2023年02月04日

続 太いボイラ

PRR K4 SofuePRR K4 old これらを修正するのはかなり難しいが、アメリカのカスタムビルダの中にはそれをやってのけた人がいるらしい。今は高性能の細いモータが手に入るのだから、できないことはないだろうが大変だ。
 さて、左は祖父江氏が作った最後のカツミのOゲージ製品である。火室側面は、右の旧製品とは格段の差があり、細くなっている。

from topcomparison2 上から見るとこんな調子だ。火室後部のすぼまりがよく分かる。この製品がカツミから出たときは筆者は留守をしていてよく分からなかったが、今見るとその差には愕然とする。

comparison 斜めから見るとこんな具合だ。ベルペィア火室の上の部分が大き過ぎるが、違和感を感じさせるのは、むしろその下のラニングボードと接するあたりの幅である。
 当時のモータではどうしても幅が小さくできなかったのだろう。祖父江氏の工夫でなんとか収めようとしたのだが、力及ばず広くなっている。
 
HO and O HOの模型を並べてみた。これはユナイテッドのK4である。不思議なことにカツミの旧製品と似ている。棒型モータで、多少の隙間があるのだが、太いボイラである。これについては太いとかいう評判は聞いたことが無いのは不思議だ。HOの人はそれほどこだわらないのだろうか。それともOゲージの大きさが、その差を訴えるのだろうか。
 その昔、「とれいん」が発刊された頃、Y氏が輸出されていた機関車を褒めまくって、寸法が正しいとか言っていたが、その記事の写真もこれと全く同じである。 

 これらのジャンクで手に入れた機関車に手を入れてみようかとも思うが、火室、キャブは完全に作り直しとなる。しかし、それだけの手間を掛ける価値があるかどうかは疑問である。 

2023年02月02日

太いボイラ

 カツミが Max Gray やその後継者に輸出した蒸気機関車の一部には、火室が太いものがあることは、アメリカの模型ファンには常識である。カツミは1960年頃から2000年頃まで約2万輌のOゲージの機関車を輸出している。その内の7割以上は祖父江氏による。

PRR K4 当初、モータが大きいので、そのモータにかぶせることができる最小のボイラを作って載せた。すなわち、火室は少し太い。真横から見るとわかりにくいが、前から見るとすぐに分かる。これはK4パシフィックである。キャブ前の妻は、ラニングボードの方から見て長方形でなければならないが、台形である。

PRR M1PRR E6s ペンシルヴェイニア鉄道のアトランティック(4-4-2)、パシフィック(4-6-2)、マウンテン(4-8-2)などの機関車の火室は、どれも太い。太いと言っても火室の幅のことであり、真横から見たときはそれほど感じない。左はマウンテンM1,右はアトランティックE6sである。模型のE6sの火室は明らかに広がっている。とは言うものの、祖父江氏の工夫でモータの鉄心をキャブに押込んだので、多少は助かっている。

I remember Pennsy (2)I remember Pennsy (1) 本物の機関車を毎日見ていた人は、これらの角度でも見ていたのだから、違和感を持つ人はあっただろう。これらは、K4 パシフックである。模型のラニングボードが狭いのがよく分かる。ベルペィア火室の幅が広過ぎるのだ。キャブの前に向けて、すぼまっていなければならない。2枚の写真は、写真集 ”I remember Pennsy" からお借りしている。


2023年01月31日

続 モータ軸からピニオンを外す

removing projection welding A氏が持ち帰って、すぐ連絡があった。
「モータを回転させながら、回転砥石で擦ったら、すぐ取れたよ。」


 さすがである。歯車の軸方向の先端にはわずかに突出した部分があり、その部分を抵抗熔接(projection welding)してあるのだ。接着より確実で早い方法であろう。溶接された部分さえ無くなれば、何の抵抗もなく抜けるわけだ。
done! 今までの苦労は何だったのだろうと思えるほど、エレガントな解法であった。

 軸先端は微妙に細くなる可能性はあるが、問題ない。筆者はこの種のギヤ付きモータを多数持っているのだが、外すのが面倒であまり使っていなかった。そのモータの大きさも出力も適当であるので、大いに利用したい。  

2023年01月29日

モータ軸からピニオンを外す

 A氏が来訪したときに、いくつかコアレスモータを進呈した。それらはテキサスのジャンク屋で買ったもので、軍用の取り外し品である。10年以上前に買ったものだ。おそらく、ミサイル等の操舵部品として装着されていたものが、定時交換されてジャンクとなり、放出されたと思われる。ほとんど新品同様なのだが、たまには動かないものもある。 
 ウクライナで多量のミサイルが発射されたので、しばらくは供給がなくなるだろう。 

projection welding さて、いくつかの軸にはピニオンがついている。これを外すのはなかなか大変であった。今までは万力に銜えて糸鋸で軸と平行に切り、それをニ回やると外れた。切る方向は直角にすると切る量が減るが、やはり大変な仕事で面倒である。

 A氏は、
「これはプロジェクション熔接の可能性が高い。」
と言う。もの作りの現場に居た方だから、広汎な知識をお持ちだ。

2023年01月27日

続 track in track

 HOの線路のフィーダ(饋電線)は、1 mごとに確実に付けるつもりだ。横には巻尺を貼り付ける。サンプリング速度が大きければ、レーザ測距計でも良い。

 ここまで書けば、何をしようとしているかはわかる人は多いだろう。

 測定というものは定常状態で行うものである。さて、何の測定をするのであろうか。
 その測定に必要なものは、
巻尺
時計 (あるいは動画を撮って、毎秒のコマ数 fps を調べる)
の2つである。
 別にOゲージでなくても構わないが、より大きなものの方が、相対的に摩擦は小さく、誤差は小さくなるから、二重に敷いたわけだ。
 何が定常状態になるのだろう。 

2023年01月25日

続 新年会

DE50 (3)DE50 (1) DE50を見たことがある人は少ないはずだ。筆者は中央線、関西線での試運転を見るチャンスがあった。エンジンの音がDD51とは全く異なったのを覚えている。ほとんど使われないまま、お蔵入りになったのは残念だ。

DE50 (2) この模型では、エンジンルームのドアが全て開く。ドアハンドルは内側に錘が付いていて、閉じた状態で安定化する。いつぞやのHOモデルとはさすがに違う。


DD54 (2)DE50(4)DE50(5) 3軸台車は実物のように3軸は独立していて操舵する。リンクは全て実物どおり作動し、バネの横剛性で復元する。急曲線を通るときの挙動が本物と同じで、見ているだけで楽しい。中に巨大なフライホィールが見える。慣性増大装置付きなのである。 

2023年01月23日

新年会

NMRC 所属クラブの新年会があり、新入会員のA氏のデモ運転があった。おそらく誰も見たことのない種類の運転を披露して戴いた。


 45mmゲージでスクラッチ・ビルドされた国鉄のディーゼル機関車2輌が、自律して複線をランダムに往復している。たまたま線路が空いた状態であると、ポイントが切り替わり、渡り線を通る。素晴らしい音響効果があると同時に霧化装置からの煙も出る。動きも重々しい。機械にも電気にも強い方なので、今後が楽しみだ。

DD54 (1) DD54である。実物は整備に関する問題が解決せず、短命に終わったが、造形は素晴らしかったと思う。この模型は素晴らしい牽引力を持ち、本物のように惰行する。メカニズムは素晴らしい。 

 今までにこの会では、素晴らしい仕上がりの作品をいくつか拝見してきたが、外見だけではなく、中身に注力した模型はあまり見ることがなかった。そういう点でも、会員の気持ちがそちらに向くことになれば、素晴らしい模型が発表されるきっかけとなろう。 

2023年01月21日

track in track

track in track Oゲージの線路の中にHOゲージの線路を置いてみた。意外なことにぴったり嵌まる。浮かないように小釘で打っておくことにする。直線部で分岐に掛からないところだけだから、 長さは 7 mに限られたが、十分に仕事ができるだろう。


 さて何をしているのだろうか。HOゲージの線路は、Oゲージ車輌の走行の邪魔にはならないことが判明したので、しばらくはこのまま仮固定しておくつもりだ。 

 準備はできたが、肝心のHO機関車がない。唯一の機関車は、デモンストレータとして貸し出しているので、しばらく戻って来ないだろう。

2023年01月19日

続々 突切りバイトを作る

むすこたかなし氏のブログで連続的に掲載されている記事が面白い。先入観に捉われることなく、客観的な事実だけからやり方を導き出している。実にサイエンティフィックである。

