野氏は48歯の歯車を用いていた。48は、2、3、4、6、8でも12でも割り切れるから、便利な数字である。旋盤のねじ切り用の歯車を用いている。

 indexing device(1)歯の溝にはまる割出しクサビはブラス製で、バネが付いていた。三つ爪のチャックに銜えたワークを、所定の数の歯を飛ばして廻す。所定の角度を廻してドリルで孔をあける。3爪スクロールチャックは、ユニマットのものだ。中心のネジはM12-P1である。 

indexing device(2) 歯車を外したところである。クサビを保持する部分は、歯車の大きさに合わせて前後出来るようにしてある。すなわち割出し数に合わせた設定ができる。しかし、ほとんどの場合、48歯で用は足りるだろう。回転しないように軸を固定する装置はついていないが、小径の穴をあける程度だから、問題はない。フライスを使うと回転してしまうだろう。

2022年10月07日

続 内野日出男氏の工作

side rods これはDM&IR鉄道の2-8-8-4サイドロッドである。厚さ 3 mmのステンレス板を糸鋸で切り抜いている。穴あけして概略を切ってからヤスリがけして正確な外形にする。それをフライスで削って薄くし、スリットを入れ、相手と組み合わせて関節とする。

side rods (2) 余分にいくつか作って、良いものを選んだのだろうが、余っているものも素晴らしい出来である。
 ロッドにステンレスを選んだのは、単純に色の問題である。内野氏も、洋白の色は好きではなかった。

 このステンレスは、SUS430であろうと思う。磁石に付く。それほど硬くないから、糸鋸で切れる。多少の油を付けると切り易いが、ブラスの2倍ほどの時間がかかる。切り粉は磁石で完全に集められる。

2022年10月05日

内野日出男氏の工作

 抽斗の中に、内野氏から戴いたいくつかの仕掛かり品、失敗作(とてもそうは見えない)をしまってあった。久しぶりに中を確認している。

headlite(1) ヘッドライトである。ロストワックスの既製品は気に入らないので自作されたのだ。反射鏡が洋白で削り出してある。それが本体のブラスのブロックにはめ込まれる。
 このアイデアには参った。洋白は白いので、めっきをしなくてもそのまま反射鏡になる。

headlight(3) 組み合わせるとぴったり合う。ハンダを滲み込ませれば、そのまま出来上がりだ。見本にした出来の悪いロストワックス鋳物とは雲泥の差だ。



headlite (2) この鋳物は特に出来が悪い。その後の製品はかなり良くなっている。その元型を誰が作ったかは不明だが、アメリカ人にも特別な才能を持った人が居るようだ。昔聞いた話だが、そのような人に鋳物メーカが頼んで作ってもらうときは、現金・領収書無しだそうだ。支払い側が、その経費をどうやって捻出していたのかは分からないが、かなりの金額だったようだ。

 筆者もある機関車のテンダ台車のブレーキ梁の元型を作ったことがある。祖父江氏の依頼だった。時間がないから頼む、ということだった。大変光栄なことであり、対価はあえて貰わなかった。

2022年10月03日

他社のHOギヤボックス

another gearbox 別の友人が、前回の記事を見て意見を求めてきた。このギヤボックスはどうか、と聞くのだ。このギヤボックスも、1時間連続運転して止まると、動き出せないと言う。

 確かにウォームが当たっているウォームホィールはPOMのようだ。ウォームは1条のようだから、進み角(°)は一桁である。すなわち効率は、あまり高くない。大きなモータを付け、重負荷を掛けて1時間も走れば、熱は溜まる。これも熱くなった状態で、急停止するとウォームの歯型が転写されてしまうのではないのだろうか。

 ウォームホィールは熱の逃げやすい金属製に限る。快削のリン青銅を用いるのが普通である。快削のリン青銅と言っても何種類かあるから、よく調べて指定しなければならない。 

 長時間の運転をすることはアマチュアでは少ないだろうから、この種の問題は顕在化して来なかった。最近、いくつかの鉄道会社が博物館を持つようになって、この種の問題に気がつくようになったようだ。アメリカではかなり前から、この対策が必要であった。 筆者のギヤも微力ながら貢献した。

2022年10月02日

金網 

chicken coop mesh (2) これはディーゼル電気機関車のラジエータ部分の覆いである。


 通称chicken wire であるが、ある友人から chicken coop mesh と言うのが正しい、と言われたことがある。調べてみると、前者は六角の網目のものを指すらしい。後者は、スポット熔接してある少し太めの格子のようだ。この場合は後者が正しいだろう。上を人が歩いても壊れない程度の太さだ。1/4インチ径(6.35 mm)くらいだろう。1/48では0.13 mmということになる。