 60年ほど前までは、この種のテクニックは職場ごとに存在し、互いによそが何をやっているかということは、うかがい知ることがなかった。職工はテクニックを「盗んで覚える」以外なく、それは工学的な知識が元になっているわけではないから、見当外れのものもあった。
 ただ言えることは、うまくいかないものは使わなくなるから、使える方法だけが生き残っていたわけだ。筆者はその最後の時代にそれを見るチャンスが有った。

 しかしながら、自分でやってもいないのに、頭ごなしに「そんな方法は間違いだ。」と言って、鼻で笑う人も居た。こういう人は今でもたくさん居る。
 筆者は各種のバイトをその方法で作ったが、ハンダが剥がれるようなことは一回たりともなかった。すなわち、むすこたかなし氏も言われるように、正しくハンダ付けができれば大丈夫なのだ。 
 今回 Φ12 の快削黄銅棒を切断しているが、なんの問題もない。筆者はもっと太いものも切る。これは刃先が細く抵抗が小さいから、可能なのだ。

 SKS材は日本刀の材料である。実際には日本刀は天然の合金鋼で、マンガン、バナジウムなどを含む。カミソリも同じである。硬く焼入れが出来て、切先を鋭くできる。これはハイスには出来ない芸当である。ただ、焼きが鈍るとダメになるから、鋼を削るときは、低速で油漬けでの仕事をせねばならない。(ハイスはHi-Speedの略である)

2023年01月17日

続 内野日出男氏のD62

Mr.Uchino's D62 (5)Mr.Uchino's D62 (3) Tavata氏、春岡電鉄氏が正解である。寸法を測ってみると全長は200 mm強で、1/100である。線路が見当たらず、探し回って載せた線路が大きなヒントになってしまった。枕木部分を消すと、もう少し難しくなったかも知れない。


Mr.Uchino's D62 (1) この機関車の話は内野氏から聞いていたが、現物が出てくるとは思わなかった。小さな箱に入っていたので、気が付くまでに時間が掛かった。 

 1/100というサイズは他に例がないので、列車を走らせて楽しむことは出来ず、ただ作ってみただけで終わった。鉄道模型は仲間が必要であると悟ったそうだ。

Mr.Uchino's D62 (6) Mr.Uchino's D62 (7)共通のゲージ、共通の(似通った)縮尺が必要である。独善的な模型は孤立するのだ。


2023年01月15日

内野氏の工夫

 I氏より、とれいん誌の1996年11・12月号に内野氏の工作技法メモが載っていると連絡があった。
pull to expand 今回の edgewise に絡んで、リヴェットのピッチを合わせる方法も開陳されている。これは割合知られたアイデアのようだ。祖父江氏も「引っ張って合わせりゃいいんだよ。」と言っていたし、筆者もそうしていた。

 旧型国電などのドア上のリヴェットである。エッジワイズで作った部品にリヴェットを打ち、ヘッダを張るときに問題になるのだが、調整はわけない。金属は伸び易いものなのだ。

 人間の眼は、平行とは垂直はよく認識するからごまかせないが、長さは絶対値を認識していない。相対的な値としてしか認識しないから、このような方法が成立する。 

2023年01月13日

続 edgewise

 早速 F氏から連絡があり、写真をいくつか送って戴いた。大学の工房に鉄の帯やアングルをRに曲げる工具があり、それを参考に帯をどうすれば曲げられるかと考えました、とある。

Mr..F's method (2) この写真では木の板に孔をあけ、そこに段を付けたブラス棒を差し込み、クランプで軽く締めながら、帯板を挟んで曲げる。板にはどこまで曲げるかを描いてある。戻りがあるので、90度なら100度曲げる必要がある。


Mr..F's method (1) 孔をあけるためのジグである。棒(rung という)を差し込む位置が正確に決まる。




Mr..F's method (3) 図面をコピィして貼っておけば、その通りのものが作りやすい。 




 
 エッジワイズは難しい技法ではない。曲げる瞬間に加工硬化するので、多少の力が掛かっても、曲がりにくい。もしこれがエッチングによる切り抜きであると、あまりにもクタクタで、まっすぐに取り付けることさえ難しいだろう。 

2023年01月11日

edgewise

edgewize  (3) 内野氏はポケットからこの曲がったハシゴの材料を出して筆者に見せた。
「どうやって作ったか分かる?」

 筆者はピンと来た。糸鋸で切り抜いたのなら、わざわざ見せまい。そんな事例はいくらでも紹介されているのだから。

edgewize  (1) そこで筆者は答えた。
「ジグで挟んでおいて、引きながら曲げたのではありませんか?」
 内野氏は口を大きく開いて驚いた。
「知ってるのか!」

 そのようなやり取りがあってから、筆者は内野氏とは非常に親しくさせて戴いたように思う 。この方法は小学生の頃から父から聞いていた。大きな変圧器、モータ等の巻線はこの方法で作る。
 「エッジワイズというのだ。」と父は教えてくれた。「丸い線を巻くと隙間が大きくて損なのだ。角線を巻けば隙間はかなり少なくなるからな。」

edgewize  (2) "edgewise"という言葉は英語ではたまに出てくるが、角線を曲げるということに使うのは特殊な場合で、日常には遭遇しない使い方である。この言葉が戦前から日本に伝わっていたということは、イギリスか、アメリカからその概念が輸入されていたわけである。模型の世界では使われていなかったようだ。

 祖父江氏は抜き型で作ったものを使っていた。数の問題があるからそのほうが安上がりだったのかもしれない。プレスは、時間が節約できるからだ。穴まで同時に抜いていた。 

2023年01月09日

内野日出男氏のD62

Mr.Uchino's D62 (4)Mr.Uchino's D62 (2) 内野氏宅からお預かりしている物の点検は、ようやく最終段階に来た。

 これは一体何であろうか。寸法は伏せて写真をお見せする。ゲージ、縮尺を当てて戴きたい。

 内野氏はこれを1968年に作った、と箱に記してある。そのころのTMSを調べているが、記事には載っていないようだ。それから55年も経とうとしている。この掲載記事が雑誌にあれば、お知らせ願いたい。 

 連結器はKadeeを用いている。石炭は半分ほど剥がれているので、これは修復したい。ホコリがついているので清掃して陳列する。場合によっては塗装のタッチアップをすべきかもしれない。

 とにかく、フル・スクラッチ・ビルトである。もちろん動輪も手作りであり、これは内野氏がユニマットを入手してまもなくの作品である。 

2023年01月07日

続 突切りバイトを作る

 刃先は、200 ℃を超えると焼きが戻り始める。ということは、ハンダが剥がれない温度範囲で使えば、全く問題ないわけだ。このような理屈を理解していれば、安心して使える。

 筆者を攻撃した人たちは、刃先が剥がれるから危ないと言っていたが、剥がれることはないし、たとえ落ちてもそれは下に落ちる。その瞬間はロクロ屋で見たことがある。油が切れたからだ。すなわちその批判は、客観性のない無意味な攻撃である。実際にやったことがない人なのだ。

 キィ材を使うのは昔ロクロ屋で教わった。安くて実用的である。S45Cという鋼材は、剛性が大きいので都合が良い(快削黄銅の2倍のヤング率がある)。太さは 8 mm角程度が良い。すくい角は 0 度から始めて、各種作ってみるべきだ。どの程度が良いかは、すぐ分かる。快削黄銅なら、切り粉が細かく切れて出て来るのが理想的である。これは人によって好みがあり、筆者が見た親方の中には、すくい角を付けた上で、刃先から1 mm以内のところにコブ状の膨らみを残して切り粉の連続性を断ち切る(要するに折るわけだ)人も居た。これは、後には ”chip breaker”と呼ばれるようになった。

 上記のリンクの中にカンナの刃を二重にする話がある。これは日本の二枚刃のカンナも同じである。アニメイションが実にわかりやすくて良い。
 金属であっても似た現象はあるだろう。切り粉は粉々になったほうが、仕上がり面に傷がつかず、綺麗になるように思う。そういう点ではすくい角は少ない方が良いだろう。実際にやってみて好みの角度を探すべきだ。

2023年01月05日

突切りバイトを作る

 旋盤上での「突切り」という切断は、なかなか難しいのだそうだ。市販の突切り刃物では思うようにできないと言う人は多い。それぞれが様々な工夫をされているが、決定版と思われるものは無さそうだ。糸鋸を押し付ける方法をよく見るが、寸法が出ないから、感心しない。
 むすこたかなし氏のブログで紹介されている方法は、日本のロクロ屋で長らく使われた手法である。当時は金鋸の刃を折って作った小片をハンダ付けしていた。フラックスは当然のように塩酸を用いていた。小学生の頃、その作業をよく見るチャンスがあった。

 バイトになる鋼の小片は、使い捨ての折るカッタナイフの刃先から作ると簡単である。筆者は45年くらい前からこれをやっている。ハンダで付けると、取れやすいと思っている人が多いらしい。筆者の方法をあからさまにバカにする人もいたが、やってみればわかることで、剥がれることはない。剥がれるのならロクロ屋さんは仕事ができなかったはずだ。
 先入感でハンダは弱いと思っているのだろう。それはご自身のハンダ付けがおヘタである以外に、理由は思い付かない。十分な加熱により、ハンダが鋼片をよくぬらしていれば、そう簡単には取れない。ハンダの層が十分に薄いことが不可欠である。融かした状態で、鋼片を金属棒で軽く押し付ける。

 快削黄銅を削るのであれば、何もしなくても刃が外れることはない。相手が快削鋼であるときは切削油が必要である。しかも油を途切れなく、たらたらと流す必要がある。油が切れた瞬間に煙が上がって刃先は鈍り、摩擦熱でハンダが融ける。昔は油を垂らすのは新入りの小僧の仕事であった。小学生の筆者は、小僧が親方に怒鳴られながら油を垂らすのを見ていた。

2023年01月03日

ダイキャストの変質

 ダイキャストで作られた蒸気機関車の台枠が変形して、走らなくなったという記事があった。Mogul氏は経験ある模型人であり、ブラス板による修復は可能であろうと思うが、面倒なことである。

 戦後数年間に日本で作られたダイキャスト部品は、すでにほとんどが割れて壊滅したと思われる。有名なのはOゲージの軸箱である。EF58などに使われたものは原型を留めていない。ヤフオクなどによく出ているが、例外なく滅茶苦茶な状態である。これを修復するためのロストワックス製のブラス部品も出ていたが、末端までは届いていない。

 昭和30年代に輸出用に作られた部品も、かなり怪しい。少しずつ膨らんでいるのである。当鉄道にもかなりの数が在籍していたが、全てブラスのロストワックス部品に交換した。

 亜鉛ダイキャスト鋳物は少しずつ膨らむ。合金に不純物として鉛などが入っていると、結晶の界面が酸化されて金属結合が断ち切られ、割れてしまう。アメリカ製のはかなり持つと言われていたが、戦前のライオネルの高級な模型(Oスケールのハドソン)もどんどん割れてしまい、現存するものは極めて少なくなったという。

 最近は中国製の模型が市場に溢れている。それらはダイキャストとプラスティックの組み合わせでできているらしい。今後20年のうちに何が起こるか、観察したい。

 ブラス製で正しくハンダ付けされた模型は、1000年超の寿命を持つだろうことは疑いがない。おそらくそういう意味では、ブラス製模型の復権はありうると思っている。但し、今までのような板金を組み合わせて立体を構成する手法は一部となり、大半は3Dプリントを駆使した銅合金ロストワックスとレーザで切り抜きされた板との組み合わせという構成になるだろうと予測する。そうなると、必然的にハンダ付け手法も進化する必要がある。

2023年01月01日

作った塩化亜鉛をフラックスとして使う

 ジャンクのカヴァド・ホッパを順次組んでいるが、車体がねじれていることがわかった。下部のホッパがまともに付かないのだ。よく考えてみれば、ジャンクであるということは、それなりの理由があるわけだ。なにかの失敗で、かなり歪んだのを廃棄したのだろう 。全てバラして合板で簡単なジグを作り、その中に押し込んでハンダ付けし直したところ、下部のホッパは正しく付けられた。これで完成まで持ち込める。

 細かい部品を作り、少しずつ付けている。コテで仮留めして木のブロックで押さえ込み、ガスバーナで炙った。ハンダが沁み込み固着する。そう簡単には取れない。作り立てのフラックスを使った。塩酸がわずかに過剰で、よく付く。問題は、揮発した塩化水素が金属を錆びさせることだ。

 活性炭フィルタを持つ空気清浄機に、煙を全て吸い込ませている。祖父江氏のとは異なり、塩化亜鉛を主体としてわずかに塩酸を含んでいるだけなので、さほど問題はないだろう。しかし、机の上に飛び散ったものからは塩化水素が出るだろうから、それは濡れ雑巾で拭い取る必要がある。塩化水素は、鉄合金に対しては極めて錆を発生させやすい。鉄の表面の酸化皮膜を簡単に破ることができるからである(鉄そのものは、湿度55%以下の清浄空気中では全く錆びない。瀬戸大橋の主ケーブルはこの理屈を利用している。脱湿した空気を循環させているのだ)。
 だから、鉄をハンダ付けするときは塩酸が適する。昔自動車工場では鋼板のつなぎ目にはハンダを流して大きなヤスリで擦っていた。フェラーリのテスタロッサの側面の羽根状の付け根も、全てヤスリ仕上げであったと聞いた。 

2022年12月30日

続々 塩化亜鉛を作る

 容器を冷やしながら塩酸を少しずつ入れる。かなりの発熱があり、塩化水素ガスが飛び出すので、外でやるべきである。冬は熱が逃げやすく都合が良い。飛び出した塩化水素は空気中の水蒸気を凝縮させて霧にするので、白い湯気が出るように見える。

 量の比率であるが、亜鉛 30 gに対する濃塩酸の計算上の体積は 76 ml 程だが、揮発して逃げる分を見越すと 80 ml が良いだろう。筆者の場合は、塩酸の残量から反応させる亜鉛の量を計算した。

 反応容器を一晩放置し、完全に溶けたのを確認する。銅線を引き上げると、還元的雰囲気にあったので綺麗なピンク色をしている。この銅線を入れないと、1週間放置しても、全くと言ってよいほど、溶けない。トタン板の場合は亜鉛がなくなって鉄板になる。空気が入るので、酸化が進み、鉄は錆びるだろう。ここで亜鉛の量は意外と少ないので、ほとんど塩酸のフラックスができる。それは効果がとても良いので驚くはずである。祖父江氏は最後まで塩化亜鉛を使わず、希塩酸しか使わなかった。

 これで手持ちの塩酸は無くなってしまった。今後どうやって入手するかだが、かなり難しそうだ。 

2022年12月28日

続 塩化亜鉛を作る

 全ての金属固体が反応を助けるわけではない。積極的に阻害するもの(昔は逆触媒と言った)も、いくつかある。鉛、亜鉛、カドミウム、水銀などである。よく考えてみると、これらは全て電池の負極構成物質である。電池を休ませている時に、負極物質が電解液と勝手に反応(要するに電池を作動させていないときに亜鉛極が溶けてしまう)しては困るので、これらを用いていれば電極が反応せず、保存ができる。すなわち実用電池にはこれらを使わざるを得ないのだ。

 話は元に戻る。亜鉛はこれらの阻害剤の一つである。すなわち、亜鉛表面では水素ガスが発生しにくいので、結果として亜鉛は酸には溶けないのだ。そうでなければボルタ電池は成立しない。このあたりのことが、日本の高等学校の教科書ではかなりいい加減に扱われているので、混乱を引き起こしている。
 亜鉛を酸に溶かすには、触媒として何かが必要である。プラチナの指輪があれば、放り込めば良い。溶けることはない。(昔、それをネタにして笑いを誘う、傑作な入試問題があった。)

高純度亜鉛 と 銅線銅線を入れる あるいは製品でも良い。少し能力が落ちるが線でも構わない。筆者は、左の写真のように銅の撚り線の一端を捻り、他方を開いて放り込む。表面積が大きいので効果は大きい。右の写真は、塩酸はまだ入れていない状態で容器を覗き込んだ様子。亜鉛は微粉末で溶解速度が大きい。


2022年12月26日

塩化亜鉛を作る

 塩化亜鉛の在庫が枯渇してきた。友人が来ると所望されるので少しずつ渡しているうちに、無くなってしまったのだ。
 金属亜鉛の粉末はたくさんある。塩酸に溶かすことができれば出来上がりなのだが、その塩酸が手に入らない。10%を超える塩酸は劇物である。毒物劇物を扱っている老舗の薬局も減ってきた。さらに地下鉄サリン事件があってからは取り締まりが厳しくなり、買えない。こちらは専門家であると言っても、駄目なものは駄目で、売ってくれない。
 半分諦めていたのだが、40年前に買った濃塩酸の瓶が見つかった。少し残っていたので、これを使うことにした。