 この金網はエッチングで出来たものだ。非常に腰の強い板を使っている。日本製のエッチング部品は、例外なく、腰がないクタクタの板である。焼き鈍しをしたからだ。よく考えて欲しい。抜き落としをしても、応力の開放によって反ったりすることはない。ということは、焼き鈍し板を使う必要は全く無いにもかかわらず、一律に焼き鈍し板を使っているというのが日本の模型屋の現実である。そんなことはやめるべきだ。

chicken coop mesh (1) 寸法を測って見た。厚さは0.4mm弱(15ミル)、網の部分の太さは、0.21〜0.26mm程度である。こんなに細くても平面性が保たれている。

 飛び出している部分は、ジグを使って所定の位置で曲げる。

 板はアメリカのブラスで、日本の快削材よりさらに硬い。日本なら、リン青銅板にエッチングして抜き落とすべきだろう。

2022年09月30日

レイアウトの高さについて

 友人に会うたびに、表題の話題が出る。どなたも今月号のTMSを見ての感想である。

・広いことになっているが、広さが感じられない。
・通路と背景ばかりが気になって、良さを感じる余地がない。
・俯瞰撮影なら、少しは工夫したアングルで撮るべきである。
・高さが低いようだ。

 筆者はそのレイアウトの現物を見たわけではないので、雑誌の誌面だけからの感想を述べる。一言で言えば、視点が高過ぎる、である。”設定した視点”からの眺望を考えるべきであった。

 TMSのレイアウトの記事を、過去20年分ざっと見ての感想であるが、どれも視点が高い。すなわちレイアウトの高さが足らない。TMS 968号のNゲージレイアウトに橋を見上げる場面がある。とても良いのだが、1枚だけである。 
 先のコメントでTMS439号の記事が話題になっているが、他にはとても少ない。その記事では椅子に座って目の高さということである。1100 mmほどであろう。

train watching 当博物館のレイアウトのグラウンド・レヴェルの標高は1230mmである。勾配があるので、最高地点では標高は1500 mm近い。
「そこで待ち受けて、通過するのを見ると興奮する。」
と言う人は多い。

 視点を標高1510 mmにしたのがこの写真である。重い列車が継ぎ目の音を響かせて走るのだから、鉄道ファンなら誰しも興奮するだろう。
 もう一つ、走行音が極端に静かであるということである。転動音は殆どしないので、分岐を渡るときのフログの音がよく聞こえる。もちろんギヤ音は全く無い。蒸気機関車なのであるから、そこも大事なポイントである。 

2022年09月28日

ケガキ用ノギス

 ケガキにはノギスを多用する。本当はやってはいけないのだろうが、この方法を採用する人は多いはずだ。この方法は昔からTMSにも書いてあった。

Mr.Go Ito's 伊藤 剛氏のノギスである。両方の爪を削ってある。すなわち、右でケガき、左でもケガくことができる。剛氏の遺品にはこの種の工夫が多い。外寸法測定側(下)だけが削ってある。



Mr.Uchino's これは内野日出男氏のケガキ用ノギスである。片方を短くし、尖らせてある。照明の具合が悪く、影になってしまったことをお詫びする。上側の爪と同じような形である。
 これは理にかなっている。長い方を深く保てるので、距離が斜めにならない。すなわち正確にケガける。
 不思議なのは、内寸法測定側も同じように削ってあることだ。内寸法側でケガくことは少ないと思う。孔の縁に沿って一定の距離で線を引く事があるのだろうか。それほど機会はないものと思われる。  

2022年09月26日

カビの処置

NP caboose (2) 某所で長らく放置されていたカブースの処理を引き受けてしまった。かなり長期間放置してあったらしく、元の色がわからないくらいひどくかびていた。触ると取れるかと思ったがそうでもない。


 カビはかなり強く食い込んでいる。このカブースは木製で、菌が木質の奥まで食い込んでいるのだ。普通に洗ったのでは取れない。
 思い切って、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(いわゆる塩素サラシ剤)を全体に塗りつけ、歯ブラシで擦った。あっという間に取れるが、塗料もかなり剥がれた。仕方ない。