 中学、高校では「亜鉛は塩酸に溶ける」と教えている。実際にやってみると、それは正しくない事がわかる。反応しないのだ。
 読者諸氏の中には、「昔中学の時に実験をやった。ちゃんと溶けたぞ。」と言う人もいるだろう。それは、その亜鉛が99.5%程度で、あまり純粋でなかったからだ。あるいは塩酸に不純物が入っていたからである。いい加減な実験ではうまくいくが、純粋な亜鉛(電気亜鉛という)に不純物の無い塩酸を注ぐと反応しない
 この理屈は、やや高度な説明が必要である。化学の先生に聞いても、きちんと答えられる人は少数だろう。

水素の発生 結論を言うと、「亜鉛表面上の水素過電圧が大きいから」だ。亜鉛はイオン化傾向が大きいから水和イオンになりやすく、電子を残して飛び出そうとする。・・・(1)式

 残る電子は水素イオンとくっついて水素原子になる     ・・・(2)式

が、生じた水素原子が2個くっついて分子になる      ・・・(3)式 
には、触媒が要る

 簡単に言えば、電荷によって結合する反応は瞬時に起きるが、電荷の無い原子同士はそう簡単には結び付かない。何かの触媒表面が必要である。いくつかの説明のモデルがあるが、全て固体が必要である。
 ニッケルとか鉄、炭素、パラジウム、白金などがあると具合が良い。不純な亜鉛には鉄や炭素が含まれているので、偶然にもうまくいったのだ。トタン板を塩酸に浸すという古典的方法がうまくいくのも、母材の鉄の存在が大きく寄与しているわけだが、それには誰も気付かない。 

 電気分解で水素を発生させるときも、極板を選ばないと高電圧をかける必要があり、損失が大きい。食塩水の電解では陰極に鉄板を用いる理由はこれである。その時、鉄がその食塩水の中で全く錆びない理由もついでに考えて戴きたい。最近はもっと優秀な素材を、陰極板に用いるようになった。      

2022年12月24日

EMDの機関車用 traction motor を付ける

traction motor (1) 何台かの機関車を作るうちに、あることに気がついた。実物の台車の中にモータを収める場合は問題ないのだが、台車の外側にモータを吊る場合は、そのモータが丸見えなのだ。すなわち、ついていないと透けて見えて変なものだ。要するに、何かがそこにあるべきだ。

EMD traction motor (3) KS台車を作る時にダミィ・モータを作るので、ついでにこれを作った。電車用と異なるのは、冷却用のブロワ・ダクトである。それらしく上に伸ばした。あまり見えないので、細かく作る必要はない。 


EMD traction motor (1) 横から見るとこのような調子だ。十分である。 3軸台車、4軸台車にはこのようにモータが外に出ているものが多い。なぜかというと、モータが車軸の後ろ側に全て取付けられるので、一番後ろのモータは外にぶら下がるわけだ。2軸台車の場合は、台車の中の車軸の隙間に2台のモータが取付られているから、外からは見えない。

 3Dプリントでこのようなものを容易に作れるようになったので、いろいろな意味で助かっている。もしこれが金属製なら、あちこちに触ってショートするだろう。また重くなって大変である。 

2022年12月22日

続々々 covered hopperを作る

3-bay covered hopper (1)3-bay covered hopper (2) この3-bayは今までにないタイプである。市場にもあまり出ていない。ホッパのゲートの構造を変更した。その辺りはすべて壊れていたので、削り落としてそれらしく作り直す。

 car cyclopediaをよく見て、構造を頭に入れてから取り掛からないとむずかしい。
Jack Frost この種類のホッパ車の塗装は目立つものが多かった。このディカールはすでに入手が極めて難しい。"Jack Frost"は、日本語に置き換えにくい言葉で、批判を恐れずに言うと、”北風小僧”だ。寒さを持ってくる妖精である。最近公開された「アナと雪の女王」にも出てくるらしい。アメリカでは有名な砂糖のブランドであった。最近は見ない。
 

 とにかくこの5輌の貨車を完成させれば、安達氏から買い受けた貨車のジャンクはすべて完成で、残りの部品を捨てられる。思えば長い道のりであった。ざっと140輌ほど組んだことになる。

2022年12月20日

続々 covered hopperを作る

2-bay covered hopper (1)2-bay covered hopper (2) この2‐bay hopper は前回お見せしたものに近いが、屋根が別のタイプだ。要するに別の屋根を切り貼りして作った。縦割りにして、幅を詰めたのだ。丸型のハッチが必要で、その数が足りそうもないから、3Dプリントによる生産は必須であろう。

unnamed 下部のホッパは壊れているので、部品を作って直している。それほど難しいものではないが、既存のものと寸法を揃えねばならないから、注意せねばならない。板を大きめに切ってたっぷりとハンダを付け、ヤスリで調整する。このときのハンダは60%スズである。

 このジャンクは、細かい部品がほとんど付いていなかった。数十個の部品を手作りして付けることになる。楽しいが、時間が掛かる。同時に実物の構造調査に時間を掛けねばならない。

 この種のホッパ車は意外と重い。表面積が大きいのと、鋳物をたくさん使うからだろう。ハッチは鉛合金の鋳物であった。その鋳物が肉抜きが少なくて重いのは、ハンダ付けの時に融かしてしまわないためだろう。


2022年12月18日

続 covered hopperを作る

 アメリカ人が作ったブラス製車輌は、例外なくべとつく。フラックスに塩化亜鉛水溶液を使わず、ペーストを用いているからだ。この2輌もその例外ではない。溶剤である程度内外を洗ってから、強力な洗剤と磨き砂で擦ると、多少ブラスの輝きが出る。緑青が出ているところもあるから、念入りに擦る。内側は洗いにくいので、リモネンを用いて大型の綿棒で拭いた。非常によく落ちる。ペーストの基材はリモネンの構成分子とよく似ているからだ。

 筆者が最初にブラス工作の手ほどきを受けた先生はBill Melisである。彼もペーストを使った。最後に熱湯で洗うと言っていた。しかしこの長さの模型が入る鍋に入れて煮るのは大変である。
 上のリンクにあるペーストは、温湯のシャワーで比較的簡単に落ちる。ところが、油性の松脂系のものはそう簡単には落ちないから、溶剤が必要である。

4-bay covered hopper (2) 問題はハッチである。長いハッチは薄い銅板をプレスして作ってあるが、丸いのは無い。12個を旋盤で挽いても、形が揃うとは思えない。これも3Dプリントで作ることになるのだろう。とりあえず手持ちの部品を並べてみた。これらを全部付けるわけではない。

 排出口の造作も作らねばならない。合計16個もある。目立つところだから、何らかの工夫が必要である。

 台車は36インチの車輪を付けたBarber台車である。これはLow-D付きで用意してある。 

2022年12月16日

covered hopper を作る

 修理途上、組立中のcovered hopper があといくつあるか調べている。おそらくあと5輌で終わりだろう。

 その内の2輌は安達氏のところから来たジャンクである。かなり作りやすい。ある程度の部品もあるし、ノウハウも蓄積されている。今まで見たこともないタイプもあるが、なんとかなるだろう。それらはバラバラのものから組み始めたものだ。

4-bay covered hopper (3) これらの2輌は曲者である。これらはしばらく前、ニューヨークの集会で、製造元の息子から購入したものだ。外見はそこそこだが、中身はアウトである。全体を貫く背骨がないのだ。衝突するとアコーディオンのように長さが縮むだろう。仕方がないから、ホッパを少しずつ切り欠いて、3x10 mmの角材を差し込み、ハンダ付けした。当然ながら、素晴らしい剛性がある。もう1輌はちょうど良いチャネルがあったので切継いで嵌めた。

4-bay covered hopper (1) 車端は鉛合金の鋳物であったので外し、融かして重りにする。ブラスと洋白の角材で構成し、アングルを取り付けると出来上がりだ。ちょうど良い太さの洋白の角材が大量に手に入ったので、切り刻んで使っている。廃金属商から手に入れたのだ。

 この4-bay covered hopper がどのタイプなのかは、長年調べているがよくわからない。Pullman-Standardの系統であることは分かる。しかしカタログに出ていないのだ。屋根の上もよく分からない。


2022年12月14日

台車の向き

 先日のこの記事を読んだ友人から、訂正記事を出すべきだと連絡があった。確かに指摘の通りなので、読者の皆さんにもお知らせする。

 その台車にはドライヴ・シャフトが付けてあった。次の日に人に見せねばならないので、あわてて組んで、間違えたのだ。ドライヴシャフトの向きと、ブレーキの引き棒の向きが反対であった。

伊藤剛氏のブレーキ解説図簡略化図 これらの図は古いTMSの2桁号時代の伊藤 剛氏の記事から採っている。これを見れば一目瞭然であるから解説は要らないだろう。



日光モデル 台車 最近所属クラブの例会でその友人に会った時に、この日光モデルの台車を見せてもらった。なんと、左右別の型が彫ってある。要するにブレーキのテコが正しい方になるようにしてあるわけだ。これを買った人のうち、模型製作時にそこに気が付いて正しい方向に台車を向けた方は、どの程度居るのだろう。気になる。

2022年12月12日

ある読者の意見

 しばらく前の貨車を塗った記事を読まれてコメントを送ってきた方があった。それを本文で使うことを許可されたので、紹介する。

 素晴らしいです。これらは以前の記事の「真鍮製模型を目方で買う」のジャンクを組んだものですね。既製品より細密で頑丈であるわけで、理想的な模型です。
 車輪の内側が錆びていて、外側が油で濡れているのは感動的です。最近のTMSは「フォトジェニックなものを載せている」と、今野氏の文章にありましたが、こういうところに注意を払ったものをまず見ません。裏側のメッキが光っているものが多いのは残念です。

 今野氏の文章を引用している。鉄道は重いものが動くというところが魅力なのである。グワーンと動き出して、ゆっくり動き、なおかつなかなか止まらない。それを見たいのだ。筆者の仲間内では、物理的な慣性を追求しているが、正しく動けば電気的な模擬法でも構わない。そういうことを真面目に考えないと、「おもちゃだ。」と言われてしまう。現実にある場所で小学5年生の坊やがそれを言ったので驚き、少し話をした。彼らはCGによるリアルな動画を見ているので、そう感じたという。これは無視できない意見だった。
 最近複数の場所で走っている鉄道模型を見るチャンスが有ったが、どれもこれもチョコマカと走っていた。見る気が失せる。

 車輪の裏の件はそのように感じる方が多いなら、素晴らしいことだ。床の裏まで正確に作ったという模型の車輪がぴかぴかでは情けない。少々付け加えると、最近のローラーベアリングを使った台車の車輪は外側が油で汚れていない。日本なら塗料が塗ってある。アメリカの場合は、錆色である。クラックの発見の邪魔になる塗装をしないことになっているのだ。
 
 今野氏が今後何をなさるつもりかは存じていないが、期待したい。 


2022年12月10日

ABS の劣化

Pullman-Standard 60ft boxcar kit by US Hobbies 思わぬものが見つかった。1970年代に購入したプラスティック製のキットである。50 ftの Boxcar でPULLMAN-STANDARD の当時の新車だ。製造元は US Hobbiesであり、Kemtron の社長ケマルヤン氏がMax Grayの会社を引き継いで作った会社だ。彼は1976年に亡くなったので、その直後の在庫一掃セールで買ったような気がする。これも安価だったので、ほとんど記憶に残っていない。冷暗所にあったので、劣化していないと思った。しかし箱を開けて細かい部品を手ではずそうとしたところ、ランナの方が折れた。これは要注意のサインで、薄刃のカッタで切り離した。

LDLD2 全体にもろくなっている。実はほぼ同型をもう一輌組んだのを持っている。それを参考にしようと紙袋に入れて持ち帰ったが、自室で紙袋が破れた。ほんの30 cm弱だが、木の床に連結器から落ちた。 

time-related deterioration この連結器はバネで実際に縮むように出来ており、十分な緩衝力があるから壊れるはずはないと思ったが、妙な音がして連結器の付け根付近から折れてしまった。素材が劣化しているのだ。これは接着剤では直らないから、その縮む部品をブラスで作り直すしかないと覚悟した。
 上記リンクの貨車は自作だからエア・ダンパがついているが、このキットにはそんなものは無い。押し込むと、手を放した瞬間にぴょこんと飛び出すが、適度な摩擦でそれほど速くは飛び出して来ない。

 このキットを組み始めたが、やはりもろい。大きな部材は安心だが、細いものは割れてくる。直ちに溶剤で溶かして付けるが、期待はできない。可塑剤が加水分解されている可能性が高い。細かい部品はブラスで作って差し替えるしかない。  

 当鉄道にはプラスティック製のものは少ない。経年劣化が予想されたからだ。いずれこのように割れてくると確信したのだ。ABS製と書いてあってもこの程度である。たった40年でこの調子だから、この先どうなるのだろう。
 非常に虚しい。これは読者諸氏のプラスティック製模型の未来を暗示しているのだ。結晶性でないプラスティックは、全て同じ運命をたどる 

2022年12月08日

covered hopper を仕上げる

 天気予報を見て、塗装の準備をした。とりあえず3輌を塗ることにした。磨き砂で洗って皮脂を取り、エアコンの吹き出し口に置けば、朝までに完全に乾いている。ミッチャクロンを吹いて、べとついているうちに塗るのが骨(こつ)らしい。

painted 3輌の貨車を裏返しに置き、回転させながらどの角度から見ても塗り残しがないようにする。横に向けて斜めに保持し、同じように回転する。最後に正置して屋根の部品の隙間によく入るようにし、全体に薄く塗って出来上がりだ。この種の貨車はとても塗りにくく、手間がかかる。

 天気が良いので、輻射熱で 40℃ 位になるから、夜まで放置すると固まる。

BORAXO covered hopper ディカールはF氏が譲ってくれた。このBORAXOのディカールは、今では貴重品である。長年探していた。古くなっているので、膜を厚くする薬品を塗ったら、少々厚くなり過ぎて、浮き上がった。細かく切れ目を入れて再度ソフナを塗ると落ち着く。適度なウェザリングを施すと出来上がりだ。この当時は連結器にも塗装をしていた。現在は法律で連結器、バネ、車輪、車軸、枕梁等への塗装は禁止されている。ヒビを見つけやすくするためだ。

2022年12月06日

covered hopper に手を加える

covered hopper (2) 先日の記事で紹介した貨車である。ホッパの裏には ”かすがい” があるがそれが何の脈絡もないところに付いている。このかすがいはホッパの滑り板を撓ませないように、骨を支えているのだ。骨としてアングルを斜めに切ってハンダ付けした。 
 本物は鋳鋼でできた丸みを帯びた部品で出来ているが、そこまでは凝らないことにした。

 HOとは異なり、相手の板が厚いので炭素棒で付けた。狭いところに手が4本要るような面倒なハンダ付けだ。ハンダを余分に塗っておいて炭素棒で融かして固定する。汚いのはそのせいである。さっとキサゲで仕上げれば、全く問題ない。下側だから、そのまま塗ったとしても誰も気が付かないだろう。当鉄道では横から見えるものしか付けない。 

brake arm 貨車はシルエットが大切である。横から見たときに透けて見える部分に何らかの造作が見えるだけで、俄然実感が増す。正確である必要はない。それらしく影になって見えるだけで良いのだ。
 ブレーキ・アームとその支え板も、それらしく作ったが、覗き込むと正確には作っていないのが分かるかもしれない。それで良いのだ。ここに何もないと、非常に不可思議な感じがする。筆者は実物を見た印象が残っているから、余計に感じるのかもしれない。この斜めの支え板は引張りしか受け持たないので、薄い板である。

2022年12月04日

ニュートン を使う

 測定された値は誰でも認知することができる単位系で発表されるべきである。
「何ニュートンですか?」との質問には、「ニュートンはわかりません。」という答であって、愕然とした。

 世の中がcgs単位系からMKS単位系に切り替わったのは一体何十年前だろうか。最近は車のタイヤの空気を補充に行っても、パスカルを理解しないと入れられない。

 1 Nの大きさを知るのは物理教育の大事な局面だ。小さなリンゴを探す。100 gほどの小粒を紐で吊り、その紐を滑車で90度曲げて横から引く。これが1 Nだ。滑車を使わないと縦方向の力で、「質量」の概念から逃げ切れない。横に引けば、「力」であることが誰でも分かる。
 100 gのリンゴはあまりないので、ミカンで良い。ニュートンがリンゴが落ちるのを見てニュートン力学を構築したという故事に絡めているだけのことで、リンゴを題材にしたのには大した意味はない。

 現在、ニュートンを理解しない人は、すでに現役の世代にはいないはずである。”グラム重” を使っているのは、定年退職者以上の世代であろう。これでは消え去っていく老人のお遊びで終わってしまう。我々は次の世代のために、基礎を作っておかねばならない。そのためには、測定に対して正しい理解を持つことが不可欠である。