 内側にも液が入ったが好都合だ。さっと振って行き渡らせた。1分間なじませて、全体を流水で洗った。振り回して水滴を飛ばし、空気清浄機の吹き出し口に載せて30分乾かした。

NP caboose (1) エアコンが効いているので湿度は低く、すぐ乾いた。塗料はかなり剥げているが、かえって実感的かも知れない。一部は塗り直さねばならない。本物でもそういうこともあるだろうから、これで良いことにする。

 多少の残りはあるが、カビは死んでいるので、無理には取らなくて良い。 

2022年09月24日

turbo-charger の排気管

 近代型(と言っても当鉄道で扱っているのは1980年代までではあるが)の機関車の排気管の内部は四角錐の空間である。中が狭く、外に向かって開いている。KTMがDDA40XSD40を製品化したときは、PSC Precision Scale Companyという会社に輸出していた。PSCはロストワックス鋳物を製造していた。アメリカで模型化したい機種を選び、現地で調査してロストワックス鋳物を作り、それを送ってきて製品を作らせていたのだ。日本側の設計者は誰かわからない。構造的に正しい設計とは言えない部分がある。
 
turbo exhoust PSCのディーゼル用の部品は素晴らしいものが多い。特にこの排気管はよくできている。今様でない50年前の設計の機関車でも、これがついていると、雰囲気が変わるようだ。いろいろな人に褒めてもらっている。しかし拡大すると、バリが出ているのが分かる。細いヤスリで修正するつもりだ。 

 どういうわけか、この部品をたくさん持っていたので、今回完成させる機関車全てに取り付けた。取り付ける孔をあけねばならない。これは意外に大変な作業である。Φ6の孔をあけて角ヤスリを突っ込んで少し拡げ、ハンドニブラで拡げる。ホーザンとエンジニアの両方を持っているので、その場で使い易い方を用いる。

 切り口は多少めくれるので、ヤスリを掛けて浮き上がらないようにする。酸化皮膜を取り、塩化亜鉛飽和溶液を塗って、63%ハンダを置く。ガスバーナで軽く焙って完成である。

 実物の排気は消音器もなく、猛烈な勢いで出る。タービンに当たっているから、多少は脈動が減り、ほぼ均一な流れであるが、凄まじい噴出速度である。
 機関車を斜め上から見下ろすように陣取って撮影すると、極端に熱い排気を浴びて驚く。しかもそれがドカンとぶつかってくるから、「眉毛が焦げそう」という表現は、決して大げさでもない。

2022年09月22日

SP の inertial separator の排気管周辺

 SP Southern Pacificには山岳路線が多い。トンネルの中でも確実に働く機関車を長年に亘り、作り続けて来た。より低い温度の空気を吸い込むために、ラジエータの吸気は最下部から吸う。

inertial separator on SP engine (1) モータ冷却用の吸気は高いところにあって、しかも慣性による塵埃分離機で濃縮されてゴミをたくさん含む排気は、すぐその上から放り出される。トンネル天井面にあたって跳ね返るのもあるだろうが、大きな問題は低速時に気流が周回することだ。要するに排出したものが、すぐに吸い込まれてしまう。

inertilal filter hatch on SP engines これを防ぐには、その「周回気流が発生する位置」を上げるべきである。そのためにSPは1980年頃から、奇妙な板を水平に取り付けている。足は4本で、排気口を延長している。この図を見るとその効果がわかるだろう。なかなか賢い解決法である。

inertial separator on SP engine (2) 工作は簡単で、SPの機関車らしい賑やかな外観が再現できる。 

2022年09月20日

inertial separator hatch  

filling silver solderinertial separator on DDA40X Bill Melisが作ってくれたロストワックス鋳物に、この薄い箱形部材がある。ディーゼル電機機関車の屋根に付ける部品である。先回の写真の右端に見える。

 この下には空気清浄装置がある。普通のフィルタではない。高速の空気の通路を曲げると、重い粒子は慣性でまっすぐ進もうとするから、外へ飛び出すところを捕捉する。いわゆるinertial filterである。最近の真空掃除機は、この原理をさらに進化させた装置を付けているものが増えてきた。
 機関車では、駆動モータの冷却用に大量の空気を吸い込むので、普通のフィルタではすぐ詰まってしまう。砂漠地帯ではこれは深刻な問題であり、処理をしないと駆動モータの中に砂塵が溜まって焼損する。
 エンジンの吸気は更に細かい塵を除くために、いわゆる濾過装置を2段目に用いている。これは自動車用と同等の構造である。