 前々回紹介したような怪しいグラフを見ると、測定について理解していない人は何か意味があるかのように取ってしまうかもしれないが、そこには何もない。鉄道模型誌にも正しい物理的理解を助ける記事が必要である。1年ほど前に載った牽引力を調べたという表も意味不明であった。
 
 雑誌には、正しい情報を載せるべきである。能力ある方を査読者にするように強く働きかけるべきである。


2022年12月02日

続々 測定をするということ

 前回のグラフは、いくつか机を並べただけの凸凹のある線路上で採られたものだ。曲線の半径も不明だし、その材質も明らかでない。レイル面が研いであると信じたいが、そうではなかったという情報もある。機関車のタイヤはよく洗ってあるのだろうか。こうなると何をしているのか、本人もわからないだろう。多分、言いたいことは、「張力計を入手したので、テレメータ化しました。」だろう。すなわち、これは測定ではない。牽引力を調べたいなら、平面上で連結器と車止めを張力計で結べばそれで解決だ。効率なら、標準貨車を牽いて斜面を走らせる必要がある。曲線抵抗は別の話題である。

 筆者は小型機の伝達効率を調べる時、サンプルとなる標準列車を用意した。20輌の質量、台車、車輪、潤滑剤は全く同一である。質量はすべて355 gにした。それらを斜面を滑走させて平坦線を転がし、その到達距離がほぼ同じであることも確かめてある。

 均一な斜面で引き上げるときの張力を測定するのだ。目盛りは動かず、一定値を示した。速度も一定値である。このような状況でないと、何の意味もない。効率という概念がわからないまま、「調べた」という記事もどこかで見たような気がする。 

 均一な斜面を作るのは大変であるが、正しい測定値を望むなら、やらざるを得ない。先日OJゲージの方から相談を受けた。アルミアングルで補強して線路を作ったのだが、少し撓むという。見るとまずい設計だ。

反らせない工夫 この図の 水平部分は、ほとんど剛性の増大に寄与していない。どうせなら、平角板を路盤側面に貼るほうが良い。ここで合板を厚くしても、ほとんど意味はない。 
 さらに、ここでアルミ材を使うのは賢明でないことにも気づかねばならない。鋼板は安くて堅いから、それを用いるべきである。アルミはヤング率が鋼の 1/4 ほどしかない。薄い鋼板を横からエポキシ接着剤で直接貼ってしまえば良い。鋼板なら薄くても十分だ。縦の長さの3乗で効く

2022年11月30日

続 測定をするということ

 その実験は何が目的なのか、を考えない人は実験をしても発表する意味がない。見せられても当惑するだけだ。

ある”測定値”「牽引力を調べる実験をしました」とあるので見ると、こんなグラフがあった。これを見た瞬間に読もうとする力が萎えてしまった。これが結論だそうだ。このグラフは張力測定器を貨車に積んで、出てきた値をコンピュータの画面に出しただけのものである。これは多次元のファクタが ”ごった煮” になったもので、この中から牽引力の次元の測定値だけを取り出すのは極めて難しい。だからと言って取り出さずにそのまま見せて良い訳はない。
 このグラフは単に、「測定器のスウィッチを入れました」というだけのものである。中学生にノギスを持たせて、何かの大きさを計測させると、とんでもない”測定結果”を持ってくる。それと大差ない。

 測定というものは難しいものだ。筆者は測定の専門家だったこともある。他分野でそれをしていたが、かなりの熟練が必要だ。
 あるデータを取ろうと思うと、最初にやることはまず2つある。
・ゼロ点が出るか。(これはそれほど難しくない時代になった)
・化学で言えば、基準物質を作り、そのデータが必ず毎回同じになるかを調べる。もし結果がずれていれば、何がそのずれの原因なのかを究明せねばならない。基準物質のみならず、計測器の誤差も考える。

 後者は非常に難しい。その基準物質を精製し、安定に保存するだけでも一苦労だ。この模型の場合で言えば、牽かせる車輌が完全な平面上でどの程度の抵抗があるのかを測定することである。10数輛を牽かせていたようだが、個別のデータを取る必要がある。それをどのようなつなぎ方をしても一定の張力で一定の速度を保っているかを調べねばならない。むしろ、機械ブレーキを積み、一定の摩擦力で抵抗を作り出すという手を用いれば1輌で済むから簡単であろう。

 連結器のナックルというものは意外に撓みやすく、張力を掛けると多少伸びる。すなわち列車には固有振動数があるのかも知れない。激しい乱高下が示されているが、そのファクタが無視できない可能性がある。このような測定をしたいなら、測定用の負荷を作り出す専用列車を仕立てる必要があるだろう。多数輛による列車であるなら、連結器はガタのない剛性の大きな材料を使用すべきだ。 
        

2022年11月28日

測定をするということ

 測定というものは、その結果がどうなるかを予測して行うものである。結果が見当もつかないものは測定できないのだ。

 最近の話題では牽引力を測定するという事例があった。牽引力を縦軸に、時間を横軸にとると、どのようなグラフになるだろうか。出発時は牽引力をゼロとする。次の 4つの中から選んでみよう。

4つのグラフ ここで大半の人は B を選ぶはずだ。停止している機関車がゆっくり動き始めると連結器がピンと張り、列車が動き出すだろう。他のグラフでは、その数値が表す挙動を考えると、そんなグラフはあり得ないと思うのが普通だ。       

 こうして B のグラフを予測して実験し、それから外れるようなら何がその原因なのかを調べねばならない。測定値が負であれば、線路が水平でないとしか考えられない。測定値が一定値で動かなければ、定常状態である。定常状態を作り出すにはどうしたら良いか、も考えておかねばならない。
 ここまで読むと、「思った通りの結果が出るように実験する」と勘違いする人が出てきそうだが、それは捏造であって論外である。

2022年11月26日

慣性増大装置の今後の展開

 先日のKKCの会合で披露された3種の慣性増大装置についていろいろな意見を頂戴している。否定的な意見はないが、「HOの作例が思ったほどではなかった。」という感想を戴いた。

 作者のT氏も認めているように、小さなものは本物の挙動との乖離が大きくなる。慣性モーメントは大きさの関数であるので、小さくなると極端に不利であり、一方、摩擦というものは小さくしにくい。ボールベアリングは摩擦を減らすと信じている人も多いが、中のグリースの撹拌抵抗は無視できない。また、軸の径はそれほど小さく出来ないので、相対的に抵抗は大きくなる。
 それでもある程度の効果は見られ、この動画でもそれは分かる。

 摩擦を減らす工夫が必要であるので、ある方法をヒントとして差上げたところ、たちまちそれを実用化する方策を立てられたようだ。楽しみである。  

2022年11月24日

ジャンクの再生

junk covered hopper この貨車は30年以上も、このままの形で放置されていた。ホッパ下部の部品がない。それだけを直せば良かったのだが、特殊サイズのチャネルが必要で、それが仕事を億劫にしていた。一念発起して部材を作り、その他の細かい部品を手作りした。もちろん連結器と背骨を結ぶ部材は、1.5 mm厚である。こうしておけば、ガシャンと連結しても全く安心である。

 カヴァド・ホッパというものは立派に見える貨車で、いつも何のディカールを貼るべきかと迷う。特にこの側面が三角に空いて居るタイプは1950年代のデザインであって、珍しい。すなわち、そのタイプを採用した鉄道会社は少なく、塗色、文字、ロゴなどすべて特殊である。手持ちのディカールの中で適合するものは少ない。アメリカの市場で探すのだが、思うようなものは見つからない。 

 この貨車は落下品らしく、細かい部品が紛失し、屋根が少し凹んでホッパが壊れていた。屋根は外して裏から押し上げると、ほとんど気にならない程度に直る。
 貨車というものは、実物もあちこち凹んでいることが多く、全く気にならない。伊藤 剛氏のおっしゃる ”Authentic" である。

 いくつかのディテール・パーツを作って足すと、世界で1台のカスタムモデルになる。こういうものをアメリカからの客に見せると、よだれを垂らす。複数あれば、1輌進呈すると飛び上がって喜び、次回行くと最大の歓待をしてくれる。


dda40x at 11:24コメント(0)貨車 この記事をクリップ!

2022年11月22日

新車のロールアウト

 しばらく前から用意してあった貨車を塗った。このところ天気が良いので、順次塗っている。ミッチャクロンのお陰で、そう簡単には剥げない塗りができる。

UP wartime composite hopper これは先回の記事で、天地逆に転落したと書いたものである。ありがたいことに、ほとんど被害はない。
 これは1942製のwartime composite hopperである。直訳すると、「戦時型・複合材料ホッパ車」である。要するに、鋼板を節約するために、木板で囲いを作ったわけだ。滑る部分は鋼板でないと滑っていかない。安達製作所製である。本当は1944年製にするべきだったかもしれない。

B&O wartime composite hopper これは連結器を下にして落ちたが、トリップ・ピンが僅かに曲がった程度で、他には全く傷がない。
 これもwar emergency composite hopperである。このように「非常」という言葉を入れることもある。アメリカとは言えども、材料の節約はかなり徹底して行われたようだ。連結器から、斜め上に、ホッパの滑る部分を支える支柱がある。ここを補強すると、今回のような事故に耐えうる車輌になる。

WIF boxcar これは1949年に塗ったことになっている。西インド諸島果実航送鉄道である。フロリダとハヴァナを結んでいた。実物を見たわけでは無いが、筆者の好きな絵柄だ。northerns484氏の作図とDr.Yの作成による特製ディカールである。大きなものを貼るとき泡が入らないようにするのは、かなりのテクニックが必要である。同型をあと2輌作っている。

 塗り立てを持って行ったので、まだウェザリングを施してない。   

2022年11月20日

転落事故

 慣性増大装置の実演をしている時に2輌のOゲージ貨車が落下した。線路の末端の車止めに雑誌が広げて置いてあり、貨車が乗越え易くなっていたのだ。ジャンクから組直したもので、もとは事故車を安く買ったものである。そのジャンクは衝突事故で、両端が潰れた状態であった。連結部がめり込んでいたのだ。壊れやすいのは背骨の末端の連結器がついている部分である。板が薄くて座屈していた。そのあたりをすべて切り離し、新しく部品を作り、組み直した。

fixing reinforcement in the spine その部分に1.5 mmの厚板を貼り重ね、連結器の付く部分だけを、フライスで0.3 mm削り落とす。厚板は背骨の溝の中に完全にハンダ付けする。これは炭素棒でないと無理である。こうすると極端に丈夫になる。もちろん上下左右には細かい骨で支えてある。たっぷりのハンダを付け、接合部の隙間には完全に流し込む。この種の仕事はコテでは難しい。既製品では、このあたりのハンダ付けがチョイ付けであるから弱いのだ。全面的にハンダが流れるようにする。連結器はエポキシ接着剤で付ける。接着は剪断力に対しては強い。重しを掛けて、接着剤層を薄くするのが秘訣である。
 事故直前にご覧になったTMSの名取編集長が、
1.5 mmですか!?」と驚かれたが、「必要なのですよ。」とお答えした。  

 今回の事故の1輌は連結器を下にして垂直に落ちたようで、Kadeeのトリップピンがわずかに曲がっていた。もう1輌は完全に裏返しで落ちたようだ。上面にかすり傷があった。 
 前者は事実上被害なしである。後者は、タッチアップして補修完了である。Pタイルの床には傷がついたかもしれない。
 
 奇しくも、事故によって頑丈さが立証された。何人かから、どうして壊れなかったのかという質問があったようだが、この程度の答で良いだろうか。この種の貨車は引っ張りには十分強いが、圧縮には弱いので、そこを補強するのがミソである。既製品の構造ではとても足らない。当社の貨車はすべてこの仕様で作られているから、かなり荒っぽい連結作業にも耐える。 

2022年11月18日

続 慣性増大装置

 この動きについて、いろいろな人から感想を戴いた。実物の鉄道の慣性の大きさ(すなわち、摩擦の少なさ)には改めて感じ入るものがある、というものが多かった。

HO gauge momentum emphasizer これはHOゲージ用である。T氏が作ったものだ。最初はこの径の材料を挽く旋盤がなかったので、5円玉を重ねて作った。次に筆者に連絡があったので、ちょうど良い材料を挽いて差し上げた。軽く動くが、如何せん、小さいので素晴らしい効果と言えるほどではない。しかし、1 mほどは惰行する。
小形の4-4-0あたりに牽かせると、逆回転ブレーキを実現できるはずだ。
 設計をさらに工夫すると、もっと軽く動くようになると思う。

 今回は大型のマウンテン(4-8-2)しかないので、とてもその慣性を実感するほどのことは出来なかった。そのマウンテンはHO用の高効率ギヤを搭載し、極めて滑らかに走る。低速も高速も自在で、しかも静粛なことこの上ない。

 ある人が見ていて、走行音がしないのには驚いたようだ。高効率ギヤの組見本を触って、その滑らかさ、静粛性に感嘆した。押したときの感触にも驚いたようだ。
まがい物とは全く違いますね。モータが付いていないような感触です。」
と言う。実際には押すと発電してライトが点く。

2022年11月16日

慣性増大装置

 13日のKKCの総会で、3種の慣性増大装置を披露した。

 OゲージはいつものFEF4ではあるが、例の「逆起電力キャンセラ」を追加搭載している。逆回転ブレーキが、熟練しなくても出来る様になった。等価慣性質量は170 kgで変化はない。

G gauge momentum emphasizer 今回はA氏にお借りしたGゲージの補助テンダを披露した。質量は約 5 kgだが、等価慣性質量は 700 kgである。要するに軽自動車ほどの質量を、摩擦の非常に小さな台車に載せているのと同等である。押しても動かない。しばらく力を入れていると、少しずつ動き、止まらない。長さ5.4 mの線路をゆっくりと端から端まで転がった。ギヤはOゲージ用の高効率3条ウォームである。全く無音で動力採取、放出が出来る。チェインは2本掛けで、計4本ある。2本ではとても持たない。各2本を、位相を半分ずらして取り付けている。本物のような鋼製のチェインであれば、このようなことをすると直ちに壊れるが、この模型のチェインはPOM製で少し伸びるのだ。だからこの形が音の点で最良となる。 

 A氏は自宅庭に敷いた線路で運転しているが、この車輌は実物換算350 mの惰走をしたそうだ。曲線上の記録であるから、直線なら実際はもっと走るはずだ。

2022年11月14日

乗越カルダン

乗越カルダン 電車の台車を作り始めた。近鉄電車はもともと大好きであったので、それを作らないかという誘いに乗ってしまったわけだ。

 台車は当然3Dプリントで、ナイロン製である。適度な細密性を持ち、最高の動力性能を持たせることが狙いだ。こういうものは試作が重要である。3D図面の上で検討しても、思わぬ伏兵があるものだ。これは3次試作品である。ようやく、他人に見せてもあまり恥ずかしくない形にはなったが、まだまだである。

 乗越カルダンで、1軸伝動だ。これで2輌牽ける。もちろん相手が「Low-D + ボールベアリング装荷」の場合だ。両軸モータであればその倍ということになる。例のジョイントを使っている。これはやや怪しい作りのジョイントで、角速度がどのようなグラフになるのかと問い合わせたところ、「わかりません」ということだった。要するに考えていなかったのだ。当初のカタログには「等速」と謳っていたので、それは削除すべきであると伝えた。
 とりあえず、前後対称に曲がるように使えば等速になるはずではある。
 

センタピン保持 センタピンは軸を通すので二股になる。それも3Dプリントで作ったが、底に孔があいているので弱くて、加工中に割れてしまった。とりあえずブラス片からフライスで作ったが、手間がかかるものだ。改良品を発注する。

2022年11月12日

銀ハンダ

 銀ハンダのことをここに書いても、実用化する人はほとんどいなかったようだ。最近このブログで拝見し、心強く思った次第である。
 筆者は銀ハンダを多用する。それは温度差を利用して、細かい部品が落ちないようにするためである。もちろん、硬さを利用して、間違った孔の埋戻しに使う。小さなブラス片を押し込み、塩化亜鉛を塗ってガスバーナで炙れば良い。ロストワックスの鬆(す)を埋めるときも使う。
battery lid 銀ハンダというものは、あまりうまく流れてくれない。ガスバーナで焙ってもこの程度である。すなわちこれを使う限り、ハンダで埋まってしまうということはまずないのだ。



 この部品は、ディーゼル電気機関車の脇のデッキ上にあるバッテリィ・ボックスの蓋である。ラッチを立てて引き上げるようになっている。ここが単なる歩み板では面白くない。思い付いて孔をあけ、裏からロストワックスの部品をはめた。この部品は売るほどあるのだ。孔を正確にあけなくても、バーナで炙って裏から銀ハンダを押し付けると、適当に流れて孔の隙間が埋まる。その時、細部が埋まってしまうことはない。このときの裏の盛り上がり具合をご覧になると、流れにくさが実感できるはずだ。63%を用いると、一瞬で裏に廻ってハンダが全体に均一に付いてしまう。上の部品は部品がまっすぐ付いていないことに気が付いてやり直した。