 この種の機関車では、その捕捉した塵を含む空気を屋根上の孔から吹き出させている。この部品はその装置を覆う屋根で、少し膨らませている。

 その部品の斜面の傾斜は、45度以下のものが多い。緩いものは40度弱である。Billの部品ではそれが60度もある。少し削って緩やかにしたいが、肉が薄いので削ると分解してしまう。

inertial separator hatch 中に何か、貼れば良いのだ。角線の角を削いで、銀ハンダで付ける。たっぷりハンダを流してから削ると、ハンダの色が見えるほどになる。貼らなかったら悲惨なことになっただろう。

 削った蓋を付けるのは、63%ハンダである。ガスバーナで予熱してから部品を載せて、例の押えを効かせる。150 Wのコテで、わずかの63%ハンダを融かして当てると、さっと沁み込んで終了である。銀ハンダは融けない。
 4x30の ブラス平角棒を削って作ったものは、DD35A用に使う。これは少し幅が狭い。ガスバーナーで焙って付ける。こういうときも、屋根の板には孔をたくさんあけて、ハンダが完全に廻ったことを裏側から確かめる。 


2022年09月18日

続々 DDA40X を作る

building  a DDA40X  (3) DDA40X はエンジンフッドの中央部が盛り上がっている。それをどう作るかが一番の問題点である。
 前回は左右の盛り上がりを別々に作って中央で接ぎ合わせた。その接ぎ合わせのときに幅を決めねばならず、面倒であったし、計算値と現実は合わないこともあった。

building  a DDA40X  (1) 今回は左右を余裕を持たせて切り、隙間を空けた。その隙間には、後で帯材を嵌めてハンダで埋めることにした。別の大きな板で上を覆うので、わずかの距離の分しか見えないから、さほど大きな問題ではない。上の板は完全に密着させねばならない裏から63%ハンダで全面ハンダ付けである。下になる板には孔をたくさんあけておいて、流れ具合を確認する。この操作は非常に簡単である。この写真でアメリカのブラスの色がよく分かる。黄色である。快削で硬い。

 5本の6x6角材をフライスで高さを整えて削り、嵩上げ分を確保した。車体に載せて、上の張り出し分をハンダで仮留めしてから外し、確実にハンダ付けした。すなわち、車体との隙間は全く無くなる。

DDA40X Body section 車体側には、その角棒が当たるところに孔をあけ、嵩上げ部分を押し付けて炭素棒で加熱してハンダを完全に沁み込ませた。非常に強い車体になった。中央部が、通路として欠き取られて細くなっているが、強度は十分である。 問題はファンの取り付けである。こういう部分を動かすのは、筆者の趣味ではない。見えないところに手を掛けて、色が剥げたり、部品が欠落するのは耐えられない。


2022年09月16日

続 HOのギヤボックスの見分

 いくつかコメントを戴いているので、それに答えねばならない。

 現物を見たわけではないので、一般論を紹介する。50年以上前、KTMはいろいろな場所で展示運転をしたらしい。1週間、走り詰めだったそうだ。ギヤはもったが、ギヤの前後に挟んだPOM(デルリンという商品名が有名)のワッシャが擦り切れて、中に綿くずのようになって詰まっていたそうだ。連続使用すると、熱で少しずつクリープ(塑性変形していく)して薄くなり、最終的には糸くずになったわけだ。

 先回のギヤを連続運転すると、熱の逃げ場所がない。摩擦熱は相手のウォームホィールに蓄積され、クリープが起きやすくなる。長時間走って急停止すると、ウォームホィールにはウォームの形が転写されるかもしれない。そうなるともう起動できない。

 材質は吟味する必要がある。ウォームが快削鋼、相手はリン青銅であれば、このようなことは起きない。もちろん正しい潤滑剤が必要だ。
 モヂュールが小さいというのも、この種の事故が起こりやすい条件の一つである。大きなモヂュールであれば、変形は起こりにくいし、起こったとしてもその影響が小さい。モヂュールが小さなプラスティックギヤは、事故を誘発する。もちろん、進み角が小さくて効率が良くないから、発熱するというのもあるだろう。

 もう一つ気になったのは、2軸を結ぶドライヴシャフトが中心にないことだ。台車のひねりでどのような影響があるのかは知らないが、左右対称にしておけばいろいろな点で自然である。

 個人の住宅の中で数分間走らせておしまいなら、かなりの期間、よく走るであろう。


2022年09月14日

1番ゲージの車輌群

#1 gauge in Toyota (1) A氏は1番ゲージの車輌群を、スクラッチから作っている。それらは全て押して動くようになっていて、なおかつ慣性増大装置を付けている。


#1 gauge in Toyota (3) 筆者のOゲージ用3条ウォームを購入し、巨大なフライホィールを廻すので、その慣性は信じられないほど大きい。作った本人が、「動かないので、ギヤがロックしていると思った。」ほどである。
 慣性質量は500 kg相当である。軽自動車より重いので、押しても動かないと感じたのは当然であろう。

#1 gauge in Toyota (2) A氏は機械工学の専門家であり、工作にはその知識が散りばめられている。ご自宅の庭に大きなエンドレスの線路を敷いて、長大編成が走る。ワインの瓶が積荷であるところが面白い。


#1 gauge in Toyota (4) 先日、豊田市の科学体験館という博物館で子どもたちを相手の体験運転を披露されたので、招待戴いた。重い列車を徐々に加速して行くのは見ていて楽しい。止めるのは、発電ブレーキである。


2022年09月12日

HOのギヤボックスの見分

3-thread worm gear 友人がHO用として売られているギヤを見せてくれた。よく売れているそうだ。ところが、彼の知り合いの博物館の人が、「すぐダメになる」と言うので「どうしてだろう」と、筆者に見分を依頼してきたのだ。

 開けてみて驚いたのは、3条ウォームギヤが入っていたことだ。その割には押しても動きにくい。多少は動くが、動きは渋い。
 しかし、じっくり見ないと3条ウォームには見えない。進み角が小さいからだ。なぜ小さいか、よく考えてみよう。

  以前にも見かけたが、太いウォームに3条を彫っても、細い1条の普通のウォームと進み角は大差ない。どうしてもっと細いウォームを作らなかったのだろう。それは軸の太さに拘っているからである。

 軸が Φ2 もあるのだ。これではダメだ。軸と一体にしてギヤを細くすべきであった。そうすれば、進み角は大きくなる。

 博物館での連続使用でダメになる理由だが、それは進み角の小ささによる低効率から来ているのだろう。摩擦熱が大きいので、POM製のウォームホィールが融けるのでは、と推測する。また、グリースがたくさん入っている。多すぎるのではないか。その撹拌抵抗だけでかなりの損失である。スラストを受けるボールベアリングもない。
 設計は元KTM社員のT川氏らしい。彼とは親しかった。どうして筆者に相談してくれなかったのだろう。いくらでも助言をしてあげたのに。

2022年09月10日

続々々 TMS 968号

 友人から、痛烈なメイルが来た。

 既製品を並べるか、ディテールパーツをこれでもか、と貼ったのしか興味のない昨今の模型誌がよく上位に入れたものだと驚きました。 

 これは筆者も同感である。他にも友人が、「入賞はさせないだろうね。TMSは写真映りがよくないものは使わないからさ。」と言っていたので、まさかの入賞であったというのはウソではない。

 古くからの付き合いのある友人を当博物館に案内すると、その路盤の高さには驚く。「向こうが見えないじゃないか」と言うが、逆に質問する。
「僕たちが実物を見る時は、視点の高さはどれくらいだろうね。踏切で見たり、跨線橋で見る以外にあるだろうか。ビルの屋上から見て楽しいかい?」
「そう言われてみれば、今まで気が付かなかったが、視点を下げる、逆に言うと路盤を持ち上げるということは大きな意味があるな。日本のレイアウトは低過ぎるね。」
と納得する。

 本文記事にも書いたが、いずれ日本のレイアウトは路盤が高くなる。HOでも実例がある。Nではもっと高くすべきだろう。ウォークアラウンドなら、1500 mmでも良いのではないか。

 1980年代にアメリカでは急速にレイアウト路盤が高くなった。MRの記事に、”毎年1インチずつ上昇している”と書いてあったことを記憶している。上昇は2000年近辺で止まったようだ。それはウォークアラウンドの普及(DCC, wireless)と同期している。

2022年09月08日

続 DDA40Xを作る

DDA40X 3 (1)DDA40X 3 (2) ラジエータ・グリルの延長部分を作らねばならない。前回作った2輌をどのように作ったのだったか、40年以上も昔で、しかと覚えがない。
 ロストワックスではないように思う。木型を作って、近くの鋳物屋でふいてもらったような気がする。砂型鋳物特有の表面の色を持っているからだ。もうその鋳物屋は廃業して久しい。あるいはロストワックス鋳物をもらったのかもしれない。