 こうして出来た部品を炭素棒で所定の位置に取り付ける。強く加熱しても、細かい部品が落ちることはないから気楽だ。 


2022年11月10日

続々 ある装置

 先に写真で示した装置の一群は、トランジスタを組み合わせたもので、作動することは作動するが、起動電圧が低くはない。3 V程掛けないと動かないので面白くない。1 V以下で起動するようにしたかった。  
 しかもトランジスタは抵抗器でもあるので、多少の発熱もあるから良くない。その後開発されたものはSCR(Silicon Controlled Rectifier) を使っている。通称サイリスタ(Thyristor)である。
 はじめはそれと等価なものをトランジスタの組合わせで作ったのだが、損失が無視できなかった。定数を変化させて効率の良い部分を探したが、SCR にはとても敵わなかった。

 SCR は発熱が少ないから放熱板は要らない。ゲートが on になれば、そのまま導通を保つ。回路は、ある程度詳しい人なら、たちまち分かるであろう。原氏の電車類にはこれが大量に採用されているはずだ。

 筆者は機関車を改良していたので、この装置は使っていない。フライホイールをモータ軸に付けたものをこれで廻すと、確かに惰力でよく廻り、止まりにくいが。それは鉄道車輌の本来の動きではない。動力車は慣性モーメントが小さくなければならないのだ。
 付随車に十分な慣性を与えるべきである。


2022年11月08日

続 ある装置

 昨年のKKCの総会で、筆者の慣性増大装置付きの機関車を披露した。短い線路の上でまずまずの走りであったが、電源装置に問題があった。中点OFFなのだが、惰行させるには線路が短か過ぎて、操作が難しい。ところが、この逆起電力キャンセラを搭載すれば、何も考えなくても、惰行の途中で逆転ブレーキを掛けられる。テンダに内蔵されたフライホィールからのエネルギィ放出を、動輪の逆回転で行うことができるのだ。これは今までは、かなり広い場所でないとできなかったのだ。
 秋のKKC総会でそれを披露することになった。

 機関車自体はほとんど見かけ上の変化はない。あと、HOの機関車に3条ウォームを搭載したデモンストレータを持っていく。現物を触って、その効果を確かめられると良い。内野氏の作品も高効率ギヤに取り替えてあるものを持っていく。

2022年11月06日

ある装置

BEMF canceler この装置は1984年に作ったものだ。試運転だけしてそのまま放置され、埃にまみれていたのを洗ってみた。
 
 当時、筆者と祖父江氏は、走りの改善に血道を上げていた。たがいに、思いつくすべてのことを実験した。どんな些細な思いつきでも報告しあい、可能性がないか探っていた。その中で祖父江氏が、芦屋の原邸で電車を走らせているのを見て、問題点を報告してきた。コアレスモータ + スパーギヤでよく走るのだが、惰行が良くない事がある。
「スロットルを下げると減速してしまうんだぁ。中点オフの逆転スイッチで回路を遮断するとうまくいくんだけどね。なんかうまい工夫がないもんかい?」
と聞いてきたのだ。電源装置の中でモータの発生した電力が喰われてしまっているというわけだ。

 要するにモータの逆起電力を遮断することができればよい。印加電圧より発生電圧の方が高いときは回路が切れればよいわけだ。様々なことを考えたが、友人の電気マニアが考えた回路が一番簡単であった。早速作って試してみた。これはその初号機である。
 数台作って祖父江氏に渡したが、筆者はその後出国してしまい、しばらく会えなかった。その間に色々なことがあったようだ。原氏の電車を作っていたT島氏の弟が電気技術者で、同様のものを作り、その方が性能が良かった。それを採用したようで、問題は解決した。しかし筆者は電車をほとんど作らないから、筆者の興味の外にあった。

 その後永末氏が作ってくれた筆者専用のDCC完全直流デコーダでは、惰性で走るときは完全にOFFになるので、具合が良い。これは1985年に得た教訓を生かしたわけだ。

2022年11月04日

ヒステリシス

 histeresis ヒステリシスは、物理の時間に出てくる。磁気ヒステリシスという言葉に記憶がある方も多いはずだ。

駆動ヒステリシス この模型の挙動をグラフにするとこうなるだろう。印加電圧を横軸に、動輪回転数を縦軸にとる。分巻特性のマグネットモータだから電圧で問題なかろう。通常型の場合は、ある程度の電圧を掛けないと動かないから、原点からしばらくは横に行く。伝達部の様々な障碍を乗り越えると、途端に回転が始まり、その速度は大きい。その後は滑らかに加速していくだろうが、起動時の挙動は面白くない。減速時は起動時ほどではないが、あるところで突然止まってしまうであろう。
 逆転時は、これまた困ったことが起こるかもしれない。「往きはよいよい、還りはこわい」で、そう簡単には動かないかもしれない。このグラフではそれを強調している。
 実際には、このグラフが逆になっていることもあるだろう。すなわち後退はよく走るが、前進はちょっと…という場合である。

 一方、「高効率ギヤ + 六角ジョイント + トルクアーム」では赤線のようになる。囲まれた部分の面積は小さい。この面積(積分値)は損失に比例する。
 損失は少ないに越したことはない。


2022年11月02日

高効率機関車の挙動

 友人が、高効率歯車を搭載した機関車を運転した感想を伝えて来た。一言で言うと、スロットルの廻し具合と、機関車の動輪のトルクが一致するのだそうだ。

 比較的急な勾配で、ある程度の負荷を牽かせると、途中でスリップして止まってしまう。普通ならそこからの再起動はできない。動輪が滑るだけで列車は止まっているはずだ。  
 ところが高効率ギヤを付けている場合は、ゆっくり再起動して、動輪の再粘着により、少しずつ引っ張り上げて行く。滑ればスロットルを戻し、少しずつ引き上げることが出来るという。
 通常の動力装置であると、電圧を上げてもなかなか動かず、ある程度の電圧をかけた瞬間に回転を始め、スリップして摩擦係数が減るので動き出せない。再度止めて起動しても、結局は同じ結果であるらしい。 

 この様子を別の工学系の友人に説明したところ、興味深い言葉が出てきた。
「つまり、通常型の場合はヒステリシスが大きいのだね。」

2022年10月31日

内野氏の輪心製作

 内野氏の工作手順を紹介する記事を公開しているが、思わぬ手応えがあって、筆者は驚いている。いろいろな方から感想を戴く。もっと見せてくれとの意見が多い。
 達人の手の内を見せる記事には価値があるということだ。プロの手の内はなかなか見ることができないから、内野氏のような上級アマチュアの仕事は、チャンスがあれば見ておきたい。

wheel center 左はインデックスで孔をあけた状態である。中は切り抜いて、スポークを丸く削り出した状態で、鋳型として完成した状態だ。右は鋳こんだロストワックス鋳物である。スポークの丸みが実感的にできている。
      
wheel center plan 図面があるが、この輪心のものであるかどうかは、確証がない。上手な図面で、さすがに専門家である。スポークのテーパを指定する断面を描いている。


2022年10月29日

車輪踏面の粗さ

 筆者はNゲージには触ったことがないが、それに詳しい人が言う。
「Nゲージの車輪の転動音はかなりひどい。」

 シャーという音が響いて、会話もできないそうである。走らせることをシャーシャーするという人もいるそうで、それには呆れる。
 彼は筆者の博物館に来て、その静粛性に驚いた。
「模型の音がしない。」と言う。

 Nゲージのその音はどこから、来るのだろう。レイルを撫でてみると、かなり滑らかである。そうなると車輪しかない。
 もし伝手があれば、車輪の表面を電子顕微鏡で見ると面白いだろう。ニッケルめっきが施してあろうが、それの表面は月の表面のようにあばただらけになっているはずだ。
 それを改善するにはめっき面を研磨するしかない。#1500程度のサンドペーパを湿らせて当てれば良い。もちろん旋盤上である。ほんのちょっと磨くだけで格段の差が生じる。旋盤のベッドは保護しておくことは不可欠である。
 HOの車輪を研磨する人は、このブログで初めて見た。

 問題は、この種のことが全く話題にならないことである。どうして雑誌にこのことが記事として採り上げられないのだろうか。これはメーカ・サイドの問題である。製造時に一手間かければ出来ることで、それによって得られた静粛性は、他社に差をつける大きな切り札になるはずだ。めっきは、旋削に比べて表面が粗いことを知らないはずはないのだが。

注: めっきは日本語であり、外来語でないから、ひらがなで書くべきである。JISもひらがなである。 

Recent Comments
Archives
Categories
  • ライブドアブログ