DDA40X 3 (3)) 斜面が3つあり、曲面でつながっているところもある。実物は薄い板金製であるが、模型はブロックをヤスリで削り出さねばならない。フライス盤で、目見当で粗取りし、近い大きさまで削る。それを太い角棒にハンダ付けし、万力に銜えてヤスリで削るのだ。

 仕上工であった祖父江氏のテクニックを思い出している。こういうものは2つを左右対称に置く。削って、目的の形にする。
「なーに、人間の目は意外に確かなんだよ。左右対称に置いときゃね、違いがよく分かるんだぁ。」
 こういうときのヤスリ作業は、大きな単目ヤスリを用いる。ザクザクと削って行くのだ。新しいヤスリはよく切れる。  

2022年09月06日

六角ジョイントの効果

 何度も同じことを書くのは気が退けるが、六角ジョイントの評判はすこぶる良い。
 ギヤボックス、ギヤセットの組の数の2倍程度が出て行った。すなわち、既存のギヤボックスを残し、ゴムジョイントを置換するだけの軽い工作をした人たちからの連絡である。順次紹介させて戴く。


・「驚いた」の一言です。今まで一体何をしていたのだろうと思いました。これさえあれば、電流を半分にすることが可能です。もちろんギヤボックスはトルクアームで支えています。

・今まで、ゴムジョイントの調整は腹立たしい事の連続でした。前進を良くすると後退がダメでした。ところがこれを付けると、一発で解決です。これは工作力がなくてもできますから、どなたにもお薦めできますね。

・中にケイディーのバネを入れるのがミソですね。賢い方法です。六角ナットも正確に孔を拡げなければならないと思っていましたが、よく考えてみると、多少のフレは吸収されてしまうのですね。それに気がついてからは、取替のスピードが3倍になりました。

・これでゴムジョイントは完全に駆逐されるでしょう。最初から曲がっているものを売っているのもおかしいし、軸との摩擦が少ないので抜けてしまいますからね。



「トルクアームの価値に気がついたのが遅すぎた。」と、悔やむ声が多い。ある程度のジョイント交換をしてから、高効率ギヤに嵌め換えた人たちの声は過去に紹介している。 

2022年09月04日

DDA40X を作る

 1976年頃に組み始めた”キット”(Bill Melisのところの型を使って作らせてもらったもの)を完成させるべく、少しずつ進めている。自作3号機である。

 以前はプレスで丸穴を抜いていたのだが、今回は 1 mm板にドリルでΦ6の孔をあけ、ハンダ付けした。快削材であるから、メクレもほとんど無い。
 50年ほど前のものであるから、設計思想が現在とは全く異なる。今ならレーザまたはエッチングで切り込みを入れて表現するだろうが、当時は、板を貼り重ねている。ケガキ針で傷を付け、蝶番などをプレスで押し出し、ドア・ラッチは押し込んで凹ませている。
DDA40X (1) 裏に飛び出た部分は、ベルトサンダで落として平面にし、密着するようにする。板は反るからゴムハンマで叩いて直す。板の厚みの分だけ出るが、全く気にしない。本体の 1 mm板(40ミルの快削材)に0.5 mmを貼り足すので、厚みは1.5 mmになる。極めて頑丈である。現在の水準から見れば荒っぽい作りだが、塗ると素晴らしい。これで良いのだ。

DDA40X (2) 前回は 200 Wのコテで付けたが、今回はガスバーナだけで加熱した。他に何も部品が付いていないので、壊れるものはない。手製のクランプ類で押さえ込んで、塩化亜鉛液を沁み込ませ、63%ハンダの小粒を境目に置く。炙るとさっと沁み込んで完了だ。裏から見ると、丸穴のところから銀色に光っているのが見える。これは、完全なハンダ付けができた証明である。この手法では、隙間にフラックスが残ることがない。
 手前の板は少し浮き上がっている。こういうこともあるので、クランプを移動し、再度加熱すると完成である。こうすれば、全面ハンダ付けは簡単だ。63%を使うのが秘訣である。融けているか、固まっているかの2つしか無いので、加熱をやめるタイミングはすぐ分かる。他のハンダを使うと、加熱しすぎて、板が反るだろう。  
 はみ出したハンダは、例の編み線を当てて、炭素棒を押し付ければ、瞬時に取り除くことができる。ハンダの色がつくなどと言う人は、この話題とは無縁の人である。 


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